毎年GWの2日間、幕張メッセで開催される大規模イベント「ニコニコ超会議」。そのイベントホールを会場に、約5千人の観客を前に上演されてきた、中村獅童とバーチャルシンガー初音ミクの主演舞台「超歌舞伎」。NTTの最新映像技術を駆使し、巨大画面に映し出された映像上の俳優と生身の歌舞伎俳優が共演する、新時代の歌舞伎エンターテインメントだ。2016年の初演から今年で4回目を迎えた注目作が、遂に南座に初お目見えする。「南座新開場記念 八月南座超歌舞伎」チケット情報演目は、獅童の宙乗りや新作を含む南座仕様の豪華3本立て。まずは、観客参加型の解説『超歌舞伎のみかた』に始まり、出雲のお国(初音ミク)とその恋人・名古屋山三(中村獅童)らが次々に踊る新作舞踊『お国山三 當世流歌舞伎踊』、美玖姫(初音ミク)と白狐が転生した佐藤四郎兵衛忠信(中村獅童)がご神木の千本桜を守るため、邪悪な青龍(澤村國矢)と戦う軍物語『今昔饗宴千本桜』へと続く。千本桜の大詰ではバーチャルシンガーの初音ミクが本領発揮、獅童らと観客を煽るなどライブさながらの演出で盛り上げる。「通常、専門の方がやる大向う(掛け声)も自由に参加していただけますし、大詰では立ち上がって声援を送ったり、サイリウムを振りながら楽しめます」。そう話すのは、初演から獅童の敵役を勤め、本作では全演目に出演する澤村國矢。全47公演中、8回ある『今昔饗宴千本桜』のみのコンパクトな公演「リミテッドバージョン」では、中村獅童に替わり主演の大役も勤める。「こういう機会をもらうこと自体すごいことですが、それを成功させなければ、僕たちワキをやってきた人間にとって、これが希望となるのか、ならないのかが変わる。節目の8月だと思い、一か月間大切に挑んでいきたい」と決意を語る。幕張での初演では、初音ミクが登場した際に沸き起こる歓声に圧倒された。「ただ、そこから歌舞伎の立廻りの迫力や臨場感を目の当たりにしたことで、お客様の情熱が、ミクさんもすごいけど電話屋(NTTの屋号)さんの技術もすごいし、歌舞伎もすごい!と分散していった。それは生の舞台である歌舞伎が持つ力だと思うんですね。だから毎年楽しみにしていてくださり、ここまで続けてこられた。演じていて自信になりました」。そんな幕張のファンには歌舞伎の劇場を、歌舞伎ファンには初音ミクの世界をそれぞれ体験してほしいという。「すっぽんや花道など、歌舞伎の劇場ならではの機構をフル活用した演出になると思います。初役の忠信では、狐のぶっ返りで引っ込む狐六法を勉強させていただきます。いつか演じてみたかった役が超歌舞伎で叶いました。大立廻りでは自分の持てる最大限を使って大暴れするので、ぜひ注目していただきたいですね」。公演は8月2日(金)から26日(月)まで、京都・南座にて上演。チケット発売中。取材・文・撮影:石橋法子
2019年07月30日7月27日、宝塚歌劇月組の梅田芸術劇場メインホール公演ブロードウェイ・ミュージカル『ON THE TOWN(オン・ザ・タウン)』が開幕した。20世紀を代表する指揮者・作曲家のレナード・バーンスタインが20代だった1944年、同い年の振付家ジェローム・ロビンスとタッグを組んだ衝撃作。後に『ウエスト・サイド・ストーリー』を生み出すふたりの才能の片鱗が煌めく出世作だ。宝塚歌劇月組 梅田芸術劇場メインホール公演 ブロードウェイ・ミュージカル『ON THE TOWN』チケット情報「恋だ!」「観光だ!」と24時間を期限にニューヨークに上陸した水兵3人の恋の珍道中を描いた物語。潤色・演出の野口幸作が現代性を盛り込んだ新演出、新振付で活気溢れるドラマに再構成する。水兵トリオには、トップスターの珠城りょう、本作で月組カムバックを果たす鳳月杏、そして暁千星。ヒロインをトップ娘役の美園さくらが務める。全編を通して感じるのは、圧倒的な音楽の素晴らしさだ。<♪ニューヨークニュヨーク憧れの街!>と冒頭からトランペットが勢いよく破裂音を響かせ、観客の心までいやおうなく弾ませる。ニューヨークガールたちの群舞は躍動感と色彩に溢れ、劇場を瞬時に都会の喧騒と華やかさで包み込む。その後も1曲ごとに起承転結のドラマがあり、まるでオムニバスのドラマをみるよう。感情の起伏を視覚化するようなダンスはスピーディーかつ個性的で、トリオやソロで届けられる歌声はアップテンポなラテン調あり、交響曲のように優美なバラードあり。さらに、タカラジェンヌたちの客席降りや本編後にはショーまで付いて、五感を満たす宝塚ならではの演出に大興奮間違いなしの約3時間だ。三者三様の恋模様も楽しい。“野獣担当”の鳳月杏は本能的な愛の一撃を食らわせ、応じる人類学者役の夢奈瑠音(海乃美月と役替わり)は理性が崩壊した瞬間が見もの。暁千星は恋に奥手な年下男子をキュートに好演。彼を翻弄する強気なお色気タクシードライバー役の白雪さち花(夢奈瑠音と役替わり)は、難曲を歌い上げる歌唱と表現力が圧巻。そんな妄想やデフォルメされた場面が多いなか、作品の軸を担うのが主演の珠城りょうだ。心情溢れるバラード「孤独な街」「神様の奇跡」を感動的に歌い上げ、一目惚れから始まる正当派の恋模様を丁寧に紡ぐ。ヒロインの美園さくらは美脚が映えるバービースタイルで、歌やダンスを可憐に披露。真面目が過ぎて笑えるなどコメディエンヌとしても新境地を開く。他にも個性的な役柄が続々登場。ハプニング続きの展開からも目が離せない。底抜けに明るいラブ・コメディだが、第二次世界大戦中に開幕した初演当時を思えば、また違った感慨にも襲われる。つらい現実をひととき忘れさせる、エンタテインメントの底力を思わずにはいられない。名作に触れられるまたとない機会だ。公演は8月12日(月)まで梅田芸術劇場メインホールにて上演中。チケット発売中。取材・文:石橋法子
2019年07月29日女優の渡辺えりが、脚本・演出を務める新作舞台『私の恋人』を上演する。今年芥川賞を受賞した上田岳弘の三島由紀夫賞受賞作『私の恋人』を下敷きに、独自の恋物語を描き出す。共演に小日向文世、本作が初舞台となるのんを迎え、3人で30もの役を演じ分ける。約15曲の楽曲で綴るユニークな音楽劇だ。オフィス3○○「私の恋人」チケット情報主人公の“私”は、博愛の精神に満ちた「理想の恋人」に出会うまで、輪廻転生を繰り返し、10万年もの時空を生き続ける。クロマニヨン人からユダヤ人、そしてフリーターとして現世に生きる井上由祐に至るまで。恋人探しの一方で、浮き彫りになるのは無くならない戦争の歴史だ。SF的世界観から本質を炙り出す手法は、渡辺戯曲とも共通する。渡辺は、上田が描くテーマにも共感するという。「大きく言えば人類愛ですよね。なぜ人間は同じ過ちを繰り返すのか。いま断捨離が流行っていますが、忘れてはいけないような過去まで全部捨てるような時代になっている。合理化や分業化が進み、誰もが自分の保身に走ったり、日本人の良さである思いやりや情の部分が消えつつあるなと。そこを今回はお節介おばさんのように問い直したい。原作からは一部だけをお借りして、残りの9割は私の創作です(笑)」。原作通りにやれば「5時間は必要」な10万年の恋物語も歌やダンス、ユーモアを盛り込み、約1時間40分に凝縮する。情報量満載の展開だが「わけの分からなさを楽しんで」と渡辺。「だって、のんちゃんが主人公や彼が飼っている猫になったり、今お母さん役だった小日向さんが、次はお父さん役で出てくるわけですから。そこは笑って楽しんで。ピカソやマグリットも、パッと見は何の絵かは分からないけど、惹かれるから見るでしょ。それの演劇版です(笑)」。30年来の付き合いになる小日向は「段取りで芝居をしない信頼のおける役者」。一方、のんは天才肌の女優として一目置く。「一緒に映画や舞台を見に行っても視点が面白く、表現する言葉の選び方も天才的。センスだと思うんですけど。シュールでグロテスク、少しはみ出したものに惹かれる嗜好も似ていて、年齢差を感じさせない魅力がある」。のんは初舞台を目標に、以前から歌や踊り、英会話の特訓に勤しんでいるという。「猫背気味だった姿勢も直しましたから、努力家です。今は映像で流した方が楽だし儲かる時代だけど、一回しかない公演に命懸けてやる人もいる。色々と選択肢がないとつまらない。役者が目の前で汗を流しながら演じる、こんな贅沢は演劇だけですから。面白いと思いますよ」。公演は8月9日(金)、10日(土)兵庫県立芸術文化センター、8月28日(水)から9月8日(日)まで本多劇場にて上演。その他、地方公演あり。チケット発売中。取材・文:石橋法子
2019年07月29日ワハハ本舗の歌姫“梅ちゃん”こと梅垣義明が7月で60歳を迎えるのを記念して、『梅垣義明60還暦リサイタル!~本物のシャンソンが歌える年になりました~』を全国4都市で開催する。新作はもちろん過去のベスト版と、さらに劇場が敬遠する“禁断の秘蔵ネタ”を日替わりで解禁する。「みんな年齢を重ねるとバカなことをやらなくなるんだけど、やり続けた方がカッコいいんじゃないかなって」と梅ちゃん。過去発表した歌ネタは250曲以上。そこから今回は、越路吹雪の名曲『ろくでなし』を口ずさみながら、鼻の穴に詰めた豆を客席に飛ばす“殿堂ネタ”を筆頭に新旧10~12曲を厳選、2時間強のショーに仕立てる。「WAHAHA本舗PRESENTS 梅垣義明 60還暦記念リサイタル!~本物のシャンソンが歌える年になりました~」チケット情報「歌は上手いから心に響くかと言えば、そういう問題でもなくて。芝居と同じで技術だけじゃない、その人自身が問われるようなものだと思う。僕も60歳を迎えどんなものが滲み出せるのか。それは、お客さんたちに発見していただきたいんですけど(笑)」。舞台美術並みの質と量を誇る衣裳も見ものだが、過去にはそれが原因でお蔵入りしたネタも…。「加山雄三さんの曲『海 その愛』では、スルメイカの丸干しと昆布でできたドレスに、鰹節のストールを巻いて出たら、お客さんがドッと沸いて。自分も歌ってて楽しかったんだけど、劇場に臭いが残ってダメでした」。他にも『ケ・セラ・セラ』では、トレビの泉を模した噴水型の衣装で水を撒き散らし、観客も負けじと噴水にお賽銭を投げ入れ応戦(?)するなど、観客参加型の演出が持ち味。加えて、衣裳替えも舞台上で行い、出突っ張りでもてなすのが梅ちゃん流だ。「今は映像で場をつなぐ舞台もあるけど、僕はひとが一生懸命もがいて汗かいてる舞台の方が、観るのもやるのも面白いと思う。超アナログなことをやってます。ハイヒールで2階席まで駆け上がれるのも、お客さんの拍手や笑い声があるから。僕も乗せるし、お客さんにも乗せられる。そんな瞬間があると、いい舞台だなと思います」今回は喰始が監修に回り、新たにすずまさが構成・演出を務める。還暦を境に、梅ちゃんの新たな章の幕が開く。「子どもからお年寄りまでいろんな世代が一緒に笑えるのが、僕らの舞台のいいところ。僕自身、『これを見逃すともったいないな』と思いながら面白いことをやってるので(笑)。ぜひ初めての方にも、観に来てほしいなと思います」。公演は7月13日(土)から15日(月・祝)まで大阪・森ノ宮ピロティホール、7月19日(金)に東京・山野ホール、7月27日(土)、28日(日)に仙台・誰も知らない劇場、8月23日(金)に名古屋・ダイアモンドホールで上演。チケット発売中。取材・文:石橋法子
