タイトルからして謎である。藤原竜也は『インシテミル』というこの作品のタイトルについて「最初は全く意味が分からず、イメージがわかなかった」と言う。時給11万2,000円。仕事の内容は10人の男女が外部から閉ざされた館の中での7日を監視されるだけ。何も起きなければ7日後に1,600万円を超える報酬を手にして終わるはずだったこのアルバイト。だが、2日目に一人の死者が出たことで恐るべき生き残りゲームへと化していく――。一見、非現実的にも思えるこの世界観の中で、藤原さんは主人公・結城をどのように作り上げ、どのようにして物語に灯をともしていったのか?「綾瀬さんにコンビニで声掛けられたら付いて行くでしょう(笑)」『カメレオン』に『カイジ 人生逆転ゲーム』、『パレード』。ここ数年、藤原さんが主演映画で演じた主人公は、どこかで一般人とは一線を画した、屈折した感情や“闇”を抱えている人物であったが、本作で求められたのは、エキセントリックな物語とは裏腹に、ごく一般的な感情、リアクションだった。「中田(秀夫)監督に言われたのは、現実的とは言えない世界の中で、結城の目線で物語を進めていきたい。“正しい感情の流れ”で行ってほしいということ。つまり、ごく普通の人間がこの世界を見て感じる喜怒哀楽をそのままその瞬間に表現してほしい、と。実は、クランクイン後も物語の結末が決定していない部分があって、演じる上でそこに不安を感じてもいたんですが、その中で監督は『僕に付いてきてほしい』ということを仰ってくださった。撮影の中日を過ぎて決定稿が出てからは、もうその結末に向かっていく感じで。その中で、監督の『藤原くんのキャラクターは、常に“正しい”ジャッジをしてほしい』という言葉に救われた部分はありますね」。もしも、藤原さんがこの“暗鬼館”でのゲームに参加させられることになったらどのように振る舞うのだろうか?「実際、現場でもみんなで話してたんですよ。『生き残るのは石原さとみちゃんだろう』とか(笑)。そもそも僕も含めて、世の男性は、コンビニで綾瀬はるかさんに声を掛けられたら付いて行ってしまうでしょうしね…。映画の中では結城たちが暗鬼館に入る際に、警告のアナウンスが入りますよね?『非倫理的なことが起きる可能性が…』って。その時点で僕は間違いなく帰ります(笑)。時給11万2,000円ということ自体、裏があるんじゃないか?と考えちゃうと思います。強制的に参加することになったら?僕だったら、部屋から出ないで、ずっとドアを押さえてますね。じっとしていてお金だけもらうかな」。極限の状態で人はどのような反応を見せるか?「十人十色」とはよく言ったもので、人間の様々なタイプが見えてくるのが面白い。「結城は興奮とパニック状態にある人々に、平常心を持たせようと必死で説得する。僕自身、そういう面は持ってるかな、と思う。結城がとる行動は、決して自分と遠くないな、とは思いましたね。あとは…武器次第だな、武器(笑)!」「撮影所での時間の流れが好き」続いて藤原さん自身について話を聞こう。「舞台と映画、どちらが好きか?」などという問いに意味はない。が、タイプの違う役柄、表現を映画と舞台で見事なまでにこなしていく。藤原さんにとって映画という表現が持つ意味は?そう尋ねるとこんな話をしてくれた。「この間、舞台でN.Y.に行ったら、ちょうど日本の映画を集めた映画祭をやっていて『パレード』が上映されていたんです。そのとき思ったのは、国境を越えるというのは舞台であれ映画であれ素晴らしいことだけど、舞台の場合は肉体をもって表現しないと伝わらない。その点、映画は完成したら良い意味で一人歩きしてくれる。舞台では『今日もやるのか』って(苦笑)、大変な思いをして毎日やるところを、映画はひとりで繰り返し上映されて…その点を面白いなって感じましたね。それから何より、僕は撮影所が大好きなんです。撮影所での時間の流れ――早朝に入って深夜に帰ってまた早朝に入って――というのもすごく好き。極端な話、ワンカットとワンカットの間が何時間も空く日もあるけど、僕は全くそれが苦にならない。スタッフさんひとりひとりの動きを見ているのも好きだし…映画っていいなぁって思えてくるんです」。いま、一緒に仕事をしてみたい人は…現在28歳。十分に若いがすでに芸歴は10年を超える。「身毒丸」(1997年/演出・蜷川幸雄)での鮮烈なデビュー以来、周囲からは“天才”という評価を与えられ、出演作も常に話題を呼んできた。「あまり、昔をふり返ることはしない」と語る藤原さんだが、この十数年の中で、“転機”と呼べる半年間があったという。「4年ほど前にロンドンに行かせてもらったけど、そのときの時間は大きかったですね。