家での遊びの環境について考えてみる知的障害を伴う自閉スペクトラム症のあるわが家の次男Pは、遊ぶおもちゃを机の上や床にばらまいてしまい、片づけてもすぐに部屋がぐちゃぐちゃになるので、私はイライラしていました。そんなイライラを解消する方法はないか?と、遊びの環境を整えることについて考えてみました。たとえば療育を受けているときは、おもちゃを子どもの見える範囲や手の届く範囲にはあまり置いておらず、遊びの種類や順番を決めて片づけたら次のおもちゃを出すなどの工夫がされていました。でも家でとなると家事もあるので四六時中子どもにかまっているわけにもいかないし、手の届かない場所や隠せる場所も限られるので、おもちゃを隠していてもいつの間にか見つかってしまい、気づけばまた元通りなんてことの繰り返しでした。Upload By みんおもちゃを隠しても減らしても効果的ではなかった物理的に数を減らすにも、同じものにこだわりの強いPは「あのおもちゃはどこへ行った?」とパニックになってしまうのでなかなか減らすこともできず、減らすとしたら「このおもちゃでは長らく遊んでいないな」と思う物を厳選して隠し、すぐには処分せずに数ヶ月間様子をみて、Pが完全に忘れたであろうころに処分するようにしています。そうやって数を減らしても、まだまだたくさんあるし新たに買ったりもするので、やはり部屋は散らかってしまいます。たとえばPは色鉛筆を使って絵を描くことが好きなのですが、1本使ったら1本戻してから新たな色を使うということが難しく、色鉛筆を全てケースから出して机の上にばら撒いて使っていました。私は色鉛筆を片づけても片づけても出されてしまうのが大変なので、色鉛筆をケースから、ペンたてに入れてしまおうと考えました。ペンたてに入れるようになってからは前より少し片づけやすくはなったのですが、全ての色鉛筆を机の上に出してしまうのは相変わらずだったので、やはり大変なままでした。机の上に散らばった色鉛筆を見ながらどうすればこのイライラから解放されるのか?と考えたときに、この状態でも散らかっていないように感じられるようにすればよいことを思いつき、ペンたてを違うものに変えてみよう!と思い浅く広めのトレイを準備しました。すると予感は的中!トレイに色鉛筆を入れてからは、全ての色鉛筆を机の上に出してしまうことはなくなり、机の上は散らかさないようになりました。Upload By みん散らかしてしまう原因を想像して対応するこれは効果的だと思った私は、いつも床に散らばっているおもちゃも同じようにすれば良いのでは?と考え、浅い大きめのバットをおもちゃ箱に変更しました。最初はおもちゃを全て出してしまおうとしていましたが、日に日に床に散らばるおもちゃの数は減り、今では自分の必要なおもちゃだけをバットから選んで取って遊ぶようになりました。色鉛筆もおもちゃも、浅いバットやトレイに入れることで、中に何が入っているのか探しやすくなったのがポイントだと思います。今までは、自分が使いたい色の色鉛筆がどこにあるのか分かりにくかったり、自分が遊びたいおもちゃがおもちゃ箱のどこにあるかが分かりにくかったりしたので、Pは全て箱から出して目的のものを探すという行動をとっていたのだと思います。でも少しの工夫で視覚的に探しやすくしてあげたことで、私もイライラから解放されました。このような工夫をしなくてもむやみに散らかさず、使ったら自分で片づけられるようになることがもちろん1番なのですが、そんな成長をゆっくり待つためにも、できる限り生活環境を整えながら過ごしていきたいと思います。Upload By みん執筆/みん(監修:新美先生より)片づけについて、Pくんにあったやり方を模索している様子を聞かせてくださりありがとうございます。片づけの方法は世の中にいろいろありますが、人によって合う合わないがあります。また親子・きょうだい・夫婦でも、人によって片づけ法の合う合わないが違っていることもあり、その場合はお互いにストレスがたまったりするものです。お互い許容範囲を広げて妥協するしかないですね。Pくんの場合は、箱の中にしまってしまうと見えなくて分からなくていやだということに気づいたところはさすがと思いました。ざっくり、物が見えるけど、散らばりすぎないという、大きめバットのやり方、家でも取り入れてみたいです。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年06月12日自閉スペクトラム症(ASD)とは?治療方法はある?自閉スペクトラム症(ASD)は、「対人関係や社会的コミュニケーションの困難」と「特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」などの特性が幼少期から見られ、日常生活に困難を生じる発達障害の一つです。知的障害(知的発達症)を伴うこともあり、幼少期に気づかれることが多いと言われています。自閉スペクトラム症の症状は3歳くらいまでにあらわれることが多いと言われています。主に他者との社会的関係形成に困難さがあったり、言葉や発達の遅れ、興味・関心が狭く特定のものにこだわりがある、などが特徴です。知的障害を伴わない場合は、幼児期に気づかれず、成人期に症状が顕在化することもあります。自閉スペクトラム症自体の原因を治療することはまだ不可能と言われています。ですが、早期から療育や環境調整を通して接し方を工夫することで、日常生活における本人の困りごとの解消につながります。癇癪、衝動性、こだわりなど個別の症状に対しては、まずは一人ひとりに合った環境づくりを行います。早期から「児童発達支援」や「放課後等デイサービス」などの発達支援施設で療育的支援や適切な教育を行ったり、苦手なことに対する対応方法を工夫していくなどの特性に合わせたサポートで子どもが自分らしく成長していけるように環境を整えていくことが重要です。投薬については、自閉スペクトラム症そのものを治す薬はありませんが、ある一定年齢以上であれば、自閉スペクトラム症(ASD)の特性によって起きることが多い、癇癪、衝動性、こだわり、睡眠障害など、社会生活を送るうえで困難を感じる症状に対して、薬が処方される場合もあります。自閉スペクトラム症(ASD)ほか、神経発達症(発達障害)に処方されるのはどのような薬?自閉スペクトラム症(ASD)をはじめとした神経発達症(発達障害)による症状によって困難さがある場合に処方される薬を解説していきます。中枢神経刺激薬は中枢神経系に作用してその機能を活発化させ、非中枢神経刺激薬は主に前頭前野に働きかけ神経伝達物質の働きを強めます。多動性・衝動性や不注意に作用します。・代表的な薬例:中枢神経刺激薬/コンサータ、ビバンセ非中枢神経刺激薬/インチュニブ、アトモキセチン(ストラテラ)抗精神病薬は脳内のドパミン神経系の活動を抑えることにより症状を改善していく作用があります。定型抗精神病薬(従来型)と非定型抗精神病薬(新規)に分かれており、定型抗精神病薬は陽性症状に作用しますが、非定型抗精神病薬は陽性症状と陰性症状の両方に効果があると言われています。・代表的な薬例:定型抗精神病薬/ハロペリドール、クロールプロマジン、ピモジド非定型抗精神病薬/リスパダール、アリピプラゾール(エビリファイ)、オランザピンなど抗不安薬は感情と関係する脳の動きなどを抑えることで不安、緊張、不眠などを改善し、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は脳内で神経伝達物質セロトニンの再取り込みを阻害しセロトニンの働きが増強されることで抑うつなど気持ちの落ち込みやイライラなどに作用します。・代表的な薬例:SSRI/フルボキサミン・エスシタロプラムなど抗てんかん薬は、脳内の興奮系物質の働きを抑える、抑制系物質の働きを強めるなどの作用機序があります。また、その2つとは違う新しい作用をもつ抗てんかん薬などもあります。・代表的な薬例:ダイアップ、バルブロ酸ナトリウム、トピラマートなど子どもの自閉スペクトラム症(ASD)の代表薬・衝動性や癇癪を抑える「リスパダール」「アリピプラゾール(エビリファイ)」子どもの自閉スペクトラム症の易刺激性による癇癪や他害などを抑える代表的な薬として「リスパダール」「アリピプラゾール(エビリファイ)」があります。リスパダールは、リスペリドン主成分からできている抗精神病薬で、自閉スペクトラム症がある子どもや統合失調症がある人などに処方されます。自閉スペクトラム症の症状のひとつの易刺激性(不機嫌、無視、怒りっぽさ、癇癪、泣き叫ぶ、暴力や暴言、器物破損、抑うつ気分、気分の変わりやすさ、自傷などの行動を起こしやすいなどの症状)を抑える作用があります。副作用として主に眠気や食欲増多などがあります。アリピプラゾール(エビリファイ)もリスパダール同様に、易刺激性をやわらげる抗精神病薬です。ドパミン神経系を安定させる効果があり、躁状態およびうつ状態への効果が期待されています。副作用として主に眠気や食欲増多などがあります。アリピプラゾール(エビリファイ)とリスパダールは、どちらも易刺激性をやわらげる薬ですが、働きかける脳内の伝達物質が異なります。アリピプラゾール(エビリファイ)がドパミン神経系を安定させるのに対して、リスパダールはドパミンとセロトニンの両方に働きかけることで、ドパミン神経系に作用し、陽性症状、陰性症状両方の状態を抑えます。リスパダールは、原則として5歳以上18歳未満、アリピプラゾール(エビリファイ)は6歳以上18歳未満の子どもに使うことができます。また、子どもの体重に合わせて用法用量が定められています。神経発達症(発達障害)のある子どもの不眠に「メラトベル」「ラメルテオン(ロゼレム)」自閉スペクトラム症のある人に多くみられる睡眠の悩み。睡眠障害に対しては、子どもの不眠に処方される「メラトベル」と大人の不眠に処方される「ラメルテオン(ロゼレム)」などがあります。メラトベルは、神経発達症(主に自閉スペクトラム症)から起こる睡眠障害(寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚めてしまうなど)に処方されます。6歳から15歳までの神経発達症(主に自閉スペクトラム症)のある子どもに対して処方され、就寝前(寝たい時間の直前)に服用をします。ラメルテオン(ロゼレム)も睡眠障害に処方される薬です。メラトベルが小児も使えるのに対して、ラメルテオン(ロゼレム)は成人に処方されます。(※監修注:15歳から処方は可能だが、18歳より処方するのが望ましい)就寝前(寝たい時間の直前)に服用をします。関連リンク・その他、発達障害のときに処方される薬って?コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年06月11日不器用すぎる子どもを支えるヒント ーー『DCD 発達性協調運動障害』DCD(発達性協調運動障害)とは、極端に不器用で、日常生活においてさまざまな困難さがある発達障害の一つです。協調運動の不具合で起きますが、診断がつかずに学童期を迎えることも多く、周囲から理解されず、大人になってからも困難さを抱えるケースも少なくありません。転びやすい、着替えができない、なわとびが飛べない、自転車に乗れない…。極端に不器用な子どもたちには、DCD(発達性協調運動障害)があるのかもしれません。しかし、DCDの理解不足から、学校や家庭で叱られたり、自尊心を傷つけられることもあります。本書は、小児精神医学、小児神経学、てんかん学などを専門とし、人間科学部の教授であり小児精神科医でもある著者の古荘純一先生が執筆しました。DCDの認識を広め、当事者が臆することなくスポーツを楽しめたり、充実した学校生活を送るなど、社会活動に参加できる支援の輪が広がるようにという願いが込められています。本書では、DCDの症状とそれに伴う社会生活での困難さの解説と合わせて、幼児期・児童期・中学高校の学生生活、大人になってからの就労や家事など、年齢ごとの実例を多く取り入れながら、本人や家族が抱える困難さの現状、支援方法やアドバイスが紹介されています。また、当事者や保護者、学校関係者、医療などの支援者に向けて、それぞれの立場で注意しなければならないことや心構えについても記されています。子ども自身が楽しく読めるーーー『マンガでわかる子どもの困りごと攻略ブック: できない・やめられないが多い子がわかる解決法』本書は、『生きづらいと思ったら親子で発達障害でした』の著者である漫画家のモンズースーさんが執筆し、40年以上にわたり行動やコミュニケーションなど困難がある子どもたちの診療にあたってきた医師の平岩幹男先生が監修した、困りごとのある子どものためのマンガです。発達障害がある子どもには、話をすることや聞くことが苦手、気持ちをおさえられない、忘れ物が多い、読み書きが苦手、ゲームがやめられないなど、「やる気はあるのにできない」「悪気はないのにやめられない」など多くの困りごとがあります。その「なんで?」や「どうしたらいいの?」を、子どもが自分で読めるように、マンガで分かりやすく解説しています。文中には、子どもたちの好きそうなキャラクターたちが登場し、「障害」という言葉や医療用語などを使わず、分かりやすい言葉で困りごとの解決方法をアドバイスします。また、漢字にはふりがながついているので小学生の低学年でも、楽しく読みながら理解ができるように工夫されています。子どものために書かれた本書を読むことで、子ども自身がこれまで言葉にできなかった困りごとを本を通じて知ることができ、そして「友だちより苦手なことは工夫でうまくいく」と、感じることができるかもしれません。お子さんの手にとりやすい場所に置くことはもちろん、親子で一緒に読み、わが子の困りごとや不安や苛立ちなどを知る手だてとしても活躍する本ではないでしょうか。子どもと大人の「困った」を軽くするヒントが満載!ーー『特別支援教育が教えてくれた発達が気になる子の育て方』Twitterフォロワー数7万人、特別支援学校の現役教員である平熱先生が著した本書は、発達につまずきのある子どもと、そのまわりにいる大人のために、特別支援教育をベースにして「困った!」を小さくするヒントがまとめられている一冊です。「特別支援教育は、全人類に有効です」という言葉から始まる本書。序章では、特別支援教育が子育てに有効な理由を記し、第1章は子どもの自立について、第2章では大人も子どももしんどくならないサポートのポイント、第3章では日常の「困った」を小さくするポイントをさまざまなシーンを想定し、そのアプローチについて細やかに紹介されています。発達が気になる子どもとの関わり方、向き合い方、考え方などが、平熱先生ならではの「むつかしい話や、きれいごとは一切なし」で、ユーモアを交えながら著された本書。将来、子どもたちが自分らしく生きていくために、まわりにいる大人たちが今できるサポートや知るべきことが優しく詰めこまれています。『すきまから見る「不登校」への思いこみをほぐす』本書は、中学校教員などを経て、不登校の児童・生徒が通う「適応指導教室(現、教育支援センター)」で教育相談員として20年以上勤務し、教育と心理学の間を行き来しながら、「子どもの成長力を引き出すための教育支援センターの改革」を目指してきた公認心理士の林千恵子先生が、不登校の子どもたちの声と自身の不登校支援の経験をまとめた一冊です。本書では、不登校の子どもたちが実際に書いた作文を用いながら、一人ひとりの苦しみや成長の物語が描かれています。不登校の状況の中で考え続けた子どもたちの作文は、読む人の心に強く訴えかけます。物語では、厳しい自己対話や他者との関わりの中で、悩みながら成長していく子どもたちの姿と共に、失敗してはへこむ著者の林先生自身がたびたび登場します。林先生が、子どもたちと日々向き合い、育て、育てられてきた20年以上におよぶ現場経験の中で見つけた、「不登校の子どもの本音」や、「関わり方」が余すところなく記された本書。「不登校という心の傷と、どう向き合えば子どもが育つのか」、その答えを見つけるための一助となるのではないでしょうか。内的感覚の理解と治療意欲を支えるーー『チック・トゥレット症の子どもたち』チック・トゥレット症は、「ムズムズする」といった内的感覚を強く伴う疾患で、発症のメカニズムの解明も対処法も非常にむずかしい疾患です。本書には、著者である小児科医師の星野恭子先生が、20年の臨床の中で理解したことや実際に行っている治療方法、国内外の最新鋭の研究を踏まえて、チック・トゥレット症の当事者や家族、支援者にぜひ知っておいて欲しいことが盛り込まれています。日本での有症率は、子どものチック症は5〜24%、成人のトゥレット症は1000人に0.1〜0.5人と、5人に1人の小児に何らかのチックの症状があると言われています。チック症の症状や合併症、検査方法に加え、幼児期、小学生、中学生、高校生と年齢に応じた治療方法についても記されています。また、支援者や保護者に向けた望ましい対応方法や、青年期を迎えた当事者の就労や福祉制度についてまで幅広く紹介されています。本書は、チック・トゥレット症の当事者や家族が抱える日々の大変さを理解すると共に、「治したい」という気持ちに寄り添う一冊となっています。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年06月11日染色体異常症とは?症状や原因を解説染色体は細胞の核の中に存在し、細胞分裂のときに紐のような形で現れます。染色体の中には、身体をつくる設計図といえる遺伝子(DNAからなる)が入っており、1つの細胞が持つ染色体の数は、生物の種類よって違います。人間の場合は22対の常染色体と1対の性染色体の、合わせて46本。1本ずつに多くの情報を持った染色体が細胞分裂の前に複製され、2つに分かれた細胞それぞれに同じ設計図の情報を伝えます。その染色体に起こる異常(=染色体異常症)は、すべての染色体で起こる可能性があります。・数の異常による染色体異常…通常は2本で1組になっている染色体の数が増減する・構造の異常による染色体異常…染色体の一部が欠けるなど、構造に関する異常などの要素によって染色体異常が引き起こされます。要するに、染色体の数や構造が本来のものとは異なり、何らかの異常(症状)が生じている状態を染色体異常症といいます。染色体異常症が染色体の数や構造に変化が起こるものを指すのに対して、遺伝子異常症(遺伝子疾患)は遺伝子の異常が原因でなんらかの病気につながるものを指します。遺伝子は染色体の中にあるのですが、染色体異常症と遺伝子異常症とは互いに異なる疾患概念といえます。染色体異常症は、体の成長や発達の遅れ、いろいろな臓器・器官の構造・機能の異常など、さまざまな症状を持つことが多いです。Upload By 発達障害のキホン染色体異常症の考えられる原因としては、前述した「染色体の数」と「染色体の構造」の二つの要素があります。詳しく解説していきます。・数の異常による染色体異常人間の精子と卵子は細胞分裂し、受精すると父親由来の23本と母親由来の23本が合わさって46本の染色体に戻り、子どもに受け継がれていきます。その過程でいずれかの染色体がうまく分離せず2本とも精子もしくは卵子に入ってしまい、異常な精子や卵子ができることがあります(染色体不分離)。そのような異常な精子や卵子が、正常な精子や卵子と受精すると、1+2本でいずれかの染色体を3本持つ受精卵ができます(「トリソミー」と呼ぶ)。その反対で、染色体が1本もない異常な精子や卵子が、正常な精子や卵子と受精すると、染色体が1本しかない受精卵ができます(「モノソミー」と呼ぶ)。Upload By 発達障害のキホン・構造異常による染色体異常染色体の一部が欠けている「欠失」、染色体の一部が重なってしまう「重複」、染色体の一部の位置が入れ替わってしまう「相互転座」などが主な構造異常のパターンです。Upload By 発達障害のキホン染色体の構造異常が起こる原因として、主に1.精子や卵子、受精卵が発生していく過程で新しくできる場合2.両親が持つ構造異常が遺伝する場合の2つが考えられています。では、こうした染色体の異常はなぜ起きるのでしょうか?染色体は確かに両親から受け継ぐものですが、必ずしも遺伝によるものではありません。両親の染色体が正常でも、卵子や精子が形成される、また受精卵が形成される過程の中で突然変異が生じ、染色体異常が起こることがしばしばあります。おおもとの染色体異常を両親のいずれかから引き継いでいる場合もありますが、たまたま変化が起こるケースが多いようです。染色体異常症と遺伝子疾患の概要|MSD マニュアル染色体異常の原因として、「数的異常」と「構造異常」があると述べましたが、染色体は「常染色体」と「性染色体」の2種類に分けられ、それぞれの染色体異常にも違いや特徴があります。・常染色体異常症常染色体とは、細胞内にある染色体のうち、性(男・女)に関係なく共通している染色体のこと。人間の体細胞は22対、44本の常染色体を持ちます。本数や一部領域の増減により、トリソミー(重複)やモノソミー(欠失)を引き起こします。常染色体異常は、それぞれ特徴的症状を持ちますが、一方成長と発達の遅れ、さまざまな疾患や合併症を持ちやすいことなどは常染色体異常症としての共通点といえます。・性染色体異常症X染色体とY染色体は性染色体といい、生物学的な性別によって構成が違います。女性はXX, 男性はXYです。XやYが1本多い、少ない、あるいは欠損しているなどが原因で起こるのが性染色体異常です。ターナー症候群(X染色体が1本のみ)、クラインフェルター症候群(XXY)などがあります。常染色体異常ほど重篤な疾患や合併症を有するケースは少なく、通常の学校生活や社会生活を送っている人も多くみられます。さらに細かくみていくと、常染色体異常には以下の種類(原因)があります。数の異常(1)異数性異常と異数体…染色体の数が通常2本のところ、3本や1本になる異常を異数性異常といい、結果として染色体総数として正常と異なった状態を異数体といいます。(2)三倍体、四倍体…正常な体細胞は二倍体だが、三倍体はそれぞれの染色体が3本あって全体で69本、四倍体は同じ状態で全体で92本となる。これらの倍数性の異常は症状が重く出生に至ることが難しいために、通常は胎児期に認められる染色体異常症です。構造異常(1)欠失…染色体の切断による端部あるいは中間部の染色体の部分的消失。(2)環状染色体…1本の染色体の短腕と長腕の2か所が切断され、切断端が結合してリングを形成したもの。短腕と長腕の切断端から先の部分欠失を伴う。(3)重複…染色体の特定部分が 二重以上になっている状態。同じ部分の欠失と比較すると軽症の傾向がある。(4)逆位…同一染色体内での2ヶ所の切断で生じた間の部分が逆向きに再結合することで生じる。(5)挿入…染色体の一部領域が別の染色体部位に挿入される。(6)同腕染色体…1本の染色体の両腕ともが短腕あるいは長腕のみで形成された染色体。(7)相互転座…2種類の染色体部分が互いに入れ替わること。(8)二動原体染色体…2つの動原体(染色体の紡錘糸付着点)を持つ構造異常染色体。染色体の構造の異常|Chromosomal structural changes (kyoto-u.ac.jp)染色体異常症があると、成長、発達、体の病気などのさまざまな症状が現れます。このような症状が複数あてはまる場合には、染色体異常症を考えるきっかけとなります。代表的な染色体異常症について、その症状や特徴を紹介します。・21トリソミー(ダウン症候群)21番染色体が3本存在するトリソミーの染色体異常です。筋肉の緊張度が低く、知的な発達に遅れがあります。心疾患などを伴うことも多いですが、医療や療育の進歩で最近ではほとんどの人が学校生活や社会生活を送っています。・13トリソミー症候群(パトウ症候群)パドウ症候群とも言われ、13番染色体が3本存在するトリソミーの染色体異常です。寿命は数ヶ月と言われていましたが、医学の発達に伴い、近年は数年を超えて長期の生存者もいます。小頭症、口唇口蓋裂などを伴うことが多く、さまざまな疾患・合併症があります。・18トリソミー症候群(エドワーズ症候群)エドワーズ症候群とも言われ、18番染色体が3本存在するトリソミーの染色体異常です。寿命は一般的に数ヶ月とされていましたが、数年を超えて長期の生存者もいます。成長障害、心疾患を伴うことが多く、そのほか、さまざまな疾患・合併症があります。・ターナー症候群女性のみにみられる染色体異常症。2本のX染色体のうち1本の全体または一部(短腕)が欠失することで起こります。低身長、二次性徴が現れないことが多く、首から肩にかける皮膚にたるみがあるなどの身体的な特徴があります。知的に正常な人が多いですが、一部知的障害を伴う場合もあります。・クラインフェルター症候群男性のみにみられる染色体異常症で、性染色体にX染色体が一つ多いXXYの状態で生まれ、おもに思春期に症状が現れるとされています。高身長、手足が長いなどの身体的特徴、また男性としての二次性徴に乏しく、無精子症や乏精子症などの症状もあります。