2019年07月02日大学時代には遺伝子工学の研究で一定の成果を挙げ、卒業後は実力派バーテンダーとして店を任されるなど多彩なバックボーンからも、幅広い教養と底知れぬプロ意識を感じさせる俳優の向井理。「ラクして良かったなと思ったことがないので。なるべく大変なことをやりたい」との思いで、1年に1本を目標に取り組むのが舞台だ。「去年できなかった分、これまで蓄積してきたものを披露したい」と気合い十分に挑むのが、市井の人々への眼差しに定評のある赤堀雅秋が書き下ろす、群像劇『美しく青く』。赤堀が描く他人の生活を覗き見するような「生々しい作品」に惹かれると言う向井にとって、念願の初タッグが実現した。「美しく青く」チケット情報震災から数年後の日本。とある集落では日々獣害が深刻化していた。地元の缶詰工場に勤める青木保(向井理)は自警団を結成しリーダーを務めるが、住民らの士気は一向に上がらず…。「自分たちの日常の延長線上にあるような生々しい世界観の中で、自分だったら巻き込まれたくないような環境や状況も、客席から俯瞰で観ているとどこか滑稽で面白い」と、赤堀戯曲の魅力を語る。「劇中ではみんな結構くだらない話をしているのですが、でもそれが今後の展開のヒントになったり、後に物事が大きくなる火種になったりする。いろんなところに種を蒔いて、最終的にはすべてが回収されていく。よくできた脚本だなと」。演じる役については「人間誰しも大人になるとネガティブな記憶や経験は、ひとつやふたつあるもの。そういう憐れみや哀しみを抱えているのが人間だとも思うので。どこかに自分と共通する部分があると思う」。舞台では常にオン状態。小さい物音にも敏感になり「その後、映像に戻ると以前とは違う感覚でお芝居している実感があります」。そんな研ぎ澄まされた感情の揺れをダイレクトに受け取れるのが、舞台の魅力のひとつだ。とりわけ本作は「生で観るべき題材」と強調する。「残念ながらここ数年の日本では、震災というものが身近な存在になっていますが、震災を描くというよりは、そういうところにも日常はあって、じゃあ日常ってなんだろう?という問いかけのような作品なんだと思う。赤堀さんがタイトル『美しく青く』に込めた思いというのも、例えば大変なことが起きても、ふと見上げた空の青さに気が晴れることもあるだろうし、良いことも悪いこともあるけど、結局24時間経ったら明日は来るし、生きていかなければならないということ。自分にとっての生きるとは、日常とは何だろうというのを少しでも考えるきっかけになれば、ありがたいなと思います」。東京公演は7月11日(木)から28日(日)までBunkamuraシアターコクーン、大阪公演は8月1日(木)から3日(土)まで森ノ宮ピロティホールにて上演。チケット発売中。取材・文:石橋法子
2019年07月01日米国のマーチングバンドを進化させた世界的人気パフォーマンス集団「ブラスト!」。全編ディズニー音楽で綴る最新作『ブラスト!:ミュージック・オブ・ディズニー2019』の関西公演に向けて、ヤマハミュージック大阪なんば店にて、公開記者会見を開催した。当日はパーカッションの石川直、トランペットの米所裕夢、トロンボーンのリサ・ライザネック・チャペルの3名が登壇。会見では生演奏に加え、ミニ・ワークショップも行われた。「ブラスト!:ミュージック・オブ・ディズニーチケット情報「あらゆる人を幸せにするディズニーの物語。そこに紐付く音楽を、僕らブラスト!が技と統一美とパフォーマンスでさらに刺激的なものとしてお届けする舞台です」。冒頭、キャストを代表して最新作についてアピールする石川直。石川は日本人初のメンバーとして2000年に入団。その超絶技巧でブロードウェイの聴衆をも魅了してきたスネアドラム界の雄だが、入団20年目の今年、本作をもっての「ブラスト!卒業」が宣言された。自身のキャリアの中で最高の節目にしたいと話す石川。「刺激的なパワー充電型のエンタメなので、観客の皆さんもグイグイ前のめりで楽しんでいただければと思います」。続く生演奏では、『リトル・マーメイド』より「アンダー・ザ・シー」、『ピノキオ』より「星に願いを」など、本番の予定リストより数曲がメドレーで披露された。その後は、パーカッションの石川とトランペットの米所が講師となり、ミニ・ワークショップへ。会場から1名ずつ希望者を募り、石川らによる簡単なレクチャーの後、参加者が見守るなか実際に楽器を鳴らすまでを行うもの。トランペットに初挑戦した女性は「意外と重いです」と新鮮な感触に驚きつつも、米所から「初めてなのに最初から音が出せるのはすごい」と高評価を受け笑顔を見せた。ドラムに参加した男性はスティックを回すなどの“魅せる演出”にも挑戦。石川からベストな手の位置を教わり、見事離れ業を成功させると場内から拍手が起こった。男性は「嬉しい経験でした。ドラムを始めてみたくなりました」と刺激を受けた様子だった。ファンとの距離が近いのはブラスト!ならではの魅力のひとつ。本公演でも幕間にはロビーでの演奏があり、終演後はキャストが見送りに立つミート&グリート付き。今年は映画『メリー・ポピンズ リターンズ』より「小さな火を灯せ」をはじめ、新曲も続々登場予定。会場を包み込む熱気と一体感、そして石川最後の勇姿をぜひライブで見届けてほしい。公演は8月11日(日・祝)、12日(月・休)に京都・ロームシアター京都メインホール、8月14日(水)・15日(木)に大阪・オリックス劇場、9月4日(水)に兵庫・神戸国際会館こくさいホール、9月7日(土)・8日(日)に奈良・なら100年会館・大ホールで上演。チケット発売中。取材・文:石橋法子
2019年06月21日今年も古川雄大、大野拓朗のW主演で上演された、小池修一郎演出のミュージカル『ロミオとジュリエット』。若さゆえの衝動、苛立ち、興奮が軸となる本作で、見事ダンスという手法でそれらを表現したのが京都出身の振付師KAORIalive。若手俳優の登竜門的作品は、今や若手ダンサーらの憧れのステージにもなっている。とりわけ情感豊かな群舞の振付に定評があり、小池とのタッグでは他にミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』などの大ヒット作でも知られる。そんな彼女が主宰する表現系ジャズダンスチームMemorable Momentが、昨年好評を博した最新ダンス公演『ロミオが描いたジュリエット』を関西で初めて上演する。Memorable Moment「ロミオが描いたジュリエット」チケット情報物語は、クラウンが「ロミオとジュリエット」に魔法の筆でいたずら書きをする所から始まる。ページを破り他の童話と混ぜ合わせると、自らも本の中に吸い込まれてしまう。対立し合う王国、幸せの青い鳥が見えない子供たち。離ればなれになったロミオとジュリエットは、いつしか自分たちの手で“真実の物語”を描き始めて……。純愛劇の一方でKAORIaliveは現代性も重視。童話に出てくる「青い鳥」をツイッターに見立てるなど(!)、SNS依存が蔓延する現代の風潮にも警鐘を鳴らす。同時に情報過多の時代に「人生は自分の手で切り拓く」という大きなテーマを盛り込んだ。曰く、「原作では主人公らが互いへの愛ゆえに死を選びますが、今作ではまた違った決断をふたりが下す。死の描き方にもこだわりました」。見学に訪れた稽古場では、ロミオ役の大柴拓磨ら主要メンバーが和気あいあいと振付の最終確認を行っていた。見学したのは登場人物の紹介場面。本番では誰もが知る童話のキャラクターが映像から飛び出たような趣向で楽しませる。「しかも弱虫のピノキオがマッチョに変身したり。クラウンのいたずらでそれぞれの性格が少しずつ変化する」のも見もの。コミカルな芝居仕立ての場面から華麗なジャンプ、ターン、決めポーズまで。流れるような場面転換で一瞬たりとも飽きさせない。本番ではさらに映像や音楽、衣裳の効果も加わり、これが台詞のない公演であることを忘れるほど、物語に見入ってしまうはずだ。じつは作品が完成した一昨年前、開演直前に暴風警報が発令され上演が中止となった過去がある。内容に磨きをかけて挑んだ翌年の初演では、「感動で涙が止まらなかった」など、大きな反響を呼んだ。KAORIaliveたちもいつになく手応えを感じ、今回の関西初演に踏み切った。「ダンスへの興味のあるなしに関わらず多くの人が楽しめる作品を目指しました。劇場に入った瞬間から始まる物語の世界をお楽しみください」。公演は6月22日(土)、23日(日)に兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて上演。ゲストダンサーに大柴拓磨、SAWADA(WRECKING CREW ORCHESTRA)、KIMIKO(chore0ringz)、TUKI(TUKIとKUMA)を迎える。取材・文:石橋法子
