9月11日(現地時間)、監督作『Wildcat(原題)』がプレミアを迎えるトロント国際映画祭にて、主演で娘のマヤ・ホークとレッドカーペットを歩いたイーサン・ホーク。実は、イーサンが飛行機トラブルに遭い、長距離バス(グレイハウンド)に乗ってなんとかイベントに出席できたという裏話があったという。マヤは「父はバスに乗ってきました。みんなの話題になっていますよ。すべての飛行機が欠航になってしまって、ここまでバスで来るしかなかったんです」と「People」誌に語った。イーサンは「3便のフライトがキャンセルになり、『空港のせいでイベントを欠席するわけにはいかない!』と思って。だからバスターミナルに行ってバスに飛び乗りました」と補足した。その時イーサンと一緒にいたのは妻と仕事のパートナーで、マヤとは別々に向かっていたのだという。「バスの中では、だれも他人のことなんて気にしていません」「快適ではないですね」と長距離バスの感想を語ったイーサン。「私は後ろの方で身を隠すようにして、ただ本を読んで、なんとか間に合うようにと祈っていました」とドキドキしながら乗っていたそうだ。その結果、無事に間に合い、親子でレッドカーペットを歩くことができた。(賀来比呂美)
2023年09月13日2007年、トロント映画祭で上映された主演映画『JUNO/ジュノ』で大ブレイクを果たしたエリオット・ペイジが、トランスジェンダー公表後初めて主演した『Close to You(原題)』を引っ提げ、再び同映画祭に帰ってきた。本作はメガホンを取ったドミニク・サヴェージ監督が、映画祭の前に「この映画はエリオットと一緒に、エリオットによって、エリオットのために作られた作品」と語っており、本作のルーツはエリオット自身の“旅”であると認めている。エリオットが演じているのは、トランスジェンダーの主人公サム。4年前に性別移行してから父の誕生日を祝うために初めて実家を訪れるという話だ。青年期のほとんどを鬱との闘いに費やしたサムは、トランスジェンダーの男性としてついに幸せを見つけたが、家族の反応は…?『Close to You』の上映後、観客から歓声と拍手を受けて登壇したエリオットは、作品について「私のキャリアにおいて本当に素晴らしい経験の一つになりました」と感慨深げに語った。また、サヴェージ監督との再タッグを熱望。「シーンがずっと続いて深まっていき、演技の最も純粋な喜びを感じられるんです」と即興的な演技がしやすいアプローチをとってくれる監督を称えた。(賀来比呂美)
2023年09月12日9月8日(現地時間)、トロント国際映画祭で宮崎駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』がオープニング作品として上映された。上映前にギレルモ・デル・トロ監督が舞台にサプライズ登場し、プレゼンターを務めた。これまで何度も引退宣言を行い、撤回&復帰してきた宮崎監督。今作こそがいよいよ最後の作品かとうわさされ、海外でもそう報じるメディアもあったが、スタジオジブリの広報・学芸担当スーパーバイザーの西岡純一氏によると、これは事実ではないという。同作のプロモーション中に、西岡氏は「これが宮崎監督の最後の作品と言われているようですけれど、監督は全くそのようには思っていないんです。監督はいま、新しい作品のための構想を練っているところです。毎日オフィスにやってきては、そうしています。今回は、引退宣言しませんよ。いつもと変わらず仕事を続けています」とコメント。宮崎監督に代わって引退報道を否定した。海外の映画ファンは「素晴らしいニュース」「神様ありがとう」「新たな作品を楽しみにしています」などの喜びの声や「こんなことが起きるなんて!また何回目かの引退宣言があると思っていたのに!」といった驚きの声を上げている。米映画評論サイト「Rotten Tomatoes」で批評家(現時点で28人)からの支持率が100%と高い評価を受けている『君たちはどう生きるか』。全米公開は12月8日を予定している。(賀来比呂美)■関連作品:君たちはどう生きるか 2023年7月14日より公開©2023 Studio Ghibli
2023年09月11日第80回ヴェネチア国際映画祭が閉幕。コンペティション部門へ正式出品された濱口竜介監督最新作『悪は存在しない』(英題:Evil Does Not Exist)が「銀獅子賞(審査員大賞)」を受賞。最高賞の金獅子賞はヨルゴス・ランティモス監督、エマ・ストーン主演『哀れなるものたち』に。また、オリゾンティ・コンペティション部門に正式出品されていた塚本晋也監督の最新作『ほかげ』がNETPAC賞(最優秀アジア映画賞)を受賞した。濱口監督は、映画『偶然と想像』で第71回ベルリン国際映画祭の審査員グランプリ(銀熊賞)を受賞、映画『ドライブ・マイ・カー』(21)では第74回カンヌ国際映画祭で日本映画初となる脚本賞を含む計3部門を受賞(第94回米アカデミー賞国際長編映画賞も受賞)、それに続くヴェネチアでの受賞という世界3大映画祭を制覇する快挙となり、日本人では黒澤明監督以来となった。さらに今回、映画祭本体とは別機関からの「並行賞」として、国際映画批評家連盟によって選ばれる、ヴェネチア国際映画祭の独立賞のひとつ「国際批評家連盟賞」と、「企業の倫理」について考察を与える映画に送られる賞「映画企業特別賞」、特に「環境問題」に対する現代的アプローチに対して贈られる「人・職場・環境賞」と3つの賞も受賞している。『悪は存在しない』石橋英子の音楽が「導いてくれました」授賞式で濱口監督は、「このような素晴らしい賞をいただけるとは、この企画が始まった時は思いもよりませんでした。音楽の担当でもありこの企画の発案者でもある石橋英子さんに感謝をしたいと思います。彼女の音楽が、私を今まで体験したことがないところへ導いてくれました」と、『ドライブ・マイ・カー』でもタッグを組んだ音楽の石橋さんに言及。「そして主演の大美賀均さん、そこで(客席を指差し)カメラを構えている撮影の北川喜雄さん、この3人で脚本を書く前に一緒にドライブをして薪割りをしてこの映画をどのようなものにしようかと考えていました。この旅をしながらここまで来られて嬉しく思っています。そしてキャスト、スタッフ全ての力があってこのような素晴らしい賞をいただけたと思ってます」と語った。また、公式カンファレンスでは、「この映画はアートハウス系の映画でかつ非常に小規模のチームで作られました。小規模で自由に作った映画がこのように評価を受けるということは、映画制作の見方そのものを変えるきっかけになるのではないかとは思います」と、自身の考えをコメント。その後のメディア取材で、主演の大美賀均も「先ほど濱口監督がお話されていますが、すごく小さなチームから始まりました」と語り、「その頃の想像よりはるかにすごいところまで連れてきていただいてありがとうございます」と感謝。今回のコンペティションの中でアジアの作品として唯一だったことについて、濱口監督は「全体的にどういう風に自分たちの作品が位置付けられているか分かりませんけれども、きっと他にもいいアジア映画があったと思います。たった1本であったというバランスについて、選んでいただいたこと自体はとてもありがたいことですけれども、そのバランスは本当なのかっていうことは多少思うところではあります」とコメント。『偶然と想像』のベルリン国際映画祭銀熊賞に続いて、今回は銀獅子賞で、最高賞に届きたかったかと問われると、「そういう思いは、本当に少しもないです(笑)」と濱口監督。「こうやって賞をいただくことも思ってもみなかったので。そういう気持ちもそもそもないですね。それが正直なところです。自分達にとっては一番いいものをいただいたという感じです」と話していた。『悪は存在しない』は2024年、公開予定。塚本晋也監督『ほかげ』がNETPAC賞、日本人監督受賞は初また、日本人監督の受賞は初となる快挙となったのが、『ほかげ』。NETPAC(正式名称Network for the Promotion of Asian Cinema)とは、1990年にアジア各国の良質な作品や優秀な若き映画製作者を世界に広めるために設立された国際団体。同団体の審査員により選ばれるNETPAC賞は、最優秀アジア映画賞として世界の60以上もの映画祭に設けられている。ヴェネチア国際映画祭でNETPAC賞が授与されたのは、ジャ・ジャンク―監督『プラットホーム』(00)、ババク・パヤミ監督『1票のラブレター』(01)、ゲラ・バブルアニ監督『13ザメッティ』(05)に続き4度目。NETPAC賞の審査員長を務めたザキール・ホセイン・ラジュ氏は、「第80回ヴェネチア国際映画祭にて、一番感動した映画として『ほかげ』を選出いたしました。ただの映画としてではなく、戦後の映画として人と人の関係が変わっていく様子などを映画的に、閉所な空間で衣装やセット、メイクなどでみせていく。あまりこのような映画は観たことがなかった」と称賛。フォトコールにて塚本監督は、「生まれたばかりで、まだどんな反応かわからないこの映画に対して、最初の評価みたいなものをいただけてホッとしました。一番にスタッフに伝えたいです」と喜びのコメントを寄せた。『ほかげ』は11月25日(土)よりユーロスペースほか全国にて順次公開。第80回ヴェネチア国際映画祭コンペ部門、主な受賞結果金獅子賞(最高賞):ヨルゴス・ランティモス監督『哀れなるものたち』銀獅子賞(審査員賞):濱口竜介監督『悪は存在しない』銀獅子賞(監督賞):マッテオ・ガローネ監督『Io capitano』(原題)男優賞: ピーター・サースガード『Memory』(原題)ミシェル・フランコ監督女優賞:ケイリー・スピーニー『Priscilla』(原題)ソフィア・コッポラ監督『哀れなるものたち』『哀れなるものたち』は2024年1月26日(金)より全国にて公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:哀れなるものたち 2024年1月26日より全国にて公開©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.ほかげ 2023年11月25日よりユーロスペースほか全国にて順次公開©2023 SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER
