藤ヶ谷太輔が愛に翻弄される冷酷なプレイボーイ『ドン・ジュアン』に
けれど藤ヶ谷本人は「女性を乱雑に扱えなかった」と振り返る。「でもやらないと相手の女性もリアクションがとれないから」と、周囲と相談しながら役を作ってきた。
身勝手なドン・ジュアンの一方、同世代の男性達の誠実な生き方が対比する。ミュージカル経験の豊富なふたり……上口耕平の幅広いダンスと伸びやかな歌声、平間壮一の身体能力と安定し力強い歌が、ミュージカル初挑戦の藤ヶ谷のエネルギー溢れる個性をより立たせる。3人それぞれの“愛”の貫き方が違うのも面白い。また、ドン・ジュアンをめぐる女達……蓮佛美沙子、恒松祐里、春野寿美礼らも、確かな歌唱力と異なる個性でさまざまな愛を表現する。
そして物語を強く率いていく亡霊役の吉野圭吾。その“愛の呪い”により、ドン・ジュアンは愛に翻弄されていく……。
愛は誰かを愛しく思い、幸せに満たされるだけではない。嫉妬、不安、憎しみ、独占欲、許しなどいろんな感情が絡み合う。今まで知らなかった感情を知っていくドン・ジュアン。愛とはいったい何なのか。さまざまな愛が交差するなか、身勝手に生きてきた彼なりの、愛への答えとは……。本作は同じく生田大和演出で宝塚歌劇団でも上演されているが、さらに脚色も加わり本カンパニーならではの舞台となり、愛と生き方を問いかける。
取材/河野桃子