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ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。今回のお相手は、音楽家・君島大空さん。第2回目のテーマは「泣きながら制作した二人のデュエット曲」です。あんたがプライベート・スーパースター!ゆっきゅん(以下、ゆ):私が君島くんに、一緒に曲を作ってほしいとお願いしてできたのが「プライベート・スーパースター」。制作時のことも話したいね。君島大空(以下、君):どんな曲がいいかを考えるために函館旅行ではカラオケに行ったんだよね。二人で歌うことに意味がある曲ってなんだろうって。矢野顕子の「ひとつだけ」とか歌ったね。ゆ:あと君島くんはミスチルが好きだから、最後に二人で「くるみ」を歌ったんだよね。あのときはJ‐POPパワーに圧倒された。一緒にいた阿部(はりか)が「こんなこと言うの変だと思うけど、函館山の夜景よりも綺麗だ」って言ってたから「そんなこと言うのは変だよ」って真面目に答えた。君:二人の景色が見え始めた感じ。ゆ:今年のベストアクトだった。君:函館旅行の後、YouTubeでお互いがカッコいいと思う音楽を聴かせ合ったりもしたね。ゆ:青春すぎてハズいんだけど、「二人でやるならカッコいい曲がいい!」ということだけ決まってたので、私たち的なカッコいい曲をたくさん聴いたんだよね。君:B’zの「愛のバクダン」が良すぎて、これくらいカッコいい曲作るぞ!って思った。ゆ:しばらくして最初にデモを聴かせてもらったとき、もう走り出しちゃったよ。そして、泣いた。君:その日のうちにゆっきゅんが曲を聴いてワンコーラス分の歌詞を送ってくれて、それを読んで俺も泣く、みたいな。ゆ:それからは二人とも、ずっと泣いてます。君:本当にそう(笑)。ゆ:君島くんがこんな爽やかな曲を作ることにも驚いたし、これを私のために作ったと思ったらヤバすぎて。その感情が冷めないうちに一気に作詞と向き合いました。君:最初から具体的にどんなテンポでどのキーで、みたいな技巧的な話はまったくしていないんだけど、「聴いてる間その曲のことしか考えられない」とか抽象的な取り決めだけはあったんだよね。ゆ:曲に対して見える風景のイメージを画像で共有したりね。君:映画『溺れるナイフ』で小松菜奈と菅田将暉がバイクを2人乗りするシーンが送られてきた(笑)。ゆ:あと私と君島くんと阿部の3人の写真を制作時は常に置いてた。君:それは俺もしてた。ゆ:それでフルのデモが送られてきたときに、大変な曲ができたぞと思って、また泣いたよね。君:そして自撮りの泣いている動画が送られてきた(笑)。あの夜の感情の発露はすごかったよ。きみしま・おおぞら1995年生まれ。ソングライター、ギタリスト。『午後の反射光』でデビュー。12/4から東名阪にて君島大空合奏ツアー「笑う亀裂」が決定。ゆっきゅんとのデュエット曲「プライベート・スーパースター」では作曲・編曲を務めた。ゆっきゅん1995年、岡山県生まれ。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。セカンドフルアルバム『生まれ変わらないあなたを』が発売中。インスタ、Xは@guilty_kyun※『anan』2024年10月9日号より。写真・幸喜ひかり文・綿貫大介(by anan編集部)
2024年10月09日ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。今回のお相手は、音楽家・君島大空さん。第1回目のテーマは「仲良くなった経緯が謎!“魅力で”出会った二人」です。ゆっきゅん(以下、ゆ):君島くんと仲良くなったのは1年前だよね。映画『暁闇』の監督・阿部はりかと3人で、今では旅行に行く仲。私にとってこの一年は、君島くんと出会ってから2ndアルバムを完成させるまでの一年でした。君島大空(以下、君):不思議だよね。本当は阿部さんもここに呼んだほうがいい(笑)。ゆ:阿部と君島くんは映画を通して知り合っていて、私と阿部も前から友達で。たまたま君島くんと七尾旅人さんのライブで阿部に再会したんだよ。二人とも後ろの方にいたんだけど、アンコールで我慢できず「阿部行くよ!」って誘ってステージ前方に走り出してた。阿部も同じ気持ちだったみたいで、フジロックの一番でかいステージのために山から駆け降りたような興奮の中、あの瞬間から二人の“青春”が始まったんだよ。そのあと初めて君島くんに挨拶した。君:それからしばらく、僕と阿部さん、僕とゆっきゅんのそれぞれで会う機会はあったんだけど、3人揃って会う機会はなくて。ゆ:別の君島くんのライブにまた阿部と行ったときにやっと3人で話したんだよね。その帰り、私は絶対旅行に行きたいと思って。突然「旅行行かない?」って口走ってた。でも、言ったそばから、なんだか一度きりの旅行になることに耐えられなさすぎて「2回旅行行かない?」って言ったの。その2か月後には函館に着いてた。君:仲良くなった経緯が謎すぎて、人に説明できない(笑)。ゆ:よく君島くんのファンに「どこで出会ったんですか?」って聞かれるんだけど、「魅力で出会いました」と答えてる。音楽を通して出会ってから、ずっと作品や創作とともにある感じがする。君:別に仕事の話をするわけじゃないんだけど、3人とも常に創作の頭を回している人だからね。函館にも曲作りに行ってるわけじゃないけど、一曲できそうだった。ゆ:函館は特別だったね。君島くんは行く前から「帰りたくない」って言ってたよ。映画『きみの鳥はうたえる』のロケ地の、五稜郭近くのまねきねこに行ったりして。君:僕、普段絶対カラオケ行かないんです。基本的に誰とも何もしたくない人間で、音楽だって誰かの影響を受けたくないから一人で作っているし。でも、ゆっきゅんとは行けるわ、と思って。本当に友達がいなかったのに、僕の中で“青春の巻き返し”が始まった。ゆ:君島大空がカラオケに行くって、もう革命ですよ。私は自分に「人をカラオケに連れていく才能」があることを発見しました。きみしま・おおぞら1995年生まれ。ソングライター、ギタリスト。『午後の反射光』でデビュー。12/4から東名阪にて君島大空合奏ツアー「笑う亀裂」が決定。ゆっきゅんとのデュエット曲「プライベート・スーパースター」では作曲・編曲を務めた。ゆっきゅん1995年、岡山県生まれ。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。セカンドフルアルバム『生まれ変わらないあなたを』が発売中。インスタ、Xは@guilty_kyun※『anan』2024年10月2日号より。写真・幸喜ひかり文・綿貫大介(by anan編集部)
2024年10月02日ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。漫画家・冬野梅子さんとの対談を終えたゆっきゅんが、前回までを振り返って言葉を綴ります。光っているように見える“この一曲が好き”という想い。作品を愛読している冬野梅子さんとはいつかゆっくり話してみたいと思っていながら、トークイベントに来てくれたり、ライブに来てくれたりしていても、いつも気づいたら帰られているので、今回やっと話すことができて念願の時間でした。冬野さんは以前私の「NG」という曲を好きだと言ってたことがあって、私は「NG」が好きと言ってくれた人のことをよく覚えているんです。DIVAについて、エイミー・ワインハウスのファンではないけど「Tears Dry On Their Own」という曲が好きだという話をしていたのがなんかすごく愛しくて。対談の中でも話しましたが、私は「ファンじゃないけどこれだけ好き」みたいなのって、なんか力を感じるというか、好きが光っているように見えるというか、かっこいい!って思うんですよね。ヒット曲だけ知ってる、とはまた別の趣がある感じがする。たとえば私は中学生の時に平井堅さんのラジオで古内東子さんの歌を初めて聴いて、それは「心を全部くれるまで」というアルバム曲でした。その曲が入ったアルバム『Hourglass』を借りて、「心を全部くれるまで」にどハマりしていたんですが、大人になってから、それは代表曲とか人気曲って感じでもたぶんない(名曲ではあります!)ことにふと気づいて。なんかそれって、芸術と二人きりになれているような感じがして好きな現象なんですよね。自分の話長くなってしまった。あと、上京者にはやはりシンパシーを感じてしまうんですよね。田舎育ちという点にコンプレックスはそんなにないんですけど、やはり田舎からここへ来た人にしか見えてこない「東京」の実像があって、私たちはそれを作品に積極的に映そうとしてしまうところがある。これからも東京のことは考えていたいし、慣れずに見ていたいし、歌っていくんだろうって改めて思いました。冬野さんと喋っていると、漫画作品の中の描写にもよくあるような内省的で客観的な感情のディテールへの鋭い分析のようなものがすらすらと出てきたり、さらっと偏見(それを自分でも偏見だとわかっている感じで笑)が出てくるのも、らしさを感じて私は楽しかったです。今度は映画に誘わせてください。はあ、冬野さんの読者に、私のアルバム聴いてほしいなあ!ゆっきゅん1995年、岡山県生まれ。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。セカンドフルアルバム『生まれ変わらないあなたを』が好評発売中。インスタ、Xは@guilty_kyun※『anan』2024年9月25日号より。写真・幸喜ひかり文・ゆっきゅん(by anan編集部)
2024年09月25日ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。漫画家の冬野梅子さんとの対談をお届けします!第4回となる今回のテーマは「仕事と創作のジレンマ。退職の爽快感は最高!」です。それでも最高傑作を更新したい!ゆっきゅん(以下、ゆ):冬野さんの作品って、自分自身ができれば感じたくないみじめな気持ちや生きづらさみたいなのを、毎回緻密に描かれていますよね。冬野梅子(以下、冬):漫画に描いているくらいの、つらくみじめな気持ちに普段からどっぷり浸かっているわけではないんですけど、あえて重く脚色して言い表しているところはあります。客観的に見るとどうなのか知りたいというか。ゆ:知りたい気持ちなんだ?冬:例えば私は今こんな過剰な気遣いをされちゃってるよね、とか。それで凹むのではなく、実際はありがとうって感じているんだけど、漫画に描く時は、私は「この場の厄介者である」というみじめさをちょっとひどめに残しておきたいというのはありますね。ゆ:実際の自分よりも卑屈に残しているんですね。冬:現実はそこまでひどくないと思いたいところもあって。だから私的には、ポジティブに現実を過ごすためのネガティブな作品という位置づけなんです。ゆ:だからみんな身につまされる思いで読んじゃうんですね。冬:たまに強めの整体を受けたいみたいな時、ありません?(笑)ゆ:たしかに(笑)。冬野さんの作品の登場人物や読者さんって、私のターゲット層にも近いのかなと思って。「疲れた人全員」に向けて作品を届けたくて、退職の歌を作ったりもしたし。冬:退職っていいですよね。私、何度か転職をしているんで、辞める時の爽快感って結構わかるんですよ。何かあったら「辞めればいいや」って思える気持ちって、支えになるんですよね。ゆ:辞めるって決めてからの仕事の気楽さってすごいですよね。冬:最高ですよね!ゆ:冬野さんは「こういうのを描かなきゃ」って常にあります?冬:それは最初で枯渇しちゃうものだなとすごく思います。私の中のベストは、最初に出した短編。あれはなかなか超えられない。ゆ:超えてるんじゃないですか?冬:あんなじゃりっとして嫌な漫画はもう描けないかな。あの時は会社員をしていて、自分がまだ作品を作れていないジレンマみたいなものもあったから。それに漫画にしたいテーマや伝えたいことを考える時間がそれまでの人生分あって、それが凝縮されているから今振り返ってもやっぱりいい作品なんですよ。下手で稚拙だけど、気持ちは超熟成されているので。ゆ:一番伝えたいことが1作目に出ますもんね。それを作品にしてくれてありがとうございます!ふゆの・うめこ2019年「マッチングアプリで会った人だろ!」で「清野とおるエッセイ漫画大賞」期待賞を受賞。近作に『まじめな会社員』『スルーロマンス』など。現在Web メディア「よみタイ」でエッセイ「東北っぽいね」を連載中。ゆっきゅん1995年、岡山県生まれ。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。セカンドフルアルバム『生まれ変わらないあなたを』が発売されたばかり。インスタ、Xは@guilty_kyun※『anan』2024年9月18日号より。写真・幸喜ひかり文・綿貫大介(by anan編集部)