2023年09月10日堀田真由と小林薫が共演し、日本が誇る伝統工芸・津軽塗が繋ぐ父娘の物語を描いた『バカ塗りの娘』がバンクーバー国際映画祭に出品されることが決定。さらに新たな場面写真も解禁された。9月1日より全国公開となった本作は、「津軽塗の美しさに感動した」「故郷を思い出して、家族に会いたくなった」「それぞれの登場人物が踏み出す姿に勇気をもらった」「見終わった後、温かい涙が溢れ出た」など、絶賛の感想が続々と寄せられ、【ミニシアターランキング】では第1位(初週金土日の動員数 ※興行通信社調べ)にランクイン。300年以上も変わることなく受け継がれてきた津軽塗だが、近年は若手職人を中心に、現代のニーズに合わせ、若い感性を活かし新たな可能性を広げる取り組みもされている。劇中でも主人公・美也子(堀田真由)は、廃校になった小学校のピアノに津軽塗を施すという新しいことに挑戦する。この度、「津軽塗をやっていくことは簡単じゃない」と言う津軽塗職人の父の反対を押し切りながらも、既成概念にとらわれない新しい津軽塗に挑戦した美也子の姿と、出来上がった鮮やかなピアノを嬉しそうに眺める兄・ユウ(坂東龍汰)とユウのパートナー・尚人(宮田俊哉)の姿を切り取った場面写真が解禁された。ピアノにはカラフルな津軽塗の模様が施され、その美しく丁寧な仕上がりに思わず見入ってしまうほど。劇中で使用された津軽塗のピアノは、現在、弘前市立博物館にて展示中(9月18日まで)。また劇中において、美也子の塗った津軽塗のピアノがオランダで展示されることが決まるが、この映画『バカ塗り娘』自体も、青森から全国へと公開が広がり、海外映画祭が続々決定。今月オランダで行われる第18回カメラジャパン・フェスティバルへの出品に続き、9月28日から開催される第42回バンクーバー国際映画祭パノラマ部門への出品も決定した。劇中と同様に、世界へと羽ばたこうとしている本作に注目が集まる。『バカ塗りの娘』は全国にて公開中。(シネマカフェ編集部)■関連作品:バカ塗りの娘 2023年9月1日より全国にて公開※青森県先行あり(C)2023「バカ塗りの娘」製作委員会
2023年09月09日9月16日、トロント国際映画祭でシルベスター・スタローンのドキュメンタリー映画『Sly(原題)』がワールドプレミアを迎える。『ランボー』『ロッキー』『エクスペンダブルズ』シリーズに主演し、アクション俳優として確固たる地位を築いてきたが、画家という顔も持つスタローン。『Sly』のワールドプレミアに先駆け、7日(現地時間)開幕した同映画祭で彼のアートワークを展示する回顧展を開催中だという。1975年から2020年までにスタローンが制作した12の絵画やアートワーク、スタローンのサイン入りの『ロッキー』のオリジナル脚本や記念品も展示されているという。絵画には、スタローンが俳優のキャリアをスタートする際に力を貸してくれた最初のマネージャー、ジェーン・オリバーが亡くなった日に描いた「Death of Friend」などがある。ハリウッドでスーパースターになる前から絵を描いていたスタローン。フランス、ロシア、ドイツなどで個展を開いたこともあり、「大盛況」と報じられた。トム・ジミー監督(『エルヴィス・プレスリー:ザ・サーチャー ~キング・オブ・ロックの魂の記録~』)がメガホンを取った『Sly(原題)』は、11月3日Netflixで配信開始(アメリカ)。(賀来比呂美)
2023年09月08日映画祭『第45回ぴあフィルムフェスティバル2023』が9日(土)から東京の国立映画アーカイブで開催される。1970年代から始まった本映画祭も今年で45回目。記念すべき50回が視界に入ってきたこのタイミングで、超大型企画がスタートする。「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」は世界最大級の自主映画のコンペティション“PFFアワード”をメインプログラムにしている映画祭。全国から集まった自主映画を上映するだけでなく、名監督の作品や、観る機会の少ない名作、上映と講演を組み合わせたプログラムなど独自の企画で映画ファンの信頼を集めている。そんなPFFが50回目の開催まで連続して開催する超大型企画が、今年スタートする“イカすぜ!70~80年代”だ。このプログラムでは、PFFがスタートした1970年代から現代までを毎年10年区切りで扱い、自主映画のみならず当時の傑作の数々を上映し、時代を、歴史を体感する企画だ。50回を迎えるタイミングで何か大きな企画をやりたかった本映画祭のディレクターを務める荒木啓子氏は「50回を迎えるタイミングで何か大きな企画をやりたいとずっと思っていました」と語る。「そんなタイミングで、大森一樹監督、斎藤久志監督、日比野幸子プロデューサーが亡くなられました。追悼上映、という考え方もあるのかもしれないですが、いまは大森監督の映画を観たければ配信でいくらでも観ることができます。斎藤久志監督日比野幸子プロデューサーでも、その作品がつくられた1970年代や80年代の別の作品を一緒に観る人は少ない。“同時代の作品を横断して観る”経験をするのはいま非常に難しくなってきている。だからこそ、時代で区切って、同時代の複数の作品を同時に観る機会は映画祭にしかつくれないと思いました。今年からはじめて、来年は“80-90年代”と続いていって、PFFが50回目を迎える2028年に“これからは映画の新しい時代です”と言えれば、と思っています。8ミリの登場を考えると、自主映画もすでに70年ぐらいの歴史があるので、このタイミングで振り返っておく必要があるとも思いました」荒木ディレクターが語る通り、この企画はあえて複数のプログラムや企画が同時に開催され、それらを横断して観ることで発見や楽しさが増幅される内容だ。中でも、先ごろこの世を去った大森一樹監督の自主映画時代の作品は、いまの若い観客にも驚きをもって迎え入れられるだろう。とにかく若い監督たちにはたくさん映画を観てもらいたい「PFFにとって大森一樹監督はとても重要な存在。当時、大森一樹と森田芳光がいたことで、自主映画の未来が拓けたと多くの人が実感したと思います。だからこそ、大森監督が亡くなったタイミングでPFFができることは、大森監督の自主映画を上映することだと思いました。PFFは長年にわたって『8ミリ映画が消えてはならない』という想いで8ミリの作品をデジタル化してきたので、その成果を観ていただきたいという試みでもあります。〈大森一樹監督再発見〉より『革命狂時代』(大森一樹監督/8ミリ)〈大森一樹監督再発見〉より『明日に向って走れない!』(大森一樹監督/8ミリ)大森監督の8ミリ時代の作品を観ていただくと、彼がどれだけアメリカ映画が好きで、どれだけアメリカ映画みたいなものをつくろうとしていたのかがよくわかると思うんです。それは今回上映する小津安二郎監督も同じなんですよね。小津安二郎もアメリカ映画を愛して、アメリカ映画みたいなものをつくろうとしていた。好きな映画を真似したい、自分がカッコいいと思う映画をつくりたいという経験を若い監督たちにもしてもらいたいんです」〈斎藤久志再発見〉より『うしろあたま』(斎藤久志監督/8ミリ)PFFのプログラムの最大の特徴は、来場者はもちろん、PFFアワードに入選した若い監督たちにも観てもらいたい内容になっていることだ。「映画監督はたくさんの映画を観ることで磨きがかかる、というテーマがこの映画祭には常にあります。語られ続ける映画監督はとにかくたくさんの映画を観ているし、どれだけ映画を観てもそこで得たものを自分の映画に転化することができる。真似を恐れず、影響を恐れず、とにかく過去のアイデアを盗もう。このことはずっと言い続けていきたいと思っています。〈日比野幸子プロデューサー再発見〉より『風櫃(フンクイ)の少年』(侯 孝賢監督)映画だけでなく、絵画でも音楽でも、創作者は本当にいろんなものを観ている。いまは配信もあって、苦労せずにこれだけたくさんの映画を観られるので、とにかく若い監督たちにはたくさん映画を観てもらいたいんです」もし時間が許せば、映画祭の期間中、複数のプログラムに足を運ぶことをおすすめする。ひとつの作品だけでなく、同じ時期に製作・公開された映画も観ることで初めて見えてくるものがある。新たな視点が浮かび上がってくる。映画館では体験できない“映画祭ならでは”の驚きと発見を味わってほしい。『第45回ぴあフィルムフェスティバル2023』9月9日(土)~23日(土) 東京・国立映画アーカイブ10月14日(土)~22日(日) 京都文化博物館※月曜休館公式サイト()【招待部門】“イカすぜ!70~80年代”()
2023年09月08日塚本晋也監督作『ほかげ』がヴェネチア国際映画祭にて上映され、森山未來、塚尾桜雅、塚本監督が登壇した。新鮮で革新的な作品で構成されるオリゾンティ・コンペティション部門に出品されている本作。塚本監督作品がヴェネチア国際映画祭に選出されるのは、『斬、』以来5年ぶりで、9月5日(現地時間)に、レッドカーペット、公式上映、記者会見、フォトコールが行われ、ワールドプレミアを迎えた。今回、現地には、塚本監督をはじめ、物語の狂言回しとなる戦争孤児を演じた塚尾桜雄、片腕が動かない謎の男役の森山未來が参加している。本編の終盤、エンドロールに差し掛かるやいなや、早くも場内からは惜しみない拍手と歓声が巻き起こり、劇場を埋め尽くした観客たちから、約8分間のスタンディングオベーションが巻き起こった。熱気に包まれた会場と超満員の観客からは同作への評価の高さがうかがえた。上映後には、観客とのQ&Aの場が設けられ、塚本監督は「まずは、ありがとうございました!grazie!」と感無量の表情で挨拶。作品について尋ねられると、「今回の『ほかげ』は、実際に戦争に行った人だけではなく、戦争のせいで恐ろしい目に遭った一般の人たちの目を通した物語です。僕自身は歳を取ったので召集されることはないでしょうが、もし今後、戦争に行くとなったら若い人たちです。そういったことが起きないようにという願いを込めて制作しました」と思いを語った。森山さんは、「塚本監督の映画はどれも力強い作品だと感銘を受けていたので、今回、作品に参加させていただけるということを光栄に思っています」と初の塚本作品、そして、本作でヴェネチア国際映画祭に参加できたことへの感謝の意を表し、大きな拍手を浴びた。また、初めての海外映画祭への参加となった塚尾さんは「「Mi chiamo OGA. Ho 8 anni. Piacere!(僕の名前は桜雅です。8歳です。はじめまして!)」