くらし情報『実際に雨降る中で展開する、終わった恋の精算劇』

2011年6月17日 10:33

実際に雨降る中で展開する、終わった恋の精算劇

実際に雨降る中で展開する、終わった恋の精算劇
本番とほぼ同じ状態で行われる稽古を「通し稽古」と言う。蜷川幸雄演出、窪塚洋介主演の『血の婚礼』の初めての通し稽古に立ち会った。

大規模修繕劇団旗揚げ公演「血の婚礼」チケット情報

蜷川の盟友・清水邦夫が1986年に書いたこの戯曲は、スペインの詩人でもあり、劇作家でもあるロルカの『血の婚礼』にインスパイアされたもの。ロルカ版は、結婚式の日に花嫁を奪う男と、婚約者を裏切って運命の男のもとに走る女を描いた情熱的な話だが、清水版はいわばその後日談。家族も故郷も捨て、手に手を取って駆け落ちしたものの、今ではすっかり愛が冷めてしまった男女と、屈辱の精算のためにふたりを追ってきた元・婚約者と親類達を中心に進んでいく。

だが、熱情の時期が去ったあとの人と人の関係に鋭い分析を施し、同時に豊かな抒情性を含む清水戯曲は、単純な愛憎でストーリーを構成しない。この物語の本当の主人公は、人間を呼び込み、迷わせる“路地”だ。そのことは、オープニングからわかる。
やがてそこで起きる悲喜劇のためにスタンバイするように、静かに形を変える路地。清水戯曲を世界中の誰よりも数多く演出してきた蜷川は、鮮やかにそれを視覚化する。

そして、戯曲の中に埋め込まれた詩を際立たせるためだろう、雨、鼓笛隊、人と人がののしり合う声などの喧騒をフルボリュームで聴かせる。

関連記事
新着くらしまとめ
もっと見る
記事配信社一覧
facebook
Facebook
Instagram
Instagram
X
X
YouTube
YouTube
上へ戻る
エキサイトのおすすめサービス

Copyright © 1997-2024 Excite Japan Co., LTD. All Rights Reserved.