舞台『熱海殺人事件 CROSS OVER 45』が2月17日(土)、東京・紀伊國屋ホールで開幕する。舞台「熱海殺人事件」CROSS OVER 45」チケット情報つかこうへいの代表作『熱海殺人事件』の45周年を記念した本作は、演出を岡村俊一が手掛け、木村伝兵衛部長刑事を味方良介、水野朋子婦人警官を木崎ゆりあ、犯人・大山金太郎をWキャストでα-X’sの敦貴と匠海、富山から来た新任の刑事・熊田留吉を石田明(NON STYLE)という布陣で上演される。昨年に引き続き、木村伝兵衛を演じる味方に話を聞いた。「今年はより木村伝兵衛という役の重さを感じています」と語る味方。「去年はどこかがむしゃらな部分もあって、『俺が木村伝兵衛をやるんだ』という気持ちが前に出ていたし、『若さで勝負するんだ』という気持ちがあったけど、今年はそれが取り払われて。もっとこの役と向き合っていかなければ、もっと本質で向き合っていかなければ、『熱海殺人事件』という本を僕が理解して、全部を回していかなければって。そう考えると、これほど大変なことはないなと感じますね」と、昨年初めて木村伝兵衛を演じ、その中でただひとり、続投で出演する意味や役割を全身全霊で受け止める。石田や木崎、敦貴、匠海との共演には「異種格闘技戦」的な魅力を感じているという。「まず自分の部下役に石田さんがいるって、これほど怖いことはないです。圧倒的な芝居スキル、心を持ってる人なので。稽古してても泣かされそうになるんですよ。伝兵衛なのに、やばいやばい負ける負ける、みたいな。強力な仲間だけど一番のライバルです。ゆりあちゃんやα-X’sのふたりには、稽古場で『あ、新しい空気が入ってきた』と感じています。初舞台だったりもするので、純粋な部分がやっぱりあって。役者ってどうしても計算でやる部分があるんだけど、そうじゃない生のもの、わからずにやってるからこそ出てくるものがあるんですよね。それに心が動かされる瞬間があります。このカンパニーの新たな『熱海殺人事件』ができると思います」この作品には表面上の物語とその奥にある想いという構造があるが、観るうえで準備は必要か聞いてみると「もちろん本質を知って欲しいという気持ちもあるけども、でも『なんかすげーもん観たな』と思って欲しいんですよね。『すげーことやってんな』『自分たちにはできないな』と思ってもらえればもらえるほど、僕は嬉しい。だから前情報なしでいいと思います。その中で気になったらもう1回足を運んでもらって、誰かひとりだけを観てみたり、人間模様を観察してもらうとまた楽しめると思う。無理に話を理解しよう理解しようと思って観ると、置いてかれちゃいますから!」。公演は2月17日(土)から3月5日(月)まで東京・紀伊國屋ホールにて。取材・文:中川實穗
2018年02月05日つかこうへいの代表作として上演され続けてきた「熱海殺人事件」の45周年公演『熱海殺人事件 CROSS OVER 45』が2月17日(土)に開幕する。その公開稽古と囲み取材が行われた。舞台『熱海殺人事件 CROSS OVER 45』チケット情報つかこうへいが1973年に文学座に書き下ろし、以降、東京・紀伊國屋ホールを拠点に“春の風物詩”と呼ばれるほど再演を重ねられてきた「熱海殺人事件」。2010年につかが亡くなった後も“つかこうへい復活祭”として紀伊國屋ホールで上演され続ける作品だ。今年はその45周年を記念し“CROSS OVER 45”と銘打ち、演出を岡村俊一、木村伝兵衛部長刑事を味方良介、水野朋子婦人警官を木崎ゆりあ、犯人・大山金太郎をWキャストでα-X’sの敦貴と匠海、富山から来た刑事・熊田留吉を石田明(NON STYLE)というメンバーでつくりあげる。公開稽古では、稽古が白熱しすぎてボロボロ(!)という服装で登場したキャスト陣が冒頭から15分ほどのシーンを披露。木崎は大人の恋心を秘めた婦人警官を体当たりで演じ、石田は未熟な若手刑事を笑いも織り交ぜながら繊細につくりあげ、Wキャストで(公開稽古では途中交代で出演)恋人殺しの犯人を演じた敦貴と匠海は圧倒的な透明感で新たな大山像をみせた。そして昨年、馬場徹と並び史上最年少の24歳で木村伝兵衛を演じた味方は、より圧倒的な存在として場の空気を動かし、“CROSS OVER 45”ならではの『熱海殺人事件』をみせつけた。稽古後の囲み取材では、味方が「新たなメンバーと、45年間の想いを背負いながら僕らの『熱海殺人事件』をつくれたら」、石田は「ひとり、お笑いですけど、この歴史のある作品の名を汚さないようにがんばりたいです」、木﨑は「AKB48を卒業して初の仕事がこの舞台でよかったなとすごく思っています。心強い先輩方もいらっしゃいますし、自分もがんばらなきゃと思うような後輩たち(敦貴・匠海)もいるので。やりがいがあって楽しいです」と笑顔。敦貴は「同じグループのメンバーとWキャストで演じることができて幸せですし、ライバル心を強く持って取り組みたい」、匠海は「僕にとって初舞台ですが、敦貴には負けたくないので精一杯がんばります!」と意気込む。石田が「この舞台は変な人しか無理ですから。ひと癖もふた癖もないと台本に食われちゃう!」と話す本作。コメディタッチな演出に質問が及ぶと味方が「実はその裏に何があるのか、僕らの台詞の裏に何があるのか、ということに気づくと、メッセージがすごく詰まっていて。表だけで探っていくと見つからない部分、この人はなんでこんなこと言うんだろう、こんなことやっているんだろうっていう部分がある」と解説する場面も見られた。公演は2月17日(土)から3月5日(月)まで東京・紀伊國屋ホールにて。撮影・取材・文:中川實穗
2018年02月01日3月17日(土)に開幕する劇団☆新感線『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極』の製作発表記者会見が行われ、作・中島かずき、演出・いのうえひでのり、出演者の天海祐希、福士誠治、竜星涼、清水くるみ、三宅弘城、山本亨、梶原善、古田新太が登壇した。劇団☆新感線『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極』チケット情報本作は、IHIステージアラウンド東京で約1年間にわたり上演されてきた『髑髏城の七人』Season花・鳥・風・月に続く最終章。 “もうひとつの『髑髏城の七人』”を描く完全新作で、『修羅天魔(シュラテンマ)』と題し、捨之介も蘭兵衛も出ない、シリーズで最も“織田信長”像が引き立つ物語になるという。いのうえは今作での新たな仕掛けを問われると「企んでることはいくつかあります」とニヤリ。「(回転する)劇場にも慣れてきたし、今回はリアルなセットの広い“絵”を見せたいです」と明かす。新作の内容について中島は「悪いことをしている天魔王をやっつけるという話は変わりないです。でも、悪いことをした意味や人間関係は変わる。極楽太夫は凄腕のスナイパーの女性で、過去に天魔王と因縁があって物語が動いていくので」と語る。主演を務める天海は「古田さんとご一緒させていただけますし、素晴らしいキャストの皆さんと新作『髑髏城の七人』をつくることができるので、本当に楽しみにしています。皆さんのお芝居と共に自分の極楽太夫という役柄を掘り下げていけたら」とコメント。その天海の「古田センパイが出ないとヤダ」というラブコールに応え出演を決めた古田は「愛している人の頼みは断れないので」とサラリと述べ、演じる天魔王については「今まで1年間いろんな人が天魔王を演じてきて、エキセントリックだったりカッコいい天魔王をやっていたので…僕はなるべく動かない天魔王をやりたい(笑)」と断言。それに対し中島は「本人がそう言ってますからね」、いのうえは「(古田は)突っ立ってても空間を支配するので」と信頼の言葉を述べた。福士は「古田さんの代わりにいくらでも走ります!」、竜星は「夢三郎は男ですが太夫。新しい役なので楽しみながら演じたい」、清水は「天海さんと初めてお会いした時に興奮して鼻血が出ちゃったので。稽古では出さないようにします」、三宅は「04年のアオドクロから二度目のカンテツです。当時の身体能力はないですが…」、山本は「(肝となる役柄と言われ)そう思うと緊張してしまうので、気負わずにやっていきたいです」、梶原は「新感線の舞台では場を締める役が多いので、今回の役は初めての役どころです」と述べた。公演は3月17日(土)から5月31日(木)まで東京・IHIステージアラウンド東京にて。取材・文:中川實穗
2018年01月24日矢崎広、柳下大、小川ゲン、佐野岳という今注目の若手俳優による4人芝居『Shakespeare’s R&J~シェイクスピアのロミオとジュリエット~』が1月19日(金)に開幕する。出演者4人に話を聞いた。舞台「Shakespeare’S r&J」チケット情報本作は、アメリカの劇作家ジョー・カラルコが不朽の名作『ロミオとジュリエット』を斬新な発想で脚色し、世界的に話題を集めた戯曲。厳格なカソリックの男子高校生4人が寄宿舎を抜け出し、禁断の書に定められた『ロミオとジュリエット』のページを開く――というストーリーで、演出は新国立劇場演劇研修所のコーチを務め、自身のユニットでも作品を発表している田中麻衣子。「シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』をやるわけではないことは、観に来る方に知っておいてもらいたいです」と柳下。4人の役名は<学生1><学生2><学生3><学生4>。名もなき彼らが夜中にこっそりと起き出し、はちきれんばかりの好奇心で『ロミオとジュリエット』を演じ始める。しかし、「やっぱりシェイクスピアの言葉は強い。引っ張られちゃいます」(佐野)と、油断すると『ロミオとジュリエット』をそのまま演じてしまう苦労を語る4人。彼らがみせたいのはそこではないのだ。「寄宿舎の同じ部屋で暮らしている男子学生4人が、この本を手にすることで、しまっていた感情や想いがどんどん溢れていく。それをお客様に覗き見していただくような作品です」(矢崎)。「かなりしっかり掘って、その下でみんなでつながっていかないとうまく見せられないのかなと思っています。だから稽古場ではその性格や関係性を掘り下げる作業をしています」(佐野)。取材は稽古が始まって2週間というタイミングであったが「なかなかカタチにならないというか。けっこうたくさんこねてるんですけど、ひとつ作っては壊し、ひとつ作っては壊し、みたいな。本当にいろんな解釈、方向性、見せ方があるので」(矢崎)、「これからは、すごく細かい作業、例えば声のボリュームだったり、誰を見る見ないだったり、物を取る仕草、座る姿勢…そういう部分を詰めていくことになると思います。本当にちょっとしたことの積み重ねです」(柳下)と繊細に、けれど頑丈に稽古を重ねていた。“学生”の“芝居”という二重構造だが「さらにもう一個層があるというか。『ロミオとジュリエット』を演じている学生たちを僕たちが演じてるっていう。やっぱり身体も精神も変えられないから、完全に学生を演じようとしても滲み出るものは必ずあるので。だからこそ、その俳優がやる意味がある。そういうところも面白いんじゃないかなと思います」(小川)。公演は1月19日(金)から 2月4日(日)まで東京・シアタートラムにて。1月23日(火)・30日(火)アフタートークあり。取材・文:中川實穗
