演出の鈴木が所定の位置につくのに合わせて、各々もスタンバイ。演出家が自ら音響を操作して、海兵隊の訓練音を流す。それと同時に冒頭から立ち稽古がスタートした。
いかにも鍛えられた海兵隊員のように、感情を見せず、声を張って堂々と事件を供述する平埜。彼の弁護人に志願するジョアンの熱意を、背筋の伸びた美しい立ち姿で表現する瀬奈。ダニエルの若さゆえの大胆不敵な勢いを、全身で軽快に見せる淵上。最小限のセットのみで展開する序盤は、各キャラクターの個性が観る側にはっきりと迫ってくる。ダニエルの友人ながら事前取引を持ちかけられても揺るがないロス役の小西は、瞬時に甘さを消す怜悧な瞳が魅力的だ。
事件のカギを握るケンドリック中尉に扮した菅原永二も、少ない言葉の中に不穏なムードを漂わせ、気になる存在である。俳優の空間移動による場面転換、テンポのよい会話の応酬によって、スリリングな空気が見事に増幅していった。欠席の田口の代役を途中まで務めていた阿部が、判事として舞台中央に立つ。芯のある穏やかな声が響き、いよいよ緊迫の法廷シーンへ突入か……と思ったその時、鈴木が「じゃあここまで」とストップをかけた。取材陣に向けられた「続きは劇場にて」