森山未來と藤竜也が親子役で初共演する『大いなる不在』(英題:GREAT ABSENSE)が第48回トロント国際映画祭のコンペティション部門へ選出されたことが発表され、海外版ポスターが解禁。さらにキャストコメントも到着した。本作は、長編デビュー作『コンプリシティ/優しい共犯』(2018)が、トロント、ベルリン、釜山などの名だたる国際映画祭に正式招待され高く評価された近浦啓監督の第二作目。『誰も知らない』『海よりもまだ深く』など多くの是枝裕和監督の作品を支えた山崎裕が『コンプリシティ/優しい共犯』に続き撮影を担当し、本作は全編35mmフィルムで撮影された。サウンドミックス・デザインには、『ドライブ・マイ・カー』などの野村みき・大保達哉のユニット P.A.T Worksが担当。音楽は、これが長編映画初劇伴作品となる新進気鋭の作曲家糸山晃司が担当している。本作は、コンペティション部門にノミネートされた10作品の中から選出される「プラットフォーム・アワード」に加えて、全ての上映作品から選ばれる「観客賞」(ピープルズチョイス・アワード)の対象となっており、映画祭期間中に、キャストの森山未來、藤竜也、真木よう子、原日出子が、揃って映画祭への出席を予定している。トロント国際映画祭は、長らく非コンペティションの映画祭といわれていたが、2015年にコンペティション部門を新設。名匠ジャ・ジャンクーの監督作品名にちなみ「プラットフォーム部門」と名付けられた。芸術的価値が高く、力強く監督のビジョンを示している作品を中心に選出され、過去に第89回アカデミー賞《作品賞》となった『ムーンライト』がこの部門で上映されたことから、アカデミーの前哨戦とも言われるトロント映画祭の中でも特に注目される部門になっている。また、日本人監督としてこのコンペティション部門に招待されるのは、黒沢清監督(『ダゲレオタイプの女』、2016)以来2人目。本作では、森山さん演じる主人公の父親を藤さんが、妻を真木さんが演じる。また、物語で重要な鍵となる父親の後妻を、原さんが演じている。森山さんと藤さんは本作が初共演。森山さんと真木さんは『モテキ』(2012)ぶりの共演となり、藤さんと原さんは、『ションベン・ライダー』(1983)以来40年ぶりの共演だ。キャスト・監督 コメント<森山未來 コメント>この度は『大いなる不在』が評価され、トロント国際映画祭のコンペティション部門という名誉あるセクションに選ばれたことを、心から光栄に思います。ある種の虚構の世界で生きる父にまるで俳優のように寄り添い、やがては世界に溶けていく彼を穏やかに見守る。近浦監督の実体験に着想を得たそんな物語に役者として参画するという、不可思議なレイヤーの海の中で揺れていた北九州での記憶が甦ります。トロントでの上映を経て、多くの方にこの作品を観ていただけることを願っています。森山未來<藤竜也 コメント>2022年、年が明けて間もないころ、近浦監督から新作のオファーを頂いた。『Empty House』『コンプリシティ/優しい共犯』に続いて3回目のご指名だった。嬉しかった。光栄なことだと思った。でも、期待に応えられるかどうか心配だった。台本を読んだ。読んだ、読んだ。私が演ずる男が好きになった。物理学を研究して、その分野で名を残したが、うんと普通で、煩悩にまみれた男。純粋ばかのおとこ。私は新幹線のように素早く、この男の中の入りこめたように思います。『大いなる不在』の試写を見ました。私の魂のどこかにくらった重い衝撃!これは何だろう?無理に分析したら、大切な何かが行方不明になりそう。この映画は、一人ひとりの見る側と、近浦さんの映画との会話で成り立つのではないかと思った。藤竜也<原日出子 コメント>この度は出演作『大いなる不在』が、栄誉ある映画祭のコンペティションに選出されました。このような素晴らしい作品に出逢えましたこと、心から感謝いたします。そして近浦監督をはじめ映画制作に携わった全ての方たちにお祝い申し上げます。ある種ドキュメンタリーのようなリアリズムと、計算され、完成され尽くした作品作りの中で直美の役を生きた時間は私にとってかけがえのない時間となりました。素晴らしい作品に参加できたことを光栄に思います。是非世界の舞台に羽ばたいていって欲しいです。原日出子<真木よう子 コメント>私は、初めて生きている、歩く芸術に目を奪われた。それが森山未來の仕草であった。なんて美しく、気高く、女の私が敗北をくらった、許すまじ森山未來。台本を頂き、キャストの名を聞き、恐らくその頃からこの様な名誉を頂く作品だという事を疑う事すら愚かな事だと感じた様に思います。だけど、多くの人には共感させない。お目が高い人だけご覧下さい。真木よう子<近浦啓 監督 コメント>この映画は、その名の通り「不在」についての映画です。「ない」何かに向けて目を凝らすことは、その輪郭を形づくる「ある」何かに対して思索を深めることになります。そんな抽象的な考えを具象化し、ミステリー傾向の高いエンタテイメント映画に仕上げたい、という想いでスタートしました。日本が誇る役者の方々、そして、技術者の方々が集まってくれたことにこの場を借りて深く感謝いたします。トロント国際映画祭のコンペティションという大きな舞台でこの映画が船出できることをとても嬉しく思います。いつかきっとこの航海が、日本の劇場に辿り着きますように。心から願っています。『大いなる不在』は2024年公開予定。(シネマカフェ編集部)
2023年08月03日ブラッドリー・クーパーが、今月末に開催されるヴェネツィア映画祭を欠席すると決めたようだ。全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)がストライキをしていることを受けてのもの。クーパーが監督と主演を兼任する『Maestro』はNetflixで配信が決まっている。俳優としてではなく、監督として出席することは可能ではあったが、ストライキをする同僚へ結託する姿勢を示したものだ。オープニング作品だったルカ・グァダニーノ監督の『Challengers』が上映を取り消すなど、今年のヴェネツィア映画祭への影響はほかにも出ている。映画祭はアワードシーズンにおいて重要な位置付けで、ストライキが長引けばオスカーへの影響も心配される。文=猿渡由紀
2023年08月01日ビルケンシュトック(BIRKENSTOCK)から、新作サンダル「カンヌ(CANNES)」が登場。2023年8月2日(水)よりビルケンシュトックの限定店舗ほかで発売される。“光沢レザーアッパー”の新作サンダル「カンヌ」ビルケンシュトックから、フェミニンでエレガントなデザインが魅力の新作サンダル「カンヌ」がお目見え。控えめな光沢が美しいレザーアッパーに、存在感のあるスクエアバックルをあしらって、ブランドが持つカジュアルサンダルのイメージを一新するような佇まいに仕上げた。カラーは、ブラック、バター、ホワイトの3色を展開。いずれもバックルやソールとのコントラストを楽しめる仕上がりで、幅広いスタイリングにマッチする1足となっている。優れた機能性もポイントデザイン性だけでなく、実用性を兼ね備えているのもポイント。ボリューム感のあるカップソールは、優れたグリップ力と柔軟性を実現。さらにトーナルのレザーで覆われたフットベッドが、快適な履き心地を叶えてくれる。【詳細】新作サンダル「カンヌ」発売日:2023年8月2日(水)取扱店舗:ビルケンシュトックの限定店舗、公式オンラインストア価格:各31,900円カラー:ブラック、バター、ホワイト【問い合わせ先】ビルケンシュトック・ジャパン カスタマーサービスTEL:0476-50-2626