2018年01月16日今年結成10周年を迎える「虚構の劇団」の第13回公演『もうひとつの地球の歩き方~How to walk on another Earth.~』が、1月19日(金)に開幕する。虚構の劇団『もうひとつの地球の歩き方』チケット情報劇団の主宰であり作・演出を務める鴻上尚史による、劇団として約2年ぶりの新作で、“記憶とシンギュラリティ(技術的特異点。人工知能が人類の知能を超える転換点、それがもたらす変化)と天草四郎の物語”という本作。稽古場で、主演の秋元龍太朗と鴻上に話を聞いた。書き下ろしの本作について鴻上は「僕はずっとコンピューターに関心があって。囲碁のAI(人工知能)が人間をとうとう破ったとか、2045年にシンギュラリティっていうのを迎えるんだ、みたいなことにもすごく興味があったので、それがどうなっていくんだろうというのを考えてみたかった。それと今回、龍太朗が参加してくれるので、AIの反対、歴史上で似合うキャラクターを考えて“天草四郎のAIを開発しようとしているエンジニア”ができた」と語る。天草四郎という歴史上の人物が同物語に絡んでくるかと尋ねてみると「2020年(オリンピックイヤー)に向けて、クリスチャンである天草四郎は、豊臣秀吉や織田信長よりも外国人観光客と接点があるんじゃないかということで、たちの悪い広告代理店が“天草四郎プロジェクト”を仕掛けて展開していくんだけど…これ以上言えない(笑)」(鴻上)。演じる秋元は「自分の実感に近いことが多いし、すごく胸が痛くなる瞬間があります。誰にも言ってないことを見透かされて、ハッとするような感覚が何度もある」。初めて参加する虚構の劇団の稽古について秋元は「鴻上さんがよくおっしゃる『自然な感情がありながら意識的な表現』。それは僕が(俳優として)得たいと思っていたことで。そういうものが詰まった稽古と演出と本なので、なんか久々に…寝れないです」と嬉しそう。劇団員の印象は「個性の塊(笑)。芝居が全部その人からしか出てこないものなんですよ。そういうのを見てると、悔しいなと思いますね。稽古場に行くのが楽しいです」。客演としての秋元の存在を鴻上は「龍太朗が22歳だから、劇団員は『悔しい』って思いも内心あると思うんだよね。『若造に負けるものか』みたいな。それが今のところいい方向に出てると思う。やっぱそうやってバチバチする若手を集めたいですよ。慰め合ったり寂しさを分かち合うのは嫌だよね(笑)」。秋元「誰にでも観てほしいけど、僕くらいの年代の人に観てほしいです。あとは疲れてる人!」鴻上「俺の作品を、大人たちが演じるのではなく若者たちがどう受け取るか、その戦いの感じを楽しんでもらえれば」公演は1月19日(金)から28日(日)まで東京・座・高円寺1にて上演後、大阪、愛媛、再び東京を巡演。取材・文:中川實穗
2018年01月11日『ミュージカル「黒執事」-Tango on the Campania-』が2017年12月31日に開幕した。本作は、枢やなによる同名漫画を原作にした2009年から上演されるミュージカルシリーズの最新作。19世紀の英国を舞台に、名門貴族ファントムハイヴ家に仕える万能の執事でありその正体は悪魔のセバスチャンと13歳の当主・シエルが、女王の密命によって裏社会の事件を闇で片付けていく作品で、今作では昨年劇場版アニメも公開された人気エピソード「豪華客船編」(原作コミック11~14巻に掲載)が描かれる。【チケット情報はこちら】前作に続きセバスチャン・ミカエリス役を古川雄大、シエル・ファントムハイヴ役を内川蓮生が演じるほか、約2年ぶりにグレル・サトクリフ役の植原卓也、ドルイット子爵役の佐々木喜英が出演。さらにロナルド・ノックス役の味方良介、スネーク役の原嶋元久、エリザベス・ミッドフォード役の岡崎百々子ら初参加キャストも注目の顔ぶれが揃う。演出は、今作から児玉明子が手掛ける。今作の舞台は豪華客船『カンパニア号』。セバスチャンとシエルは、ある噂を調査するため船に乗り込むが――。本シリーズの世界観を大きく広げる楽曲はもちろん、豪華客船ならではの華やかな舞台美術、美しい衣装に身を包んだキャラクターたちによる殺陣、映像を多様に活用した演出など、実にさまざまな魅力が詰め込まれた本作。さらに、決してシエルから目を離さない古川の細やかな芝居や、古川と内川の抜群のコンビネーション、植原と味方のコミカルでテンポのいいやり取り、佐々木の“イラッとさせる”個性派キャラ、岡崎がみせる鮮やかなギャップなど、俳優陣による色とりどりの芝居が作品を豊かにふくらませる。主演の古川が「(稽古の)過程はとても過酷なものとなりましたが、出来上がったものは想像以上のものになりました」とコメントしたように、ダイナミックな演出と俳優たちの繊細な芝居が引き立て合う、児玉版ミュージカル「黒執事」が誕生した。今作では、セバスチャンとシエルが「一人の子供と一匹の悪魔」から「伯爵と執事」になるまでの回想や、普段はセバスチャンに守られる立場のシエルが婚約者・エリザベスのために戦う姿なども見どころ。原作ファンはあの“合言葉”もぜひ楽しみにしてほしい。公演は1月14日(日)まで東京・TBS赤坂ACTシアターにて上演後、兵庫、愛知、石川、福岡を巡演。2月12日(月・祝)の千秋楽公演はライブビューイングも行われる。撮影・取材・文:中川實穗(C)2017 枢やな/ミュージカル黒執事プロジェクト
2018年01月10日三谷幸喜が脚本・作詞・構成・演出を務め、川平慈英とシルビア・グラブが出演する『Koki MITANI’S SHOW GIRL vol.2「ショーガール」~告白しちゃいなよ、you~』が、2018年1月8日(月・祝)に開幕する。その稽古場にて川平慈英とシルビアに話を聞いた。Koki MITANI’S SHOW GIRL vol.2 チケット情報本シリーズは、1974年から1988年まで福田陽一郎脚本・構成・演出、木の実ナナと細川俊之の出演でパルコ劇場にて上演されてきた“大人のためのちょっと小洒落た時間”。川平とシルビアが出演する三谷版は2014年にスタートし、2016年に再演。今作はそれに続く第二弾として『告白しちゃいなよ、you』をタイトルに、第一部は三谷書き下ろしの“大人のコイバナ”ショートミュージカル、第二部は華やかなショータイムを届ける。20年ほど前の初共演以来、数多くのステージを共にしてきたふたりは、川平がシルビアを「“相方”という感じになってきた」というほどの仲。そんなふたりと三谷がタッグを組むことで、シルビアは「面白いです。三谷さんって、私たちが普段ステージで求められることとは違う、意外な部分も探し出そうとしてくださるので。もちろんそれで苦労することもありますが、そこがいいんだろうなと思うんですよ。自由にさせてもらうと自分たちがやりやすい方向に持っていっちゃう部分を、敢えてそうじゃない方向に手綱を引いてくれてます」、川平も「自分で言うのもなんですが、三谷さんは自分の大好きな玩具を手に入れて遊んでる感じ(笑)。そうくる!?っていう目から鱗の発想が面白い。稽古場では三谷さんが一番笑ってますよ」と、稽古を楽しむ様子が伝わるコメント。第二弾、三作目となる今作は、「初演は(福田版から作品を引き継ぐことで)失敗できないという思いもあったし、相当気負ってました。でもそろそろ三谷さんの『ショーガール』カラーも染み込んできたので。自由度が広がってきたかな」(川平)と、三谷ならではの“スタイリッシュな裏切りのある大人の芝居”が楽しめるという。日本ではまだまだ珍しい“ショー”を、さらに“大人の時間”として届けるシリーズ。川平は「音楽も知ってる、芝居も知ってる、映画も知ってる人たちが観て、溜飲が下がるようなお芝居にしたい」、シルビアも「もちろんがんばるのですが、観たときに『がんばってるな、あの人たち』と思われないようなものをみせれたら」と、“日本で観られる極上のブロードウエイショー”を目指し稽古に励んでいる。そんな一線級のショーに加え、長澤まさみ、髙嶋政宏、草刈正雄、斉藤由貴、戸田恵子、新納慎也、中川晃教、竹内結子という豪華ゲスト陣も日替わりで出演する公演は、2018年1月8日(月・祝)から14日(日)まで東京・EX THEATER ROPPONGIにて。チケットは発売中。取材・文・撮影中川實穗