生涯診断されることなく通常の社会生活を送っている人も多くいます。・5pモノソミー症候群5番染色体の短腕の一部が失われることによる染色体異常症です(”p“は短腕を示す言葉です)。低出生体重児として産まれることが多く、頭が小さい、耳の位置が低いなどの身体的特徴があります。泣き声が甲高いことも特徴です。運動面の発達の遅れ、精神発達遅滞、側湾などがあります。以上挙げた染色体異常症の中で、5pモノソミー症候群のみ構造異常、そのほかはすべて数的異常です。医学や技術は発展し、2021年には精密な染色体検査法であるマイクロアレイ染色体検査が保険収載されました。以前は原因不明だった微細な染色体異常(ゲノムコピー数変化)による病気も次々に明らかになってきています。そして従来の染色体検査で分かる構造異常の精密な診断も可能になっています。これらの検査の発展によって染色体異常の診断制度は向上してきています。参考:5p-症候群の子を持つ家族の会 カモミールの会参考:国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP)参考:ターナー症候群|日本内分泌学会染色体異常症の検査、予防、遺伝について染色体異常症を調べるにはどのような検査があるのでしょうか。最近では、妊婦の血液サンプルを分析して、胎児に特定の染色体異常がないかを判定するスクリーニング検査が開発されています。・母体血清マーカー検査…妊婦の血中の成分を調べ、ダウン症候群、18トリソミー症候群、ならびに開放性神経管閉鎖不全の確率を予測するスクリーニング検査。少量の血液を採取し、妊娠15~20週に行うことができ、10日ほどで結果が出る。・コンバインド検査…コンバインドは「組み合わせ」という意味。超音波検査と母体血清マーカー検査を組み合わせて行う。単体の検査よりも高い精度が期待できる。妊娠11週~13週に行うことができる。対象はダウン症候群、18トリソミー症候群、13トリソミー症候群。・新型出生前診断(NIPT)、セルフリー胎児DNA検査…妊婦の血液中にある胎児由来のDNA断片を調べ、そこからダウン症候群、18トリソミー症候群、13トリソミー症候群の可能性を判断する。妊娠9~10週目以降から受けることができる。これらの検査を行うことで、胎児が上記のトリソミーをもつ可能性が確率として示されますが、確実に診断するためには以下の検査が必要になります。・羊水穿刺(羊水検査)…細い穿刺針を用いて羊水を吸引し、羊水中の胎児細胞を用いて検査する。妊娠15週以降で実施可能。※検査の際に穿刺をすることにより、およそ 1/300~1/500 の確率で流産に至るリスクがあります。・絨毛採取…絨毛は妊娠早期の胎盤の一部で、それを採取して行う検査。羊水検査に比べてより早く、妊娠11~14週で実施可能。※検査の際に穿刺をすることにより、およそ 1/100の確率で流産に至るリスクがあります。参照:NIPT 等の出生前検査に関する専門委員会報告書|厚生労働省「これをすれば胎児の染色体異常症は予防できる」というはっきりした予防策は今現在ありません。出生後、赤ちゃんの身体的外見や特徴などから、染色体異常症を示唆する特徴的な所見が認められた場合、血液を用いた染色体検査を行って診断を確定させます。診断確定後に染色体異常症に伴う病状や合併症の可能性を考慮し、心臓や腎臓のエコー検査、眼科・耳鼻科(聴覚)評価など、さまざまな必要な検査を行います。染色体異常症は、卵子や精子が形成される、また受精卵が形成される過程の中で、親からの遺伝ではなく偶発的に起こるケースが多いです。しかし、染色体異常の中でも「構造異常」の場合、父母のいずれかが保因者であるケースもあり、その場合子どもに遺伝する可能性があります。保因者とは、症状は出ていなくとも、染色体の構造異常がある人です。均衡がとれた構造異常の場合には通常症状はなく、このような染色体均衡型構造異常の保因者は数百人に一人の割合でいると考えられています(ほとんどの人は自分が保因者であることを知りません)。親の保因者検査や次子への遺伝(不均衡タイプの染色体構造異常)の可能性、また出生前検査に関してなどの相談の希望があれば、遺伝カウンセリングを受けることが可能です。まとめ染色体異常症には数的異常、構造異常、常染色体異常、性染色体異常など、さまざまな種類があります。また、親から遺伝する場合もありますが、多くは遺伝に関係なく突然に起きることが多いようです。遺伝カウンセリングなどで、染色体異常症の出生前検査方法や診断方法、染色体異常症があった場合どうするかについてなど、さまざまな相談をすることができます。
2023年06月10日公立中学の特別支援学級に進学。新生活、意外と大丈夫だったかも?ゆいが進学したのは地元の公立中学校です。小学校時代と顔ぶれはあまり変わらないのですが、それでも環境は大きく変わります。ゆいがストレスを強く感じて疲れてしまうのではないかと私は少し心配でした。入学前には通学路を確認したり、少しでもゆいの不安が軽減される工夫もしたりしました。ところが、意外なことに新生活が楽しかったようなのです。入学式の後、興奮気味に新しいクラスのことや先生のことなどを話してくれました。今のところ人間関係については特に困りごとはなく、毎朝元気に登校しています。多分、同じクラスに仲の良い子がいたことが安心材料になったのだと思います。その後も仲良しの友達経由でまた新しく友達ができているらしく、ひと安心しました。ときどき自宅にも友達を呼んで楽しくおしゃべりしているのを見ると、友達関係は今のところ上手くいっているのかなと思っています。でも、心配になることは、実はほかのところにありました。Upload By 吉田いらこ入学早々クラスのSNSグループチャットができ上がる中学の入学式でクラス発表がされた日、クラスのSNSグループが立ち上がりました。ゆいが通う中学校の生徒のスマートフォン所持率は9割を超えているそうです。ゆいも持っているので友達経由で招待してもらい、クラスのSNSグループに入りました。(私が中学生のころはまだ子どもが携帯電話をもつ時代ではなかったのでいろいろと衝撃ですが、親も時代に慣れていかないとと思っています…。)Upload By 吉田いらこクラスのSNSグループチャットは参加人数が多いのでタイムラインがものすごい速度で流れていて、朝起きるとトークの通知の数が大変なことになっています。タイムラインでは誰かが勉強の分からないことを相談したり、他愛もないことで笑いあったりしていて、ゆいもたまにスタンプを押したりしているようです。中学生がチャットツールを使うことに賛否はあると思います。けれど、場面寡黙の診断があるゆいは他人と対面して会話をすることが苦手なので、このような顔を見ずにできるコミュニケーションの方が話しやすいのでは、と思っています。Upload By 吉田いらここのまま楽しく便利に利用できていればよいのですが、今後なにかトラブルが起きるのでは…と保護者としては心配しています。ただ、こういった通信モノは大人になると必ず使うことになる可能性が高いので、今のうちにトラブルを「少しだけ」経験して勉強することも必要かも…と思うところもあり、これから慎重に様子を見ていきたいと考えています。執筆/吉田いらこ(監修:鈴木先生より)クラスでのSNSグループチャットは、まだ中学生のお子さんだとちょっとした言葉でも傷つくことも出てきやすいので、仲のいいお子さん同士ならいいにしても、クラス全員でとなると保護者の方の不安もあることでしょう。個人的にはクラスのSNSグループチャットは保護者同士に限るようにした方がいいのではないかと思ってはいますが、子ども同士が使う場合には、個人攻撃をしない、担任の先生がチェックするなど一定のルールをつくってから始められるといいですね。ほかにも、クラス全員という大きなグループではなく、クラス内の班ごとなど少人数に分けてやる方法もあるかと思います。スマートフォンをお子さんに渡すときに使い方や時間のルールを各ご家庭で決めることと同様に、クラスのSNSグループチャットにもルールづくりが大切なのではないでしょうか。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年06月09日旅行計画は何度もシミューレション!ASDのミミを連れて「忍者を知る旅」へ自閉スペクトラム症(ASD)のある小3のミミが、忍者のゲームにハマりました。それならばと思った私たちは、春休みに「忍者を知る旅」と銘打って滋賀県と三重県に旅へ行くことにしました。旅行は3ヶ月前から計画して、何度も何度もシミュレーションをしました。車の免許を持っていない夫、ペーパードライバーの私は、電車とタクシーを使って移動することに決定。電車があっても1時間に1本しかない区間だったり、タクシーの配車アプリが対象地域外という場所もありましたが、繰り返し調べて、ミミが安心できるよう、当日ミスがないようにと、無理のない計画を立てました。酔い止めを持ってくるべきだった!乗り物が苦手なミミはぐったり…。そしていよいよきた旅行当日、朝の5時台に出発しました。乗り物が苦手なミミは、新幹線に乗って30分もしないうちにぐったり。デッキに出たり、椅子に横になったりしましたがつらそうでした。心配した乗務員さんが「薬を飲みますか?」と声をかけてくれましたが、あと15分で到着するところだったのでもらいませんでした。今思い返すと、このあとの移動のためにもらっておけばよかったと思います…。新幹線から降り在来線に乗り換えると、停まる駅も増え、そのたびにドアが開くため、空気の入れ替えにもなるからか少し持ち直してくれたミミ。そしていよいよ最初の目的地に到着です。Upload By taeko忍者体験ができるアミューズメントパークに到着したミミ。楽しんでくれるかと思いきや、ミミは忍者の体験はしようとはせず、お土産にヌンチャクを買い、忍者屋敷の説明を聞いて隠し扉を通り抜ける程度でした。でも、これも予想の範囲内です。30分ほどの滞在で次の目的地へタクシーで向かいました。送迎してくれたのは、外国人スタッフの方。私が「どこの国からいらっしゃったんですか?」と日本語で聞くと、オーストラリアから来たこと、日本に来てまだ1年経っていないこと、もちろん忍者が好きなこと、日本の新幹線がキレイで大好き、お弁当が美味しい!などいろいろな話をしてくれて、楽しい道中となりました。途中、満開の桜のトンネルを通ったのですが、このスタッフの方が楽しそうにガイドしてくれて、私もとてもうれしくなりました。次の場所は、宿泊施設もある体験型ファームです。タクシーに乗り20分程で到着したのですが、タクシーが苦手なミミはまたここでぐったりして不機嫌になってしまいました。発する言葉は全て不機嫌な“チクチク言葉”で「来なければ良かった、帰りたい」と繰り返す負のループ状態。こんなときはどんなになだめても負の言葉で返してくるので、こちら側の気分も悪くなるだけです。ミミの身体と気持ちもが回復するまでに時間がかかりますが、私が楽しみにしていた「ミニブタショー」がちょうど始まるので、ミミには悪いけど楽しませてもらいました!その間パパと弟・ふーはショーは見ず、アイス休憩をしていました。Upload By taekoそして食事タイムです。ミミは、レストランのメニューを見ても「食べたいものはない」と言うので、ファーム内で売っているパンを持ち込めないか店員さんに交渉していたのですが、そのとき、弟・ふーが鼻血を出しました!びっくりしつつも『これはミミの気分が紛れるいいキッカケになる』と思ったのですが、予想通り!ミミはふーを優しく見守り、機嫌が直りました。その後もミミは、転んで顎と膝をすりむいたふーにサンドイッチを分けてあげたり、よく面倒を見てくれました。人の優しさ、景色にも感動!大切な思い出になりましたそして翌朝、ファームのミニブタに餌やりをしたり、ビュッフェ形式の朝食をとりました。ミミは、自分で食べられそうな物を選べるビュッフェがよかったようで、楽しんでくれました。朝食のとき、スタッフの方から「食べられるものはありましたか?」と声を掛けていただきました。昨日のレストランにもいらっしゃって、ミミがパンを持ち込んだ事情を知っていた方でした。覚えてくれていたことがうれしく、また人の優しさに触れて感動しました!朝食後は、この旅最後の目的の忍者のショーを見るために、忍者の博物館へ。タクシーで20分移動し(ここでもミミは車酔いでぐったり…)、昭和の時代の佇まいが残る、懐かしく素敵な駅で、電車を待ちました。3月末だったこの時期は桜が満開で、その美しい景色にも癒されました。Upload By taeko電車を乗り継ぎ「上野市駅」へ。5分ほど歩いて忍者の博物館へ到着し、最後のイベント、忍者のショーを観覧。アクションの迫力とお笑い要素も満点で、大満足でした!ミミはやや疲れ気味で、私以外はみんな寝てしまいましたが、私は帰りの関西本線の絶景に見入ったり、普段乗ることのないディーゼルカーの不思議な乗り心地を楽しませてもらいました。東京駅に着くころには、みんなぐったりでしたが(笑)。帰宅して数日後、ミミは「ミニブタショーは、ちょっと楽しかった」と話してくれました。多少のアクシデントはあったけれど、色んな方に助けてもらい、人の優しさに感動した旅になりました。私にとっても大切な思い出になりました。執筆/taeko(監修:鈴木先生より)ASDの方は予定の変更を嫌うので、修学旅行のように細かなスケジュールを立てて、できるだけスケジュールに沿った旅行ができるように配慮するといいでしょう。そのときに、実際に行く場所の写真やVTRも添えておくと、なお分かりやすいと思います。天候に左右されることもあるため、雨天時はどこになるなどさまざまな可能性をあらかじめスケジュールに組み入れるといいでしょう。それでも電車が遅れたり、途中でトイレへ行きたくなったりで予定通りいかないこともあります。時間に余裕をもってでかけ、予定通り行動できたら褒めてあげましょう。
2023年06月08日脱走なんてしないと思っていたUpload By カタバミ息子のまちゃには自閉スペクトラム症と知的障害があります。就学前には特別支援学校にするか特別支援学級にするかで迷いました。年長の1学期のころ、当時通っていた療育園の担任で就学担当でもあったベテランの先生から「まちゃくんは45分間座って授業を受けられそうですから特別支援学級に入学することも考えて下さい」と言われました。確かにまちゃは、私がいつ見学しても落ち着いていました。特別支援学級の見学のとき、特別支援学級の先生に「こちらに入るのに“これはできていてほしい“と言うことはありますか?」と質問したら「座って授業を受ける意欲があるお子さんはできるだけサポートします」と言われました。私は(生徒がどこかに行ってしまい追いかけながら授業をするのは難しそうだから、それは当然だな)と納得した記憶があります。入学後に始まった脱走Upload By カタバミところが、療育園のときにはあんなに落ち着いていたまちゃは特別支援学級に入学すると授業中や少しの空いた時間に脱走するようになりました。行き先はだいたい決まっていて、体育館に行ってグルグル走ってくるか、数階上の誰もいない特別教室に行くか、校庭を突っ切った先にある体育倉庫の壁をタッチして帰ってくるか…いずれにしても脱走しても戻ってくるそうです。ただ走るのが早くて補助の方ではなかなか追いつけないとのことでした。授業参観に行ったとき、課題が終わったまちゃがサッと席を離れて私の横を通り過ぎて教室の後ろのほうに行ったので(ロッカーに何か取りに行くのかな)と思ったら、サーッとそのまま教室を出て行ったのでとても驚きました。この一件から私もまちゃの脱走について改めてあれこれ考えるようになりました。まちゃは機嫌良く脱走して機嫌良く戻ってきていて、脱走を止められたときにも少し悔しそうにしているものの笑っているようでした。もしかすると、これまで療育園など施錠してある施設に通っていたまちゃにとって、思いついたときにフラッと抜け出せることが、息抜きになっているのかなと思いました。増える脱走Upload By カタバミ1年生の終わりから、まちゃは学校に慣れたのか、家ではタオルを畳んでくれたり、お父さんの飲んだ缶酎ハイの缶を潰してくれたり、できることも増えましたが、脱走も増えました。そして、2年生になって新しい担任の先生になり、教室の人数も4人から8人になるとさらに脱走は増えて、ついに朝、開いていた校門から学校の外に出てしまいました。ちょうど近くにいた先生が捕まえてくださったそうなのですが、その報告を受けたとき、私はさすがにとても心配して焦りました。担任の先生が「教室のドアを施錠してみてはどうだろう」と相談してくださり、私は「やってみてほしい」と答えました。2つある廊下への教室のドアのうち、まちゃに近いほうが施錠されると、まちゃは窓から出ました。そのあと、まちゃの近くの窓際に電子オルガンが置かれ、すぐには出られないようになりました。窓には「窓から出てはダメ」と言う意味の絵カードが貼られました。効果があったそうで、先生は「席に座ります」や「トランポリンをとびます」「トイレに行きます」などの絵カードもつくってくださいました。SNSで作業療法士にも相談をして、まちゃのストレスが溜まらないように、まちゃのすぐ近くに絵を描いたりパズルをしたり、リラックスできる場所があるとよいというアドバイスを受けたので、先生に伝えるとさっそく教室に取り入れてくださいました。放課後等デイサービスの先生にも相談すると「まちゃくんは自分がみられていると感じている間は脱走しません。気を抜いた瞬間が危ないのです。頭のうしろにも目が必要です」と、まちゃを脱走させないコツを教えていただきました。これもさっそく担任の先生にお伝えしました。減ってきた脱走Upload By カタバミ現在、小学2年生が始まって2ヶ月目ですが、まちゃの脱走は減ってきています。今の所、家でも放課後等デイサービスでも癇癪も行き渋りもありません。常に対応してくださる担任の先生にはとても感謝していますし、まちゃもよく頑張っていると思います。でも本当に特別支援学級がまちゃに合っているのかということは、考えていかないといけないと思いますし、今後もまちゃの様子を注意深く見て行こうと思っています。執筆/カタバミ(監修:新美先生より)教室から脱走してしまうまちゃくん、先生方も安全確保のために気を遣って大変だと思いますが、なによりも、脱走したくなるほど大変な思いをして教室で過ごしているまちゃくんのことも心配です。新しい環境で、慣れず、その場で今何をすべきなのかがわからないと、普段よりもそわそわして落ち着かなくなり脱走リスクは高まります。入学当初、慣れなくて脱走というのは、ある程度はやむを得なかったかもしれません。1年ちょっと経って、脱走は減ってきているとはいえまだあるようです。学校で問題行動がある場合、以下のことを見直していくとよいかもしれません。1. 学習・活動内容について、本人が理解できる形式(視覚支援など)で説明されているか(スケジュール・手順書など)2. 学習・活動内容は本人に合った内容か3. その学習・活動をしたくない場合、「拒否する」ということが随時表出できて(例えば「やりたくない」という絵カードをいつでもつかえるようにしておくなど)、受け入れてもらえ、代わりの行動の選択肢を提示してもらえる環境になっているか4. 「ちょっと休憩する」「気分転換する」などが表出できて、それを受け入れてもらい、休んだり気分転換できる環境が用意されているかこういったあたりについて、学校の先生に見直してもらったり、療育の専門の先生などにもご意見もらったりするとよいかもしれません。本人が脱走しなくても、安心して充実して過ごせる学校環境にしていけるとよいですね。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年06月07日アトピー体質の自閉スペクトラム症娘。掻きむしりがすごくて…SAKURA(以下、――)最後の相談は、娘の掻きむしりについてです。娘は、アトピー体質で、皮膚が弱いんですが、精神面からくる掻きむしりがすごくて…――ここからは本人にも同席してもらって、一緒に話を聞いてもいいですか?三木先生:もちろんです。Upload By SAKURAあーさん:こんにちは。三木先生:こんにちは。あーさん:えっと…私はイライラしたりすると、腕とか足とかがかゆくなって、掻いてしまいます。どうしたら掻かなくなりますか?Upload By SAKURA三木先生:なるほど。まず、かゆみを我慢するのは無理です。Upload By SAKURAなので、かゆみ止めを飲んだり、薬を塗るなどして、アトピーでかゆくなる要素を先にゼロにしていく。そのあとにストレス側にアプローチしていく形がいいです。Upload By SAKURA――病院にはかかっていて、薬はずっと飲んでいます。そっちに関しては対応済みです。Upload By SAKURA自分に合うストレス解消法を見つけていく三木先生:なるほど。では、ストレス面ですね。色んな方法を試してもらって、自分にあうストレスを解消していく方法を探していくといいですね。――例えば…?三木先生:例えば運動…ジグゾーパズル…世の中にあるストレス解消法の中から、自分にしっくりくるものを順番に試してみるのはどうでしょう?Upload By SAKURA親が今まで見てきた中から、子どもの趣味嗜好から合いそうなものをピックアップするのが良いと思います。例えば、一人が好きか、みんなで遊ぶのが好きかなど。――本人が苦しんでいるので、私がなにかかゆくならない方法見つけて教えてあげたいと、焦ってしまって「早く!今すぐ!なにか策を!」と思ってしまっていたのですが、時間をかけて探していくしかないんですね。Upload By SAKURA三木先生:答えが欲しいと焦るのはわかりますが、親が試行錯誤している時点でもう正解です。焦って無理に答えを出そうとすると、子どもへの負担になることがあります。親が、あーでもないこーでもないと、頑張ってる姿を子どもに見せてあげることが重要ですよ。Upload By SAKURA――そうなんですね。でも、娘にとって、答えがない状況は嫌なようで…。それを見ると私も苦しいんですよね。助けてあげたいというか。このままでいいのかなって思ってしまって。三木先生:子どもは結論がでないことに納得できないことが多いですよね。でも、結論はもがいたあとにしか分かりません。時代的にインスタントに答えを出さなきゃならない傾向にありますが、実際は本人の中の構造化のプロセスを踏んだ上に納得があります。親の試行錯誤をモデルとして見てもらって、本人と一緒にやっていく…。もんもんとした中の、興味があるものを拾っていくといいと思います。Upload By SAKURA対策としては短期的、長期的アプローチがあります。薬は短期的なアプローチ。それから目の前の問題解決…例えばかゆくなるスイッチのようなものがあるなら、そこから解決していくのが良いです。――かゆくなるストレスのスイッチ…いっぱいありすぎます(笑)物事には「表」と「裏」の顔がある!三木先生:日常生活でストレスをゼロにすることはできませんからね。物事の表と裏を見せていくのもいいんじゃないですか?例えば、お母さんが怒っていたところに、電話がかかってきたら、お母さんは声を変えて普通に電話取りますよね?その様子とか。人は、本当はイライラしていても、表ではそれを見せないようにするというのを実際に見て理解してもらうといいかもしれません。Upload By SAKURA――あー!そうなると親同士の言い合いとか?最近、見せてしまうというか…見られてしまうことが増えてきてます。Upload By SAKURA三木先生:それにも、ニュアンスの調整は必要ですけどね。「これはコミュニケーションの一環」「こんな風に言っているけど実際はお父さん相手だから言ってるんだよ」「実際はそこまで思ってないよ」などの文脈の説明はいりますね(笑)――わかりました。いろんなストレス解消法試して、ピッタリの方法を探しつつ、同時に人の表と裏の気持ちも話していきます!執筆/SAKURAコラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年06月07日自閉スペクトラム症(ASD)とADHD(注意欠如・多動症)がある中学3年生発達障害の専門家が出会った発達が気になる子どもたちや、その保護者の抱えていたリアルな「困った!」をもとに、対応策などをドキュメントタッチで解説します。今回は、自閉スペクトラム症とADHDの診断がある中学3年生のエピソードです。県立高校への進学を希望しているものの、定期テストではケアレスミスが多く正解率が20%程度。わが子を心配して涙する母親に小児科医は…。Upload By 専門家体験談Upload By 専門家体験談Upload By 専門家体験談解説:定期診療の時間を、安心して相談できる機会にーー小児科医今回は、自閉スペクトラム症とADHDのある中学3年生のエピソードをもとにお届けしました。