痛々しくも愛おしい!『かくかくしかじか』が呼び覚ます若くて自分勝手だったあの頃
親がわかってくれなくても、尊敬できなくても、親の言うことは聞けなくても、無責任な関係の保護者になら、慕ってついていこうと思えたりするものです。
東村さんにとって日高先生は、家と学校以外の居場所であり、親以外の保護者であったようです。
この作品では、自分の過去の葬り去りたい恥ずかしい思い出で読者を爆笑させつつ、自分の浅はかな態度と、今だから言える敬愛をこれでもかと描いて読者を嗚咽させます。右に左に感情を揺さぶられる名作です。
若いうちの苦労は買ってでもしろというけれど、体力がある若いうちに努力する基礎を作れたら、その後の人生どうとでもできるものです。日高先生にしごかれた人たちは、きっとどこででも生きていけるでしょう。
そして、そんなふうに愛を注いでもらった恩人にですら、若いうちは人が死ぬなんて想像もしないから、不義理ができるもんです。それを突然失って後悔するんです。
途中から物語のラストが読めてくると、笑ってばかりいられなくなって辛いです。
それにしても東村さん、美大に現役入学して、その後も描き続けたらしいので、真面目な美術系の絵がとても見たくなりました。
で、基本的にこの作品は自伝なので、萌えとかラブシーンとかはないんですが、彼氏の西村くんはかっこいいです。