“超ど級・パワフルミュージカル”と銘打つ宮本亜門演出の舞台『ウィズ-オズの魔法使い-』が、KAAT 神奈川芸術劇場 ホールで9月28日(金)に開幕する。主役のドロシーを演じるのは、AKBプロジェクトメンバー186名の中からオーディションで同役を勝ち取ったAKB48の増田有華。前日27日には同劇場にて公開リハーサルが行われ、宮本、増田のほか、キャストのISSA、森公美子、小柳ゆき、陣内孝則が囲み取材に応じた。大竜巻によって魔法の国・オズに飛ばされてしまったドロシー(増田)は、優しいおじさんとおばさんの待つカンザスに帰るべく、脳がないかかし(ISSA)、心がないブリキ男(良知真次)、勇気のない弱虫ライオン(エハラマサヒロ)とともに、何でも願いを叶えてくれるという魔法使いのウィズ(陣内)に会うため旅立つ。ウィズに出会った4人は、願いを叶えるためにある条件を出される。それは西の悪い魔女イブリーン(森)を退治すること。見事、イブリーンを退治した一行が喜び勇んでウィズのところに戻ると、そこにはドロシーたちの期待を裏切るような事実が待っていた。「稽古場で、もっともっとおもしろくと追求していったら、想像以上のエネルギーが出てしまった。自分でも驚いているくらい」と宮本が語るように、舞台には喜びや楽しさといった前向きなエネルギーがあふれている。特筆すべきは歌とダンスだ。1曲1曲から壮大さが感じられ、たとえ楽しい曲であっても胸にグッとくる感動がある。このパワーと感動の源泉は、出演者たち自身が、何より作品を楽しんでいるからだろう。きゃりーぱみゅぱみゅなどを手がける増田セバスチャンが美術監修した世界観は、まさに魔法の国。ISSAが「誰もが楽しめるテーマパーク」と言うように、照明や舞台装置、衣裳など、舞台上のありとあらゆるものがカラフルで、とにかくかわいい。次から次へと、見る者を飽きさせない展開もまさにテーマパークだ。増田は「演じていて毎回、新鮮な気持ちでドキドキできる。カンパニーの仲の良さや活気が舞台に出ていると思う。ぜひこのパワーを皆さんにぜひ伝えたい」と意気込みを語った。森が「子どもミュージカルというより完全に大人用。というか、ちょっと落ち込んでる人用ですよね。これを観たら一気に気分が上がりますから」と言うように、老若男女、とにかく元気になりたい人は必見の舞台だ。KAAT 神奈川芸術劇場 ホールにて9月30日(日)まで上演された後、10月6日(土)・7日(日)に大阪・梅田芸術劇場 メインホール、10月18日(木)から28日(日)まで東京国際フォーラム ホールC、11月3日(土・祝)から5日(月)まで愛知・中日劇場にて上演。取材・文:大林計隆
2012年09月28日ふたりの俳優と1台のピアノだけで展開するミュージカル『スリル・ミー』が、東京・天王洲 銀河劇場で7月15日(日)に開幕する。昨年9月の日本初演、今年3月の追加公演を経て、興行規模は拡大し、キャストも2組から4組に増えた。同じ芝居が1年以内に3度上演されるのは、異例のケースといって間違いない。躍進の理由はどこにあるのか、稽古場で探った。ミュージカル『スリル・ミー』公演情報登場人物である「私」と「彼」は、19歳の法科大学院生。「彼」は、ニーチェの“超人”思想に傾倒しており、世間に対する優越感を得たいがために、完全犯罪を目論む。一方、道連れに選ばれた「私」は、「彼」に対する同性愛的愛情から、それを拒むことができない。放火遊びに始まった犯罪はエスカレートし、ついには誘拐殺人にまで発展してしまう。この日の稽古では、「私」を良知真次、「彼」を小西遼生が演じていた。