2019年06月19日長らくパリを拠点に活躍していた女優・作家の岸惠子が、今年も2部構成のトークショー『ひとり語り輝ける夕暮れ』を開催する。第1部の一人芝居『わりなき恋』は25万部以上を売り上げた自身の同名小説が原作。今年は2015年の初演から魅力を凝縮した、新演出版をお届けする。国際線の機内で偶然隣り合わせた男女の恋を描いた本作は、自身の体験をもとに創作したと明かす岸惠子。その時、隣席の男性から「パリを経由しプラハへ行く」と告げられた岸の脳裏には、ある光景が蘇っていた。岸惠子 ひとり語り「輝ける夕暮れ」チケット情報1968年、各地で学生紛争が頻発するなど世界は革命の時代にあった。30代だった岸はチェコの民主化運動を取材するためプラハへ飛んだ。「その男性も当時『プラハの春』と呼ばれたドプチェクの革命に胸を熱くした大学生で、プラハの春は僕にとっても青春の大事な1ページですと仰ったのです」。それまで小説の主人公像を掴みきれずにいた岸は、この偶然の出会いからインスピレーションを得て『わりなき恋』を上梓した。「認知症や健康についてのテレビ番組が多い中、赤ちゃん言葉で介護されている老人の映像を目にした時は、どんな人間にも尊厳はあると憤りを感じました。人生100年の時代にも、ぱぁっと虹が立つほど華やかな人生の夕暮れ時があっていい。この公演名には、黄金色の夕映えが見れたらいいなとの思いを込めました」。第2部は、初めて訳したおとなの絵本『パリのおばあさんの物語』の話から、世界で活躍する岸ならではの彩り豊かな人生観を、ユーモアたっぷりに語り尽くす。「先日は私の散歩道にあるノートルダム大聖堂が火災に見舞われ、スリランカでも大規模なテロがありました。世界は刻々と変化しているのに日本人は割合にのんびりしていて、そこが良くもあり腰砕けな部分でもある」。24歳でパリに渡って以降、岸は積極的に世界中で取材と冒険を重ねてきた。「私もぺしゃんこに失敗する時だってある。ただ、この冒険心と行動力がなかったら今ごろ退屈なだけの老後を送っていたと思います。男女問わず特に若い方には、世界情勢にもっと敏感になってほしい」。同時に、日本人はもっと“自分を思いやった方がいい”とも。「人が雑に考えた常識の枠にはまらず、自分で考えて行動する。自分の考える自分を生きた方がいいと思います」。年齢を感じさせない熱い語り口とスマートな身のこなし、気品溢れるオーラは健在だ。5月初旬には新作エッセー『孤独という道連れ』が発売された。「ひとりの生活は不便や寂しさもありますが、ひとりじゃないと味わえない自由や喜び、蜜のような甘さもある。そんな話もしてみたいなと思います」。大阪公演は6月11日(火)フェスティバルホールにて上演。チケット発売中。取材・文:石橋法子
2019年05月31日阪神・淡路大震災からの再生を描いた、村上春樹の短編小説集が今夏、舞台『神の子どもたちはみな踊る after the quake』として上演される。舞台版では原作より『かえるくん、東京を救う』『蜂蜜パイ』の2編を取り上げ、ひとつの物語として編み直す。主演の古川雄輝は出演が決まり、初めて村上春樹の小説に触れたと話す。「シンプルで読みやすい反面、かえるくんて何?と、正直分からないことも多くて。じつは何かの比喩で、別に意味があるんじゃないかとか。読み手に考えさせる解釈の多さがハマる部分なのかなと思います」。「神の子どもたちはみな踊る after the quake」チケット情報信用金庫に勤める片桐(川口覚)は、見ず知らずの巨大な“かえるくん(木場勝己)”から突然、「一緒に闘ってほしい」と頼まれる。神戸の震災で眠りを妨げられたみみずくんが怒って東京に大地震を起こそうとしている、というのだ。しかし、片桐はその後病院のベッドで目覚めることになる。一方、小説家の淳平(古川雄輝)は大学時代の友人、小夜子(松井玲奈)に恋をしていた。小夜子とは彼女が共通の友人、高槻(川口覚・二役を演じる)と結婚、離婚を経て母となった今も友人関係が続いていた。原作では別々の短編だが、舞台版では“かえるくんの物語”は淳平が描いた小説という設定だ。「例えば小夜子を演じる松井玲奈さんが、片桐が目覚めた病院のナースとして登場したり、僕も淳平として物語を語りながら、気づけば小説の中の登場人物として存在している。出演者が出ずっぱりで色々な役を演じていく印象です」。淳平との共通点を尋ねると、「自分の思いを伝えるのが苦手。好意がある女性には何となくのニュアンスは伝えられても、ガツガツとはいけないですね」。一方、(古川が)理系という意味では淳平とは真逆とも。「理系は答えを求めるので、今回も演出の倉持さんにお会いするなり『この台詞はどういう意味ですか?』と正解を求めました(笑)」。舞台は役者として成長できる場と捉える。「今回も大変な現場になると思っています。でも苦手意識ばかりでは辛くなるので、“楽しむこと”をテーマに頑張りたい」。観客にも一期一会の舞台を見届けてほしいと話す。「テーマにある震災については、人によって感じ方もさまざまだと思っています。僕が何かを伝えるというよりは、それぞれに思いを持ち帰っていただければいいのかなと。淳平の告白できない様とかは、身近な物語としても楽しめると思います。原作とはひと味違う世界観を、ぜひ観に来ていただきたいなと思います」。公演は7月31日(水)から8月16日(金)まで東京・よみうり大手町ホール、8月21日(水)・22日(木)愛知・東海市芸術劇場 大ホール、8月31日(土)・9月1日(日)兵庫・神戸文化ホール大ホールにて。チケットは発売中。取材・文:石橋法子
2019年05月17日昨年、兵庫で大好評を博したリーディングシアター『レイモンド・カーヴァーの世界』が今年は兵庫と東京で上演される。昨年から続投の手塚とおる、新たに仲村トオル、矢崎広、平田満を迎え、公演日ごとに組み合わせを変えながら各回2名が出演。村上春樹が翻訳した、レイモンド・カーヴァーのシュールでミステリアスな短編を朗読する。「大先輩と同じ座組で大変光栄に思います」と恐縮する唯一の30代、矢崎広。どうしようもない男女のすれ違いや破綻を描いた作品群の中から、当日は『収集』『菓子袋』の2編を物語る。リーディング・シアター「レイモンド・カーヴァーの世界」チケット情報カーヴァーは80年代のアメリカ文学界にカルト的影響を与え、ピューリッツァー賞の候補にもなった作家であり詩人。『収集』は失業中の男と不在の妻を訪ねてきた見知らぬ男との何気ない会話を描写する。一方の『菓子袋』は離婚した父を成人した息子が訪ねたときの回想録だ。矢崎はレイモンド・カーヴァーの世界に初めて触れ、その“分からなさ”に早くも虜になったという。「これは原作者と訳された村上春樹さんおふたりのすごさだと思います。例えば『菓子袋』なら話している父親や聞いている息子の顔、菓子袋を持つ手の表情までが浮かんでくる。描写力のすごさが想像力を掻き立て、なぜ父はこのタイミングで息子にこの話をしたのか、とか。謎解きの要領で読んでいくと最後は迷路に迷いこむ。その感覚が面白いですね」。出演作は「血が騒ぐか否か」で見極めるという、デビュー15周年の矢崎広。近年はミュージカル『ジャージー・ボーイズ』、『ライムライト』など注目作への出演が続き、存在感を増している。「年々演じる役の大きさに追い付け追い越せという思い。同時に役が付くこと自体有り難いことなので。今の自分はどんな役でも“やってやるぞ!”という気持ちです」。今回も気合十分に挑むつもりだ。「本作への出演が決まると、知人から『やるんだってね。がんばってね。いや、社交辞令じゃなく本当にがんばってね!』と、少し怖くなるぐらいのテンションで激励を受けました(笑)。レイモンド・カーヴァーに思い入れの強い方が他にもたくさんいることを実感したので、その方たちの思いにも応えたいと思います」。カーヴァーは中高年の悲哀に敏感で、行間からその年代特有の悲しみや寂しさの余韻が溢れだす。演出の谷賢一いわく「人生に疲れたことのある聴き手の心にそっと寄り添う」リーディング公演となりそうだ。「読者に答えが委ねられるような作風でもあり、見終わった後に自問自答したり、隣席の方と語り合いたくなる。演劇が好きな方はもちろん、普段は興味がないという方も構えずにお越しいただければ、この楽しくも頭がむず痒くなるような世界から抜け出せなくなると思います」。公演は5月25日(土)・26日(日)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、5 月30日(木)から6月2日(日)まで東京・六本木トリコロールシアターにて上演。チケット発売中。取材・文:石橋法子
2019年05月14日宝塚歌劇団が105周年を迎える今年、宝塚歌劇団音楽家・吉崎憲治が活動60周年、演出家・岡田敬二が活動55周年を迎え、記念公演『吉崎憲治&岡田敬二ロマンチックコンサート』が開催される。『朝日の昇る前に(華麗なるギャツビー)』『シトラスの風』など、昭和から平成の名曲を元トップスターと現役生が歌い継ぐ夢のステージだ。「宝塚人生が還暦を迎えました」と茶目っ気たっぷりに語る吉崎と、抜群の歌唱力を誇る元雪組トップスター杜けあきが見所を語った。「吉崎憲治&岡田敬二 ロマンチックコンサート」チケット情報現在、作曲数は3000曲を超える吉崎。杜はいつ会っても吉崎の印象が「全く変わらない」ことに驚く。先頃出演したOG公演『ベルサイユのばら45』でも共演者らと吉崎や今作の話題で盛り上がったという。「やはり現役であることが先生の活力の源ですね。私は退団して25年になりますが、曲のイントロが流れると一瞬にして当時に戻ってしまうほど、情熱を注いできたんだなと。OGのみんなとも、先生の曲をまた一緒に歌えるなんて幸せだね!と話しました」。現役時代は『おもかげ草子』『華麗なるギャツビー』『ヴァレンチノ』などの大作で吉崎とタッグを組んできた杜。「先生の曲は組曲のように起承転結があり、知らぬ間に役の心情に運ばれる。歌の中で役者として育てていただきました」。それは杜だったから、と応える吉崎。「こういう風に気持ちを動かしたいんじゃないかとか、杜さんにはこちらの心を動かすものがあった。彼女がまだ研1か研2の頃、何かのパーティーで柱の陰から先生と呼ばれたことがありました。下級生に話かけられることはまずない。でも愛嬌というか嫌味がないんです。この人は何かやるなと思ったら、トップスターになられました(笑)」。盟友・岡田敬二について吉崎は「発想力が抜群で岡田先生の歌詞には情熱がある」。また、演出家の意向を汲み作曲するのが座付き作曲家の使命とも。「今思えば曲のエネルギーで演者を含めこちらの世界に引っ張り込みたい気持ちもあったように思います。結局自分が燃えていないとダメ。みんなの情熱がぶつかってこそ愛される作品に仕上がります」。歌を通して青春を思い出してほしいと語る杜。「先生へのお祝いも含め、心を込めて歌います」。吉崎も錚々たる出演者の顔ぶれに「ありがたい」と顔をほころばせる。「お母様、叔母ちゃまになられたオールドファンには懐かしんでいただき、初めて観る方々には宝塚って良いな、観たいなと思っていただけることが願いです」。公演は6月1日(土)、2日(日)まで梅田芸術劇場メインホールにて上演。チケットは5月11日(土)一般発売。※吉崎の「吉」は上部が「土」、「崎」は右上が「立」が正しい表記。取材・文:石橋法子