ひとり親家庭で保護者の方は仕事に追われ、パンパンの状態であることが診療時に伺えました。お子さまは、反抗はするものの根が優しく親思いであることが伝わってきましたので、親子の目標である「県立高校に合格する」ということを意識し、定期診療でさまざまなアドバイスを行いました。診療のポイントは大きく2つです。薬物治療ADHDの主な症状である多動性・衝動性、不注意に対して薬物治療を開始していましたが、薬を飲まないことが続いていました。そこで、服薬の負担を軽減するために1日2回から1日1回の治療薬に変更して様子をみました。学校や塾の先生への協力依頼先生で注意されてばかりだったり試験結果が思わしくなかったりすると、お子さまの自己肯定感が下がっていきます。「(小児科医と相談し、服薬もしながら勉強を頑張るので)応援団になってほしい」と伝えることで、少しでも環境を変えることを大切にしました。高校受験では、通塾されるお子さまも多いことと思います。学習内容や先生の指導がわが子にあっていないと感じたら、今回のケースのようにほかの塾に移ることで勉強しやすくなることもあるでしょう。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年06月06日知って驚いた、「社会的語用」という概念言語学の分野では、会話の辞書的な意味、字義どおりの意味について扱う分野を「意味論」、場面・文脈・相手との社会的な関係性の中でどのような会話をするかについて扱う分野を「社会的語用論」と言います。例えば、職場で、部長Aさんの部下のBさんがAさんに対してこう言ったとします。「私がお茶を入れました。部長も飲みたいですか?」この発言では、文法上の誤りもなく、語彙も十分です。意味論的には、「AさんがBさんの入れたお茶を飲みたいかどうか」を聞いており、まったく問題ありません。しかし、社会的語用論の観点から言うとこの発言は不適切で、文化的社会的にはナチュラルでないと言えます。―といった説明が、日本語教師用のテキストに書いてあり、私はとても驚いたのでした。社会的語用論の観点からは、・場面(公的で改まった場なのか、私的でフランクな場なのかなど)・文脈(それまでにどんな話をしていたかなど)・相手との関係(親しいのか親しくないのか、立場が上なのか下なのか、ウチなのかソトなのかなど)に配慮して話をすべきなのだそうです。社会的語用の範疇では、文化によるのですが・目上または親しくない相手に対して直接意向を聞いてはいけない・人に何かをしてあげたときに主語をあいまいにして押しつけがましくないようにする・断るとき、禁止するときなど、はっきり言うと相手や関係性にショックを与えそうなときにあいまいな言い方にしたり「言いさし」にしたりするなどといったルールがあるのだそうです。これ、私のようにASDのある人にとっては、とても苦手なものですよね。話し手になる場合にも聞き手になる場合にも、いわゆる、「空気を読む」「行間を読む」が必要になってくることですから。だからこそ、社会的語用の概念を知った私は驚いたのだと思います。これらを総合して、上記の例の場合、日本において社会的語用の観点から正しい(より正確に言うと、日本で最も感じが良いと受け取られて生存戦略上都合がよい)言い方はこんな感じになるでしょうか。「お茶が入りました。部長もいかがですか」「お茶が入りました」「お風呂が沸きました」ずっと理解できていなかった社会的語用私はそこで、自分が生きてくる中でなんとなく疑問に思っていた日本語の表現をざっと思い出してみました。すると、あれは社会的語用だったんだ!と気づくものがいくつもありました。例えば、上記の例にあった「お茶が入りました」。周囲がそういう言い方をするから私も自然にこういう表現を使ってはいたものの、「文法的に考えるとなんだかお茶が勝手に意志を持って入ったみたいな感じでおかしいなあ、どうしてだろう」と、言語化はできないまでもずっと引っかかっていたのです。日本人はこういった何気ない表現の中でも、相手との社会的関係を配慮した物言いをしているのですね。給湯器も、「お風呂が沸きました」って言いますよね。あれ、中身は日本人だなって思いました(笑)英語やフランス語でも「行間を読む」?でもね、同じような社会的語用、よく考えたら英語でもするんですよね。Dinner is ready!(夕飯ができました)Tea is ready!(お茶ができました)ここで I made tea (私がお茶を入れました)とかは言わないわけです。その他、私は大学時代アメリカに短期留学したとき、誰かを何かに誘うか何かしたときに maybe next time(またこんどね)って言われたんです。そうか、また今度誘えばいいのか、と思ってしばらくあけて再度誘ったら、すごく困惑した顔をされました。欧米はいわゆる空気を読まなくていい、なんでもオープンに意思表示しあう文化だと思っていたので、それから20年来謎だったのですが、先日、アメリカ帰国子女と日本人がやっているインターネット動画で、アメリカでも婉曲に断ることあるよ!と言っていて、「あれは断られてたんだ!」と初めて気づきました(笑)フランスでも「行間を読む」ことはあるようです。フランス人ASD女性のコミックエッセイの中に、会社の同僚に「あの資料持ってる?」と訊かれて「持ってるよ」と答えたら同僚は「ええっと、その資料を貸してくれる…まったくもう!」と怒ってしまったというシーンがあったので、これにも驚きました。空気・行間を読むことが多い、よりハイレベルな社会的語用が要求される文化を「高コンテクスト文化」といい、日本が代表です。その反対で、なんでもはっきり言葉にすることが多く、直接的なコミュニケーションをする文化が「低コンテクスト文化」で、ドイツが代表と言われています。ドイツのコミュニケーションに婉曲な表現があるかは見聞きしたことがないのでわかりませんが、欧米が日本よりも低コンテクストだからといって、日本のような高コンテクスト・婉曲な表現がないわけではないのですね。イギリスなんかは非常に婉曲な言い回しが多く、京都に似ていると言われることもありますね。言葉の学びの中でようやく興味を持てるようになった、日本の社会的語用ここまで考えて私が思ったのは、「世の中には、高コンテクスト文化と低コンテクスト文化と、元来ほぼ社会的語用をしないASD文化があるのではないか」ということでした。私がASDのない人と接触せず、生まれたままのASDとして生きていたら、たぶん本当に辞書通り字義どおりの、意味論的なコミュニケーションをしていたと思います。でも、日本の高コンテクスト文化の人たちと「異文化交流」をする中で、まるで低コンテクスト社会から来た人のように少しずつ「異文化適応」をして、(違和感や疑問を覚えながらも)徐々に社会的語用を学んできたのでしょう。私は日本のASDのない人たちが「普通」「正しい」とするコミュニケーションにずっと違和感や、ときには怒りを感じてきましたが、こうしたコミュニケーションの機微について研究する学問分野があったことにはある種の感激を覚えました。以来、人のコミュニケーションを、研究対象を見る感じで興味と好奇心を持って観察し、自分の不全感については「私は異文化に生まれた異邦人なのだから仕方ない」と余裕を持って受け止められるようになりました。ASDのある子どもの、高コンテクストなコミュニケーションに関するマイナス感情への対処ASDの子どもの中には、人とコミュニケーションする中で、戸惑いや怒り、不全感を感じる子どもたちも多くいると思います。私がそうだったように。物事への理解ができるようになってきた思春期以降であれば、単に「これが正解だ」と教え込むのではなく、異文化のひとつとして教えるなどすると、私のように興味を持って客観視できる助けになるかもしれません。文/宇樹義子(監修鈴木先生より)私の外来はASDの患者さんの割合が多いです。外来で患者さんに「KY:空気を読めますか」と尋ねると、「先生、空気は読むものでなく吸うものですよ」と返されることが多々あります。また、 “医師と患者さん”という関係性を踏まえた会話ではなく、あたかも以前から知っていた友人と話すような調子で話されるお子さんの何と多いことか。それは、親御さんも同様です。そうしたお子さんにはSST(ソーシャルスキルトレーニング)の受講を、親御さんにはペアトレの受講をお勧めしています。食事中にスマホをやっているお子さんに食事中はスマホはやめなさいというと、ASDの特性が強いお子さんは、食事をやめてスマホだけやるのです。確かに、「食事中はスマホはやめなさい」と言われたとき、その言葉通りとれば、食事をしていなければスマホをやっていいことにはなります。ASDの特性から、なぜそのように言われたのか、相手の立場になって考えることが苦手なのです。社会的語用はASDのグラデーションによって変化が見られます。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年06月06日お皿に入る服、ぶつかるカバン、観葉植物をなぎ倒すカーテン…Upload By 丸山さとこ神経発達症(発達障害)がある息子のコウは、小学校高学年ごろまで食事中に服の袖がごはんに当たっていても気づかないことがよくありました。中学生になった今では以前よりも減りましたが、『自分が動かしている物』が何かに触れているとき、それに意識を向けるのが難しいようです。とはいえ、最近は「カーテンを閉めるときに観葉植物を倒しているよ」と伝えると「あ~本当だ」とすんなり認めてくれるので助かります。以前は「袖がごはんに当たっているよ」「本をどかしたときに消しゴムを机の上から落としているよ」と伝えても、「え?当たってる?」「あれ?何で?」と起きたことをなかなか認めてくれませんでした。あまりに頻繁に服の袖が汚れるので、あるとき改めてコウに質問してみました。小学校5年生ごろだったと思います。「袖にごはんが当たっていても気づかないのはなぜ?」に対するコウの主張は以下の通りでした。・食事中の姿勢において腕の下側の皮膚と服の間には空間があるため、ごはんが当たっている側の皮膚には何も感じない。・食事中の姿勢では、わざわざ見ようとして腕を持ち上げない限り袖の下側は見えない。・これらのことから、食事中の袖の下で起きていることなど、感じることも見ることもできないのに分かるはずがないのは明らかだ。Upload By 丸山さとこコウの話を聞いた私は、「彼からすれば自分の体験に基づいた根拠のある言い分があるのだな」と思いました。「自分が動かしている物」から伝わる感覚を理解しよう!確かにコウの言う通り、ごはんは腕の下側には当たりません。ですが、『服に何かが触れた感覚』は分かるはずです。そう話してもコウは「そんなの分かるわけない」といぶかしんでいるので、彼の袖の下側に触れながら改めて説明をしてみました。「服の布は、腕の上や横には当たっているでしょう?目を閉じて、そこの布が動くのを感じてみて」と促すと、彼は「…本当だ!袖に当たったり離れたりしているのが分かる!」と驚きました。Upload By 丸山さとこ「物は袖の下に当たっているのに、感触は上側に生まれるんだねぇ…」と不思議そうに感心していたコウは、それ以降「皮膚に直接当たってないのに分かるわけないじゃん!」と突っぱねることはなくなりました。こうして理屈と感覚は理解できたとはいえ、それまで意識していなかった『見えない位置の感覚』『間接的に当たっている物の手ごたえ』が急に分かるようになるはずはありません。そのため、この話をしてからも相変わらず袖を汚すことはありました。ですが、「できるはずがないことを無理強いされている」という不信感は和らいだようでした。自分が直接触れて動かしている物ではない『間接的に触れている物』への影響を理解するのが難しいのは、私も何となく分かります。息子と同じく神経発達症がある私の場合は、自分の体であっても『見えていない部分』への意識がおろそかになりがちです。定型発達とされる子どもであったとしても、幼児のころは『自分の体が影響する範囲』や『自分が持っている物が影響する範囲』がつかみきれておらず、動きにも不器用さが見られることは珍しくありません。Upload By 丸山さとこコウや私は、今でもまだその部分において発達の途中にいるのかな?と思っています。今でも不器用な中年として毎日を送っている私ですが、子どものころによくあった『何もないところでコケる』現象は起きなくなりました。でもこれは「単に活発に動かなくなっただけかもしれないな…?」という一抹の不安もあるので、たまには体を大きく動かすようなアクティビティをしてみようと思います。執筆/丸山さとこ(監修:初川先生より)面白いですね。「『自分が動かしている物』が触れている物に意識を向ける難しさ」。そこまで意識(注意・関心)が向かないからこそ、ちょっとした事故(服を汚す、観葉植物を倒すなど)につながる。例えばこれは、ボディイメージの苦手さ(自分の「身体」がどこまでか、どう動いているかを認識することの苦手さ)でも説明されるかもしれません。この場合のボディ・身体は単に皮膚に包まれた肉体のことに限らず、服やカバン、そして作用するものも含めた「拡張した身体」のことになります。こうしたことを考え始めると、身体とは何かという哲学的な問いに出合います(例えば、他人の身体を触ることは痴漢になるけれど、じゃあ、身体と洋服の間の空間に手を入れるのは痴漢じゃないのか…と考えてゆくと、身体は肉体よりも広い概念であると分かると思います)。そんな哲学的な問い、身体論が私は頭に浮かびましたが、生活上必要なことでいえば、さとこさんがしてくださったように、感覚に意識を向けて、感じ取る練習をしてみるということですね。袖の下部の動きは袖の上部(肌と接するところ)の微細な動きで感じるなど、今まであまり意識してこなかったがゆえに意識に上りづらかったことを意識化してみるということ。その練習は、発達的な特性ゆえにそうしたことへ注意を向けにくいお子さんには良さそうです。見えないものは「ない」、感じないものは「ない」となりがちなお子さん方に、これまで意識してこなかったから「見えない」ものを「あえてしっかり見る」、「その感覚に注意を向ける」。認識することで、「身体」が広がるかもしれませんね。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年06月05日持ってきたはずのお財布がない!爆発寸前!?ゲームセンターで「う~~!」とうなりだす息子自閉スペクトラム症の息子が、見通し不安で大パニックを起こしたのは、当時小3だった息子と一緒に、ショッピングセンターへ行ったときのことです。その日は「ゲームコーナーにあるアーケードゲームをする」「ゲームは自分のお小遣いでやる」と家を出る前に約束をしていました。ですから、自分のお財布を持ってきている…はずでした。ですが、ゲームセンターについてお財布を出そうとしたところ、ないのです…!なんと息子は家に自分の財布を忘れてきてしまったのでした。息子はそれに気づくと「う~~!」と声を出し、パニックを起こしかけました。「このままではいけない、大暴れしてしまう!」と慌てた私は、「お金は貸してあげるから、大丈夫だよ」と息子に伝えました。すると、それならゲームはできると納得してくれたようで、なんとか不穏な様子はおさまりました。そして息子は予定通りのやりたかったアーケードゲームを楽しむことができました。もうちょっとでパニックを起こすところだった…、これにて一件落着…と、ほっとしたのもつかの間、次は母の用事である買い物に付き合ってもらうため、食料品売り場へ移動すると、再び息子の様子があやしくなってきました。Upload By ユーザー体験談食品売り場でじだんだ。帰ろうとしても連れ戻される私。どうすればいいの⁉ゲームが無事終わったあと、食品売り場で買い物をしていたところ、息子はだんだんと苦しそうな表情を浮かべ、やがて叫びたいのを我慢しているといった様子でじだんだを踏みだしました。さっきのゲームセンターでは、「お財布を忘れた」ことがパニックの原因だったと思います。でも今はなぜ?わからないままお惣菜売り場につき、そこで「なに買おうか?」と聞いたのですが返事はありません。この様子だと買い物はせず帰った方がいいなと感じた私は、「じゃあ、帰ろう」と食品売り場から出て、駐車場へ向かおうとしました。ですが息子はそんな私の服の袖をつかんで、お総菜売り場まで連れ戻すではありませんか。お惣菜売り場でなにかしたいことがあるの?なにか欲しいものがあるのかな?と思って、「じゃあ、これ買おうか?それともこっち?」と尋ねても、やっぱりなにも答えず、ただじだんだを踏む息子…。その後も帰ろうとしては連れ戻され、ということが繰り返されました。これ以上パニックがひどくなって、大声を上げたり突然走り出したりしないようにしなければと、私は努めて冷静に息子の様子を観察しました。これはなにか買わなければ帰れないなと思い、私は「じゃあこれね」とお惣菜を一つ選んで会計、息子を刺激しないよう注意しながら、ようやく車に戻ることができました。それまで周りを気にする余裕はありませんでしたし、何か言われたりもしなかったですが、ようやく車に乗ると「あんなに大きい子が駄々をこねて」とか「お母さんがしっかりしないから」とか思われていたんじゃないかと不安になりました。ついに来た大パニック!車の中の大絶叫!そして家からの逃亡!あとは家に帰るだけ…と思った私でしたが、そこからがその日最大の修羅場でした。ショッピングセンターから家までの10分あまり道のり、息子は車の中で全力で泣き叫び続けたのです。言葉ではなく、とにかく泣きながらギャーギャーと叫んでいました。耳が痛いほどの絶叫の中、私はとにかく事故を起こさないようにしなければと自分に言い聞かせ、必死に運転して帰りました。Upload By ユーザー体験談なんとか家に到着すると、息子はまだ怒ってはいたものの、騒ぐのを止めてくれました。家の中に入り、息子のパニックの原因であろう財布を見つけようと思った私。「お財布どこに置いたか覚えてる?」と聞いたところ、玄関から「バタン」という音。息子が外に出てしまったのです!慌てて外に出ましたが、もう息子の姿は見えず、探しても見つからず…。しばらく時間がたったあと、息子はスッキリした顔で戻ってきました。無事に帰ってきてくれてよかったとホッと胸をなでおろしながら「どこへ行ってたの?」と聞いたのですが、なにをどう聞いてみても、最後まで教えてくれませんでした。私は息子が帰ってこなかったら、外でパニックを起こしてしまったら、と不安な気持ちで探し回っていたので、とにかく無事に家に戻ってきてくれたのだから、とそれ以上聞くことはやめました。本人もパニックの原因はわからず…。スクールカウンセラーに言われたこと落ち着いた息子に、パニックになった原因はなにか聞いてみたところ、「ゲームはできたのに、なんでパニックになったのかわからない」とのこと。また、車の中での記憶はないと言っていました。私もなぜ息子があそこまで怒ったのか、原因はわかりませんでした。後日、スクールカウンセラーにこの話をしたところ、「予定の変更が苦手で、『自分のお金でゲームをやる』や『買い物するはずだったのに、買い物せずに帰ろうとした』ことがパニックに繋がってしまったのかもしれませんね」と言われて、なるほどと腑に落ちました。Upload By ユーザー体験談なんとかお財布を忘れたという予定変更を乗り越えても、ストレスがたまっていたのでしょう。買い物をしている間、息子はなかなか買うものを決めず、またカゴに商品も入れない私の様子に「いつになったら買い物は終わるんだ」「ちゃんと買い物はするのか?」と不安を感じて、爆発してしまったのかもしれない、そう思いました。その後もゲームセンターへ行くのに同じような忘れ物をして、何度かパニックになったりしましたが、徐々に自分で折り合いをつけられるようになりました。まず、お金は忘れても親から借りればいいと思えるようになったようで怒ることはなくなったのですが、ゲームに使うカードや太鼓を叩くバチを忘れたときは、親から借りられないので「う~~っ」とじだんだを踏んでいました(さすがに、大声で泣き叫ぶことはしなくなりました)。それが、中学生になったころから、このような忘れ物をすると私に「ここで待ってるから、買い物してきて」と告げて、自分でその辺をウロウロしてクールダウンできるようになり、やがてカードを忘れても「カードがなくてもできるゲームをやる」、バチを忘れたら「太鼓に付いてるバチの方が、使いにくくて練習になるから、今日はこれで練習する」と、考えを変えられるようになり、忘れ物をしても大丈夫になってきました。Upload By ユーザー体験談14歳になった今は…また新たな問題も出てきたけれど中2になった今でも「入れたはずのカードがない。絶対に入れたはずだ!」と不穏になることはありますが(車の中に落ちていました)、大騒ぎすることはありません。一方、中学生になって落ち着いたかと思いきや、しばらくは環境が変わったストレスからか、宿題が思うようにいかなくて、ノート数十ページにわたってグチャグチャに書きなぐったり、朝の準備がうまくいかなくて、家を飛び出してどこかへ行ってしまったりしました。宿題のプリントをハサミで切ってしまったこともあります。落ち着いてきてはいますが、まだまだ不安なところも当然あります。ですが、以前に比べると、大分落ち着きましたし、自分で折り合いをつけたり、代わりの案を考えたりすることができるようになってきました。今後は、気持ちよく周囲を頼ったり、頼られたりができて、そして困っている人が居たら助けてあげられる優しい人に成長していってほしいな、と思っています。イラスト/keikoエピソード提供/なまちゃん(監修:井上先生より)突発的な出来事で予定が変わってしまったり、見通しが立たないことによる不安やパニックも年齢を重ねるごとに徐々にコントロールできるようになってきているんですね。お母さまのおかげで、気をそらせたり、少し我慢したりすることで成功体験も得られてきているのだと思います。自分だけで解決するのではなく、お母さん以外の人で先生や支援者と一緒に考えて乗り切れる体験を少しずつ積んでいけるとよいと思います。
