読んでびっくりしました」。
物語の舞台は、原発事故避難区域にある彫刻家のアトリエ。無人と思われたその場所に、人影が現れる。津波で娘ふたりを失った中年男、若い新聞記者、そして女性彫刻家、彼女の妹……。原発事故以来、壊れた彫刻のピエロが転がったまま、時が止まってしまった室内に、やがてそれぞれの想いが浮かび上がってくる。
忘れ去られていく人たちの、忘れ去られていくことの悲しみ。倉本はその描写に、ショパンの『夜想曲(ノクターン)第20番』を添わせた。「ショパン自身、亡命して、ワルシャワに帰れなかった人間なんですね。
“遺作”のサイドネームを持つこの曲を、今回は子供たちが演奏します。この連弾はいいですよ。泣けます」。国や時代、立場や意識の違う人間の心をつなぐとき、やはり音楽が果たす役割は大きい。
来年1月10日(土)に富良野演劇工場で開幕し、全国各地で上演。公演地には福島も含まれている。「当事者がどういう反応をとるのか、これがいちばん怖いです。百万人を感動させられても、ひとりを傷つけたら、作品は発表しちゃいけませんから」。
昨年8月に富良野で最初の発表を行った後も、丹念に推敲が続けられてきた『夜想曲-ノクターン-』。