2019年05月07日役者、ダンサー、振付師、演出家などパワフルな存在感で一目置かれる各分野の“ツワモノ”たちが集う、結成12年目のパフォーマンス集団junkiesista(ジャンキーシスタ)&junkiebros.(ジャンキーブロス)。2014年、好評を博したサスペンスフルなお葬式コメディ・ミュージカル『REizeNT~霊前って...~』で初の大阪公演を飾る。主宰の林希とは唯一無二の親友で、結成当初から歌唱指導としてカンパニーに関わるシルビア・グラブが、今作では客演として参加する。「最高にくだらなくて面白い、壮大なコントです。笑わずに歌えるかな…」と真顔で悩むシルビアに、意気込みを聞いた。junkiesista×junkiebros.PRESENTS「REizeNT~霊前って...~」チケット情報ある日、大富豪の女社長が殺された。犯人不明のまま執り行われたお葬式では家族、参列者、葬儀屋、住職に至るまで、全員が怪しい。疑心暗鬼の末、事態は思わぬ展開に…。「メンバーは、枠に収まりきらない爆発的なエネルギーを持った人たちばかり。あえて重い題材でコメディに挑むとか、『こんなミュージカル観たことない!』と思わせるのが狙い」とシルビア。これまで暴走族、キャバクラ、ゾンビなど作品の切り口も斬新だが、特筆すべきは毎回全曲が有名ブロードウェイ・ミュージカルのパロディだという点。今回も超人気作の曲をお経調にアレンジするなど、替え歌を多彩にスタンバイ。韓流ダンスボーカルユニットH5のリーダーHONEYら複数の“歌ウマ客演陣”を迎えたことで、初演より曲数を増量してお届けする。しかも、本編終わりにはショータイムが付くのも恒例で、ダンスファン、演劇ファン共に爆笑と感動を味わえる、一粒で2度美味しい公演となっている。林希とは20代の頃、玉野和紀作・演出・振付のミュージカル『THE GUEST SHOW』(1999年)で初対面し、「肝臓の強さが一緒で意気投合した」と笑うシルビア。後に『CULB SEVEN』の名物となる「50音順ヒットメドレー」が初登場した公演でもあったという。「希とは、稽古終わりに毎日呑んで、お酒をガソリンに換えていました(笑)」。同世代で尊敬し合える仲間と出会い、同じく共演者だった岡千絵と3人で結成した音楽ユニットgravityの活動は、今年で14年目を迎える。「希は、面白いことをやろうぜとみんなを惹き付ける原動力を持っている人。惹かれるという意味でgravityと名付けたんですけど。ジャンキーも小規模ながらムーチョ村松さんが映像、PaniCrew植木豪さんがグッズデザインを担うなど、スタッフ陣もすごい顔ぶれが揃っています。みんな気持ち優先で集まってる部分が大きいので、ケンカもするけど楽しくて。いまだに青春しています」。大阪ではあえてお堂のある小劇場を選んだ。「初めての劇場に私もワクワクしています。絶対後悔させませんので、ぜひ笑いに来てください!」東京公演は5月24日(金)から6月2日(日)まで中目黒キンケロ・シアターにて、大阪公演は6月8日(土)・9日(日)一心寺シアター倶楽にて上演。大阪公演のチケットは、チケットぴあにて発売中。取材・文:石橋法子
2019年04月25日画家ピカソと物理学者アインシュタイン。“ふたりの天才”が、もしも20代に出会っていたら――。そんな刺激的な空想を軽妙な会話劇に仕立てた舞台『ピカソとアインシュタイン~星降る夜の奇跡~』。ピカソとアインシュタインを岡本健一&川平慈英、三浦翔平&村井良大という2組のペアが演じ、一方のペアが主役の回にはもう一方のペアが別の役で出演する。舞台3作目にして初のストレートプレイ、しかもピカソと、謎めいた“未来からの訪問者”の2役に挑む三浦翔平が、会見で意気込みを語った。「ピカソとアインシュタイン~星降る夜の奇跡~」チケット情報公演チラシには川平慈英が考案した「脳がハッピーーーーー!!!になる舞台?」のキャッチコピーが踊る。三浦も、何とも言えない高揚感のある作品と太鼓判を押す。「タイトルだけ聞くと“難しそう”と思われる方もいらっしゃいますが、脚本を書いたのが(ハリウッド俳優でコメディアンの)スティーヴ・マーティンなので、面白くないわけがない。ジェットコースターのように物語が進み、気付いたら終わってる。何も考えずに観られるというか。例えるなら、“あー、美味しかった!”みたいな。脳がハッピーになるコメディです(笑)」。舞台は1904年のパリ。バー「ラパン・アジール」では日夜、芸術家らが熱い議論を交わしていた。物理学者を目指す青年アインシュタイン、美しい娘シュザンヌ、画商サゴ、発明家シュメンディマン、そして画家ピカソ。ある日、もうひとりの若き天才“未来からの訪問者”が店に現れたことで、物語が大きく展開する。現実では1904年から3年後にアインシュタインが相対性理論を、ピカソが大作『アヴィニョンの娘たち』を発表している。「僕が演じるのは、あと少しで思った通りの絵が描ける寸前のピカソ。いわゆる“青の時代”で、ピカソとしてはアイデアは頭の中にあるので『俺天才だけど知らないの?』。でも世の中的にはマティスの方が有名。そんな彼が様々な出会いを通して殻を破っていく。終盤に迎える薔薇色の時代まで、荒々しくもがいてイラついて、絵を描く以外は酒か女に溺れている。パッションがすごくて。その目まぐるしさを演じるのが難しくもあり、楽しくもあります」。年始には現存するラパン・アジールを訪ねるなど、現地を旅したことでピカソへの愛着が一層増したという。岡本ペアとの違いを聞くと、「僕らは序盤からの熱量がすごい」と闘志を燃やす。「台詞も動きも道筋は同じなのに、決して同じ表現にはならないのが面白い。岡本さんたちもエネルギッシュですが、どっしりとしたベテラン感がすごい(笑)。実際2役を演じる上で学ぶことも多いですし、良いと思った部分は盗ませていただいています。あと、川平さんと村井くんが演じる発明家シュメンディマンがちょっとズルい役なので。ぜひ両方を見比べに来てほしいですね」。公演は5月12日(日)大阪・森ノ宮ピロティホールにて全2回上演。チケット発売中。取材・文:石橋法子
2019年04月24日清水順二率いる演劇ユニット30-DELUXとジャニーズJr.の宇宙Sixが再びタッグを組んだ舞台『のべつまくなし』が今春、全国4都市で上演される。江戸時代を舞台に挫折を経験した劇作家・近松門左衛門が様々な出会いを通して、人々を希望へ導く物語。清水が浅野内匠頭役として狂言回しを担うなど、メンバーも歴史上のキャラクターで登場する。殺陣、歌、ダンス、笑いを盛り込んだ、オリジナル・アクションプレイミュージカルだ。本作で「演劇に新たなジャンルを確立させたい」という30-DELUXの清水と宇宙Sixの江田剛、山本亮太、松本幸大、原嘉孝に意気込みを訊いた。「のべつまくなし」チケット情報前作『スクアッド』で宇宙Sixのポテンシャルの高さを実感したと語る清水。「中でも江田、山本、松本は20年近いキャリアと実力がある。新作ではソロ曲を用意したので、彼らの新たな一面をお見せできると思う。続編、再演を含め、いずれは海外公演も実現できるよう骨太な和ものミュージカルを目指します」。近松門左衛門役の江田は「立ち回りをしながらの歌」を一番の見所に挙げ、紀伊国屋文左衛門役の山本は「江田と僕の役が出会うことでどんどん物語が大きくなっていく。楽しみであり挑戦ですが、気合いと根性で頑張ります」と意気込む。松本は正義のヒーロー南町奉行、大岡越前役で「『ジャスティス!』が口癖とか、コミカル要素も担っています(笑)」。最後に、赤穂浪士四十七士随一の剣客、堀部安兵衛を演じるのが原だ。「正義感は強いけど少し喧嘩っ早い短所もある。カッコいい、優しい、ワイルドな面は自分にも通じる部分かな(笑)。歌ではソロ曲をいただけたのでこの機会に結果を残したい」。新作を通して「宇宙Sixの名を広めたい」と声を揃えるメンバーたち。本編終了後には江田演出による約10分のレビューショーで本領を発揮する。「最後はペンライトを振っちゃうような、本編とのギャップとお得感を楽しんで」(江田)、「僕たちの今年のテーマが“つなぐ”なので舞台を成功させて次につなげたい」(山本)、「大きな幸せと書いて、松本幸大です。皆さんを幸せにするのが僕らの務め。前回よりハードルを上げて精一杯良いものを届けるのみ!」(松本)、「前作以上の意気込みで楽しませるので、大阪公演が面白かったよという人は、ぜひSNSなどで拡散していただければうれしいです(笑)」(原)。公演は4月25日(木)から5月6日(月・祝)まで東京・サンシャイン劇場、5月9日(木)名古屋・アートピアホール、5月15日(水)から18日(土)まで大阪・サンケイホールブリーゼ、5月23日(木)、24日(金)北九州・北九州芸術劇場中劇場にて上演。チケットは発売中。取材・文:石橋法子
