『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』では佐藤江梨子の妹役で主役に負けない強烈なキャラクターで強い印象を残し、今年に入って公開された『鈍獣』では腹黒いブリッ子キャラで男たちを翻弄、今年1年で公開作品は6本とめざましい活躍を見せる、佐津川愛美。現在公開中の堀部圭亮監督作『悪夢のエレベーター』では自殺願望を抱えるゴスロリ少女・カオルを熱演している。スクリーンの中での印象が強烈過ぎる彼女だが、その素顔は…。「カオルには青春期特有の迷いや不安を表に見せない強さがある」佐津川さん演じるカオルを含む4人がたまたま乗り合わせたエレベーターが停止することから展開する今回の物語。ひとりひとりの人物が一面的ではなく様々な“顔”を持っていることが作品の大きな魅力となっている。佐津川さんのカオルに対する印象は?「結構、周りからは『怖い』っていう声が多かったんですが、私にはすごく魅力的に映りました。人間誰しも二面性や気持ちの上がり下がりってあるものだと思うんですよ。カオルくらいの年齢の子は、青春期特有の悩みって感じで『どうしたらいいの?』って迷いや不安を表に出すものだけど、カオルはそれをギリギリまで見せない強さがあるな、と」。大ドンデン返しがこれでもかと押し寄せてくる本作。詳細は明かせないが…それにしても佐津川さん、個性的な役柄への出演が続く。「楽しいです(笑)。感情がひとつじゃない、何かを背負ってる子の方がやりがいがありますね」。では、実際の役へのアプローチの方法、役作りはというと…。「いや、あんまりやらないんですよ(笑)、役作り。まず、脚本を最初に読んだときの印象を大事にしてますね。多分、最初のその感情が、お客さんが初めてこの子を見るときの感覚に近いとも思うので。その感じを大切にしようと思ってます」。「“答えがない”ということを楽しみたい」では、そんな個性的な役を演じる佐津川さんの“本性”は?そう尋ねるといたずらっぽい笑みを浮かべ、こんな答えが。「これがわかんないんですねー(笑)、我ながら。すごく波があるんですよ。演じている役柄にものすごく引っ張られることもあるし、そうかと思うと全く影響を受けないときもありますし…」。「最初にこの世界に入ったときは、女優とかモデルとかタレントという区別も分からず、深く考えずにやってた」という佐津川さん。だが、初めて映画の現場に参加したことで“覚悟”が固まったという。「最初に『蝉しぐれ』に出演させていただいて、『映画ってすごい』って衝撃を受けました。監督はすごく厳しかったけど、現場でみんなで作品を作っていくのが楽しくて。出来上がった作品の中の自分を観たときは恥ずかしかったですけど…(苦笑)、でも撮影を終えてから初めて『女優っていいな。本気でお芝居したいな』って思えたんです」。それからの彼女の活躍は見ての通りだが、彼女自身、成長や変化をどのように感じているのだろうか?「自分では見えないし、考えないものですね。いま、舞台に参加してるんですよ(注・本谷有希子演出の「来来来来来」に出演)。舞台は初めてで、自分の出来なさ具合を思い知ってます…。もちろん毎日ベストを尽くしてるんですが、『明日はもっと!』って気持ちになりますね。去年1年間、ずっと映画に携わらせていただいて、すごく楽しかったんですけど、もうちょっと違う角度でって思ってたときにこうやって舞台の話もいただけて、すごくありがたかったです。改めて、自分はまだまだなんだってことを理解しました。でも、何十年やっても悩みは出てくるんでしょうね、答えがない世界だと思います。答えがないからこそ出来ることもあると思いますし、それを楽しみながらやりたいです」。■関連作品:悪夢のエレベーター 2009年10月10日よりシネセゾン渋谷、シネ・リーブル池袋、新宿ミラノほか全国にて公開© 2009「悪夢のエレベーター」製作委員会