2023年07月30日MORCコマ撮りアニメーションフェスティバル事務局は、“コマ撮りは楽しい!”をモットーに、コマ撮り作品に特化した第一回となる、アニメーション映画祭「MORCコマ撮りアニメーションフェスティバル2023」を2023年11月18日から12月17日に開催することが決定いたしました。国際コンペティションの作品応募を2023年10月15日まで受付中です。日本の作家の発掘とその才能の育成を焦点に2022年夏、ミニシアターMorc阿佐ヶ谷にて開催した『コマ撮りアニメーションフェスティバルVol.0 』では、エストニアや韓国、国内外の短編や長編のコマ撮り=ストップモーション作品100本以上を特集上映し、また作家トークなどのイベントも好評を博しました。そして2023年秋、コマ撮りアニメーションの振興と宣伝、なによりも日本の作家の発掘とその才能の育成を焦点に<国際コンペティション>を加えた本格開催となります。<映画館が発信する映画祭>アニメーションの作家を育て支える新しい場・仕組みをつくるためのコンペティションをメインに、国内外の新作、名作、日本未公開作品などのプログラム、ビギナーや経験者向けのワークショップやゲスト作家によるマスタークラスといったつくり手のための企画も多数予定。今回行う国際コンペティションは、コマ撮り(ストップモーション)の技法をつかった作品であること、2020年1月1日以降制作された作品で、30分以内の短編作品が対象。選考・審査員には各々専門の有識者・作家が参加予定。グランプリは新作制作のための副賞100万円。有望な作品は、劇場公開~配給のサポートといった映画館だからこそできる副賞を用意。コマ撮りが好きな人や応援している人、つくっている人、これからやりたいと思っている人、よくは知らないけれど興味がある人 etc…人と人とが交流すること。その場所をつくること。たくさんの人へとコマ撮りアニメーションの魅力を届けるべく本映画祭を開催します。プログラムなどの映画祭の詳細は後日発表いたします。現在コンペティション作品の応募受付中です。2023年10月15日〆切。応募フォームは公式サイトより。■MORCコマ撮りアニメーションフェスティバル2023概要開催日程: 2023年11月18日~12月17日(12月1日~4日はコンペティションなどの映画祭の中心期間)会場: ミニシアターMorc阿佐ヶ谷、ザムザ阿佐ヶ谷、アート・アニメーションのちいさな学校 ほか主催: Morc阿佐ヶ谷+アート・アニメーションのちいさな学校事務局: MORCコマ撮りアニメーションフェスティバル事務局(画像はプレスリリースより)【参考】※公式サイト
2023年07月28日トロント映画祭のオープニング作品に宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』が選ばれたと発表された。英語のタイトルは『The Boy and the Heron』。すでに日本で公開されているため、ワールドプレミアではなくインターナショナルプレミアとなる。上映日は9月7日。トロント映画祭では、過去に『レッドタートル ある島の物語』、『かぐや姫の物語』、『風立ちぬ』、『コクリコ坂から』、『千と千尋の神隠し』、『もののけ姫』が上映されている。『君たちはどう生きるか』は、今年後半の北米公開が予定されている。『君たちはどう生きるか』全国公開中©2023 Studio Ghibli文=猿渡由紀
2023年07月28日スタジオジブリ最新作、宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』が、第48回トロント国際映画祭で“邦画初”、そしてアニメーションとしては“世界初”のオープニング上映作品に決定した。本作は公開4日間で、2001年公開の同監督作品『千と千尋の神隠し』の初動4日間の興行収入を超え、観客動員135万人、興行収入21.4億円を突破。7月26日(水)までの公開13日間では観客動員数261万人、興行収入40.1億円を超える大ヒットスタートとなっている。そんな本作のトロント国際映画祭オープニング上映作品への選出は、邦画としては初めて。アニメーション作品としては世界初でオープニングを飾る。カナダ最大の都市で毎年開催されるトロント国際映画祭といえば、受賞作品が米国アカデミー賞をはじめとする、そのほかの主要な映画祭でも快挙を成し遂げていることから、今後の賞レースの行方を占う重要な映画祭として知られており、“アカデミー賞前哨戦“とも呼ばれている。2002年には『千と千尋の神隠し』が第27回に出品され、その翌年の第75回アカデミー賞で長編アニメーション映画賞を受賞。そのほかスタジオジブリ作品としては、『風立ちぬ』『かぐや姫の物語』『レッドタートル ある島の物語』など計6作品が同映画祭に出品されており、本作で7作品目となる。同映画祭CEOキャメロン・ベイリー氏は本作品の選出理由に関して、「第48回トロント国際映画祭を、偉大なる映画のアーティストの中の一人の作品によって開幕することを光栄に思います。日本ではすでに傑作として賞賛されている宮崎駿の新作は、喪失と愛というシンプルなストーリーから始まり驚異的な想像の作品に昇華されています。トロントの観客が、そのミステリアスな作品に出会うことが楽しみであり、唯一無二の斬新な体験をお約束します」とコメントを発表している。第48回トロント国際映画祭は現地時間9月7日(木)から9月17日(日)までの11日間開催され、オープニング作品の上映は映画祭初日となる9月7日(木)、ロイ・トンプソン・ホール(Roy Thompson Hall)にて行われる。『君たちはどう生きるか』は全国にて公開中。(シネマカフェ編集部)■関連作品:君たちはどう生きるか 2023年7月14日より公開©2023 Studio Ghibli
2023年07月28日MORCコマ撮りアニメーションフェスティバル事務局は、“コマ撮りは楽しい!”をモットーに、コマ撮り作品に特化した第一回となる、アニメーション映画祭「MORCコマ撮りアニメーションフェスティバル2023」を2023年11月18日から12月17日に開催することが決定いたしました。国際コンペティションの作品応募を2023年10月15日まで受付中です。コマ撮り作品応募受付中!10/15〆2022年夏、ミニシアターMorc阿佐ヶ谷にて開催した『コマ撮りアニメーションフェスティバルVol.0 』では、エストニアや韓国、国内外の短編や長編のコマ撮り=ストップモーション作品100本以上を特集上映し、また作家トークなどのイベントも好評を博しました。そして2023年秋、コマ撮りアニメーションの振興と宣伝、なによりも日本の作家の発掘とその才能の育成を焦点に<国際コンペティション>を加えた本格開催となります。<映画館が発信する映画祭>アニメーションの作家を育て支える新しい場・仕組みをつくるためのコンペティションをメインに、国内外の新作、名作、日本未公開作品などのプログラム、ビギナーや経験者向けのワークショップやゲスト作家によるマスタークラスといったつくり手のための企画も多数予定。今回行う国際コンペティションは、コマ撮り(ストップモーション)の技法をつかった作品であること、2020年1月1日以降制作された作品で、30分以内の短編作品が対象。選考・審査員には各々専門の有識者・作家が参加予定。グランプリは新作制作のための副賞100万円。有望な作品は、劇場公開~配給のサポートといった映画館だからこそできる副賞を用意。コマ撮りが好きな人や応援している人、つくっている人、これからやりたいと思っている人、よくは知らないけれど興味がある人 etc…人と人とが交流すること。その場所をつくること。たくさんの人へとコマ撮りアニメーションの魅力を届けるべく本映画祭を開催します。プログラムなどの映画祭の詳細は後日発表いたします。現在コンペティション作品の応募受付中です。2023年10月15日〆切。応募フォームは公式サイトより。■MORCコマ撮りアニメーションフェスティバル2023概要公式サイト: 開催日程 : 2023年11月18日~12月17日(12月1日~4日はコンペティションなどの映画祭の中心期間)会場 : ミニシアターMorc阿佐ヶ谷、ザムザ阿佐ヶ谷、アート・アニメーションのちいさな学校 ほか主催 : Morc阿佐ヶ谷+アート・アニメーションのちいさな学校事務局 : MORCコマ撮りアニメーションフェスティバル事務局 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年07月26日8月30日から9月9日まで開催される第80回ヴェネチア国際映画祭のラインアップが発表された。ハリウッドで全米脚本家組合と全米映画俳優組合が63年ぶりに異例の「ダブル・ストライキ」を行っている現在。同映画祭のアートディレクターのアルベルト・バルベラは「幸いにも俳優のストライキによる(映画祭への)影響は、ルカ・グァダニーノ監督の『Challengers』を失いましたが最小限でした」とコメントした。