「稽古場や撮影現場で目の当たりにして感じたことですが、KERAさんの演出は非常に精密。ひとつずつ段階を経て、確実に面白くなっていくんです。天才的な発想と、地味な努力の積み重ね、その両方から生まれる面白さだと思いますね」
なんともとぼけた、真意の計れぬ田島というキャラクターについて、仲村は「最初に読んだ時は、それほど違和感がなかったんですよね。わりと時間が経ってからですね。とんでもない男なんじゃないか…!と気づいたのは」と笑う。KERAにこの役を任された理由を推察してもらうと、「僕、中学までは野球をやっていたんですけど…」と予想外の方向から話が始まった。
「100%全力で投げないと絶対にストライクは入らない、と頑なに思い込んでやっていました。それを思い出したのは、これまで僕がKERAさんの作品で演じてきた役は全部、そういう人物だったような気がするから。
また、田島にも共通する点だと思うんですよね。KERAさんは“自分の見ているもの以外、まったく見えなくなる人”を僕にやらせたら面白いと思ってくれてるんじゃないかな」
熟考しながらゆっくりと言葉を繰り出す朴訥さ、その不思議な魅力に引き込まれ、すでに目の前に田島が息づいているような楽しい錯覚を味わった。