2019年04月22日蓬莱竜太の岸田國士戯曲賞受賞作『まほろば』が7年ぶりに上演。連綿と途絶えることのない人間の営みを、妊娠、家系、血脈など奥深いテーマを散りばめ、軽妙な4世代の女たちの会話劇に仕立てる。何気ない会話から熱く脈打つ命の尊さに触れるような驚きと普遍性に満ちた、ユーモアたっぷりの人間ドラマだ。前回までは長女ミドリの視点から描かれた物語が、今回は母ヒロコを中心に展開する。演出は劇団チョコレートケーキの日澤雄介。伝統やしきたりをギリギリ受け継ぐ“旧世代”代表・ヒロコ役を演じる高橋惠子に意気込みを訊いた。「まほろば」チケット情報「ヒロコは、本家の嫁として家を受け継ぎ守っていくため、娘たちに結婚、出産してほしいと強く思っている人。でも『神様のおぼしめし』と台詞にもあるように、命の誕生は人間の力だけではどうしようもなくて。他にも、家族が持ち込んでくる様々な問題に、親としてどう対処していくのか。たった1日の出来事が、休憩なしの2時間で一気に駆け抜けていく。その中で、本当の肉親同士のやり取りに見えないといけませんから、私も本音というか、はらわたからの叫びくらいのイメージで演じた方がいいなと。表面だけの台詞のやり取りだけでは終わりたくない作品です」演出家からはどんどんボルテージを上げてとの指示が飛ぶ。そのなりふり構わない会話の妙が共感や笑いを誘う。「笑えますよね。ヒロコは自分の代で家を途絶えさせるわけにはいかない!と使命感に燃える。それは言いすぎではと思える娘たちへの言葉も、真剣そのものだからこそ。男性作家だから客観的に観察ができるのか、各年代の女性たちの真実が描かれていると思います」。今回初のストレートプレイに挑む元宝塚歌劇団雪組トップスター早霧せいなをはじめ「美人揃いの娘たち」ともすでに息ぴったりと声を弾ませる。「ダブルキャストの子役の2人も持ち味が違っていて、11歳なのに作品の中で一番発言が大人びているのも面白いんです」上演は平成最後のタイミング。そこにも運命めいたものを感じると語る。「改元に伴い、世の中の価値観は今までになく大幅に変わっていくような気がします。一方で、変わらないものもある。例えば、妊娠、出産が3日で済むようになりましたとはなりませんよね(笑)。私も60歳を過ぎ、近頃は相手を敬う日本人のしきたりや知恵、日本語の美しさなど、良いものを後世に残したいと思うようになりました。まほろばとは素晴らしい場所という古来からの言葉ですが、蓬莱さんもそういう思いだったのかなと。何か、“忘れないでほしいことがある”と言われているような気もして。そんな思いもこの作品を通して伝えていければと思います」公演は2019年4月5日(金)から21日(日)まで東京芸術劇場シアターイースト、4月23日(火)・24日(水)は大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演。取材・文:石橋法子
2019年04月05日3月30日に放送されたフジテレビ系の「ENGEIグランドスラム」(フジテレビ系)に、とんねるずの石橋貴明(57)が“乱入”。そこでの発言が、波紋を呼んでいる。石橋はかつて自身が「とんねるずのみなさんのおかげでした」でたびたび披露していた、フジテレビの名物プロデューサー・石田弘氏のコスプレキャラ・ダーイシで登場。登場するや、「松村がよぉ今いろいろ会見で大変でなぁ!」と発言。周囲が制止するひと幕があった。「石橋が名前を出した『松村』とはNGT48のメンバー・山口真帆(23)暴行事件について会見を行った、NGTの運営会社・AKSの松村匠取締役・運営責任者(56)のこと。松村氏は元フジテレビの社員で、とんねるずの番組にも携わっていました。そんな関係もあったのでネタにしたと思われますが……」(芸能記者)松村氏が出席した先日の会見中、リアルタイムで中継動画を見ていたと思われる山口が自身のツイッターで反論。報道陣の質問攻めにあった松村氏がしどろもどろになるなどしたため、会見は紛糾してしまった。そんな状況での石橋の発言。ネット上で《この危険ネタができるのは石橋さんしかいない》と称賛するコメンントは少数派。《被害者いるからネタにしたらダメ》《笑い事じゃねーんだけど》など批判の声が殺到している。
2019年04月01日歌手で女優の酒井法子(48)が27日放送のテレビ東京系「THEカラオケ★バトル-またやっちゃう?あの大ヒット曲、ご本人は何点出せるのかSP!-」に出演し、代表曲『碧いうさぎ』を歌うと一部スポーツ紙が報じた。記事によると酒井がテレビで歌唱するのは、08年4月に出演したNHK「SONGS」以来11年ぶり。今回の番組は「THEカラオケ★バトル」のスペシャル版。通常版はプロ・アマ問わず全国の歌自慢がカラオケ採点機で得点を競うが、スペシャル版ではヒット曲を持つ歌手本人が登場。持ち歌で何点を出せるのかに挑むという。酒井は09年に覚せい剤取締法違反で逮捕・起訴され、東京地裁で懲役1年6月・執行猶予3年の有罪判決を受けた。その後、芸能活動を再開。舞台・コンサート・ディナーショーに加えてパチンコ店での営業までもこなしてきたが、報道番組以外で地上波の番組に出ることはかなわなかった。「各局ともにCMスポンサーの顔色をうかがっていたため、なかなか酒井へのオファーができませんでした。しかしここへきて、徐々に各局ともにオファーを解禁しはじめています。今回の出演で酒井さんが高得点をたたき出せば、今後もお呼びがかかることになるでしょう。そういう意味で、“再起”への正念場となりそうです」(芸能記者)本人歌唱でも高得点を出すことはなかなか難しいものの、収録当日朝までカラオケに通い特訓したという酒井。その努力は実るのか、注目が集まりそうだ。
2019年03月13日劇団☆新感線のいのうえ歌舞伎『偽義経冥界歌(にせよしつねめいかいにうたう)』が、いよいよ3月8日(金)、大阪・フェスティバルホールにて開幕。初日に向けての公演レポートと、劇団主宰で演出のいのうえひでのり、主演の生田斗真のコメントが到着した。2019年 劇団☆新感線39興行・春公演 いのうえ歌舞伎『偽義経冥界歌』チケット情報3年ぶりの劇団本公演で、座付き作家・中島かずきによる約5年ぶりのいのうえ歌舞伎シリーズ最新作。物語は、源義経が実際に奥州に匿われていたという史実と奥州三代の盛衰の行方を絡めながら展開。物語は冒頭から、能天気な場面と互いの刃が喉元を掠めるような、緊張と緩和が交互に押し寄せる、心臓ドキバクの展開に。登場人物らは笑顔の裏で「使命を忘れるな」と表情を引き締めるから、いよいよ何が真実で誰が味方か分からない。そんな状況にも、ワケあり偽義経がお構い無しに出陣の狼煙をあげる。均衡を破り運命の歯車が動き出す、最高にワクワクする幕開けだ。劇空間に巨大な岩窟や海原を出現させる美術や映像、笑いや激情を増幅させる照明や音楽、機能美を備えた華麗な衣裳まで。洗練されたスタッフワークが作品に一層の深みと芸術性を与える。ステージは舞台の一番奥の方から舞台面まで階段状に伸び、戦闘場面では兵士が客席前方にまで飛び出すような迫力に圧倒される。切り込み隊長の早乙女友貴が華麗な剣術で物語に弾みをつけると、主演の生田斗真が快活に登場。場違いな状況でダブルピースを連打するほどには無邪気だが、思わぬ機転の良さでピンチをしのぐ只者らしからぬ片鱗もチラリ。漏れなくイケメン要素も盛り込まれ、多彩な表情に首ったけ。弟役の中山優馬は、怖いくらいの従順さがかえって後の豹変ぶりに期待を持たせる。やがて、藤原さくらの甘く切ない声が冥界の扉を開けるとき、生田斗真が覚醒する――。開幕に向けていのうえは「劇団☆新感線史上最大といえるほど立ち回りの多い公演。立ち回りがダンスのようにお芝居として複雑に入り込んでいます。生田斗真くんは、今ではすっかり立派な俳優さん。新感線のことも良く分かってくれていて、差し引き、駆け引き、気遣いすべてにおいて任せられる主役です。豊洲(IHIステージアラウンド東京)にずっといたので、一つの場所から解放されるエネルギー、そして劇団員が揃う楽しさもある公演です。ぜひご期待ください」と熱を込める。主演の生田は「かなり大きな会場ですが、3階席の1番後ろのお客様まで、誰一人置いていかない、お芝居にしたいと思っています。とにかく役者が駆け回る!闘う!歌う!少年漫画のようでありながら、誰もが楽しめるスペクタクル作品です。劇団☆新感線版アベンジャーズ×ハムレット×リメンバー・ミー!さぁ訳が分からなくなってきただろう?楽しみになってきただろう?自信あり!そして当日券も数枚あり!劇場にて…、否!冥界にて待つ!」と自信をのぞかせる。いのうえ歌舞伎『偽義経冥界歌』大阪公演は、3月8日(金)から21日(木・祝)までフェスティバルホールにて。チケットぴあでは各公演前日まで当日引換券を販売中。このチャンスをお見逃しなく!取材・文(公演レポート):石橋法子
2019年03月08日日本初演から30余年を迎えたミュージカルの金字塔『レ・ミゼラブル』が全国5都市で上演される。「革命と正義」「誇りと尊厳」などさまざまなエッセンスに彩られた19世紀フランスが舞台の群像劇。罪人から真っ当な人間へと改心を試みるジャン・バルジャンを主軸にさまざまな人間ドラマが描かれる。本作で革命家の青年マリウスに恋する貧困層の娘エポニーヌをトリプルキャストで演じるのが昆夏美だ。新演出版となった2013年から今回で4度目の出演となる。ミュージカル「レ・ミゼラブル」チケット情報「この作品の魅力だと思うんですけど、やればやるほど新たな発見が毎回あって。決してゴールはないんだなと思っています」。例えば楽曲を前回とはまったく違う気持ちで歌ってみるなど、いろんな角度から作品を深めている。「演出家からの指示も、前回と同じようにとはならないので。私も役への固定概念を捨てて、お客様の中にも革命が起こるぐらい柔軟に演じられたらと思います」。前回の2017年公演では、『恵みの雨』でそれまでにない幸福感を感じたという。政府軍との銃撃戦の最中、マリウスの腕の中で歌うエポニーヌ最期の曲だ。「現実を分かっていながらもひとりでマリウスとの空想にふけるのが『オン・マイ・オウン』だと思いますし、自分が夢見ていたことが最後に手に入るなんて想像もしていなかった。切なくて深い場面だなと。エポニーヌにとって幸せの頂点にある歌だと思います」。演出家からは毎回「悲劇のヒロインにはならないで」との指示が飛ぶ。「特に『オン・マイ・オウン』は音楽も感傷的ですし、もしかしたらお客様はそういう部分を期待されているのかなとも思うのですが、絶対に自分を憐れんではいけない。エポニーヌを演じる上で一番重要なことです」。ミュージカル女優を夢見た中高生時代、「木の役でもいいからあれば出演したい」とこいねがった本作に、デビュー2年目で初出演を果たした。「当時は年齢的にもキャリア的にも一番下だったので、『妹みたいなエポニーヌが新鮮でした』というお手紙をいただいたときは嬉しかった」。時が経ち、今回6人いるエポニーヌとコゼットの中では最年長だ。「もう妹みたいには演じられない(笑)。自分で積み重ねてきたものや、新たなエポニーヌたちに気付かされることもたくさんあると思うのでワクワクしています」。改めて、本作の魅力とは?「ジャン・バルジャン、ジャベールなど誰の視点で観るかで感想も変わりますし、複数キャストによる個性の変化も感じられる。その中に愛や許し、いろんなメッセージがあるので。歴史あるミュージカルで明日への活力を養っていただければと思います」。公演は4月15日(月)よりプレビュー公演の後、4月19日(金)に東京・帝国劇場で開幕。6月に愛知・御園座、7月に大阪・梅田芸術劇場メインホール、7月末から8月に福岡・博多座、9月に北海道・札幌文化芸術劇場hitaruで上演される。大阪公演のチケットは3月23日(土)一般発売開始。3月6日(水)10:00より先行先着プリセール実施。取材・文:石橋法子