と、一生懸命覚えたというイタリア語での挨拶を披露し、会場を沸かせる一幕も。上映を終え、塚本監督は「実は、『ほかげ』は僕自身がとっても好きな映画にできたんです。また、今回、このような大きなスクリーンで上映できて嬉しかったですし、お客さまが皆、息を詰め、集中して観てくださっていて、観終わった後に、祈りの思いが伝わったという感触を非常に強く感じられました。とても嬉しいです」と喜んだ。そして、森山さんは、「ヨーロッパの映画祭に参加したのは僕自身初めて。ヴェネチア国際映画祭という場所にこの作品で来られて、本当に光栄です。監督の込めた祈りやエネルギーがこれからどういう風に観客に届いていくのだろうと楽しみでもあります」と語り、塚尾さんは「自分が出ている映画を多くの方が観てくれていると思うと、すごく嬉しい気持ちでいっぱいです!」と一生懸命に伝えてくれた。ヴェネチア国際映画祭には9度目の参加の塚本監督だが、今回、初めて観客からのQ&Aの場に立ち会い、「お客さまが的確で実感のこもった質問をしてくれたので、想像以上に大事なことを伝えられた気がします。今の世の中の不安とか、戦争に近付いてきているということを伝えられたし、皆さんが真剣に聞いてくださったので、とても良い時間になりました」とふり返った。『ほかげ』は11月25(土)よりユーロスペースほか全国にて順次公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:ほかげ 2023年11月25日よりユーロスペースほか全国にて順次公開©2023 SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER
2023年09月06日今泉力哉監督作『アンダーカレント』がバンクーバー国際映画祭のパノラマ部門に正式出品されることが分かった。また、9月21日(木)に完成披露上映会が実施されることも決定した。今回正式出品が決定したパノラマ部門は、世界各地から注目の映画を上映する部門。2018年には是枝裕和監督の『万引き家族』が外国長編映画観客賞を受賞し、今年も是枝監督の『怪物』の上映が決まるなど、近年日本映画が多く注目されている映画祭だ。バンクーバー映画祭プログラムガイドでは下記のように評価され、今回の上映に海外からも期待が寄せられている。また、今泉力哉監督からもコメントが到着した。「今泉力哉の心揺さぶるドラマは、『他人の心の内をどうすれば知ることができるのか』という、普遍的な問題に対し珍しいアプローチをする作品だ。映画の冒頭、かなえ(真木よう子)は夫の悟(永山瑛太)が忽然と姿を消して休業していた銭湯を再開しようとしていた。そこへ堀(井浦新)が仕事を探しに現れ、不穏な空気が流れ始める。一方、私立探偵の山崎(リリー・フランキー)は悟の失踪について調べていた。次第に、かなえが2つの重荷を背負った女性であることが浮かび上がってくる。解決できない謎と、あえて明かさない秘密。豊田徹也のマンガを映画化した今泉監督は、観る者に忍耐を求め、その忍耐に十分に報いる作品を作り上げた。ゆったりとしたペース、控えめな感情、心理的な曖昧さが、驚くべき事実を次々と明らかにするための完璧なお膳立てとなっている。瞑想的で、詩的で、さりげなく、『アンダーカレント』は挑発的な問いを投げかけ、豊かな答えを与えてくれる」(バンクーバー映画祭プログラムガイドより)<今泉力哉監督コメント>バンクーバー国際映画祭で本作が上映されること、とても嬉しく思っています。国や地域を超え、この映画のひとつの主題である「人をわかろうとすること」や「理解できない存在をそれでも理解しようとして寄り添うこと」がカナダの観客にどう届くのか、単純に楽しみです。埋められない心の穴や罪の意識を引き連れて、それでも他者と関わりながら生きていく登場人物たちが、映画が終わった後も観客ひとりひとりの中で生き続けますように。監督 今泉力哉また、9月21日(木)には新宿バルト9にて完成披露上映会を実施。真木よう子、永山瑛太、江口のりこ、そして今泉力哉監督が登壇する予定。解禁日時より先行予約がスタートする。『アンダーカレント』は10月6日(金)より全国にて公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:アンダーカレント 2023年10月6日より全国にて公開(C)豊田徹也/講談社(C)2023「アンダーカレント」製作委員会
2023年09月06日10月6日(金) 公開の映画『アンダーカレント』が、第42回バンクーバー国際映画祭のパノラマ部門に正式出品されることが決定した。『アンダーカレント』は、「漫画界のカンヌ映画祭」と呼ばれるフランス・アングレーム国際漫画祭でオフィシャルセレクションに選出されるなど、国内外で人気を誇る豊田徹也による同名漫画の実写化作品。突然夫が失踪してしまった銭湯「月乃湯」の女主人・かなえを真木よう子、夫が失踪したかなえの前に「働きたい」と現れる謎の男・堀を井浦新、失踪したかなえの夫の行方を期間限定で探すことになる探偵・山崎をリリー・フランキー、突然失踪したかなえの夫・悟を永山瑛太、かなえと悟の同級生でかなえに探偵・山崎を紹介する菅野を江口のりこが演じる。監督は『愛がなんだ』『ちひろさん』などを手がけた今泉力哉が務める。今回正式出品が決定したパノラマ部門は、世界各地から注目の映画を上映する部門。2018年には是枝裕和監督の『万引き家族』が外国長編映画観客賞を受賞し、今年も是枝監督の『怪物』の上映が決まるなど、近年日本映画が多く注目されている。映画祭のプログラムガイドには、「今泉力哉の心揺さぶるドラマは、“他人の心の内をどうすれば知ることができるのか”という、普遍的な問題に対し珍しいアプローチをする作品だ。映画の冒頭、かなえ(真木よう子)は夫の悟(永山瑛太)が忽然と姿を消して休業していた銭湯を再開しようとしていた。そこへ堀(井浦新)が仕事を探しに現れ、不穏な空気が流れ始める。一方、私立探偵の山崎(リリー・フランキー)は悟の失踪について調べていた。次第に、かなえが2つの重荷を背負った女性であることが浮かび上がってくる。解決できない謎と、あえて明かさない秘密。豊田徹也のマンガを映画化した今泉力哉は、観る者に忍耐を求め、その忍耐に十分に報いる作品を作り上げた。ゆったりとしたペース、控えめな感情、心理的な曖昧さが、驚くべき事実を次々と明らかにするための完璧なお膳立てとなっている。瞑想的で、詩的で、さりげなく、『アンダーカレント』は挑発的な問いを投げかけ、豊かな答えを与えてくれる」と評価され、今回の上映に期待が高まっている。第42回バンクーバー国際映画祭は、9月28日(木) から10月8日(日) にかけて開催。『アンダーカレント』は、9月28日(木) の21時、30日(土) の12時30分(いずれも現地時間)に上映される予定となっている。また、本作の完成披露上映会を9月21日(木) に新宿バルト9で行うことが決定。主演の真木をはじめ、永山、江口、今泉監督が登壇予定で、チケットは先行抽選販売を9月14日(木) まで実施中。■今泉力哉監督 コメントバンクーバー国際映画祭で本作が上映されること、とても嬉しく思っています。国や地域を超え、この映画のひとつの主題である「人をわかろうとすること」や「理解できない存在をそれでも理解しようとして寄り添うこと」がカナダの観客にどう届くのか、単純に楽しみです。埋められない心の穴や罪の意識を引き連れて、それでも他者と関わりながら生きていく登場人物たちが、映画が終わった後も観客ひとりひとりの中で生き続けますように。<作品情報>映画『アンダーカレント』10月6日(金) 公開公式サイト:完成披露試写会のチケット情報はこちら:豊田徹也/講談社 (C)2023「アンダーカレント」製作委員会
2023年09月06日監督・岩井俊二×音楽・小林武史で奏でる音楽映画『キリエのうた』が、「第28回釜山国際映画祭」A Window on Asian Cinema部門にて、招待作品として上映が決定した。アイナ・ジ・エンド、松村北斗(SixTONES)、黒木華、広瀬すずらが出演する本作は、壮絶な運命と無二の歌声を宿したキリエの音楽がつなぐ、13年に及ぶ壮大な愛の物語。降りかかる苦難に翻弄される男女4人の人生が、切なくもドラマティックに交錯していく。アジア最大級の映画祭の一つとして注目を集めている「釜山国際映画」。過去の同部門招待作品として、『そして父になる』『永い言い訳』『湯を沸かすほどの熱い愛』、一昨年には瀬々敬久監督『護られなかった者たちへ』、昨年はカンヌ国際映画祭にてカメラドール特別賞を受賞した『PLAN 75』が上映された。アジア圏で絶大な人気を誇る岩井監督。今回の決定に「アイナ・ジ・エンドさん、松村北斗さん、黒木華さん、広瀬すずさんという素晴らしい才能と共に撮影をした日々は、とても瑞々しく、いつまでも続いてほしいと思えるような至福の時間でした。そんな最高の仲間たちと作りあげたひさしぶりの音楽映画を、まず最初に釜山で上映していただけることを大変嬉しく思っています。この作品が、そしてアイナさんの歌が、釜山の観客のみなさんにどう響くのか、今からとても楽しみです」とコメントしている。併せて、場面写真も到着。キリエ(路花)、夏彦、イッコ(真緒里)ら3人がギターを楽しむ様子や、キリエとイッコの出会い、教師のフミや、ギタリストの風琴、謎の少女イワンの姿が切り取られている。『キリエのうた』は10月13日(金)より全国にて公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:キリエのうた 2023年10月13日より全国にて公開Ⓒ2023 Kyrie Film Band