イギリスにいながらにして、日本にいる自分を想像し、仕事や自分のあり方を客観的に考えたら、フッと楽になった瞬間があったんです。気づいたのはすごくシンプルで、魅力的な人、うまい俳優さんと一緒に仕事をさせてもらうのが面白い、ということ。それから…自分はここで何ができるか?何を表現するか?ということを少し深く考えられるようになったかな」。今後に話が及ぶと「まだまだ一緒にやったことのない監督さんはたくさんいらっしゃいますからね」とニヤリ。そういえば、数年前にインタビューした際に「仕事がしてみたい!」と語っていた三谷幸喜とは、念願かなって舞台「ろくでなし啄木」で来年、その演出を受けることに。では映画界でいま、気になる存在は?「豊田利晃監督ですかね…。つい最近、お会いしたんですが。でもいまはとにかく、いろんな新しい人と出会いたいという気持ちが強いですね。自分自身を打破して新しい一歩を進むには、地べたを這うような…人間くさい役をやった方がいいのかな?と28にして思うところもあり…」と思案顔。最後にいま、この映画のタイトルからイメージすることを尋ねると「異常なまでの世界――それは暗鬼館かもしれないし、もっと大きな世界なのかもしれないけど――そこに入り込んでいくというイメージかな。でも正解はないんだよね?」。正解のない世界へ漕ぎ出す男はこれから我々に何を見せてくれるのだろうか――?(photo:Yoshio Kumagai)■関連作品:インシテミル 7日間のデス・ゲーム 2010年10月16日より丸の内ピカデリーほか全国にて公開© 2010「インシテミル」製作委員会■関連記事:藤原竜也、綾瀬はるか、石原さとみ、北大路欣也ら、現金1億6,128万円と豪華舞台挨拶犯人は誰?かつてない心理戦がいま始まる『インシテミル』試写会に5組10名様ご招待究極の心理ゲーム『インシテミル』主題歌がMay’nの「シンジテミル」に決定!ビョンホン、主演ドラマの声優、藤原竜也と初対面「好きな俳優、嬉しい」綾瀬はるか&石原さとみがこれまでにない一面見せる?『インシテミル』クランクアップ
2010年10月14日脚本家の三谷幸喜演出、SMAPの香取慎吾主演のコメディ・ミュージカル「TALK LIKE SINGING」のニューヨーク公演が11月22日(現地時間)、全13回の日程を終え、各回ともスタンディング・オベーションなどの好反応を得て閉幕した。会場のオフブロードウェイで中規模劇場とされるニューヨーク大学・スカボールセンターは、最終公演前のウィークデイの回で、約860席がほぼ満席。約8割が日本人とみられる女性客が占めた。最後列席に座った三谷さんは、上演前にもかかわらず関係者からの挨拶に快く応じたが、緊張した面持ちだった。舞台が始まり、最初に香取さんが舞台に姿を見せると、会場から拍手が沸き起こった。生まれたときから話す代わりに歌と踊りでしか思いを表現できない不思議な青年・ターロウと、彼のよき理解者、学者ら彼を取り巻く人々の姿を描くオリジナルストーリー。音楽監督の元ピチカートファイヴ、小西康陽によるポップな曲に乗って、香取さんは日本語の歌、ダンス、英語の歌を通じ、愛嬌あふれる無垢な心を持つターロウを好演し、コンスタントに笑いを取り、時に切ないムードを醸して観客を魅了。外国人客や子供からも笑い声が起きた。一方で川平慈英、堀内敬子、新納慎也(にいろ しんや)の実力派共演陣もそれぞれに個性的な存在感を発揮。中でも、ターロウの“病”を研究する精神医学者・ダイソン博士役の川平さんはキレのあるダンスなどの芸達者ぶりで、拍手をさらう場面が何度もあった。終演後のカーテンコールでは、スタンディング・オベーション。反応を確かめ安堵の表情を浮かべる香取さんは、自身のN.Y.初進出と、日本のオリジナルミュージカルを日本より先にN.Y.で初演するという初の試みの“成功”の喜びをかみしめている様子だった。東京“凱旋公演”は2010年1月23日(土)から3月7日(日)まで、東京・赤坂ACTシアターにて。(photo/text:Yoko Saito)「TALK LIKE SINGING」■関連作品:座頭市 THE LAST 2010年、公開予定
