物語の中にはいつも、ほんの少しうらやましい、そんな友達関係が描かれている。いがみ合ったり、慰め合ったり。心に染み入る友情をご堪能あれ。年齢も性格も関係ない。女ともだちは自由だ!女同士の関係を印象的に描いた作品を3人の女性が薦めてくれた。自身も女性の友情を描いた作品を執筆しているマンガ家のオカヤイヅミさんが選んだのは、「それぞれが勝手なことをしているけれど、互いを認め合う、その上で成り立っている友情を描いた作品。そういった作品を読むと、“私もそこに居ていい”と言われているような気がするからでしょうか」マンガライターの門倉紫麻さんは、“素敵な女ともだち”の存在が、作品にとってとても重要だと語る。「恋愛がテーマであっても、素敵な女ともだちとの場面で一番泣いたりする。物語をぐっと魅力的にする存在です」モデル・俳優の髙橋佳子さんは主人公に感情移入して読んでしまうそうで、「主人公が友達に優しくされているくだりを読むと、自分もそうされたような気がして、癒されます(笑)。自分の周りにもこういう人、いる!と思いながら読むのも楽しいですよ」自分の話をしたい、それで成り立つ友情も。「美しい絵柄で、思春期の苦しさや自分の価値の不安定さ、考えすぎるときの気持ちが描かれていて、読んでいると胃がキュッとなります。私が好きなのは、宇宙人のネルと自意識過剰なまりもが、同じ場所にいるのに別のことを考えている場面。“自分の話をしたい”ことで成り立つ友情を肯定してくれて、嬉しくなります」(オカヤさん)『教室の片隅で青春がはじまる』谷口菜津子主人公になりたいがゆえにいつも空回りしてしまう女子高生・まりもと、クラスメイトの宇宙人・ネルを中心に描かれる、窮屈だけど愛しい高校生の青春オムニバスストーリー。¥924(KADOKAWA)©谷口菜津子/KADOKAWAなんと20年以上続く二人の友情…。「“全部知ってる・知られてる”からこその安心感がありつつ、相手の生活を尊重してベッタリではないのがいい。“キツいことも言う。でもいざというときは助ける”という関係性は、私を含む読者の『女ともだち観』に多大な影響を与えていると思います。ずっと見てきたのでもはや二人が自分の友人のような感覚に!」(門倉さん)『後ハッピーマニア』安野モヨコ幸せを求め続ける女・重田加代子のアグレッシブな迷走人生を描く。’95年より連載された『ハッピー・マニア』の続編で、シゲタは45歳、友人のフクちゃんは50歳に。1~2巻¥990~1,012(祥伝社)『後ハッピーマニア1』©安野モヨコ/Cork投げやりを超えた先に、本当の友情がある…?「5番目の話に出てくる、メキシコ行きの飛行機で偶然知り合った青学女子と早稲女が、旅の終盤、互いのダメ出しをする悪口合戦のシーンが大好き。知り合ったばかりゆえの投げやりさと情熱が、動物的ですばらしい。そこまで感情を高められるって、実はものすごく相手にシンパシーを感じている関係性なんだろうな、と思います」(髙橋さん)『早稲女、女、男』柚木麻子早稲田大学に通う女子、通称“早稲女”を、立教や日本女子大、学習院、青学、慶應に通う女子たちの目線で描いた短編小説集。女子小説の名手である、柚木麻子の真骨頂!¥660(祥伝社文庫)オカヤイヅミさんマンガ家、イラストレーター。最新作『白木蓮はきれいに散らない』(小学館)では、’63年生まれの女性3人の“しんどい現実”の物語を描き、話題に。門倉紫麻さんかどくら・しまマンガライター。Amazonのマンガ担当エディターを経て現職。雑誌などで、マンガ家へのインタビューを行う。また、イベントへの登壇なども。髙橋佳子さんたかはし・かこモデル、俳優。本誌をはじめ雑誌、広告等で活躍。筒井康隆の本を愛読する読書家で、自身のインスタグラムでは読書記録も綴っている。※『anan』2021年7月21日号より。(by anan編集部)
