圓朝&志ん生落語を豊原功補が舞台化、『後家安とその妹』上演中
とはいえ、時折チャーミングな表情を覗かせることがあり、心の底から憎めない。
毎熊は、福蔵の妻・お染(広山詞葉)を手込めにした挙げ句、一緒に出奔するも吉原に売り飛ばす……といった鬼畜ぶりをてらいなくまっすぐに造形。終盤には切れ味鋭い殺陣も披露している。対する芋生は、嫁ぎ先の賢君・東城左近大夫氏勝(古山憲太郎)に讒言を繰り返して側室を放逐するなど数々の狼藉で城を傾かせるお藤を貫禄たっぷりに演じた。極悪非道な兄妹の振る舞いを受けて立つキャスト一同の、堂に入った存在感にも注目だ。
このほか、豊原の奏でるギターをバックに後家安・お藤・福蔵・お染の4人が歌声を響かせるシーンや、上下する障子や色鮮やかな照明で大名屋敷や遊郭といった劇空間を実現する木製の美術も要チェック。圓朝&志ん生の噺から飛び出してきたような残忍な兄妹と、彼らに関わった人々の悲劇を立ち上げた豊原の演出手腕も見届けてほしい。公演は6月4日(火)まで。
取材・文:岡山朋代