2023年09月05日綾瀬はるか主演、行定勲監督の映画『リボルバー・リリー』が、第28回釜山国際映画祭オープンシネマ部門へ正式招待されることが決定。今年の同部門で、本作が邦画で唯一の上映作品となる。釜山国際映画祭は1996年に創設された、韓国・釜山で開催されるアジア最大規模の映画祭。中でもオープンシネマ部門は目玉となる部門で、人気、芸術性に富んだ新作や国際的に評価された作品が5作品選出され、メイン会場である「映画の殿堂」の野外スクリーンにて釜山最大の座席数(5,000席規模)で上映される釜山国際映画祭を代表する部門。昨年は、第95回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演女優賞など7部門を受賞した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』も上映された権威ある部門で、今年は本作が邦画で唯一の上映作品。同映画祭の開催期間は10月4日(水)~10月13日(金)。本作は10月11日(水)20時~海外で初上映される。行定監督は、「『リボルバー・リリー』が、釜山国際映画祭で上映されることを大変光栄に思っております。23年前、世界の扉を開くきっかけを作ってくれた釜山映画祭が、初めて挑戦した私の新しい映画表現をどんな風に受け止めていただくのかを、胸を高鳴らせながら、楽しみにしております」とコメント、監督自身6年ぶりで思い入れの深い釜山国際映画への出品決定に喜びを語っている。『リボルバー・リリー』は全国にて公開中。(シネマカフェ編集部)■関連作品:リボルバー・リリー 2023年8月11日より全国にて公開©2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ
2023年09月05日第80回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門へ正式出品された濱口竜介監督最新作『悪は存在しない』のワールドプレミアが、日本時間9月5日(火) 0時に開催。上映前に濱口監督と石橋英子(音楽)、主演の大美賀均、共演の西川玲、小坂竜士、渋谷采郁、そしてプロデューサーの高田聡がプレスカンファレンスとレッドカーペットに登場した。各国のジャーナリストで埋まったプレスカンファレンス会場は熱気に包まれており、キャスト&スタッフ陣が登壇すると盛大な拍手に包まれた。本作を作ることになった経緯を聞かれた濱口監督は、石橋から自身の音楽ライブで使う映像を依頼され、普段の自分の作り方でまず劇映画を作り、その後で音楽用の映像にする2段階の過程を踏んで製作する中で、その元となる映画が今回の『悪は存在しない』になったと語った。(C)KAZUKO WAKAYAMAさらに「本作は環境問題を意識したものか?」という質問に対して、濱口監督は「語る立場にはないが」と断った上で、「自分は全ては視覚的に考えるところからはじめ、それに今回の石橋さんとの調和を意識し、その間に自然がある。その自然に人間をおくと必然的に環境問題という言葉が出てくるが、それは大きな問題というより日常的な問題で、その解決には対話が必要だが、しかし今の社会は対話を尊重しておらず、それを映画にした」と明かした。またレッドカーペットは、高田プロデューサーから撮影の北川喜雄、キャストの渋谷、小坂、西川、大美賀、石橋、濱口監督の順で登場。特にキャスト陣はレッドカーペットの独特な雰囲気に若干緊張しながらも、次第に観客やスチールからの声に笑顔で答えたりして楽しんでいた。濱口監督がヴェネチアの映画ファンに近寄りサインに応えると歓声があがり、子役の西川も考えたてのサインを書き、そのキュートさにヴェネチアの映画ファンも驚いていた。(C)KAZUKO WAKAYAMAその後行われた本作のワールドプレミアは、満席の観客で埋めつくされ、場内はこれから始まる濱口の新作を待つ緊張感が漂っていた。上映前に濱口監督をはじめとしたキャスト・スタッフ陣が2階の客席に登場すると大きな声援がわき、ひと通り場内全体に向かって挨拶を終えると、本編の上映がスタート。あっという間に映画に引き込まれた場内は、息を呑むラストシーンを迎え、それまでの沈黙を破る拍手であふれた。それから約8分間のスタンディングオベーションが始まり、興奮の中でワールドプレミアは終了した。(C)KAZUKO WAKAYAMA囲み取材で濱口監督は「イタリアという土地柄か企画当初では思いもよらないほど非常に温かく、情熱的に迎えてもらいありがたく思います」と答え、続く石橋は、「私も今、濱口監督がおっしゃったように企画時にはヴェネチアにみんなで来るなんて思いもよらなく、感慨深いです。濱口監督との共同作業の中で自分が作るつもりのなかったものが生まれたりするのは、自分の中で宝物であり本当にありがたい体験をさせていただいたと思っている」と語った。大美賀は、「上映後のみなさんの反応が死ぬ時に思い出しそうなくらい嬉しかったです」と独特の表現で笑いを誘った。さらに主演をオファーされた時は、「濱口さんが大丈夫と言うなら信じようと思い、現場では監督がとにかく俳優部を励まし、勇気づけてくれた明るい現場だった」と思い出していた。西川は、「観客の“わー!”という歓声が嬉しくて緊張しなかった」と無邪気に回答し、小坂は「今まで経験したことがない経験をして、言葉にならないです。『ドライブ・マイ・カー』の時はスタッフとして関わっていて、いいなと思っていたんですが、まさか自分がこのように濱口監督の作品に出てヴェネチアまで来るとは思ってもみませんでした」、渋谷は「観客のみなさんと同じスクリーンを見て、映画は本当に素晴らしく、その中にいる自分が改めてすごく嬉しいと思いました。拍手にも胸が一杯になりました」と感慨深げに語った。また記者から、「本作のラストシーンについてどういう意味かと聞かれると答えにくいなと思うのですが、監督が聞かれたらどう答えますか?」という質問に濱口監督は、「そんなに難しいことはないと思ってまして、何が起きたかは明白なのでそれを考えたい人は考えていただきたいと思います」と素直に答えた。さらに「『悪は存在しない』というタイトルに込めた意味は?」という質問にも、「そんなに含みはない」と答えつつ「“シナハン”(“シナリオハンティング”のこと=ロケハンの前の、脚本を書くために現地を回ること)をしている時に浮かんだタイトルで、それがそのままプロジェクトのタイトルになり、この映画をご覧になった人が実際に悪が存在するかどうかを感じるのはお任せします」と締めた。(C)2023 NEOPA / Fictive<作品情報>映画『悪は存在しない』2024年公開予定(C)2023 NEOPA / Fictive
2023年09月05日2022年に香港特別行政区設立25周年を記念して開催された「香港映画祭2023 Making Waves」が、今年も11月2日(木)~5日(日)に開催されることが決定した。本映画祭は、才能豊かな新人監督作品や、いまなお輝きを放ち続けるクラシックの名作など、選りすぐりの香港映画を上映する企画で、今年もイタリア・ウディーネ、インドネシア・バリ、デンマーク・コペンハーゲン、スウェーデン・ストックホルムなど世界各地を巡回した。また今年のプログラムの1本として、アーロン・クォック(郭富城)とトニー・レオン(梁朝偉)が初共演した話題作『風再起時』(英題:Where The Wind Blows/監督:フィリップ・ユン)のジャパンプレミアが決定。2022年度アカデミー賞国際長編映画賞部門の香港代表作品に選出された犯罪ドラマがいち早く鑑賞できる貴重な機会となっている。さらに、これからの香港映画界を担う期待の新人監督作品など多彩な上映ラインアップを予定。来日ゲストなど、詳細は後日発表される。続報に注目したい。「香港映画祭2023 Making Waves - Navigators of Hong Kong Cinema 香港映画の新しい力」は11月2日(木)~5日(日)YEBISU GARDEN CINEMAにて開催。(シネマカフェ編集部)
2023年09月04日9月2日夜(現地時間)、ブラッドリー・クーパーが監督・主演を務めるNetflixオリジナル映画『マエストロ:その音楽と愛と』がヴェネチア国際映画祭で上映され、7分間のスタンディングオベーションを受けた。音楽界の巨匠、故レナード・バーンスタインの伝記映画である本作。ハリウッドで起きている脚本家と俳優のストライキを受け、バーンスタインを演じたブラッドリーも、妻フェリシア・モンテアレグレを演じたキャリー・マリガンも映画祭に参加することは叶わなかったが、バーンスタインの3人の子どもたちが出席。映画のエンドロールが流れると、涙ぐむ3人は客席でバーンスタインの音楽に合わせて指揮者のように腕を振り、客席を盛り上げた。その動画がインターネットで拡散され、「彼らが(映画の出来を)すべてを示している」「ほほえましい」「喜びのエナジーにあふれている」「彼らの反応を見て、お父さんも喜んでいるはず」などのコメントが寄せられている。Netflixは賞レースに絡むような大作をヴェネチア国際映画祭でお披露目する傾向にあり、2018年は『ROMA/ローマ』、2019年は『マリッジ・ストーリー』、2021年は『パワー・オブ・ザ・ドッグ』が初上映された。(賀来比呂美)■関連作品:【Netflix映画】ブライト 2017年12月22日よりNetflixにて全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】マッドバウンド 哀しき友情 2017年11月17日よりNetflixにて全世界同時配信【Netflixオリジナルドラマ】オルタード・カーボン 2018年2月2日より全世界同時オンラインストリーミング2月2日(金)より全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】レボリューション -米国議会に挑んだ女性たち-
2023年09月04日映画『ONE PIECE FILM RED』のイベント『ウタ誕生祭2023』が、ウタの誕生日となる10月1日(日) に丸の内TOEIで開催されることが発表された。本作は、2022年8月に公開されると、国内興行収入197億円、観客動員1,427万人を記録。今年10月20日(金) からは1カ月限定でアンコール上映されることが決定している。『ウタ誕生祭2023』では、昨年に引き続きウタ役の名塚佳織、そしてウタを育てたエレジアの元国王ゴードン役の津田健次郎が登壇。物語の中心となるウタとゴードンを演じた2人のみが登壇するイベントは今回が初となる。当日はアンコール上映に先駆けて声出しが可能な応援上映が実施されるほか、本イベントの会場限定でウタからの特別映像も上映される。また、本イベントの模様がライブ・ビューイングおよびYouTubeで生配信されることが発表となった。ライブ・ビューイングの対象劇場は、新宿バルト9、Tジョイ梅田、Tジョイ博多、札幌シネマフロンティア、ミッドランドスクエアシネマの5劇場となっている。本会場のチケットはプレリザーブを9月8日(金) まで受付中。<イベント情報>『ウタ誕生祭2023』10月1日(日) 開催登壇者:名塚佳織、津田健次郎【本会場】丸の内TOEI【ライブ・ビューイング会場】新宿バルト9、Tジョイ梅田、Tジョイ博多、札幌シネマフロンティア、ミッドランドスクエアシネマチケット情報:<作品情報>映画『ONE PIECE FILM RED』アンコール上映10月20日(金) 1カ月限定でアンコール上映※4Kアップコンバート&リテイク特別版公式サイト:尾田栄一郎/2022「ワンピース」製作委員会
