妖怪は人間より美しい!? 『天守物語』稽古場レポート
新国立劇場 中劇場にて上演される『天守物語』の初日が目前に迫ってきた。泉鏡花の描く幽玄な世界が、白井晃の演出によって、現代の世にどのような形で立ち現れるのか。通し稽古が行われる現場を訪ね、その仕上がりを探った。
降りしきる雨の音。やがてそれがカットアウトすると、少女たちが童謡を歌い始める。非現実の世界へと引き込まれて見えてきたのは、白鷺城の天守閣だ。五重塔の最上階にあたるその場所は、美しき妖怪・富姫(篠井英介)が取り仕切っていた。今日は妹のように可愛がる亀姫(奥村佳恵)が猪苗代の亀ヶ城からはるばるやってきたとあって、富姫たちはもてなしに余念がない。
やがて、にぎやかな時が過ぎ、日も暮れた頃、下界から武士(平岡祐太)がやってきて、天守に緊張が走る。彼は姫川図書之助と名乗る鷹匠で、逃がした白鷹を追ってここまで登ってきたというのだ。富姫は、ひと目で男を気に入ってしまう。魔物と人間、出会ってしまった両者の運命は……?
和モノを初めて手がける白井の演出は、広い舞台面をダイナミックに使い、展開に淀みがない。音楽の三宅純、振付の康本雅子らと客観的な視点で再構築した和の世界は、すっきりとモダンな手触りで、歌舞伎の『天守物語』とは印象を異にする。