オーディションで選ばれた初参加ペアながら、演出の栗山民也ら2度の上演を経験してきた頼もしいスタッフ陣に囲まれているせいか、ふたりとも落ち着きのある演技をみせ、表現に迷いを感じさせない。良知は、話し方と姿勢だけで54歳と19歳を巧みに演じ分けるなど、丁寧な表現が光り、小西は、冷徹な人物像を自分のものとして、異常な言動にリアリティを与えている。階段を中央に配しただけのシンプルな舞台美術。そこで様々に動き回るふたりの位置関係が、「私」と「彼」の心の距離を示すようで面白い。特筆したいのは、視線の一つひとつが生む劇的効果だ。たとえば、なかなか目を合わせないふたりが初めて真正面から見つめ合う瞬間は、キスシーン以上に衝撃的だった。1924年にアメリカで実際に起きた誘拐殺人事件をベースにして、2005年にNYのオフ・ブロードウェイで初演。その後、世界各国に上演地を広げ、今やその数60都市におよぶ。描かれている事件が特異でありながら、作品が広く受け入れられているのは、「私」の心情に共感しやすいからだろう。愛するより愛されたい。相手の心をつかみたい。それは誰にとっても当たり前の感情だ。また、誰かと秘密を共有したことのある人なら、その絆が生む甘美さを思い出すに違いない。良知×小西組のほか、田代万里生×新納慎也、松下洸平×柿澤勇人の初演キャスト2組が登場し、韓国版を200回以上演じてきたチェ・ジェウン×キム・ムヨルが日本初登場を果たす。7月15日(日)から29日(日)まで天王洲 銀河劇場、8月8日(水)に大阪・サンケイホールブリーゼで上演。
2012年07月10日美しい自然に恵まれた沖縄の離島、渡名喜島を撮影地に、最愛の人を亡くした悲しみを乗り越えて生きる少女、そして父親との絆を描いた感動作『群青愛に沈んだ海の色』。6月27日(土)、本作が公開初日を迎え、主演の長澤まさみ、佐々木蔵之介、良知真次、田中美里、そしてメガホンを取った中川陽介監督が初回上映後の舞台挨拶を行った。会場は満席で立ち見が出るほどの盛況ぶり。ファンの声援を浴びて登場した長澤さんは、「こんなに会場が人で埋め尽くされるのを見て、みんなで渡名喜島で暑い中一生懸命撮影をした甲斐があったと思いました」と晴れやかな笑顔を見せた。本作で佐々木さんと親子を演じたが、「蔵之介さんの眼差しがすごく強くて、見られてることが多々あったんですけど(笑)」と明かすと、言ってるそばから隣から熱い視線が長澤さんに…。長澤さんは照れ笑いぎみに「そこから父親の威厳や強さを感じて、本当に頼りがいのある父親でした」と語った。逆に佐々木さんはというと、長澤さんの美貌を「太陽光線がすごく差している中で、なんでこんなに爽やかで涼しげに出てくるんだろうと、めちゃくちゃ綺麗やなーと思って、カルピス(長澤さんCM出演中)飲みたくなりました」とユーモアを交えて称え、会場を笑いで包んだ。そして観客に向けて「『お父さん、映画観にいこう』と言ったら、泣いて喜ぶと思います。ぜひ親子一緒に観に来てください」とすっかり父親モードとなっていた。良知さんと田中さんは、それぞれ映画の重要なアイテムである、サメの歯のネックレスとサンゴのネックレスを身につけて登場。本作が映画初出演となった良知さんは「みなさんと一緒にこの映画を作れたことが僕の人生の宝物になりました。みなさんに出会えてすごく幸せでした」と感慨深げに語った。長澤さん扮する凉子の母親を演じた田中さんは、「私もとうとうそんな年になったのかなと感慨深くなったんですが、まだ(凉子が)赤ちゃんの頃なので(笑)。でも、まさみちゃんが映画に登場したときは、母親のような気持ちになって泣けてきました」と胸中を明かした。約1か月の合宿生活ですっかり打ち解けた様子の一同。