2018年01月05日西田大輔が脚本・演出を手がける舞台『ONLY SILVER FISH』が、2018年1月6日(土)に開幕する。本作は、西田が主宰するAND ENDLESSで2007年に初演された舞台作品の10年ぶりの再演。今回は舞台に加え、舞台と同じキャストが出演し、異なる役柄&ストーリーで展開する映画版(監督・西田大輔)も春に公開される。舞台の稽古場にて、主演の松田凌と西田に話を聞いた。舞台版「ONLY SILVER FISH」チケット情報映画の撮影は終え、舞台の稽古中というタイミングの取材。西田は「映画と舞台を同じキャストで同時進行するという初めての経験で。普段、作品をつくる中で俳優の人間性を知って、それを役の中に落とし込んでいくのが僕の仕事だと思っているのですが、今回は先に映画の撮影があったので、既にひとつ潜り抜けてここに来ているような想いが今はあります。いよいよホームグラウンド(舞台)での稽古ですが、そもそも座組がすごくいいし、映画を経たことによっていい効果が生まれるんじゃないかと思っていますね」と手ごたえを語る。主演の松田が「舞台ありきの映画、映画ありきの舞台、という感覚の作品ではない」と語った本作。2作で共通しているのは“一匹の魚=シルバーフィッシュ”だけで、全く違うストーリーを描く。舞台版は、ある洋館で開かれるパーティに招かれたメンバーがひとり、またひとりと死んでいくミステリーだ。「こういうワンシチュエーションで会話だけで表現していく作品は、今の西田さんのイメージにはないかも」と松田が語るように、華やかでエンターテインメント性の高い西田作品とはひと味違うものになる。それについて西田は「三谷幸喜さんがワンシチュエーションで上質な芝居をつくって時代を牽引されてるのを下の世代として見ていたので、本当はやりたかったけど『書かない』って決めてたんですよ。だけどやっぱり書いてみたいと思って書いたのが、この作品なんです」と明かしてくれた。そんな本作について松田は「演じていて、『この人の頭の中ってどうなってるんだろう』と思うんですよ。作品全体もそうだし、お話の内容もそうだし、演出もそうなんですけど、裏の裏をかくようなところがあって。セオリー通りじゃない。“この人の作品は観なきゃ損だよ”と思います!」と熱く太鼓判を押す。自身の役柄についても「ずっと出てるし、ほぼ全員と絡んでる。実はそういう役は今まであまりないので、演じてて面白いですね。こんなにもいろんな人と目を合わせて芝居するのは久しぶりで、嬉しいです」と充実を感じているという。松田が「新年一作目に!」とオススメする本作は2018年1月6日(土)から17日(水)まで東京・紀伊國屋ホールにて。映画は2018年春に公開予定。取材・文:中川實穗
2017年12月27日2018年も『熱海殺人事件』が東京・紀伊國屋ホールで上演される。婦人警官・水野朋子を演じる木崎ゆりあと、演出を手掛ける岡村俊一に話を聞いた。舞台「熱海殺人事件」CROSS OVER 45チケット情報“春の風物詩”と呼ばれるほど紀伊國屋ホールで上演されてきた『熱海殺人事件』。1973年に初演、映画化、ドラマ化もされたつかこうへいの代表作で、2010年につかが亡くなってからも、つか作品を数多く手がける岡村俊一の演出で同劇場で上演され続けている。その2018年版は、木村伝兵衛部長刑事を昨年に引き続き味方良介、水野朋子婦人警官を木崎ゆりあ、犯人・大山金太郎をWキャストでα-X’sの敦貴と匠海、富山から来た刑事・熊田留吉に石田明(NON STYLE)で上演する。木崎はこの9月にSKE48・AKB48を卒業したばかり。女優としてやっていきたいという木崎の、卒業後初の演技仕事となる。「今はビックリというのが一番簡単で分かりやすい気持ちです。『熱海殺人事件』は有名な作品ですし、4人芝居のうちのひとりとして演じるというのも驚きました。早口大丈夫かなとか(笑)、不安なことはいっぱいありますが、その何倍も楽しみ。これ以上ないくらいありがたいです」。そんな木崎を岡村は「AKB48時代からパンチ力がある役柄をやってのけることができる勢いや思い切りの良さがある。今回は傷だらけのゆりあを(笑)、演じてもらおうと思っています」。木崎が演じるのは水野朋子婦人警官役。これまでもさまざまな女優に演じられてきた役柄だが、岡村は「水野朋子はすごいパワハラとセクハラにあう役なので、それに生の反応で返せばいい演技になっていく。俳優というのは『こういうことが起きたときにあなたはどうしますか』と問われ続ける職業だと思うので。だから頭で考えて『こんな役にしようと思ってる』では通用しない。特につかこうへい流の作品は。追い込まれている姿を見せるというような、そういう芝居になると思います」。その中でも木崎は「攻撃陣3人を受け止めて返す側。そのときどきできちんと二塁打を打ったりバントをしなきゃいけない」(岡村)と4人芝居ならではの苦労もありそうだが、木崎自身は「舞台経験がほぼないに等しいので、それでこの極限まで持ってかれる舞台に参加するのが楽しみです!」と頼もしい。岡村の演出作品には、『あずみ』の川栄李奈、『新・幕末純情伝』の松井玲奈と元メンバーが出演しているが「川栄にも松井玲奈ちゃんにも負けたくない気持ちがあります。稽古で『川栄はもっとできたぞ』『松井はもっと動けたぞ』と言われたら悔しいし。超えていきたいですね」公演は2018年2月17日(土)から3月5日(月)まで東京・紀伊國屋ホールにて。取材・文:中川實穗
2017年12月27日作・鴻上尚史×演出・菜月チョビ『パレード旅団』が上演中だ。OFFICE SHIKA REBORN 「パレード旅団」チケット情報本作は、OFFICE SHIKA PRODUCEによる新シリーズ「OFFICE SHIKA REBORN」の第一弾。「名作は、死なない」のキャッチフレーズのもと、これまでの名作戯曲を上演していくシリーズとなる。その1作目である『パレード旅団』は、本作で演出を務める劇団鹿殺し座長の菜月チョビが“初めて目にした「演劇」”という鴻上尚史の戯曲。現在59歳の鴻上が27歳のときに原型を書き、その10年後の1995年に鴻上主宰の劇団「第三舞台」(2012年解散)で上演された作品だ。舞台は、「いじめにさらされている中学生の世界」と「崩壊にさらされているある家族の世界」、そのふたつの世界を往復するように進行し、キャストは“ある少年の家に全国から集まったいじめられっ子7人”と、“洪水で流される家の中に閉じ込められたバラバラの7人家族”の2役を演じる。ダンスや歌、布を使った水の表現、大きな扇風機でつくり出す台風の表現など鴻上戯曲テイストを感じる演出を、菜月ならではギラリとした味付けでみせていく世界。そこに登場する7人+2人の人物たちのやり取りは、2017年に上演するうえでのアレンジも加えられてはいるが、これが約30年前に生まれた物語だと思うとある種の絶望を感じるほどに現代に響くものだ。中でも、いじめられっ子の少年の「復讐、しませんか?」や、父親の「今日かぎり、父さんは父さんをやめようと思う」という台詞は印象的。そこの言葉を発端に、物語が動きだす。全く違う軸で展開するふたつの世界が徐々に近づいていくかのように、世界間の往復テンポも少しずつ上がっていき、ある瞬間、交差する。そのとき、思いもよらない光景がそこに広がった。その光景は、菜月の描く世界とも鴻上の描く世界とも感じられる、演劇ならではの鮮烈な魅力を放っていた。公演は、犬のポチ役を伊藤今人が演じる「踊る犬組」、菜月が演じる「歌う犬組」があるほか、葉丸あすか(柿喰う客)が演じる婚約者役を「日替わり婚約者」として七味まゆ味(柿喰う客)やファーストサマーウイカ、有田杏子(劇団鹿殺し)が演じる日も設定されており、さまざまなバージョンが楽しめる。『パレード旅団』は12月17日(日)まで東京・シアターサンモール(終了)、12月21日(木)から24日(日)まで大阪・ABCホールにて上演。撮影・取材・文:中川實穗
2017年12月18日柿喰う客2018年本公演『俺を縛れ!』が2018年1月24日(水)に開幕する。劇団の代表で作・演出を手掛ける中屋敷法仁(柿喰う客)、出演者の牧田哲也(柿喰う客)、平田裕一郎に話を聞いた。柿喰う客『俺を縛れ!』チケット情報2008年の初演以来の上演となる、“劇団「柿食う客」の問題作”という本作。とはいえ再演希望も多い作品だが、10年ぶりの再演の理由を中屋敷は「2016年は劇団結成10周年で “名作”と言われる作品をリバイバルして、2017年は『虚仮威(こけおどし)』を“最高傑作を上演する”という意気込みでやって。11周年も終えた今、いい作品ばかり振り返っていくのがちょっと恥ずかしくなって、劇団の歴史の中で一番恥ずかしい作品はなんだろうと考えたら、この作品でした。タイトルがもう恥ずかしい。当時、あまりにも僕らの才能がありすぎるから『止めてみろ!』みたいな感じで決めたんですよ(笑)。思い出すだけでも顔から火が出るくらいですが、もう面の皮も厚くなって、火が出ることもないだろうということで、再演にふみきりました」。そんな本作で“影の主人公”を演じる牧田は「今回、死ぬ気で頑張らなきゃと思ってます」と並々ならぬ意気込み。「(柿喰う客への)入団から2年が経つので。もっと自分で表現できていかなきゃと思っていて。僕、(芝居として)飛び込みたいと思ってるし、飛び込もうとしてるけど、飛び込みきれないところがあるんですよ。そこを今回はバンジージャンプの勢いでいきたい」。そんな牧田を中屋敷は「牧田くんはメンバーになる前からご一緒する機会が多いのですが、お行儀がいいんです、すごく。だから今回はお行儀が悪いところを見たい。柿喰う客は牧田くんのホームなのでね。劇団としても、お行儀悪かった時代、あの恥ずかしい時代の空気をもう一度出せたら」。逆に中屋敷が「お行儀悪いです、すごく(笑)」と言うのは客演として出演する平田だ。「僕はマッキー(牧田)と逆で考えたら何もできなくなるんですよ」と笑いつつも「今回呼んでもらえたのがめちゃくちゃ嬉しいです。柿喰う客の公演を観に行く機会も多いのですが、中屋敷さんの演出って外部作品のときと劇団とでちょっと違うと感じていて。その中で僕がどこまでやれるかがすごい楽しみ」と目を輝かせた。ちなみに牧田と平田も10年前に共演して以来、「裕一郎はいじられがちな僕が唯一いじれる人」(牧田)、「マッキーはお兄ちゃん。けっこう怒られます」(平田)という仲。久しぶりの共演をお互いに楽しみにしているそう。亀甲縛りの永島敬三がインパクト大のビジュアルについて「ここから内容を想像してもらって大丈夫!」と中屋敷が言う本作は2018年1月24日(水)から2月4日(日)まで東京・本多劇場にて上演。チケットは先行抽選プレリザーブを受付中。取材・文:中川實穗