2023年09月03日5月よりシネマート新宿・心斎橋にて開催されている“韓流20周年”を記念したイベント「韓流映画祭2023」。第1弾・2弾と開催してきた同イベントのラストとなる第3弾が9月22日(金)より開催、上映される全6作品が発表となった。また、これまで同様、動画配信サービス「おうちでCinem@rt」にて全作同時配信がされる。注目の1本は、これまで数多くのリメイクが作られ、親しまれてきた名作『晩秋』が登場。今回上映される82年版は、“国民の母”と呼ばれ、ドラマ「私たちのブルース」やポン・ジュノ監督の『母なる証明』などでお馴染みの名優キム・ヘジャと、「冬のソナタ」の父親役で知られるチョン・ドンファンが、一時的に出獄した模範囚の女性と犯罪組織に追われる青年の恋模様を演じる。『晩秋』そのほか、病を患い余命僅かと判明した男がこれまで面識のなかった息子と出会い、最後に父親としての務めを果たそうとする姿を描く、チェ・ミンス主演の『男物語』。実力派俳優イ・ギョンヨンが監督・出演する、1800年代の朝鮮時代から1996年のソウルへ武士がタイムスリップして主君を守るファンタジーアクション『帰天図』。イ・チョニ、ハン・ジヘが主演を務め、「ヒップタッチの女王」のイ・ミンギも出演の、疎ましく思うようになっていた恋人の大切さに気づく、青年の心の動きを描くファンタジック・ラブストーリー『ハミング』。歌手、俳優とマルチに活躍するキム・ミンジョン主演、フィリピンで拉致された韓国人労働者を救うべく選ばれた軍人5人のはちゃめちゃな活躍を描く軍隊アクション『最後の防衛』。『オールドボーイ』カン・ヘジョンと「マイネーム:偽りと復讐」のパク・ヒスン共演、自殺を何度も試みてきた男性のもとに、突如現れた女性との不思議な恋愛模様を描くドラマ『なんでウチに来たの?』と、見応え抜群の作品が集まった。「韓流映画祭2023」第3弾は9月22日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋にて開催。おうちでCinem@rtにて同時開催。<上映情報>『男物語』(1998)9月22日(金)より上映/配信スタート裏社会を拳一つで生きてきたボンマンは、筋肉が麻痺するルーゲル病にかかり、2か月の余命を宣告される。そんな時、かつての恋人ヒギョンと再会し、息子ボングの存在を知る。残された時間の中で、息子に無償の愛を伝えるボンマン。生まれて初めて幸せを感じるが、組織の敵対派閥はボンマンを潰しにかかる。『帰天図』(1996)9月29日(金)より上映/配信スタート1800年代の朝鮮時代の武士が1996年のソウルにタイムトリップして主君を守るファンタジーアクション。1800年、正祖在位最後の年、正祖は皇役官を通じて、清淵(キム・ソンリム)との間に生まれる子どもが朝鮮の光となる子どもであることを、そして剣客によって運命が危ういことを知る――。『ハミング』(2008)10月6日(金)より上映/配信スタート付き合って2000日目の記念日を間近に控えたチュンソ(イ・チョニ)とミヨン(ハン・ジヘ)。長い間変わり映えのないミヨンとの関係に疲れを感じ始めたチュンソは、彼女との距離を置くために研究員として南極派遣を志願していた。そんなある日、ミヨンを避けるように外へ出かけたチュンソは、ミヨンが昨夜事故に遭って入院していると知らされる――。『最後の防衛』(1997)10月13日(金)より上映/配信スタートフィリピンのある地方で、韓国人労働者20人余りがゲリラに拉致される事件が発生。軍部は莫大な身代金を要求するゲリラを一網打尽にするため、急遽5人の特殊部隊員を派遣することになるが、ハッカーの悪ふざけで、底辺を生きている5人の防衛隊員が選抜、フィリピンの奥地に派遣される。『なんでウチに来たの?』(2009)10月20日(金)より上映/配信スタート2007年暮れのソウル・チョンノ区の住宅地。庭にゴミが山と積まれたキム・ビョンヒの家を2人の男が訪ねる。警察署でピョンヒは、江原道で変死体として発見されたイ・スガンの写真を見せられ尋問が始まる。近くにあった彼女の鞄から、ピョンヒ宛のダイレクト・メールが多数見つかったのだ。やがてビョンヒは、少しずつ、スガンとの出会いを語り始める。『晩秋』(1982)10月27日(金)より上映/配信スタート殺人罪で服役中の模範囚ヘリムは、刑期を2年残して特別休暇を取得し、母の墓参りに行こうと江陵行きの列車に乗るが、そこで犯罪組織に巻き込まれて追われていた青年ミンギと出会う。ミンギの執拗なアプローチで刑務所生活中に凍りついた心が溶けたヘリムは、ミンギと愛を交わすが、ヘリムは刑務所に戻ってくる。(シネマカフェ編集部)
2023年09月01日杉咲花が、生き抜くために真実を隠し続けた女性を演じる主演最新作『市子』から予告編とポスタービジュアルが解禁、第28回釜山国際映画祭コンペティション部門となるジソク部門に正式出品が決定した。本作は、監督の戸田彬弘が主宰する劇団「チーズtheater」旗揚げ公演作品である舞台「川辺市子のために」が原作。観客から熱い支持を受け2度再演された人気の舞台が、主演に杉咲さんを迎えて映画化。痛ましいほどの過酷な家庭環境で育ちながらも「生き抜くこと」を諦めなかった川辺市子を演じた杉咲さん。抗えない境遇に翻弄された彼女の壮絶な半生を、凄まじい熱量で体現。「ものすごくシンパシーを抱いて、脚本を読み終えてすぐ『絶対にやりたい』と思いました」と出演を決めたという。今回解禁された最新映像となる予告編では、セーラー服を着た学生時代の市子(杉咲花)が、どしゃぶりの雨の中、天を仰ぎながら「全部流れてしまえ!」と大声で叫ぶ印象的なシーンで幕を開ける。泣いているようにも笑っているようにも見える、市子の表情から目が離せない。やがて、大人になった彼女は同棲している恋人の長谷川(若葉竜也)からプロポーズを受け涙するが、翌日に忽然と姿を消す。途方に暮れる長谷川は、訪ねてきた刑事・後藤(宇野祥平)から、市子に関して耳を疑う話を聞かされる。さらに、長谷川が市子の行方を追っていくと、彼女が名前や年齢を偽っていた過去が徐々に明るみになっていく。誰も想像しなかった市子の真実とは…?底知れず謎めく市子の表情に翻弄され、彼女が隠し続けてきた半生を目にせずにはいられなくなる映像となっている。また、ポスタービジュアルは、そんな彼女の顔を大きく切り取り、「すべては、生き抜くために。」というメッセージとともに強く注がれる視線は、何も語っていないようでもあり、何かを訴えかけているようでもあり、捉えどころがなく謎に包まれた市子のキャラクターをそのまま写し出している。これまでも演技力に定評があった杉咲さんだが、早くも鑑賞したマスコミ関係者からは「女優としての本領発揮」「本作が代表作となるのはまちがいない」と言わしめるほど圧巻の演技を披露。杉咲さん本人も「本番中に手が痺れたり、想像もつかなかった感情に到達してしまうような瞬間に何度か立ち会えたことが、演じ手として忘れられない時間でした。それがどんな風にお客さまのもとに届くかは怖くもあるのですが、すごい引力を持った作品だったと感じています」と語っており、作品に手応え充分。芝居を超えて役を生き抜く彼女の姿がスクリーンに映し出される。第28回釜山国際映画祭コンペティション ジソク部門に正式出品が決定また本日、第28回釜山国際映画祭の一部ラインアップが解禁となり、本作『市子』がコンペティション部門のひとつであるジソク部門に選出された。ジソク部門は新人監督を対象としたニューカレンツ部門と並ぶコンペティション部門で、今年は本作を含む10本の作品がキム・ジソク賞を競う。プログラム・ディレクターを務めるナム・ドンチョルは「この映画は、まさに主人公の『市子』という存在そのものに関する映画だ。私たちは市子の過去を辿ってゆくにつれ、その境遇を理解するだけでなく、同時に、彼女を心から抱きしめてあげたい気持ちに駆られる」とコメント。同映画祭での上映が、『市子』のワールドプレミア上映となる。作家性や個性の際立つ日本映画を発掘してきた釜山国際映画祭だが、中でもキム・ジソク賞は、2017年に設立され、昨年から正式なコンペティションとなった釜山国際映画祭を代表する部門の1つ。これまで同賞へ出品された日本映画には、杉咲さんも出演している『楽園』(19)や受賞を果たした『羊の木』(18)がある。そのほか、本映画祭では昨年、日本でも各映画賞を大いに賑わせた『ケイコ 目を澄ませて』が特別企画プログラム「Discovering New Japanese Cinema」で、また『岬の兄妹』で業界を激震させた片山慎三監督の商業デビュー作品『さがす』がニューカレンツ部門で出品されるなど、確かな品質を持った日本映画が高く評価されている。『市子』は12月8日(金)よりテアトル新宿、TOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:市子 2023年12月8日よりテアトル新宿、TOHOシネマズシャンテほか全国にて公開©2023 映画「市子」製作委員会