『Challengers』はオープニング作品に選出されていたが、ストライキによって上映が取り下げられ、エドアルド・デ・アンジェリス監督の『Comandante』が代わりに選ばれた。「もちろん、大きなスタジオやストリーミング配信サービスの作品に出演しているSAGメンバーの俳優は参加できないと思いますが、インディペンデント系の作品に出演している俳優たちはヴェネチアに来てくれるといいなぁと期待しているんです」とも。コンペティション部門のラインアップは以下の通り。『Comandante』エドアルド・デ・アンジェリス(イタリア)※オープニング作品『The Promised Land』ニコライ・アーセル(デンマーク、ドイツ、スウェーデン)『Dogman』リュック・ベッソン(フランス)『Le Bête』ベルトラン・ボネロ(フランス、カナダ)『Hors-Saison』ステファヌ・ブリゼ(フランス)『Enea』ピエトロ・カステリット(イタリア)『Maestro』ブラッドリー・クーパー(アメリカ)『Priscilla』ソフィア・コッポラ(アメリカ、イタリア)『Finally Dawn』サヴェリオ・コスタンツォ(イタリア)『Lubo』ジョルジョ・ディリッティ(イタリア)『Origin』エイヴァ・デュヴァーネイ(アメリカ)『The Killer』デヴィッド・フィンチャー(アメリカ)『Memory』ミシェル・フランコ(メキシコ、アメリカ)『Io Capitano』マッテオ・ガローネ(イタリア、ベルギー)『悪は存在しない』濱口竜介(日本)『The Green Border』アグニェシュカ・ホランド(チェコ、ポーランド、ベルギー)『The Theory of Everything』ティム・クローガー(ドイツ、オーストリア、スイス)『Poor Things』ヨルゴス・ランティモス(イギリス)『El Conde』パブロ・ラライン(チリ)『Ferrari』マイケル・マン(アメリカ)『Adagio』ステファノ・ソリマ(イタリア)『Woman Of』マウゴジャータ・シュモフスカ、ミハウ・エングレルト(ポーランド・スウェーデン)『Holly』フィン・トーチ(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、フランス)(賀来比呂美)
2023年07月26日時代に先駆けて現在主流のデジタルシネマにフォーカスし、国内外の映画界の新たな才能を発掘してきた《SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023》が、23日にクロージング・セレモニー(表彰式)を迎え、各賞が発表された。世界各国の秀作が顔を揃えることで知られる本映画祭のメイン・プログラム「国際コンペティション」部門の最高賞となる最優秀作品賞を受賞したのは、シリア映画『この苗が育つ頃に』。トルコ出身のレーゲル・アサド・カヤ監督が見事に栄冠に輝いた。『この苗が育つ頃に』レーゲル・アサド・カヤ監督トルコ出身のカヤ監督がシリアに移り、撮影監督や編集、俳優としても携わった本作は、さまざまな制限がかかる中、シリア北部のロジャヴァ地域の映画制作者たちのコラボレーションとして完成させたという。俳優には演技未経験のアマチュアを起用し、バイクでヨーグルト売りに街に出た父と娘が自宅のある村に戻るまでの1日を丹念に描写。シリアの田舎町で暮らす市井の人々の日常をシンプルに見つめる。その一方で、何気ない日々から希望や平和へのメッセージも込められた1作となっている。国の情勢が予断を許さない状況もあって来日が叶わなかったカヤ監督はビデオメッセージを寄せ「最優秀作品賞を受賞したこと、大変嬉しく思います。 映画祭の皆さんにお礼を申し上げます。また、日本の人々、素晴らしい観客の皆さんに感謝いたします」と謝意を述べると、続けて「シリアのクルディスタン地域ロジャヴァのコミュニティで、制作された戦争の物語が日本に届きました。私たちにとって最高の喜びです。カメラと物語を通して、私たちの声を世界に届けようとしています。自由で平等な世界を手に入れようと闘っています。この思いと目的のために、この賞を、戦争が終わった時の素晴らしい日に捧げたいと思います。また、自由と平等のために闘っている人々に捧げます。そして、戦争で命を失った世界中の子どもたちにも捧げたいです。このような賞をいただき、本当にありがとうございます。映画祭で、皆さんと私たちの思いを共有できたことを嬉しく思います。クルディスタン、シリアから、私たちの声を日本に送ることができました。受賞に関わらず、私たちにとって これが最も大切なことです。シリアのクルディスタン地域ロジャヴァより、日本の皆さんに思いと愛を送ります」と語った。本作について国際コンペティションの審査委員長を務めた映画プロデューサーの豊島雅郎氏は、くしくも今回賞を分け合うことになった4作品にまず審査は絞られ、その上でほかの審査員である映画プロデューサーの明石真弓氏、同じく映画プロデューサーのパトリス・ネザン氏ともにイチ押しの作品が実は『この苗が育つ頃に』だったと語り、満場一致での最高賞だったことを明かした。国際コンペティションの審査委員長の豊島雅郎氏続けて豊島氏は「通常の外国映画はセールス会社を介して映画祭にエントリーすることが通常。その中で、本作についてはカヤ監督本人が自らエントリーをしてきたと事務局から聞いている。また、このSKIPシティ映画祭から世界へメッセージを届けたいという監督の強い意志もあったと聞いています。この映画祭が見出した、これから世界に出ていくであろう作品であり、監督の才能であると思っています。まさにSKIPシティ映画祭がみつけた新しい才能として、みなさんとこの作品のこと、監督のことを応援できたらと思います。この作品をこの映画祭から世界に発信できることを誇りに思っています」とメッセージを寄せた。一方、もうひとつの主要賞である監督賞は『僕が見た夢』のパブロ・ソラルス監督が手にした。パブロ・ソラルス監督は2018年に本映画祭に『家(うち)に帰ろう』(※映画祭上映タイトルは『ザ・ラスト・スーツ』)が入選し観客賞を受賞。外国映画の監督として本映画祭に2度目のノミネートとなるのは20回の歴史で初めてのことで、『僕が見た夢』も開催前から注目を集めていた。パブロ・ソラルス監督の『僕が見た夢』(C)Marcelo Iaccarino主人公のフェリペを演じ、当時12歳だったルーカス・フェロとの脚本ワークショップから出発している本作は、ある少年が亡き父の過去をたどる物語。父と子のいろいろな思いが交錯し、その思いが伝わる感動作になっている。審査員の明石氏は本作について「シンプルなストーリーでありながら、演劇と映像を融合した形で描かれているユニークな作品でした。登場人物たちが発するリアルな言葉や感情をパブロ監督は丁寧にとらえている。そして、スクリーンからは真摯にこの作品やキャストと向き合ったパブロ監督の姿勢が滲み出ている。今後、わたし自身が作品を作る者としてすごく励みになりましたし、今後、どういった作品を(自分は)作っていくべきかの指針にもなりました」とパブロ監督の卓越した手腕に賞賛の声を寄せた。来日が叶わなかった監督に代わって壇上にあがったエルナン・オリヴェラ プロダクション・ディレクターは日本語で、「こんにちは、ありがとう」とまず挨拶すると、「監督は過去にこの映画祭に参加していて、この映画祭が自分の心の中の重要な位置をしめているので喜んでいると思います」と語ると、「役者たちとのコラボレーションはパブロ監督にとって大変な作業でした。その成果をとらえてくれて、評価していただいてとてもうれしく思っています」と喜びを語った。『僕が見た夢』エルナン・オリヴェラ プロダクション・ディレクターそれから、もうひとつの主要賞である審査員特別賞は、ハンガリー映画『シックス・ウィークス』が受賞した。2014年に法案が改正され、養子縁組が成立していても、出産をした日から6週間の間に実母が気持ちを変えた場合、子どもを取り戻すことが可能になった同国の法を背景にした本作は、養子縁組、女性のキャリア、望まぬ妊娠などに鋭く言及。