2024年09月18日歌手、アイドル、作詞家、アーティスト…どの肩書にも収まりきらない唯一無二の“DIVA”ゆっきゅん。今年活動を始めて10周年。ananはじめ雑誌連載を多数抱え、ポストされるつぶやきは働くアラサーの心を掴む。ゆっきゅんとは何者か、話を聞いた。――小さい頃から歌手を目指していたのでしょうか?ゆっきゅん:小学校低学年のとき、将来の夢は“エイベックス”ってカタカナで書いたことを覚えています。イメージとしては浜崎あゆみさんのことだと思うのですが、ジャストAYUになりたいというわけではなくて…。姉がいたので影響を受け、5歳くらいから音楽に触れて歌うことは好きでした。Perfumeとかも元々好きでしたが、中学2年生の頃にモーニング娘。にハマってアイドルに開眼して。世代的にAKB48とかも全盛期で。でも当時私は岡山県に住んでいたので、好きなアーティストたちは47都道府県ツアーでも組まない限りやってこない。音楽はテレビやCDやPCの中にあるものという感覚で、同じステージに立ちたいと思うこともほぼなかった。それに、好きな女の子アイドルグループには自分はどうやっても入れないということも、もはや考えないくらいわかっていたし。別に女の子になりたいわけでもなかったし、ただそこに自分の枠はないんだと自然と理解していました。別段それが悲しいとかつらいとかもなく、普通に振りコピとかは全力でしていて。で、部活して、勉強して、高校は自由な校風の進学校へ通って。だから、東京に出て歌手になってやるんだという夢や信念を幼少期からずっと抱いていたというわけでもなく、都内の大学に進学というごく普通の理由で上京をしました。――それでも大学1年の2014年にはゆっきゅんとして初ステージを踏み、その後2016年には男女2人組アイドル〈電影と少年CQ〉も結成。活動の場を確実に広げていきます。ゆっきゅん:東京へ出たら面白い人がたくさんいるんだと勝手に思っていたんです。高校時代の私は、文化祭のクラス演劇で『下妻物語』をやりたくて、脚本を書いてクラス全員にプレゼンしたり、一人6役ででんぱ組.incを踊ってみせたりと、まあ学校の人気者という感じではあったんですけど…でもそれは素人の輝きってだけだと自分では思っていたんです。東京に来たらそれより衝撃を受ける圧倒的な人たちと出会えるはずだ、と。でも大学でも断然、自分が面白かった。アイドル業界もその頃からちょっと飽和状態で、何をやってもいいような空気感が漂っていた。それなら「…じゃ、私やる?」と(笑)。自分が好きなようにやってもいいなら私も“アイドル”ができる。学業と並行してじわじわと表舞台に立つようになりました。――ステージに立って変わったことはありましたか?ゆっきゅん:自分が好きな格好をして人前に立ったり、歌を歌ったり、何かしらの自分らしさを発信することで他の誰かにいい影響を与えることができるんだと実感したときに、あ、自分はこれがやりたかったんだと確信しました。それはXのポストひとつでも同じです。短い文章でもそれが誰かの希望や心の解放のきっかけになれるなら、自分のような人間が光り輝いているところを見せなければいけない、と。私が思春期の頃にはそんなロールモデルがいなかったんです。自分が10代のときにこういう人がいてくれたらもう少し楽だったかもと思うので。今はまだ小さいですが、私のような存在が地方に住んでいる繊細な中高生たちにまで届け!と思っています。感度高くすでに好きでいてくれる方々も当然大事ですが、まだまだ届いてない人に知ってもらいたい。それは大きなモチベーションのひとつです。「DIVA ME」で自分にしか描けないことがあると知った。――そして2021年にセルフプロデュースで〈DIVA Project〉を始動。過去のインタビューで「私にとってDIVAは、孤独なまま立っていて、人々に勇気を与え続けてくれる存在」と語っています。まさに誰かの光になりたいと願うゆっきゅんの集大成のような活動の始まり。ゆっきゅん:ですね。まっさらなプロジェクトを立ち上げたというより、私が26年間生きてきた中で散らばっていた思いや感情をわかりやすくまとめた“ツイートまとめ”みたいなものが「DIVA ME」です。だからこの曲を出したときに「わかる!」と多くの方に反応をいただけたことがうれしかった。お披露目の配信のあとすぐにこの一曲について長文でnoteを書いてくれた方とかもいて。ああ今までとは違う速度でみんなの心に届いていると思えた。「DIVA ME」ではじめて自分が歌詞を書く意味があると実感できたんです。J‐POPが好きでこの世の中にいい曲がたくさんあることは知っていたから、私があえて歌詞を書かなくてもいいかもと思っていたけれどそうじゃなかった。自分しか見てない景色があって、自分にしか描けないことがある。それを歌詞に落とし込んでいいんだ。それならいっそ宇宙一の作詞家になりたい、と思うようになりました。――飾らない言葉で聴く人に時に寄り添い、時にエンパワーしてくれる歌詞はいつも高く評価されています。WEST.やでんぱ組.incなどに作詞提供をされていますし、その才能を、いきものがかりの水野良樹さんやBase Ball Bearの小出祐介さんも絶賛。歌詞を書くときに大事にされていることはありますか?ゆっきゅん:日常的なことを落とし込んで描く手法はハロプロを手がけてきた、つんくさんと大森靖子さんの影響が大きいのではと思います。でも、それも一片でしかなく、これまで聴いてきたJ‐POPや見てきたもののすべてが私のリファレンスで。ただ、どのエッセンスがどの組み合わせで出てしまうのかというキュレーションが少し独特だから、みなさんに面白いと思っていただけるのかな、と自己分析しています。あとは、友達が大切ですね。おしゃべりが好きで、そこで得たことは歌詞になりやすいです。先日もラブサマ(ラブリーサマー)ちゃんと話をして、いい歌詞とは個人的で、普遍的で、嘘がなくて、誰にでもわかる言葉で新しいことを歌っているものだと、質問されてすぐに考えを言えた。歌詞らしい歌詞じゃなくていい。人生に対し、自分の言葉で素直にいたい。Xにポストするように、普段しゃべっていることに引き寄せながら、さまざまなかけがえのない人生を描いていきたいです。――活動10周年を記念してリリースされたセカンドアルバム『生まれ変わらないあなたを』はまさにそんな人生のオムニバス映画のような一枚です。全12曲の中にさまざまな場面があり、聴く人が私のことだと共感できたり、励まされたり。心の支えとなるポップ・アルバムだなと思いました。ゆっきゅん:ありがとうございます。椎名林檎の『勝訴ストリップ』、浜崎あゆみの『LOVEppears』…歌姫のセカンドアルバムはたいてい名盤です。それに倣い、私もこのセカンドは、絶対にいいアルバムにしたいと思いました。ひとつ柱になったのは、ファンのみなさんの「『DIVA ME』を出勤時に聴いています」という言葉。人生は出勤のみにあらず…と思いまして。自分の心を押し上げ鼓舞してくれるダンスミュージックはもうあるなら、次は休憩時間とか退勤のときにも聴いてもらえるものがあってもいいのかな、と。そこでいろんな人のいろんな気持ちをストーリーテリングするようなアルバムを想像しました。サウンドも打ち込みだけじゃなく生音も取り入れて、聴く方も、歌う私にとっても自由度の高い一枚にしたいと思いました。退勤するときにも聴ける自由度の高いアルバム。――退職したばかりの心許ない自由を謳歌する「ログアウト・ボーナス」や友達の結婚をうれしくも寂しく感じる「シャトルバス」など、聴く人の人生に入り込んでくる歌詞がぐっと響きます。ゆっきゅん:アルバムの中で3回も“友達の結婚”が歌われてるんですよ。大人の友情をまっすぐ描きたいなと思いました。でも今回のアルバムでは自分の話だけじゃないものも描きたくて、失恋ソングやルームシェア解消ソングも書きましたし、1曲ごとに方向性が違います。どれか1曲でも1フレーズでもこれは自分のためのものだと思ってもらえたら、それが正解です。――君島大空さんとデュエットされた「プライベート・スーパースター」もバンドサウンドで突き走る壮大な友情ソング。二人の旅行を切り取った飾らないMVも話題ですね。ゆっきゅん:今回は歌詞の着想だけでなく、実作業の面でも同世代の友達の力をたくさん借りています。作曲だけじゃなくあらゆる場面で協力してくれた君島くんや、えんぷていの奥中康一郎くん。友達と泣いて笑って作業できたこともとてもいい経験でした。大手レーベルに所属しているわけでもなく、メールを書いてオファーするところからすべて自分ひとりでやっているので。私の自己実現にこんなに多くの方が付き合ってくれるなんて、みんな本当に優しいです。――それはやっぱりゆっきゅんがひとり頑張っているからではないですか。どこにもよらずかけがえのない孤独をキラキラと歌う姿はとても現代のDIVA的です。ゆっきゅん:孤独とは向き合う日々ですね。「ログアウト・ボーナス」の歌詞に“生まれ変わらないあなたを私が見てる”とあるのですが、それは見ているくらいならできるかな、と思ったんです。みんなにひとりステージに立つ私を見ていてほしいと思うし、私もみんなの抱える孤独を見ていて、言葉に、歌にしていきたい。ひとり悲しいときもあるけれど、でも音楽はいつも私を救ってきてくれました。だから自分がやる音楽もそういうものでありたいです。発売中の10周年記念セカンドアルバム『生まれ変わらないあなたを』は4か月連続先行配信された「ログアウト・ボーナス」「シャトルバス」「だってシンデレラ」「プライベート・スーパースター」を含む全12曲収録。ジャケット撮影は岡﨑果歩によるもの。アルバムを引っ提げて東名阪を巡るバンドセットツアーも開催される。ゆっきゅん1995年5月26日生まれ、岡山県出身。青山学院大学大学院文学研究科比較芸術専攻修了。2021年から「DIVA Project」を始動。これまでにアルバム『DIVA YOU』などをリリース。柚木麻子、竹中夏海とのTBS Podcast『Y2K新書』は現在シーズン2を配信中。小誌のほか『SPUR』『TV Bros』『新潮』などで連載を持つ。※『anan』2024年9月18日号より。写真・Nae.Jayインタビュー、文・梅原加奈(by anan編集部)
