恋愛情報『【小説】ひと夏の恋、永遠の恋。/恋愛部長』

2019年5月24日 21:00

【小説】ひと夏の恋、永遠の恋。/恋愛部長

たとえば、ホテルの小さな木製のベッドでマサシとともに目覚めた時、そのベッドに敷きつめられた真っ白なシーツの色。ほのかに香るラヴェンダーの香り。それは、まるで昨日のような生々しさをつねにまとっていて、和紗の心を締め付けるのだ。

マサシと過ごした夏の日々は、夢の中のできごとのように過ぎて行った。

毎日が愛おしく、毎日が文字通り、太陽の光の中で輝いていた。自転車を借りてサイクリングして廻った美術館。岬から見た深い深い海の色。花が所狭しと咲き乱れる小さな城塞の街の路地に落ちる濃い日陰。


視界の先にはマサシがいて、手をのばせば、その太い腕に、日に焼けた茶色い髪に触れることができた。2人で野原にひっくりかえり、お互いの身体の上に自分の一部を重ねて、ただ日の光を浴びるだけの午後もあった。

黙っていても、マサシの胸の鼓動が手のひらの内側に感じられて、いつまでもそうしていたいと思った。

時にワインを傾け、夜が更けるまで様々な話をしたけれど、なぜか2人とも、パリとマルセイユに戻ってからの話は触れなかった。それはお互いに暗黙の了解のようなものだった。本当は、聞きたかった。また、会えるのか?いつか、またともに日々を過ごせるのか?

でも、あまりに毎日が明るく輝いていて、聞きたい言葉は最後まで飲みこまれたままだった。

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