2023年09月01日8月30日夜(現地時間)、第80回ヴェネチア国際映画祭が開幕した。全米脚本家組合(WGA)と全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)がストライキを行っている影響で、当初オープニング作品に決定していたルカ・グァダニーノ監督×ゼンデイヤ主演映画『Challengers(原題)』は公開日を延期したため取り下げに。代わりにエドアルド・デ・アンジェリス監督の『Comandante(原題)』が上映された。審査員長を務めるデイミアン・チャゼル監督は、レッドカーペットでは正装だったが、記者会見には「Writers Guild on Strike!(脚本家組合はストライキ中!)」というロゴが入ったTシャツを着用して臨み、脚本家や俳優たちを支持する姿勢を見せた。リリアーナ・カヴァーニに栄誉金獅子賞を授与するセレモニーも行われた。トロフィーを渡したのは、1975年のカヴァーニ作『愛の嵐』でルチアを演じたシャーロット・ランプリング。客席から盛大なスタンディングオベーションを受け、舞台の上のカヴァーニは親指を立てるサムズアップで応じた。ストライキ中は俳優による作品のプロモーション活動が制限されているため、今年のヴェネチア国際映画祭に出席できる俳優は少ないが、主催者は『Ferrari(原題)』のアダム・ドライバー、『The Promised Land(原題)』のマッツ・ミケルセン、『Priscilla(原題)』でプリシラ&エルヴィス・プレスリーを演じているケイリー・スピーニー&ジェイコブ・エロルディらが来場すると発表。これらの作品は、ストライキの交渉相手である全米映画テレビ制作者協会が関与していないインディ作品であることから、SAG-AFTRAより宣伝活動が許可されている。(賀来比呂美)
2023年08月31日10月23日(月) から11月1日(水) に開催される第36回東京国際映画祭のオープニング作品が『PERFECT DAYS』、クロージング作品が『ゴジラ-1.0』に決定した。今年のカンヌ国際映画祭で主演の役所広司に最優秀男優賞をもたらした『PERFECT DAYS』は、東京・渋谷でトイレ清掃員として働く主人公・平山の、日々の小さな揺らぎを丁寧に追いながら紡ぐ作品。メガホンを取ったヴィム・ヴェンダース監督は、カンヌ国際映画祭で役所が最優秀男優賞を受賞した際、「役所広司は僕の笠智衆だ」と絶賛している。そして、監督・脚本・VFXを山崎貴が務めたゴジラ70周年記念作品『ゴジラ-1.0』は、戦後すべてを失った日本を舞台に、日本を絶望的な状況に叩き落とすゴジラの姿が描かれる。なお『ゴジラ-1.0』は、公開前唯一となる一般向けの世界最速上映としてラインナップされている。■ヴィム・ヴェンダース監督 コメント今年の東京国際映画祭は私が敬愛する巨匠・小津安二郎監督の死後60年、生誕120年の記念すべき年に開催されるもので、そんな機会に参加できることは私にとっては特別なことです。そこで私の『PERFECT DAYS』がオープニング上映されるというのはこれ以上ない誇りです。■市山尚三プログラミング・ディレクター コメント(『PERFECT DAYS』について)『PERFECT DAYS』がワールド・プレミア上映されたのは5月25日、カンヌ映画祭も終盤に差し掛かり佳境を迎えようとしていた頃でした。公式上映が終わった後、映画を観た人々が一様に幸福そうな表情で感想を話していたことをよく覚えています。まさに映画祭の空気が一変した瞬間でした。世界から集まった映画のプロフェッショナルたちの感情をそこまで動かしたこの作品をオープニング作品として映画祭の観客の皆様にお届けできることは、プログラミング・ディレクターとして大きな喜びです。■山崎貴監督 コメントかつて東京国際映画祭といえばゴジラ初お披露目の場所でした。公開前、たった一度だけと決まった一般上映をその伝統ある映画祭で行えるというのは運命を感じますし、とても光栄なことだと思っています。■市山尚三プログラミング・ディレクター コメント(『ゴジラ-1.0』について)『ゴジラ-1.0』は初代ゴジラに当時の製作者たちが込めた精神を引き継ぎつつ、様々な点において山崎監督の果敢なチャレンジが見て取れる素晴らしい作品です。この作品を世界に先駆けてクロージング作品として東京国際映画祭で上映できることは大きな喜びです。<イベント情報>第36回東京国際映画祭開催期間:10月23日(月)~11月1日(水)会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区公式サイト:
2023年08月30日10月23日(月)~11月1日(水)開催の第36回東京国際映画祭で、映画祭の顔となるオープニング作品とクロージング作品が決定した。オープニングを飾るのは、今年のカンヌ国際映画祭で主演の役所広司に最優秀男優賞をもたらした『PERFECT DAYS』(監督:ヴィム・ヴェンダース)。カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞した際に、ヴィム・ヴェンダース監督が「役所広司は僕の笠智衆だ」と絶賛した本作はアジアプレミアとして東京国際映画祭の開幕を盛り上げる。この知らせを受け、ヴィム・ヴェンダース監督は「今年の東京国際映画祭は私が敬愛する巨匠・小津安二郎監督の死後60年、生誕120年の記念すべき年に開催されるもので、そんな機会に参加できることは私にとっては特別なことです。そこで私の『PERFECT DAYS』がオープニング上映されるというのはこれ以上ない誇りです」とコメント。また、映画祭の市山尚三プログラミング・ディレクターは、「『PERFECT DAYS』がワールド・プレミア上映されたのは5月25日、カンヌ映画祭も終盤に差し掛かり佳境を迎えようとしていた頃でした。公式上映が終わった後、映画を観た人々が一様に幸福そうな表情で感想を話していたことをよく覚えています。まさに映画祭の空気が一変した瞬間でした。世界から集まった映画のプロフェッショナルたちの感情をそこまで動かしたこの作品をオープニング作品として映画祭の観客の皆様にお届けできることは、プログラミング・ディレクターとして大きな喜びです」とコメントを寄せている。そしてクロージング作品は『ゴジラ-1.0』(監督・脚本・VFX:山崎貴)。1954年に初めて姿を現して以来、日本のみならず世界中を魅了し、衝撃を与え続けてきた怪獣「ゴジラ」。ゴジラ70周年記念作品でもある本作が、公開前唯一の一般向けの世界最速上映として日本の映画祭の終幕にその咆哮をあげる。山崎貴監督は、「かつて東京国際映画祭といえばゴジラ初お披露目の場所でした。公開前、たった一度だけと決まった一般上映をその伝統ある映画祭で行えるというのは運命を感じますし、とても光栄なことだと思っています」と語る。市山プログラミング・ディレクターは、「初代ゴジラに当時の製作者たちが込めた精神を引き継ぎつつ、様々な点において山崎監督の果敢なチャレンジが見て取れる素晴らしい作品です。この作品を世界に先駆けてクロージング作品として東京国際映画祭で上映できることは大きな喜びです」と本作を称えている。『PERFECT DAYS』は12月22日(金)より全国にて公開。『ゴジラ-1.0』は11月3日(金)より全国にて公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:ゴジラ-1.0 2023年11月3日より全国東宝系にて公開©2023 TOHO CO.,LTD.PERFECT DAYS 2023年12月22日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開© 2023 MASTER MIND Ltd.
2023年08月30日実際の障害者殺傷事件をモチーフにした辺見庸原作の小説を宮沢りえ主演、石井裕也監督の映画『月』が、10月4日より開催予定の第28回釜山国際映画祭コンペティション部門に出品決定。映画祭プログラム・ディレクターから選出のコメントが到着した。本作がノミネートされたジソク部門(Jiseok部門)は、2017年から設定されていたキム・ジソク賞を独立させ昨年新設された部門で、新人をのぞけば唯一のコンペティション部門。本年は9本の作品の中から最大2作品にキム・ジソク賞が送られる。過去には『羊の木』(吉田大八監督)、『義足のボクサー』(フィリピン・日本合作/ブリランテ・メンドーサ監督)がキム・ジソク賞を受賞している。今回、本作からは石井監督の渡航が決定しており、授賞式は10月13日を予定している。この度、映画祭のプログラム・ディレクター、ナム・ドンチョルからも絶賛のコメントが到着、本作への期待値と評価の高さがうかがえる。<コメント>ナム・ドンチョル(釜山国際映画祭/プログラム・ディレクター)この映画は、私たちの"正常と異常の間の偏見"に疑問を投げかけている。それは強く勇敢な試みであり、特に宮沢りえの演技は私たちを見事に納得させた。『月』は10月13日(金)より新宿バルト9、ユーロスペースほか全国にて公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:月 2023年10月13日より新宿バルト9、ユーロスペースほか全国にて公開(C)2023『月』製作委員会
2023年08月30日日本一古い映画祭と言われる湯布院映画祭にて『アンダーカレント』が初披露され、上映後約120人の映画ファンの前に井浦新と平石明弘プロデューサーが登壇した。本作は、「漫画界のカンヌ映画祭」と呼ばれるフランス・アングレーム国際漫画祭でオフィシャルセレクションに選出されるなど、国内外で人気を誇る豊田徹也による同名漫画の実写化作品。監督は『愛がなんだ』『ちひろさん』などを手がけた今泉力哉が務め、音楽は細野晴臣が担当する。初お披露目となる本作の制作のきっかけについて「原作漫画自体が映画のようで、すぐに実写映画化したい、リアルな役者が演じているのが見たいと思った」と平石プロデューサーが語ると、真木よう子演じる銭湯「月乃湯」の女主人・かなえの前に「働きたい」と現れる謎の男・堀を演じた井浦も「原作漫画が映画のような作りなので、実写映画化は監督が大変そうだと思っていた。他の監督では違う、今泉力哉監督だからやるんだなとすごく納得した」と今泉監督のチャレンジに敬意を表した。平石明弘プロデューサー井浦は自身の役柄について「真木よう子さんとの2人芝居が怖かった。その怖さが楽しみに変わっていった。真木さんとは『さよなら渓谷』以来の共演で、そのときはワンシーンだけでお互いそこで出しきる芝居。今回は時間をかけていっしょに作っていく流れで、芝居を超えて真木よう子がかなえになっていく様を目の前で見られて、今泉監督のもと真木さんと芝居ができたことは幸せなこと」と主演女優との共演に思いをはせた。本作を観たばかりのシンポジウム参加者からは矢継早に感想や意見が出ると、同じく一緒に鑑賞していた井浦は「観終わったあと、真木さんのいろんな目や表情が印象に残った」と語り、「独特の間がある、セリフのないところで何かを語っている作品。現場でも、役者が自然な間を作っているけど、監督が編集で作っている間もあって、今泉監督が『アンダーカレント』を作ると、こういう間ができるんだな」と感嘆した。