2019年03月06日世界的フラメンコ・ダンサー、エバ・ジェルバブエナの1年半ぶりの来日公演『Cuentos de Azucar 砂糖のものがたり』が決定した。これまで映画監督のマイク・フィギス、写真家のピーター・リンドバーグなど各界のトップアーティストらとジャンルを越えた共演を重ねてきたエバが、今回出会ったのが奄美の歌姫、里アンナ。先の大河ドラマ『西郷どん』ではオープニングテーマを歌い、他にも世界的振付家シディ・ラルビ・シェルカウイ公演への参加や、舞台女優としてミュージカル『レ・ミゼラブル』へ出演するなど、彼女自身も多彩なフィールドで活動する注目の奄美民謡歌手だ。エバとの共演を「光栄に思う」と言う里。2018年にヨーロッパで初演、日本では初上演となる本作の魅力について訊いた。エバ・ジェルバブエナ 来日公演2019「Cuentos de Azucar ~砂糖のものがたり~」チケット情報エバはかつて奄美が黒糖のプランテーションだった歴史に触れ、幼少期に故郷の砂糖工場近くで夏休みを過ごした日々を思い出し、その後もフラメンコと奄美民謡との間に運命的とも言える共通点を見出したという。互いの文化について里は「ともに譜面を持たず、呼吸や間合いは表現者に委ねられている点も同じです」と語る。創作の過程ではエバを奄美に招き、土地の伝承を共有し、宴の終わりには踊り歌でもてなした。「最後に私の汗と匂いがついた手拭いを置いていきますと歌う別れの曲『山原』や、命懸けの逢瀬の曲『かんつめ』など、恋愛の歌詞が多いのも奄美民謡の特徴です。中でもエバは奄美に伝わる女性崇拝の信仰に共感していました。奄美のフグが産卵のため海底にサークル状の巣を作るという話も興味深かったようで、舞台装置にそのイメージが反映されています」。女性や自然のサイクルをテーマにした本作で里は7、8曲を歌い繋ぐ。フラメンコギターや和太鼓が伴奏の楽曲からアカペラまで、奄美とスペインの魅力を伝えるべくアレンジを加えた。「音楽はセッションによって作り上げました。決めの部分だけを共有して、その他はエバやカンテの方との呼吸や、その時々の感情の赴くままに歌っています」。エバの踊りは思わず見惚れてしまうほど感動的だという。「一度、本番中に歌い出しを忘れて見入ってしまったことがあったほど(笑)。中でも全員でエバを囲むフィナーレは、初演の客席からも一番多くの『Ole(オレ)!』の歓声が聞こえました」。大河ドラマ『西郷どん』では二階堂ふみ演じる西郷の妻の兄嫁役で出演も果たした里。故郷では地元の人々が自分のことのように出演を喜んだという。「今回、私を知って観に来てくださる方にはフラメンコの素晴らしさを、エバのファンの方には奄美の島唄の良さを、それぞれ知っていただける機会になればと思います」。エバ・ジェルバブエナ 来日公演2019『Cuentos de Azucar ~砂糖のものがたり~』は、3月22日(金)・23日(土)東京国際フォーラム ホールC、3月26日(火)大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。チケットは発売中。取材・文:石橋法子
2019年03月01日日本初演から30余年を迎えたミュージカルの金字塔『レ・ミゼラブル』が全国5都市で上演される。動乱期の19世紀フランスを舞台に、19年間投獄されていたジャン・バルジャンが仮出獄となり、真っ当な人間になろうと再生する姿を軸に描かれる。歴代最年少の32歳で演じて以来、今回が5度目のジャン・バルジャン役となる吉原光夫。「またあの世界を見たくなる」と心底惚れ込む作品の魅力について取材会で語った。ミュージカル「レ・ミゼラブル」チケット情報2年ぶり5度目のバルジャン役に吉原は「不器用なので、本当にたくさんの時間を得ないと成長できない」と、これまでの足跡を振り返る。初挑戦した2011年は「レジェンドと呼ばれる方々と同じ楽屋で過ごし、毎日を生きることに必死過ぎて記憶にない」と笑う。続く2013年はジャベールとの二役を演じたが、休演者が出たため、プレビュー公演から約1ヵ月半の間、大半の公演にバルジャン役で出演。「自分が倒れたら公演がクローズするという状況で、ただ役を務めることに集中した」。次こそそれぞれの役を深めたいと挑んだ2015年。「二兎を追う者は一兎をも得ず状態になるぞ、どうすんだ光夫!と自問自答の末、追い詰められている間に終わっていました(笑)」。そして前回の2017年公演で「やっと地に足付き始めた気がします」。それまで聖人的な印象で描かれてきたバルジャンは2013年から「泥にまみれた“犬”が正しい人になろうとする」新演出に。「当時演出のジョン・ケアードに言われた、常に第六感で神を感じているという点と、(彼を追う警部)ジャベールに銃口を向ける時は『本気で殺そうと思ってください』と言われたことは今も心に残っている」と言う。人間は常にやるかやらないかの選択に迫られ、生きている。「自分は真っ当に生きようとしてきたけど、これまでの選択に間違いはなかったのか。神よ!と、彼は最後まで苦悩し迷っている」。完成形を見せたくないとの思いもあり、「何度演じてもバルジャンはこうだと定まらない。常に光と影がうねっているイメージです」。大きな物語のうねりの中でさまざまな表情を求められる役者たち。「音程ひとつにも役の光と影の心情が完璧に表現されている」シェーンベルクの音楽など魅力は尽きないが、最大の見どころはバルジャンの不完全さにあると見る。「誰もがバルジャンの人生を疑似体験しているんじゃないかな。彼の人生に自分の人生を照らし合わせることで、自分自身も正しくあろうとか、変わろうとする。自分もそこに惹かれるし、この作品が長く愛される理由だと思います」。公演は4月15日(月)よりプレビュー公演の後、4月19日(金)に東京・帝国劇場で開幕。6月に愛知・御園座、7月に大阪・梅田芸術劇場メインホール、7月末から8月に福岡・博多座、9月に北海道・札幌文化芸術劇場hitaruで上演される。大阪公演のチケットは3月23日(土)一般発売開始。2月24日(日)から3月4日(月)までプレリザーブ受付。取材・文:石橋法子
2019年02月22日ミュージカル界のヒットメーカー小池修一郎が手掛ける作品群の中でも、若手の登竜門的印象の強いミュージカル『ロミオ&ジュリエット』が新キャストを交え、2年ぶりに全国3都市で上演される。前回同様、古川雄大とのダブルキャストで主演を務めるのが大野拓朗だ。大野は2011年の日本オリジナル版初演に衝撃を受け、そのまま3回も観劇。以来8年間、公演CDを自発的に聴き込み、ボイストレーニングを続けてきた。「それまで全曲好きという作品に出会ったことがなかったので初演を観たときは衝撃でした。例えば人気の高い『世界の王』はロックテイスト、結婚式で歌う『エメ』はゴスペル調、他にもシャンソン風の曲もあります。8年間聴き続けていても飽きない、老若男女に染み入る曲ばかり。世界一好きな作品です」。ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」チケット情報念願の初出演を飾った前回は、ロミオが登場する場面で拍手が起こり、連日立ち見席が出るなど盛況を博した。ただ、5年ぶり2度目のミュージカル出演でもあったため「表現としてはまだまだ」との思いも残った。その後は歌稽古を継続し、NHK連続テレビ小説『わろてんか』、大河ドラマ『西郷どん』など数々の映像作品でも自力を養ってきた。「鈴木亮平さんをはじめ諸先輩方の芝居に間近で触れ、いろいろとお話させていただく中で人間としても成長できた実感がある。最近、色っぽいと言われることもあり、今まで自分の辞書になかった言葉が加筆されたかなと。前回より余裕を持って取り組めるので、ダイナミックかつ繊細なロミオをお見せできるはず」と自信を覗かせる。ジュリエット役には木下晴香、生田絵梨花とのトリプルキャストで『わろてんか』のヒロイン葵わかなが初舞台を飾る。「ドラマでの葵さんはお母ちゃん的存在だったので、今回恋人役というのは複雑です(笑)。でも、彼女もミュージカルが大好きですし、精神的にも強く器用な方なので、歌稽古も回を追うごとにめきめき上達されています。また先日木下さんと歌合わせをしたときには、互いにこの2年での変化を実感したので、生田さん共々、どんな仕上がりになるのか楽しみです」。現場に入ると「すごく幸せな感覚になる」のも本作ならでは。「なぜかカンパニーへの愛が溢れ出し、自分は天使なんじゃないかと思うほど(笑)。きっとロミオがそういう人だったんだと思う」。今回は溢れる愛を客席にまで届けるつもりだ。「じつは前回、怖くて客席が見られなかったんですが、今回は観客と視線を合わせてひとりひとりを虜にしていこうかなと計画中。でもこの作戦、先に言わない方が良かったかな(笑)」。公演は2月23日(土)から3月10日(日)まで東京国際フォーラム ホールC、3月22日(金)から24日(日)まで愛知・刈谷市総合文化センター、3月30日(土)から4月14日(日)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演。4月12日(金)追加公演のチケットが3月16日(土)一般発売。取材・文:石橋法子