2017年12月08日2018年2月に上演される舞台『続・時をかける少女』。筒井康隆の小説『時をかける少女』の続編として書かれ、「幻の名作」と言われる小説を原作に、ヨーロッパ企画の上田誠が脚本と演出、主演を上白石萌歌が務め、コメディとして上演される。戸塚純貴、健太郎、新内眞衣(乃木坂46)らも出演。舞台『続・時をかける少女』チケット情報主人公・芳山和子を演じる上白石に話を聞いた。小説『時をかける少女』を原作にしたドラマ『タイム・トラベラー』の続編『続 タイム・トラベラー』(共に1972年放送/NHK)のノヴェライズである本作。記憶を消された芳山和子や幼馴染の浅倉吾朗らの前に再びケン・ソゴルが現れ、物語が動き出す――。上白石は「もともと『時をかける少女』のファンで小説もアニメも観ていたのですが、続編があることを今回初めて知って。気付けば小説を買っていました(笑)」と既に原作は読了。「教室の扉を開けたらその先が宇宙だったりして、想像力が試されるような作品です。場面がどんどん変わっていくので、それを舞台でどう表現するのかも気になりました」。実は本作は、脚本・演出の上田が密かに有していた珠玉の企画。主宰をつとめるヨーロッパ企画でも一貫してコメディを上演し続けている上田らしく、本作もコメディとして描かれるという。これまで舞台では『星の王子さま』王子さま役やミュージカル『魔女の宅急便』キキ役などを演じ「あまり笑いの要素を求められたことがなかった」という上白石にとって初のコメディ作品。「鍛えられそうですし、吸収できることも多そう。『星の王子様』では井上芳雄さんのアドリブに必死についていきましたし、そこで学んだものも出せたらいいな(笑)」と意気込みつつも、「ドラマ『下北沢ダイハード』で上田さんが脚本を書かれた「手がビンになった男」を観たのですが、すごく面白くて。何も考えずに笑っちゃったし、舞台が楽しみになりました」と期待を語る。等身大の高校生役は「自分が制服を着ているうちにこの役ができるのは本当にしあわせだと思っています。多分今しか感じられないことがあると思うから」と、卒業を目前に感慨深い様子。実際の高校生活は「昨日まで舞台に立っていたのに今日からいつも通りの学校生活が始まると、『昨日までのあれはなんだったんだろう』って別人みたいに切り離される感じがあって。いろんな世界を行ったり来たり、ループしてるみたいに感じるんですよ」と、学業と仕事を両立する上白石ならではの体験や感覚が、演じる和子の“タイムワープ”体験とも重なりそうだ。公演は、2018年2月7日(水)から14日(水)まで東京グローブ座にて。その後、2月17日(土)には大阪・森ノ宮ピロティホールでも上演。チケットは現在、東京・大阪公演ともに抽選先行プレリザーブを受付中。取材・文:中川實穗
2017年12月04日Team337第2回公演『「ピンボケ探偵・村崎ピン子」~1枚の写真に秘められた謎~』が、12月8日(金)に開幕する。主演を務める柊子に話を聞いた。舞台「ピンボケ探偵・村崎ピン子」チケット情報本作は、主演の柊子や演出の嶋尾康史をはじめとするメンバーで毎年上演してきた舞台公演の19作目で、同メンバーが昨年旗揚げした「Team337」の第2回公演。柴田よしきによる小説『風味さんのカメラ日和』を原案にしたオリジナル作品で、個性的なメンバーが揃う探偵事務所を舞台にしたヒューマンコメディになるという。「私が演じる主人公・村崎ピン子はこの作品オリジナルのキャラクターですが、原案小説の登場人物がいろんなシーンに出てくる物語です。なので、小説を読んでから観ていただくとより楽しめますし、小説を読んでいない方も安心して観ていただけますよ」。写真がキーになる探偵もので「モニターを設置して、事件に関わる写真が客席からも大きく見えるようにしているので、お客様も一緒に謎解きしていただけると思います!」。その中で、柊子が今回演じるのは、ちょっとドジでピント外れの探偵見習い・村崎ピン子。“ピンボケ探偵”と呼ばれるド天然キャラだ。「天然キャラは10代の頃はよく舞台で演じてたんですけど、NHK連続テレビ小説「まれ」(矢野陶子役)以降クールな役が増えていたので、ちょっと久しぶりです」と語る役柄は、さまざまな経験をした今だからこそ、昔は感じなかった難しさを感じているという。「“演じる”には多少なりとも計算をしなくちゃいけないと思うのですが、その計算が見えてしまうと“天然キャラ”が愛すべきキャラクターではなくなる。そういうことは昔は考えていなかったなと思います」と、ひとつ深まった“天然キャラ”が見られそうだ。演出の嶋尾とは長い付き合いだが「今回、ムチャブリが多いんですよ。だからなんか稽古場でひとりでスベッてることが多くて(笑)。嶋尾さんしか笑ってないときもあって、ちょっと恥ずかしいです(笑)」。また、先日『オール讀物』(12月号)で初の小説を発表した柊子。この経験が芝居にも反映されているという。「台本の読み方が変わりました。実際に自分が小説を書いたことで、ひとつ台詞が生み出される背景に、本当にたくさんの感情があるということがよく分かって。演じるときにはそこをちゃんと表現しなきゃいけないのだと改めて感じました」。柊子が「ここが原点。Team337が大きくなるのが一番の夢だから、地道にコツコツやっていきたいです」と語る公演は、12月8日(金)から10日(日)まで大阪・スタジオACT 、1月10日(水)から14日(日)まで東京・赤坂RED/THEATERにて。取材・文:中川實穗
2017年11月29日漫画『艶漢』の世界観を歌謡エンターテインメントショーとして表現する歌謡倶楽部『艶漢』第二幕の制作発表が行われ、吉原詩郎役の櫻井圭登、山田光路郎役の末原拓馬(おぼんろ)、吉原安里役の三上俊が登壇した。本作は、尚月地による同名漫画を舞台化した浪漫活劇譚『艶漢(あでかん)』に出演するキャストたちが、本編とはまた違う表現で『艶漢』ワールドを魅せる歌謡エンターテインメントショー。昨年8月に第一弾が上演され、今回は「第二幕」として4月に東京キネマ?楽部で上演される。脚本・演出は第1弾に続き、「Club SLAZY」シリーズやミュージカル「魔界王子 devils and realist」シリーズを手掛ける伊勢直弘。本作の上演決定について、櫻井は「『歌謡倶楽部』はトリッキーな作品なので、次はどんなアプローチでつくるのか楽しみ。ドキドキですね!」、末原は「『艶漢』には陰の部分と陽の部分があって。『活劇譚』が暗いほうに振っているぶん、その反動か『歌謡倶楽部』はひたすら明るく。来ていただいた方がパーッと開けていくものになればと思います」、三上は「この『歌謡倶楽部』は(原作の)巻末漫画だったりおまけ漫画のイメージ。『活劇譚』は“真摯に芝居でつくりあげよう”という思いでやっていますが、『歌謡倶楽部』は“真剣に遊ぼう”という感覚で、楽しんでいけたらと思います」とそれぞれ語った。初演の印象的な出来事を問われると、櫻井は「全裸で登場するっていうのは衝撃的でしたね」と挙げ、「あのスタンバイはもう一生ないんだろうなっていう感じ(笑)。『艶漢』ならではだと思いました」と笑顔を見せた。末原は「この作品は『艶漢』の登場人物たちがスピンオフで(歌って踊る)っていうちょっとメタな構造になっているので、お客さんが『おいおい』ってなったらどうしようと思っていた」と明かしつつ「幕が上がると(詩郎が)全裸で幕が閉じたときに、ブワーッて拍手があって。それを裏で聞いたときに『いけるね』『よかった』って目を合わせました。登場人物として物語の外に出て、生身の皆さんと繋がるのは不思議で面白かったです」と振り返る。三上は「客席の皆さんと一緒にペンライトを振ったり、同じ振りをしていただいたりする場面もあったのですが、その“境界線を取っ払っちゃう”瞬間っていうのはすごく心地よくて、一体化できたなと感じました。常々、作品はお客さんと一緒につくるものだと思っているので、そういう瞬間をまた今回もつくれたらいいなと思っています」と今作に向けての想いも語った。歌謡倶楽部『艶漢』第二幕は、2018年4月11日(水)から15日(日)まで東京キネマ倶楽部にて上演。取材・文:中川實穗(C)尚 月地/新書館(C)尚 月地/幻灯署活劇支部
2017年11月27日2018年4月に上演されるミュージカル『リトル・ナイト・ミュージック』の製作発表会見が、東京・スウェーデン大使館で行われ、主演の大竹しのぶ、風間杜夫、蓮佛美沙子、ウエンツ瑛士が登壇した。ミュージカル『リトル・ナイト・ミュージック』チケット情報愛を求める男女が滑稽にすれ違い、愛し合う一夜が描かれるミュージカル・ラブ・コメディ。作詞・作曲はスティーブン・ソンドハイム、脚本はヒュー・ホイラーが手がけ、初演以来トニー賞7部門、グラミー賞2部門を受賞した。日本では19年ぶりの上演となり、演出はマリア・フリードマンが初来日して手掛ける。作品の魅力を伝えるため(!?)に、大竹&風間・蓮佛&ウエンツの2組でベッドに入り開かれた会見。とはいえ関係性は、風間演じるフレデリックと蓮佛演じるアンが年の差新婚夫婦、ウエンツ演じるヘンリックはフレデリックの息子ながら義母のアンに恋する青年、そして大竹演じる主人公・デジレはフレデリックのかつての恋人という複雑なもの。大竹は「なんだか奇妙なシチュエーション」と笑いつつ、「歌はもともと好きだったのですが、本格的なミュージカルはこの作品と同じソンドハイム(作詞・作曲)の『スウィーニー・トッド』で。一つひとつの音が重なりあって、台詞があって、歌があって、ミュージカルってなんて素晴らしいんだと思った作品です。それに今回、マリア・フリードマンさんという素晴らしい演出家の方が日本で初めて演出をしてくださる。歌と芝居が分かれるのではない、『これぞミュージカルだ』と思うものができたらいいなと思っています」と語った。初めてミュージカルに挑戦する風間は「恩師のつかこうへいに『日本で一番踊ってはいけない役者』だと言われ続けてきたので。今回、ミュージカルだけど踊るシーンはないということでお引き受けしました」と笑いを誘いつつ、「しのぶちゃんとは古い間柄なんですけど、舞台で共演するのは初めてで嬉しい」と笑顔を見せた。これが舞台初挑戦となる蓮佛は、今回の挑戦を「大竹しのぶさんといつかご一緒できたらと思っていました。お芝居をつくっていく過程を含めそばで見させていただける…それだけで『やりたい』と言いました」と明かした。ウエンツは自身の役柄について「おない年といえど義理の母親に恋をする役柄で。恋敵が自分の父親というところで苦悩する部分だったりとか、いろんなものを失うかもしれなくても手に入れたい愛が、どれだけ素晴らしいものかを表現できたら」と語った。大竹が「一生のうちで“忘れられない一夜”というのがあると思うんですけど、それを舞台の上で毎日できるのがすごく嬉しい」という公演は、2018年4月8日(日)から30日(月・祝)まで東京・日生劇場にて。チケット一般発売は12月9日(土)午前10時より。取材・文:中川實穗