井浦新また、参加者から原作漫画にはない映画オリジナルのラストシーンに質問がおよぶと、平石プロデューサーは該当シーンについて「原作漫画の読後感を大事にしたい、観た人によっては希望のもてるラストシーンにしたかった」と理由を語り、そのラストシーンに独特な解釈を披露した参加者に井浦は「その解釈は面白い」と前置きし「この作品のテーマでもある『誰かをわかることができるのか』『自分のことをわかることができるのか』というのは簡単なことじゃない。なにかと白黒つけたい世の中だけど、よくわからないから、あいまいだから救われるということもある。だからいろんな解釈があっていいと思う」とトークが白熱した。今泉監督のほか、録音や撮影に関してなど、そのクオリティの高さについても意見が交わされ、「今泉監督の渾身の作品」「今年のベストテンに入る作品」など参加者から太鼓判を押されるなど、予定終了時刻を過ぎてもなお絶賛のコメントが続き、興奮冷めやらぬ中、この湯布院映画祭という舞台で初お披露目になった本作について、平石プロデューサーが「“銭湯”を舞台にしたこの映画が、温泉地である湯布院で初上映されたことに感慨深いものがあります。また、この地に戻ってきたい」と締め、凱旋アピールした。<作品情報>『アンダーカレント』10月6日(金) 全国公開原作:豊田徹也『アンダーカレント』(講談社『アフタヌーン KC』刊)監督:今泉力哉脚本:澤井香織、今泉力哉音楽:細野晴臣■出演真木よう子、井浦新、リリー・フランキー、永山瑛太、江口のりこ、中村久美、康すおん、内田理央公式HP:
2023年08月27日森山未來と藤竜也が共演する近浦啓監督作『大いなる不在』が、第71回サン・セバスティアン国際映画祭コンペティション部門「オフィシャルセレクション」に選出されることが決定し、場面写真4点も解禁された。「サン・セバスティアン国際映画祭」は、ヨーロッパにおいてカンヌ、ベルリン、ヴェネチアの映画祭に次ぐ重要な映画祭とされており、今年で71回目の開催を迎えるスペイン語圏最大の映画祭。今年、日本からは、宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』と近浦啓監督の『大いなる不在』の二作品が同部門に選出された。ノミネートされた作品の中から選出される最高賞「ゴールデンシェル」に加えて、監督賞、主演・助演俳優賞等の「シルバーシェル」の対象となっており、映画祭期間中には、監督の近浦啓が映画祭への出席を予定している。現地日程は9月22日(金)~9月30日(土)の開催。本映画祭での上映がヨーロッパ初上映となる。また、本作は、現地日程9月7日(木)から開催される第48回トロント国際映画祭のコンペティション部門となる「プラットフォーム部門」でのワールドプレミア上映が決まっており、映画祭期間中に、キャストの森山未來、藤竜也、真木よう子、原日出子が、揃って映画祭への出席を予定している。近浦 啓監督コメント世界初上映のトロント国際映画祭に続き、ヨーロッパ初上映をサン・セバスティアン国際映画祭のコンペティションで迎えることができること、大変光栄です。短編映画の頃から自主制作の体制で、右も左も分からず映画制作に取り組んできた中、このような大きな舞台でこの作品を披露できることには感慨深いものがあります。9月は、トロントとサン・セバスティアンで、北米の観客の反応とヨーロッパでの反応の違いなどを実感できると良いなと思います。『大いなる不在』は2024年の公開予定。(シネマカフェ編集部)■関連作品:大いなる不在 2024年公開予定©︎ 2023 CREATPS
2023年08月25日10月23日(月)~11月1日(水)開催の第36回東京国際映画祭のポスタービジュアルが完成。また、映画祭のナビゲーターに、映画監督・安藤桃子が決定した。今年は本映画祭で生誕120年となる小津安二郎の特集を組むことがすでに発表されているが、ポスターはその小津監督の代表作の1つである『東京物語』にオマージュを捧げるようなイメージ。現代の東京(撮影場所は東京駅近くのKITTE丸の内の屋上庭園)を舞台に、『東京物語』の中の笠智衆と原節子のように、親子で奥田瑛二と安藤桃子を撮り下ろし。ビジュアル監修は昨年同様コシノジュンコさんとなり、東京都近郊の映画館で8月18日(金)から掲出予定となっている。そして、安藤さんは本映画祭の「アンバサダー」改め、「ナビゲーター」としてに就任決定。これまで「アンバサダー」という形で俳優・女優の方々に歴任してきたが、今年は映画祭をより楽しんで頂くための案内人として、映画監督であり、高知で映画館の代表も務め、自身で映画祭も企画するなど様々な形で映画にコミットしている安藤さんに「ナビゲーター」として立ってもらうこととなった。■安藤桃子(映画監督)コメント争いも限界もなく、どんな存在にも光を当て、時間も空間も飛び越えて、自由自在に生きられる世界。映画はあらゆる物語を具現化できる。映画は世界を変えられる。映画で世界が変わる。本当に、そうなんだと思っている。映画は人の心を映し出す。目に見えない風や小さな生き物たちも、すべてのイノチを映し出す。心の内にある、過去も未来も記憶し、記録する。2023年の今、私たちは何を見つめ、どこへ導かれるのだろう。映画祭は世界の羅針盤だ。いま、ここ、東京からまた、これまで東京国際映画祭ではその年ごとにテーマやポイント等を設定してきたが、今回のミッション(理念)も併せて発表された。東京国際映画祭ミッション(理念)この1年でスタッフ一同で意見を出し合い、「東京」「国際」「映画」「祭」をきちんと言葉通りに体現できるようにということで考えました。「映画の可能性」にはアート作品からエンタメ大作まで様々な作品が生み出される可能性、人生や文化、世界を変える可能性、過去の遺産の継承(旧作)・現在の多様性の享受(最新作)・未来の開拓(野心作)への可能性、など様々な思いを込め、「多様な世界」には国・人種・性別・民族・宗教・言語・価値観・世界観などの様々なボーダーを越えたもの、国外だけでなく国内も含み、製作者と観客のボーダーも越えたものといったことを意図し、映画の力で多種多様な世界をよりカラフルにしていけたらと思っております。そして、最終的にはお祭りとして楽しんで頂ければと思っています。なお、10月23日(月)のオープニングセレモニーに関しては、昨年同様東京宝塚劇場で行うほか、クロージングセレモニーはTOHOシネマズ 日比谷(スクリーン12)、会期中の上映劇場は昨年から加わった丸の内 TOEI、丸の内ピカデリー、TOHOシネマズ 日比谷の大型劇場に加え、ヒューリックホール東京が新たに加わり、このほかに角川シネマ有楽町、シネスイッチ銀座、ヒューマントラストシネマ有楽町、TOHOシネマズ シャンテとなります。上映本数は昨年よりもさらに拡大する予定です。また、三井不動産、三菱地所といった日比谷・丸の内地区の有力企業ともより連携を深め、東京都、千代田区、中央区などの行政、全銀座会等の地元団体とも様々な協力体制を敷き、街ぐるみの映画祭となっていきます。東京国際映画祭はまだまだ進化を続けます。第36回東京国際映画祭は10月23日(月)~11月1日(水)、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区にて開催。(シネマカフェ編集部)
2023年08月17日10月23日(月) から11月1日(水) に開催される第36回東京国際映画祭のポスターが公開された。今年生誕120周年を迎える小津安二郎の特集が組まれる本映画祭。ポスターは小津の代表作の1つである『東京物語』にオマージュを捧げるようなイメージで、現代の東京(撮影場所は東京駅近くのKITTE丸の内の屋上庭園)を舞台に、俳優の奥田瑛二、映画監督の安藤桃子親子を撮り下ろしたもので、8月18日(金) より東京近郊の映画館に掲出される。ビジュアル監修は昨年同様コシノジュンコが手がけた。また、本映画祭のナビゲーターを安藤が務めることが決定。これまでは“アンバサダー”という形で俳優・女優が就任していたが、今年は映画祭をより楽しんで頂くための案内人として、高知で映画館の代表を務め、自身で映画祭も企画するなど様々な形で映画にコミットしている安藤がナビゲーターを担当する。■安藤桃子 コメント(C)Takashi Kurokawa争いも限界もなく、どんな存在にも光を当て、時間も空間も飛び越えて、自由自在に生きられる世界。映画はあらゆる物語を具現化できる。映画は世界を変えられる。映画で世界が変わる。本当に、そうなんだと思っている。映画は人の心を映し出す。目に見えない風や小さな生き物たちも、すべてのイノチを映し出す。心の内にある、過去も未来も記憶し、記録する。2023年の今、私たちは何を見つめ、どこへ導かれるのだろう。映画祭は世界の羅針盤だ。いま、ここ、東京から。<イベント情報>第36回東京国際映画祭開催期間:10月23日(月)~11月1日(水)会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区公式サイト:
2023年08月17日アニメ作家、塚原重義が原作・脚本・監督を務める劇場長編アニメーション『クラユカバ』が、第27回ファンタジア国際映画祭にて、長編アニメーション部門の観客賞・金賞を受賞した。探偵業を営む荘太郎に舞い込んだのは、自身の暮らす扇町を騒がす奇怪な集団失踪事件の解明。目撃者はいない。目的も分からない。しかし、被害者に共通したのは現場に残された“不気味な轍”…手がかりを求めて訪れたのは、奈落に巣食う地下迷宮“クラガリ”。そこに、現れた銀髪の少女との出会いをキッカケに事態は大きく動き出す。2018年・2020年にかけて実施した2回のクラウドファンディング企画にて累計1,570万364円の支援を集めた本作は、探偵業を営む荘太郎が、町で起こる奇怪な“集団失踪事件”の解明に挑む姿が描かれた痛快探偵活劇。荘太郎を演じるのは令和4年度花形演芸大賞・大賞を受賞し、“最もチケットが取れない講談師”と言われる六代目神田伯山。監督を務めた塚原重義は、2002年頃よりアニメーションの自主制作を始め、近年はオリジナルの短編作品を発表しつつ、「SEKAI NO OWARI」ライブのステージデザイン協力など、映像以外の世界観構築も手掛けている。本作が初の長編アニメーション監督作品となり、事件の真相はもちろん、塚原監督が作り出すノスタルジーを感じるフィルムも必見だ。ファンタジア国際映画祭はカナダ・モントリオールで1996年から開催されている北米最大のジャンル映画祭。ジャンル映画の中でも特にアジア映画に強みを発揮しており、なかでもアニメーション部門は、日本の名監督であった、故・今敏の名前から由来してグランプリが今敏賞と名付けられていることでも知られている。なお本年の長編アニメーション部門には『THE FIRST SLAM DUNK』(原作・監督・脚本:井上雄彦)、『SAND LAND』(原作:鳥山明)など、日本でも話題を集めた作品が選出されている。観客賞は、映画祭参加者からの投票により決定される賞で、本作は映画祭開催中2回の上映が行われ、各回ともに満席となっていた。上映後に行われた塚原監督登壇のトークセッションでは、観客から多くの歓声が上がった。<塚原重義監督コメント>本作がワールドプレミアの場でこのような素晴らしい賞をいただけたこと、そして何より文化圏の異なる地の方々に楽しんでいただけたことが大変光栄です。これを今後の糧としていきたいです。本作は現在、国内上映に向けて進行中。今後の展開にも注目だ。(シネマカフェ編集部)
