現代社会において、うつ病や不眠症は珍しいものではなくなりました。もちろん環境によって異なりますが、潜在的なうつの患者数は「全国民の2割」とも言われているほど。フロアを見渡せば、間違いなくひとりはうつの人がいると言えるかもしれません。今回は心理カウンセラーである僕が、ある男性たちのケースをもとに現代のメンタルヘルス事情についてお話ししましょう。■久しぶりの麻雀にて度重なるパワハラに耐えかねて、ついにうつ病と診断されてしまったAさん。会社を休職し、自宅静養の日々を送っていました。月に一度の心療内科への通院以外に、特にやることもなかったAさんに、久しぶりに友人のBさんから連絡がありました。「麻雀のメンツが足りないから来てくれない?」これまで土日もなく働いていたAさん。たまには麻雀もいいか……と思い、参加することにしたそうです。その晩、集まったメンツは以下の通り。全員、30代前半の男性です。研究室は違うけれど、大学時代の同期同士で、お互いに顔も名前も知っています。学生時代には何度も、卒業も何度か、卓を囲んだことがあったそうです。Aさん:事務系管理職(休職中)既婚・子供なしうつ病Bさん:開発系システムエンジニア独身不眠症Cさん:技術職既婚・子供ありうつ病Dさん:運用系システムエンジニア独身AさんからCさんまでの3人は、全員がうつ病ないし不眠症で休職の経験があります。だから、お互いの状態はなんとなく知っていました。「低気圧が来ると、具合が悪くなるよね」は、彼らの合言葉だそうです。■「お前もなんだ……」「いや、実はおれも、不眠症って言われちゃってさあ。薬をもらってきたよ」半荘が終わったところで、Dさん、まさかの不眠症告白。しかし、3人とも特に驚きはしませんでした。Dさんの目は真っ赤に充血していて、目の下には濃いクマができていたからです。Dさんは鞄から大量の薬袋を出して、牌が散らばる麻雀卓の上に置きました。するとそれぞれ、Dさんの薬を手に取り出したのです。A「あ、デパスか。安定剤だな。これはおれと一緒だ」B「ハルシオンは飲んでいたことがあるけど、不眠症の初心者が飲むにはきつくないか?」C「ドグマチールは半分胃薬だね。前におれが飲んでいたデプロメールと同じなんだっけな?」Dさんの薬は、3人のうち、誰かひとりは実際に服用したことのある薬でした。その総量から、結構重症だな……とAさんは思ったそうです。D「だって、もう3日間、一睡もしてないからね」B「そういえばおれも、最後に寝たのはいつだったっけなあ?」A「おれも、寝るときって、うまく薬が効くか、気絶するかって感じが多いな」C「おれは割とちゃんと眠れるようになったよ。前はよく夜中に目が覚めてたけれど」D「みんなそんなもんか。じゃあおれもまあたいしたことはないな」一同「いやいやいやいや!ここを基準で考えたらダメだから!」■うつになりやすい環境とは?Aさんたち4人も、もとからうつや不眠症だったわけではありません。大学時代はサークルにも所属していたし、社会に出てから10年以上が経過しています。ただ、彼らの場合は環境的にうつや不眠症になりやすい職場にいると言えるでしょう。Aさんは事務系ですが管理職、そのほかの3人は、種類は違えども技術職です。管理職はどの業種であれ、他人を評価したり監督したりすることが仕事。それがそのまま自分の成績にもつながるので、ストレスを抱え込みやすい。Aさんのように若くして管理職に就いてしまうと、うつにかかる可能性も高くなってくるでしょう。技術職は基本的に、その業務にかかりきりになって、こもってしまうことが多い。エンジニアは納期が迫ると早出残業当たり前の世界になるので、睡眠リズムが崩壊し、そのまま睡眠障害やうつを患ってしまうことも。また、「残業や休日出勤が多く、プライベートがない」「他部署から異動してきた上司がまったく仕事ができないだけのワンマンで、いろいろとやりづらくなった」というような環境だと、うつや不眠症を発症する確率は高まるでしょうね。いわゆる「ブラック会社」に自分が属していると感じたら、ちょっと注意が必要かも知れません。ちなみに、Aさんはその後、主治医のもとでカウンセリングと投薬治療を行い、半年ほどで職場復帰することができました。しかし、完治はしておらず、依然として定期通院と投薬治療を続けています。うつは再発率の高い病気と言われていますが、きちんと治療すれば再発する確率も減る。職場や家庭などが彼らに決して無理をさせることなく、回復をあたたかく見守ってほしいものです。(OFFICE-SANGA yanagi)