2021年07月17日日常のスケッチの中にいまどきの気分がさりげなく表現されていて、共感を誘うオカヤイヅミさん。今年でデビュー10周年を迎え、その記念碑的作品2冊を同時刊行。『いいとしを』と『白木蓮はきれいに散らない』は、ミッドライフ・クライシスを感じ始める男性と女性、それぞれから見た世界が描かれ、首肯する場面や言葉が随所に出てくる。揺れる世界とお年頃…諸行無常を男女それぞれの目線で描いた2冊。「どちらも、死に近づいている人たちの話ですよね。男性、女性と分かれたのは、連載媒体に合わせてだったのですが、コミュニケーションのしかたや心理的・社会的な性差についての感覚…結果的にその違いも出せたかなと思います。たとえば、『いいとしを』で描いたように、男性は踏み込み方が違うのかな。雑談が苦手な人が多いですよね。そういうのは女の人の方が得意で、『白木蓮~』でもわかりますが、お互いそれほど踏み込まなくても、話すことがいっぱいありますよね」『白木蓮~』に登場するのは、専業主婦のマリ、離婚調停中のサヨ、キャリアウーマンのサトエ。高校時代はいつもつるんでいたが、大人になったいま、境遇は三者三様だ。高校卒業後40年間会ったこともなく、親しかった記憶もないヒロミが、なぜ自分たちに遺言を遺したのか。その意味を掴みかねながら、それぞれが目の前の悩みやこれまでの来し方に思いを馳せていく。「ヒロミは家族もいなくて孤独死してしまったけれど、背景が見えてくるにつれ、幸せってそんな単純な話ではないとわかるというか。そんなことを描きたかったんです」一方、『いいとしを』では、息子と父という、女性にとっては興味深い関係性を眺めるのが楽しい。灰田俊夫が父と同居してからあらためて〈親についてなんて、知らないことの方が多いんじゃないか〉と独りごちたりするリアリティが見事。「私の家族は父が2年前に他界していて、灰田家のように“聞けば/聞かれれば答える”くらいの距離感でした。生んで育てた/育てられたわけだから密な感じはするけれど、家族は親密で感情を共有するものだという空気には違和感がありますね」また、両作品ともフェミニズムと関わるテーマにも触れられていて、その手さばきにも心を掴まれる。「女性同士ならとっくにがしっと手を取り合うくらいの話も、男性たちには“そんなにわかり合えていなかったんだ”と思うことがあります(笑)。ただ指摘しても響かないと思うので、日常の中でだんだんわかってくれればいいなと思います」オカヤさんのマンガを読んでいて何よりも心地いいのは、さまざまな人間の生き方や価値観を柔らかく受け止めて描いてくれるところ。「長年積み重ねていけば、いいものも悪いものも増えていく。どうしようもなさがからんで“しょうがないな”と思いながらやっていかなくてはいけない部分もあるし、いい思い出で気持ちが楽になったりもする。自分の中に、何に対しても『どっちがいいというものでもない』というのがある気がします」『いいとしを』42歳のバツイチ男性が、かくしゃくとしたマイペースな父と同居し始めて気づくさまざまな変化を描いた。KADOKAWA1320円©オカヤイヅミ/KADOKAWA『白木蓮はきれいに散らない』孤独死した元同級生ヒロミの謎の遺言によって、集まることになった3人の女性たちが、自らが向き合っている現実を見つめ直す。小学館1320円オカヤイヅミ1978 年、東京都生まれ。マンガ家、イラストレーター。2011年に『いろちがい』でデビュー。『ものするひと』『すきまめし』など著書多数。