2024年09月14日ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。漫画家の冬野梅子さんとの対談をお届けします!第3回となる今回のテーマは「ドキュメンタリーと人生は『物語』の原本になる」です。冬野梅子(以下、冬):この頃、ドキュメンタリー番組をよく見るんです。クリエイティブ系の人がみんなドキュメンタリーを見ていることに気づいて、ショックを受けて。物語を作る人が物語を見ていないんだ?って。ゆっきゅん(以下、ゆ):わかる。みんなドキュメンタリー見てるのなに?って思ってます。冬:でも今はネームを描いている時にテレビをつけてると、深夜にやってるドキュメンタリーに見入っちゃうんですよね。慰霊碑を守る市民の闘いとか、障がいがある方が一人暮らしをする話とか。ゆ:市井の人々を追った、骨太のジャーナリズムのやつですね。冬:見てると考えが広がるんですよ。よく聞く「この海を守りたい」っていう台詞の、ちゃんと本物が見えてくる気がする。ゆ:フィクションでたくさん見てきた大本というか、「本人」がそこにいるってことですね。冬:原本みたいな。この人の言う「海を守りたい」は私で言うなんだろうと考えたりすると、ネームが描きやすくて。だからちゃんとみんなドキュメンタリーを見てるのかなって思いました。ゆ:それ面白い話ですね!冬野さんは友だちを漫画のキャラクターとして出したりしますか?冬:友だちそのものは出てこないけど、普通にいる人を描きたいから洋服、コーディネートとかは参考にします。だから友だちはぎょっとするかも(笑)。作品を優先する冷徹さというか、本当に自分はひどい人だなと思います。ゆ:作品が自分より上位にあるから、従事するしかないやつだ。冬:納得いかないものを残せないんです。「芸術の名のもとに」なんでもしていいとは思わないし、そこには批判的な気持ちはちゃんとあるんですけどね…。ゆ:私も友だちとの体験を歌にしたことがあります。以前、友だちの結婚式に行ったときの景色や人を思い出しながら「シャトルバス」という曲を作って。友だちは好きだし結婚に憧れる女性も好きなんだけど、いろんな気持ちになってしまうことも、見逃したくなくて。冬:ゆっきゅんさんにとっては描かざるを得なかったことですよね。ちゃんと実体験が生きてる。ゆ:私は普通に自分の人生が原本なんですよ。友だちとの会話とか。冬:そうですよね。一番はそれ。ゆ:私の場合、友だちとのLINEで自分がパッと返した言葉とかを歌詞にしたりします。頭の回転が速い時に出た言葉が、案外パンチラインだったりするんですよ。ふゆの・うめこ2019年「マッチングアプリで会った人だろ!」で「清野とおるエッセイ漫画大賞」期待賞を受賞。近作に『まじめな会社員』『スルーロマンス』など。現在Webメディア「よみタイ」でエッセイ「東北っぽいね」を連載中。ゆっきゅん1995年、岡山県生まれ。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。9月11日にセカンドフルアルバム『生まれ変わらないあなたを』をリリース。インスタ、Xは@guilty_kyun※『anan』2024年9月11日号より。写真・幸喜ひかり文・綿貫大介(by anan編集部)
2024年09月11日ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。漫画家の冬野梅子さんとの対談をお届けします!第2回となる今回のテーマは「上京して感じる東京のすごさとノスタルジーとの向き合い方」。ゆっきゅん(以下、ゆ):冬野さんの漫画を読んでると、すごい東京を感じるんですよね。冬野梅子(以下、冬):渋谷パルコとか出しがちです。東京の象徴じゃないですけど、大人の田舎者が目指す場所として必要な存在で。ゆ:私も岡山出身の田舎者なのでなんかわかります。冬野さんは東北出身ですよね。いつ上京を?冬:大学進学のタイミングで。ゆっきゅんさんは青学に通ってたじゃないですか。青山を通るたびに、ここかーって思ってました。ゆ:私は、幼稚園から大学までここに通う人がいるのかって思いながら青学に通ってました。内部生って独特の空気感があるんです。上品なんだけど嫌みがなくて、本当に映画の『あのこは貴族』みたいな感じです。冬:私もそういう方にお会いすることがあります。コンプレックスをあまり感じてないというか。ゆ:わかります。悩みもハイクラスで「東京育ちの人」を感じる。冬:上京してきた人って東京のことを描くじゃないですか。人生で最初に受ける大きな出来事がそれだから、こすり続けるみたいな。ゆ:特に高校卒業後に上京すると、物心が芽生えるのはほぼ東京に来てからみたいな。冬:本当にそう思います。例えばもともと東京にいる同級生が18歳だとしても、私はその時まだ東京では0歳だから。そこからさらに18年かけて、ようやく東京に馴染んだなと思います。やっとおしゃれで浮かなくなったなとか。ゆ:でも私は上京してしばらく、地元の同級生に会うのは無理でした。みんなあの頃は楽しかったって感じの話をしたがるんですけど、その時はなんかノスタルジーとの向き合い方がわからなくて。思い出話とか好きじゃなかったんです。だって東京の方が楽しいし。でも最近になって落ち着きました。思い出話は最高で、自分は本当はそういう話が好きというか、ノスタルジスト的な側面を認められるようになりました。冬:話違うかもですが、ゆっきゅんさんがちゃんと今でも浜崎あゆみを好きって言い続けていることに衝撃を受けたんです。なんか、10代の頃好きだったものって、10代の浅はかさと一緒にして捨てられちゃうものだと思ってて。ゆ:私はたぶん好きなものがあまり変わらなくて、かつ黒歴史的なものがそんなにないんだと思います。いいと思い続けて、好きなものが増えていく感じなんです。だから、そういう意味では曲は懐かしいもの、みたいな感じにはならない。現役でずっと好きです。ふゆの・うめこ2019年「マッチングアプリで会った人だろ!」で「清野とおるエッセイ漫画大賞」期待賞を受賞。近作に『まじめな会社員』『スルーロマンス』など。現在Webメディア「よみタイ」でエッセイ「東北っぽいね」を連載中。ゆっきゅん1995年、岡山県生まれ。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。9月11日にセカンドフルアルバム『生まれ変わらないあなたを』をリリース。インスタ、Xは@guilty_kyun※『anan』2024年9月4日号より。写真・幸喜ひかり文・綿貫大介(by anan編集部)
2024年09月04日ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。今回からは、漫画家の冬野梅子さんとの対談をお届けします!たまたまラジオで聴いた一曲が良すぎて泣いてしまった。ゆっきゅん(以下、ゆ):冬野さんはライブなどに来てくれているのは知っていたんですけど、話す機会がなかったのでうれしいです。冬野梅子(以下、冬):トークイベントとかもいつも遠くからひっそり観ているタイプで…。ゆ:私が加藤ミリヤの「ディア ロンリーガール」のカバーをして、九九みたいに覚えた「マリアメイアイカオリ…」を披露したライブも来てくれたって聞いてびっくり。古参面していいやつ。冬:でも真正面に座ると、なんかすごい緊張しますね…。ゆ:いきなりですけど、DIVAの話からしたいなと思って。冬:私、DIVAについて考えたことなかったんですよね。ゆ:私のライブを観てるのに、何も考えなかったんですか!(笑)冬:DIVAって言われると海外のイメージしか湧かなくて。ゆ:海外のDIVAは好き?冬:エイミー・ワインハウスの伝記映画が今年日本でも公開されますよね。それで最近また「Tears Dry On Their Own」をよく聴いているんです。亡くなった後ですけど、たまたまラジオで流れていて。その時は歌詞の内容もわからなかったんですけど、すごくいい曲だなと思って泣いちゃったんですよね。それから頻繁に聴くようになって、歌詞も調べたら良くて。その1曲しか知らないんですけど、今また改めてマイブームです。だから私の今のDIVAはエイミー・ワインハウスかもしれない。ゆ:1曲だけ好きっていいですよね。誰かの“この歌手のこれしか知らない”って曲、すごい好きなんです。別にファンとかじゃないけど、この曲は好きみたいな思い入れのある話は毎回しびれちゃう。冬:本当にこの曲だけで、他の曲は聴かないんですよね。ゆ:ラジオが出合いなのもいいですね。普段は仕事中に音楽を聴いたりしますか?冬:描く時は全然聴きません。でも、『まじめな会社員』の第1話を描いていた時は、柴田聡子さんの「すこやかさ」をずっとリピートしてました。曲のイメージを記憶して、最終話に反映させたくて。音楽を聴くとそっちに集中しちゃってあまり漫画を描けないので、普段は結構テレビをつけながら漫画を描いてるんです。ゆ:テレビはいいんですか!?冬:はい、『午後のロードショー』と『5時に夢中!』はずっとルーティンになってます。ゆ:視覚を奪われません?冬:基本は音だけ聴いてます。ゆ:テレビのBGM化!でも気になるシーンは見ちゃいそう(笑)。ふゆの・うめこ2019年「マッチングアプリで会った人だろ!」で「清野とおるエッセイ漫画大賞」期待賞を受賞。近作に『まじめな会社員』『スルーロマンス』など。現在Web メディア「よみタイ」でエッセイ「東北っぽいね」を連載中。ゆっきゅん1995年、岡山県生まれ。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。9月11日にセカンドフルアルバム『生まれ変わらないあなたを』をリリース。インスタ、Xは@guilty_kyun※『anan』2024年8月28日号より。写真・幸喜ひかり文・綿貫大介(by anan編集部)ゆっきゅん10th ANNIVERSARY TOUR「生まれ変わらないあなたを私が見てる」が9/30に代官山SPACE ODDで開催!チケットの申し込みはこちらから!
2024年08月28日ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。ラッパーのvalkneeさんとの対談を終えたゆっきゅんが、前回までを振り返って言葉を綴ります。作りあげられたアルバムは膨大な連絡の集大成。valkneeさんとは活動の距離もリスナーも近いように勝手に感じてきましたが、こうしてゆっくり話すのは初めてで、やっぱり共感できることばかりなのでした。私は今のところセルフプロデュースでDIVA活動をしていますが、作曲はしないしトラックも作らないので、自主映画の主演兼監督兼プロデューサーみたいな感じで、どうにかお金を集めながらあれもこれも自分からお願いして、判断をして、連絡をしまくっていくという日々です。曲によって頼む人も関わる人も違うし、作曲家、レコーディングのバンドメンバー、レコーディングエンジニア、ミキシングエンジニア、マスタリングエンジニア、写真家、衣装デザイナー、スタイリスト、グッズの業者、ライブハウス……これでも最少人数にしてやってるけど、私たちを繋ぐものは、“私の連絡”。この世は連絡で出来ています。この世に放たれたアルバムたちはどれも、数えきれないほどの人間たちの連絡が積み重なって完成しているのです。私はセカンドアルバムを制作中、連絡のプレッシャーに追われていたので、valkneeさんも「アルバム制作の本体は連絡」という認識を持っていることに心底救われました。そんなの音楽を聴く人にはどうでもいいことだとはわかっている(私が音楽を聴く時に連絡を想像したりはしない)けど、なんかすごく嬉しかったし“自分ももう少しだぞやるぞー”と思えました。もちろんやりたくてやってることだからvalkneeさんも私も制作を楽しんでいるに違いないけど、似たようなめんどくささを近い温度で抱えながらやっているアーティストがいると感じられることは、クソデカ支えになります。私はまだ私のことしか気にかけられないけど、valkneeさんは下の世代とかシーンのことを考えて行動しているのがほんとにかっこいいなと思います。7月に開催していたWWWとWWW Xでのライブとか、Spotifyのプレイリストを作っていることとか。自分も、まあDIVAの後輩が出てきていない問題(?)もあるけど、自分より若い人や後に出てきた表現者を引っ張っていくような存在になっていけたらいいな……とvalknee先輩を見て尊敬しました。あと年1でアルバム出したいって言っててかっこよかった。絶対キネマでツーマンしたいので頑張ります。唯一無二で突っ走るだけでは張りがないしDIVAシーン形成したいなー!ゆっきゅん1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。インスタ、Xは@guilty_kyun※『anan』2024年8月14日‐21日合併号より。写真・幸喜ひかり文・ゆっきゅん(by anan編集部)*ゆっきゅん×君島大空 『プライベート・スーパースター』Music Videoが公開中!