2023年06月03日特別支援学校は教育の最先端! 特別支援教育の考え方を知ると、生きづらさを小さくできる『「ここ塗ってね」と画用紙を指さしたわたしの指を丁寧に塗りたくってくれる特別支援学校って最高じゃない?』は、これまで発信してきたツイートに、解説や補足を平熱先生自身が書き下ろした本です。左ページにツイート、右ページにその解説で1見開き・1テーマで完結。ユーモアたっぷりでときにホロリとさせるイラストも楽しく、とても読みやすい構成です。特別支援教育の良さや面白さ、先生の働き方、ときどき教育とは関係ないつぶやきも登場します。この本を巡って、平熱先生に発達ナビ編集長牟田暁子がインタビューしました。Upload By 発達ナビ編集部おもに知的障害がある子どもたちが通う特別支援学校で10年くらい働く現役の先生。小学部、中学部、高等部のすべての学部を担任し、幅広い年齢やニーズの子どもたち、保護者と関わる。「視覚支援」「課題の分解」「スモールステップ」「見えないところを考える」など、発達障害やグレーゾーンの子どもたちだけではなく、全人類に有効な特別支援教育にぞっこん。発達ナビ牟田暁子編集長(以下――) この本は、障害があるお子さんの保護者にとって、さまざまな気づきがあり、さらに障害がある人と普段あまりかかわりがない人にも読んでもらいたい内容だなと思いながら、楽しく読ませていただきました。平熱先生(以下、平熱) ありがとうございます、うれしいです。いちばんに届けたいのは、やはり特別支援学級などに通う子どもの保護者ですが、障害のある子どもたちと関わってない方にも、単純に読み物として面白いと思ってもらえたら理想的だなと思って書きました。――「平熱」というお名前について聞かせてください。「はじめに」にも書かれていますが、“熱血先生”ではなく“平熱”だからこそ共感が集まったのかなと感じていますが、ご自身ではどうですか?平熱 平熱であることに共感が集まるのは、時代の流れもあると思っています。自分が学生のころは、たとえばドラマに出てくる先生のロールモデルみたいなものって、良くも悪くも熱血漢でしたよね。竹刀を持っていたり、何かあると怒鳴って威圧する。その一方で、自分の生徒がトラブルに巻き込まれていたら夜中でもどこでも即駆けつける。24時間熱血で、情熱を持って奉仕する姿がよしとされたから、教師は聖職と言われるようにもなったと思うんです。だけど、学校の先生をブラックな職業ではなく単なる働き手として持続可能なロールモデルにしていくなら、熱血はいらなくないですか? 朝8時半に学校に行き17時に帰るまでの間、一生懸命頑張って自分の役割を果たせる先生が認められていかないといけないと思っていて、それをするのに熱血である必要はなく、平熱で淡々とできればいいのではと考えています。そこに今の時代の多くの人が共感してくれたから、ツイートもたくさんの人に見てもらえていると感じています。――平熱で淡々と、だから伝わってくるものがあるんですよね。それから、この本の冒頭に登場する、「特別支援教育、全人類に効果あり」というツイート、私も共感します。Upload By 発達ナビ編集部平熱 特別支援教育の考え方には、わたし自身が学ぶことで生きやすくなった実感があるんですよ。具体的に言えば、「課題の分解」「スモールステップ」「見通しを持つ」といった方法で、一応障害がないとされている自分自身が、すごく生きやすくなったから。特別支援教育は別に障害がある人でなくても、誰が知って身につけても、生きづらさを小さくできると思っています。Upload By 発達ナビ編集部――スモールステップは、最近よく知られるようになった考え方だと思うんですけど、見通しはまだスケジュールについてのことだけと思われている場合がありますね。本にはスモールステップや見通しについて、いくつも解説事例があって分かりやすかったです。Upload By 発達ナビ編集部Upload By 発達ナビ編集部――たとえば、食べられないものがあるんだったら食べられるように料理で改善していくというのも、スモールステップなんですね。平熱 ふりかけがないと白米が食べられないという子ども、少なくないですよね。それで、ふりかけをかけずに食べろと言うのはなかなかに厳しいこと。でも、スモールステップでだんだんふりかけの量を減らしていこうとしてみる。始めはふりかけ1袋を使ってたけど、次に3分の2で食べられるようになって、次は2分の1、3分の1…というステップで使うふりかけの量を減らしていく。これって、ふりかけの依存度を下げることなんです。これが0か100かの思考では、本当にしんどくなっちゃう。ふりかけはかけずに根性で食べろ、というやり方がこれまではびこり過ぎていたんだと思うんです。食べられる子どもはそれでいいけど、食べられなくてどんどん学校に行きづらくなってしまった子どももいるんだろうなと感じます。障害があるからできない?「思い込み」に気づくことを大事にしたいUpload By 発達ナビ編集部――「思い込み」や「無意識の線引き」について気づかせてくれる話題もすごく面白かったです。「当たり前」とはなんだろう、どうしてそう考えるのだろう、というところは、多くの人に「障害があるから○○だろう」などといった考えにも一石を投じるものですね。平熱 「エッチな本の隠し方を教えてください」っていう文面だけを見ると、男の子がエッチな本をお母さんから隠す話だと、いつの間にか思っちゃってる自分がいて、でも続きを読むとお母さんが持っているBL本を隠す話だったという。そうか、女の人がエッチな本を隠すという文脈だって全然あるのに、という気づきがあるわけですよね。できる・できないの線引きを、わたしたちは本当に無意識のうちにしているんです。それは障害があるからできなくて仕方ないよね、という目線にもつながってしまうかもしれないから気をつけたいです。別に障害があろうが、できることはできるし、しなきゃいけないことはしなきゃいけない。常になるべくフラットに物を見て、先入観なく、できることとできないことをしっかり見極めていきたいなとは思いますね。Upload By 発達ナビ編集部――そして「不機嫌で人をコントロールしない」ということは、特別支援教育に限らず、多くの人がハッとさせられる言葉だと感じました。Upload By 発達ナビ編集部平熱 「不機嫌でコントロールしない」は、わたしの大事な軸にしている考え方です。これは、保護者へというよりも、教育のプロとして現場に立っている先生には、強く伝えていきたいことです。親と子もそうだけど、先生と子どもたち、上司と部下の関係で、反撃されないと分かってる立場の人が、相手を不機嫌でコントロールしちゃうと、もうどうしようもない。威圧できる人が偉いというのはすごくずるいやり方だし、絶対に間違っています。――どうして、こういうことがさまざまな関係性で起こってくるのでしょう。平熱 不機嫌でコントロールする人は、間違った成功体験を重ねています。自分がイライラしていれば周りは言うことを聞いてくれて、相手を自分のいいようにできてしまう。そうなってしまう理由は、自分自身がされてきた経験でもあるだろうし、恐怖でコントロールする「成功例」を見て、体感してきたからでもあるでしょう。そうなると、子どもは不機嫌な人の言うことは聞いて、優しくて機嫌がいい人の言うことは聞かないということが起きてきちゃいます。人を不機嫌かどうか・怖いかどうかとかだけで判断してしまうようになる。正しいかどうかではなく、ゆがんだ要素で判断する子どもになってしまうんです。だから、「不機嫌でコントロールしない」をベースにして、子どもとフラットにやりとりしていきたいです。自分のことを知るスモールステップ――ところで、スモールステップの話に戻るのですが、これは自己分析にも使えるんですよね。自分が何をどうしたらうれしいのかとか、意外と分かっていなかったりするので。平熱 わたしもこの仕事を始めてから、いろんなことに気づくようになりましたね。自分でこういうことがうれしいんだ、こういう人が嫌なんだなとか。じゃあなぜこの人が嫌でこの人はいいのかをよく考えるようになり、だいぶ言語化できるようになってきました。こういう考え方は、実は障害あるなしは関係なくどんな人にも当てはまること。どうしてわたしはこれが苦手なんだろうとか、これができないのはなんでだろう、これが億劫なのはどうしてだろうということを分解していくと、「そうか、ここでつまずいてるんだ」ということや、「別に全部ができないわけじゃなくて、ここからここまではできていたんだ」とか、そういう気づきも実はあると思っています。そういう意味で、やっぱり特別支援教育は本当にいろんな人に役に立つんだと思いますね。自己肯定感の低い赤ちゃんはいない――分析して、自分自身も子どものことも周りのことも俯瞰して見て、フラットなところで見られるようになるというのが特別支援教育の考え方なんでしょうね。私も、長女(※重度の障害があり、特別支援教育を受けている)が生まれるまでは、そんなことを全然考えたこともなかったです。平熱 障害のある子どもたちって、周りが思ってるほど、自分のことを別にかわいそうなんて思っていないと、しょっちゅう感じるんですよね。障害がないとされてるわたしたちの方がよっぽど自己肯定感が低くて、よっぽど生きづらいんじゃないかと思うことは、本当によくあります。――自己肯定感は、つぶされなければ伸びる、ということも書かれていますね。Upload By 発達ナビ編集部平熱 自己肯定感が低い赤ちゃんって、多分いないですよね。それは、つぶされることがないから。赤ちゃんは基本的に、何かひとつできれば褒められます。失敗しても仕方ないと思われる。じゃあ、いつごろから自己肯定感が下がるようになるのかというと、比較されるようになるときからじゃないかと思うんです。「あの子はできるのに自分はできない」ということを、自分が認識する以上に周りに言われる場面が増えてくる。たとえば歌が好きで歌っていただけなのに音痴だと言われるとか。「あの子はできるのにどうしてあなたはできないの?」と言われて周りにつぶされてしまうのです。ひとまとめにするのはよくないですが、わたしの体感だけで言えば、中等部以降で特別支援学級から特別支援学校に来た生徒は、けっこう自己肯定感をつぶされてくることが多いと感じます。その一方で、小学部入学時から特別支援学校にいる子どもは、いい意味であんまり周りを気にしない子どもたちが多く、周りの子どもが好きなことに対してとやかく言わない。高等部の子どもが「戦隊もののヒーローが好き」と言ったら、一般的には「もう小さい子どもじゃないんだから」と言われてしまうところだけど、「カッコいいよね!」と言われる環境で育っていくんですよね。だから小学部からずっと特別支援学校に在籍していた子どもは、自己肯定感がそんなに低くないように見えます。周りの人ができているからわたしもできなくちゃ、なんて思う必要はないんです。昨日できなかったことが今日できたらそれを自分の中で褒めればいいだけなんだと、特別支援学校で教えてる中で思いますね。特別支援教育の話、日々のなかで気楽に読んでほしいUpload By 発達ナビ編集部――最後に、発達ナビ読者へのメッセージをお願いできますか?平熱 日々の仕事に家事にいろんな用事に、かつ、ちょっと育てづらいお子さんを育ててるというそれだけで、おそらく毎日パンパンだと思うんですよね、皆さん。時間的にもメンタル的にも体力的にも。そんな日常の中に、さらに新しい知識とか情報を入れるって本当に大変だと思います。この本は、どこから読んでもいいし、1見開きだけなら数十秒で読めます。なんの意味もないことも書いてますけど(笑)、役に立つこともたまには書いてると思うので、疲れているときにちょっと手にとって見てほしいし、イラストを見るだけでも息抜きになります。気づいたらつまんでいるお菓子くらいの読み方をしてもらえたらいいですね。むつかしい話、嫌いなんで!(笑)――今日はありがとうございました!コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年06月02日おっとりキャラの末っ子、次男ウッシーヤの幼少期わが家は母である私・ワッシーナを筆頭に、家族全員が個性いろいろな発達凸凹タイプです。それぞれの特性をキャラクター化しており、動物の顔をしています。たとえば、末っ子の次男ウッシーヤは、牛のキャラクターです。これは彼がなにをしても動作がゆったりしているところを表現しています。Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ(※)わが家の当事者キャラクターは、外出のときは透明なヘルメットを身につけています。このヘルメットは「パニック対策の工夫」を表現しています。パニックになると呼吸困難のような状態になるので、ヘルメット=工夫で身を守っているという設定です。Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ赤ちゃんのころのウッシーヤは、よく寝る子でした。あまりにも長い間、身動きひとつせずに寝ていることに、ふと気がつきました。私は急に不安になって、ティッシュペーパーを1枚つかむとベビーベッドに走りました。呼吸が止まっているのではないかと怖くなったのです。ウッシーヤの顔の前にティッシュをかざすと、小さく揺れるのが分かり、安心しました。私は安心のあまり、その場にへたりこみました。思わず「生きてて、よかったぁ」とひとりごとを言うと、夫がすぐ後ろに立っていることに気がつきました。ふと見あげると彼は恐怖で凍りついています。「頼むから、そんな心臓に悪い確認のしかたはやめてくれないかな」夫の真剣な顔を見て、つい苦笑してしまいました。発育がゆっくりすぎて不安がどんどん積み重なるその後、ウッシーヤはハイハイをして立ちあがり、よちよち歩きだし、少しずつ言葉が出るようになりました。でも1歳ごろになると、上の3人の子どもたちと比べて発育がゆっくりすぎるということが気になっていました。Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイウッシーヤは誰にでも抱っこをされるので、てっきり人見知りをしないタイプの子どもだと思いこんでいました。いまにして思えば、彼は緊張で固まっていたのです。私はウッシーヤの微妙な表情の変化に気づいていませんでした。また、ウッシーヤは喘息でした。でもゼーゼーと苦しそうにしながら、笑っているのです。小児科のお医者さんから「お母さん、気をつけてね。この子は、かなり苦しいはずなのに顔に出ないから」と言われました。でも忘れっぽい私は、気をつけることができませんでした。家族で食事をしているときは、子どもたちがそれぞれその日の出来事やテレビのことなどをおしゃべりして、にぎやかに過ごします。でもウッシーヤだけは会話に加わりません。様子を見ていると、幼いから会話に加われないというよりも、人と話すこと自体に関心がないように見えました。食事をしているとき以外は、ずっと指しゃぶりをしていました。指しゃぶりの間はずっと誰とも目が合わず、なにを考えているのか分かりませんでした。指しゃぶりをやめさせるために、ウッシーヤの指にカラシをぬったり、彼の好きな植物図鑑などで気を引いても効果がありませんでした。Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ日がたつにつれ不安になってきた私は、保育園でウッシーヤを担当してくれていた保育士さんに「ウッシーヤは発達障害なのでは?」と質問してみました。なにしろ今から20年以上前のことなので情報もあまりなかったのです。すると保育士さんは少し考えてから「お母さん、きっと大丈夫ですよ」となだめるように答えました。その表情から、とにかく安心させてあげたいという気持がくみとれました。保育士さんの気配りには感謝でしたが、不安は消えませんでした。夫ラクマは広告マンとして独立開業したばかりで忙しくて、ほとんど子育てに関われませんでした。私も夫の仕事の手伝いをしなければならないはめになって、ますます忙しくなりました。ウッシーヤの発達のことは、すごく気になりながらも日々の生活に流されていました。いまにして思えば、子育てのSOSの出し方がまるで分かっていませんでした。もしいまの私が当時の自分にアドバイスをするとしたら、知人や友人に手あたりしだい相談するようにと言ってあげたいです。Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ私と夫ラクマは、子どもの個性を尊重してくれる少人数制の学校を探し続けていました。というのも私は不登校になった経験があり、きっと子どもたちも人の多い学校は苦手ではないかと考えたからです。そんななか、保育園から高校までオールイングリッシュで教えてくれる、少人数制クラスの小さなミッションスクールを見つけ、4人の子ども全員を転校させました。長年思い描いてきた理想的な学校でした。ウッシーヤは当時3歳でした。いろいろな国からやってきた先生や生徒の中で、最初は肌の色の違う大人を見るだけで怖がって泣いていました。でも、きょうだいが全員一緒の学校なので、ウッシーヤが困っているときなどは、すぐにきょうだいが手助けできていました。たとえばウッシーヤが不安がって泣いているときは、すでに高校生になっていた長女ニャーイが助けに行くことができましたので、何とか過ごすことができていました。その後ウッシーヤが小学生になり、さらに困ったことが次々に起きるとは、このときは知る由もなかったのでした…。執筆/ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ(監修:初川先生より)ご家族皆さんを動物のキャラクター化して語られていて、とても面白く拝読しました。それぞれの特性を客観視できているからこそのキャラクター化なのかなと感じます。さて、次男ウッシーヤくんの20年以上前の幼少期について、今の話であればそれが発達のつまずきのどんな状態か分かることは多くあるかもしれないですね。この20年の間で、発達障害や発達のつまずきについての認知度は飛躍的に伸びました。ただ、「子育てのSOSの出し方を知らない」のは、もしかしたら20年経ってもあまり変わっていない面はあるかもしれません。相談先が増えた、相談された側の知識が増えたのはあるにしても、どう相談したらいいのか、どうSOSを出していいのかは、忙しい子育てや仕事、家事の中で後回しになっていくこともあり、どうしたらいいか分からないと同じように感じている読者の方もいらっしゃるかもしれないですね。ワッシーナさんの助言は「手あたり次第に相談する」。これも1つのいい方法ですね。ウッシーヤくんが小学生になった後のお話も楽しみにしています。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年06月01日「休み方」が子どもと家族の関係を変える⁉愛知県『休み方改革』プロジェクトとは――愛知県地方創生課、教育委員会インタビュー登校しなくても欠席にならない日が3日ある――「ラーケーションの日」導入で話題になった2023年度から始まる「愛知県『休み方改革』プロジェクト」。子どもと家族が一緒に過ごせる日が増えることは、子どもたちにどのような影響を与えるのでしょうか。このプロジェクトについて、愛知県地方創生課、愛知県教育委員会ご担当の方にお話を伺いました。出典 : 発達ナビ編集部(以下――)愛知県『休み方改革』プロジェクト」が発足した背景、そして目的を教えていただけますか?地方創生課:「休み方改革」を通じて、国民全体のワーク・ライフ・バランスの充実と、生産性向上による日本経済の活性化の実現を目指すために、「愛知県『休み方改革』プロジェクト」は発足しました。従業員の休暇の満足度があがることは、会社などの生産性や従業員の定着率の向上に寄与するものです。ですが、今の日本には祝休日は多くあるものの、国民が一斉に同じ日に休みを取るため、行楽地が混雑するなどの弊害がおこり「質の高い休暇」を楽しむことができないという実態があります。また、学校は祝休日が休みですが、仕事をしている人のうち、おおよそ2人に1人は土曜日、3人に1人は日曜日に働いています。例えば医療従事者や、百貨店勤務、街の理髪店など、企業の業種・職種や規模によっては、保護者が祝休日に仕事をしていることも多く、家族が一緒に過ごす時間がつくりづらいといったこともあります。また、日本の産業、特に観光に関連する宿泊業・飲食サービス業などのサービス産業は、繁忙期と閑散期の差が大きいことから、人員配置などの最適化が図りにくく、欧米に比べ労働生産性が低いということが挙げられます。これら課題を解消するためのプロジェクトです。――「休み方改革」を実現するために必要なことは、どのようなものでしょうか?地方創生課:企業や個人単位で休日を柔軟に設定できる環境づくり、有給休暇が取りやすい環境の整備、そして、子どもの休みを契機に家族が一緒に休むことができる、家族の休みに合わせて子どもが活動できる仕組みづくりが必要だと考えられます。――教育機関が「愛知県『休み方改革』プロジェクト」に期待することを教えてください。教育委員会:この「休み方改革」では、「県民の日学校ホリデー」(あいちウィーク期間中に設定される学校休業日)と、「ラーケーションの日」(校外での自主的な学習活動の日)という、子どもと家族などが一緒に過ごせる仕組みが創設されることになりました。Upload By 発達ナビニュース「県民の日学校ホリデー」は、保護者の休みを促すという側面があります。この休業日は、小・中学校は教育委員会が、高校は各学校の校長が決めます。また、「ラーケーションの日」は、保護者の休暇に合わせて、子どもが一緒に社会学習を楽しむことができる仕組みです。「ラーケーション」とは、ラーニング(学習)とバケーション(休暇)をあわせた造語になります。「ラーケーションの日」をとったことで受けられなかった学校の授業内容は、事前、あるいは事後に教科書などを用いて、家庭で自習する形になります。これらによって保護者の有給休暇の取得が促進されて、ワーク・ライフ・バランスの充実につながることや、学びに対する子どもの主体性が育まれることを期待しています。――近年、不登校の小中学生の数は増加しており、専門家の間では「子どもが心身を休ませる時間の必要性」が叫ばれています。そのような子どもたちにとって「休み方改革」はどのような影響があるとお考えですか。教育委員会:不登校の小中学生が抱えている事情はさまざまですので、「休み方改革」がどのような影響をもたらすかを申し上げることは難しいのですが、「ラーケーションの日」については、子どもが、家庭や地域などの校外で、保護者などとともに行う体験や探究の学び・活動を、自ら考え、企画し、実行することができる日ですので、すべての子どもにとって良い影響があることを期待しています。――「休み方改革」は社会に対してどのような変化や影響があると期待していますか。また、プロジェクト発足後の反響などについても教えてください。地方創生課:2023年3月30日に、県、経済界、労働界、教育界が一体となって「休み方改革」に取り組んでいく「愛知県『休み方改革』イニシアチブに関する同意書」署名式を行いました。多くの問い合わせをいただき、「休み方改革」に対する関心の高さを改めて感じています。本県知事がリーダーを務める、全国知事会「休み方改革」プロジェクトチームにおいても、「休み方改革」を国民運動として展開していくべく、全国の先行事例の横展開、国などへの提言を行っていく予定です。――最後に、LITALICO発達ナビの読者へ、メッセージをお願いします。教育委員会:「県民の日学校ホリデー」や「ラーケーションの日」が学校に導入されましたら、土日などの混雑を避けながら、一緒に過ごしたり体験的な活動を行ったりして、充実した時間を楽しんでいただきたいと思っています。取材協力:愛知県政策企画局企画調整部地方創生課、愛知県教育委員会小児科医にきく「子どもの休息」この愛知県の取り組みは、これからの日本の「休み方」を見直すきっかけとしてさまざまな分野から注目されています。小児科医の藤井明子先生に「子どもの休息」という観点からのこの取り組みについてコメントをいただきました。(小児科医:藤井明子先生より)愛知県『休み方改革』プロジェクトは、子どもだけでなく、子どもを取りまく大人にとっても、「休む」ことを考える良い機会になると思います。休むとは、心と体の休息をとって、リフレッシュすること。せっかくの休みだから充実させなければと、「充実した休みをとる」こともタスクのように捉えては、本末転倒です。充実した休みをとると気負わなくてもいいのかもしれません。家族と一緒に外に出かけるもよし、好きな読書をするのもよし、美味しいもの食べるのもよし、誰かにこうすべきと強制されるものではありません。休みをとって、学校では得られない学びを深めたい子どもいれば、自然豊かな環境を訪れてゆっくりしたい子どももいると思います。お子さん個人個人の自分にあった休み方を見つけられたらとても良いと思います。また同時に、親御さん自身も、ご自身の心も体も休ませる方法が見つかると良いと思います。Upload By 発達ナビニュース
2023年05月31日無料の参加登録受付中!未就学のお子さまやご家族へ届けたい、オンラインセミナーが6/10(土)に開催決定Upload By 発達ナビアライアンス プログラム幼稚園・保育園へ行きたがらない。お友達と遊べない。こだわりが強くなり、癇癪が増えてきた。どのように関わればいいのだろう…。新生活が始まって2ヶ月。ストレスや疲れが溜まってきたり、お困りが増えてきたお子さまへどう向き合ったらいいのか、ご不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか。発達ナビではお子さまとそのご家族に、ご自宅で情報を得られる機会をお届けするために「園生活の悩みサポートセミナー」を開催します。・日時:6/10(土)9:30~12:45(予定)・参加費:無料・形式:Zoomウェビナー配信・参加方法:事前申込必須。下記ボタンよりお申し込みください。・内容:専門家講演、未就学のお子さまを応援する企業によるセミナー※企画調整中のため、今後変更となる場合もございます園生活の悩みサポートセミナーの内容をご紹介お子さまが自分らしく自信をもち、社会参加ができるようになるためには、幼少期からその基礎をつくることが大切です。 この春から周りの環境も変わり、お子さまにとっても保護者さまにとっても戸惑いも大きいのではないでしょうか。本セミナーでは、年齢別・時期別に起こるライフイベントとそれに伴う心境の変化や生じる困り、そしてそれらを通して幼少期から身に着けたい力について解説いただきます。Upload By 発達ナビアライアンス プログラム講師:日戸 由刈先生相模女子大学 人間社会学部 人間心理学科教授/博士(教育学)/公認心理師/臨床心理士/臨床発達心理士横浜市総合リハビリテーションセンター発達精神科外来に心理職として20年勤務し、同センター児童発達支援事業所「ぴーす新横浜」の園長を経て、2018年より現職。Upload By 発達ナビアライアンス プログラム児童発達支援スクール「コペルプラス」代表講師の有元真紀さんに、「園との連携がカギ!子どもの困りごとを解決するコミュニケーション術」をテーマにお話しいただきます。入園・進級後のストレスや園との連携の重要性について、また、家庭での向き合い方や子どもが自立するために必要な自己肯定感やコミュニケーション能力の向上に焦点を当て、具体的なアドバイスをご紹介いただきます。子どもの成長に寄り添いながらサポートするために、その日からすぐに実践できる有益な情報をお届けいたします。Upload By 発達ナビアライアンス プログラム発達が気になるお子さまの子育てをオンラインサポートする「発達ナビPLUS」。 本セミナーでは、作業療法士の福永寿紀先生による発達に特性があるお子さまのこだわりのメカニズムやお困りごとに対する手立てについての解説をお届けします。下記のようなお悩みがある方は、ぜひご参加ください。・マイルールやこだわりを親にも強く要求…・自分の思い通りにいかないと癇癪を起こす・そもそもこだわりが強い理由が分からない※本セミナーは過去に収録した動画の上映になります。Upload By 発達ナビアライアンス プログラムお子さまにあった学習環境の選択肢、通級指導教室・特別支援学級・特別支援学校などの選択肢と特長を、利用していた方々の声とともにご紹介します。具体的には、就学相談/就学先決定までの流れ 就学先が決まるまでのタイムスケジュールや各自治体が行っている就学相談に向けた準備などを取り上げます。また、教育にまつわる準備、進路進級にまつわる教育費用の、現実的な準備についても解説します。たくさんの方のご参加を、心よりお待ちしております。