2009年10月27日『悪夢のエレベーター』という小説を読んだことがあるだろうか。この出版不況のなか何と、26万部も売れたという木下半太さんによる人気小説。これが映画化されるそうだ。これを書いている私、梅田カズヒコは『エレベスト』という本を執筆したのだが、"エレベーターつながり"ということで、ぜひ試写会に来てください、というので試写会にやってくる鳥居みゆきさん見たさに行ってみることにした。都内のスタジオの『エレベーター』を貸し切って行われた試写会は、現役のエレベーターガールさん4人にエレベーターの中で映画を試写してもらうというむちゃな企画。しかし、なんだか1人のエレベーターガールさんが挙動不審。映画鑑賞後に発表されましたが、どうやら、エレベーターガールの格好をしたタレントの鳥居みゆきさんだったようです。エレガに扮(ふん)したタレントの鳥居みゆきさん(写真右下)MCの方がエレベーター内の試写会について感想を聞くと、『女4人でエレベーターに閉じ込められてまさに悪夢でした!』と答える鳥居さん。会場は大爆笑。試写会も、映画の内容と同様の"どんでん返し"に会場は大盛り上がりでフラッシュが飛び交いました。さらにMCの方との掛け合いは続きます。MCの方:「映画の根底のテーマは愛ですが鳥居さんが愛を感じるのは?」鳥居:「普段あんまり感じないけど、この前、親ツバメがカラスに襲われながら小ツバメに餌をあげようとしている姿を見て愛を感じました」MC:「この映画はいくつかのウソも物語のポイントとなっていますが、鳥居さんが最近ついたウソなどありますか?」鳥居:「さっきのツバメのくだりがウソです」鳥居さんの不思議な会話に会場は大爆笑。いやー、タレントさんってここ一番でちゃんと場を盛り上げるからすごいですね。僕にはできません。最後は鳥居さんとエレベーターガールさんで記念撮影。以下、試写会を見た僕のまじめな感想文です。****どんでん返しに次ぐどんでん返しである。小説『悪夢のエレベーター』を読んだ人なら、そのストーリーテリングの面白さは理解していただけただろう。一方で、このよくできた小説を映画化するにあたって幾分の興味と不安もある。この物語のほとんどが、閉じ込められたエレベーターのなかが舞台である。映画にするには少し画(え)が寂しくはないか。単調にならないか。映画化はある意味、簡単だが、ある意味で非常に難しい。そんな作品を監督の堀部圭亮さん(かつては勝俣州和さんと、お笑いコンビ「K2」の相方として名をはせ、最近は『タモリ倶楽部』などに出演する傍ら、放送作家や俳優として活動している人と言えばわかりやすいか)は、初監督とは思えない出来でうまく調理していた。小説『悪夢のエレベーター』を読んでトリコになった人は、ぜひ映画も見比べてほしい。具体的なストーリーはあまり言えないが、小説との相違点として、冒頭にある短いメッセージ映像が挿入されている。人生についてのメッセージ。これは本編に登場する4人に向けられたメッセージである。偶然閉じ込められた4人には、人には言えないある秘密を抱えていた。物語の途中、それぞれの深い悩みをさらけ出し、一瞬だけ無関係な4人に信頼関係が結ばれそうになる瞬間がある。月並みだが、僕はあの瞬間が好きだ。あの4人はまさしく僕らそのものだ。小心者で、腹を探り合って、大きな秘密は誰にでも言えないでいる。そのくせ、本当は誰かに自分の悩みを聞いてほしい……。この作品が支持されているのは、出演するメンバーのそういったある意味自分勝手な(そして人間らしい)一面を織り込んでいる点にあると思う。どんでん返しだけでも、ストーリー的に秀逸なのに、そこに描かれる人間の弱さ。その点を、僕は支持したい。一方で、視聴者とのその共有が、一気に裏切られる後半がやってくるのだが。(おっとこの先はネタバレになるので書けない)エンタメと思わせつつ、わりとハードボイルドよ。****というわけで、見に行ってみましょう。ちなみに、エレベーター好きから一言。エレベーターは突然落下したりはしません。楽しい乗り物です。(梅田カズヒコ/プレスラボ)【関連リンク】映画「悪夢のエレベーター」オフィシャルサイト息をも尽かさぬ展開。佐津川愛美さんの隠れ悪女ぶりにも注目。演技うまいエレベーターでこっそりキス!?4人に1人が社内恋愛経験アリ!その話、もうちょっと詳しく聞かせてください!!
2009年09月15日