卓球選手として将来が期待される高校生ゾフィを主人公にした物語は、気づいたときには中絶できない時期に妊娠が判明した彼女の不安、焦燥、孤独、そして決断をリアルに描き出す。『シックス・ウィークス』(ノエミ・ヴェロニカ・サコニー監督)(C)Sparks Ltd.本作について審査員のパトリス・ネザン氏は、「この作品は、リアルに根差した世界を描いている。監督はいま生きている世界をしっかりと把握していると思いました。我々は、主人公のゾフィを至近距離で感じ、彼女に思いを寄せることになる。ヒューマニズムの時間をシェアしてくれた監督に感謝したい」と評した。自身が現在妊娠中ということもあって来日が叶わなかったノエミ・ヴェロニカ・サコニー監督は、「私たちはとても感動し、名誉ある賞の受賞を本当に嬉しく思っております。 ありがとうございました。本作の制作は、私たちキャスト・スタッフ全員にとって、とても困難なものでした。プロデューサーを始め、すべてのスタッフにとって、この受賞は本当に嬉しいことです。なぜなら、すべてのスタッフがこの初長編作品に、たくさんの愛と労力を注いだからです。作品を観てくださった観客の皆さんの心に届いたということを聞きました。 とてもとても嬉しいです」と喜びいっぱいのコメントを寄せた。一方、国内作品を対象にした国内コンペティション部門では、長編部門の優秀作品賞を松本佳樹監督の『地球星人(エイリアン)は空想する』が、短編部門の優秀作品賞を池本陽海監督の『猟果』が受賞した。松本佳樹監督の『地球星人(エイリアン)は空想する』(C)世田谷センスマンズ池本陽海監督の『猟果』(C)池本陽海なお、審査委員長を務めた中野量太監督が松本佳樹監督の『地球星人(エイリアン)は空想する』について「僕には撮れない作品」と評し、総評でも「自分が嫉妬するような才能に多く出会った、僕自身が映画祭を通じて、最も刺激を受ける機会になった」と語ったように国内コンペティションも国際コンペティション同様にハイレベルの争うだったことがうかがえた。「国内コンペティション」審査委員長を務めた中野量太監督最後に本映画祭を少し振り返ると、今年は第20回という節目の開催。その20年という月日によって本映画祭が築き上げてきたことを実感する開催だったといっていいかもしれない。まず、コロナ禍が明けつつあり、ここ数年叶わないできた海外からのゲストが今回は多数来場。連日猛暑が続く中、会場では活発なQ&Aが行われ、本映画祭が従来から大切にしてきた国内と海外の映画人、そして地元ファンがつながる場がようやく復活した印象を受けた。また、当初から目玉企画として注目を集めていた“SKIPシティ同窓会”では、本映画祭をきっかけに大きな飛躍を果たした日本の気鋭監督たちが続々登場。それぞれの監督たちが語る入選時の話は、いまや若手クリエイターの登竜門と呼ばれる映画祭へと成長した本映画祭の歩みと歴史を振り返る機会になった。20回の着実な歩みを重ねてきた本映画祭だが、次の20年に向けてどのような歩みを進めていくのか?まずは新たな一歩になる来年の開催に期待したい。なお、スクリーンでの上映は本日23日の国際コンペティションのグランプリ上映をもって終了となるが、昨日22日からオンライン配信上映がスタート。オンライン配信での作品上映は26日(水)まで続くので、受賞作をはじめ見逃した作品があったら、こちらでチェックしてほしい。【受賞結果】<国際コンペティション>最優秀作品賞:『この苗が育つ頃に』監督:レーゲル・アサド・カヤ監督賞:『僕が見た夢』監督:パブロ・ソラルス審査員特別賞:『シックス・ウィークス』監督:ノエミ・ヴェロニカ・サコニー観客賞:『助産師たち』監督:レア・フェネール<国内コンペティション>SKIPシティアワード:『地球星人(エイリアン)は空想する』監督:松本佳樹優秀作品賞長編部門:『地球星人(エイリアン)は空想する』監督:松本佳樹優秀作品賞短編部門:『猟果』 監督:池本陽海スペシャル・メンション: 『ミミック』監督:高濱章裕観客賞長編部門:『ヒエロファニー』監督:マキタカズオミ観客賞短編部門:『勝手に死ぬな』監督:天野大地取材・写真・文:水上賢治《SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023》7月26日(水) 23:00までオンライン配信※ 特設サイト() (Powered by シネマディスカバリーズ)にて(会員登録が必要)
2023年07月23日真木よう子主演、今泉力哉監督作『アンダーカレント』より本予告と本ビジュアルが解禁された。「漫画界のカンヌ映画祭」と呼ばれるフランス・アングレーム国際漫画祭でオフィシャルセレクションに選出されるなど、国内外から熱狂的な人気を誇る豊田徹也の同名長編漫画を実写映画化した本作。この度、解禁となった本予告は、主人公・関口かなえ(真木よう子)と、かなえが営む銭湯に突然現れた謎の男・堀隆之(井浦新)との対峙から始まる。かなえは突然失踪した夫・関口悟(永山瑛太)のことで頭を悩ませていた。住み込みで働きたいと申し出た堀との奇妙な日常が続く中、偶然に再会した大学時代の友人・菅野よう子(江口のりこ)の紹介で、どこか怪しげで風変わりな探偵・山崎道夫(リリー・フランキー)に悟の捜索を依頼する。「人をわかるってどういうことですか?」と山崎がかなえに聞き取りをするシーンでは、かなえは虚を突かれたかのように絶句。突然失踪した夫、突然現れた謎の男、どこか怪しげで風変わりな探偵…連続して出現するミステリアスで不可解な登場人物によって知らぬ間に物語の核心に引き込まれていく。そして、あることをきっかけに浮かび上がってくるそれぞれの想いとは…。音楽界の至宝・細野晴臣の楽曲にいざなわれ、物語は主人公・かなえの心境の変化とともに救いを見出していく。併せて解禁された本ビジュアルには、「なぜ男は現れ、なぜ夫は消えたのか――」というミステリアスな言葉が添えられている。上段には主演・真木さんと物語のキーマンを担う井浦さんとの2ショット。突然現れた謎の男・堀隆之と湖面を前に佇む主人公・関口かなえの表情が、「喪失」「孤独」「偽り」を静かに想起させ、どこかサスペンスフルに映し出されている。かたや下段では真木さんと、突然失踪したかなえの夫・関口悟を演じる永山さんとの2ショット。仲睦まじかった頃の2人は、ともに理解しあい、愛しあっているかのように見えたが…。幸せそうなこの夫婦の描写には、上段で記したイメージとは対照的に「温もり」「愛」「幸福」が感じ取れる。「偽りも、本当も、抱きしめながら、生きていく。」のコピーとともにこの2つの描写が一つになることで、複雑で且つ繊細に奥底で揺れ動く心が表現されている。さらに、7月21日(金)より全国の上映劇場(一部劇場を除く)及び、オンラインにて映画『アンダーカレント』のムビチケが発売(税込¥1,500)。カード型前売券の券面には、かなえの心の<アンダーカレント(底流)>を想起させるブルーの美しいイメージビジュアルが採用されている。オンライン券には、イメージビジュアルのスマホ壁紙がプレゼントされる。『アンダーカレント』は10月6日(金)より全国にて公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:アンダーカレント 2023年10月6日より全国にて公開(C)豊田徹也/講談社(C)2023「アンダーカレント」製作委員会
2023年07月21日アトム・エゴヤンの最新作が、9月のトロント映画祭でお披露目されることになった。タイトルは『Seven Veils』。オペラをテーマにしたドラマで、アマンダ・サイフリッド演じる主人公は演出家。エゴヤン自身が最近オペラの演出を手がけたことにインスピレーションを得て生まれたものだ。カナダ国籍を持つエゴヤンがトロント映画祭で監督作を上映するのは、これが18回目。今年のトロント映画祭は9月7日から17日にかけて行われる。この映画祭には毎年ハリウッドスターが多数訪れるが、現在起きている俳優のストライキが長引けば、スター不在の華のない映画祭になる恐れがある。文=猿渡由紀
