くらし情報『KERAが円形劇場で繰り広げる、別役実の不条理世界』

KERAが円形劇場で繰り広げる、別役実の不条理世界

だが彼らは本当に噛まれたくないのか、実は噛まれたいのか。答えの見えないやり取りは、一見するとただの不毛な会話の連続。しかしその底辺には確実に何かがうごめき、彼らの関係性に変化をもたらしている。

この中でひとり常識的な考えのもと、必死に対話を努めようとするのは、仲村トオル演じる男1。その真っ直ぐで時に過剰なほどの演技は、他の5人に比べると異物に映り、それが笑いへと繋がっている。山崎一、犬山イヌコ、緒川たまき、奥菜恵、マギー演じる5人は、多少つじつまの合わないことであっても、自らの理論のみで語り続ける。こういった役どころに重要なのが細やかな間やニュアンスであり、彼らの巧さがまた、さらなる笑いを生み出している。そして2幕に新たに登場するのが、池谷のぶえ演じる男4。
彼の存在が、事態を大きく変えていくのである。

別役の脚本はもちろん面白いのだが、非常に危険でもある。この不条理極まりない状況は、演出により見え方がまったく異なるためだ。しかしナンセンスを得意とし、別役を敬愛するKERAは、コメディとしての笑いを重視しつつ、結末へと向かうにつれ緊迫したドラマを構築していく。さらにKERAの大きな武器は、円形劇場の舞台機構を知り尽くしているということ。

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