佐々木さんは「主役である青い空、海、緑や白浜、あの自然の中でやれたことがとっても幸せで、島民の方たちと一緒になって作った映画。みんなに愛される映画になってくれたら嬉しいです」と島への愛着を感じさせた。最後は、来る7月7日の七夕の節句に先立ち、それぞれ短冊に綴った願い事を披露し笹に飾った。長澤さんは物語のテーマに因んで「世界中の親子の絆が強くなりますように」。佐々木さんは「またこんな素敵な映画に出会えますように」と威勢よく読み上げると、続けて「一人でも多く『群青』を観てくれますように」(良知さん)、「『群青』大ヒットで監督が嬉し泣きしますように」(田中さん)とそれぞれ映画の大ヒットを祈願した。そして、ラストは中川監督。「『群青』が人の心に届きますように」と想いを込めると、会場から盛大な感動の拍手が贈られた。『群青愛に沈んだ海の色』は有楽町スバル座ほか全国にて公開中。■関連作品:群青愛が沈んだ海の色 2009年6月27日より有楽町スバル座ほか全国にて公開© 2009「群青」製作委員会■関連記事:深い愛に包まれた大人の女性を体現長澤まさみが語る「雰囲気で伝える」こと【どちらを観る?】夏、沖縄へ誘う――『群青愛が沈んだ海の色』&『真夏の夜の夢』「毎年、沖縄で仕事してます」長澤まさみが美ら島沖縄大使に主演作『群青』アピール長澤まさみとの父娘役に、佐々木蔵之介「こんなかわいい娘がいたらたまらない!」
2009年06月27日サンゴ礁が生息する美しい海と緑豊かな沖縄の小さな島で、海人の父の下、天真爛漫に育った少女・凉子。だが愛する者を失ったとき、彼女は深海の底のような悲しみの世界に…。しかしやがて、その深海にも一筋の光が差し込む――。『世界の中心で、愛をさけぶ』でその人気を不動のものとして以降、近年では「ラスト・フレンズ」や「ぼくの妹」など、母性を感じさせるまでの大人の女性に転身を遂げた長澤まさみ。間もなく公開される『群青愛が沈んだ海の色』で、彼女は凉子という一人の女性の絶望、そして再生を見事に体現した。どのようにこの難役と向き合っていったのか、話を聞いた。沈黙の中で心情を見せることの難しさ「雰囲気で伝えること」――。深い悲しみから言葉を失ってしまった凉子を演じるにあたり、長澤さんにとって最大の挑戦であり難関となったのは、沈黙の中でその心情の変化を見せることだった。「台詞がない分、台本を読んでて、何でこうなるんだろうと思うところが多かったです。初めて映画のお話をいただいたときに監督から画コンテを見せていただいたのですが、そのときに凉子に対して抱いた印象が撮影を通してどんどん変わっていきましたし、彼女が自分自身と闘っているという雰囲気を出すのが難しかったですね」。「何でだろう?」。台本に描かれる凉子に対して絶えず繰り返されたその問いかけは、やがて凉子自身が内に秘める思いと交差していく。母の遺したピアノを弾くシーンで見せる、悲しみを湛えた瞳がその全てを物語る。「恋人の一也(良知真次))が死んでしまったとき、凉子は何でそうなってしまったのか分からない。答えをずっと探し、前向きに生きようとするけど見つからないまま、自分の中で堂々巡りをしていたと思うんです。ピアノを弾くシーンで、風が入ってきたときに『お母さん』と呼ぶ場面があるんですけど、何でこれがお母さんなんだろうと台本を読んだときは分からなくて。撮影前に監督に聞いたら、凉子にとって母親の形見であるピアノがお母さんなんだよ、凉子はいつもお母さんに自分の気持ちを訴えかけていると言われたんです。その答えにたどり着くまでに時間がかかりました。でも、そう言われたときに自分の中で凉子の気持ちの筋道が立ったんです」。