※『anan』2021年6月9日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年06月07日『みつば通り商店街にて』は、タケミさんと商店街に集う人々との交流が四季の移ろいとともに描かれた、ほんわか下町情緒コミックだ。東京の下町にある〈あまり立派ではない〉商店街で、小料理屋コエドを始めたタケミさん。ワケありかと思いきや、〈わりと空(す)いてたから…〉と天然ぶりを見せるあたりも愛らしい。「私自身は人づきあいがドライな環境で育ったので、人間同士の距離は近いけど閉鎖的すぎない下町の空気に憧れがあるんです。そんな場所で、小料理屋でも開いて暮らしてみたいという、タケミさんの気持ちに乗っかる形で描きました」ウェブに1日1枚をアップするスタイルで連載。新聞の4コママンガのように、キャラクターたちがワイワイ動いていく世界ができたらいいなと思った、とオカヤイヅミさん。「ただし、表舞台のドタバタからこぼれてしまうような些細な出来事に自分は惹かれがちで、軸足はそちらにある感じです」たとえば、タケミさんは酉の市に出かけても、大声で三本締めされるのが苦手で小さな熊手しか買えない。「こういう場面で照れてしまうのはまんま自分ですね。テンションが高い領域に踏み込めない、はしゃげない(笑)。丸刈りの文学少年ヒサオくんも、『萌える』みたいなことが言えないタイプ。内に秘めてしまうオタク心がもやもやと発酵している期間って、好きですね」おしゃれな色みのオールカラー作品で、いつまでも眺めていたくなる。「当時はフルデジタルで描いていました。使う色も絞って、パレットに置いておき、先に背景の色とかを大胆に塗り分け、あとから人物の顔やフキダシ部分を白で抜いたり。いまは紙とペンなので、懐かしいです」『みつば通り商店街にて』5年ほど前の連載を書籍化。おしゃまなサヤちゃんは商店街の情報通、元スナック経営者のユフコさんは恋多き大家さん…気になる人物が多数登場。KADOKAWA980円©オカヤイヅミ/KADOKAWAマンガ家、イラストレーター。多摩美術大学卒。Webデザイナーとして勤務後、フリーに。『すきまめし』、『ものするひと』1~2巻ほか著書多数。装画や雑誌のカットなども手がける。※『anan』2018年12月26日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2018年12月20日小腹を満たす、至福のお惣菜。手みやげツウが絶賛する、“間違いのない”味をご紹介します!「仕事でご一緒することの多い、編集者の大先輩が持参する差し入れがいつも完璧で、見習ってます。ご飯ものなら、ほっこりした佇まいに思わず場が和む海苔巻きや、後から駆けつける人にもキレイなまま出せる箱寿司。惣菜なら、町場のシャルキュトリーだけど味は本格的なソーセージをさりげなく。男子にも人気でオススメですよ」とは、料理本の撮影も多く手掛ける写真家の新居明子さん。また、手作りの惣菜を持参することも、というのは、著書に食のコミックエッセイも多いオカヤイヅミさん。「なので買っていくときは、家では作るのが手間な折り詰めや揚げ物を。それもパッケージや見た目、匂いで味の想像がつく、“間違いのないもの”を選ぶのが秘訣」そんな手みやげマスターの2人が選ぶ、本当に喜ばれるお惣菜とは?マイスタームラカミ『ケーゼ』本場ドイツでも認められる自家製シャルキュトリー。ソーセージ生地を型に詰めて焼き上げた「ケーゼ」は、レバーケーゼ、オニオンケーゼ、ピザケーゼの3種類。「薄く切ればそのままオードブルになるので、パーティに持っていくのに便利。チーズの入ったピザケーゼがお気に入りです!」(新居さん)。地方発送可(送料¥831~)。ラッピング代別途¥500。予約可。