2017年11月22日秦建日子のベストセラー小説を原作にした舞台『アンフェアな月』が、2018年2月に上演される。その製作発表会が行われ、主人公・雪平夏見役の篠田麻里子、山路徹夫役の飯田基祐、原作の秦が登壇した。舞台『アンフェアな月』チケット情報原作は、女性刑事・雪平夏見を主人公とした小説シリーズの2作目。2006年にテレビドラマ化(『アンフェア』)、その後映画化もされたベストセラーシリーズでもあり、舞台化は今回が初となる。主人公である捜査一課でトップの検挙率、バツイチで男勝り、そのうえ酒豪で「無駄に美人」と揶揄されるワーカホリックな女性刑事・雪平夏見を篠田、雪平の相棒・安藤刑事を染谷俊之、雪平の上司・山路徹夫を飯田が演じるほか、中村優一、和田琢磨、内田裕也、下村青、岡田達也らが顔を揃え、出演、脚本・演出は菅野臣太朗がつとめる。会見で秦は「連続ドラマであれだけ映像キャストのイメージが強くなったなか、それでもあえて違う『アンフェア』をつくるんだと舞台化のプロジェクトが進んだ。そのチームの勇気に感謝しています。どんな新しい『アンフェア』ができるのかとワクワクしていますし、ぜひ今作が好評を博して、同じチームでシリーズが続いてくれたらと思います」とコメント。篠田は自身の役柄との共通点を「純粋で素直で一生懸命なんだけれども、不器用で周りにわかっていただけない部分、ワーカホリックな部分が自分と似ている」と分析。人気ドラマの主人公を舞台で演じることについては「正直プレッシャーしかないです。影響がないと言うのは嘘ですし、やっぱりそのイメージもあると思うんですけれども、舞台は舞台で新しいものとして、自分なりの雪平夏見を探し出せたらと思っています。それを一番の課題にします」と語る。篠田とは初共演となる飯田は「(山路は雪平を)信頼している間柄ですが、今日お会いして、芝居せずともできるかなって。表に出るかはわかりませんが、内側で信頼していけそうです」と笑顔を見せた。普段は映像で活躍するふたり。舞台に立つことについて篠田は「AKB48時代に毎日劇場でやっていたぶん、やっぱり生ものが好きで。舞台は、もちろん稽古して一生懸命つくるのですが、最終的にはお客さんが入って作品になると思うので、公演の一日一日が楽しみです」。飯田は久しぶりの舞台出演。「本番直前、舞台袖にスタンバるといつもいつもプレッシャーで『なんでこんな仕事始めちゃったんだろう』と逃げ出したくなるんです。でも舞台が終わると、新たなスタートラインに立てたような気持ちになっている。今回もそうなるように努力します!」。公演は2018年2月22日(木)から3月4日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場にて。現在、先着先行プリセールを受付中。取材・文:中川實穗
2017年11月22日水戸芸術館ACM劇場2017年公演企画「斜交(しゃっこう)~昭和40年のクロスロード~」が11月23日(木・祝)に開幕する。その主演を務める近藤芳正に話を聞いた。舞台「斜交(しゃっこう)~昭和40年のクロスロード~」チケット情報昭和史に残る誘拐事件「吉展ちゃん事件」をもとにした、古川健(劇団チョコレートケーキ)書き下ろしの戯曲を、高橋正徳(文学座)の演出で上演される本作。事件の容疑者と対峙した“落としの八兵衛”の異名をもつ刑事・平塚八兵衛を近藤が演じる。昭和38年、東京オリンピックの波に乗り切れず事件を起こしてしまった男と平塚刑事との息も詰まるような攻防を描く本作。オリンピックを目前に控えた今、この作品を上演することについて聞いてみると近藤は「劇中に『たった10年しか経ってないのにこんなに変わった』というセリフがあるのですが、実際この10年の間でも政治の方向性、テレビのニュース、交通機関…いろんなことで大きな変化が起きていると感じます。でも、こうした変化はどの時代でもある。だとしたら、この作品はどの時代にも必要なものだと思ったりします」と普遍的な戯曲の魅力を語る。自身が演じる平塚刑事は「作家の古川さんとは今回が2度目。普段はあてがきをしないと言っている方なのですが、この役に関しては、平塚八兵衛さんに私自身が入り混じっていると思う」と感じているそう。“落としの八兵衛”の異名を持つ役柄、なぜ彼に犯人が自供すると思うか尋ねてみると「正直、わからないです。平塚さんご自身でもわからないんじゃないかな。陳腐な言葉かもしれませんが、事件解決に向けた熱意がまずあって、それから容疑者に対する愛もあった方なのだと思います。罪は憎んでいますが、犯人は憎んでいない、そのあたりに理由があると思っています」。演出の高橋とは初のタッグ。稽古が始まり「まだ探り探りの部分ありますが、もしかしたら、私の好きな“段取りじゃない瞬間”を同じように求めていらっしゃるのかなと感じるときがありますね」。稽古場でのキャスト陣の印象は「全員初めての共演なので、それ自体が楽しくて。なかでも相棒役の中島(歩)さんは癒しの雰囲気が独特!それに癒されたり、腹立つこともあり(笑)、しっかりしろよと思いながら、なんか可愛いて憎めない人なんです」。近藤が「笑いはないですが、かといって硬いお芝居でもない。たくさんの人間ドラマをお楽しみいただきたい」と語る本作は、茨城・水戸芸術館ACM劇場にて11月23日(木・祝)から26日(日)まで、東京・草月ホールにて12月8日(金)から10日(日)まで上演。取材・文:中川實穗
2017年11月21日主宰する演劇ユニット「ブス会*」にて、さまざまなアプローチで“女”の実態を描いてきた脚本・演出家のペヤンヌマキが、同い年の女優・安藤玉恵と立ち上げた舞台シリーズ「ペヤンヌマキ×安藤玉恵生誕〇周年記念ブス会*」。その第一弾「生誕40周年記念ブス会*」として、『男女逆転版・痴人の愛』が上演される。舞台『男女逆転版・痴人の愛』チケット情報谷崎潤一郎の小説『痴人の愛』を現代に置き換え、男女逆転させて描く本作。仕事人間の40歳独身女性・洋子(安藤)が美しい少年・ナオミ(福本雄樹)と出会い、“小鳥を買うような心持”で同棲を始めるが――というストーリーで、洋子とナオミ以外の登場人物(複数)は山岸門人が演じる3人芝居。音楽は浅井智佳子によるチェロの生演奏。脚本・演出のペヤンヌと、主演の安藤に話を聞いた。『痴人の愛』を男女逆転で表現する本作を「40歳の今の気分に一番ピッタリだと思いました」と話すペヤンヌ。「20代で読んだときにはナオミになりたかったのですが、40歳で読むと(主人公の)譲二さんに感情移入したんです。自分がそっち側になったんだと自覚し、これは男女を置き換えたら現代的になるかなと考えました」。実際、ペヤンヌはここ数年で急に少年に魅力を感じるようになったと語るが、それに対して安藤は「その気持ちは全くわからない」と笑う。「でも今(ペヤンヌが)正直になったらこうだった、というこの企画をすごくいいと思っていて。この人は本当に今、少年を家に置いときたいんだろうな…というような(笑)、そんな強い気持ちにはやっぱり引きずられていくんですよね。私自身、この作品を本当に面白いと思っていますし」。男女逆転することで書き換えた部分についてペヤンヌは「原作そのままで成立するところが多いのですが、例えば男性がわかりやすく肉欲にいっちゃうところは、女性だと逆で、簡単には接触できないと思うんですよね。もっとプラトニックなところが大きい。母性本能と恋愛感情どっちなんだろうみたいな葛藤も女性特有かなと思います」。その中でも大きく違うのはラストだが「自分の中で『落としどころはここだな』というのがすごくありました」という衝撃の終わり方だ。「女性は元気になる作品」と安藤。男性はどうかと聞いてみると、本公演に先駆け行われたリーディング公演では「『怖かった』『ホラーだった』という感想をよく聞きました。でも上演中に笑ってるのは男性ばかりでしたよ」。男女の感想の違いも興味深い作品になりそう。「女性が全員『痴人になろう』と思いながら帰ることになったらいいなって(笑)、本気で思ってます!」(安藤)という本作は、12月8日(金)から19日(火)まで東京・こまばアゴラ劇場にて上演。チケットは発売中。取材・文:中川實穗
2017年11月14日日本の音楽シーンを引っ張り続ける松任谷由実と、人間国宝でもある歌舞伎俳優、五代目・坂東玉三郎の対談で話題になった「SWITCHインタビュー達人達」(NHK・Eテレ)。ふたりが初めて“共演”した番組が11月10日(金)深夜に再放送される。『朝陽の中で微笑んで』チケット情報異なる分野で活躍するふたりの“達人”が、互いにインタビュアーとゲストを「スイッチ」して語り合う番組。4年前の番組開始以来、番組がオファーを繰り返していたというふたり。今回が初対談となるが、お互いに「坂東玉三郎さんであればぜひ」「松任谷由実さんであればぜひ」と実現したのだそう。「玉三郎さんの何かまだ誰も触れたことのない部分を引きずり出せたらなと思って、意欲満々で歌舞伎座に向かいたい」と語る松任谷がインタビュアーを務める収録では、まず歌舞伎俳優としての玉三郎を「孤高の美意識の持ち主で、良い意味でみんなを寄せ付けないようなオーラがある」と評す。これに対する玉三郎の「お客様に夢のような時間というのを見ていただかなければならない、その夢を壊さないようにという気が、被害妄想的にあるんです」という言葉には松任谷も共感。「本当に華やかな舞台を大勢のお客様の前でやりながら、部屋にこもってポツンとする時がある」という玉三郎に松任谷も「選ばれし者の孤独みたいなものにちょっと酔っちゃう時もあります」と、長年第一線で活躍するふたりならではの思いも語り合った。玉三郎がインタビュアーを務める収録では、「私は意識していないんですけどね、『私自身はユーミンの奴隷なの』って言ってるんですよ」という発言も。「今、時々悲しいときもあるけど、ユーミンはどう考える?」と尋ねた玉三郎に対し「牛乳瓶に生けた1本の野の花がね、カサブランカよりも豊かかもしれないじゃないですか」「物量でお金をかけてしつらえをすごくしたということではなく、受け手のイマジネーションにどれぐらい訴えられたか、そういう魔法をかけるのが音楽の役目かなと思います」と松任谷は想いを語る。また、夫でありプロデューサーの松任谷正隆との作業について、玉三郎が「これは譲れないというところはあります?」と尋ねると「たいてい私、折れちゃいます」。「ゼロを1にした段階で、どういじられても変わらない」「歌手の場合は100%もう声で運命が決まっていると思うんですよ」と明かした。再放送は11月11日(土)午前0時(金曜深夜)、同じくNHK・Eテレにて。また松任谷由実は11月、自ら主演する舞台が控えている。作・演出を松任谷正隆が手掛ける舞台シリーズ第3弾・ユーミン×帝劇 vol.3『朝陽の中で微笑んで』で、11月27日(月)から12月20日(水)まで東京・帝国劇場にて上演。番組で興味を持った人はぜひチェックして!取材・文:中川實穗