言葉ではなく、雰囲気で見せる演技ということにかけては、父親役の佐々木蔵之介さんから学ぶものもあった。「蔵之介さんって目ヂカラがすごく力強いじゃないですか。よく視線を感じるなと思って見ると、ずっと見られているということもあったんですが(笑)。その目ヂカラから父親の威厳や揺るがない父親の強さ、そして優しさと包容力をすごく感じましたね。蔵之介さんが演じている父親というのは、理想の父親像なんじゃないかと思うほどでした」。撮影が行われたのは、沖縄本島から船で2時間以上かかる小さな楽園、渡名喜島。真夏の1か月にわたる撮影の日々を、長澤さんは名残惜しそうにふり返る。「やっぱり一番大変だったのは、暑さでしたね。これまでもたくさん暑い国に行ってきましたが、いままで一番暑かったかもしれません。撮影中は、男性陣は海人の訓練で現地の漁師さんと釣りにも行っていたんですけど、私は役柄もあってずっと部屋にこもっていたので、見ていてちょっと羨ましかったですね。部屋ではずっとDVDを観たり、自分を見つめ直す時間になっちゃってましたが、そういう環境も凉子の役作りには生かせました。ただ、せっかく沖縄に来たし、海で泳ぎたいと思っていたので、夕方になってから女性スタッフのみんなと海に入ったり、終わりがけにみんなで一緒にお酒を飲んだのが楽しかったですね」。「誰かに寄りかかることも大事なんだなと思った」全てを背負い込み、自分を追い詰めてしまう凉子だが、それは彼女が責任感や愛情に満ちているゆえ。「自分も凉子みたいに考えすぎてしまうところがある」と共感を口にする長澤さんだが、凉子という役を演じることは自分自身を見つめる作業となった。「人それぞれ違うと思いますが、悩んだときの出口というのは誰かに気づかせてもらわないとなかなか見つからないと思うんです。凉子にとっては、それを教えてくれるのがお母さんであって。この作品で思ったのが、誰かに寄りかかることは生きていく中で大事なんだなということでした。大人になっていく中で、私自身、何でも自分で出来なきゃと思っていたんですけど、いろんな人の意見を聞いて成長していかないと、どんなことも前に進む道はないし、出口も見つからないと思いました」。ちなみに、自身が落ち込んだときの解決法は…?「最近車を買ったので、落ち込んだときは運転してます。本当は落ち込んだときは運転してはいけないって教習所で習ったんですけど(笑)」。時折あどけない笑顔を見せながらも、真剣な眼差しで慎重に言葉を選んで話す長澤さん。最後に、22歳の胸に秘める“女優”としての覚悟を語ってくれた。「どんな作品も、そのときにしか出せない自分の力を出すだけで、そのときに“もっとこうやれば良かった”という反省や欲はいっぱい出てくるんですが、そういうのがあるからこそ次もまた頑張ろうと思えます。一つの仕事をずっと続けていくというのが、一番難しいじゃないですか。先輩の俳優さんたちを見ていて、“何でこんなに撮影が大変なのに続けていられるんだろう”と思うことはありますが、やっぱりみなさん“次はこうできる”“まだまだだな”という思いがあるからこそ、次も頑張れるのだと思いますし、自分も同じなのかなと思います。続けることの、大変さと大事さを感じますね」。(photo:Shunichi Sato)■関連作品:群青愛が沈んだ海の色 2009年6月27日より有楽町スバル座ほか全国にて公開© 2009「群青」製作委員会■関連記事:【どちらを観る?】夏、沖縄へ誘う――『群青愛が沈んだ海の色』&『真夏の夜の夢』「毎年、沖縄で仕事してます」長澤まさみが美ら島沖縄大使に主演作『群青』アピール長澤まさみとの父娘役に、佐々木蔵之介「こんなかわいい娘がいたらたまらない!」
2009年06月26日