レバーケーゼ、オニオンケーゼ、ピザケーゼ各¥1,200(税込み)●東京都武蔵野市境南町3‐19‐8TEL:0422・32・31669:00~19:00日・祝日休パン屋のどん助『ちくわチーズ』東新宿の住宅街で、何代にもわたって愛される名店。「ここのパンはどれも魅力的ですが、私は“ちくわチーズ”のファン。ちくわにチーズを入れてパン粉をまぶし、オーブンで焼き上げたものを、手作りのソースを塗ったコッペパンにサンド。パンの生地がとにかくふわふわで、一口で味の違いがわかります。コロッケサンドやハムかつパンも大好物です」(新居さん)。予約不可。¥172(税込み)●東京都新宿区新宿7‐13‐3TEL:03・3203・66717:30~18:30(なくなり次第終了)日・月曜休ラ・ヴィエイユ・フランス本店『エビとそら豆のキッシュ』こだわりのケーキ、マカロン、焼き菓子などが人気の洋菓子店で、土・日限定で販売されているのがこちらのキッシュ。「生地のサクサク感とチーズの後味がやみつき。一つ一つが大きいので、1個でお腹いっぱいになります」(新居さん)。キッシュは他にも、「野菜とサーモン」「ほうれん草とベーコン」「キノコのキッシュ」の4種類。予約可。¥550(税込み)●東京都世田谷区粕谷4‐15‐6グランデュール千歳烏山1FTEL:03・5314・353010:00~19:30月曜休(祝日の場合は翌火曜休)元楽総本店『蔵前名物 元楽の焼豚』「蔵前のラーメンといえばここ」といわれる名店で、密かに人気を集めるのがテイクアウト用のチャーシュー。特製タレで2時間半じっくり煮込まれたチャーシューは、箸を入れるとほろりと崩れる柔らかさ。「タレと特製ごま油付きで、ネギさえ刻めば家でおいしいチャーシュー丼が楽しめます」(新居さん)。予約可。¥2,800(税込み)●東京都台東区蔵前2‐12‐3TEL:03・3851・453711:00~21:00(土・日・祝日~20:00)無休(GW、盆、年末年始は休みあり)サンドイッチハウス メルヘン『チーズチキン大葉巻き(タマゴ)』都内を中心に23店舗を展開するサンドイッチ専門店。ショーケースにズラリと並ぶサンドイッチの種類の豊富さは随一で、写真の「チーズチキン大葉巻き」や「アボカドとツナ」などの変わりダネも。「学生の頃から親しんでいる味。しょっぱい系と甘い系のバランスを考えながら、相手の好みに応じて選ぶ楽しさも」(オカヤさん)。予約可。¥340●松屋銀座本店東京都中央区銀座3‐6‐1松屋銀座本店B1TEL:03・3564・204010:00~20:00(松屋銀座の営業に準ずる)大野屋牛肉店『松阪牛入りビーフメンチカツ&スコッチエッグ』神楽坂上にある老舗の精肉店。この店いちばんの名物「スコッチエッグ」は、国産の合挽き肉に卵がまるまる1個入っていてボリューム満点!タイミングが良ければ、揚げたてをテイクアウトできる。「メンチカツやスコッチエッグは牛肉のいい香りがします。『家庭で揚げ物は少し面倒で』という人にはいつも喜ばれます。一人暮らしの人が多い飲み会にはビールと一緒に(笑)」(オカヤさん)。予約可。松阪牛入りビーフメンチカツ¥260(税込み)スコッチエッグ¥350(税込み)●東京都新宿区神楽坂6‐8TEL:03・3260・294710:30~19:00無休(正月、盆は休みあり)新居明子さん写真家。雑誌や書籍、広告などで活躍。「Edition SOSOUP」を立ち上げ自主制作の出版物「ZINE」も手がける。オカヤイヅミさん漫画家、イラストレーター。著書に『すきまめし』『続・すきまめし』(共にマッグガーデン)などが。※『anan』2017年11月8日号より。写真・小川朋央文・瀬尾麻美(by anan編集部)
2017年11月07日