2017年11月10日ミュージカル『魔界王子 devils and realist』the Second spiritが11月4日に開幕した。それに先駆け公開ゲネプロと囲み取材が行われ、取材には石渡真修、鮎川太陽、田村良太、櫻井圭登、碕 理人、山中健太、松本祐一、遠藤 誠、KENが登壇した。ミュージカル『魔界王子』チケット情報本作は、原作・高殿円、漫画・雪広うたこによる同名人気コミックを原作に、演出を元吉庸泰、脚本を伊勢直弘が手掛けるミュージカルシリーズ第2弾。昨年6月に上演された第1弾の続編となる今作では、主人公・ウイリアムを演じる石渡や、ウイリアムに仕える悪魔ダンタリオンを演じる鮎川ら続投メンバーに、田村、櫻井、山中ら新キャストも加わり、前作以上にミュージカル色の濃い作品となった。物語の舞台は19世紀の英国。選ばれた生徒のみが入学できるパブリックスクールに通う名門貴族・トワイニング家の跡継ウイリアム(石渡)は、ひょんなことから悪魔ダンタリオン(鮎川)を召喚してしまう。そこでウイリアムが古代イスラエルの王ソロモン血を引いた人間で、魔界の“代理王”を選ぶ権利を持つ“選定公”だと発覚。ダンタリオン以外にもシトリー(櫻井)やカミオ(米原幸佑/ゲネプロは欠席・代役は市川耕大)ら悪魔が集まり、代理王に選んでもらうために学園生活を共にしていた。しかし、リアリストで悪魔を信じないウイリアムが誰も選ばないことに業を煮やした魔界の公爵バアルベリト(遠藤)は、ジル・ド・レイ(碕)に“ソロモンの指輪”を探せと命令。同じ頃、天界も指輪を狙う――。初演でも楽曲のユニークさが印象的だった本作。今回は曲数も大幅に増え、ミュージカルの王道からアイドル風まで20曲以上がラインナップ、彩り豊かな原作の世界をより鮮やかに表現した。もちろん“リアリスト”ウイリアムによる、ミュージカルの根底を覆す“歌”への反応なども健在。本作らしい笑いを交えながら、濃厚な物語を軽やかに描いていく。また、今作では新たに空間全体を使うステージ構成を採用。さらに中央の360°円形ステージを客席が囲むつくりで、舞台上の出来事や熱気に巻き込まれていくような感覚が味わえる。そして前作同様の八百屋舞台や布を使った演出も。初演の記憶も大切にしつつ新たな挑戦が詰まった作品となっている。ゲネプロ後の囲み取材で、石渡は「僕たちも体験したことのない舞台です。きっとお客様も体験したことのない世界が広がっていると思うので、みんなで楽しみたいと思います!」、鮎川は「ザ・ミュージカルです。人間界と魔界と天界が三つ巴になっての激戦が繰り広げられています!お待ちしてます!」とコメント。公演は11月12 日(日)まで東京・新宿FACEにて上演中。取材・文:中川實穗
2017年11月06日中川晃教のコンサート「I Sing~time to come~」が開催される。中川が歌に真正面から向き合うべく13年からシリーズ化している「I Sing」だが、今回は中川の誕生日イブと誕生日当日である11月4日(土)・5日(日)に行う特別なものとなる。【チケット情報はこちら】「『I Sing』シリーズを始めたのは、様々な活動をする中、今の自分の歌というものを実感し、より多くの人達に届けたいと考えたから。歌うことは僕にとって生きることに繋がるので、このシリーズでは、炎のように燃え上がったり収束したり、あるいは呼吸したりといった、瞬間瞬間を生きる感覚を、ステージ上からお客様に届けてきました。勿論、それはどのコンサートも当てはまることですが、『I Sing』を始めたことでシンガーとしての自分を今一度自覚することができたので、いわば僕の原点なんです」今回の“time to come”という副題には、シンガーソングライターとして16年、俳優として15年という歳月を経てたどり着いた中川の“今”が表されている。「僕は01年にシンガーソングライターとしてデビューし、02年にミュージカルデビューしました。当初、ミュージカルはエンタテインメントの中では万人に受ける世界ではないということで、音楽業界の人に反対もされたんです。でも僕は初めてミュージカルを観た時、音楽でここまで物語や感情を表現できるんだ、と感動したし、実際にやっていくうち、そこには色々な方法論や背景や物語があることを知りました。ミュージカルは僕が好きなブラックミュージックやポップスと無関係ではなく、例えばマイケル・ジャクソンだってフレッド・アステアから影響を受けているし、近年ではミュージカルにもフランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズを描いた『ジャージー・ボーイズ』やキャロル・キングの半生を扱った『ビューティフル』など、ポップスが主役の作品も増えてきている。だから、かつては自分の中に二つの道があるように感じて悩んでいた音楽とミュージカルも、今では切っても切り離せないものになっています。そうした中で培ってきた声を、音楽を、センスを、表現したいですね」セットリストは、これまでのコンサートで発表してきた楽曲をまとめて昨年リリースした『decade』と新曲とで構成。中川のこれまでと今、そして未来を味わえるプログラムになりそうだ。そして、このコンサート中に、中川は35歳を迎える。「誕生日とその前日にコンサートを行うのは初めてなんです。母によれば、4日に陣痛が始まり、5日の2時頃に病院へ行き、その数時間後に僕が生まれました。だからどちらの日も、僕にとっては生まれるまでの時間。この2日間に『decade』と新曲とを、新たなミュージシャンと編成による今の音で、皆様に届けていく。僕自身もやっていて特別な感情が湧き起こるでしょうし、この日、この瞬間でなければ味わえないコンサートになると思います」公演は東京・新国立劇場中劇場にて。チケット発売中。取材・文:高橋彩子
2017年11月02日宅間孝行が仕掛ける極上のエンターテイメントプロジェクト「タクフェス」の第5弾『ひみつ』が、10月19日鹿児島公演を皮切りに全国10都市で上演中だ。タクフェス第5弾「ひみつ」チケット情報宅間の作・演出で4年ぶりの新作書き下ろしとなる本作は、“虹色渚ゴロ―”という姉弟漫才師の姉・渚(戸田)の人生を中心に描く、愛と涙の物語。キャストには、主演の戸田恵子をはじめ、松本利夫(EXILE)、福田沙紀ら豪華メンバーが顔を揃えた。稽古最終日に、稽古場にて宅間、武田航平、赤澤燈に話を聞いた。毎年秋に上演している「タクフェス」で久しぶりの新作。宅間は「初演なので、お客さんに観てもらうまでは心配でしょうがないんですけど」と前置きをしつつ、「今までやってきた中で、こんなにみんなが泣いている稽古場はないかもしれない。毎回、“泣ける作品”をつくっているのですが、今回はいつも以上です」と手応えを語る。いわゆる“感動もの”とは違うリアルさがあり、武田は「単に演劇をやるというだけではなく、社会に対する意識やあり方を考えるきっかけにもなりました。お客様にも劇場では面白く観てもらって、帰り道で本質的な部分について考えていただけたらと思います」と話す。と同時に赤澤が「ストーリーは泣けるのですが、僕は、お客様と僕等自身を楽しませるような笑いを提供できる役どころです。楽しみにしていただければと思います!」と言うように笑えるシーンも多く、宅間作品ならではの仕上がりだ。タクフェスへの出演は初となる武田と赤澤だが、「航平くんといつも『楽しい、楽しい』って言ってるんです」(赤澤)と稽古が楽しくて仕方ない様子。武田は「宅間さんは一生懸命やればちゃんと自分と向き合ってくださって。僕、こんな嬉しいことないです」と熱く語り、「『お客さんは高いチケット代を払って、忙しい時間を割いて劇場に来てくださるのだから、そのためにやるんだ』と言われたのも印象的でした。自分がどうとかじゃなくて、お客さんがどう思うかなんだという意識を学びました」と、気付きの多い現場なのだという。赤澤も「宅間さんに言われた『表現しようとするな』という言葉が心に残っています。怒っている人を怒っているように演じるな、というようなことなのですが、それは僕の今一番の課題になっていて。本当にたくさんのことを学んでいるので、次の現場での自分の変化も今すごく楽しみになっているんです」とワクワクした表情をみせた。熱い稽古を経て、現在全国を巡演中の本作。東京は10月31日(火)から11月12日(日)まで、サンシャイン劇場にて上演。取材・文中川實穗
2017年10月27日朝井リョウの直木賞受賞小説を原作にした舞台『何者』が11月25日(土)に開幕する。出演者の美山加恋と宮崎香蓮に話を聞いた。舞台『何者』チケット情報昨年映画化もされた本作は、就職活動を通して自分が「何者」かを模索する5人の大学生が、お互いを励まし合いながらも、友情、見栄、妬みといった様々な感情が交錯してゆく姿を描く。舞台化は初めてで、演出は劇団鹿殺しの丸尾丸一郎が手掛ける。「同世代ばかりの現場は久しぶり。楽しみです」と笑顔を見せるふたり。主演・阿部顕嵐(Love-tune/ジャニーズJr.)をはじめ、長妻怜央(Love-tune/ジャニーズJr.)、鈴木勝大、小野田龍之介ら原作にリアルな世代のキャストが揃った。美山も「わたしはちょうど来年が就職活動の年齢で。実際に学校の友達はインターンシップもあるし、(本作で重要な役割を担う)Twitterもやってますし、それを今、取材中なんです。人間関係がリアルなので、舞台でどう表現していこうかとワクワクしますね」。もともと原作を読んでいたという宮崎は「朝井さんの人間描写の鋭さやリアルさはゾクゾクします。特にこの作品は、覗き見のような感覚で読んでいると、最後にドキッとする展開があるので。舞台だとそれがより強く感じられるんじゃないかなと思いますし、そうつくっていきたいです」と魅力を語る。美山が演じるのは、留学帰りであらゆることに意識が高い女子・小早川理香。「プライドが高いのですが、それは自分に自信がないからなのかなと思ったりもします。前へ前へ、という向上心は女優っぽい考え方だなとも思うし、演じやすいんじゃないかな」(美山)。宮崎は、拓人が片思いをしている相手で、理香の友人でもある田名部瑞月を演じる。「強い子だなと思いました。何者でもない自分で生きていく覚悟ができているのか、就活を通してその覚悟を得たのか…。そういうところが上手く表現できたらと思います」(宮崎)。ほとんどの人が避けて通れない就職活動。“受かる者”“落ちる者”がハッキリとする世界だからこその、えぐられるような描写もあるが、本作は「カッコ悪くても、あがいたほうがいいんだって思うし、ああがんばろうって思える」と宮崎。「時期的にこの作品が見納めになる人もいるかもしれないので、2017年の最後にすごいもの観たなって思ってもらいたいです!」(美山)。舞台『何者』は、11月25日(土)から12月10日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場にて上演。ぴあでは、特別サイトにて10月28日(土)午前10時からチケット発売予定。取材・文:中川實穗