2023年07月20日映画『エゴイスト』で主演を務めた鈴木亮平が北米で最も由緒あるアジア系映画祭、ニューヨーク・アジアン映画祭にてライジングスター・アジア賞を受賞。現地時間7月15日(土)現地時間20時30分(日本時間7月16日9時30分)よりリンカーン・センターにて行われた授賞式に鈴木さんと松永大司監督が登壇した。7月14日から30日までニューヨーク、リンカーン・センターで開催され、各国から60以上の作品が出品されたニューヨーク・アジアン映画祭(以下、NYAFF)。本作は世界的に注目度の高いアジア映画を紹介するStandouts部門に出品された。ライジングスター・アジア賞(Rising Star Asia Award)とは世界的に最も活躍が期待されるアジアの俳優に贈られる賞で、過去には香港、韓国、タイ、フィリピンなど各国の人気俳優が受賞、日本人俳優では池松壮亮、小松菜奈、綾野剛らが受賞している。上映後に行われたQ&Aにも鈴木さんと松永監督が登壇、鈴木さんが本作に出演を決めた思いや、LGBTQ+を題材にする上での本作の取り組み、LGBTQ+インクルーシブ・ディレクターとインティマシー・コレオグラファーの役割についてなどが語られた。また、本作をきっかけにゲイであることを家族にカミングアウトした出演者に触れ、感極まる場面も。鈴木さんと松永監督はお互いが俳優・監督になる前からの知り合いで、その頃からいつか一緒に映画を作りたいという夢を語っていたことが実現したことにも触れ、満席の場内からは拍手が巻き起こった。さらに、北米での劇場公開が秋に決まったことについても改めて感謝を述べた。鈴木さんは、「このようなすばらしい名誉ある賞をいただき、NYAFFに感謝します。ここ(ニューヨーク)に来ることができて本当に嬉しく思います。最初に来た時にすっかりこの街が好きになって、そして今でも大好きな街です」とニューヨークへの思いへもコメント。「映画『エゴイスト』は自分にとって、とても特別な作品です。この映画に関わってくれたすべての人に、特に松永大司監督、共演の宮沢氷魚さん、阿川佐和子さんに感謝します」と述べ、「何よりも、原作者の高山真さんに感謝したいです、彼は亡くなってしまいましたので、この作品の完成を見届けていただくことはできませんでした。でもきっと今夜もどこかから見ていてくれると思います」と原作者の高山さんに対しても感謝を語った。松永監督も「『エゴイスト』は僕にとってもとても大切な映画になりました。今日このニューヨークという場所で、亮平とともに映画を上映できることを喜びに感じます。これからの活躍もさらに期待しています」と、鈴木さんの受賞を称える。さらに、共演の宮沢氷魚からも「ライジングスター・アジア賞受賞おめでとうございます。より多くの方に鈴木亮平さんの存在と映画『エゴイスト』 が認められていることを心から嬉しく思います」とお祝いコメントが到着。「亮平さんはこの先、間違いなく世界で活躍される俳優さんだと信じています。亮平さんに負けないくらい、僕も頑張りたいと思います」と、鈴木さんを称えながら自身も展望を語った。『エゴイスト』は全国にて公開中。8月25日(金)よりBlu-ray&DVDにて発売。発売元:日活株式会社販売元:株式会社ライツキューブ(シネマカフェ編集部)■関連作品:エゴイスト(2023) 2023年2月10日より全国にて公開© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
2023年07月18日「第27回ファンタジア国際映画祭」にて、北村匠海、山田裕貴、杉野遥亮、今田美桜らが出演する映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-/-決戦-』の上映日程が決定した。後編『-決戦-』は累計動員100万人を突破し、前編『-運命-』との前後編2作品をあわせると、動員300万人、興行収入40億を突破(7月16日時点)している本作。そんな日本での熱狂が世界にまで波及し、6月からインドネシア・タイ・香港・シンガポールで順次上映。そして、カナダのモントリオールで7月20日(木)から行われる「第27回ファンタジア国際映画祭」にて、特別招待作品として出品が決定していた本作の上映日程が決定。7月29日(土)前編、30日(日)に後編が上映され、監督の英勉とプロデューサー陣が参加する予定だ。前編の上映も7月27日(木)までと、後編と共に一気観できるタイミングが残りわずかとなっている『血のハロウィン編』。今回新たに、7月21日(金)より一部を除く全国の上映劇場で配布予定の後編入場者特典の内容が明らかに。エンドロールでの特服タケミチの後ろ姿と、ドラケン&マイキーの愛車が描かれた“エンドロールグラフィティステッカーセット”となっている(※特典は無くなり次第終了)。『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』、『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』は公開中。(シネマカフェ編集部)■関連作品:東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命- 2023年4月21日より全国にて公開©和久井健/講談社 ©2023映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編」製作委員会東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦- 2023年6月30日より全国にて公開©和久井健/講談社 ©2023映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編」製作委員会
2023年07月17日マイケル・マン監督の最新作『Ferrari』が、ヴェネツィア映画祭でプレミアされるようだ。エンゾ・フェラーリの伝記映画で、主演はアダム・ドライヴァー。ペネロペ・クルスが妻役を演じる。ほかにシェイリーン・ウッドリー、パトリック・デンプシーらが出演する。北米配給権は、A24や配信会社を制してネオンが取得。北米公開日はアワード狙いのクリスマスに設定された。ネオンはオスカー作品賞を受賞した『パラサイト半地下の家族』、今年のオスカーで3部門に候補入りした『逆転のトライアングル』の北米配給も手がけている。この作品のキャンペーンにも力が入りそうだ。文=猿渡由紀
2023年07月11日ルカ・グァダニーノ監督(『君の名前で僕を呼んで』)×ゼンデイヤ主演『Challengers(原題)』が、第80回ヴェネチア国際映画祭でオープニングを飾ることが分かった。ゼンデイヤは元天才テニス選手で現在はテニスコーチのタシを演じ、ジョシュ・オコナーとマイク・ファイスト演じる2人のプロテニス選手と、三角関係に巻き込まれていくという物語。『Challengers』がオープニング作品に決まり、グァダニーノ監督は、「私の新作を観客に体験してもらうことにとてもワクワクしています」と喜びのコメントを発表。「この作品は、若々しいエネルギー、愛、パワーについて描いた現代的で大胆な物語になっています。ゼンデイヤ、ジョシュ、マイクは、本当に独創的でフレッシュな人たち。これまでに見たことがないような新しいエネルギーをもたらしてくれます。第80回ヴェネチア国際映画祭で、(開催地である)リド島の観客のみなさんが(作曲家の)トレント(・レズナー)とアッティカス(・ロス)のサントラの音色に合わせてダンスするのが待ちきれません」と公式HPで語っている。昨年、グァダニーノ監督は同映画祭において、自身が手掛けた『ボーンズ アンド オール』で銀獅子賞を手にした。『Challengers』は8月30日に第80回ヴェネチア国際映画祭のオープニング・ナイトにワールドプレミアを迎える。(賀来比呂美)
