夫の浮気相手とまさかの遭遇…キャリア女性とボサボサの妻、惨めで何も言えない
沙彩が手に持っていた携帯電話のバイブが鳴る。
沙彩「あ、取引先だ…せっかくお会いできたのにすみません。宗太先輩によろしくお伝えください」
何事もなかったかのように、電話にでてさらさの横を過ぎていく。
香水の艶っぽい香りが鼻についた。
(何か言わないとっ…)
拍子抜けしても胸に消えない怒りに任せて、去っていく沙彩を目で追おうと振り返ると、
ホームによくある鏡に自分の姿が映っていた。
眉がまだらのすっぴん、髪はプリン状態、スニーカーにジーンズ。
自分と目が合い、急に恥ずかしくなった。
(今の私の姿で…きれいにしてる沙彩に何か言うのって恥ずかしい)
目をそらし、唇をかみしめた。
キーンという音とともに、乗る予定の電車がくる。何も考えず、吸い込まれるように乗った。
抱っこ紐をぽんぽんとしながら、流れる車窓を見る。
(何もかもが嫌かも)
涙をこらえるのに必死だった。
(もう本当にいや…どうにかしたい…)
そして……
気が付くと、実家そばの区役所に立ち寄っていた。
(離婚届けって婚姻届けの隣にあるんだ)
さらさ「すみません…」
戸籍窓口で、感じの良さそうな職員さんに話しかける。