2017年10月27日ゴジゲン第14回公演「くれなずめ」が10月19日(木)に開幕する。本作は、映画『アズミ・ハルコは行方不明』(監督)やドラマ『バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』(メイン監督・脚本)など手掛ける松居大悟が主宰する劇団「ゴジゲン」の最新作。劇団初の“劇団員のみ”の公演で、立ち上げメンバーの松居と目次立樹、今作から新メンバーである奥村徹也、東迎昂史郎、本折最強さとし、善雄善雄による6人芝居となる。稽古場で松居に話を聞いた。ゴジゲン第14回公演「くれなずめ」チケット情報劇団として6年ぶりの“物語”は「もういなくなった奴」がテーマ。稽古場では、結婚式に集まった高校の仲間たちが、かつての仲間のことをそれぞれふと思い出しながら、今を過ごすシーンが続く。松居は「いなくなった人のことのほうが思い出すことってあって。生きてたらきっと思い出さないのに、いなくなったほうが自分の中で生きてるような…。この感じってすごく変だな、不思議だなと思っていたのですが、それを最近ようやく俯瞰できるようになったし、今なら立ち向かえる気がしたんです。そのタイミングと、この6人で向き合いたいテーマが合致したので、今回の作品をつくりました」(松居)。このテーマは“全員劇団員”へのこだわりにも関係しており、「役と本人の間くらいの物語がいいなと思ったので、今作ではキャストそれぞれに『もういない人のことで思い出すのはどんな場面か』など聞いて、台本を書いたんですよ。客演だとそんな踏み込んだことは聞けないし、それを芝居にするのも失礼になってしまうので」。稽古が始まっての印象を「テーマから、みんなが感傷に引っ張られて暗くなったらいやだなと思っていたのですが、意外とワチャワチャ感が出ていて。楽しくなればなるほど切なくみえる構造ができるような気がしています」。松居と目次以外は新団員だが、これまでもゴジゲンの公演に客演で参加してきたメンバーなので、この6人で芝居をするのは3回目となる。稽古でもエチュードを重ねるように芝居をつくり、「これ、どうしようか?」と話し合う姿も多く見られた。「外の公演だともう少し演出家として道をつくるかもしれないですけど、ゴジゲンではこういうつくり方です。特に今作はその人の心に残った何かが舞台に乗ったほうがいいと思っているので、答えはその人の中にしかない。だからみんなでつくっています」。来年は10周年を迎えるゴジゲン。彼らの挑戦が詰まった本作は、10月19日(木)から29日(日)まで東京・駅前劇場、11月4日(土)・5日(日)に京都・KAIKA、11月11日(土)・12日(日)に福岡・北九州芸術劇場 小劇場にて上演。取材・文:中川實穗
2017年10月13日アミューズの若手俳優によるファン感謝祭、通称『ハンサム』が今年も12月25日(月)から27日(水)まで東京・TOKYO DOME CITY HALLで行われる。2005年に始まり、三浦春馬や佐藤健らも参加してきた年末恒例行事が、今年は『HANDSOME FILM FESTIVAL 2017』と題し、新たなチャレンジを行う。小関裕太、富田健太郎、正木郁、溝口琢矢に話を聞いた。HANDSOME FILM FESTIVAL 2017 チケット情報昨年までのLIVE中心から、フィルム(映像)が中心となる今年の『ハンサム』。脚本・構成に鈴木おさむを迎え、映像クリエイター7人とコラボレーションしてつくる映像とともに企画を展開するといい、彼らの本業・俳優の姿が全面に出る内容になりそうだ。今年の出演者は、石賀和輝、石原壮馬、太田将熙、甲斐翔真、金子大地、神木隆之介、小関裕太、富田健太郎、正木郁、松岡広大、溝口琢矢、吉沢亮(※石賀は25日、松岡は26日のみの出演)。20~24歳(公演時)という同世代が揃った。小関は「今回は“僕らの時代”という気持ちがすごくあります。先輩方から受け継いでいるもの、ハンサムへの愛も持ちながら、ワクワクする新しいハンサムのあり方を、この年代でつくりたいです」。映像で共演することを「楽しみ」と語る4人。溝口は「初めに“フィルム”って聞いたときは普段の仕事と一緒だと思いました。でもそうじゃない。鈴木おさむさんと映像クリエイターの方々というものすごいお力添えに対して、経験の浅い僕らはきっと全員で“一枚岩”となって戦うことでやっと成立するんじゃないかと思うんです。通常、映像の仕事で共演者に関与するってほとんどないので、(“一枚岩”になることで)普段とは全く違うカタチで取り組めると思います」。富田も「先輩方のような経験値がない分、軽はずみな気持ちでやるとどうしようもない作品になってしまう可能性もあるわけで。だけど一歩引くようなことはせず、全力でぶつかり合っていいものをつくりたい。そうしたらこの年代にしかできない何かが生まれるんじゃないかな。そこにすごくワクワクします!」。この10月でアミューズに入って2年の正木は「去年のハンサムは僕にとって全てが挑戦で、精一杯でした。まだやっぱり経験は浅いですが、年代は同じなので。新人っていう枠に甘えたくないですし、負けたくない。今年も新しいことにぶつかりながら、ハンサムを愛してくれる人に、僕なりの感謝やしあわせを届けていけたらと思います」。それに対して芸歴が長い小関は「対等でいたいです。『こうしたほうがいいんじゃない?』って言われたいし。逆に隆さん(神木)は尊敬する先輩だけど、ここでは真っ向からいくつもりです!」と笑顔を見せた。公演は12月25日(月)から27日(水)までTOKYO DOME CITY HALLにて。チケットぴあでは10月13日(金)11:00から15日(日)23:59まで、二次プレリザーブを受付。取材・文:中川實穗
2017年10月12日『「ポセイドンの牙」Version蛤』が10月13日(金)に開幕する。本作に出演する岡田達也と愛原実花、脚本・演出を手掛ける伊藤靖朗に話を聞いた。舞台『「ポセイドンの牙」Version蛤』チケット情報本作は、昨年6月に初演された「ポセイドンの牙」の2017年版。海と魚介類と女子が大好きな男子高校生5人組・スイサンズが、財政難に陥った高校を男子校にしないために伝説の“黄金の釣り針”を探しに海に行き……という物語で、エンターテインメント作品でありながら現代社会への痛烈な寓話劇となっている。初参加の岡田は本作について「表面的には笑いが散りばめられてるのですが、根底には、人間が生んだ文明に対する人間の冒涜だったり、人は生まれる時代も選べないし場所も選べないというテーマを僕は感じて。それを決して重くなく、楽しいシーンを交えながらも、じっと考えさせられる脚本です」と語る。少年たちの冒険譚と共に今の社会問題を深く描く本作。1年4か月ぶりという短めのスパンでの再演となるが、2017年版での変化について伊藤は「戦争と人間の業みたいなものを、2016年から2017年、そしてこの夏は殊更に強く感じるようになって。それに僕自身も打ちのめされるのですが、その一方で、負けてる場合じゃないよとも思うわけで。そういったことを男子たちの駆け抜ける姿に乗せたいですし、この作品をこのキャストでつくるというこの行為そのものにも気合いを込めたいです。より一層物事が迫ってきていることを体感できる作品になればと思っています」。そんな今作の稽古を愛原は「再演ってどうしても『初演のときは……』となると思うんですけど、伊藤さんはそうならず、全く新しい作品をつくろうとされているのを感じます。だからなのか、続投キャストと新キャストが両方いる稽古場でも最初から溶け込みやすかった。稽古がすごく楽しいです」。ポセイドン役の岡田と、英語教師役の愛原。岡田は「(ポセイドンは)トリックスター的な存在ですし破天荒な役なので、スイサンズに多大な迷惑と影響を与えられるといいなと今は思っています」、愛原も「スイサンズの子たちの成長に自分がどういう風に関われるか。役柄としても、彼らを俯瞰で見る立ち位置なので。そこを大事に、冷静にやっていきたいです」と、若手とは違う視点で本作に臨んでおり、伊藤も「立ちはだかるおふたりに若者たちがぶつかる、そのダイナミズムをお客様に味わっていただきたい」と語る。「この先を生きていく元気と活力を味わって持って帰っていただけたら」(伊藤)という本作は10月13日(金)から21日(土)まで、東京・紀伊國屋ホールにて。取材・文:中川實穗
