恋愛情報『【小説】ひと夏の恋、永遠の恋。/恋愛部長』

2019年5月24日 21:00

【小説】ひと夏の恋、永遠の恋。/恋愛部長

男はじろりと、和紗を見る。

「あんたのおごりか?」

和紗は、あわててポシェットを引っ張り出す。

「はい!おごりで。1杯だけですが!」

男は、それを見てふわっと、氷が解けるように笑った。心の底からの笑顔というのは、まるでその人の中を覗き込んでしまうような錯覚を覚える。あ、・・・・・・と思った。

この感覚は、確かに覚えがある。

「いいよ。
1杯奢ってもらおう」
男は目の前の椅子に座り、メニューをさっと見ると、店員に合図を送り、流ちょうなフランス語で白ワインを注文した。

「座れよ。いつまで突っ立ってるんだ?」

和紗は、痛いほど音を立てる自分の心臓の音を聞いていた。

そうだ、これは、きっと、恋だ。

和紗は、出会った瞬間から、マサシに恋に落ちていたのだった。

マサシと出会って、その夏の色合いはすべてがらりと変わってしまった。

こんなに、すべての景色が輝き出して、色彩が鮮やかに浮き立ってくるとは思わなかった。もともと素晴らしいと思っていた南仏プロヴァンスの風景が、急速に現実のものとして自分を取り込んでいくのを感じた。


■オレンジ色の夢

オレンジ色の夢


マサシは、マルセイユの港で働いているエンジニアで、たまたま休日に友人に会いにアルルの町を訪れていたのだった。

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