2024年08月21日ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。ラッパーのvalkneeさんをお相手に迎えた最終回。今回のテーマは「目標は東京キネマ倶楽部でツーマンライブの実現」です。キネマ倶楽部の階段を下りたい!valknee(以下、v):私も来年にはアルバム出したいと思ってる。いろいろ動き始めないと。ゆっきゅん(以下、ゆ):本当は年1ペースでアルバムを出したいですよね。MVとかもちゃんと作りたいけど、予算との兼ね合いがあって大変。予算があれば一からお花畑とか作ったりしたい。v:私もお花畑で寝たい!(笑)ゆ:で、予算だけもらって、全部自分で好きなことをやりたい。やらされるんじゃなくて。v:だよね。私たちって、曲作りもそれ以外も、いろいろ全部一人でできると思われてる説はある。ゆ:本当それです。valkneeさんには共感できることが多すぎて!v:活動の悩みも一緒だね。ゆ:自分のやりたいことが音楽だけじゃなくて、アートワークとかMVとか見せ方まで含めて結構明確にあるから、自分が納得した形で表現できる体制がいいですよね。いったんやりたい放題に言える状態ってすごいことだと思う。v:私、制作したアートワークを1年寝かしてたことある(笑)。世の中の人はもっとファストにいろんなものを消費してるのかもしれないけど、私の生活のタイム感はそこまで速くなくて。ゆ:私、1作目のアルバム制作が遅れたときに、valkneeさんの1年寝かせた話を聞いて安心したのを覚えてます(笑)。v:人間関係もゆっくり関係値を高めてる感じがするな。ゆ:作品にすべてを出しているから、ちゃんと作品を聴いてくれている人だったら大切にできる気はする。v:ちゃんと歌詞にフィールしてきてくれている人とかね。ゆ:自分のことをアウトプットしてるからこそ、それに理解がある人とは齟齬がないんですよね。v:そう思うと自己開示って大事だよね。自分はこういう人ですって伝えておくと、わかってる人が集まってきてくれる。ゆ:無駄なコミュニケーションが発生しないからいいですよね。v:チーム作りもそうでありたい。これから活動の幅が広がると、関わってもらう人も増えるからね。ライブの舞台監督とか。ゆ:そうですね。いろんな人に関わってもらって、大きいキャパの箱でライブしたい。v:東京キネマ倶楽部でツーマンライブするのを目標にしない?ゆ:やりたい!お互いが大きく成長して、演出とかもちゃんと考えられるようになって。v:できることも仲間も増えた暁に『anan』で語ってた夢を実現。カッコよすぎるでしょ!バルニー2019年に音楽活動を開始。今年4月に1stフルアルバム『Ordinary』をリリース。そのほかにも、和田彩花らアイドルへの楽曲提供、映画『#ミトヤマネ』の主題歌・音楽ディレクションも担当するなど幅広く活動中。ゆっきゅん1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。インスタ、Xは@guilty_kyun※『anan』2024年8月7日号より。写真・幸喜ひかり文・綿貫大介(by anan編集部)
2024年08月07日ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。ラッパーのvalkneeさんをお相手に迎えた第三回目のテーマは「アルバム制作で一番大事なタスクは“連絡”?」です。アルバム制作で一番大事なタスクは「連絡」?ゆっきゅん(以下、ゆ):私は自分がやりたいことを専門的な人に協力してもらいながら曲とか衣装を作ってもらってるんですけど、valkneeさんも同じですか?valknee(以下、v):私もそう。コンセプトやリファレンスを共有して。ときには何色っぽい感じとか季節のイメージで伝えたり。でもそれって曖昧だし、コントロールフリークなところもあって、注文の仕方は悩む…。ゆ:伝え方めちゃ迷いますよね。v:そう、伝え方が一番ムズい。私の言語化がよくないんだけど、制作のやり取りでの返信で悩んじゃって。最近はコミュニケーションで使える音楽用語も覚えてきたからだいぶましになってきたけど、まだまだ時間がかかってる。ゆ:セルフプロデュースだとしても専門的なことはよくわかってないから、私も人に何かをお願いするときに気後れしちゃうことがあるんです。でもそんなとき「じゃあ誰が歌うの?私が歌うの!」みたいな気持ちにマインドセットしてます。自分で自分の「DIVA ME」って曲に励まされます。v:自分を鼓舞してるんだね。ゆ:毎回、人にどう思われるかな、これで伝わってるかなとか思うけど、自分の中ではそこをこだわらないと自分の歌として出せないから。でも、伝え方は難しい。v:それが一番大変。納得できないままのものが世に出ちゃうと、後で聴いたときにそのことばかり思い出しちゃったりして。ゆ:超お気に入りじゃないと世には出せない。v:そうだよね。だから絶対納得するまでやったほうがいい。ゆ:私、今アルバム制作してるから肝に銘じます。てかアルバム制作、マジで大変じゃないですか?v:マジで大変すぎる!私の場合、2年くらい頭の片隅にありながら放置してた曲とかあるよ。ゆ:忘れてるわけじゃないけど。v:絶対気に入った形じゃないと出したくないみたいな、放置してきた曲がたくさんある。ゆ:もう制作は終盤なんですけど、アルバム作りって本当に“連絡”すぎて。各所に連絡することが多くて、連絡に追い詰められるというか…。v:もはや連絡が制作の本体じゃない?ゆ:そうなんです。ずっとこの話をしたかったからわかる人がいてくれて嬉しい。どれだけ連絡すればアルバムできるんだろう(笑)。v:やることリストを作るだけで疲れちゃうよね。ゆ:私の場合、To Doリストが連絡する人の名前で埋まってます。バルニー2019年に音楽活動を開始。今年4月に1stフルアルバム『Ordinary』をリリース。そのほかにも、和田彩花らアイドルへの楽曲提供、映画『#ミトヤマネ』の主題歌・音楽ディレクションも担当するなど幅広く活動中。ゆっきゅん1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。インスタ、Xは@guilty_kyunゆっきゅんの最新リリース曲『だってシンデレラ』はこちらでチェック※『anan』2024年7月31日号より。写真・幸喜ひかり文・綿貫大介(by anan編集部)
2024年07月31日■これまでのあらすじ同棲中のブン太との間に子どもを授かり、籍を入れた主人公・マチ子。しかし、家事も生活費もきっちり折半にしたいというブン太の執念が、つわり中のマチ子を苦しめます。無職になり、半分ルールをやめたいと話すと、ブン太は離婚か半分生活を続けるかの二択を迫ります。赤ちゃんのために我慢することにしたマチ子は、家事をすべて担うことになりますが、ブン太はクレーマーのように執拗に粗探しをするように。ブン太への愛が完全に冷めたある日、産科の前でマチ子を会社から追い出した張本人・ミナミに遭遇します。マチ子が休職した矢先に妊娠が発覚したミナミは、冷たい態度をとるマチ子に苛立ち、「ずっと不幸になればいいのにと思っていた。つわりが終わらないのは恵まれているからだ」と罵ります。その後、「悪態をついたのはホルモンバランスが崩れているせいだから許して欲しい」と言い出すミナミ。人を見下すようなその笑顔がブン太と重なり、マチ子は「一生許さない」と言い切りました。■こんなに侮辱されるなんておかしい…!■笑顔でミナミを突き放す■ミナミが最後に言いかけた言葉が気になり…ここまで侮辱されるのはどう考えてもおかしい…。ブン太の洗脳にかかりかけていたマチ子でしたが、ミナミという生活を共にしているわけではない第三者の介入によって、はっきりと確信できました。自分は不幸せだという本音を隠し、「あんたより幸せよ」とミナミに言い放ったマチ子は、その場を後にしました。まさかマチ子に冷たくされるとは思っていなかったのか、すがるように呼び止めるミナミ。ようやく反省したかのようにも見えましたが、そう簡単に性根が直るはずもなく…。最後に何か言いかけたミナミの言葉が気になったマチ子がミナミのSNSをチェックすると、そこには悪口がびっしりと書き込まれていたのでした…。次回に続く「半分夫」(全118話)は12時・18時更新!
2024年07月27日ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。ラッパーのvalkneeさんをお相手に迎えた第2回目をお届けします。“部屋出れない系”DIVA、Tommy february6の魅力。ゆっきゅん(以下、ゆ):今、私Tommy february6のリバイバルを企てていて。valknee(以下、v):Tommy heavenly6じゃなくてfebruary6のほうね!私は両方好き!ゆ:valkneeさんは、Tommyラバーズですもんね。v:そう、私にとってのDIVAの一人はTommy。やっぱ文化系のDIVAが好きなのかも。ギャル憧れはあったけど、身近に感じるのは“室内系”の女性なんだよね。ゆ:“部屋出れない系”ですね。v:そうそう。当時はここまで言語化できてなかったけど、夜になって日光がなくなってから動き出す感じの女性たちのことは自分ごとに考えやすかったかな。それに、好きになったのもベストアルバムが出たぐらいのタイミング。ゆ:それまで何を聴いてました?あ、もともとラップの前にバンドやってたんですよね?v:そう、軽音楽部だったしバンドが好きだった。一番最初は中学生の頃にBUMP OF CHICKEN、ASIAN KUNG-FU GENERATION、RADWIMPSとかを聴いてたな。でもやっぱり女性がやっているバンドを求めていて、そのあとはJUDY AND MARY以降の女性ボーカルのロックバンド、例えばSHAKALABBITS、ketchup maniaとかを追ってた。『Zipper』や『CUTiE』みたいな青文字系ファッションのロックパンクがすごい好きで、シンパシーを感じてた。やんちゃではあるけど重ね着とかデコラティブな格好をしてる、みたいなのが一番自分にフィットしてたから。ゆ:それってルール破るとかじゃないほうの自由ってことですか?v:そういう感じかも。ゆ:制服は着るけど、着崩し方で個性出す!みたいな。v:人とかぶるのは嫌で、前髪をギザギザに切ったりして(笑)。今でもUKIちゃんになりたいとか全然思うよ。やっぱ女性アーティスト好きだなあ。Chara、YUKI、椎名林檎も聴いてたし、ハロプロとかアイドルも好きだし。ゆ:HIPHOPじゃないんですね。v:出自は全然違って。HIPHOPは大学生の頃で、tofubeats、PUNPEEが現れて、メガネとチェックシャツでラップしていいんだってわかってから。それまではチェーンぶら下げて「YO!」みたいなのがラップだと思ってたから“入門”するきっかけがなくて。だから後追いでいろんな曲を漁ったり、歴史を知ったり、みたいな。TSUTAYAに行って。ゆ:めちゃわかる!私も地元のTSUTAYAとかつての渋谷TSUTAYAが青春です!バルニーラッパー。2019年に音楽活動を開始。今年4月に1stフルアルバム『Ordinary』をリリース。そのほかにも、和田彩花らアイドルへの楽曲提供、映画『#ミトヤマネ』の主題歌・音楽ディレクションも担当するなど幅広く活動中。ゆっきゅん1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。インスタ、Xは@guilty_kyun※『anan』2024年7月24日号より。写真・幸喜ひかり文・綿貫大介(by anan編集部)
2024年07月24日ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。今回からのお相手はラッパーのvalkneeさん。第1回目をお届けします。活動の「シーン」は自分で作っていくしかない。ゆっきゅん(以下、ゆ):valkneeさんは恩人なんですよ。私がソロデビューした直後に、valkneeさん主催イベントに出たくてTwitterのDMを送ったんです。それが初コンタクト。valknee(以下、v):出会いのきっかけ、それだ!2021年にライブありDJあり物販ありの、縁日みたいなイベントをやったとき。連絡をくれて、出てもらったんだよね。その前からもちろんゆっきゅんのことは知ってたけど。ゆ:それまでソロでライブに出ることはほぼなかったんです。私が所属する「電影と少年CQ」のライブはアイドルの現場ばかりだけど、別に私のフォロワーってアイドル好きだけじゃないから。あのイベントで初めてライブを観てくれた人が多かった気がします。v:ファンがあぶり出された。ゆ:それにイベントのおかげで、アーティスト仲間が一気に増えました。田島ハルコさんとか。v:私的にはゆっきゅんって活動歴が長いイメージがあったからすでに仲間が多いんだと思ってた。ゆ:いないいない。むしろ今も音楽シーンに呼ばれないので。v:私もほぼないなぁ。なさすぎて、頑張って自分でシーンづくりの旗振り役をやってきた感じ。今でも超オルタナティブにやってるよ。最近ワンマンとかやってみて、やっと小さな成果みたいなものが見えてきたところ。ゆ:すごい!てか私の場合、DIVAシーンってマジでないんですよね。あるとしたら『FNS歌謡祭』とか「a-nation」になっちゃうんで。ライブシーンがもう“ド地上”だから。地上というか、もはや天空というか、もう“飛天の間”みたいな感じだから(笑)。v:たしかに、DIYでDIVAをやる人はなかなかいないからね。ゆ:100人キャパレベルのライブハウスで、一番私が豪華な衣装を着てると思います…。v:マジで間違いない。ゆ:明日さいたまスーパーアリーナに出ろと言われても出られる衣装でいる、っていうのが自分のポリシー。楽屋で衣装に着替えると共演者から歓声が上がるんです。v:演者も憧れる衣装だよね。ラッパーは“私服がクソ派手でそのままステージに上がる”みたいな感じが美学な気がする。派手じゃない人もいるけど、ありのままでステージに上がるリアルさみたいなのが良しとされてる。そこを私はもっと華美にしたいんだよね。ゆ:したいですよね。規定のレールに乗らなくてもいいし!v:そうなんだよね。“DIVA系ラッパー”路線でいきたい!バルニーラッパー。2019年に音楽活動を開始。今年4月に1stフルアルバム『Ordinary』をリリース。そのほかにも、和田彩花らアイドルへの楽曲提供、映画『#ミトヤマネ』の主題歌・音楽ディレクションも担当するなど幅広く活動中。ゆっきゅん1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。インスタ、Xは@guilty_kyun※『anan』2024年7月17日号より。写真・幸喜ひかり文・綿貫大介(by anan編集部)