2012年07月07日4月16日、エーザイ株式会社によって、不眠症治療薬「ルネスタ(R)錠(一般名:エスゾピクロン)」の新発売記者説明会が開催された。同治療薬は、非ベンゾジアゼピン系としては国内では12年ぶりとなる治療薬だ。国内外の臨床実験では、不眠症の主たる症状である入眠障害と中途覚醒の双方に対して有効であるという結果が出ている。また、臨床的に問題となる依存性や持ち越し効果などは認められていないと同時に、長期投薬による有効性の減弱もみられないことから、不眠症改善へのさらなる効果が期待されている。説明会のタイトルは、「『これからの不眠症治療の新たな選択』―高齢、ストレス社会における不眠症治療の課題と12年ぶりの新薬が果たす役割―」。高齢化社会、ストレス社会といわれる現代において、不眠症が引き金となって起こるさまざまな弊害、不眠症治療の現状と課題、そして「ルネスタ(R)錠」が今後果たしていくことが期待される役割についての解説が行われた。説明会前半には、エーザイジャパン医薬マーケティング部 重点領域室・斎藤奈美氏によって、「不眠症の疫学からみるルネスタの開発意義」が発表された。これによると「ルネスタ(R)錠」は、不眠症の主症状である入眠障害と中途覚醒のいずれにも有効であるほか、原発性、併発性のいずれの不眠症にも有効だとのこと。併発性とは精神疾患、身体疾患をともなうもの。原発性はそのいずれにもよらないものをいう。続いて、久留米大学医学部神経精神医学講座教授・内村直尚氏によって、「これからの不眠症治療の新たな選択」についての説明が行われた。内村氏によると、人間の脳は体重の2%しか占めていないにも関わらず、身体全体で使うエネルギーの20%近くを消費しているという。しかも、現代人の生活は、身体よりも脳を使うことが圧倒的に多いため、十分な睡眠をとって脳を休ませる必要があるのだそうだ。「睡眠中は、ストレスから解放されるため、心や脳が十分に休息をとることができる」と内村氏。さらに、不眠が及ぼす悪影響として、「うつ病の誘因・憎悪」、「心血管イベントの誘発」「高血圧糖尿病脂質異常症」、「肥満の誘因・憎悪」、「仕事上の能率・生産性の低下」、「医療費の増大」などを挙げた。また、「年齢を調整した睡眠時間の死亡リスク」の統計結果から、睡眠時間が7時間の人がもっとも死亡率が低いことが判明していることを報告。適切な睡眠をとり、心身ともに十分な休養をとっていてこそ、日中、有意義に過ごすことができるし、健康で長生きすることができると説明した。また、不眠対策を国別に比較した結果、日本人は「医師に診てもらう」、「睡眠薬を服用する」という選択をする人が圧倒的に少ない。そのかわりとして、「アルコールを摂取して寝付きをよくする」という方法をとっているという調査結果を報告。内村氏はその理由を、「日本人は、眠れないくらいでは死なないと思っている。睡眠薬を服用することは怖いからアルコールで対処しようと思っている」と説明した。しかし、睡眠に対するアルコールと睡眠薬の影響を比較した結果、アルコールには「寝付きがよい」という効果しかなく、中途覚醒、深睡眠、耐性、依存症予防に対しては有効ではないことが分かっているとして、中途覚醒にも効果が認められていながら、依存性や持ち越し効果の心配はない「ルネスタ(R)錠」が不眠症患者の役に立てばと話した。