2019年02月08日現在ウィーン国立バレエ団芸術監督を務めるマニュエル・ルグリら世界的エトワールと、日本を代表する演奏家が競演する極上のバレエ&音楽コンサート『Stars in Blue』が全国4都市で上演される。ピアニストの田村響と共に演奏を担うのがNHK大河ドラマ『真田丸』(2016年)のテーマ曲も務めたヴァイオリニストの三浦文彰。史上最年少の16歳で世界最難関の呼び声高いハノーファー国際コンクールで優勝して以来10年間、国際的な活躍を続ける若き俊英だ。ダンスとの競演は、2016年の『月夜に煌めくエトワール』以来2度目となる。マニュエル・ルグリ「Stars in Blue」 Ballet&Musicチケット情報「アンサンブルは演奏家同士でもそうですが、言葉に頼らず互いの気配や目配せで合わせるのが理想だと思います。前回ご一緒した方々も最低限の打ち合わせだけで本番を迎えたので演奏中は即興的な瞬間も楽しく、さすがトップの方たちは違うなと思いました。今回もルグリさんとの共演を楽しみにしています」。2017年にはマリー・アントワネット王妃もその音色を耳にしたとされるアントニウス・ストラディヴァリウス1704年製作 「Viotti(ヴィオッティ)」を貸与され、演奏を聴きなれた身内からも「全然違う」と指摘されるほど、格段に演奏力が増したと実感する。「ヴァイオリンは楽器が人を選ぶというか、相性がある。それまで使っていたものも素晴らしかったので、このまま良い奥さんになってくれたらと思っていましたけど、ヴィオッティを弾いたらすぐ好きになって一瞬で浮気しちゃった(笑)。どんな小さい音も大劇場の奥まで届いて返ってくる実感がありますし、一番は今まで知らなかった音が鳴ります。より自分のやりたい表現の幅を広げてくれました」。今回、上演時間は約2時間。演目はマニュエル・ルグリとボリショイ・バレエの若き舞姫オルガ・スミルノワのパ・ド・ドゥによる世界初演の新作『OCHIBA~When leaves are falling~』を始め、新作『(仮)鏡の中の鏡』など選りすぐりのダンス6作品と、演奏家のみによる3曲で構成する。「ダンスも演奏も一石二鳥で楽しめます(笑)。有名な『瀕死の白鳥』は演出次第でガラリと印象が変わるので、今回オルガさんがどんな風に踊るのか楽しみ。オケの曲である『白鳥の湖』をヴァイオリンとピアノだけで演奏できるのも興味深い。僕にとって挑戦的なのは『ネル・コル・ピウ変奏曲』。その当時、信じられないくらいの超絶技巧で女性なら誰もが好きになるという映画にもなったパガニーニというヴァイオリニストが書いた一番の超難曲。アンコールなどで抜粋して演奏することはありますが、フルバージョンで演奏する機会は多くありませんので、ぜひ楽しみにしていただければと思います」。公演は3月8日(金)・9日(土)東京芸術劇場 コンサートホール、11日(月)大阪・ザ・シンフォニーホール、14日(木)宮崎・メディキット県民文化センター演劇ホール、17日(日)愛知県芸術劇場 コンサートホールにて上演。チケットは発売中。取材・文:石橋法子
2019年02月05日とんねるずの木梨憲武(56)が1月29日、自身のInstagramに相方・石橋貴明(57)との2ショット写真を公開し、反響を呼んでいる。木梨は自身のInstagramに、「偶然、西麻布」とコメントと共に、石橋と満面の笑みを浮かべている2ショットを投稿。続けて「とんねるず方面!ライブ方向?2019後半ぐらーい?」と、今年の後半にとんねるずでのライブの開催を示唆。また「カメラマン キナシナルーミ」と記し、木梨の妻・安田成美(52)が撮影したと明かした。最後に「お問い合わせは、井上信悟様・港浩一様どちらかーで」ととんねるずとゆかりの深い、テレビ関係者の名を綴りファンを喜ばせた。この投稿には3万6千を超えるいいね!と3,000件にも及ぶコメントが寄せられ反響を呼んでいる。ファンは「なんだろう、みんなこの写真みて安心するのは。成美さんありがとう!」「お二人の笑顔最高です木曜21時も戻ってきてほしいなー」と久しぶりの2ショットに喜ぶの声が殺到している。
2019年01月30日1974年の初演から、宝塚歌劇の代表作として脈々と受け継がれる池田理代子原作漫画の舞台「ベルサイユのばら」。来年45周年を記念して、2部構成のスペシャルステージ『ベルサイユのばら45』が東京、大阪で開催される。歴代の“ベルばらOG”が歌やトーク、コスチューム姿で名場面やフィナーレナンバーを披露する。初代オスカル役の榛名由梨、2006年公演オスカル役の朝海ひかるが、会見で意気込みを語った。「ベルサイユのばら45」チケット情報宝塚にコスチュームプレイが定着する前の時代。熱烈な原作ファンから「生身の人間には難しい」との声も上がる中、迎えた初日の舞台裏で榛名由梨は、「膝の震えが止まらなかった」と明かす。「でもね、バスティーユの場面以降出番がなかったオスカルが、軍服姿でフィナーレに出てきた瞬間、ドォーっと3階席から滝のような拍手喝采が沸き起こった。ここまでオスカル人気はすごいのかと、ご満足いただけたことへの喜びと、責任感を改めて感じました」以降の熱狂ぶりは、当時のグループ・サウンズ人気を凌ぐほど。移動時には海外アーティスト並みの警護が付き、千秋楽では警護に付いた警官が「役得だな」と漏らすほど。「想像を絶する量」のファンレターの返信には4年掛かったというのも、本当の話だ。役作りでは「ある程度男役が完成したところでの女性役(オスカル)ですから。近衛連隊長としての凛々しさを残しつつ、いかにアンドレへの女心を自然に表現するかには苦心しました」と榛名。一方、朝海ひかるは名作を受け継ぐ苦労を語る。「ベルばらとしてでき上がった振付や型を学んで、自分の体に落として演じることの難しさは想像以上でした。オスカル役が決まってからは上級生やスタッフの方々からそれぞれにアドバイスをいただき、皆さんのこだわりと作品への愛を感じました。退団して12年になりますが、今回はコスチューム姿で名場面を演じるので、皆様の期待に応えられるよう、身体も鍛え直して頑張ります!」来年創立105周年を迎える宝塚歌劇。榛名は歴史ある宝塚だからこそ実現できた、唯一無二の集大成的作品と太鼓判を押す。「コスチュームプレイの所作、ラブシーンの夢々しさ、戦場での凛々しさと儚さ、英雄でありヒロインでもあるオスカルの存在、すべてにスターを育むノウハウが詰まっている。宝塚にとっては教科書でありバイブルのようなもの。歴代のスターさんが一堂に会するので、この機会を見逃す手はないと思います」。朝海もこれほど豪華なOG公演は経験がないと声を弾ませる。「ファンの方はもちろん宝塚は観たことがないけど興味があるという方にも、楽しんでいただけると思います」公演は1月27日(日)から2月9日(土)まで東京国際フォーラムC、2月16日(土)から24日(日)まで梅田芸術劇場メインホールにて上演。チケットは発売中。取材・文:石橋法子
2018年12月27日神秘の聖剣エクスガリバー、これを引き抜いた者は王となるだろう――。神話時代のヨーロッパで生まれた有名なアーサー王伝説を元に紡ぎだす、新たな英雄譚。OSK日本歌劇団の最新作「円卓の騎士」が12月21日、大阪・近鉄アート館で開幕した。OSK日本歌劇団チケット情報王の息子として生まれながらも魔法使いマーリンに育てられた青年アーサーが、様々な試練を糧に真の王として覚醒していく様は、明快にして痛快。裏切りや隠された真実といったドラマや、聖剣を手にしたものが実力に関係なく最強になるという構図もゲーム的で面白い。ともすれば子供向けのおとぎ話に終始しそうな題材だが、そこはファンタジーの旗手、作・演出の荻田浩一。子供には痛快なヒーロー物語として、大人には示唆に富んだ奥深い作品として楽しめるよう手腕を発揮する。登場人物が出揃う1幕はテンポよく要点をまとめつつ、台詞では語りきれない役の心情やムードを歌やダンスが補い効果的。2幕では各キャラクターが真価を発揮する見せ場もあり、小気味良いエンターテイメントに仕上がっている。「僕はダメなんだ…」と両親の愛を知らず、どこか魔法使いマーリンに言われるがまま盲目的に人生を送る青年アーサー。王の証である聖剣エクスガリバーを手にした後も不安げな表情をのぞかせる。そんな揺れる主人公の心情を、主演の楊琳は澄んだ瞳で繊細かつ雄弁に物語る。なかでも、愛を知り加速度的に感情を解き放っていく2幕での変化は人が変わったよう。抜群の集中力で感情の振れ幅を表現している。ヒロインの王妃グウィネヴィアには舞美りら。アーサーの目を開かせる重要な役どころだ。舞美は登場から光を得たような存在感で場の空気を変えていく。愛嬌たっぷりのヒロインがアーサーと終盤、どんな愛の旅路を辿るのかも見所のひとつ。また、愛ゆえに混乱を招く好敵手ランスロットには翼和希。陽気で逞しい剣士ぶりが甘いマスクによくハマる。そして、アーサーの人生を左右するキーマンとして、魔法使いマーリンと湖の乙女の存在も外せない。マーリン役の愛瀬光は抑えた演技にも威厳を漂わせ、黒幕的キャラクターを造形。湖の乙女は作品の良心的ポジション。演じる朝香櫻子は、確かな表現力で観る者をファンタジックな劇世界へと誘う。人ならざるものの佇まいと幻想的な歌声はさすがのひとことだ。例えば、他国から異なる価値観を持ち込むヒロインや、魔術で生み出された騎士モードレッドには、移民問題や共生が進むAIの存在など、極めて今日的なテーマを深読みすることができる。と同時に「愛とは」「生きるとは」といった普遍的なテーマも届けられ、語り継がれる名作の所以を思わずにはいられない。とりわけ、アーサー王最後の台詞に託された、タイトルにも通じるメッセージは、あまりの純粋さに心洗われる思いだ。本編後にはプチショーも付いてお得感満載。家族での観劇にもぴったりの作品といえそうだ。公演は、12月27日(木)まで大阪・近鉄アート館にて、2019年1月24日(木)から27日(金)まで東京・博品館劇場にて上演。チケット発売中。取材・文:石橋法子