2017年10月10日細貝圭、佐藤祐基、加藤虎ノ介による三人芝居『オーファンズ』が10月14日(土)に開幕する。それに先駆け、稽古場にて取材会が行われた。舞台『オーファンズ』チケット情報本作は、ライル・ケスラー作で1983年にロサンゼルスで初演されて以来、日本をはじめ世界各国で上演される人気戯曲。ふたりで生きてきた兄弟とある男が出会い、傷つけあいながらも人生を再生していく“孤児(オーファン)”の姿を描く物語で、今回、マキノノゾミが上演台本と演出を手掛ける。稽古では、冒頭からトリート(細貝)とフィリップ(佐藤)の兄弟がハロルド(加藤)と出会うまでのシーンを披露。舞台となる兄弟の部屋は散らかっているが、そこでのやり取りから、この状態はいつものことで、それは彼らに手本となる大人がいないからだということが理解できる。その暮らしの中で、盗みで暮らしを支える兄・トリートは、弟への愛がときに暴力や束縛になり、閉じこもりっきりの弟・フィリップは外への興味が押さえきれなくなっている。そんなふたりの前に現れるハロルド。彼が酔っぱらって孤児院の思い出を語る姿には、同じ孤児であるふたりとはまた違う空気が漂い、彼がこの兄弟を見過ごさないであろう希望も感じる。彼らの複雑な心理や状況も、繊細に、けれどクリアに演じられているので、観ていて理解しやすい。稽古後の取材会でマキノは本作の魅力について「人間が剥き出しになっている話なので、俳優も剥き出しでぶつかり合わなきゃいけないし、嘘をつけない。男3人のガッツリした芝居が観られると思います」と話す。稽古が進んでの感想を、細貝は「台本が読みやすいのでスッと入っていける印象だったのですが、いざ稽古に入ると本当に繊細なお芝居なんだとわかりました」、加藤は「とにかく没頭しています。身体も疲れているし頭もパツンパツンなんだけど、ちょっとでも隙間があったら台本を読むような…そんな時間がありがたいです」、佐藤は「噛めば噛むほど味が出る作品で、稽古の度に『ここはこういう解釈でもいいのかな』というのが生まれやすい。泥臭く男3人で演じるのが気持ちいいです」。マキノは本作で「3人をできるだけ色っぽく見せたい」と明かし、「人間って引き裂かれている状態のときに魅力的に見えるので。トリートだったらすごく凶暴なところとそれを必死で抑制しようとするところとか、弟への支配と愛情とか…大きく引き裂かれるほどセクシーに見えると僕は思っていて。そういう状態に3人のコンディションを持っていくことを目指してやっています」と話した。公演は、10月14日(土)・15日(日)に兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール、10月18日(水)から22日(日)まで東京・草月ホールにて。取材・文:中川實穗
2017年10月10日海老澤健次と鐘ヶ江洸によるイベント『カネエビ』が今年も開催される。3度目となる今回から新たな取り組みが始まる本イベントについて、鐘ヶ江に話を聞いた。【チケット情報はこちら】これまで毎年行ってきたふたりのバースデーイベント「カネエビ祝賀会 vol.3 ~相変わらずゆるりとやるよ~」に加え、「カネエビ2人芝居 vol.1 ~役者の階段のぼる、おれらただの演劇人さ~『であい』Featuring, 菅野臣太朗&開沼豊」として2人芝居を上演する今回。菅野臣太朗と開沼豊がそれぞれ脚本・演出を務める。そもそも『カネエビ』のはじまりは「ミュージカル『忍たま乱太郎』で共演した海老澤くんと僕で、最初はただ単に仲が良くて、ふたりでイベントをやろうかっていう話になって。じゃあWバースデーイベントを、というのが発端でした」と振り返る。そんな風に始まり、ふたりで企画してきたイベントも今年で3回目。これまではトーク中心のイベント「カネエビ祝賀会」のみだったが、「さて今年はなにをしようってときに、役者としてのイベントがしたいねって話をして。じゃあお芝居をしよう、ふたりでしよう、2人芝居だ!と、こういうカタチになりました。それで、作・演出を、ミュージカル『忍たま乱太郎』の演出でお世話になった菅野さんと、(同作で)共演した豊さんにお願いして。ふたりとも“お前らがやるなら手伝うよ!”と言ってくれて、嬉しかったです」今回のテーマ『であい』。これは鐘ヶ江にとって大切な言葉なのだそう。「僕が東京に出てきて、菅野さんと出会い、ミュージカル『忍たま乱太郎』が決まり、海老澤さんとであい、豊さんとであい…『であい』がどんどんつながっていく。今の現場が次につながって仕事なので『であい』に感謝したいねって話を菅野さんとしたことがあって、それからずっと言い続けている言葉なんです。それでせっかく2人芝居をやるならまずはそこだろうってことで『であい』っていうテーマを決めました」「今までの『カネエビ』は僕らのことを知らないと来にくいイベントだったと思うのですが、2人芝居はぜひ演劇を観に来ていただけたらと思っています。ふたりが2作品同時に挑戦して、脚本や演出によってこんなに変わるんだっていうところも面白いと思いますし、僕らの想いも詰まっているので、ぜひ楽しんでほしい。そして最後は『祝賀会』で。こちらは例年通り、ダルダルのうだうだの会です(笑)。どちらもお待ちしています!」海老澤の印象を「お母さんです」と語った鐘ヶ江。性格も特技も違うというふたりが挑戦する「カネエビ2人芝居」は11月1日(水)から4日(土)、「カネエビ祝賀会」は11月5日(日)に東京・シアター代官山にて上演。取材・文:中川實穗
2017年10月03日7月7日に開業した東京・オルタナティブシアターで、こけら落としからロングラン公演を続けている『アラタ~ALATA~』。本作は、海外からの観光客も楽しめるよう、極力言葉を使わず、殺陣やダンスなどのパフォーマンスで構成するノンバーバル(非言語)作品として誕生した公演だ。作を横内謙介、構成・演出を岡村俊一が手掛けるほか、サムライアクション・ディレクターを早乙女友貴、ダンスクリエイターをElina、音楽制作をMiliが担当、次代を担うメンバーが顔を揃えた。【チケット情報はこちら】開幕から約2か月半経っての想いを、構成・演出の岡村と、戦国時代の姫(千代姫)役・吉田美佳子に聞いた。2020年の東京に迷い込んだ戦国武将・アラタと偶然出会ったOL・こころが、なんとかして彼を元の時代に帰そうとするストーリー。外国人客を意識し、殺陣はもちろん神社や満員電車など“日本らしさ”を多く盛り込んだ内容は評判も上々だ。そこには外国人客ならではの見え方もあるようで「アラタは戦国武将なのですが、日本人は『戦国』という文字を見ると大体『戦国時代、信長』と考えますよね。でも外国人はそこまで日本史を認識していないので、この物語もタイムスリップと捉えず、現代の日本人が戦い始めるように感じたりするようなんです。だからこそ、あらすじとはまた別の、潜在的なストーリーを構成したことが外国の方の心に届いているなと感じます。先日、ニューヨークの方が『これを今ブロードウェイでやらない意味がわからない!』と言ってくれたりしました」(岡村)。初演から2か月半、ひとりで千代姫を演じ続けている吉田。長く演じるうちに慣れてしまったりあらぬ方向に進んだりしそうなものだが、「ストーリーや自分の役割をより意識するようになって、緻密に気持ちづくりができようになってきたんじゃないかなと感じています」と話す通り、千代姫はより雅さを増し「姫らしさが増した」という感想も届くほど。長い公演で芯をブレさせずに成長を続けられるのは、この作品がこれまでにない挑戦として生まれたことにも理由がある。「歴史に残る、例えば歌舞伎やシェイクスピア作品って、最初に世に出した人が非常に魅力的に演じたんだと思うんですよ。それを観て、人は『あれがいいんだよな』と言うわけで。残っていけるのはそういうものだと思います。だからゼロから始めるときに、“ああいうなにかをやりなさい”という考え方では被り物と同じになってしまう。それぞれの魅力的な部分、ゆっくん(早乙女)なら殺陣、Elinaならダンス、美佳子なら新鮮な輝き、その一番いい部分で演じたものじゃないと残っていけないし、長くやれないなと思ったんですよね」(岡村)。吉田が「何度観ても新しい発見があると思います。若い世代の方にもたくさん観ていただきたいです!」と語る本作は、東京・オルタナティブシアターにてロングラン上演中。取材・文:中川實穗
2017年10月03日PARCO&CUBE 20th present『人間風車』が9月28日に開幕。それに先駆け公開ゲネプロと会見が行われ、会見には出演者の成河、ミムラ、加藤諒、矢崎広、松田凌、良知真次が登壇した。舞台『人間風車』チケット情報本作は、後藤ひろひとによって1997年に劇団「遊気舎」に書き下ろされ、2000年にパルコ版初演、2003年に再演された童話ホラー演劇。今回が14年ぶりの新版上演となり、後藤が脚本を改訂、演出を河原雅彦が手掛ける。会見で、主演の成河は「普遍的なテーマを持つ作品ですが、“現代劇”として14年のブランクをどう埋めるか、ということをずっと後藤ひろひとさんも含めて、改訂し、稽古してきました。そのうえで僕たちが思うのは、今の僕たちにとって嘘がないことが、今生きているお客さんにとって嘘がないということで。そうすればこの作品の普遍的な本質の部分に近付いていけるんじゃないかと思います」と今回の上演について語る。舞台は2作目となるミムラは「舞台は同じことを何回もできる楽しさがあります」と笑顔。稽古によって「体脂肪が5パーセント落ちて、5キロ体重が増えました!身体を使っていろいろできるのが非常に楽しいです」と全身で作品に挑んでいる様子。物語のキーとなるサムを演じる加藤は「僕は(成河演じる)平川さんが話す童話を聞くと、その主人公になるという役なんです。なので6役くらいあるのですが、それをどう演じ分けるか、どうやったらできるのか、ということを成河さんにも相談に乗っていただきました」と振り返った。矢崎が「この作品では僕も松田くんも良知くんも“若手”になるんですけど、河原さんの演出も先輩方の芝居も本当に勉強になって。若手にとってはこんな幸せな現場はない」と話すと、松田や良知も同じように感じていた様子。松田は「僕にとって刺激的な現場でした」、良知も「成河さんにずっと支えてもらいました。舞台上でお返しできるようにがんばります」と語った。売れない童話作家(成河)が公園で子供たちに聞かせる童話が軸となる本作。大きな回り舞台や童話の衣装など華やかな見所がありつつも、それ以上に印象的だったのは“想像の世界”。作家の語り口調、それに対する子供たちやサムの反応により、童話の描く世界が目に見えている以上の鮮やかさで飛び込んでくるのだ。その一方で、現実世界でみせる登場人物たちのリアルな感情や表情も強く心に残るもので、だからこそ、そのふたつの世界がみせる結末は強烈だ。成河が「演劇的な仕掛けが豊かで、劇場でこそ味わってほしい演劇の醍醐味が詰まってる作品です」と語る本作は、10月9日(月・祝)まで東京芸術劇場プレイハウスで上演後、高知、福岡、大阪、新潟、長野、仙台を巡演。撮影・取材・文:中川實穗
2017年09月29日