今回、ご紹介するのは、映画『君は放課後インソムニア』。眠れない高校生を満点の星が優しく包む青春物語です。ダブル主演を務めた森七菜(もり・なな)さんと奥平大兼(おくだいら・だいけん)さんにお話をうかがいました。「出演は叶うことのない夢だと思っていました」左から、奥平大兼さん、森七菜さん【イケメンで観るドラマ&映画】vol. 143映画『君は放課後インソムニア』(通称:君ソム)の原作は、『富士山さんは思春期』『猫のお寺の知恩さん』などで知られる青春漫画の旗手・オジロマコト氏が手がけた人気コミック。不眠症という共通の悩みを持つ主人公ふたりが、休部中の天文部を復活させるため、周りの人たちの温かいサポートを受けながら一歩ずつ歩みを進め、次第に絆を強めていく姿を描いた物語は、幅広い世代の共感を呼んでいます。そんな中、2023年4月からアニメ版が放送を開始。実写映画が現在全国で公開中など、多方面で“君ソム”が話題となっています。映画『君は放課後インソムニア』のダブル主演を務めるのは、今、もっとも注目を集める若手実力派のふたり。不眠症に悩む女子高生・曲伊咲(まがり・いさき)を演じるのは、新海誠監督の『天気の子』でヒロインの声優に抜擢され、是枝裕和監督が総合演出・脚本を担当したNetflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』で主演を務める森七菜さん。そして、伊咲と同じ不眠症に悩むもうひとりの主人公・中見丸太(なかみ・がんた)を演じたのは、映画『MOTHER マザー』で第44回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した奥平大兼さん。本作の撮影は、2022年の7月から8月にかけて、原作漫画の舞台でもある石川県七尾市を中心に敢行。海や山に囲まれた土地に流れる空気の中、フレッシュなキャストたちが、細かく揺れ動く主人公たちの心情を見事に演じきっています。ーー原作者のオジロ氏が「実写化するなら伊咲は森さんしかいない」と熱望されていたそうですね。しかも、森さんご自身が原作のファンで「この作品を実写化するなら絶対参加したい」と思っていらしたとか。本作の出演オファーをいただいたとき、どう思いましたか?森さん出演は叶うことのない夢だと思っていたので、オファーをいただいたことが信じられませんでした。私が現場に存在した意味があるように、撮影を頑張ろうと思いました。ーー役柄に共感したところや役作りについて教えてください。森さん眉毛が太いところや、明るくふるまおうとする性格は、自分と似ていると思っていました。自分にならないよう、伊咲を大切にして演じました。奥平さん丸太は、最初は素直じゃなくても、ちゃんと成長できるところが良い子だなと思いました。僕自身、高校生の頃は、悩みを打ち明けたり、共有したりすることをハードルが高いと感じていました。それができる伊咲と丸太の関係は素晴らしいと思いました。役作りとしては伊咲ありきの丸太、伊咲からもらうものに対して、素直に反応する丸太でいようと心がけました。どう反応するかを僕の感覚に任せてくれた監督に感謝しています。森七菜さんーーおふたりは初共演だそうですね。お互いの演技から、気づきを得たところは?奥平さん僕はこれまでシリアスな役を演じることが多くて。自分を出すような明るい役をやってみたいと思っていました。森さんはそういう演技のお手本のようなことができる方でした。演技を観ていると、感覚で演じているのかなと思うほどすごく楽しい気持ちになるんです。森さんが演じる伊咲は噓をつかないし、丸太に何をしようとしてくるのか分からない。次に何が来るのか分かってしまうと、「こうしようかな」と準備してしまうのですが、森さんについては本番中にダジャレを言うなど、全く予測ができなくて、こちらも丸太として自由に反応できました。ーーそのダジャレはアドリブですか?森さんそうです(笑)。奥平さんよく思いつくよね(笑)。森さん本編に使われないかもしれないけれど、丸太に聞いてほしいと思いながら言いました。奥平さんでも使われていたね。すごく面白かったです。森さん笑ってくれてよかったです。奥平大兼さんーー奥平さんの印象はいかがでしたか?森さん出演された作品を観て、すごい演技をされる方だなと思っていました。お会いする前は、何でも自分でやって、自分の世界を完全に確立している、一匹狼のような印象を抱いていましたが、撮影に入ると、私がうまくいかないときに、奥平くん自身のボルテージも上げて、助けてくれるんです。自分の世界と優しさを持ってお芝居ができる方なんだなと思いました。ーー主なロケ地となった石川県七尾市は、とても美しい場所ですね。奥平さん映像を観ていると七尾市に行きたくなります。映画のチラシに載っている田んぼ道は、とても印象に残っています。森さん私もこの写真がとても良いなと思っています。特に丸太の靴紐が片方はずれているところが、彼らしくて好きです。奥平さん(爆笑)ーーこの靴紐はわざとですか?奥平さん無意識です。森さん役作りですよ。現場で奥平くんが「ちょっとはずして良いですか?」と言っていました(笑)。奥平さんそんなことは、言っていません(笑)。ーー最後に本作の見どころをお願いいたします。