2023年07月07日アニメーション映画『北極百貨店のコンシェルジュさん』が、「第26回ファンタジア国際映画祭」Axis部門に出品されることが決定した。本作は、「ビッグコミック増刊号」(小学館)で2017年から連載がスタートし、「第25回文化庁メディア芸術祭 マンガ部門 優秀賞」を受賞した西村ツチカによる同名漫画の映画化。海外からの注目も高く、「アヌシー国際アニメーション映画祭2023」のScreening Events(特別上映)部門に正式招待された。そして今回新たに出品されることが明らかになった「ファンタジア国際映画祭」は、カナダ・モントリオールで1996年から開催されている、北米やヨーロッパ、アジアの作品を中心に上映されている映画祭。主にジャンル映画(アクション、ファンタジー、ホラー、SF、アニメ、B級映画等)に特化した、北米最大のジャンル映画祭として知られている。本作が出品されたAxis部門は、アニメーション作品のコンペ部門となり、最優秀長編アニメ賞である「今敏賞」を競う。昨年は、同部門に『グッバイ、ドン・グリーズ!』、『とつくにの少女』、『犬王』が出品され、『犬王』は今敏賞を受賞した。今年は、7月20日(木)~8月9日(水)まで開催。上映に合わせて、板津匡覧監督とキャラクターデザイン・作画監督を務めた森田千誉が現地に赴く。そして、本作の新場面写真も公開。念願叶ってコンシュルジュの職に就いた主人公・秋乃のキラキラとした笑顔や、小さなお客様にくぎ付けになっている様子、プロポーズに臨むちょっと弱気なニホンオオカミや、父親に贈るプレゼントを買いに来たウミベミンク、お茶を飲むウーリーなどの姿が見られ、本編への期待がより高まる。『北極百貨店のコンシェルジュさん』は2023年秋、公開予定。(シネマカフェ編集部)■関連作品:北極百貨店のコンシェルジュさん 2023年秋、公開予定©2023⻄村ツチカ/⼩学館/「北極百貨店のコンシェルジュさん」製作委員会
2023年07月07日星空の映画祭実行委員会が主催する「第37回 星空の映画祭」を2023年8月6日(日)~8月20日(日)の会期にて開催します。星空の映画祭2023毎日日替わりで最新作・話題作から名作まで全9作品をラインナップとして揃え、星空の映画祭らしい、ここでしか味わえない空間と体験をお届けします。開幕前日となる8月5日までは「チケットぴあ」および会場となる八ヶ岳自然文化園他取扱店舗で前売り券を販売します。●上映作品すずめの戸締まり|銀河鉄道の父|映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)|NOPE ノープ<字幕版>|切腹ピストルズ参上!|モリコーネ 映画が恋した音楽家<字幕版>|トップガン マーヴェリック<字幕版>|荒野に希望の灯をともす|エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス<字幕版><上映スケジュールは公式サイトやSNS、添付資料をご確認ください>2023年上映スケジュール●会場八ヶ岳自然文化園 野外ステージ(長野県諏訪郡原村17217-1613)●会期・時間2023年8月6日(日)~8月20日(日) 開場 19:00/上映 20:00/雨天決行●チケット前売り券:おとな(高校生以上)1,300円 小中学生500円当日券 :おとな(高校生以上)1,500円 小中学生500円未就学児無料※税込●チケット販売場所チケットぴあ Pコード:468270または「八ヶ岳自然文化園」「茅野新星劇場」他各取扱店舗■主催 :星空の映画祭実行委員会■特別協力:八ヶ岳自然文化園|茅野新星劇場|マルモ印刷株式会社■特別協賛:富士見パノラマリゾート■協力 :株式会社 エース企画■フライヤー原画:ナオト(絵本な雑貨店)会場の様子 1●星空の映画祭とは1981年にスタートし、その後26年に渡って原村の夏の風物詩のひとつとして多くの人に愛され続けてき星空の映画祭でしたが、映画をとりまく環境・状況の変化から2006年に惜しまれながら幕を閉じました。4年後の2010年。「星空の映画祭」を見て育った地元住民やそれに共感した県内外のメンバーによるボランティアベースでの復活開催が実現。有志による手探りでの運営の中、毎年多くの来訪者にここでしか味わえない「星空の映画祭」という体験をお届けしています。●星空の映画祭実行委員会について星空の映画祭の開催と継承を目的に置いたボランティアベースの有志による任意団体です。現行の実行委員会は2010年の復活初年に組織され、準備から作品選定、会場設営、会期中は運営業務などを行っています。メンバーは毎年おおよそ30名ほどの人員で構成されています。また、スクリーンや音響の設置、映写機やプロジェクターによる上映は、第1回から新星劇場(茅野市)によって行われています。●会場について会場となるのは「八ヶ岳自然文化園」園内の野外ステージで、1981年の当時はまだ完全に森の中であった第1回開催から同じ場所での上映を行っています。半円系の座席に正対する野外ステージにおおよそ幅11m、高さ5mのスクリーンを張り、5.1チャンネルの音響を設置し上映を行います。映写は会場後方にある映写小屋から常設の35mmフィルム映写機およびデジタルシネマプロジェクターによって投影されます。会場周辺を木々が覆い、晴天時には文字通り満天の星空を仰ぎ見ることが出来ます。公式ウェブサイト: Instagram : Twitter : Facebook : 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年07月07日黒木華主演映画『せかいのおきく』で監督を務めた阪本順治が、「第22回ニューヨーク・アジアン映画祭」にて「スター・アジア・ライフタイム・アチーブメント賞」を受賞した。「ニューヨーク・アジアン映画祭」は、北米で最も由緒あるアジア系映画祭で、22回目を迎える今年は、7月14日から30日まで開催。阪本監督が受賞した「スター・アジア・ライフタイム・アチーブメント(Star Asia Lifetime Achievement)賞」は、“スターアジア生涯功績賞”と翻訳され、長年優れた作品にて、何世代にも渡る映画製作者と観客に影響を与えてきた、特別な才能の人物に与えられる賞として名誉ある受賞だ。阪本順治監督これまで、ジャッキー・チェン、ユエン・ウーピン、アン・ホイらが受賞しており、日本からは2016年に岩井俊二、2018年に原田眞人、昨年は清水崇が選ばれ、今回4人目の受賞となった。受賞決定を受けて阪本監督は、「すべての作品にかかわっていただいた方々に、感謝します。これからも、順応と抵抗を繰り返し、あちらこちらへと越境しながら、変わらず、やっていきます」とコメント。阪本監督は上映に合わせて渡米し、レッドカーペットに登場する予定だ。また本作の主演を務めた黒木さんは、「沢山の映画を撮ってこられた阪本監督の作品の一部を担えたこと、大変光栄に思います」と話し、「また監督と新たな映画の時間を過ごせるよう私も精進したいと思います」とコメント。池松壮亮も「長年において数々の意志を、記憶を、夢を、映画に刻み込み、そこから沢山の影響を受けてきた者の1人として、心より祝福いたします」と祝いの言葉を送り、寛 一 郎は「自分のことのように嬉しく思います。これからも価値のある作品を撮り続けてください」と語った。『せかいのおきく』は全国にて公開中。(シネマカフェ編集部)■関連作品:せかいのおきく 2023年4月28日より全国にて公開©2023 FANTASIA
2023年06月29日映画『エゴイスト』に主演した鈴木亮平が、第22回ニューヨーク・アジアン映画祭2023(New York Asian Film Festival/略称:NYAFF)にてライジングスター・アジア賞を受賞することが発表され、鈴木さんからコメントが到着した。ニューヨーク・アジアン映画祭は北米でもっとも由緒あるアジア系映画祭。7月14日から30日までニューヨーク、リンカーン・センターで開催され、各国から60以上の作品が出品される。『エゴイスト』は世界的に注目度の高いアジア映画を紹介する「Standouts部門」に出品され、現地時間7月15日にリンカーン・センターにて行われる上映の際に授賞式が行われる予定。舞台挨拶には鈴木さんとともに松永大司監督も出席予定となっている。ライジングスター・アジア賞は、世界的にもっとも活躍が期待される俳優に贈られる賞になり、過去の日本人では池松壮亮、小松菜奈、綾野剛らが受賞してきた。鈴木さんは、大河ドラマ「西郷どん」や「エルピスー希望、あるいは災いー」出演、『孤狼の血 LEVEL2』では日本アカデミー賞最優秀助演男優賞をはじめとする数々の賞を受賞、最近では映画『TOKYO MER~走る緊急救命室~』の大ヒットも記憶に新しく、日本を代表する俳優の1人。本作では、恋人とその母へ愛情を注ぐゲイの主人公を演じた繊細な演技が高く評価され、この度の受賞に繋がった。