2023年08月16日各映画祭で話題沸騰、2023年のスペイン・ゴヤ賞で最優秀新人女優賞受賞したリベンジホラー『PIGGYピギー』が9月22日(金)より公開。ポスタービジュアルと予告編が解禁された。スペインの田舎町。ティーンエイジャーのサラはクラスメイトからの執拗ないじめに苦しんでいた。両親や弟からも理解されず、家の中でも居場所を見つけられないサラは、ヘッドホンに頭をうずめて自分の気持ちを閉じこめる日々を送っていた。ある日、あまりの暑さにひとりで地元のプールへと出かけたサラは、怪しげな謎の男と、3人のクラスメイトと鉢合わせてしまう。クラスメイトたちのいじめの標的となるサラ。しかし、その帰り道、恐ろしい現場に遭遇する。それは、血まみれになった3人のクラスメイトたちが男の車に拉致され、連れ去られるところだった...。目の前で誘拐されたいじめっ子たちを助けるか、それとも見殺しにするか。究極の選択を迫られる本作。2018年、300以上の国際映画祭に出品され、フォルケ賞やゴヤ賞など90以上の賞に輝いたカルロタ・ペレダ監督の同名短編作品を長編化。警察や親たちに真実を打ち明けて捜査に協力するべきか、あるいは沈黙を貫いて自分を守るべきか、サラは究極の決断を迫られる。監督のカルロタ・ペレダは、TV業界でキャリアを積んだ実力派で、初監督の短編映画『The Blondes』(英題)は世界各国137以上もの映画祭に出品された。また、主演のラウラ・ガランは主に舞台で経験を積み、テリー・ギリアム監督『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』(2018)で長編初出演。本作『PIGGY』でスペインのアカデミー賞と呼ばれるゴヤ賞で最優秀新人女優賞を受賞。サラの母親役にはペドロ・アルモドバル監督作『トーク・トゥ・ハー』『抱擁のかけら』『私が生きる肌』などに出演し、超人気テレビシリーズ「Aída」で主演を務め、スペインテレビアカデミー賞を受賞した“スペインで最も愛される女優”のカルメン・マチが演じている。『PIGGYピギー』は9月22日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、新宿武蔵野館ほか全国にて公開。(シネマカフェ編集部)
2023年08月12日9月7日から17日まで開催される第48回トロント国際映画祭(TIFF)にて、ペドロ・アルモドバル監督とスパイク・リー監督がトリビュート・アワード(功労賞)を受賞することが発表された。2人は映画祭4日目(10日)夜に行われるTIFFトリビュート・アワード授賞式で、それぞれジェフ・スコール賞と監督賞を授与される。TIFFのCEOキャメロン・ベイリーは、アルモドバル監督について「ペドロは何年もTIFFの常連ですが、毎回、前回を超えるものを持ってきてくれます。彼の芸術的なビジョン、大胆なストーリーテリング、映画の限界を押し広げることへの揺るぎないコミットメントは、映画界に大きなインパクトを与えてきました」と称賛。リー監督については「現代で最も重要なストーリーテラー。『She’s Gotta Have It(原題)』から『ドゥ・ザ・ライト・シング』『モ'・ベター・ブルース』、そして今回のTIFFでの最新作『American Utopia(原題)』まで、彼の一連の作品は観客にインスピレーションを与え、映画製作という芸術に持続的な影響を与えています」と称えた。TIFFトリビュート・アワードは、2019年より映画で傑出した映画製作者や俳優を称えるために設けられた賞で、これまでにジェフ・スコール賞は『モンスーン・ウェディング』のミーラー・ナーイル監督、監督賞は『ノマドランド』のクロエ・ジャオ監督らが受賞している。(賀来比呂美)
2023年08月04日森山未來と藤竜也が親子役で初共演する『大いなる不在』(英題:GREAT ABSENSE)が第48回トロント国際映画祭のコンペティション部門へ選出されたことが発表され、海外版ポスターが解禁。さらにキャストコメントも到着した。本作は、長編デビュー作『コンプリシティ/優しい共犯』(2018)が、トロント、ベルリン、釜山などの名だたる国際映画祭に正式招待され高く評価された近浦啓監督の第二作目。『誰も知らない』『海よりもまだ深く』など多くの是枝裕和監督の作品を支えた山崎裕が『コンプリシティ/優しい共犯』に続き撮影を担当し、本作は全編35mmフィルムで撮影された。サウンドミックス・デザインには、『ドライブ・マイ・カー』などの野村みき・大保達哉のユニット P.A.T Worksが担当。音楽は、これが長編映画初劇伴作品となる新進気鋭の作曲家糸山晃司が担当している。本作は、コンペティション部門にノミネートされた10作品の中から選出される「プラットフォーム・アワード」に加えて、全ての上映作品から選ばれる「観客賞」(ピープルズチョイス・アワード)の対象となっており、映画祭期間中に、キャストの森山未來、藤竜也、真木よう子、原日出子が、揃って映画祭への出席を予定している。トロント国際映画祭は、長らく非コンペティションの映画祭といわれていたが、2015年にコンペティション部門を新設。名匠ジャ・ジャンクーの監督作品名にちなみ「プラットフォーム部門」と名付けられた。芸術的価値が高く、力強く監督のビジョンを示している作品を中心に選出され、過去に第89回アカデミー賞《作品賞》となった『ムーンライト』がこの部門で上映されたことから、アカデミーの前哨戦とも言われるトロント映画祭の中でも特に注目される部門になっている。また、日本人監督としてこのコンペティション部門に招待されるのは、黒沢清監督(『ダゲレオタイプの女』、2016)以来2人目。本作では、森山さん演じる主人公の父親を藤さんが、妻を真木さんが演じる。また、物語で重要な鍵となる父親の後妻を、原さんが演じている。森山さんと藤さんは本作が初共演。森山さんと真木さんは『モテキ』(2012)ぶりの共演となり、藤さんと原さんは、『ションベン・ライダー』(1983)以来40年ぶりの共演だ。キャスト・監督 コメント<森山未來 コメント>この度は『大いなる不在』が評価され、トロント国際映画祭のコンペティション部門という名誉あるセクションに選ばれたことを、心から光栄に思います。ある種の虚構の世界で生きる父にまるで俳優のように寄り添い、やがては世界に溶けていく彼を穏やかに見守る。近浦監督の実体験に着想を得たそんな物語に役者として参画するという、不可思議なレイヤーの海の中で揺れていた北九州での記憶が甦ります。トロントでの上映を経て、多くの方にこの作品を観ていただけることを願っています。森山未來<藤竜也 コメント>2022年、年が明けて間もないころ、近浦監督から新作のオファーを頂いた。『Empty House』『コンプリシティ/優しい共犯』に続いて3回目のご指名だった。嬉しかった。光栄なことだと思った。でも、期待に応えられるかどうか心配だった。台本を読んだ。読んだ、読んだ。私が演ずる男が好きになった。物理学を研究して、その分野で名を残したが、うんと普通で、煩悩にまみれた男。純粋ばかのおとこ。私は新幹線のように素早く、この男の中の入りこめたように思います。『大いなる不在』の試写を見ました。私の魂のどこかにくらった重い衝撃!これは何だろう?無理に分析したら、大切な何かが行方不明になりそう。この映画は、一人ひとりの見る側と、近浦さんの映画との会話で成り立つのではないかと思った。藤竜也<原日出子 コメント>この度は出演作『大いなる不在』が、栄誉ある映画祭のコンペティションに選出されました。このような素晴らしい作品に出逢えましたこと、心から感謝いたします。そして近浦監督をはじめ映画制作に携わった全ての方たちにお祝い申し上げます。ある種ドキュメンタリーのようなリアリズムと、計算され、完成され尽くした作品作りの中で直美の役を生きた時間は私にとってかけがえのない時間となりました。素晴らしい作品に参加できたことを光栄に思います。是非世界の舞台に羽ばたいていって欲しいです。原日出子<真木よう子 コメント>私は、初めて生きている、歩く芸術に目を奪われた。それが森山未來の仕草であった。なんて美しく、気高く、女の私が敗北をくらった、許すまじ森山未來。台本を頂き、キャストの名を聞き、恐らくその頃からこの様な名誉を頂く作品だという事を疑う事すら愚かな事だと感じた様に思います。だけど、多くの人には共感させない。お目が高い人だけご覧下さい。真木よう子<近浦啓 監督 コメント>この映画は、その名の通り「不在」についての映画です。「ない」何かに向けて目を凝らすことは、その輪郭を形づくる「ある」何かに対して思索を深めることになります。そんな抽象的な考えを具象化し、ミステリー傾向の高いエンタテイメント映画に仕上げたい、という想いでスタートしました。日本が誇る役者の方々、そして、技術者の方々が集まってくれたことにこの場を借りて深く感謝いたします。トロント国際映画祭のコンペティションという大きな舞台でこの映画が船出できることをとても嬉しく思います。いつかきっとこの航海が、日本の劇場に辿り着きますように。心から願っています。『大いなる不在』は2024年公開予定。(シネマカフェ編集部)
2023年08月03日