2023年05月31日学習障害・限局性学習症(LD・SLD)とは?学習障害・限局性学習症(LD・SLD)は、学習において困難さがみられる発達障害の一つです。学校教育が始まる就学期になって診断されることがほとんどですが、就学前の段階で言語の遅れや数えることの困難、書くことに必要である微細運動の困難などがあることでその兆候に気づかれることもあります。主な特徴・症状として・読むことやその内容を理解することの困難さ(読字障害/ディスレクシア)・書くことの困難さ(書字表出障害/ディスグラフィア)・数の理解や計算をすることの困難さなど(算数障害/ディスカリキュリア)の3つに分けることができます。医学的な診断基準とされるDSMでは「学習障害(LD)」とされていましたが、最新版のDSM-5では、名称が変更され、現在は「限局性学習障害/限局性学習症(SLD(Specific Learning Disorders))」と定義されています。限局性学習障害の症状は医学的には「読み」「書き」「計算」の3つの困難さと定義されていますが、文部科学省では知的発達に遅れがないものの「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力の習得・使用に著しい困難を示す発達障害のことと定義されています。参考:学習障害(限局性学習症)|e-ヘルスネット参考:学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)及び高機能自閉症について|文部科学省学習障害・限局性学習症(LD・SLD)の原因は中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されています。しかし、全般的な知的発達に問題はなく、その他視覚障害、聴覚障害、情緒障害などや環境的な要因が直接的な原因ではありません。保護者の育て方や勉強の教え方などで子どもが学習障害・限局性学習症(LD・SLD)になることなどもありません。読むことやその内容を理解することの困難さ、書くことの困難さ、数の理解や計算をすることの困難さなどの、学習における困難さが、知的障害(知的発達症)によるものでないこと、経済的・環境的な要因によるものでないこと、神経疾患や視覚・聴覚の障害によるものではないこと、学習における面のみでの困難であること、という場合に限り診断されます。現在、学習障害・限局性学習症(LD・SLD)の根本的な治療法はありませんが、環境調整や療育などにより困難さが軽減されることがありますので、一人ひとりの症状や特性に応じた対処法が必要です。また、併存症としてADHD(注意欠如・多動症)や自閉スペクトラム症(ASD)を伴う場合も多く見られます。それらの要因を考慮した学習支援が必要となり、家庭・学校・医療関係者の連携が重要となります。学習障害・限局性学習症(LD・SLD)タイプ別特徴チェックリスト、支援方法、接し方など学習障害・限局性学習症(LD・SLD)は読字障害(ディスレクシア)、書字障害(ディスグラフィア)、算数障害(ディスカリキュリア)の3つに分けられます。それぞれの症状には個人差があります。読字障害(ディスレクシア)とは、文字を「読む」ことに困難がある状態のことを指します。読字障害、識字障害、読み書き障害、難読症などと呼ばれることもあります。文章を正確に読むことが難しい、すらすら読むことが難しい、読むことができても内容を理解することが難しいなどの困難を抱えることがあります。書字障害(ディスグラフィア)とは、文字を「書く」ことに困難がある状態のことを指します。文字をマスや行から大きくはみ出して書いたり、鏡文字になってしまうなどの症状が見られることがあります。算数障害(ディスカリキュリア)とは、算数や数式など「数字に関する能力」に困難がある状態のことを指します。数字や数式の扱いや、考えて答えにたどり着く推論が苦手などの症状が見られることがあります。数字に関する能力にのみ障害がある人が多いため、算数の学習を始めてから発見される場合が多いと言われています。学習障害・限局性学習症(LD・SLD)のある子ども一人ひとりの特性に応じて、UDフォント(Universal Design Font:ユニバーサルデザインフォント )や音声ツールの使用、使いやすい文房具の工夫、ICTの活用など、さまざまな支援方法があります。学習障害・限局性学習症(LD・SLD)のある子どもは知的発達に遅れがないため、自分自身に障害があると認識するのに時間がかかることがあります。また、本人の「できるようになりたいのにできない」という気持ちはとてもデリケートです。何気なくかけた言葉や行動が本人を傷つけてしまう場合もあるので、接し方には注意が必要です。学習障害・限局性学習症(LD・SLD)と併存しやすい症状学習障害・限局性学習症(LD・SLD)に多い併存症としてADHD(注意欠如・多動症)や自閉スペクトラム症(ASD)が挙げられます。ADHD(注意欠如・多動症)は、話を集中して聞けない、作業が不正確、なくしものが多いといった「不注意」、体を絶えず動かす、離席する、おしゃべり、順番を待てないなどの「多動性」「衝動性」の特性があり、日常生活に困難を生じる発達障害の一つです。自閉スペクトラム症(ASD)は、「対人関係や社会的コミュニケーションの困難」と「特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」などの特性が幼少期から見られ、日常生活に困難を生じる発達障害の一つです。知的障害(知的発達症)を伴うこともあります。学習障害・限局性学習症(LD・SLD)のある子どもとの生活の様子は?特選連載コラム学習障害・限局性学習症のあるお子さんをもつ発達ナビの連載ライターさんのコラムを厳選してご紹介。「あるある」と共感したり、今の悩みを解決するヒントが見つかるかも…?大人の学習障害・限局性学習症(LD・SLD)関連コラム発達障害に関する情報が広く知られるようになったことで、大人になってから学習障害・限局性学習症(LD・SLD)と診断される方も増えてきました。症状には個人差も大きいので、その人の特性に合った仕事を探すことが重要になってきます。そのほかの学習障害・限局性学習症(LD・SLD)関連コラム。マンガで学習障害を解説/ビジョントレーニングとの関係/関わり方ポイントなどコラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年05月31日神奈川県児童発達支援Upload By 発達ナビ施設情報児童発達支援れたあ二俣川は「発達の芽を大切に育てる」という理念のもと、小集団支援、個別支援、コーナー遊びを重視している施設です。小集団では、専門職員のもとで楽しさを共有しながら、個別の課題などを含めたプログラムに取り組みます。コーナー遊びでは、自分の選択した遊びをリラックスした環境で楽しむことができます。1日の定員を2部制にすることで安全性と安心感をさらに高め、就学も見据えた個々のペースに合わせた支援を行い、楽しみながら通える環境づくりを大切にしている施設です。神奈川県の児童発達支援をもっとみる埼玉県放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報ウィズ・ユーさいたま原山は、アットホームで笑顔の絶えない施設を目指しています。体を動かす発達支援に加え、さいたま桜高等学園の入試に向けた「桜塾」を開校し、子どもたちは日々勉強に取り組んでいます。そのほかにも、音楽教室や美術教室なども開催。音楽を得意とする職員も在籍し、リズムゲームや子どもの好きな音楽をピアノで弾き、音楽を通じた楽しい活動もあります。また、不登校のお子さんの対応も実施。学習支援はもとより、心のケアにも力を注ぎ、ウィズ・ユーさいたま原山が、そのお子さんの居場所になれるような支援を大切にしています。埼玉県の放課後等デイサービスをもっとみる埼玉県児童発達支援Upload By 発達ナビ施設情報アットホームで笑顔が絶えない施設、ウィズ・ユーさいたま原山児童発達支援。この施設では、体を楽しく動かすことができるように、平均台やトランポリンなど、さまざまなサーキットグッズが設備され、小さなお子さんも楽しんで運動発達支援を受けることができます。そのほかにも、音楽教室や美術教室なども開催。音楽に詳しい職員も在籍しているため、ピアノはもちろん、リズムゲームなどを用いて楽しい支援を実施しています。楽しむ心を育みながら、いろいろな活動を通して支援を行う施設です。埼玉県の児童発達支援をもっとみる広島県放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報ビジョンプラスリバティは、個別支援や感覚統合支援、ビジョントレーニング、IT発達支援などを提供している施設です。スタッフは保育士や教員免許などの資格を持ち、子どもたちの支援内容について定期的にミーティングを行っています。年齢や特性に合わせて、主体的に取り組める課題やソーシャルスキルトレーニングなどのプログラムも実施。「学ぶ・働く・考える」だけではなく、それ以上に「楽しく遊ぶ」ということを大切にした支援で脳の発達を促進し、自立へとつながることを目指しています。広島県の放課後等デイサービスをもっとみる「もっと施設の情報を詳しく知りたい!」「見学をしてみたい!」と思ったら、WEBからもお問い合わせが可能です。施設情報ページでは、掲載されている施設の情報を地域ごとに検索して見ることができますよ。
2023年05月30日場面緘黙疑い「支援センターに行くほどじゃない」と言われていた次女が「場面緘黙かも?」となったのは小学1年生のとき。担任の先生から・担任とはとても小さい声でしか話せない・お友達と話せない、コミュニケーションが無い・注目される場面で固まって動けないことがあるというお話があり、スクールカウンセラーと面談することに。そこで「場面緘黙かもしれません」というお話がありました。その後、小学2年生のときに新しい学校に転校しましたが、場面緘黙の症状は変わらずあったので、新しい学校のスクールカウンセラーに相談しました。Upload By まりまりそこでは、「学校に行けていて、勉強もできているから問題ない」とのことで、支援センターなどに相談したほうがいいか聞いたところ、「支援センターなどに行くほどではない」との判断でした。次女の状況は変わらず、ついに支援センターに行くことにただ、次女の症状は変わらず、進級のたびに担任の先生への引継ぎもなく、継続した支援を受けにくいという状況。小学2年生から通っていた児童精神科のカウンセリング担当の臨床心理士さんに相談したところ、「一度、発達支援センターに行ってみては」と勧められて、次女が小学4年生のときに、ついに支援センターに相談してみることにしたのでした。Upload By まりまり支援センターに行って言われたことさっそく!と思って支援センターに電話したところ、面談の予約が取れたのは1ヶ月先。待ちに待った面談でした。担当の公認心理師さんに、場面緘黙の診断が出ていることと、今までの経過を話して、困っていることを相談しました。しかし…Upload By まりまり「次女さん本当はお友達が欲しいと思ってないんじゃないですか?」「一人が好きなら一人で過ごしたほうが良いと思いますよ」「もう見守っていくしかないですよね」と言われてしまったのでした。場面緘黙についてはまだまだ正しく知られていない…?これまで、学校の先生やスクールカウンセラーにも同様のことを言われたことがあったので、「また同じようなことを言われてしまった…」という感じでした。場面緘黙について、ネットで調べたり、本を読んだりすると、決して一人が好きなわけではないことや、二次障害に苦しむこともあるので、早めの支援が必要なことが書いてあります。次女自身の話を聞いていても、話せなくて一人でいてつらい思いをしている…。Upload By まりまりなので、まだまだ場面緘黙についてあまり知られていないから、あのような発言になってしまうのかな…と思いました。使える支援について聞くことができたただ、利用できるサービスなどについては詳しく教えていただけました。私が住んでいる地域では、支援センターでの活動等は特になく、放課後等デイサービスとか、進級の際に担任の先生への説明に使える個別の支援シートなどがありました。次女はその後、学校との相談で、小学校の「ことばの教室」に通うことになったので、これらのサービスを利用することはありませんでしたが、こういう支援があると知ることができたのは、とても良かったと思います。支援センターに行ってみて場面緘黙が分かってからかなり時間がたったあとに支援センターに行ったのですが、思ったことは、「もっと早く行ければよかったな~」でした。面談では、思ったような言葉は得られなかったけど、相談先が増えたことや、使えるサービスについて分かっただけでも安心感につながりました。Upload By まりまりただ、小学生より、未就学児に対する支援のほうが充実しているので、もし、わが子の発達について気になることがあるのなら、早くから支援を受けられるように動いていくことが、すごく大事だなと思いました。執筆/まりまり(監修:新美先生より)場面緘黙のあるお子さんの、支援センターに相談に行くまでと、行ってどうだったかについて教えてくださりありがとうございます。場面緘黙については、記事内でまりまりさんが教えてくださったように、お子さんに直接かかわる園や学校の現場での理解や対応がまちまちで、不十分なことも実際少なくありません。場面緘黙のあるお子さんは、ほとんどしゃべらなくても、一通りのその場で必要とされることをやりこなしてしまうので、大きな問題があるととらえてもらえないことがよくあるのです。でもその内心どう感じているかについては、一人ひとり違っています。場面緘黙のあるお子さんは、圧倒されやすかったり不安を抱きやすかったりする方が多いですし、そもそも学校という外の世界で、十分に表出できないというだけでとても不便ではあるはずです。しゃべれないだけでなく、行動が固まってしまうこともあります。できれば場面緘黙に詳しい専門家につながって、学校での対応等について相談できたほうが安全でしょう。またまりまりさんのように、インターネットや書籍等で、適切な情報にアクセスしておくのも大事ですね(場面緘黙の相談ができる専門家が近くにいるとは限らないので)。今回お聞かせいただいたエピソードでは、「支援センター」にも場面緘黙に詳しい専門家がいたわけではないようで、すでにインターネット等で知識を得ていたまりまりさんにとっては十分納得のいく相談にはならなかったようです。それでも、使える支援サービス等を知ることができたり、地域の支援センターにつながっておくことでもしかしたら学校のほうの対応がかわることも多少あったでしょうか。まりまりさんのエピソードのように、場面緘黙については相談する人によって、返ってくるアドバイスがまちまちなことはとてもよくあるので、おや?と思ったらまた機会を見て別の相談窓口にアクセスすることもよいことがあります。…というか、場面緘黙の理解が現場で広まっていくようにしないといけないのはやまやまですが…。今回のお話自体が啓発につながると思いますし、私自身もいろんな場所で場面緘黙についてもお話ししていけるようにしたいと思いました。ありがとうございました。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年05月29日「ちょっとほかの子どもたちと違う?」幼稚園で感じた息子への違和感。でも園からの指摘はなし現在中1の長男は、幼稚園のころから「ちょっとほかの子どもたちと違う?」と思うことが多々ありました。例えば…・まわりの子どもが集団で闘いごっこをしているときに、一人か少人数で砂遊びや木登りをしている。・朝の会の時間に教室に入らず、ホールで遊んでいる。・園庭や公園で遊んでいるとき、ほかの子どもは「帰るよ。来ないと置いて行くよ」と言われると「置いてかないで」と慌ててお母さんのところに行くのに、息子は私の姿が見えなくなっても余裕で遊び続けている。・遠足など、本人も楽しんでいた行事が終わるとき、「全然楽しくなかった!初めからきたくなかった!」と言うことがある(最近本人に聞いたら、名残惜しい気持ちをこのように表現していたと教えてもらいました)。などです。こうした違和感は積み重なっていましたが、幼稚園の先生から何も言われませんでしたし、当時の私はこの違和感をしっかり言語化できる状態ではありませんでした。また、うちの学区の小学校には特別支援学級がなかったため、小学校は通常学級に入学することになったのです。自信喪失がきっかけ?小2の冬から不登校、そして通級へしかし長男は、小2の冬から不登校になりました。これといったきっかけは分からないのですが、強いて言えば、秋に教室で吐いてしまったこと、プリント系の習い事をしていたのですが問題が難しく解けなくなってしまい退塾したこと、また当時スイミングを始めたのですが、まわりの子どもたちのように泳げずやめてしまったことなどが続き、自信をなくしてしまっていたのかもしれません。そして不登校が続き進級した小3の始業式、長男は私と一緒なら登校することができました。その次の日は激しく抵抗しましたが、そのとき、外まで迎えに出てくれた先生に、「今日は帰っていい。その代わり明日は絶対おいで」と言われ、次の日は登校することができました。それから1年間、毎日、私は長男と一緒に学校へ行きました。Upload By ユーザー体験談長男は抵抗しても教室に入れば楽しそうに過ごしていたので、やがて学校での待機が必要なくなりました。帰りも一人で帰れるようになり、長男が教室に入ったら私はパートの仕事に行くようになりました。おそらく、小3になってクラス替えがあったのと、担任の先生が男の先生になったことで気分が変わったのかな、と思っています。とはいえ毎日送るのは大変で、4歳差の次男も一緒になって「保育園行きたくない」というので、仕事に遅刻することもたびたびありました。それでも、「幼稚園に入ってすぐに弟が産まれて甘えられなくなったから、今一緒に通うことで甘えたい気持ちを満たしているのかな」と思ってつき合いました。そして、登校ができるようになったタイミングで、長男は教育センターで知能検査を受けました。ほかの数値に比べて処理速度指標(PSI)が低い傾向にあるので、もしかしたら視覚情報の認識、記憶などが苦手だったり集中力がすぐに切れてしまうことが多く、勉強などに苦手意識を強く感じているのかもしれないと説明されました。診断はおりませんでしたが通級指導教室を勧められ、通っている学校には通級指導教室がなかったため、小3の2学期から他校の通級指導教室を週1回利用するようになりました。通級指導教室は「息抜きになればいいな」と思っていた程度でしたが、ここでは苦手な漢字を個別で指導してもらったり、得意なプログラミングをやらせてくれました。SST(ソーシャルスキルトレーニング)もできたらと思いましたが、ほかのお子さんたちと一緒に取り組む課題を出しても、協力してやることはできなかったと通級指導教室の先生から聞き、本人も前向きに取り組める個別指導中心でみてもらったほうがいいかなと私も考えるようになりました。コロナ休校明けに再び不登校、起立性調節障害との診断、そして学校に特別支援学級ができた登校が習慣づいたころ、新型コロナウイルス感染症による休校があり、その休校明け、小4になった長男は再び不登校になってしまいました。Upload By ユーザー体験談休校中の長男は、出された課題はそれなりにやっていました。それなのに、休校が明けたらその範囲をまた授業でやっていたようで、「家でやったことは意味がなかった」と感じてしまったようです。また、分散登校が終わったら密な状況になり、「三密を避ける」が徹底されていないこと、マスクをしっかりつけていないクラスメートがいることにも納得がいかなかったのだと思います。また、友人と遊ぶ約束をしても行ってみると誰もいなかったことが2回続いたり、下校中に転んだと膝を深く擦りむいて帰ってきたことがありました。本人は何も言いませんが、おそらく、友人関係で何かトラブルがあったのかもしれないと思っています。夏休み明けは朝起きられない日が出てきて、近所の小児科に行ったら「起立性調節障害でしょう」と言われました。行ったり休んだりを繰り返すうちに、私も夫も欠席の連絡をするのが苦痛になり、「無理に行かせなくていいんじゃないか」と思うようになり、行きたくない気持ちを受け入れる選択をしました。その後小5になったとき、次男が小学校に入学しました。そしてこのとき学校に特別支援学級ができたのです。次男も気になるところがあり、就学前に知能検査を受けていました。診断はおりなかったので通常学級に進んだのですが、週末の宿題に苦手意識のある作文が出されるようになり、この宿題を渡される金曜日ごとに休むようになってしまいました。そしてそのうち金曜日以外も行きたがらなくなりました。長男を追うように不登校になった次男…。私は二人をつれて、メンタルクリニックを受診しました。すると先生に、「二人とも診断をつけるなら自閉スペクトラム症(ASD)」と言われたのです。長男については「やっぱり」、次男については「ADHDかと思ってたけれど、自閉スペクトラム症なんだ」と思いました。ともあれ、診断がついて安心しました。これで支援が受けやすくなると思ったからです。その後、次男を特別支援学級に転籍させました。長男は特別支援学級に抵抗があると口にしていたのでそのまま通常学級に在籍しました。Upload By ユーザー体験談次男は特別支援学級に移ってからも気の向いたときや、参加したい行事のときだけ登校しています。初めは私が教室の中につき添っていましたが、次第に次男の席の横、教室の隅、教室の外と、つき添う場所をはなしていきました。今でも行く前は「面倒臭いなあ」と言われたりしますが、教室に着くと楽しそうにしています。長男は、自校に通わなくなっても通級指導教室だけは通い続けました。小6の後半、パソコンの授業なら参加するというので、自校の担任の先生がパソコンを使う時間を設定してくださり、その時間だけ参加しました。長男はパソコンが得意なので、ほかの子どもが息子の周りに集まり、その時間は長男も楽しそうでした。このときばかりは、「こんな風に学校を楽しんでもらいたい」と思う光景を見ることができましたが、授業が終わるやいなや、息子は給食も食べずにさっさと帰ってしまいました。「おれも初めからこのクラスがよかった」という発言に通常学級を選んだことを後悔…そして月日は流れ、長男が卒業間際のときのことです。私は、長男から忘れられない言葉を聞くことになりました。次男の過ごす特別支援学級を見て「おれも初めからこのクラスがよかった」と、ふと言ったのです。やっぱりこっちの方が合っているよね、初めに気がつかなくてごめんね、ずっと苦しかったね…。越境してでも、特別支援学級に入れればよかったかな、そんな思いが私の中に渦巻きました。違和感を無視しないで特別支援学級を選んでいたら、長男は不登校にならず、学校を楽しいと思えたかもしれない…今となっては正解は分かりませんが、とても考えさせられた出来事でした。Upload By ユーザー体験談現在の長男は、学区の中学校には行きたくないということで、私立の不登校特例校に籍を置き、主にオンラインで授業に参加しています。週1回は登校するようにと私や夫から言っており、今のところそれは守ってくれていますが、本人いわく「できれば週1回すら行きたくない」とのことです。私立中学在籍だと市の制度の通級指導教室は使えないそうで、今は通っていません。