2024年07月19日ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。詩人の小野絵里華さんとの対談を終えたゆっきゅんが、前回までを振り返って言葉を綴ります。言葉と風景、どっちが先?ポエジーの新発見に肯定されて。小野絵里華さんの詩集『エリカについて』と出会ったのは去年の9月のことで、メディアにたくさん出るような人でもないし、SNSの発信もあまりされていないので、実際会うとどんな方なのだろう……とは思いつつ、作品を通して勝手に親しみを感じていた部分も大きく、お会いしてみるとやはり思った通りでした。焼き鳥屋での女子会の会話を詩にできる人なのだから。たったひとりの私に届くような詩を書く人なのだから。そんな小野さんと話せて嬉しかったのは、「風景>言葉」というタイプの創作についての話。詩を書く人には、描きたい(描かざるを得ない)“風景”が先にある人と、“言葉”自体が先にある人がいて、小野さんは以前、谷川俊太郎さんの詩についての評論で、谷川さんとご自身について「風景>言葉」の詩人であるのだと書いていました。考えたことなかった視点でしたが、私もそうだ!と納得させられて。私も作詞をするとき、特に最近は、歌にしないといけない情景や人間が目の前(というより、頭の中)にあって、どうにか伝えられるように自分の中の不完全な言葉を尽くす、という感覚があります。小野さんはそうではないと思いますが、私には自分がずっと言葉に対して責任を持てていないような、どこか申し訳ない気持ちがあって。でもそれは、言葉よりも私が本当に描きたかった景色や気持ちがずっと先にあって、それのほうが素晴らしいからだったのかもと思いました。私の作詞は、実は言葉自体ではなく、そこから立ち上がってくる情景こそが作品です、みたいな認識があったことを知らされて。だから、その発見に肯定されたんです。そもそも、私のはじめのポエジーは天井から降りてきたものだったのだし、それでいいのだと思えました。そして、言葉より風景が先にある人の表現は読書体験から始まっていないって話にも、読書家コンプレックスが強い私の心が救われたのです。最近、9月に発売予定のアルバム制作に取り組んでいて、作詞をするぞと喫茶店に向かうとき、元ネタにするでもなく、なんならその日は開かなかったりもするのに、バッグに『エリカについて』を携えて何度も家を出ています。お守りというかおまじない?創作と言葉に向き合うときにいったん思い出しておきたくなるのが小野さんの作品です。作品の影響が直接出ている部分はきっとないけれど、早く小野さんにも聴いてもらうんだという気持ちでなんか頑張れます。カラオケ行ってくれるらしい!ゆっきゅん1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。インスタ、Xは@guilty_kyun※『anan』2024年7月10日号より。写真・幸喜ひかり文・ゆっきゅん(by anan編集部)
2024年07月17日大人気マンガシリーズ、バーテンダー葵のスカッとストーリーさんの『略奪女「あんたの旦那もらうね」IT社長の夫を奪った友人』を紹介します。友人は主人公の過去についてのデタラメ話を元夫へ吹き込んでいました。さらに、元夫が主人公の倹約に不満を持っていた選択です。友人は、真面目すぎる主人公の性格を非難します。≪HPはこちら≫前回のあらすじ出典:バーテンダー葵のスカッとストーリー#8 略奪女「あんたの旦那もらうね」IT社長の夫を奪った友人出典:バーテンダー葵のスカッとストーリー元夫と幸せになると宣言出典:バーテンダー葵のスカッとストーリー話を聞きながら進む出典:バーテンダー葵のスカッとストーリー後日友人からの連絡が…出典:バーテンダー葵のスカッとストーリー騙した?出典:バーテンダー葵のスカッとストーリー元夫は社長ではあったが…出典:バーテンダー葵のスカッとストーリー元夫の会社が倒産出典:バーテンダー葵のスカッとストーリー予告出典:バーテンダー葵のスカッとストーリー主人公の忠告をまったく聞かず、去っていった友人でしたが…。後日、今度は友人が主人公を呼び、騙したと言いがかりをつけました。なんとあの後、元夫の会社が倒産したと言うのです。イラスト:バーテンダー葵のスカッとストーリー※本文中の画像は投稿主より掲載許諾をいただいています。※作者名含む記事内の情報は、記事作成時点のものになります。※この話はフィクションです。 (CoordiSnap編集部)
2024年07月14日ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。詩人の小野絵里華さんをお相手に迎えた最終回。今回のテーマは「たった一人の読者には届くはずと信じて詩を書く」です。たった一人の読者には届くはずと信じて詩を書く。ゆっきゅん(以下、ゆ):詩人の方は、歌詞をどう見ていますか?小野絵里華(以下、エ):私、日本語の曲は普段聴かないんです。どうしても、歌詞が気になってしまうから。詩を書いているときに耳元で愛を叫ばれたらちょっと引っ張られちゃうじゃないですか。だから普段は意識を飛ばせば歌詞が聞こえてこない、アイスランドとかフランスの歌なんかを聴いています。あとで歌詞を読み返して、こういう意味だったんだと感動することも結構ありますね。ゆ:私も日本の流行曲に疲れたら、フィンランドやノルウェーなど北欧のヒットチャートを聴くようにしているんです。日本で頑張らなくてもいいって思うとなんだか気が楽になるんですよね。エ:アイスランドだとソーレイ、パスカル・ピノン、シガー・ロスとかよく聴きますね。あと、流し聴きをしていると、すごく気に入った曲が世界でフォロワー数十人のアーティストだったりしてびっくりすることもあります。ゆ:ライブとかは行きます?エ:行かないです。具合が悪くなることがあって。ゆ:感受性が豊かだから、受け取るものが多そうですもんね。エ:イギリスのアーティストだと、キートン・ヘンソンもすごく好きです。不安障害を抱えながら活動していて、レコーディングも自宅の寝室で行ったりしていて。存在がポエジーですよね。ゆ:初めて買ったCDは?エ:小学生のときに買ったドリカムの『LOVE LOVE LOVE』。ドラマの主題歌だったんですけど、当時、主演の豊川悦司さんに恋していて(笑)。しかもトヨエツ、隣町に住んでいるって噂で!バレンタインチョコとラブレターを渡しに自転車走らせました(笑)。ゆ:トヨエツへのラブレター、詩の原体験では!?詩を書くとき、読み手を意識します?エ:書いているときは誰のことも考えていないですね。ただ、たった一人の読者に届けたいと思って詩を書いています。詩って、澄んだ湖に向かって、一人で石を投げ続けるみたいな感じなんです。水面に波紋は広がるけどまたシーンとなる孤独な作業。誰にいつ届くかわからないけど、たった一人の読者には届くはずと信じて石を投げ続ける。自分の死後も、図書館の一番下の棚にある私の本をたまたま読んで、“死にたいと思ってたけどまだ生きてみよう”と感じてくれる読者が将来、いるんじゃないかな、と信じて。ゆ:いますよ!私と仙台のブックオフがその証明です!おの・えりか詩人。東京都出身。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。2010年に『ユリイカ』(青土社)の新人賞を受賞。’22年に第一詩集『エリカについて』(左右社)を刊行。’23年に同詩集で第73回H氏賞を受賞。ゆっきゅん1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。インスタ、Xは@guilty_kyun※『anan』2024年7月3日号より。写真・幸喜ひかり文・綿貫大介(by anan編集部)
2024年07月10日ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。詩人の小野絵里華さんをお相手に迎えた対談の第3回目です。本職DIVAと詩人の共通項は意外(?)に多くて…?自分のことを詩にする葛藤!他人の意見をどう受け止める?ゆっきゅん(以下、ゆ):小野さんにとってのDIVAは誰ですか?小野絵里華(以下、エ):難しい質問ですね…みんな誰かしら思いつく人がいると思うんですけど、まったく思い浮かばなくて。自分にしか関心がないのかなって、急に不安になりました。ゆ:それでいいんです。だって詩集のタイトル『エリカについて』ですよ!小野さんのDIVAは、やっぱりエリカということで!小野絵里華さんの詩集『エリカについて』(左右社)。エ:上手にまとめていただいて(笑)。でも、すごい自己主張が強い人間みたいじゃないですか?ゆ:それでいいんです!小野さんの詩は、絶対このタイトルで正解ですよ!エ:作品名から、普段から自分語りばかりしている人という印象を持たれます(笑)。ちなみに、歌詞の主人公はフィクションですか?それとも自分の延長に近い?ゆ:作品にもよるけど、他人と言い張ってみるものの、出発点は自分の感情にあることが多いかな。エ:私は全部私のことですって言っちゃいます。ゆ:え、かっこいい……。エ:本当に自分のことしか書いていないという感覚なんです。フィクションなのに。でも、きっと読者や聞き手になってくれている方は、作者がなんと言おうと、本当のことをちゃんとわかってくれているのだと思います。ゆ:そうですよね。ファンってそういう存在ですから。ちなみに小野さんは、同じ詩人だったらどんな方が好きですか?エ:好きな詩人はいっぱいいて。学生時代は富岡多恵子さんがすごくかっこよく見え、かなり読み漁ってました。そのあと富岡さんは小説のほうに行かれたんですけど。ゆ:じゃあ、小野さんのDIVAは富岡さんかもしれないですね。エ:強烈なんです。詩だけでなくエッセイとかも面白いです。詩人でフェミニストで、とにかくやることなすことすべてがかっこよかった。昔のお写真でたしかタバコを吹かしているのがあるんですけど、ファッションもとてもスタイリッシュ!ゆ:見てみたいです。詩集以外の本もよく読まれますか?エ:もちろん読みますけど、本格的に本を読むようになったのは大学院に入った頃かな。ゆ:私と一緒です!エ:読むと学びがあって面白いですけどね。でも、言葉より風景を大事にしている人は、本を読むまでに時間がかかりますよね。ゆ:…周りから読書家だと思われているわりに、あまり本を読めていない自分を肯定できました…!おの・えりか詩人。東京都出身。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。2010年に『ユリイカ』(青土社)の新人賞を受賞。’22年に第一詩集『エリカについて』(左右社)を刊行。’23年に同詩集で第73回H氏賞を受賞。ゆっきゅん1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。インスタ、Xは@guilty_kyun※『anan』2024年6月26日号より。写真・幸喜ひかり文・綿貫大介(by anan編集部)
