指揮は広上淳一氏だった。「広上先生にはリハーサルも何度か見せていただいて、桜新町の稽古場に通ったことを覚えています。当時は大学二年生で、そのときはまさか自分が振るとは思っていなかった。読響さんとは約1年ぶりの共演になりますが、色々ディスカッションしながら、いい緊張感で作っていきたいですね。編成を刈り込んでいって、ティンパニも小さめのものを使う予定なんですよ」
ここ何年も多忙なスケジュールが続いていたが、このオペラの稽古に集中するため、一か月間全くオーケストラの本番を入れていないという。「僕が働いている名古屋フィルも神奈川フィルもシンフォニーがメインだから、オペラ指揮者として僕は全くの新参者です。最終的には家族となる歌手やスタッフも含め、皆さんと時間を重ねてひとつのものを作っていきたい。そういう作業が嫌いだったら、オペラの仕事は断わっていますよ。
僕は10年単位で自分の将来を考えるので、40歳に向けてオペラを中心的にやっていきたいというプランがあるんです」
鞄にはモーツァルト関連の書籍と、アーノンクールのテンポに関する本が入っている。高価なベーレンライター版の布カバーの楽譜も「高価だけど、一生ものだから」