今後、できれば学校で楽しく過ごせるようになってほしい、学校が無理なら放課後等デイサービスや、オンライン上でもいいので仲間をつくって、人と関わることへの抵抗感が減るといいな、と親としては思っています。自分に自信を持って、得意を伸ばせたら、幸せな人生を送れそうな気がします。子どもたちには、幸せな人生を送ってほしいと心から願っています。イラスト/カタバミエピソード参考/ちゃいぬ(監修:新美先生より)少し後悔したエピソードをあえてお話しくださってありがとうございました。大人数の児童が一つの教室の中で全員ほぼ同じことをやるのが当たり前という現在の公教育の枠組みでは、さまざまな理由でその場所で学習したり生活することが苦しくなる、学校に合わないお子さんが一定数いるのはもはや当然のことだと思います。長男さんの7年余りの学校とのおつき合いの歴史をお伺いして、その都度一生懸命頑張っていた長男さんとそれに寄り添ってご苦労されたお母さまの様子が伝わり、涙しました。本当にお疲れ様です。通常学級の流れには何となく違和感を感じたり、ひそかにストレスをためてしまうお子さんが、心身疲弊して学校に行けなくなったり、それでもちょっとよくなるとまた頑張って登校して、再びストレスをためて疲弊してという繰り返しの日々を送るのは本当に苦しいです。そんな中で、自分らしさにフィットする通級指導教室の先生と出会えたのは長男さんにとって良かったですね。長男さんが、小学校卒業式間際に「おれも初めからこのクラスならよかった」とおっしゃられたとのこと。これはお母さまとしては後悔してしまう言葉だったかもしれません。この時期の長男さんの本音からの言葉だったとは思います。もっとスムーズに、本人のペースで過ごせる場につながっていたらというのは振り返れば思うことでしょう。そうはいっても、環境としてはベストじゃなかったとしても、長男さんとお母さまが、試行錯誤しながら過ごした6年間のなかで、長男さんご自身がさまざまに実感して、自身の糧として得られたものがたくさんあるのではないでしょうか。その経過があって自己理解が深まっているからこその「おれも初めからこのクラスならよかった」という言葉が長男さんから出てきたのかもしれません。支援者の側としては、今回のエピソードからも、本人に適した環境を早めにきちっと情報提供してつなげていかないといけないということについて、身を引き締めることは必要です。現在の長男さんが、不登校特例校でオンラインで授業を受けたり、週1回登校したりとマイペースに学校と付き合えているとうかがえてほっとしています。自分に合った環境を選んで、自分らしい生活をしていくなかで、信頼できる人間関係を増やしていけることを願っています。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年05月28日「動くなら早い方がいい」と言われ、年中の2月に小学校へ初連絡現在11歳の息子は、3歳児健診で指摘されたことをきっかけに、保健センターで何度か新版K式発達検査を受けていました。その際に療育についても説明を受けていましたが、まだ早いのではと思っていた私。しかし、保育園の年中に上がるときに、「このまま年中クラスに上がるか、それとも、もう1年年少クラスで過ごすか、ご家族で考えていただけませんか?」と聞かれ、愕然。保育園の先生に助言されるくらい、息子の発達は遅れているのだと気づき、療育を受けようと決心しました。療育では、息子の発達支援だけでなく、保育園卒園後の進路についての情報も先生方から得ることができました。「動くなら早い方がいい」と言われた私は、すぐに行動に移しました。特別支援学級、通級指導教室の説明会、以前同じ療育園を利用されていた先輩ママさんの講演会などに積極的に参加。そして年長に上がる前の2月、初めて学区の小学校へ連絡、行事などが落ち着く6月くらいから校長先生との面談を開始しました。Upload By ユーザー体験談小学校入学まで、月1ペースで小学校の行事へ。特別支援学級の授業にも参加校長先生との面談では、主に家庭や保育園、療育での息子の様子をお話ししました。・発達が気になり始めた時期・言葉が遅い息子は通常学級での授業形態にはついていけないのではないかという不安・特別支援学級に入りたいことなど、進路の希望から、不安に感じていることまであふれるように話し続けてしまいましたが、校長先生はじっくりお話を聞いてくださいました。幸い特別支援に力を入れている小学校だったこともあり、参観日の見学や行事の参加など積極的に声をかけていただき、入学までほぼ月イチのペースで息子を連れて小学校へ行くことになりました。息子も小学校に慣れることができ、とてもありがたかったです。授業参観では、特別支援学級の見学をさせてもらったのですが、せっかくだからと息子も授業に参加!「韓国のおもちゃをつくって遊ぼう」という内容だったので、当時年長児だった息子も問題なくできました。教室で作業をする息子の姿を見て、おぼろげながら小学生になって学校で勉強する息子のイメージが浮かび、こみあげてくるものがありました。息子自身も、「小学生になったらこんな風に学校で過ごすのかな」と感じられたのではと思います。本当によい経験でした。おもちゃができ上がると、ほかの生徒たちと広い体育館へ移動。息子はとても楽しそうに走りまわっていました。その後、通常学級も見学をさせていただこうと思った私。当時の1年生に保育園で仲良くしてくれていたお子さんが何人かいたので、「その子たちが勉強している様子を見に行こうか」と息子に声をかけました。授業中ということもあってか、通常学級の教室は、にぎやかに工作に取り組んでいた特別支援学級とは大きく違いました。通常学級の教室に近づくにつれ、シーンと静まりかえった廊下を歩く息子は、ただならぬ様子を感じ、ぐずぐずと泣き始めてしまいました。たまたま各教室を見回っておられた校長先生に声をかけていただいて、すぐに特別支援学級の教室へと移動させていただきました。私は「あぁ、やっぱり息子は特別支援学級に行くほうがいいんだ…」と改めて感じた出来事となりました。Upload By ユーザー体験談また、そのほかの行事に参加させてもらったときにも、授業を体験させてもらった際の特別支援学級の先生が息子のことを覚えていてくれて、いろいろと気にかけていただきました。息子も何となく先生のことを覚えていたようで、うれしそうにしていたのも心強く感じました。わが家以外にも就学前のお子さんが学校行事に参加されていることはあったのですが、ほとんどが在学中の生徒のきょうだいでした。見学目的で参加していたのはうちだけだったと思いますが、いい経験をさせてもらえたので、早めにお願いして本当によかったと思っています。特別支援学級に入学し、成長していく息子。交流級では友達もでき、一緒に下校も息子は、予定通り特別支援学級へ入学しました。クラスは1年生の男子が2人、2年生の男子が1人と、近い年齢の子たちばかりで、かつ少人数だったのもあり、息子にとってとても過ごしやすい環境に恵まれました。担任の先生は、未就学児のときに息子を覚えてくださった先生とは違い、他校から異動で来られた先生だったのですが、前任校でも特別支援学級を担任されていたこともあり、とても慣れた様子。安心してお任せできました。ただ息子は、2年生の男の子に対してライバル心を抱くようになった時期がありました。その子のことを変なあだ名をつけて呼んだりしていたようで、その都度先生からお電話をいただきいろいろと話をさせていただいたものです。その対抗心もいつごろからか落ち着いてきたようで、今は仲良くしています。特別支援学級ということで、どうしても通常学級の子どもたちと関わることも少ないのですが、通っている学校では、特別支援学級の様子を通常学級の子どもたちにも知ってもらうという取り組みをしており、授業風景を撮った動画を、通常学級の子どもに見てもらう取り組みなどもあります。そのおかげもあるのか、通常学級の子どもたちからも、それなりに受け入れられている様子です。息子は、3年生からは理科、4年生から理科と体育などを交流級で受けるようになりました。みんなと協力しながら、実験などにも楽しく取り組んでいるようです。廊下で交流級の友達から声をかけてもらったりすることもあり、先日は一緒に下校したと教えてくれました。印象的だったのは、「総合」の交流級で点字について学ぶ際、よく気にかけてくれる友達が「一緒に点字でしりとりしよう」と声をかけてくれたんだと、うれしそうに教えてくれたことです。体育も、リレーやサッカーなどチームプレイが要求されるものも出てきましたが、教えてもらいながらがんばっているようです。Upload By ユーザー体験談見えてきた中学進学。候補をいくつか考え中です息子も11歳になり、今は中学進学をどうすればいいか頭を抱えています。第一候補は学区内の中学の特別支援学級なのですが、現在特別支援学級の様子も不明なので、通常学級+通級指導教室でもいけるのかどうか…と悩んでいるところです。Upload By ユーザー体験談母一人、子一人の家庭なので、今後は親なきあとのことも考えなければならなりません。息子には、しっかりと独り立ちをし、困ったときには周りの人に頼りながら生きていけるような人になってほしいと思っています。優しくユーモアもあり、何とも憎めない愛嬌のある子だと思うので、そこは失わず、楽しい人生を歩んでほしいと願うばかりです。イラスト/吉田いらこエピソード参考/あきっち(監修:新美先生)小学校に上がる前の、就学時の環境選びについて詳しくお聞かせいただきありがとうございました。発達の凸凹があったり、集団生活でストレスでかかりやすいお子さんの場合、年中後半ごろに就学に向けて動き始めるのはよいですね。ともすると、「だいぶ成長したから、あと1年経てばもっと成長して、もっとみんなと一緒にやれるようになるのではないか?」と先延ばしにしたくなることもあるかもしれませんが、保育園・幼稚園から小学校に入学するというのは、とてつもない大きな環境変化になります。幼稚園・保育園の集団生活で一定の期間大変だと感じたことがあったお子さんは、次の大きな環境変化で苦労する可能性はあるので、就学までの準備と引継ぎは通常よりも丁寧にやっていくほうが安心です。早い段階で見学や体験をすることで、小学校という環境でどのようなサポートが必要か必要じゃないか、じっくり見極められるのはとても良いと思います。ただ、時期については地域や学校によって、早すぎると見学や体験を受け入れていないところもあると思いますので、園や学校、教育委員会などに問い合わせて手順を踏んでいきましょう。ここ数年のうちに特別支援教育に関することは日進月歩に変化していて、そもそも親世代が小学生のころのイメージとは様変わりしています。実際見学に行ってみると、親のほうも具体的にイメージできるようになるかと思います。お子さんによって慣れない環境で不安になりやすい場合、見学や体験自体で不安を増長させて学校にネガティブなイメージを持ってしまうこともあります。慣れない場所が苦手なお子さんの場合は、見学や体験の内容自体をよく打ち合わせして、ご本人にしっかり見通しを示して参加されるとよいでしょう。見学や体験は可能な範囲で複数回行けると、いろんな場面が見られますね。とはいえ、お伺いしたエピソードでは、月1回という高頻度でさまざまな機会に学校に呼んでいただいたいて就学につなげてくれたようですが、近年は特別支援の希望者も増えて、思うようには進まないことも、実際にはあるかもしれません。実際の見学や体験については地域の学校の実情に合わせて相談してみることをおすすめします。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年05月27日発達障害がある彼に恋をして感じた「人は分かり合えるのか?」という思いを映画にLITALICO発達ナビ牟田暁子編集長(以下――)はじめに、発達障害がある主人公をテーマにした映画を撮ろうと思った理由を 教えてください。葛里華監督(以下、葛):実は私、発達障害がある方に恋をした経験があるんです。最初はその人に発達障害があるとは知らなかったのですが、「あれ?」と感じることが多くなってきて…。彼のことが好きだから、何か共通の話題を探そうと一生懸命で。それで「中学時代は何の部活だったの?」と尋ねたら「中学には行っていなかった」と、会話が続かなかったり…。そんなとき、彼が「障害者手帳」(※編集部注:精神障害者保健福祉手帳)を持っているという話をしてくれて、そこではじめて「発達障害」という言葉を知りました。そして彼と過ごす中で「人って分かり合えるのかな」、「言葉ってとても無力だな」、「人って変わることができるのかな」などと考えさせられることがありまして、そういったことをいつか映画にしたいなと思っていたのが、大きな理由ですね。Upload By 発達ナビ編集部――恋をされていた経験があるんですね!映画の冒頭では、透の障害名を聞いてインターネットで検索をする春の姿があります。ですが、物語が進むにつれ、透そのものをみつめ、知りたいと願う一途な姿が描かれていきます。監督が伝えようとしているのは、その人そのものを見つめ、知りたいと思い、関係性を築く――その大切さではないかと感じました。また、映画のタイトルにある「はざま」という言葉、これは「グレーゾーン」を意味しているのか、それとも彼と透の間で揺れる春を意味していたのでしょうか。葛:いろいろな揺らぎを表現したかったというのもあります。また、今回の映画を撮るにあたって、何名もの発達障害当事者の方々に取材をさせていただいたのですが、みなさんのお話を聞く中で、診断「基準」に達していなくても、生きづらさを抱えている方が多くいらっしゃると感じました。確かに、基準があるから診断が出て、(周囲の理解が得られたり、環境調整がされやすくなることなどにより)生きやすくなる部分もあるとは思うのですが、かえってその基準がいろいろな生きづらさを生んでしまっている可能性もあるなとも…。そういった「はざま」の生きづらさも表現できたらいいなと思って、このタイトルにしました。当事者を取材、勉強会を重ね「もっともっと知っていかなければ」と強くした思い――なるほど。今、お話に出たように、当事者への取材や発達障害について勉強会をされたとうかがったのですが、これによって新たに感じたことはありましたか?Upload By 発達ナビ編集部宮沢氷魚さん(以下、宮沢):僕の身近な人に、発達障害の当事者の方がいるんです。僕はその彼を赤ん坊のときから知っていて、子どものころ学校でうまくいかなかったときや、居場所を見つけて楽しくやっていたとき、成長して自分の感情と体がちょっとアンバランスになってうまくコントロールができない瞬間とか、いいところも悪いところも全部見てきたので、発達障害についてそれなりに理解があるつもりでました。でも、勉強会やたくさんの当事者の方にお会いする中で、僕が知っていた部分というのはとても限られたものであるということが分かりました。発達障害と一言でいってもさまざまな特性があって、本当にさまざまな方々がいるんです。全然知らなかった、もっともっと知っていかなければという思いがとても強くなりました。また、この映画は2年前に撮影したものなのですが、今回公開するにあたって改めて勉強会をしたんです。なかなか1つの役でここまで時間をかけて学ぶということがなかったのでとても新鮮ですし、みなさんから教えていただいたこと、自分が学んできたことを、発達障害をよく知らない人へ伝えていけたらいいなと思っています。葛:透くんの設定をより固めていくために、たくさんの当事者の方に好きなものは何か、どういうときに落ち着くか、不安になるかといった、それぞれのパーソナルの部分をかなり取材させていただいたのですが、みなさん自然や光るもの、月、星が好きとおっしゃっていました。おそらく、人間と違って自然は見たそのままの情報を心に取り入れられるものだから、そういう部分に安らぎを感じられるのかなと改めて思ったので、劇中ではより一層光を意識した撮影をしましたね。――そうしたシーンが、映画の中でも描かれていましたね。私の娘は、自閉スペクトラム症ではありませんが、重度の障害があります。娘も動物とか自然が大好きですね。おそらく、監督がおっしゃるように、見たまま、嘘偽りがないから好きなんだと思います。Upload By 発達ナビ編集部目の前にあるものに100%気持ちが乗る透のようにありたい――お二人にとって印象的だったシーンを教えていただけますか?宮沢:予告にもある、雨に打たれながら透くんが「雨だ!」ってはしゃいでいるシーンですね。透くんは、自分が好きなもの、木に対してもそうなんですが、楽しいと思ったことに対して、100%気持ちが乗る瞬間がたくさんあるんです。目の前にあるものをあれだけ純粋に楽しめて、それを春ちゃんに共有したいという思いが真っすぐで、自分もそうありたいなと思えたシーンでした。 僕は大人になってから、そういう感覚がどんどんなくなっていってしまって、外に出て雨が降っていたら、傘忘れたどうしようってネガティブになってしまうんですけど(笑)。でも、透くん は後先考えずにその雨という大好きな瞬間を楽しめて、それがとても魅力的だなと思いました。Upload By 発達ナビ編集部葛:私もこの雨のシーンは好きです。あと、劇中で透くんが春ちゃんに「あるもの」を渡すシーンがあるんですが、それがとても好きでこだわって撮りました。ありのままの透くんが好きだった春ちゃんに違う気持ちが芽生えてくるシーンなのですが、これは透くんと春のコミュニケーションの方法が違うからこそ生まれたシーンかもしれないと思います。このシーンの透くんの笑顔が、本当に最高なんです。――確かに最高の笑顔でした。この映画は、宮沢さん自身も審査員として参加された「感動シネマアワード」の大賞を受賞された作品で、最初から透くん役は宮沢さんというイメージで当て書きされたと伺っています。宮沢さんを主人公にと思われた理由を教えていただけますか?葛:私が恋をした方や、ほかに出会ってきた発達障害当事者の方々に共通していると感じているのは、みんなとても純粋でまっすぐだということです。宮沢さんは、とても澄み渡った演技されて、その雰囲気が画面越しにも伝わってくる方です。あと、クールでかっこいいのに笑うとクシャっとなって、無邪気なかわいらしい印象に変わります。透くんをそんな純粋で透明感のあるキャラクターにしたら、みなさんにその魅力が伝わるのではないかと思ったので、この宮沢さんのイメージからキャラクターをつくって、脚本を仕上げていきました。Upload By 発達ナビ編集部――本当に透くんは引き込まれる、魅力あふれるキャラクターでした。では、宮沢さんが審査員としてこちらの作品がいいなと思ったポイントはどちらですか?宮沢:本当にたくさんの作品をご応募いただいて、どの作品を映画化しても面白くなったと思うんですが、最終的に残った作品を改めて全部読ませていただいたとき、特別にいいなと思ったのが「はざまに生きる、春」でした。作品とキャラクターへ対する愛情がすごくて、この思いを絶対映画化すべきだと感じましたね。まだ葛さんにお会いする前でしたし、どういう方かも知らなかったのですが、この人の作品は信用できると確信できました。役者として、このように選ぶところから関わらせてもらっているので、僕にとっても思い入れが強い作品です。ストッパーをかけないと話し続けてしまうところは透くんと近いものがある――こちらの作品には透さん以外にも発達障害の当事者が登場します。また春自身も周りから理解されない“こだわり”を持っていました。障害のあるなしにかかわらず、みななにかしらのこだわりがあるのではないかと思うのですが、宮沢さんにもなにかこだわりはありますか?Upload By 発達ナビ編集部宮沢:ありますね。僕は川が好きで、大学の卒業論文のテーマが「東京都の川の環境変化」だったくらいなんです。川の話になると、自分で強制的にストッパーをかけないと話し続けてしまうので、そういうところは透くんと似ています。透くんはペットボトルも好きなんですが、その話をしているときもただ話しているのが楽しいわけではなくて、ペットボトルがすごい理由を伝えて、相手に分かってほしいという思いがおそらく強いと思うんです。「このすごさが分かりますか」という。僕もそうで、自分が話している時間は別にそんな好きではなく、話して相手に理解してもらえた瞬間に1番喜びを感じます。そういうところは、透くんと近い物を感じましたね。――川がお好きなんですね。どのような川が好きなんですか?渓流でしょうか?宮沢:もちろん、渓流釣りもするので山の方の綺麗な美しい川も大好きだし、それはそれで良さがあるんですけど、 より好きなのは、身近にある神田川とか隅田川とか、住宅街を流れている小さな川です。普段見ているけれど、あまりみんなが関心のない川が(笑)。理解することは先だったとしても、まずはみなさんに知ってもらいたい――最後に、LITALICO発達ナビの読者へ、メッセージをお願いします。Upload By 発達ナビ編集部宮沢:現在、発達障害の当事者の方々はマイノリティ、つまり少数派として分けられてしまっていると感じています。そんな今、僕は発達障害を知ろうとするだけでも、世界にとって前向きなことだと信じています。知らないというのは、1番怖いことです。たとえ理解することがまだ「その先」だったとしても、まずはみなさんに知ってもらいたいと思います。もしかしたら、この作品によって突然大きく何かが変わることはないかもしれないけれど、ちょっとでもみなさんの中に発達障害という言葉だけでも残ってもらえれば、この作品をつくった意義があると思っています。ぜひご覧いただいて、みなさんに感じていただきたいです。葛:宮沢さんが言ってくださったように、たくさんの人に届いて、その人たちの気持ちや考え方が少しでも変わるきっかけになったらうれしいですね。また、今悩んでいたり、困っている人がこの作品を見て、「こういう道もあるのかな」、「こういう形もあるのかも」と思って、心が少しでも明るい方へ変わっていってくだされば、1番いいなと思います。――ありがとうございました。「はざまに生きる、春」上映情報Upload By 発達ナビ編集部5月26日(金)より全国ロードショー仕事も恋もうまくいっていない雑誌編集者の小向春(小西桜子さん)は、取材で「青い絵しか描かない」こだわりをもつ画家・屋内透(宮沢氷魚さん)と出会い、純粋な透に強く惹かれていきます。この透の魅力は、自閉スペクトラム症の特性からくるものでもありました。空気ばかり読み続けてきた春は、嘘がつけない透へどんどん思いを募らせていくのですが、やがて「誰かの気持ちを汲み取る」ことが苦手な透に振り回されるようになり、思い悩むようになります。二人は分かり合うことができるのか、人と人とのはざまを飛び越え、春へと踏み出す姿を描く純愛物語です。監督・脚本:葛里華出演:宮沢氷魚、小西桜子配給:ラビットハウス※ボタンをクリックすると発達ナビのサイトから映画『はざまに生きる、春』公式サイトに遷移しますインタビュー:牟田暁子撮影/タムラケンジ
