「ウェルテル」舞台稽古より撮影:寺司正彦提供:新国立劇場
3月19日に開幕する新国立劇場のマスネ《ウェルテル》は、2016年新制作で好評を博した、重厚かつ美しい舞台だ(ニコラ・ジョエル演出)。大きな話題が、目下世界中で引っ張りだこの新世代の注目テノール、サイミール・ピルグ(37)が新国立劇場に再登場、主人公ウェルテルを演じること。声でも演技でも、繊細さと情熱の両面が必要な複雑な役だ。
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「非常に難しい役です。誤解を怖れずに言えば、《愛の妙薬》や《リゴレット》あるいは《椿姫》などは、若いテノールでも歌えます。でもウェルテルは違う。喉だけで歌うのではなく、頭で歌うことも要求される役です。つまり、キャラクターをしっかりと作ることが必要。
さらに、声楽的にも非常にドラマティックでヘビーなので、十分に準備をしなければなりません」
有名な第3幕の〈オシアンの歌〉は、しばしば単独でも歌われる、聴きどころの名アリアだが、ウェルテル役にとって、より難しいのは第2幕なのだそう。「ふたつのアリアや二重唱があり、高音もあるので声もヘビーです。あの第2幕だけで、普通のオペラの全幕分に匹敵するほどです」