【6/16公開】『母という名の女』ー母という役割の隠れされた“女”という欲望ー【MiLuLu】
という表現が市民権を得て、多くの著名人が自分と親との関係をカミングアウトしています。
また、近年では「家族という病」(新潮社刊・下重暁子著)が50万部を超えるベストセラーになるなど、家族や親という者への受け止め方の変化も顕著です。本作においては、娘の出産と元夫からの拒絶をきっかけに、自我を欲望の世界に放り込み、思いのままに人を操っていく「母」という存在の危うさと怖さを見せつけています。それはかつて世間が欲する「母親像」からは離れて、むしろ人間の持つ性を辛辣に描いています。そもそも「母」とはなんであったのか、社会が押し付けたモデルでしかなかったのか、一人の女性として、そのモンスターのような存在に翻弄され、苦しむ人々を通して、その存在を明らかにしています。
ミシェル・フランコ監督の意想外な視点
©Lucía Films S. de R.L de C.V. 2017
ミシェル・フランコ監督は、これまでにもモラルの重圧に苦しみ、その結果としてモラルを逸脱してしまう、普通の人々を定点観察するように、冷徹な眼差しで描いていきました。そして本作『母という名の女』では、母性という神話を粉々に打ち砕き、崩壊した家族の無慈悲なまでのありようを剥き出しにさせています。