2024年06月26日【音楽通信】第158回目に登場するのは、今年音楽活動10周年というアニバーサリーイヤーを迎えた、DIVAとしても知られる、ゆっきゅんさん!ソロで歌い始めたときが一番大きな変化を感じた【音楽通信】vol.1582014年よりアイドル活動を開始し、今年活動10周年を迎えたDIVAゆっきゅんさん。音楽活動はもちろん、雑誌『anan』での連載をはじめ、文筆家や作詞家としても大活躍中です。そんなゆっきゅんさんが、2024年9月11日に2ndアルバム『生まれ変わらないあなたを』をリリースすることに先駆けて、収録曲を5月から4か月連続で先行シングルとして配信。いち早く新曲について、お話をうかがいました。――まず活動10周年を振り返ると、いかがですか?2014年に進学のため上京して、「ゆっきゅんです、アイドルです」と手探りで活動してきました。2016年からはアイドルユニット「電影と少年CQ」、そして2021年5月からセルフプロデュースの「DIVA Project」をスタートしてソロ活動もしていますが、活動10年間のうち7年くらいは学生だったので、それほど10周年という実感はないんです。ただ、転機はいくつかあって、大学院を卒業してソロで歌い始めたときが一番大きな変化を感じました。それまでとそこからの時間がまったく別物の感じがあるので、10年やってきましたが、やっとこれから本格的にやるべきことが見えてきたところです。――2022年4月に初めて、1stアルバム『DIVA YOU』について「ananweb」で音楽取材をさせていただきました。そこからの2年間でさらに飛躍された印象ですが、ご自身でも心境の変化や手応えはありますか。昨年から少しずつ仕事は増えましたね。以前の私はたぶん、いろいろなことをやっている人というイメージだったのかも。いまは音楽活動があるうえで、コラムを書いたりトークをしたりするというスタンスです。きっと、ゆっきゅんはこういう人だろう、ということがわかりやすくなって、お仕事を依頼してもらいやすくなったのかなと。基本的には、歌詞を書いて、歌って、それを人に見せるのが好き。だから、依頼されていなくても、ひとりで主催レーベルを立ち上げて自分で企画してディレクションしてと、これまで同様、音楽活動はずっと力を入れてやっていきます。――雑誌『anan』では、1月31日発売号から、対談連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」がスタートしていますね。本当に私がうれしいだけの連載をさせてもらっていて、会いたい人を何十人かあげて、対談させてもらっています。掲載の順番は違うんですが、最初に決まった対談相手が、作家の金原ひとみさんで「マジですか?」と(笑)。続いて文筆家の能町みね子さん、シンガーソングライターの柴田聡子さんなどと対談しました。本当に、「マガハやば!」みたいな感じです(笑)。それぞれ対談が終わったら、みんなとカラオケに行って、友達になり、交流が広がっています。これからはもっといろんな歌を歌いたい――2024年5月15日に、アルバムからの先行シングルとして「ログアウト・ボーナス」が配信されました。ゆっきゅんさんが手がけている歌詞は、孤独な女性を描いた海外映画を観ていたら思いついたそうですね。バーバラ・ローデンの『WANDA』(1970年)やアニエス・ヴァルダの『冬の旅』(1985年)といった映画の主人公の女性がひとりで放浪する姿が心に残っていて、そういうことを歌にしたいなと。その歌詞が浮かんだときは、兄の結婚式で愛知県刈谷市に行っていました。愛知県刈谷市は私の好きな山戸結希監督の地元であり、初期作はその地でロケをしていて。ちょうど同じ場所にいるんだから、ロケ地巡りでもするかとビジネスホテルを予約したんです。でも疲れて行く気がしなくて、ひたすら部屋で天井を見ていたら、なんか東京にいるときと変わらない状態になって私は何をやっているんだろうと、映画の主人公たちの気持ちが急に見えてきて、2時間ぐらいで一気に歌詞を書きました。――作曲は、2020年結成のロックバンド「えんぷてぃ」のフロントマン、奥中康一郎さんが担当しています。奥中くんは、昨年1月に知り合っていて、夏に『Re: 日帰りで – lovely summer mix』を出したときに「ゆっきゅんさんの声はバンドサウンドにもめっちゃ合いますね」と言ってくれたんです。すかさず「じゃあ、なんか曲を一緒に作ろうよ」と話して。「歌詞が浮かんだらいつでも言ってください」と言うから、すでにできていた「ログアウト・ボーナス」の歌詞を渡して。少し打ち合わせをした夜には奥中くんからフルコーラスのデモが届いて、9月末には曲ができていました。――この曲好きです。どことなくフリッパーズ・ギターを思い出すというか。ゆっきゅんさんの歌声が堪能できますし、バンドサウンドとも合っていて、また違う一面が見えました。ありがとうございます。曲は、奥中くんは渋谷系っぽい感じを意識していたと言っていました。これまでは、曲も歌詞も、自分で自分を上げていくような鼓舞するものが多く、ファンのかたから「出勤するときに聴いています」というようなことをたくさん言っていただいていて。それはすごくうれしいんですが、人生の中での時間って、出勤時だけじゃないですよね。だから、これからはもっといろんな歌を歌いたいなって。――確かにこれまでは元気に背中を押すような曲も多かったですね。そう。でも昨秋ぐらいから、もう少しストーリーテリング的な歌詞が浮かぶことが多くなってきて、直接的な応援歌以外のものも書くようになりました。この歌は仕事を辞めたとか、仕事じゃなくても何かをエスケープした、リタイアしたというときに聴ける歌にしたくて。歌詞が先にあったので、何を伝えるかはすでにできていて、どう伝えるかとなったときに、表現するものとそのやり方の距離を今までよりも考えることができた気がします。「ログアウト・ボーナス」は、そういうときに聴ける歌になっています。歌詞に楽しそうなことは書いていないんですが、できるだけ明るく歌っていて。音楽って、聴いたときに、少しでも前を向けるものであってほしいから。――そっと寄り添ってくれる曲になっていると思いました。ゆっきゅんさんは、これまではデジタルサウンドでダンサブルな曲のイメージがあったので、この曲を聴いたかたは、意外に思われるかたもいるかもしれませんね?新境地みたいなものがないと、新曲じゃないという気持ちもあって、初めてバンドでレコーディングしました。アルバムのことも視野に入れ、最初にこの曲をレコーディングしたんですが、いまはなかなかアルバムとしてリリースしても全部を聴いてもらえない時代でもあって。サブスクで聴くときに知っている曲があると聴いてもらいやすいので、それなら先行で4か月連続配信したら、さすがに注目してくれるかなと考えました。この曲ありきでアルバム制作は進みましたが、デジタルなサウンドの曲もあったりと、バラエティ豊かな仕上がりになっています。――いまはボイストレーニングにも行かれているとか。月に2回ぐらい行っています。奥中くんを含めたバンドのメンバーが実力派の若手専門家たちの集いなので、まともに歌えないとだめだな、うまくなりたいなあと思ってボイトレしています。――「ログアウト・ボーナス」のミュージックビデオには、女優の唐田えりかさんが出演していますが、でんぐり返ししている場面がツボでしたし、ゆっきゅんさんは妖精のように登場しますね。でんぐり返しは金子由里奈監督の演出で、私が出てくるところは、「生まれ変わらないあなたが私を見てる」というイメージなんです。歌詞の最後2行に「生まれ変わらないあなたを私が見てる」とあるんですが、これは自分自身の気持ち。みんないろいろあると思うけど、それを見ています、というメッセージです。――そして6月14日には、連続リリース第2弾の「シャトルバス」が配信されました。美しいピアノの調べにのせたバラードですね。5月、6月と先行配信の2曲は、前作とガラリと変わります!みなさんにビックリしてもらおうと思って、リリースする順番を決めました。曲は、バンドにも参加してもらった、梅井美咲さんというピアニストのかたが演奏してくれています。J-POPラバーとしては、J-POPのアルバムには1曲は静かな曲があることが多いので、自分のアルバムにも絶対ピアノの曲を入れたいと思って。「ログアウト・ボーナス」と同じく「シャトルバス」でも、これまでのJ-POPで描かれてこなかったであろう場面や気持ちを歌っています。この曲は、結婚式や同窓会に行って楽しかったんだけど、なんか自分がちょっとモヤモヤしていることに気づきそうなのが嫌だから、そうなる前に2次会に行かずに帰る人の歌を書きました。これまでと違うタイプの2曲が先行配信されましたが、7月にはまた元気な曲が出るので、安心してください(笑)。“自分の歌”だと思ってもらえる曲を歌いたい――お話は変わりますが、現在、ハマっているものはありますか。ハマっているのは、韓国のボーイズグループ「RIIZE(ライズ)」です。5月に日本初の単独公演が国立代々木競技場第一体育館で開催されて、行ってきました。私はメンバーのソヒくんが好きなんですが、本当に歌が好きで歌いたい人という感じがして、そういう姿を見ていると幸せな気持ちになります。――いいですね!あとは最近、タレントの野呂佳代さんが好きですね。もともと好きですけど。もしも職場にいてくれたらうれしい雰囲気の人だなと。三宅唱監督の映画『夜明けのすべて』(2024年)という映画を観たときに、実際に野呂さんは出演していないし、野呂さんより年齢が上の人物なんですが、まるで野呂さんのようだなと思うイメージの女性がいて。友達とも「我々は職場に野呂さんがいない現実とどう向き合うか」と話していたぐらい(笑)。この映画は“同僚”についての映画だと思うんです。ひとりでいろいろと抱えていて、遊びに行く気すら起きないけど、生きていかなきゃいけないから、そんなときでも会社には行かなきゃいけない。一番顔を合わせるのも同僚なんだよな、と。私はいまアルバイトもしていないし、同僚がいない状況ですが、この映画の職場のような同僚だったら、かけがえないだろうなと、同僚という関係性にもハマっています。――視点がすごいですね。ちなみに本日のお洋服は、花柄にレーシーな部分が特徴的ですが、ご自身で作ったものですか?いえ、これはRITSUKO KARITAというブランドなんです。最近は首がつまったデザインを好んでいて、冬はずっとタートルネックを着ていました。いまも首まである洋服を着ることが多いですね。――いろいろなお話をありがとうございました!では最後に、今年の抱負を教えてください。先行配信した新曲もそうですが、9月にリリースされるアルバムをたくさんの人に聴いてもらいたいです。前作ではもう誰にも褒められなくてもいいくらい、たくさんの褒め言葉をいただいたんですが、まだ届いていないな、足りないなという気持ちも。今回、楽曲作りに参加してもらったいろいろな人たちの力も借りて、もっと広く音楽が好きな人や、音楽はほとんど好きじゃない人にも、届けたいんです。みんなにとって“自分の歌”だと思ってもらえる曲を1曲でも多く歌いたいなと。29歳になったばかりなので、一段落ついたら、30歳になるまでにまた新しくやりたいことが頭に浮かぶと思います。取材後記『anan』本誌の連載でもおなじみの、みんなのDIVAゆっきゅんさんが、再びananwebに登場。前回同様、今回もカメラの前で艶やかにポージングをきめてくださり、どの姿もチャーミングで見入ってしまうほど。インタビューも丁寧にご対応くださり、楽しい取材時間を過ごさせていただきました。29歳のゆっきゅんさんのいま、そして30代になってからの未来も目が離せません!!そんなゆっきゅんさんの楽曲をみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね!写真・幸喜ひかり取材、文・かわむらあみりゆっきゅんPROFILE1995年5月26日、岡山県生まれ。2014年よりアイドル活動を開始。2016年からポップユニット「電影と少年CQ」としてのライブを中心に、個人では映画やJ-POPの歌姫にまつわる執筆、演技、トークなど活動の幅を広げる。2021年5月より、セルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。「DIVA ME」「片想いフラペチーノ」の2曲を配信リリースし、インディーズデビュー。2022年3月、1stアルバム『DIVA YOU』をリリース。2024年9月11日に2ndアルバム『生まれ変わらないあなたを』をリリース。InformationNew Release「ログアウト・ボーナス」2024年5月15日配信※6月の【シャトルバス】の「ジャケ写」をお戻しの際、一緒にお送りください。「シャトルバス」ジャケ写入る「シャトルバス」2024年6月14日配信*以下から2ページ目です(わかりやすく原稿チェック時は1pで見られるようにしています)。写真・幸喜ひかり 取材、文・かわむらあみり
2024年06月24日ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。詩人の小野絵里華さんをお相手に迎えた第2回目です。詩を書くとき、作詞をするとき、推敲はする?しない?そんな話をしてきました。くだらないけど大切なことこそちゃんと詩として残すべき。小野絵里華(以下、エ):私、もっと若い頃に毎日詩を書いていた時期があって。毎月、雑誌の投稿欄に大量に送りつけていたんです。ゆっきゅん(以下、ゆ):それ、“努力”っていうんですよ!エ:当時は1日に3~4編書いていました。なんか、上からも下からも詩がやってくる、みたいなエクスタシー状態でした(笑)。ゆ:すごい!私、自分のトークイベントで小野さんの詩を朗読したことがあるんです。結構長いんですけど、声に出したくなる詩ですよね。私はこれまで現代詩ってよくわからないものだと思って距離を取っていたんですけど、たまたま手に取って出合った小野さんの詩集を読んでみて、初めて「わかる…」と思いました。まさに、「女子会現代詩」ですよね!エ:すごく嬉しいです!そして私も自分で朗読するとき、長いなと思います(笑)。ゆ:小野さんのおかげで、現代詩と和解できました。エ:『ユリイカ』の投稿欄って後ろの数ページだから、みんな短めの詩を送るんですよ。それなのに私の作品は長くて(笑)。そのときは伊藤比呂美さんが選者だったんですけど、“こんなくだらないことをわざわざ詩にしなくていいと思うけど、大事なことがあるような気がする”というようなことを書いてくださって。ゆ:それ、めっちゃわかります。私も歌詞にもならないようなことを歌詞にしているので。朗読の話がありましたけど、詩を書くときに“声”を意識されますか?エ:声が立ち上がってくるようには意識しています。だから書いているときに、体感的に気持ちの良いリズムとか、間とか、どこで改行するとかは考えますね。ゆ:私、文章を書くときに改行を忘れちゃうんですよ。なんか一気に、ダ――ッと書いちゃう。エッセイとかだと、矢継ぎ早にしゃべって終わりみたいな。もちろん、推敲すればもっといい文章になると思うんですけど、いつも締め切りギリギリになって、エンターキー押すみたいな。ねちねち直しはしないです。エ:私も結構、直さない派。ほかの詩人の方ってかなり書き直しされるみたいで。私はわりと思いの丈をバーッと書いて、手が疲れたからここで終わり、みたいな(笑)。そのあと客観的に読んでなるべく修正するけど、書き始めは結構早く書いちゃう。ゆ:基本的に休みたい。寝たい。って思ってるから、作詞のときもすぐ休憩を取っちゃいます。根が“姫”ですみません!おの・えりか詩人。東京都出身。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。2010年に『ユリイカ』(青土社)の新人賞を受賞。’22年に第一詩集『エリカについて』(左右社)を刊行。’23年に同詩集で第73回H氏賞を受賞。ゆっきゅん1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。インスタ、Xは@guilty_kyun※『anan』2024年6月19号より。写真・幸喜ひかり文・綿貫大介(by anan編集部)
