旬を先取りしていた『古畑任三郎』 「話題作り」にとどまらない“刺激的”なキャスティングとは? ドラマ識者が解説
構成から感じるジャンル横断的な“深み”も、他のドラマにない面白味だった。
多様なゲストを擁するドラマでは『世にも奇妙な物語』等もあるが、この作品は、役と世界観を単に作るという易しいことではない。「古畑任三郎=田村正和」という不動の相手(演技)を前に、いかに個性が拮抗し得るかの闘い、個性の化学反応の場。そこでいつも見慣れているタレントが、全く新しい形で“個性の奥”を垣間見せる。巧みなトリックや展開のかたわら、そうした新境地と再発見の体験が、オールスター戦風に広がるのが刺激的だった。
人物以外でも、ファイナルシリーズラストの松嶋菜々子演じるドラマ脚本家をはじめ、超能力(オカルト)番組、クイズ番組、さらには『サザエさん』の放送を使った演出など、テレビ番組自体のモチーフも目立った。さらには、SP回のイチローや(今回の再放送からは外れたが)SMAPの本人役というニクい演出起用。(またこれは偶然だとしても)唐沢寿明と山口智子というワイドショーを賑わせたビッグカップルの夫妻そろっての登場。
時代はネット社会になりきる前の「テレビの時代」。そこにあった「テレビ的な面白さ・刺激」をギュッと梱包したような趣も懐かしく、見応えがあった。