2009年11月24日池宮彰一郎の小説「最後の忠臣蔵」が、役所広司と佐藤浩市を主演に迎え映画化されることが発表された。池宮作品ではすでに「四十七人の刺客」が1994年に高倉健、中井貴一、宮沢りえらを配して映画化されているが、本作は「四十七人の刺客」の後に出版された「四十七人目の浪士」(※のちに「最後の忠臣蔵」に改題)が原作。大石内蔵助を始めとする浪士たちが吉良邸に討ち入り主君に殉じて切腹したのち、密かに生き残った2人の男たちの姿を描いた物語となっている。役所さんが演じるのは、赤穂浪士・瀬尾左孫衛門(せのお・まござえもん)。討ち入りの直前に仲間たちの元から逃亡、討ち入り後に志士たちが英雄視される中で、“裏切り者”“臆病者”という罵り、蔑みを浴びながら生きる。一方の佐藤さんの演じる寺坂吉右衛門(てらさかきちえもん)は、討ち入りを果たした四十七士の一人であり、「忠臣蔵」ファンの間でも名の知られた人気の志士。討ち入りには参加したもののその直後、討ち入りの事実を後世に伝えることを目的に、大石内蔵助の命で隊から離脱した浪士であり、2人が吉良邸討ち入り後の時代を生きる姿、そして瀬尾の逃亡の真の理由が描かれる。これまで幾度となく時代劇で名演を見せてきた役所さんと佐藤さん。近年では、三谷幸喜監督作『THE 有頂天ホテル』に共に出演しているものの、本格的な共演は今回が初めて。果たしてどのような絡みを見せてくれるのか?メガホンを握るのは、長年にわたりTVドラマ「北の国から」シリーズの演出を担当してきた杉田成道。これまでに舞台で手塚治虫原作の「陽だまりの樹」やつかこうへい作の「幕末純情伝」といった時代劇の演出を手掛けている。共演者には安田成美、笈田ヨシ、山本耕史、伊武雅刀ら演技派の俳優陣が名を連ねる。『ラスト サムライ』、『硫黄島からの手紙』といったヒット作を世に送り出してきたワーナー・ブラザースが日本発の大作として日本人の心に深く刻まれた「忠臣蔵」で世界に勝負を賭ける!『最後の忠臣蔵』は2011年正月第二弾として全国公開予定。■関連作品:最後の忠臣蔵 2011年正月第2弾として全国公開
2009年11月04日角川春樹が150万人動員のためにまさに体を張ってプロモーション!大森南朋を主演に迎えた自身、12年ぶりの監督作となる『笑う警官』の宣伝のために、角川監督自らが23時の時報の“時計”になることが明らかになった。「時計になる」とはこの写真のように大きな時計の前で自らの体を使って23時を示すというもの。実写版『時をかける少女』(’97)以来の監督作で、本作がタイムサスペンスということに因んでの試みとなるが、自ら時を刻むことに…。近年、日本映画のヒット作では、監督自らが数々のプロモーションに参加する姿が目立つ。『ザ・マジックアワー』では三谷幸喜監督が100本以上の番組に出演、一時期、TVは同監督によるジャック状態に。また、『劔岳点の記』では木村大作監督が全国90か所での舞台挨拶を、自らが車を運転して各地を回りながら敢行し話題を呼んだ。最近では、『空気人形』の是枝裕和監督が、出演陣と揃って「笑っていいとも!」に出演していたが、今回、新たに一人の映画監督によって日本初となる究極のプロモーションが実現!角川監督は本作について「150万人動員できなければ、映画は辞めようと思ってます」と宣言しているが、目標達成のために体を張った形だ。まずは10月30日(金)の22時59分45秒に、監督の“時計っぷり”が本作公式サイト上で公開されるほか、AXN、FOXチャンネルほか、STV札幌テレビ放送、テレビ愛知、三重テレビ、読売テレビ、RKB毎日放送などで、この23時の時報が放映される予定。『笑う警官』は11月14日(土)より全国にて公開。『笑う警官』公式サイト■関連作品:笑う警官 2009年11月14日より全国にて公開© 2009『笑う警官』製作委員会■関連記事:【TIFFレポート】大森南朋、原作者の「かっこよすぎる」という称賛に複雑な気分大森南朋「監督と一緒に、人間ドラマをしっかり作った」『笑う警官』舞台挨拶恋したい“大人”な俳優は誰?MTVオリジナルiTunesダウンロードカードを10名様プレゼント大森南朋主演『笑う警官』主題歌に復活間近の歌姫W・ヒューストンの新曲が決定!人気警察小説の映画化!『笑う警官』モニター試写会に50組100名様ご招待
2009年10月30日8日夜、釜山国際映画祭が華やかに開幕した。海雲台ヨット競技場での開幕式には、イ・ビョンホン、ジョシュ・ハートネット、松本人志、ソ・ジソプ、イ・ミンホ、審査委員長のジャン=ジャック・ベネックスら、多くのスターや監督が参加。14回目となる今年のオープニング作品は、チャン・ドンゴン主演の『Good Morning President』。3人の大統領の悩みを描くコメディで、ドンゴンの韓国映画への出演は実に4年ぶり。ドンゴンが見せるコミカルな演技に大観衆が大きく沸いた。記者会見でドンゴンは、「釜山のオープニングを飾れてとても光栄です。いままでコメディに出演したことがなかったので、ぜひ挑戦したかった。