2024年06月19日ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。今回から、詩人の小野絵里華さんとの対談を4回にわたってお届けします!第1回目のテーマは「ポエジーは風景からも天井からもやってくる」です。ポエジーは風景からも天井からもやってくる。ゆっきゅん(以下、ゆ):小野さんのことを知ったのは昨年の秋。出会いは、ユーミンのコンサートを観に行った仙台…のブックオフなんです。そこの詩のコーナーで小野さんの詩集『エリカについて』を見つけました。「地球上の生活がぜんぶエリカで、エリカが詩だった」という伊藤比呂美さんの帯文が気になり、少し開いてすぐ買いました。以来、何冊も買って新刊を友人に配っていて(笑)。小野絵里華(以下、エ):ありがとうございます、嬉しいです。ゆ:それからいろいろ調べたんですけど情報が少なく、X上ではもはや伝説の詩人となっています。エ:伝説!(笑)恐縮です。ゆ:小野さんに、詩を書き始めたきっかけを聞きたいです。エ:詩って、読むのが先の人と、作るのが先の人がいると思うんですけど、私は完全に後者で。風景を見ていたら、詩が勝手にやってくるような子どもだったんです。いつも脳内で、言葉をころころ転がしていました。ゆ:じゃあ、子どもの頃から。エ:物心がつく前からだったので、まだそれを「詩」とは認識してはいなかったと思います。ただ、そこにはポエジーとしか呼べないような何かはありました。ゆ:詩って、“書くぞ”と思って始まるものじゃないですよね。エ:絵を描くのとも似ていて、まだそれが何かはわからないんだけど、どこかほわほわするような感覚があって。大学院に行き始めた頃からちゃんと意識して、詩を書き始めました。ゆ:以前、小野さんが書かれた論考で“言葉よりも風景=「言葉<風景」”という話をされていたと思うんですけど、私もそうなんです。私は歌詞として、きれいなもの、面白いけどまだ歌われていないことなどを歌にしたいと思って表現していて。ただ言葉を褒められたときに、「いや違うんです、本当はこの風景自体が素敵で、私はそれにどうにか近づけるよう歌っているだけなんです」という意識なんですよね。すごいのは風景。エ:まさに、そういう意識です。ゆ:ちなみに、私にポエジーを降ろしてきたものは天井だったんです。ずっと家で天井を見ていて。エ:天井って、空の比喩ではなくて?本物の天井ですか…?ゆ:はい。ずっと狭く散らかった部屋に住んでいて、部屋の中できれいな場所が天井しかなくて。ずっと天井を眺めている人がそれでも立ち上がる歌の歌詞を書いたのが始まりです。だから私に与えられたポエジーは、天井から。エ:それ、いいですね!(笑)おの・えりか詩人。東京都出身。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。2010年に『ユリイカ』(青土社)の新人賞を受賞。’22年に第一詩集『エリカについて』(左右社)を刊行。’23年に同詩集で第73回H氏賞を受賞。ゆっきゅん1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。インスタ、Xは@guilty_kyun※『anan』2024年6月12号より。写真・幸喜ひかり文・綿貫大介(by anan編集部)
2024年06月12日大好評連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。金原ひとみさんとの対談を終えたゆっきゅんが、前回までを振り返って言葉を綴ります。対談収録のこぼれ話と、ゆっきゅんが感じた金原さんの優しさについて。もちろん、カラオケ話もあります!!嘘のない、まっすぐな優しさにあとから気づいた日。金原ひとみさんの小説の主人公にずっと憧れがありました。飲むしかないから酒を飲み、恋や愛のためにのたうち回ることができ、怒りや情動を人とぶつけ合い、抗いようのない感情に駆け回られて、それでも知性が猛ダッシュで追いかけてきて、気づいたら遠くまで辿り着いてしまっているような人のことです。私に中途半端な理性さえなければこうなれるのに!みたいな、そんな理想像として、金原さんの書く人物像はあったのでした。私は頭ん中だけ自由であらゆることを考えたり気持ちが突っ走っていくことは全然あるけど、結局理性的で自制心がバキバキに働くタイプなので、あんなふうにはなれなくて(なる必要もまあない)。逆に、友達はそれを地でいってる人が結構多くて、特徴としては、近況を聞くといつも何らかの事件を教えてくれることと、金原ひとみ作品が好きというのがあります。対談が終わった時に、金原さんが「今日は友達が増える気持ちで来たんです」って言ってLINEを聞いてくれて、え!あー、この時間楽しんでくれてたんだ、と安心して嬉しくなるとともに自分が緊張していたことも自覚しました。会う前からきっと最高な人なんだろう…と思っていましたがやっぱりすごく優しくてかっこよくて大好きになってしまうのでした。個人的に金原さんらしさを強く感じた言動があって…対談に載せきれていない部分ですが『ミーツ・ザ・ワールド』の感想を伝えた時に、どう向き合えばいいかわからないままだった知人の死について話したら、金原さんが「つらかったですね」と言ってくれて。その時、自分のことを考えていなかったので驚いて、咄嗟に「いや、つらかったのはその人です」と笑って返してしまったのですが、どうして金原さんの優しさをすぐに受け取れなかったんだろう。金原さんのあの嘘のないまなざしで、私は自分がつらかったことをちゃんと思い出せたような感じがしました。後日、もちろん金原さんとカラオケへ。共通の友人の作家・柚木麻子さんと3人でパセラに行ったらまず「歌舞伎町の女王」を歌ってくれたこと、忘れられない景色です。ひとみの林檎たまらん。一緒にm-flo の「come again」を歌っている時、ラップを完コピしておいたこの人生は間違ってなかったと思えました。金原さんが強気で保護者会に行くための歌、いつか必ず作ります。みんな覚えてて。ゆっきゅん1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。インスタ、Xは@guilty_kyun※『anan』2024年6月5号より。写真・幸喜ひかり文・ゆっきゅん(by anan編集部)
2024年06月05日大好評の対談連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。作家の金原ひとみさんをお相手に迎えたおしゃべりも、ついにラストです(過去回もぜひお読みください…!)。今回は、お互いの小説執筆、作詞作業のことについて、お話しました。現実が実人生だけだったらきっと耐えられない。ゆっきゅん(以下、ゆ):私、一般的な人が抱えてる課題みたいなものから降りてるから、年齢ごとの苦労とかよくわからなくて。金原ひとみ(以下、金):私もそこから脱却してるんですよね。小説を書いているせいかもしれないけど、現実が絵空事というか、地に足がついていないところがあって。臓器が捻れそうなほど泣いたり喚いたりしてても、どこかで小説のネタとして捉えてるところがあって。あまり誠実に現実と向き合ってないんじゃないかな、と思ったりもします。ゆ:現実に起きていることや、それへの向き合い方が小説になってるってことですよね。金:そうですね。私の場合はすべてが小説につながっていくから。創作と実人生が編み込まれちゃってる感じがする。実人生は俯瞰して眺めている感じがします。ゆ:自分を見つめる客観性が、どの作品にもありますよね。鋭くて冷たくて、それでいて熱い。金:私は小説世界があることでなんとか生きてこれたんです。現実が実人生だけだったら絶対耐えられなかった。ゆ:金原さんは小説を書き始めたのも早かったんですよね。金:小6の時ですね。いくつか書いていくうちにこの仕事でやっていきたいなって思ってました。ゆ:日記とかは書いてました?金:それは今でも全然ダメ。ゆ:私も(笑)。私の場合はただの怠惰でなんですけど、出来事をただ書くのってつまらなくて。考えてることを書いてみても、1年後に読み返したら、どこに行って何をしたかがわからない(笑)。金:いや、どこで何をしたかより考えを書くほうが絶対大切です!ゆ:勇気をもらいました(笑)。じゃあ、金原さんは最初からフィクションだったんですね。金:そうですね。私、エッセイの依頼がきても小説と同じ感覚で書いちゃう。エッセイだと思うと途端にチューニングが狂っちゃって。やっぱり小説と同じ視点のほうが書きやすいんです。ゆ:それでいうと私、たまに文章を書く仕事もしているけど、自分の考えは歌詞にするのが一番しっくりくる感じがします。散らかった思考を説明なしで書けるのが気持ちよくて。私にとって作詞って、すごく自由なんですよね。金:それめっちゃいいですね!ゆ:作詞だけは楽しい。金:これだけは楽しいってものがあるのって強いですよね。素敵!ゆ:いや、もうちょっと楽しいこともあるかも(笑)。でも、現段階では作詞が一番楽しいです!かねはら・ひとみ1983年、東京都生まれ。作家。2003年『蛇にピアス』(集英社)ですばる文学賞を、翌年に同作で芥川賞を受賞。若い読者を中心に絶大な支持を受ける。近著に『腹を空かせた勇者ども』(河出書房新社)、『ハジケテマザレ』(講談社)。ゆっきゅん1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。インスタ、Xは@guilty_kyun※『anan』2024年5月29号より。写真・幸喜ひかり文・綿貫大介(by anan編集部)
2024年05月30日大人気マンガシリーズ、バーテンダー葵のスカッとストーリーさんの『勝手に家に押しかける義母「模様替えしたよ、あんたのお金で」』を紹介します。主人公は義母から届いた荷物の着払いで、今月の生活費がすっからかんになってしまいました。義母はよかれと思って自分が選んだインテリア用品を送ったようですが、主人公はそれをありがた迷惑だと感じてしまいます。そこで主人公が着払いの料金を半分ほど負担してほしいと伝えると、義母は「義理の母親にお金を出させる気!?」と言ってきて…。≪HPはこちら≫前回のあらすじ出典:バーテンダー葵のスカッとストーリー#3勝手に家に押しかける義母「模様替えしたよ、あんたのお金で」出典:バーテンダー葵のスカッとストーリーある日の帰り…出典:バーテンダー葵のスカッとストーリー鍵が開いている出典:バーテンダー葵のスカッとストーリーおそるおそる中に入ると…出典:バーテンダー葵のスカッとストーリー義母が模様替えをしていた出典:バーテンダー葵のスカッとストーリーよかれと思って…出典:バーテンダー葵のスカッとストーリー勝手に買い物まで…出典:バーテンダー葵のスカッとストーリー我慢の限界出典:バーテンダー葵のスカッとストーリー次回予告出典:バーテンダー葵のスカッとストーリーある日の帰り、閉めたはずの家の鍵が開いていて驚く主人公。おそるおそる家の中に入ると、なんとそこには義母の姿がありました。しかも義母は勝手に家の中の模様替えをしており、それを見た主人公は我慢の限界に達したのです。イラスト:バーテンダー葵のスカッとストーリー※本文中の画像は投稿主様より掲載許諾をいただいています。※作者名含む記事内の情報は、記事作成時点でのものになります。※この物語はフィクションです。(CoordiSnap編集部)
2024年05月29日大好評の対談連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。作家の金原ひとみさんをお相手に迎えたおしゃべり第3弾。今回は、金原さんがゆっきゅんに、あるリクエストをして…?本日も大盛り上がりでお届けします!保護者会に行く前に聴ける強くなれる曲を作ってほしい。ゆっきゅん(以下、ゆ):私、金原さんの言葉に最初に触れたのは、実はCharaの「きえる」だと思う。映画『蛇にピアス』の主題歌だったけど、R15+で当時は観られなくて、音楽が先でした。あの歌が入ってるアルバムを借りて、ずっとリピートしてました。金原ひとみ(以下、金):Charaはもともと好きですか?ゆ:それから、今でも好きですね。金:私も中学生の頃からよく聴いてて、コラボの話をもらった時はすごく興奮しました。でも、苦労したんですよ。歌詞って難しくて。メロディに合わせる書き方だったんですけど、言いたいことを言おうとすると超字余りで。ゆ:文字数が足りないですよね。金:作詞ってすごい能力ですね。ゆ:いやいや、小説ってすごい能力だと思います(笑)。金:小説を書こうとしたことは?ゆ:今のところは歌詞だけで表現できているからないですね。金:書くとしたら私小説かな?ゆ:絶対そう。作詞でもそのままではないにしろ自分自身を出し切ってるから。作品にすることで人生や見てきたものを整理してます。金:私、昔は本が出る度に、出産みたいな感覚があって。自分が肥やしてきた怨念みたいなものを産み落として1冊の本にするというか。表現しないと納得できないものが小説の核になってるから、本ができてやっと何かが成仏する感じ。ものづくりをする人はみんなそういう感覚かもしれないですね。ゆ:私もそういう核がしっかりある歌が好きです。自分がいつ音楽に救われてきたかっていうと、遅刻確定で電車に乗っている時とか、最悪な状況下なんですよね。あの時イヤホンがなかったら倒れてたって思う場面、何度もある。金:わかる、日常的に救われています。ゆ:だから音楽って一人で聴くものって意識があります。ライブに行っても自分だけに歌われている意識で聴いちゃう。一人でこの世界をどう生きていくか?という時に、必要なものなんです。金:日常を支える音楽だ。ゆ:出勤、退勤、勉強、執筆…。金:いろいろ作ってほしいです。ゆ:どういうシーンを支える曲が欲しいですか?金:なんだろう、保護者会に行く前に聴ける曲とか欲しい。気が重くなるような出来事の前に、気高く、そしてすべてを蹴散らす気持ちになれる曲。ゆ:強くなれる感じですね。日常の憂鬱を吹っ飛ばして踊れる、中島みゆきと太陽とシスコムーンが合体したような曲を作ります!かねはら・ひとみ1983年、東京都生まれ。作家。2003年『蛇にピアス』(集英社)ですばる文学賞を、翌年に同作で芥川賞を受賞。若い読者を中心に絶大な支持を受ける。近著に『腹を空かせた勇者ども』(河出書房新社)、『ハジケテマザレ』(講談社)。ゆっきゅん1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。インスタ、Xは@guilty_kyun※『anan』2024年5月22日号より。写真・幸喜ひかり文・綿貫大介(by anan編集部)