2023年05月26日聴覚過敏があるタケル音に過敏で、家の外から聞こえてくる車のクラクションや、排気音、家族が話している声にもいちいちイライラし、時には火のついたように泣いていたタケル。しかし、幼稚園に行くころには、自分が不快な音を聞いたときにひどく怒りを感じたり、泣いたりしていることに気づいたようです。イライラしてくると「何か嫌な音があるのかもしれない」と、自分でその場を離れたり、耳を塞いだりするようになりました。Upload By 寺島ヒロ調子が悪いといつもは平気な音でもダメになる何デシベル以上はダメとか決まっているわけではなく、ある程度の本人の調子の波があり、同じような音でも気にならないときと、気に障って仕方がないときがあるようです。例えば、私と夫が会話している場合、普段は目の前で話していても全く気にしていませんが、調子が悪いときには隣の部屋からでも「ちょっとうるさいよ!」と言ってきます。わが家ではこんなとき、タケルがつらくないよう会話を中断し、連絡事項があった場合はメールなどで伝達することにしています。癇癪を起こす息子に「それは理不尽だ!」なるべく息子に負担をかけないようにしようと心掛けている私ですが、「さすがにこれには…」と思う出来事がありました。息子は4〜5歳のころから眠れなくて困ったり、逆に起きようとしても身体が自在に動かなかったりと、睡眠に困難を抱えるようになりました。9時か10時ごろには布団に入るのに、それから深夜12時か1時まで眠れません。「本を読もうか?」「一緒に寝てあげようか?」などと声掛けしても「自分で眠れる!」と頑なに拒否します。私も夜は漫画の仕事をしていたので、あまり構っている余裕がなく、ふすま越しに隣の部屋で様子をうかがうだけでした。タケルは眠れないでいる間、ずっとゲームをプレイしているときの音楽と効果音を頭の中でリプレイして口ずさんでいます。声が聞こえなくなって、そっと見に行くと、疲れ果てて眠っているといった具合でした。Upload By 寺島ヒロその夜も、9時ごろには布団に入りましたが、全く眠気が来ていないようでした。そしてそろそろ深夜12時になろうかというころ、不意に唸るような声が聞こえてきました。耳を澄まして聞いてみると...どうやらタケルは泣いているようでした...!部屋に入って行って「どうした?キツい?熱測ろうか!」と言うと、タケルは真っ赤な顔でバタバタっと跳ねると「熱ない!うるさくて眠れないんだよ…!」と叫びました。うるさい?いえいえ、もう深夜ですから家の前に車は走ってないし、誰も喋っていませんよ?Upload By 寺島ヒロ背中をさすりながらしばらく話を聞いてみると、タケルは込みあげてくる自分の嗚咽の声が「不快」なのだと言うのです。なんと自分の声がうるさくて眠れなくてパニックになっていたのでした。眠れないプレッシャーで…真面目な性格のタケルは眠れないことを気に病んでいたのでしょう。そのせいで普段なら意識しない自分の声を「不快な音」として脳が捉えてしまったのかなと思いました。結局、その日は幼稚園は休んで良いことにして、一緒に紅茶をいれ夜のおやつを食べました。テーブルに着いたときはコップを持つ手が震えるほどでしたが、コップが空になるころには落ち着き、深夜3時ごろには笑顔で眠りにつくことができたのでした。執筆/寺島ヒロ(監修:初川先生より)タケルくんの聴覚過敏にまつわる「ちょっと面白い(?)」エピソードをありがとうございます。そうか、自分の声(嗚咽)がうるさく感じられて眠れなくなってしまったのですね。私もそのことだけ聞くと、なんと興味深いと思ってしまいますが、当時のタケルくんはそれで本当につらかったのでしょうから、興味深く思ったり、面白がったりしている場合ではないのかもしれないですが…。コンディションの良くないとき(おそらく体は疲れてたでしょうし、そんな状態のときも含め)は、自分の声すら引き金になってしまうのですね。さて、眠りに関して、うまく寝つけない場合、寝つけないことでより一層気持ちが焦ってしまうことなど、さまざま難しさを抱えているお子さんはいますね。生活リズムとして寝る時間はある程度一定にしたいし、ただ、眠くないのに寝ようとしてもつらいしといったところで悩まれる保護者の方も多いように感じます。発達に関する主治医の先生をお持ちの方はその方に、また、主治医がいなくても気になる場合は小児科でご相談されてもいいかもしれません。日中の過ごし方を工夫したり、寝る前にいわゆる入眠儀式としてルーティンを組むといった工夫をしたり。寝ること自体をどう捉えるかを話し合ってみたり(寝ないと幼稚園行けないよ!というルールだと余計焦ってしまうタイプの子もいるかもしれないですね)。いろいろと工夫できるところはあるかもしれませんが、それは長期的な話で、今夜明日どうするというところで言えば、翌日は幼稚園を休むことにしてまずはおだやかな時間を取られた(夜のおやつでほっと一息、気分転換した)とのこと、よかったです。調子の悪いときがあると、それがずっと続くのではないかなどの不安が保護者の方の頭をかすめることもあるとは思いますが、今はそういう時期かもしれないと付き合う(様子を見る)ことで変化していく場合もあります。しかしなかなか様子が変わらない場合は相談や受診をしてみましょう。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年05月26日小学生になっても、あいかわらずの癇癪っぷり!ダウン症のある息子きいちゃん。以前、保育園時代のきいちゃんの癇癪について書かせていただきました。あれからどうなったかというと・・・相変わらずの癇癪っぷりです…!!(泣)こだわりもすごい…!!思えばきいちゃんは0歳の授乳期から怒りっぽかったんですよね…。「これは怒りっぽい子に育つのではないか」と、あのころから心配していたのですが、見事的中。Upload By 星きのこ特別支援学級のクラスメイトに他害!一歩間違えれば失明に…自分が気に入らないことがあれば怒る、注意されたら怒る、上手く靴が履けなかったら怒る…って、1日に何回癇癪をおこしてるんじゃい!!という感じです。しかも、前回のコラムのときと状況が大きく違うのは、保育園児から小学生になり、加配の先生もいなくなったことで、きいちゃん自身がより「クラスの中の一員」という立ち位置になったことです。現在、きいちゃんは地域の小学校の特別支援学級に通っているのですが、1年~6年生まで、学年も障害の種類も程度もさまざまな子どもたち8人が、2つのクラスに分かれて学んでいます。授業によっては2つのクラスが合同で学ぶこともありますが、幸い、クラスの子どもたちはすごく仲が良くてありがたいなと思っています。しかし、そこにある日事件が…。私が家で仕事しているときに1本の電話がかかってきました。表示を見ると、きいちゃんが通う学校から。「ん?なんかあったかな?」と思い、電話に出てみると、担任の先生からでした。なんと、きいちゃんが同じ特別支援学級の5年生の男の子の顔を鉛筆でついてしまったとのこと。しかも、左目の近くを…!!本人に悪気はなかったらしいのですが(今回は癇癪ではなくふざけていたようです)、一歩間違えたら目を失明させてしまったかもしれない事態に。聞いたとき、血のけがひきました…。Upload By 星きのこふざける息子を叱ったら、まさかの逆切れ!そしてパパがブチ切れた!!幸い左目の近くをかすっただけで大きな怪我にはならなかったそうなのですが、場所が場所だけに、相手の保護者の方にもどうお詫びをしたらいいのか悩みました。さっそく、相手の男の子のお母さんにお詫びの電話をすると、「怪我もしてないし、元気なんで大丈夫です。こういうのはお互い様なので…」と寛大にも仰って下さいましたが、やはり一歩間違えたら大変なことになっていた事実は間違いありません。「もう少し、家でも厳しくしつけないといけない」と、大反省しました。余談ですが学級で誰かを傷つけた、というのはきいちゃんだけではなく、きいちゃんもクラスメイトから殴られたり、叩かれたり、いろいろあります。そのたびにそれぞれの親はヒヤヒヤです。私もきいちゃんを叩いた子どもの親御さんから謝罪を受けたこともあります。なので、私たち親は、わが子が叩かれたとしても、お互い様だから許さなければと思う気持ちがあります。もちろん、私もです。逆に自分の子どもが誰かを傷つけたらどうしようという思いや心配の方が私自身は強いです。ほかのママさんたちもそうかもしれませんね…。パパにも今日学校であったことを伝えると、パパも深刻に受け止めてくれました。その日の夕食のとき。きいちゃんがふざけながら食べていたので、私が叱りました。そうしたら気が強いきいちゃん、逆切れしてご飯に手を突っ込んでパンチしたのです。Upload By 星きのこ私がビックリして「また叱らなきゃ」と思った矢先、なんとパパがきいちゃんの頭をバーン!!とはたいたのです。Upload By 星きのこ私は、思わず固まってしまいました。パパとは、「何があっても体罰はやめよう」と普段から言っていたのに…。すると、きいちゃんの目から大粒の涙がポロポロと…。Upload By 星きのこ障害がある息子のしつけで思うことパパはきっと今日、私が話したことを深刻に受け止めすぎて、叩くほど怒ることでもないのに、思わず手が出てしまったのでしょう。でも、きいちゃんには、何でいきなり叩かれたのか分からなかったと思います。私はビックリして、パパに「叩くのは間違っているよ!」と思わずその場はきいちゃんをかばいました。パパは「全然強く叩いてないし、これくらいしないと分からない!」と興奮状態でしたが、しばらくしたら反省し、きいちゃんに謝っていました(ちなみにうちでは「何があっても体罰はやめよう」と普段から体罰はしないと2人で決めています)。小さな子どもは、やったことはその場で叱らないとなんで叱られたのか伝わりません。障害があればなおさらです。ときがたって強く怒られても、なぜ自分が怒られたのか分からずパニックになってしまうだけだと思います。だけど、体罰はやはりいけないと私は思います。なぜなら、自分が体罰を受けると、今度は自分がほかの子どもにやってしまう可能性があるからです。体罰ではなく、長い道のりになったとしても、何回も何回も「それはやってはいけないこと」と説いてきかせないといけません。実際にきいちゃんは、本気で叱ったことが通じると、二度と同じことはふざけてやりません(通じるまでが大変ですが…)。障害がある子どもに説いてきかせるのは本当に私たち親にとって根気がいりますし、いつになれば通じてくれるのかと途方にくれることもあります。それでも将来、大きくなったときに本人が困らないように、今のうちから説いていかないといけないと私は考えています。同じ問題で困っている親御さんもたくさんいらっしゃると思いますが、私もその一人です。まだまだ試行錯誤の最中ですが、愛する子どものために、頑張りましょう!執筆/星きのこ(監修:鈴木先生より)基本的には優しく丁寧に具体的に肯定文で接するようにしたいですね。叱られる際に叩かれることが多いと、学校でもお友達を叩くという行動につながる可能性もあります。もしかしたら、お父さんには幼少時に叱られた際に叩かれた経験があったのかもしれませんが、「ダメ」という否定文ではなく、「こうします」という肯定文で話して、上手にできたときだけ思いっきり褒めることが大切です。今、根気よく頑張れば必ずいい将来が待っているはずです。また、他傷行為のある癇癪には投薬で抑えることも可能になってきました。ASDの診断がつけば、それによる易刺激性として治療することは可能です。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年05月25日年中のときに行った放課後等デイの説明会、唖然とした「新年度募集人数」Upload By べっこうあめアマミ息子が年中のとき、通っていた発達支援施設の主催で、地域の放課後等デイを行っている施設の合同説明会がありました。当時の私は「就学先もまだ決まっていないし、まだ年中なのに少し早いかな」と思いましたが、一応情報収集しておこう、くらいの軽い気持ちで参加しました。しかし、そんな軽い気持ちで参加したのも束の間、配られた各施設の紹介と、新年度の募集人数などが記載された冊子を見て、気持ちがガラリと変わったのです。比較的施設の数が多い地域だったので、「これだけあるならどこかには入れそう」と思っていました。しかし、冊子を見てみると、どの施設も募集人数が「若干名」「1、2名」。「なし」という施設もいくつも見られました。そして会場を見渡すと、広いホールにザッと見て100人以上はいそうな保護者の数。周囲から「これだけの人たちが放課後等デイに入れたいと思っているのに、こんなに募集が少ないの・・・?」「みんなが入るって無理じゃない?」「とにかくひたすら申し込み続けるしかない?」といった声が聞こえ、明らかにざわついていました。そして私も全く同じ感想を持ち、あまりの放課後等デイの施設探しの激戦ぶりに、唖然としたことをよく覚えています。もちろん地域差は大きいと思います。しかし、SNSなどでさまざまな地域に住む人の投稿を見ても、そういった厳しい現実に直面している地域が多いのだと知りました。放課後等デイに空きが出づらい理由、児童発達支援より激戦なのでは?Upload By べっこうあめアマミでは、どうしてそんなに激戦になってしまうのでしょう?放課後等デイは、発達に課題があったり障害があったりする子どもの就学後の通所施設です(※)。施設によって規定はさまざまですが、基本的には小学生から高校生まで、6歳から18歳までのお子さんが通うことができます。とはいえ、障害の程度が比較的軽度なお子さんや、診断がつかないグレーくらいのお子さんであれば、本人の成長と共に放課後の時間を1人で過ごせるようになるでしょう。もしくは習いごとや塾などに通うようになり、自然と放課後等デイを辞めて、小学生のうちに療育から卒業していくお子さんも多いと思います。しかし、障害の程度が重度のお子さんだと、なかなかそうはいきません。私の息子もそうですが、1人で楽しみを見つけて遊ぶことが難しく、常に大人の見守りも必要です。そういうお子さんが多い施設だと、9年、もしくは12年、お子さんが辞めることなく通い続けることになります。児童発達支援もなかなか空きが出ませんが、児童発達支援であれば、長くて5年か、多くの場合3年くらいしか通わないお子さんが多いのではないでしょうか。そう考えると、放課後等デイは在籍する年数が長くなりやすく、さらに児童発達支援から持ち上がりでそのまま通うお子さんがいる場合もあるため、より空きが出づらいのではないかと思います。(※)児童発達支援や放課後等デイサービスなどの「障害児通所支援」の利用には、「通所受給者証」が必要となります。受給者証の取得申請については、お住まいの自治体の福祉担当窓口などにご相談ください。就学先選びと並行して放課後等デイ選び、できることから早めに動くUpload By べっこうあめアマミ話は戻りますが、放課後等デイ探しの厳しい現実を知った私は、説明会の後すぐに動き出しました。息子は重度の知的障害があり、何か習い事に通うことは難しく、学童などを利用するのも難しいだろうと思いました。そして私は在宅ですが、仕事もしています。場合によっては打ち合わせや、外に出かけることもありました。どうしても、学校から帰ったあとに息子が行く場所がどこもないという状況は厳しいと感じたのです。しかし、実際に年中から動き始めても、多くの施設から「見学に来るのはいいけれど、就学先が決まってからでないと待機の順番待ちには入れない」と言われました。それでも、折れずに何ヶ所も問い合わせをしていると、中には見学のあと、気に入ったら待機の順番待ちに入れてくれる施設もありました。このようにいろいろな方針の施設があるので、見学だけでも、さらに踏み込んで申し込みもできるのならそこまでもしていきながら、放課後等デイ探しをしていきました。放課後等デイとひとことでいっても、さまざまなスタイルの施設があります。預かりメインだったり、療育に力を入れていたり、在籍する子どもの障害の程度にも、施設によってある程度の傾向がありました。そのため、早くから見学しておいたことで、息子にとってどこの施設が一番良いか、比較検討できてよかったです。さらに、結果として息子は就学後、小学1年生から週5日という高頻度で放課後等デイに通えることになったのですが、早くから動いたことが幸いしたと思っています。どこの施設も募集枠が少ない中、最終的に「お母さん、早くから来てくれていたので」と優先的に声をかけていただけたからです。「早すぎる」と言われることもありますが、私としては、できることから早めに動いていくことが、放課後等デイ探しにおいては有利ではないかと思っています。放課後等デイは放課後だけではない、長期休みこそ助けられている事実Upload By べっこうあめアマミ放課後等デイは、「放課後」とついていることから放課後の居場所とだけ認識されがちですが、多くの場合、夏休みなどの長期休みにも利用できます。普段は毎日学校に通っている子どもが、ずっと家で過ごし続ける長期休み。時間を持て余してしまったり、親子共に息が詰まってしまうことがあるかもしれません。特に私の息子は特性上、毎日のルーティーンを非常に大切にしていました。そのため、毎日決まった時間に決まった場所に行く、という生活スタイルが崩れると大きく荒れます。長期休みは学校の代わりに朝から放課後等デイに通えるので、息子の生活スタイルが崩れにくく、非常に助かっています。施設によっては長期休みの決まった曜日だけ、スポット利用などができることもありますが、在籍していないとそういうものも使えません。「長期休みの過ごし方」という面からも、放課後等デイの必要性は大きいなと、息子が就学してから強く感じました。「学校に入ってから考えよう」では難しい、学校+放課後等デイで成り立つ私たち家族の生活時々、放課後等デイについてあまりよく知らない親御さんとお話すると、「いつから探したんですか?とりあえず学校に入ってからすぐ?」と聞かれたりすることがあります。しかし、正直なところ放課後等デイは、「学校に入ってから考えよう」では、希望するところにすんなり入るのはかなり難しいと思います。進路が決まってからでないと決めかねる部分はありますし、利用の決定も年長の2月以降くらいになるとは思いますが、年中、年長のときに親がどれだけ動けるかによって、希望するところに入れる可能性は高まると思います。今、息子は学校の後に放課後等デイに通い、私と夫は仕事を続け、娘は保育園に通い、娘が保育園から帰ったら息子が放課後等デイの送迎車に乗って帰ってくる、という生活が順調に続いています。このように、わが家の家族それぞれの生活が成り立っているのは、学校と放課後等デイの組み合わせのおかげです。このコラムを読んで、少しでも放課後等デイに興味を持った方がいたら、ぜひ、早めに行動してみることをおすすめします。執筆/べっこうあめアマミ(監修:藤井先生より)べっこうあめアマミさんが仕事・育児をしながら放課後等デイサービス施設を見学するのは、とても大変だったと思います。もっと効率よく、保護者・利用者と施設側が相談しやすい仕組みがあると良いと思いますが、個別に相談しなくてはならないのが現状です。特にコロナ禍のときは、見学も制限があったりした時期もあり、年中からの相談を受け付けていない施設もあったようです。2023年5月になり行動制限は緩んできたので、放課後等デイの利用の相談がしやすくなると良いなと思っています。早めに情報収集され、必要なタイミングで見学などをされることをおすすめしています。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年05月25日「授業中にフリーズ」自閉スペクトラム症のある太郎自閉スペクトラム症のある太郎は、小学校1年生時、国語、算数、図画工作の授業は特別支援学級で個別に受けていた。特別支援学級の先生の判断だけではなく交流学級の先生と情報交換しながら、「太郎にあった授業」というものを考えてくださっていた。Upload By まゆんUpload By まゆん交流学級での太郎の様子を先生はこう言っていた。・黒板の文字を写すことに時間がかかる・周りについていけずにフリーズする・そのことを引きずりそのあとの授業にまで影響がある・図画工作では手先の不器用さが目立つ・テーマにそって何かを創作するということが難しい・そしてフリーズする・そのことを引きずるその繰り返しだと。個別授業では、太郎のペースに合わせてノートを取れるように待ってくださったり分からない個所への助言をしてくださったので、通常学級の授業の進行ペースに間に合うように勉学を進められた。フリーズすることは変わらずあったそうだが、切り替えの時間を設けたり太郎が納得するまで問題を一緒に考えてくださったりした。最高の相談者先生の言葉で覚えていることがある。「太郎ちゃんはとにかくこだわりが強いので、納得がいくまでは固まって動きません」「適当ということがないので、そこがいいところでもあるのですが、もう少し柔軟性が出ると本人もきつさが和らぐのだと思うのですが」先生の言葉には共感がわいた。太郎に真剣に向き合っているからこそ分かる特性だったし、私が悩んでいることとまったく同じで喜びがわいてきたのだと思う。最高の相談者、味方ができたと心強くなった。特別支援学級の先生は、交流学級での太郎の授業の様子もみにきてくださっていた。先生が太郎にアドバイスをしやすいように、太郎の交流クラスでの席は決まって一番前の廊下側の席だった。太郎もきっと先生が来ると安心していたのではないかと思う。Upload By まゆん面談時に、先生が私に弱音を吐くこともあった。図画工作の時間でどうしても太郎がテーマにそって絵を描かなかったときのこと。先生が参考になる絵を用意したところ、太郎が真似して時間をかけて描いたと思ったらなんと勢い良く消し始めたとのことだった。「お母さんー、こんなことがあったんですよー、すっごくうまく、やっと描けたのにですねー、もうほんっとにもうー」とベソをかいていた。Upload By まゆん私も先生の苦労が身に染みて分かっていたのだが、なんて言っていいのか分からず、とにかく感謝の気持ちを伝えた。「先生ありがとうございます」すると先生は「大変ですけど、太郎ちゃんかわいいですし、楽しいです」ますます感謝の気持ちがこみあげてきた。Upload By まゆん先生に出会えたことを本当に幸せに思っていた。特別支援学級でどのような配慮をしてくださるのか。学校や先生によって対応も違うだろうし「どんなものなのだろう」と思っていました。太郎が入学した年に特別情緒障害支援学級が設立された学校だったため、事前情報が一つもないまま入学しました。不安な気持ちを持っていたのは保護者の私もですが、先生も模索しながらの日々だったことと想像しています。生徒の一人ひとりに違った個性がある特別支援学級。先生の太郎に対する対応には、何一つ不満はありませんでした。先生は太郎に試みたことを根拠から太郎の様子、評価までありのままを話してくださいました。小学校低学年のころは、まめに私の仕事が終わる時間に情報共有として電話連絡をいただいていました。そんな日々を振り返り、とても安心できる環境に置かれていたのだと実感しています。執筆/まゆん(監修:鈴木先生より)理解と知識のある先生に出会えたようですね。黒板の文字を写すのに時間がかかるのは、同時処理やワーキングメモリーの低さからくるものと思われます。WISCというIQテストでその程度は分かります。私の外来では板書が写せないお子さんには、タブレットなどで写真を撮ってそこに記入するようにすすめています。学校側の理解と配慮が必要となります。また、手先の不器用さは、発達性協調運動症のあるお子さんによく見られます。病院などで、リハビリを行う作業療法士(OT)さんによる感覚統合訓練を受けることができます。それには医師の診断が必要になります。症状だけで療育や教育を続けているお子さんが目立ちます。これは羅針盤を使わずに航海しているようなものです。しっかりと診断してそれに向けて将来の対策を講じることが大切だと思います。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年05月24日白米しか食べられない日も。偏食の自閉症息子、小学1年の1学期3歳で自閉スペクトラム症と診断を受けたけんとは偏食で、年長まで通っていたこども園の給食がほとんど食べられませんでした。見た目がドロドロしていたり、グチャっとしていたりするものがあると、気分が悪くなってしまうことも。お皿の上に乗っているのを見るのが嫌なだけでなく、それらを人が食べているのを見るだけでもダメでした。そのため、小学校に入ってからの給食がとても心配でした。入学時に担任の先生にお伝えしたところ、給食の時間はパーテーションで区切って、ほかの子が食べているのを見えないように配慮をしてくださいました。Upload By ゆきみ小学1年生の1学期は、給食はほとんど食べられなかったようです。パンや麺類も食べられず白米だけは食べられるので、白米の日は、たくさんおかわりをしていたそうです。それを見て、先生のほうから「よかったら、ふりかけなどを持ってきてもいいですよ」と言ってくださり、持っていくとご飯をモリモリ食べていたそうです。給食をほとんど食べない日が続いていたからなのか、体重もなかなか増えず、「お弁当を持たせようかな…」と、悩んでいたとき、先生からある提案をいただきました。献立表に赤い丸をつけて壁に貼ると…その提案は、学校から配られる1ヶ月の献立表を見て、けんとが食べられそうなものに私が赤いペンで丸をつけ、先生に提出するというもの。その紙を教室の壁に貼ってみたいとのことでした。Upload By ゆきみ試しに始めてみると、掲示物が大好きなけんとは、毎日、給食の前にその献立表をチェックするように。私が丸をつけた、自分が食べられそうなものを確認して、お皿に乗せてもらい食べていたそうです。1ヶ月分の献立表に丸をつけていると、いくつか「これ、食べられるかな?」と母の私にも分からないものがありました。「もしかしたら食べられるかも」、というものには「まぁいっか。丸つけちゃえ」と気軽な気持ちで試しに丸をつけてみることに。すると、何やら頑張って食べることができたそうなのです。「食べられたぁ!」と嬉しくなったのですが、だからといって、無理だと分かっているものに丸をつけてしまったりしたら、けんととの信頼関係に傷をつけてしまう気も。なので、食べられないだろうというものには欲張って丸をつけることはせず、「もしかしたらちょっと頑張れば食べられるかも」と思えるものに丸、どうしても分からないものには三角をつけるようにしてみました。見通しが立ったことによってできた変化献立表に赤い丸をつけるようになってから、ほんの数品ですが、少しずつ給食で食べられるものが増えていきました。たまに、丸をつけていない品や、三角をつけた品を、頑張って食べるということもでてきたそうです。