なお、2013年には鈴木さん出演の『HK/変態仮面』がNYAFFにて観客賞を受賞している。鈴木亮平コメント愛する街ニューヨークで、このような重要な賞をいただき非常に光栄です。また、映画『エゴイスト』が国境や文化の違いを越えて評価されていることをとても嬉しく思います。『エゴイスト』は「恋人との愛」「親子愛」「救い」などのテーマと共に、セクシュアリティやアイデンティティについて大きな気付きを与えてくれた、私にとっても特別な作品です。この作品がさらに世界中に広がり、たくさんの方々の心に届いてくれることを願っています。改めて、原作者の高山真さん、共演の宮沢氷魚くん、阿川佐和子さん、松永大司監督をはじめ、協力してくださった全ての方に感謝いたします。「ライジング・スター」という名に恥じぬよう、今後とも俳優として、人間として研鑽を積んでいきたいと思います。なお、本作は、2023年2月10日の劇場公開以降、いまなお日本中でロングラン上映を続けており、動員数は20万人を突破、興行収入は約3億円と、ロングランヒットを記録中。北米に加えてアジアでは香港、韓国、台湾で公開が決定、映画祭は、アジア全域版アカデミー賞といわれる「第16回アジア・フィルム・アワード」(助演男優賞受賞:宮沢氷魚)のほか、イタリア「ウディネ・ファー・イースト映画祭」、ドイツ「第23回ニッポン・コネクション」、米「フレームライン映画祭」、米「プロビンスタウン映画祭」、韓国「富川ファンタスティック映画祭」など続々と出品が決定している。『エゴイスト』は全国にて公開中。8月25日(金)Blu-ray&DVD発売発売元:日活販売元:ライツキューブ(シネマカフェ編集部)■関連作品:エゴイスト(2023) 2023年2月10日より全国にて公開© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
2023年06月19日新千歳空港国際アニメーション映画祭実行委員会は、2023年11月2日(木)~6日(月)の5日間、北海道新千歳空港にて開催する「第10回 新千歳空港国際アニメーション映画祭」のメインビジュアル担当作家を発表しました。また、映画祭が本年で10周年を迎えるにあたり制作した記念ロゴマークを公開しました。第10回メインビジュアル担当作家は漫画家 市川春子に決定『宝石の国(8)』カバーイラスト ©市川春子/講談社記念すべき第10回映画祭の顔となるメインビジュアルの担当作家は、「月刊アフタヌーン(講談社)」にて、現在『宝石の国』を連載中の漫画家 市川春子(いちかわはるこ)氏に決定しました。同氏は、投稿作『虫と歌』でアフタヌーン2006年夏の四季大賞を受賞し、『星の恋人』でデビュー、初の作品集『虫と歌 市川春子作品集』が第14回手塚治虫文化賞・新生賞を受賞、2作目の作品集『25時のバカンス 市川春子作品集Ⅱ』が第16回文化庁メディア芸術祭「マンガ部門」審査委員会推薦作品となるなど高い評価を受け、2012年より自身初の長編作品となる『宝石の国』を現在まで連載中です。また、学生時代を北海道札幌市で過ごし、本映画祭でも2017年にTVアニメ『宝石の国』のプログラムを実施するなど、北海道と本映画祭にゆかりのある作家でもあります。同氏による本映画祭メインビジュアルは、本年夏以降に新千歳空港館内およびWEB上など各所で展開してまいりますので、是非ご期待ください。市川春子(いちかわはるこ)プロフィール学生時代を札幌で過ごす。投稿作『虫と歌』で「アフタヌーン2006年夏の四季大賞」受賞、『星の恋人』でデビュー。初作品集『虫と歌 市川春子作品集』が第14回手塚治虫文化賞・新生賞受賞。「アフタヌーン」にて『宝石の国』を連載中。『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』の人物キャラクターデザインを一部担当。映画祭10周年を彩る記念ロゴマークを公開本映画祭が2023年に10周年を迎えるにあたり制作した、記念ロゴマークを公開しました。アニメーションとエアポートの頭文字「A」からなるオブジェの集合体により、北海道の美しい雪の結晶をイメージした映画祭の公式ロゴをもとに、10の数字を形作ることで、これまで10年間の映画祭の歩みを表現するとともに、外周の円を外したデザインにより「映画祭がより外へ広がっていく」というメッセージが込められています。本記念ロゴマークはメインビジュアルと共に、新千歳空港館内およびWEB上など各所で展開してまいります。10周年記念ロゴマーク10周年を迎える本年映画祭では、これまでの集大成となるだけではなく、新たな10年に向け、地域との連携や国内外への情報発信など更なる「外」への広がりを目指した展開を予定しています。最新情報は映画祭公式WEBサイトにて随時更新してまいりますので、ご期待ください。「第10回 新千歳空港国際アニメーション映画祭」実施概要開催日程:2023年11月2日(木)~11月6日(月)会場:新千歳空港ターミナルビル(新千歳空港シアター他)■コンペティション情報募集日程:①短編部門 2023年4月24日(月)~2023年6月30日(金)②長編部門2023年4月24日(月)~2023年7月18日(火)③Social Media部門2023年4月24日(月)~2023年7月18日(火)ノミネート発表:①2023年8月末②2023年9月末③2023年9月中旬※受賞作の発表本審査/授賞式:映画祭本祭会期中■「新千歳空港国際アニメーション映画祭」とは新千歳空港国際アニメーション映画祭は、北海道と世界を結ぶゲートウェイである新千歳空港ターミナルビル(北海道千歳市)を会場とした、アニメーション専門の国際映画祭です。記念すべき第10回目の開催となる今年も、アニメーションを通した「国際文化交流拠点」となることを目指し、国内最大規模のコンペティションを柱に、国内外話題作など招待作品の上映をはじめとする多様なプログラムを展開し、来場者へ最新情報と国際的な出会いを共有できる場を提供します。第10回 新千歳空港国際アニメーション映画祭 : 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2023年06月14日デジタルシネマにフォーカスし、映像表現の可能性とエンタテインメント性を備えた作品を世界中から厳選し上映する国際コンペティション映画祭「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023」のラインナップ発表会見が6月14日、都内で行われた。2004年にスタートし、記念すべき第20回を迎える今年は、2012年の同映画祭で初長編作『チチを撮りに』が監督賞&SKIPシティアワードに輝き、『湯を沸かすほどの熱い愛』『浅田家!』など飛躍を続ける中野量太監督が、国内コンペティション審査委員長を務めることになり、「この映画祭をきっかけに、映画監督の道を切り開いていただいた。応募する皆さんの気持ちは痛いほど分かるので、責任をもって審査しなければいけない」と決意表明した。中野量太その上で「丁寧に審査し、(若い才能を)すくい上げて、ほめてあげたい。プラス、プロの壁を超えるために、何が足りないのか。僕にしかできないアドバイスもできれば」と審査に対する思いもコメント。「新しい才能に出会えるのが楽しみですし、もしかすると、昔の自分を見ているようで、感動して泣いちゃうかもしれません」と期待を寄せた。国内コンペティションには長編6作品、短編8作品がノミネート。荒削りだが、監督たちがやりたいことを詰め込んだ、趣もジャンルも異なる意欲作が集まった。若手映像クリエイターの登竜門として、これまでに中野監督をはじめ、『死刑にいたる病』の白石和彌監督、『さがす』の片山慎三監督など、日本映画界をけん引する監督を多く輩出しており、次世代を担う新たな才能発掘に期待が集まる。過去最多となる102の国・地域から949本の応募があり、バラエティ豊かな日本初上映作10本がノミネートされた国際コンペティション。審査委員長には、映画プロデューサーとして数々のヒット作を手がけた、アスミック・エース株式会社取締役の豊島雅郎氏が任命され、「志を持ち、質の高い、世界に誇れる映画祭。