恋愛情報『【小説】ひと夏の恋、永遠の恋。/恋愛部長』

2019年5月24日 21:00

【小説】ひと夏の恋、永遠の恋。/恋愛部長

そして、マサシは、いい聞き役でもあった。

和紗の話す話を静かに聞いて、うなずき、必要な時だけボソッと意見を言った。「もう敬語とかわからなくなってんだ」という言葉通り、マサシは、つねにぶっきらぼうな口調ではあったけれど、相手の話をちゃんと聞いて、しっかり考えて答えてくれるところには、生来の几帳面さが窺えた。

マサシと話していると、自分の言葉が、深い湖の中にポーンと投げ込まれ、波紋を広げながら深く沈んでいくような気がした。そこには、全面的に肯定して受け止めてもらえている、という安心感があった。

初めて会うのに、懐かしく、触れ合っていなくても、相手の体温をつねに生々しく感じた。

初めてキスをしたのは、マサシのほうからだった。

「また明日」と和紗が言い、名残惜しそうに見上げると、マサシの目が唐突にうるんで、サッと抱き寄せられた。
そして、顎を片手でとらえると、まるで騎士がするような完璧な仕草で、斜めに和紗の唇にキスをした。

抗えるわけはなかった。

遠くに、村で奏でられるバイオリンやオルガンの音が聞こえた。

マサシの唇は、深い夜の匂いがした。

一度触れ合ってしまえば、もう歯止めは利かないだろう。

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