撮影をとても楽しみました」とふり返った。監督・脚本は、『トンマッコルへようこそ』などの人気脚本家チャン・ジン。演劇界出身で、そのユーモアあふれる作風から韓国の三谷幸喜とも言われている監督は「政治的な映画ではないが、私が少年時代を過ごした70年代は軍事政権時代で、大統領のコメディなど考えられなかった。いまは良い時代だと思う。今年亡くなった2人の大統領にも観てもらいたかった」と語った。キム・ドンホ映画祭委員長は「チャン・ジン監督の才能に加え、不況なので、明るい作品で映画祭を盛り上げたかった」と『Good Morning President』(原題)をオープニングに選んだ動機を語った。チャン・ドンゴンが演じるのは、妻を早くに亡くし、子育てに奮闘するイケメン独身大統領。尊敬する前大統領の娘(チャン・ジェヨン)にほのかな思いを寄せたり、瀕死の一般市民のために自分の腎臓を提供するか否かで悩んだりという、人間味あふれる役どころだ。香港の記者から、「あなた自身も独身生活が長くて、淋しくはありませんか」という質問には「普通の独身男性と同じように、淋しいときもありますが、そんなに深刻に悩んではいませんよ」と笑っていた。(photo/text:Ayako Ishizu)■関連作品:第14回釜山国際映画祭 [映画祭]■関連記事:ダウンタウン松本絶叫「殺人予告の人かと…」監督第2作『しんぼる』公開!
2009年10月10日猫をテーマにした数々の映画の公開に、猫駅長、果ては猫カフェなど、とどまるところを知らぬ空前の猫ブームの中、その大本命として、大人気のブログを基に誕生した漫画「くるねこ」のアニメ化が決定!元々は、捨て猫を見ると拾わずにいられない筆者“くるねこ大和”が、拾った猫たちの里親探しのためにブログを開設したのが始まり。これが、OLや主婦を中心に人気を博し、様々なブログのランキングで上位に上り詰め、これを単行本化した漫画「くるねこ」(エンターブレイン刊)もシリーズで60万部を超える大ヒット作となった。今回、この漫画が満を持してアニメ化。個性に富んだ猫たちに囲まれた笑いあり、涙ありの日常が綴られる。本作で、5匹の猫たちと飼い主“くるねこ大和”の6役全ての声を演じるのは、『かもめ食堂』、『めがね』などでの好演で、世の女性たちの支持を得ており、先の2作と同じスタッフによる『プール』の公開を9月に控える小林聡美。小林さんと猫と言えば、小林さんが脚本家、演出家の三谷幸喜と結婚するきっかけともなった「やっぱり猫が好き」が名高い。どこか運命を感じさせる今回の一人全役で、かわいらしい猫たちをどう演じ分けるのか、注目が集まる。原作の持つ命の温かさを独特の“間”で描き出すのは、「おじゃる丸」などのアニメ作品の演出を手がけてきた大地丙太郎。主題歌の作曲を、これまでに椎名林檎、平井堅、スピッツなど錚々たるミュージシャンたちのプロデュースやアレンジを手がけてきた、J-POPを代表するプロデューサー、亀田誠治が担当することも発表された。なお、その主題歌を歌うミュージシャンは…後日発表されるとのことなので、こちらも要チェック!また、本作は7月5日(日)より関西テレビにて放送がスタートし、作品のご当地である名古屋(東海テレビにて7月11日より放送開始)など13府県でテレビ放映される。加えて、ブログ発という本作の特性を生かして、Yahoo!動画での全国無料配信も実施。Yahoo!ファンクラブで「くるねこ」公式サイトが開設されるなど、今後もWEB上で様々なサービスとの連動が行われる予定だという。TVアニメ「くるねこ」7月5日(日)から関西テレビにて放送(毎週日曜8:55〜9:00)7月11日(土)より東海テレビにて放送(毎週土曜11:40〜11:45)TV放送後、Yahoo!動画にて無料動画配信予定公式サイト:くるねこ大和ブログ■関連作品:プール 2009年9月、シネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほか全国にて公開めがね 2007年9月22日よりテアトルタイムズスクエア、銀座テアトルシネマほか全国にて公開© めがね商会■関連記事:夏の星空の下、ロマンチックに屋外映画鑑賞!「スターライトシネマ PLUS」開催【ベルリン国際映画祭】『めがね』日本映画初のザルツゲーバー賞を受賞!もたいまさこは女優生命をかけて踊り、加瀬亮はひたすら眠り続けた『めがね』公開ゆる〜く“たそがれる”『めがね』は癒し効果バツグン!これは劇中の雰囲気そのまま?いや、俳優陣の日常?『めがね』“たそがれ”試写会
2009年06月15日