スープなど、以前は家では飲めなかったものも飲めるようになりました。そしてさらに!給食で食べたおいしい品を「家でも食べたい」と言うこともでてきたのです。Upload By ゆきみ先生とお話ししたときに「この前、ししゃもフライをモリモリ食べていましたよ」と情報をいただいたので試しに家で出してみると…、何やら給食と違ったようで食べてくれなかった…などの失敗もありますが…。食べられるものが増えた、だけではなく違う変化も出てきました。丸をつけた献立を確認することによって「何が出てくるのか」が分かり、見通しが立つようになったからなのか、パーテーションをせず、特別支援学級のみんなと同じ空間で食べられるようになったのです。給食の時間が「ほかの人が食べているものを見るのが怖い」という不安に囲まれた時間から、「ほかの人が食べていても安心」という時間に変化したように感じ、嬉しくなりました。Upload By ゆきみ焦らず少しずつ願いをかけてつける赤い丸給食で食べられるものが少なく、お弁当を持たせていただこうかなと思っていたときに始まった献立表への赤い丸つけ。その紙を壁に貼り確認するだけですが、それがけんとの不安を軽減したのかなと思っています。小学2年生になり、給食2年目が始まりました。まだまだ食べられないものが多いですし、今年度も何か食べられるものが増えるかは分かりませんが、少しでも安心して、おいしく楽しい給食の時間になったらいいなと願っています。母のつける丸が、心の安心に繋がりますように…。執筆/ゆきみ(監修:井上先生より)給食が食べられず体重が増えないのは親として心配だったと思います。偏食の原因は、味や食感などの直接的な要因だけではなく、ゆきみさんが書いておられるような食事場面の環境や、どんな食べ物がだされるか分からない、食べられるかどうか分からないという不安もあると思います。お母さまが丸をつけることで安心を得ることができ、予測ができるようになることやそれについて先生と話ができるようになったことで不安も少しずつ減少してきたのではないでしょうか。視覚的に分かりやすく提示してあったのもよかったんでしょうね。別の紙にクリアできたものを張り出したり、ポイント制にする(食べにくいものはポイントも高い)などもよいかもしれません。偏食の原因はお子さん1人ひとりによって異なります。成功体験を感じられるようスモールステップで進めていくこと、ゲーム感覚のように楽しく進められる工夫も加えていくとよいでしょう。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年05月23日お楽しみイベントは工夫を持ち寄るUpload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイわが家は息子2人、娘2人、婿1人、孫3人で、みんながそろうと10人の大家族です。子どもは全員成人して社会人で、孫はこの春から全員小学生になりました。実は私たちは、夫ラクマを除いた家族全員が、個性いろいろな発達凸凹タイプです。それぞれの特性をキャラクター化しており、動物の顔をしています。例えば、私ワッシーナは、ワシのキャラクターですが、これは会話がよく飛んでしまうという多動なところを表現しています。私は、いわゆる発達凸凹タイプの人たちと定型発達タイプの人たちとは、日本人と外国人以上に個性が異なると感じています。なので、発達凸凹タイプを「火星人」、定型発達タイプを「地球人」と表現してきました。そんな個性豊かな愛すべき家族のこれまでの歩み、そして現在の様子などをご紹介できたらと思っています。さて、今から数年前の、新型コロナが騒がれる前のエピソードです。ひさしぶりにレストランで、家族みんなで食事会をすることになりました。家族それぞれの特性があるので、対策を話し合ってから集まったのですが、想像以上のパニックになってしまいました。Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイSNSで相談したところ、実家で集まるには狭すぎるので外食をしようということになりました。ところが、3人の孫たちは全員発達凸凹の特性があります。結果として、レストランの個室を貸切ろうということが決まりました。テーブル席だと孫たちが長時間おとなしく過ごすのが難しいだろうという判断からでした。孫たちがリラックスできる畳の部屋を探しましたが、交通の便がよいところに快適そうなレストランがなかなか見つかりません。選ぶ範囲を広げて探したところ、ほどよい場所にある、おしゃれなアメリカンレストランが見つかったので、食事会はそこで行うことにしました。食事会当日のことです。激しい人見知りと時間の感覚に大きなズレのある長女ニャーイの家族には、集合時間より早めに着くように伝えておきました。これは、孫たちが場の雰囲気になじむための対策でもあります。また次女リスミーの息子は激しい多動があるので、本人のお気にいりの音の出ない遊び道具を持参するように伝えました。これで孫たちへの対策はしっかりできたと思っていましたが、ちびっ子たちの特性は想像を超えていました。Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ私と夫ラクマ、長男ウルフー、次男ウッシーヤがレストランに着くと、入り口で一番乗りの長女ニャーイと婿ゴリマッチョが店内に入れずにいました。孫フクロッシュと孫デンデンが泣きわめいていたのです。ニャーイたちは困惑しながらも、けんめいにあやしています。フクロッシュとデンデンは、もともと抱っこのときに反りかえりぐせがありました。でも、ここでは見たこともないくらい大きく反りかえって泣き叫ぶので、そのあまりの激しさに私も夫ラクマも交代してあげることもできず、その場にニャーイ家族を残し、全員が集まるまで店内で待つことにしました。時間通りに次女リスミーと孫サルルゥがやってきました。その後、しばらく待ちましたが、ニャーイ家族は中に入れません。孫サルルゥは持参したオモチャに飽きて、そわそわしはじめました。相談の結果、ニャーイ家族を待たずに先に食事をすることにしました。Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイまわりに人がいるとテンションが上がるサルルゥは、一口食べるごとにイスから降りて走り出そうとします。私とリスミーが代わる代わる絵本を読んだり、お遊戯いりで歌ってあげたりしますが、すぐに飽きてしまいます。新鮮な遊びを用意するのですが、まるで障害物レースのようなめまぐるしさです。だいぶ時間が経って、ようやくフクロッシュとデンデンが泣き止み、ニャーイ家族が部屋に入ってきました。やっと全員がそろい、ニャーイ家族が食事を始めたころには、食事が終わりオモチャや遊びに飽きたサルルゥに限界がきて、ついに室内を走りまわりはじめました。走りだすサルルゥを私とリスミーで、代わる代わるつかまえて座らせるのですが、ふだんはおとなしいフクロッシュとデンデンまでつられて走りだすのです。Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ5人の大人たちが総出で子どもたちをつかまえては座らせるのですが、じっとしていられるのはせいぜい5秒くらい。もはや食事どころではありません。夫ラクマがあぜんとして見守るさわぎのなか、平然としているのは空気がうまく読めないウッシーヤだけです。Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイそのうち黒服を着たレストランのスタッフがやってきました。騒がしさを注意されるのかと思いきや、個室の貸切の時間が過ぎたとのこと。久しぶりに家族全員そろっての食事を楽しもうとしていたのに、まるでかなわず、がっくりでした。ニャーイ家族はほとんど食事がとれなかったので持ち帰りすることになりました。Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ後日、夫ラクマと2人でふりかえりをしました。いろいろ考えて工夫したつもりが、孫たちの特性の手ごわさが想像以上だったと気づきました。孫たちは、初めての場所や慣れない環境だとパニックを起こしやすいということを身をもって知ることができました。人見知りの激しい孫には、初めてのレストランは恐怖体験だったのでしょう。これからの工夫をあれこれ考えましたが、そもそも家族みんなそろって外食することがまだムリなんだという結論になりました。発達凸凹なわが家はフツーに合わせなくてもいいという家庭内ルールがあったのです。ふりかえりで気づいた、よかった点です。①時差式集合は正解②家族全員が集まるという成功体験で終わり、いい思い出になった③レストランでの食事会はまだムリと気づけた④大人は誰も声を荒げることなく子どもたちに接することができたふりかえりで気づいた改善点です。①場所は自宅あるいは静かな環境のアウトドアで行うか、避難場所を用意する②孫たちには事前にくわしく外出先の説明をする③それぞれがマイペースで楽しく過ごす④自宅で集まる場合は過ごしかたを工夫する⑤過ごしかたは、そのつど家族でアイディアを出しあうほかにも今後、気をつけるべきこととして①親以外が孫に触れるときは本人たちに許可をとる②孫に近づきすぎない③大声で話しかけないなどを話し合いました。執筆ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ(監修:鈴木先生より)発達に凸凹があるようなら、医師の診断をきちんと受けることをおすすめします。発達検査を受けると、どんなところに凸凹があるのか数値的に分かり参考になるので、まずはご自分やお子さん自身を知ることから始めてみてはいかがでしょうか?親御さんやお子さん、お孫さんにも、似たような特性や行動が見られることがありますが、治療や療育により、症状を和らげることができれば、もっと楽しくみんなで集まることが可能になると思います。まだ小さいお子さんに関しては、早寝早起きを実行し、電子メディアを避けて公園での遊びを増やすなど生活環境を整えるのも重要なことです。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年05月23日母子分離不安(分離不安症)とは?子どもが母親などの愛着対象から離れることに対して不安を感じることを「母子分離不安」と言います。発達段階でこのようなことは誰にでも起こることですが、不安感が長期間続いたり、身体的症状(腹痛・頭痛など)、精神的症状(引きこもり・無気力になるなど)、さらに通園・通学拒否などが見られる場合、「分離不安症」と診断される場合もあります。このコラムでは、・母子分離不安の相談場所、対応方法・母子分離不安のあらわれる年齢・母子分離不安の原因は「愛情不足」?・母子分離不安のときによくあらわれる症状・母子分離不安と発達障害の関連性など、母子分離不安にまつわるギモンから、子どもに母子分離不安がある保護者のお悩みや困りごとなど専門家の先生のアドバイスを交えてご紹介します。【発達ナビQ&A】母子分離不安の悩み、相談場所や対応方法は?発達ナビのQ&Aコーナーでは、子育てに関する疑問や知りたいことを質問するとほかの発達ナビ会員の方々が実体験などをもとに答えてくれます。母子分離不安に関する質問とその回答をご紹介します。■新たに児童精神科の医師を受診しましたが、話もろくに聞かない先生でした。最近、母子分離不安の症状で登校を嫌がるようになってきており(中略)息子の現状をしっかり見てくれて相談できる場所が欲しいのですが、現在の福祉施設の担当医も、こちらが希望すれば母子分離不安についても診ていただけるのでしょうか?出典:こちらの質問には以下のような回答が寄せられました。分離不安は、学校での事なら学校の先生と相談なさったほうが良いかと思います。学校に行く事で、親と離れる。家から出なきゃいけないなど不安感が強くなっているからですよね。普通級在籍ならば、特に。個別に対応するというのは学校側としても難しい事もあると思うので、対応を話し合ったほうが良いです。(略)出典:母子分離不安に関するギモンと体験談をもとにした回答をご紹介いたしました。・相談先1. 保健センター市区町村ごとに設置された、地域の健康づくりの場です。保健師が常駐しており、子どもの発達に関する相談に乗ってもらえます。医療機関や療育施設の紹介をしてくれる場合もあります。2. 子育て支援センター子育て家庭の支援に特化している機関です。自治体運営や医療機関に委託運営されており、保健師または看護師が相談に乗ってくれます。中には、療育指導を実施している子育て支援センターもあるので、お近くのセンターに問い合わせてみましょう。3. 児童相談所都道府県ごとに設置されている、児童福祉を専門とした機関です。医師、児童心理士、児童福祉士がおり、相談に乗ってもらえます。4.病院上記の相談機関では、病院を紹介してもらえることもあります。その場合は、紹介された病院へ行くことをおすすめします。相談機関を介さずに病院へ行く場合は、かかりつけの小児科、または児童精神科を受診してみましょう。5.療育施設、発達支援センター子どもに対しては療育施設や発達支援センターで相談することも可能です。6.学校お子さんが小学生の場合は、学校のスクールカウンセラーに相談するのも良いでしょう。・未就学児のお子さんの対応方法園の先生と連携し、別れの場面をできるだけ短くします。離れて泣いてしまうときに、気をそらせるお気に入りのおもちゃなどを準備しておくと、不安を和らげることができます。いつまで離れるのかの見通しを伝えておくのも良いでしょう。・就学児のお子さんの対応方法お子さんの気持ちを聞きましょう。親御さんと離れるのが不安な気持ちを言語化できた場合には、〇〇と感じるんだね、と気持ちを受け止めましょう。しかし、その気持ちに振り回される必要はありません。不安な気持ちを少しずつ減らすためにはどうしたら良いか、お子さんと一緒に話をしてみましょう。教室まで一緒に行く→学校の正門まで親御さんと一緒に行く→通学路の半分まで一緒に行く、と少しずつ段階を踏みながら不安はあっても、母子分離できたという経験に繋げていくのが大切です。Upload By 発達障害のキホン【小児科医に聞く】母子分離不安とは?小学生でも起こる?親の愛情不足?発達障害との関連性などここまで発達ナビのQ&Aコーナーに寄せられたギモンを中心にご紹介しました。ここからは、小児科医の藤井明子先生に見通し不安になる原因や、家庭や学校での対応のコツについてお答えいただきます。(質問)小学2年生になる息子ですが、母子分離不安で一緒に登校をしています。周りの同級生を見てもみんな一人で登校をしています。母子分離不安はどのくらいまでに見られる症状なのでしょうか。(回答)母子分離不安は集団生活に入る乳幼児期から学童期にかけて発症することが多いです。分離不安の症状が改善するスピードはお子さんによって違います。一緒に登校して、少しずつ親子でいる時間を短くし、段階を追っていきます。学校の先生や、スクールカウンセラーとの連携を十分にとることをお勧めします。お子さんの不安を和らげるために、親御さんからお子さんへのケアしていくのが一般的です。親御さん自身も、いつまで症状が続くのか、心配になることもあると思います。そのため、親御さん自身がカウンセリングを受けることもあります。Upload By 発達障害のキホン(質問)母子分離不安は親の愛情不足が原因と聞きました。本当なのでしょうか?(回答)お子さんの不安の感じ方は、お子さんそれぞれによって違います。分離不安症状があるお子さんへは、不安をケアしていく必要があります。しかし、それは、「愛情不足」というわけではありません。親御さんの過干渉や甘やかし、親御さん自身の不安になりやすい性格が、お子さんとの関係に影響を及ぼすことはあります。親御さん自身が育ってきた環境などが影響していることもあるため、親御さん自身がカウンセリングを受けることをすすめることもあります。Upload By 発達障害のキホン(質問)3歳の子どもがいますが、母親の私が側を離れるとすぐに号泣してしまいます。母子分離不安を疑った方がよいでしょうか?(回答)3歳のお子さんでは、母親から離れて泣くからといって、母子分離不安と判断しなくても良いでしょう。これまで、母親と離れる機会も少なかったのもあるかもしれません。きょうだいが生まれた、転居して転園した、両親が離婚した、などの環境の変化をきっかけに症状が出ることもあります。母子分離の場面で、なかなか泣き止まない、母にしがみついて離れられない、家庭で一人でいることができないといった症状が代表的です。それらの症状が4週間以上続くと、「分離不安症」と診断されます。Upload By 発達障害のキホン(質問)子どもに母子分離不安があります。母子分離不安がある場合、発達障害もあるのでしょうか。(回答)発達障害のある子どもは、対人コミュニケーションを取るのが苦手で、見通しが持ちにくかったりする状況で臨機応変に対応するのが難しく、不安になりやすい特性があります。母子分離不安があるから発達障害があるとは限らないのですが、コミュニケーションがとりにくい、感覚過敏がある、多動衝動性があるなど、発達障害のような症状も認められる場合には、専門機関に相談しましょう。Upload By 発達障害のキホン母子分離不安についての関連コラムはこちらコラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年05月22日ADHD(注意欠如・多動症)とはADHD(注意欠如・多動症)は発達障害の1つで、不注意、多動性、衝動性などの特性があり、日常生活に困難を生じます。特性の多くは12歳以前にあらわれますが、幼い子どもにみられる特徴と区別することが難しいため、就学期以降に診断されることが多いと言われています。また、個人差はありますが、成長に伴って多動性が弱まるなど、特性のあらわれ方が変化することもあります。ADHD(注意欠如・多動症)に見られる特徴は、「人の話に集中できない」「落ち着きがない」「ものを良く壊す」「順番が待てない」「なくしもの・忘れ物や遅刻が多い」などです。ADHDの特性があらわれ始めるのは2歳ごろで、幼稚園~小学校に入学するころから目立つようになることが多いと言われています。さらに、特性のあらわれ方によって、多動・衝動性の傾向が強いタイプ、不注意の傾向が強いタイプ、多動・衝動性と不注意が混在しているタイプの3つに大別されます。ADHD(注意欠如・多動症)は生まれつきの脳機能障害です。乳幼児期の育て方によって発症するものではありません。ADHDのある人の脳では、前頭葉や線条体と呼ばれる部位において、ドーパミンなどの神経伝達物質の機能障害が起きていると考えられています。また、遺伝的要因も関連していると言われています。参考:e-ヘルスネットADHD(注意欠如・多動症)の診断基準には、アメリカ精神医学会の「DSM-5」(「精神疾患の診断・統計マニュアル」第5版)が多く用いられています。ADHDには、話を集中して聞けない、作業が不正確、なくしものが多いといった「不注意」、体を絶えず動かす、離席する、おしゃべり、順番を待てないなどの「多動性」「衝動性」の特性があり、日常生活に困難を生じます。また、これらの症状が12歳になる前に出現します。しかし、定型発達の場合でも、2~3歳ごろまではじっとしていられず、集中力も長くは続かない子どもが多いため、上記の条件を満たしていても就学期ごろまで診断がつかないこともあります。ADHDの診断は、医師が診察において患者の行動特徴を観察し、その結果と診断基準を照らし合わせ、ほかの精神疾患と鑑別された上で行われます。参考:厚生労働省「ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療」ADHD(注意欠如・多動症)の治療には、療育や教育などの心理・社会的アプローチと、薬物療法などの医療的アプローチがあります。療育では、環境調整・ソーシャルスキルトレーニング・ペアレントトレーニングといった手法が用いられます。このような発達支援は、発達障害専門の病院や公立・民間の「児童発達支援」「放課後等デイサービス」などで受けることができます。現在、ADHDを完全に治癒させる薬はありません。しかしながら、不注意・多動性・衝動性の症状を緩和する対症療法としての薬物治療はしばしば行われています。ADHDの治療に主に用いられているのは、メチルフェニデート徐放錠(コンサータ®)、アトモキセチン(ストラテラ®)、グアンファシン徐放錠(インチュニブ®)です。また、2019年12月からは、リスデキサンフェタミン塩酸塩カプセル(ビバンセ®)が使用可能になりました。それぞれの薬剤は用量、用法や、効き方、副作用などが異なるため、状況に応じて使い分けられます。障害者手帳とは、障害のある人が取得できる手帳の総称です。身体障害者手帳(視覚障害、聴覚障害、肢体不自由など)、療育手帳(知的障害)、精神障害者保健福祉手帳などの種類があります。障害者手帳を取得することで、障害の種類や程度に応じてさまざまな福祉サービスを受けることができます。ADHD(注意欠如・多動症)や、二次障害としての精神障害が原因で日常生活へ支障がある人は、精神障害者保健福祉手帳を取得できる可能性があります。また、知的障害を伴う場合、療育手帳の対象となることもあります。精神障害者保健福祉手帳の申請には医師による診断書が必要ですが、療育手帳の申請には医師による診断書は不要です。詳しくはお住まいの市町村にお問合せください。ADHD(注意欠如・多動症)と併存しやすい障害や疾患と、症状の例ADHD(注意欠如・多動症)はさまざまな併存症があると言われています。自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害・限局性学習症(LD・SLD)、発達性協調運動症(DCD)、知的発達症(知的障害)、うつ病、双極性障害(躁うつ病)なども併存することがあります。自閉スペクトラム症(ASD)は、「対人関係や社会的コミュニケーションの困難」と「特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」などの特性が幼少期から見られ、日常生活に困難を生じる発達障害の1つです。学習障害・限局性学習症(LD・SLD)は、学習における技能に困難さがみられる発達障害の一つです。読むことやその内容を理解することの困難さ、書くことの困難さ、数の理解や計算をすることの困難さなど大きく3つの分類があります。これらの困難が、知的発達症(知的障害)によるものでないこと、経済的・環境的な要因によるものでないこと、神経疾患や視覚・聴覚の障害によるものではないこと、学習における面のみでの困難であること、という場合に限り診断されます。学校教育が始まる就学期になって診断されることがほとんどですが、就学前の段階で言語の遅れや数えることの困難、書くことに必要である微細運動の困難などがあることでその兆候に気づかれることもあります。参考:学習障害(限局性学習症)|e-ヘルスネット参考:学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)及び高機能自閉症について|文部科学省発達性協調運動症(DCD)とは、日常生活における協調運動が、本人の年齢や知能に応じて期待されるものよりも不正確であったり、困難であるという障害です。別名、不器用症候群とも呼ばれていました。知的発達症(知的障害)とは、発達期までに生じた知的機能障害により、認知能力・社会適応能力の発達が全般的に遅れた水準にある状態を指します(発達期とはおおむね18歳までを指し、それ以降に事故や病気などで知的機能が低下しても、知的障害とは言いません)。うつ病とは気持ちが落ち込み、その感情を抑えることができずいつも通りの生活を送ることができなくなる精神疾患です。双極性障害(躁うつ病)は、気分が著しく昂揚した状態の「躁状態」と、そもそも楽しさを感じない、楽しい出来事に興味がわかない状態の「うつ状態」の2つの精神状態が繰り返し現れる病気です。ADHD(注意欠如・多動症)のある子どもとの生活の様子は?特選連載コラムADHD(注意欠如・多動症)のあるお子さんをもつ発達ナビの連載ライターさんの厳選コラムをご紹介。「あるある」と共感したり、今の悩みを解決するヒントが見つかるかも…?大人のADHD(注意欠如・多動症)関連コラム大人の場合は、ADHD(注意欠如・多動症)の症状と考えられる特性によって日常生活や仕事にさまざまな支障をきたしてしまい、自分自身では解決できないという状況がおこりえます。その他のADHD(注意欠如・多動症)関連コラムコラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年05月21日