2018年12月25日断頭台の露と消えたフランス王妃、マリー・アントワネット。舞台のみならず映画、小説など多くの作品で描かれている王妃を、今までにない新たな視点で描く新演出版 ミュージカル『マリー・アントワネット』。2018年9月の福岡公演を皮切りに、全国3都市での上演を経て、2019年元旦開幕の大阪公演で大千穐楽を迎える歴史ロマン大作だ。王妃マリー・アントワネット(花總まり/笹本玲奈)と対峙する民衆側の娘マルグリット・アルノーを演じるソニンが大阪で会見、公演への意気込みを語った。ミュージカル「マリー・アントワネット」チケット情報大好評に終わった福岡、東京公演を振り返りソニンは、「1幕終了直後は、誰にも感情移入できないとの感想をよく耳にした」と明かす。「マリーはハチャメチャで自由奔放だし、でも人々の誤解からマリーは悪人扱いされて、そう思い込んだ民衆も民衆だし、一体何なんだこの作品はと。でもそう思って観ていると、2幕でその疑問が全部回収され、納得や共感が生まれてくる。とてもチャレンジングな作品だと思います」。マルグリット・アルノー(昆夏美とWキャスト)は、本作において唯一架空のキャラクター。マリーと同等の熱量で物語を牽引するもうひとりのヒロインでもある。「演出家ロバート・ヨハンソンから、マルグリットには民衆の一員としてお客さまを連れて、一緒に(物語世界を)旅してほしいと言われました。架空の人物ですが、当時の貧困にあえぐ民衆のリアルも表現しなければならないので、難しい。ずっと憎しみの負のオーラをまとい、幸せの瞬間が1ミリもない役なので、休日にはなるべく太陽の光を浴び、塩風呂に入るなどして邪気を払っています(笑)。普段の私は“人を許すこと”をモットーにしているので、自分と真逆の役を演じるのは本当に大変で。でもそれくらい入り込めているということでもあるので、素敵な役をいただいて役者としてはとても充実しています」。「マリーは革命の犠牲者だった」というかつてない視点で紡がれる本作。新たなマリー像との出会いも見ものだが、同時に優れた芸術がそうであるように、さまざまな解釈ができる“幅と隙”があるのも本作の魅力と語る。「ふたりの女性の物語でもあるので、特に女性のお客様は、マリーとマルグリットが互いに目を背けられない状況にあるのが分かるから、感じ入って心揺さぶられるようです。私の友人も『ミュージカルでここまで大泣きしたのは初めて』とパンパンに目を腫らして楽屋を訪れて、私の顔を見て再び泣くという(笑)。また、いま歴史として語られることも、実際に当時を見たわけではないので本当のところは分からないですよね。フェイクニュースが取り沙汰される現代にも通じる話ですが、あなたは何を信じ、どんな物差しで物事を見極めるのか。『本当の真実とは何か』と強く提示しています。そこは多くのメッセージを持つ本作のなかでも特に、誰の心にも響く濃厚で力強いメッセージのひとつだと思います」。大阪公演は、2019年1月1日(火・祝)から15日(火)まで梅田芸術劇場メインホールにて上演。チケットは発売中。取材・文:石橋法子
2018年12月19日女優の石橋杏奈(26)が、プロ野球・楽天の松井裕樹投手(23)と13日に結婚したことを、自身のインスタグラムで同日、報告した。石橋は、2ショット写真を添えて、「私事ですが本日12月13日にかねてよりお付き合いしておりました東北楽天ゴールデンイーグルスの松井裕樹選手と入籍いたしましたことをここにご報告させていただきます」と報告。「彼の野球に対するまっすぐな姿勢や素直で無邪気な性格に惹かれ傍に居たいと思うようになりました」とつづった。続けて、「彼の活躍が2人の幸せでもあるので 日々刺激をもらいながら私も出来る限りのサポートをしていきたいと思っておりますこれからは夫婦としてどんなときも手を取りあい思いやりの気持ちをもって共に歩んでいきたいと思います」と決意を記し、「まだまだ未熟者ではありますが温かく見守っていただけたら嬉しいです」と呼びかけた。
2018年12月13日感性豊かな表現力で独自の存在感を放つ実力派女優、石橋静河。凛とした佇まいが印象的な彼女が、ノーブルなシャツスタイルを披露します。衿の重なりが絶妙!同系色のシャツをレイヤード。生地の風合いや表情にこだわり、身につけた時の心地よさにも定評のある『トゥジュー』のシャツ。グレイッシュブルーのシルク混シャツは柔らかなシワ加工が美しく、一枚で着てもレイヤードしてもきれいに着られる薄手の生地感が秀逸。ラフに袖をまくって抜け感を演出して。シャツ¥36,000中に着たシャツ¥39,000(共にトゥジュー/トゥジュー 代官山ストア TEL:03・5939・8090)バングル¥18,000(平松保城/ギャラリー ドゥ ポワソンTEL:03・5795・0451)取り入れやすいデザインながら、シルエットで差がつく一枚。シンプルな白シャツも、ドロップショルダー&ワイドスリーブで一気にオリジナリティが加速。股上の深いハイウエストパンツで、懐かしさを感じるスタイルに仕上げるのが気分。黒ベルトで全体を引き締めて。シャツ¥29,000(マービン ポンティアック/オーバーリバー TEL:03・6434・9494)パンツ¥19,000(ヤエカ/ヤエカ アパートメント ストア TEL:03・5708・5586)ベルト¥9,800(マスター&コー/マッハ55リミテッドTEL:03・5413・5530)ピアス¥16,000(kazuko mitsushima/ギャラリー ドゥ ポワソン)ボタンを大胆に開けて、羽織りとして活用。オーバーサイズのシャツをラフに羽織って、Tシャツを覗かせて。ショルダーベルト付きのワイドパンツやスニーカーなどカジュアルなアイテム同士でも、モノトーンでまとめればモードな雰囲気に。シャツ¥24,000パンツ¥43,000(共にGARMENT REPRODUCTION/OKURA TEL:03・3461・8511)Tシャツ¥12,000(エキップモン/サザビーリーグ TEL:03・5412・1937)ネックレス¥80,000(yoriko mitsuhashi/ギャラリー ドゥ ポワソン)スニーカー¥17,800(ワクワ/アナトミカ 東京 TEL:03・5823・6186)異なる素材も、ワントーンならシックな趣。ほどよくハリのあるコットンシャツに、光沢感のあるシルクスカートをセット。同系色なら素材のコントラストも派手になりすぎず、大人びた印象に。イエローを配したクリアピアスで、ポップなアクセントを加えて。シャツ¥16,000(BLUE BLUE JAPAN/OKURA)スカート¥60,000(ユーモレスク TEL:03・6427・2353)ピアス¥14,000(kazuko mitsushima/ギャラリー ドゥ ポワソン)いしばし・しずか1994年生まれ。東京都出身。女優。数々の映画や舞台、ドラマで活躍。NHK連続テレビ小説『半分、青い。』での演技も話題に。来年の公開待機作に映画『二階堂家物語』『いちごの唄』『21世紀の女の子』『楽園』ほか。※『anan』2018年12月12日号より。写真・松本直也スタイリスト・高品逸実ヘア&メイク・廣瀬瑠美(by anan編集部)
2018年12月09日女優の紺野美沙子が主宰する朗読座、2019新春公演『源氏物語の語りを愉しむ-紫のゆかりの物語』が関西で上演される。「初めての方、久しぶりの方、ツウの方にもご満足いただける源氏物語です」と紺野が言うように、はじめに平安時代文学が専門の早稲田大学教授・陣野英則をゲストに招いたトークセッションで物語の背景や魅力に触れる解説付き。2部の朗読では、光源氏とその子孫らの70余年4世代に渡る壮大な物語から、彼が最も愛した女性「紫の上」にスポットを当てる。実は長年『源氏物語』には触れてこなかったと明かす紺野が会見で意気込みを語った。「源氏物語の語りを愉しむ―紫のゆかりの物語」チケット情報「私は慶應義塾大学文学部・国文科の出身なので、物語に詳しいだろうと思われがちですが、じつは膨大な資料を読むのが嫌で専攻を決めるとき、真っ先に除外したのが源氏物語でして……」。その後、本格的に触れたのは漫画『あさきゆめみし』が最初だった。そんな紺野に2017年、中学時代の恩師から一報が入った。早稲田大学名誉教授・中野幸一が『正訳源氏物語本文対照』全10冊を刊行し、記念の朗読公演をしてくれないかという依頼だった。「恩師の頼みですから、しぶしぶお引き受けしました(笑)。それまで源氏物語といえば、恋の遍歴が書かれた物語という印象が強くて苦手でした。次から次へと浮き名を流して嫌だわって(笑)。でも中野先生の本を拝読して、自分はほんの一面しか見ていなかったんだなって。実際には男女の愛憎だけでなく、愛と裏返しの罪や人間の愚かさ、弱さなどが色褪せずに描かれていた。朗読座では、耳で聞いてストンと理解できない演目は睡魔に襲われる要因にもなりますので選びませんが、中野先生の現代語訳は原文に忠実な上、ですます調なので聞きやすい。本当に当時の宮廷に仕える女房たちが、語りかけているような感覚になると思います」朗読座では毎回映像や音楽を使った「眠くならない」演出も持ち味のひとつ。今回は二十五絃箏・中井智弥とパーカッション・相川瞳の演奏、さらに時代ごとに描かれた錦絵の映像が朗読を彩る。「中井さんは二十五絃箏の豊かな音色で、紫の上の心情や時の流れを幻想的にも官能的にも演奏してくださる。相川さんはNHK朝の連続テレビ小説で有名になった『あまちゃんバンド』で紅白にも出演された方。才能溢れた方々の力を借りて、私の朗読も一気にパワーアップという感じ。お正月でもあり華やかに分かりやすく、誰もが楽しめる公演にしたいなと思います」公演は2019年1月4日(金)に兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール、1月5日(土)に滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール中ホールにて上演。チケットは発売中。他、岡山・勝央、兵庫・加東公演あり。取材・文:石橋法子
2018年12月03日