とモーリスの旧友フランシス・クリック(中村亀鶴)も手を組みDNA構造の謎解きに乗り出し、研究は「競争」となっていく――。
研究に大きく貢献しながらもノーベル賞を得られなかったロザリンドを中心にした物語。けれど描かれているのは“不遇な女性研究者”ではなく、6人の科学者のやや不器用な生き方だった。科学を愛し没頭するロザリンドの頑なさや、ロザリンドと近づきたいのに自分の常識が邪魔をするモーリスの不器用さ、理解とユーモアを持ってふたりの間に立つゴスリングの柔らかさ、そしてロザリンドやモーリスの科学者以外の顔を引き出すキャスパーの真っ直ぐさ…それぞれの人物像の奥にある厚みや温度は、ひとつひとつの出来事にさまざまな側面を生み出し、ラストシーンへと繋がっていく。同様に、ロザリンドらの研究成果を横取りしようとし、悪役とも言えるポジションのワトソンとクリックが決して悪役に収まらなかったのも、ふたりのチームワークやものの考え方が丁寧に描かれ演じられているためだろう。シンプルな舞台セット、シンプルな演出の中で繰り広げられる会話劇。物語の題材が科学なので台詞の中には専門用語も多いが、だからこそなのか、登場人物たちの感情や思惑が際立ち、浮かび上がってみえてきた。