恋愛なんてただの思いこみ。それでも、孤独を救うにはちょうどいいのだろうか
主人公の女性は話すことのできない彼女自身と、自分と似た存在がどこにもいない孤独な半魚人とを重ねて、彼を救えるのは私しかいないと思い込んでしまう。「話せなくて可哀想」という先入観ではなく、ありのままの自分を受け止めてくれるのは、彼しかいないとも。
この映画は「恋愛映画」というジャンルに区分されているけれど、女性が一方的に勘違いをし、その勘違いが恋愛感情に昇華されていっただけで、半魚人の彼はほとんど自ら行動を起こすようなことをしていない。ただ、自分を助けてくれた人間に心を許し、そして相手が望むままにしただけだ。
一見、2人は結ばれてハッピーエンドを迎えたように思えるかもしれないが、私にはそうは見えなかった。ただ、彼女の一方通行な想いによって、勝手に救われた気持ちになっていたように見えて、辛かった。
「恋愛感情や人を好きになる気持ちは錯覚だ」という言葉があるけれど、この映画を観ると、本当にそうなんだと思う。恋愛なんて、ただの思い込みだ。
恋に落ちてしまったという錯覚を、美しい音楽と映像でますます盛り上げてしまった。だから、あの映画は「恋愛映画」なんかじゃない。
孤独は心の中にずっと潜んでいる
そして、半魚人のような存在である彼を嫌い、殺そうとする悪役も登場してくる。