奥平さん登場人物が、実際に七尾市でちゃんと生きているように感じる映画です。伊咲と丸太の高校生ならではの行動に、同世代の方は共感できると思います。伊咲と丸太の家庭環境にも重きを置いているので、そこは大人の方も共感できると思います。いろんな世代の方に観ていただきたいです。森さん原作コミックもアニメも素晴らしい内容です。映画は、原作のお話をより現実に近づけて描いています。自分の隣にいる方の想い出のような、近い距離の物語です。友だち関係、恋愛関係、親子関係など、いろんな立場のキャラクターが登場します。観ていただいた方すべてにあてはまる場所があると思いますので、ぜひ気軽に劇場へ観に来ていただきたいです。インタビューのこぼれ話映画のチラシに使われているのは、ゲームセンターまでの道のりをふたりで自転車に乗っていくシーン。「撮影2日目ぐらいの、序盤に撮ったシーンです。海もキレイでした。写真を見返していると、七尾市に行きたくなります」(奥平さん)。「後でこんなに大きく使われるとは知らず、このときは気を抜いて笑っているんです。とても楽しい撮影でした」(森さん)。Information映画『君は放課後インソムニア』全国公開中出演:森 七菜、奥平大兼原作:オジロマコト「君は放課後インソムニア」(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中/単行本1~13集発売中。監督:池田千尋脚本:髙橋泉 池田千尋主題歌:TOMOO「夜明けの君へ」(ポニーキャニオン/IRORI Records)企画・制作プロダクション:UNITED PRODUCTIONS製作:映画「君ソム」製作委員会配給:ポニーキャニオン©オジロマコト・小学館/映画「君ソム」製作委員会写真・安田光優文・田嶋真理 スタイリスト・山口香穂(森さん)伊藤省吾(奥平さん)ヘアメイク・宮本愛(森さん)速水昭仁(奥平さん)写真・安田光優 文・田嶋真理 スタイリスト・山口香穂(森さん) 伊藤省吾(奥平さん) ヘアメイク・宮本愛(森さん) 速水昭仁(奥平さん)
2023年06月25日週刊ビッグコミックスピリッツ連載中の漫画『君は放課後 インソムニア』について、著者のオジロマコトさんにお話を聞きました。不眠症に悩む高校生が織りなす、ボーイ・ミーツ・ガールの行方は。能登にある九曜高校に通う中見丸太(なかみ・がんた)。目下の悩みは不眠症。日中眠くて不機嫌そうな中見は、クラスでもやや浮いた存在だ。文化祭の準備に忙しい女子クラスメイトからダンボールを運んでくるように言われ、本館に出向く。実は、この高校には本館3階に幽霊が出るという噂が。そのいわく付きの場所にあるのが、廃部になった天文部の部室なのだ。中見が、いまは物置代わりになっているその場所に足を踏み入れてみると、そこにいたのはクラスメイトの曲伊咲(まがり・いさき)。お互いが不眠症であり、「自分は変なのではないか」と悩んでいることを打ち明け合うことに…。そんな高校生男女の一風変わった出会いから、『君は放課後インソムニア』の幕は開く。その著者がオジロマコトさん。「不眠をテーマに取り組んでみようと思ったのは、自分自身も小中学校のころに、眠れなくて苦しかった夜があったからですね。いまも周りに眠れずに悩んでる人が多くいて、共感してもらえると思いました。中見と伊咲は、相反するタイプにしようと考えました。中見がメガネを直すときの手つきとか、伊咲のそのときどきの気持ちがそのまま歩き方に出てしまうとか。そういう仕草の積み重ねで、それぞれのキャラクターができあがってきたと思います」眠れない中見と伊咲は、家を抜け出して夜の散歩をしたり、天文台のある部室を居心地よく整えたり、部室に迷い込んできた猫を保護したり……。ふたりだけの秘密が増えるにつれ、距離も近づいていく。そんな甘酸っぱい展開も読みどころ。「普段歩き慣れている場所も、夜だと特別な場所に見えると思うんです。日常の学校生活に安全地帯のないふたりだからこそ、安心できる場所を用意してあげたかった。それが、あの天文台のある部室。ささやかなことでも、ふたりですれば特別な楽しい体験になるのだろうなと」物語の伏線はいくつも用意されているが、まだまだ予測不能な展開だ。「天文部としての活動や、花火大会、臨海学校などの学校行事のたびに、ふたりにはさまざまなことが起きていきます。その中で、彼らが抱えているものや過去のことなどが少しずつ見えてくるはず。ふたりだけの特別な時間や新たな場所を増やしていくつもりなので、見守っていただけたらうれしいです」表情豊かな中見と伊咲を追っていると、彼らと一緒に夜の冒険を楽しんでいるかのような気分になれる。続きが楽しみ。オジロマコト『君は放課後インソムニア』1幽霊の噂から近寄る人もいなかった天文部の部室で、中見と伊咲は、つかの間の眠りといくつかの秘密を共有することに…。週刊ビッグコミックスピリッツ連載中。小学館591円©オジロマコト/小学館オジロマコトマンガ家。代表作に『富士山さんは思春期』(全8巻)、『猫のお寺の知恩さん』(全9巻)等。12月に『君は放課後インソムニア』2巻が発売予定。※『anan』2019年11月20日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年11月14日