全国956名の医師にアンケートをとった「不眠症に対する実態調査」の結果でも、不眠症改善に期待される薬剤として、「入眠障害と中途覚醒の両方に効果が高い」ことへの支持が圧倒的に高い。今後、「ルネスタ(R)錠」がどこまでこの期待に応えて、不眠症患者を減少させることができるかに注目が集まっている。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年04月18日23日、武田薬品工業株式会社によって、「睡眠障害・不眠症に関する説明会」が開催された。説明会のテーマは、「現代社会における睡眠の実態を探るよりよい眠りを得るために」。約6,000名を対象とした、睡眠に関するアンケート調査の結果が報告された。説明会でははじめに、武田薬品医薬営業本部マーケティング部消化器・中枢グループグループマネージャー川崎洋明氏によって、アンケート調査の結果をもとに作成された、現代社会における睡眠の実態が発表された。それによると、睡眠になんらかの問題を抱えている人の割合は、全人口の68.7%にものぼるという(男性=66.9%、女性=70.6%)。また、未既婚で比較すると、未婚=70.8%、既婚=67.4%と未婚者のほうが睡眠障害に悩む傾向であることが判明。年齢別にみると、20代=72.2%、30代=69.9%、40代=69.3%、50代=65.6%、60代=66.6%と20代が群を抜く結果に。同社によると、現代社会において不眠症状を引き起こす要因として、「パソコンやメディアの発達による夜間の光環境の変化」「休む間もなく動いている24時間社会」「加速する高齢化」などが挙げられるのだという。また、同社は、こうしたことが起因して、睡眠を誘発するホルモン「メラトニン」の分泌が減少すると、体内時計が狂い、夜になっても眠気を感じることなくなかなか寝付けないなどの症状があらわれると説明。乱れた体内時計を正常に戻すためには、「睡眠/覚醒 のリズム=“サーカディアンリズム”」を整えることが必要であるが、そのためには生活習慣を改善することが大切だという。とりわけ「毎日、ほぼ決まった時刻に起床して、日光に当たること」「日中はよく活動して、昼夜のメリハリのある生活を送る」「夜は部屋の照明を落として、明るい光を浴びない」の3点は基本としておさえるべき項目だとのこと。また、こうした生活習慣改善と並行して不眠症治療薬を服用することも有効であると説明。同社から2010年に発売されたロゼレム錠は、服用を続けることによって、睡眠と覚醒のリズムが徐々に改善され、寝つきがよくなることが期待されている。しかし、乱れた体内リズムを整えるためには、こうした治療薬を一定期間以上服用し続けることが必須であるが、即効性を確認できないと途中で服用をやめてしまう患者が多くみられたこともあり、同社では、不眠症治療中の患者をサポートするために、患者向けウェブサイト「体内時計.jp()」をオープン。「現代型不眠」や、体内時計ならびに睡眠の仕組みについて分かりやすく解説した上で、乱れた体内時計を整えるためのコツを伝授している。同サイトの説明は、武田薬品工業株式会社医薬営業本部医薬学術部学術支援グループ吉久真理子さんが担当。サイトにも登場するクマのキャラクター「グーグ&スース」の名前の由来を、「Good Sleepの頭文字GとSから考えられた」と話し、武田薬品工業株式会社ならびに医療関係者の「不眠症に悩む人みんなに、グーグー スースー眠れるようになってもらいたい」との思いを説明した。同サイトでは、簡単なセルフチェックシートで、不眠症の兆候にあるかどうかセルフチェックできる他、診察を希望する際にプリントアウトして持参できる相談シートなども用意されている。また、毎日の生活に手軽に取り入れることができる「体内時計を整える12カ条」も紹介されているので、不眠症の疑いがある人は参考にしてほしいとのことだ。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年03月25日