2024年05月22日今回は、物語をもとにしたクイズを紹介します!クイズの解答を考えてみてくださいね。※この物語はフィクションです。イラスト:モナ・リザの戯言見知らぬ女性が怒鳴り込んできた夫と息子と暮らす主人公。ある日、見知らぬ女性が「あんたの子が妊娠させた!」と家に怒鳴り込んできました。息子はまだ5歳出典:モナ・リザの戯言そんな女性に「子どもまだ5歳なんですけど…」と伝えた主人公。すると女性は、主人公の息子の話をしているのではないと言って…。問題さあ、ここで問題です。女性が乗り込んできたワケは?ヒントペットも家族の一員です。みなさんは答えがわかりましたか?正解は…出典:モナ・リザの戯言正解は「主人公の飼い猫が女性の飼い猫を妊娠させたから」でした。先週、避妊手術を受けていた主人公の飼い猫ですが…。それ以前に、女性の飼い猫を妊娠させていたようでした。女性は「雑種の子はいらない!面倒見なさい!」と怒鳴ります。そのため、主人公は「わかりました」と、しばらく女性の猫を預かることに。すると女性は「何かあったら承知しない!」と圧をかけてくるのでした。※本文中の画像は投稿主様より掲載許諾をいただいています。※作者名含む記事内の情報は、記事作成時点でのものになります。(lamire編集部)
2024年05月21日大好評の対談連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。作家の金原ひとみさんをお相手に迎えたおしゃべり第二弾。今回は、音楽の持つ効能について意気投合しました!言葉を扱う仕事の人ほど音楽で頭をまっさらにすべき!ゆっきゅん(以下、ゆ):金原さんって絶対音楽好きですよね?金原ひとみ(以下、金):好き!ゆ:『ハジケテマザレ』でもクラブで爆踊りするじゃないですか。あのシーンは最高でした!金原ひとみさん著『ハジケテマザレ』(講談社)。エモいです。金:この間、女性作家5人くらいの会があって、踊れる人と踊れない人がいるって話が出たんです。これはもう運動音痴というより、使ってる脳が違うよねって。ゆ:特に、家で一人で書くのを仕事にしている人たちは踊り慣れていないですしね。金:でも、こういう仕事をしていて言葉や理論で頭がいっぱいになっているからこそ、音楽で頭をまっさらな状態にする必要があるなって思います。そうでないと、頭が固くなって新たな発想とか生まれないんじゃないかな。ゆ:バランスをとるために?金:うん、両輪でやっていかないと、ですね。ゆ:私、クラブのイベントに出たりするんですけど、最後までいると感動しちゃうんです。今夜ここで踊るしかない人たちが今ここにいるんだなって。もちろん、我に返るべき空間じゃないことはわかってるんですけど。金:私も。突然エモさにからめ捕られて言葉が止まらなくなって、その場で必死に書き留めたりする。ゆ:“今”しか絶対出てこない言葉ってありますよね。現実の情景は別に関係ないのに。金:行き詰まってる小説の次の展開がパッと浮かんだり、全然違う話と話が頭の中でつながったり。ゆ:私もクラブの壁にもたれて思い浮かんだ歌詞のメモが何十分間も止まらなくなったことがあります。ちなみに金原さんは、執筆中も音楽を聴きますか?金:聴くけど、最近はわりとイヤホンを挿したまま何も聴いていないことが多いです。音楽によっては世界観に強く影響しちゃうから。ゆ:普段はどんな音楽を聴いていますか?好きなジャンルとか。金:日本のロックバンドが好きです。最近だったらSPARK!!SOUND!!SHOW!!やw.o.d.、クリープハイプ、My Hair is Badも好きです。ゆ:歌詞に重きを置きますか?金:歌詞における物語性がすごく好きなバンドと、ノリや音自体が激しくて耳心地がいいバンド、両方好きです。ゆ:え、豊かな音楽体験!私、歌詞が好きなアーティストばかり追いかけちゃう。金:たとえばどんな人?ゆ:女性ソロ歌手、DIVAが全員好きです。その道を選んでくれたってだけで、もう大好き。金:その道自体が最高だもんね!かねはら・ひとみ1983年、東京都生まれ。作家。2003年『蛇にピアス』(集英社)ですばる文学賞を、翌年に同作で芥川賞を受賞。若い読者を中心に絶大な支持を受ける。近著に『腹を空かせた勇者ども』(河出書房新社)、『ハジケテマザレ』(講談社)。ゆっきゅん1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。インスタ、Xは@guilty_kyun※『anan』2024年5月8日‐15日合併号より。写真・幸喜ひかり文・綿貫大介(by anan編集部)
2024年05月15日大好評の対談連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。今回からは、作家の金原ひとみさんをお相手に迎えたおしゃべりをお届けします!“共感”の大切さとヤバさ、そして大人にこそバイト先が必要な理由まで、じっくり話しました。ゆるい人間関係を築ける“バイト先”は、大人にこそ必要かも。ゆっきゅん(以下、ゆ):金原さんの作品を読んで、私は共感メインで他者とつながっているってことを思い知らされました。趣味が合うとか、あれはキモいと思うとか、そういう話を共有できる人とばかり一緒にいちゃうんです。金原ひとみ(以下、金):フリーランスで好きなことばかりしていると、そうなっていきますよね。ゆ:新しく友達ができても、“いつのタイミングで出会っていたとしても仲良くなってただろ”みたいな人ばかりだから。金:私もデビュー当時は尖ってて、嫌なものを切り捨て自分の理想郷みたいな狭い世界で生きてました。でも海外では多少苦手な人ともある程度情報網を共有しないとうまくやっていけない状況で。少しずついろんな人とつながれるようになりました。一方で最近の若い子たちを見てると、やっぱり共感って重要視されてると思います。ゆ:金原さんのお子さんってもう高校生でしたっけ?金:今16歳なんですけど、友達とお互いを批判し合う文化がないんです。だから私が“それは違う”ってはっきり言うと“そんな全否定しなくてもいいんじゃない”って目を向けられる。ゆ:私も最近、共感ばかりでつながるのはヤバいなと思いました。金:私もたとえ嫌な相手でも全否定はできないところがあると考え始めて、ちょっとずつ受け入れていかなきゃと思いました。宗教も人種も考え方も生い立ちも違う人とも世間話ができたりとか、円滑に生きていく術は必要だなって。ゆ:金原さんの『ハジケテマザレ』を読んだ時に、バイトの人間関係ってそうだったなって思いました。明らかな他者というか、全然自分と違うところで生きている人との会話って、すごい好きだったんだなって、自分のバイト経験を思い出したりして。金原ひとみさんの『ハジケテマザレ』(講談社)。最高のバイト小説!金:私も書いている時に久しぶりにバイトしたくなりました(笑)。別に仲良くする必要もない、束縛もない状態で、たまたま集まったメンバー同士が、その場限りの楽しい空気を作るって、大人になるとなかなかないから。ゆ:誰もバイトに人生をかけているわけでもないから、自由に辞められる環境ですしね。お互いのことはあまり知らないけど、時間があるからしゃべる、みたいな。金:私も飲食でバイト経験があるけど、すごく楽でありながら刺激的でした。…なんか、大人にこそ「バイト先」が必要なんじゃないかって思ったりする。ゆ:私が今やるべきは、バイトなのかもしれない…!かねはら・ひとみ1983年、東京都生まれ。作家。2003年『蛇にピアス』(集英社)ですばる文学賞を、翌年に同作で芥川賞を受賞。若い読者を中心に絶大な支持を受ける。近著に『腹を空かせた勇者ども』(河出書房新社)、『ハジケテマザレ』(講談社)。ゆっきゅん1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。インスタ、Xは@guilty_kyun※『anan』2024年5月1日号より。写真・幸喜ひかり文・綿貫大介(by anan編集部)
2024年05月01日大好評連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。柴田聡子さんとの対談を終えたゆっきゅんが、前回までを振り返って言葉を綴ります。柴田さんとは“友情ソング”を歌うDIVAという共通点があるゆっきゅん。今回のテーマは「恋と友情の違い」です。2人のDIVAが恋と友情の違いを語った日。柴田聡子さんと対談したのは新たなる名盤『Your Favorite Things』が発売されるよりまだ少し前の冬の日で、あのアルバムが発売されていたら、マジでその話ばかりしていただろうと思います。デビュー曲でドリンクバー愛を歌い上げ、いくつもの楽曲で友達のことを書いている私にとって、柴田さんは“友情”と“飲み物”について歌う共通点を持つ、大好きな先輩DIVAです。マウンテンデューを「あるとうれしい泡の飲みもの」と歌ったり、コーヒーを飲んでいる様子のことを「黒い水をすする」と表現したり、いつも飲み物へのものすごくしっくりくる独自の視座があってしびれます。私は今、ウォーターサーバーってどうやって歌詞に出そうかなって悩んでるとこなんですけど。柴田さんの歌詞には、どうしてこうなったんだろう?と驚くようなものがあるのに、それは一方でどうしてもこうだったんだろうなと即座に納得できるような言葉でもあって、新曲を楽しみにするのはもちろん、1曲を聴いている間にも、次の行、次の瞬間に歌われることを楽しみにし続けている、そんな存在なのです。どれだけ気さくに明瞭に話し合えても、歌の中にあるほんとうの螺旋は、柴田さん自身も自覚していない領域があるのだろうと感じます。ラブソングというデカすぎる命題がある前で「友情をどう捉えてる?」と聞かれたとき、うまく答えられなかったけど、今思えば、頭がよじれないほうの大切なやつ、だなと感じています。恋と友情の違いは、頭がよじれるかどうか。恋してる人って頭よじれてる。友情にもたくさんの感情を使うけど、頭はよじれない。どちらにせよ、作詞という作業自体が私にとって頭のよじれることなんだけど。はあ、ラブソングか友情ソングかの区別を飛び越えたような関係性の作詞をしてみたいなとずっと思ってるんですよね。YUKIなら「ハミングバード」、globeなら「Wanderin’ Destiny」、aikoなら「ひまわりになったら」みたいな歌が全て好きなのでね。もっともっと書くぞと改めて思いました。対談後はやはりそのまま柴田さんと二人でカラオケへ。最初に安室奈美恵さんの「Baby Don’t Cry」を歌ってくれて私は感激。中島みゆきさんのコンサートを観に行く旅行の約束までして、本当にこの対談企画は最高の連載だと思いました。DIVAの友情発生。ありがとうございました、柴田さん、そして、anan様……。ゆっきゅん1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。X、インスタ(@guilty_kyun)を要チェック。※『anan』2024年4月24日号より。写真・幸喜ひかり文・綿貫大介(by anan編集部)
2024年04月24日皆さんは、近所の人とトラブルになった経験はありますか? 今回は「女性が家にやってきた理由」にまつわる物語とその感想を紹介します。※この物語はフィクションです。イラスト:モナ・リザの戯言近所の女性が…夫と息子と暮らしている主人公。ある日突然、近所の女性が家にやってきました。女性は「あんたの子がうちの子を妊娠させたのよ!」と激怒しています。主人公は困惑して「うちの子…まだ5歳ですけど」と息子を紹介。しかし女性が言っていたのは、猫のことでした。女性が飼っている血統書付きの猫が家から逃げ出し、主人公の家の猫と会っていたようなのです。どうやら主人公の息子が猫を外に遊びに行かせてしまったようで…。責任を押しつけられ…出典:モナ・リザの戯言女性は「雑種の子はいらない!面倒見なさい!」と怒鳴ります。そのため、主人公は「わかりました」と、しばらく女性の猫を預かることに。すると女性は「何かあったら承知しない!」と圧をかけてくるのでした。読者の感想「雑種の子はいらない」なんて、女性の言動はひどすぎますね…。しかしそんな飼い主より主人公が預かったほうが、生まれてくる猫は幸せなのではないかと思いました。(30代/女性)まさか飼い猫が妊娠するなんて、近所の女性も想像していなかったのかもしれませんが…。どちらの責任でもないのに、責任を擦りつけるのは身勝手すぎるなと思いました。(20代/女性)※本文中の画像は投稿主様より掲載許諾をいただいています。※作者名含む記事内の情報は、記事作成時点のものになります。※実際に募集した感想をもとに記事化しています。(lamire編集部)
2024年04月24日