普段はあまり映画館で上映されない国々の監督が集まり、アットホームな雰囲気を感じていた」と映画祭に対する印象を語り、審査への意気込みを示した。豊島雅郎また、映画祭20周年と川口市制施行90周年を記念して、埼玉県と川口市が共同製作したオープニング作品『瞼の転校生』の上映や、これまでの映画祭の成果を振り返る特集企画「SKIPシティ同窓会」も決定。中野監督や片山監督に加えて、松本優作監督、まつむらしんご監督、中村真夕監督といった本映画祭から羽ばたいた映画人の最新作を上映し、トークイベントでは、監督本人から映画祭参加後の歩みや作品制作の舞台裏を語ることになっている。会見には中野監督、豊島氏をはじめ、大野元裕(SKIPシティ国際映画祭実行委員会会長/埼玉県知事)、奥ノ木信夫(実行委員会副会長/川口市市長)、八木信忠(映画祭総合プロデューサー)、藤田直哉(オープニング作品『瞼の転校生』監督)、土川勉(映画祭ディレクター)が同席。大野知事は、過去最多となる応募があったことについて「コロナ禍で、十分な表現活動ができないなかで、創作への熱意が失われなかった。そして、映画祭に対して大きな期待が寄せられている証左だと思う」と話していた。取材・文・撮影:内田涼<開催概要>『SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023(第20回)』■会期スクリーン上映:2023年7月15日(土)~7月23日(日)オンライン配信:2023年7月22日(土)~7月26日(水)■会場:SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ映像ホール(埼玉県川口市)ほか■内容:国際コンペティション、国内コンペティション(長編部門、短編部門)ほか■主催:埼玉県、川口市、SKIPシティ国際映画祭実行委員会公式サイト:
2023年06月14日ルーク・エヴァンス&ビリー・ポーター主演作『Our Son(原題)』がトライベッカ映画祭でプレミアを迎えた。上映後、2人がデュエットを披露し観客を喜ばせるサプライズも。ルークのインスタグラムに、その模様の一部を収めた動画がアップされている。「私たちの素晴らしいプレミアを締めくくる唯一の方法。映画の中で使われている、ビリーが書き下ろした歌をデュエットすることです」と説明した。ビリーはデュエットの前に「この映画で特別なこと。私たちがすぐに理解しあえた理由の一つに、ルークが私と同じ“舞台っ子”だったということが挙げられます。それに、ルークはとんでもなく歌がうまいんですよ」とルークの歌唱力を称賛。「想像してみてください。クィア映画の主演俳優2人が、ラブソングを歌うところを」と観客に呼び掛けた。そして2人は手をつなぎ、見つめあい、それぞれが迫力のある美しい歌声を聞かせた。ビリーは長年舞台で活躍し、エミー賞、グラミー賞、トニー賞を受賞。歌手歴は30年以上の大ベテランだ。ルークも舞台からエンタメ業界に入り、歌手として2枚のアルバムをリリースするなど、歌える俳優として活躍してきた。2人は『Our Son(原題)』で13年間の結婚生活に終止符を打ち、息子の親権を争う元パートナー同士を演じている。(賀来比呂美)
2023年06月12日10月23日(月)~11月1日(水)に開催される第36回東京国際映画祭で、コンペティション部門の審査委員長をドイツの映画監督、ヴィム・ヴェンダースが務めることが決定した。ヴィム・ヴェンダースは、『ことの次第』(1982)でヴェネチア国際映画祭の金獅子賞を受賞するなど、キャリアを通じて世界中で多くの栄誉を受けてきた。『パリ、テキサス』(1984)でカンヌ国際映画祭パルムドール、『ベルリン・天使の詩』(1987)で同カンヌ国際映画祭で最優秀監督賞を受賞し、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(1999)、『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(2011)、『セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター』(2014)の3作品で米国アカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門へのノミネートを果たした。また、親日家としても知られ、特に『東京物語』(1953)を観て魅せられたという小津安二郎監督への傾倒は深く、1985年には小津安二郎へのオマージュとしてドキュメンタリー映画『東京画』を製作し、高い評価を得た。東京・渋谷の公衆トイレのリノベーションを紹介したアートプロジェクトThe Tokyo Toiletの一部である最新作『パーフェクト・デイズ』(2023)は、日本の俳優である役所広司を主演に迎え、今年のカンヌ国際映画祭で同氏に最優秀男優賞をもたらした(ドイツ人アーティスト、アンセルム・キーファーのポートレイト映画『アンセルム』も同映画祭Special Screenings部門に選出)。同監督の東京国際映画祭への参加は1991年のクロージング作品『夢の涯てまでも』、1993年のヤングシネマコンペティション部門の審査委員長、2011年の『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』以来4回目の参加となる。また、小津安二郎監督特集も決定。今年で生誕120年となる、日本が世界に誇る巨匠の特集を小津ファンでもあるヴィム・ヴェンダース監督を迎える中で特集を組めることは内外の映画ファンにとっても大きな喜びとなるだろう。詳しい上映作品及びイベントに関しては、後日発表される予定だ。■コメントヴィム・ヴェンダース東京国際映画祭にまた戻ってこられることを嬉しく思います。以前の私の初めての審査委員長体験は本当に良い思い出しかなく、今でも当時の審査委員の人たちとは交流があり、お互いに「クローディーさん(プロデューサーのClaudie Ossard)」、「ポールさん(作家のPaul Auster)」、「ヴィムさん(監督ご本人)」と「さん」を付けて日本風に呼び合っています。今年の東京国際映画祭は私が敬愛する巨匠・小津安二郎監督の死後60年、生誕120年の記念すべき年に開催されるもので、そんな機会に参加できることは私にとっては特別なことです。東京国際映画祭チェアマン 安藤裕康昨年秋ヴィム・ヴェンダース監督が世界文化賞受賞のため訪日した際、親日家で知られる同監督に今年の審査委員長就任を打診したところ、前向きな反応を頂いて心強かった。そして今年、小津安二郎生誕120年の記念の年に、同監督を敬愛するヴィム・ヴェンダース監督に審査委員長をお引き受け頂くことになって、本当に有意義だと思う。また、同監督の最新作『パーフェクト・デイズ』に主演している役所広司さんが、この度のカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞されたとの素晴らしいニュースも喜ばしい限りだ。第36回東京国際映画祭は10月23日(月)~11月1日(水)、日比谷・有楽町・丸の内・銀座エリアにて開催。(text:cinemacafe.net)
2023年06月12日岡田将生と清原果耶がW主演を務める映画『1秒先の彼』が、「第25回台北映画祭」のガラ・プレゼンテーション部門へ正式出品が決定。岡田さん、山下敦弘監督、脚本・宮藤官九郎が参加する。現地では、記者会見やフォトコール、Q&Aを実施予定。2021年に台湾アカデミー賞(金馬奨)の最多5部門(作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞、視覚効果賞)を受賞した原作、『1秒先の彼女』を手掛けたチェン・ユーシュン監督、キャストのリー・ペイユー、リウ・グァンティンの特別参加も決定しており、オリジナル版キャスト・スタッフと初めて交流することになる。『1秒先の彼女』なお、本作は「第25回上海国際映画祭」GALA部門でのワールドプレミア上映も決定。『苦役列車』以来11年ぶりの参加となる山下監督の舞台挨拶の登壇も予定されている。▼山下敦弘監督コメント台北映画祭で『1秒先の彼』を上映していただけること、とても光栄です。台北映画祭には2019年に審査員として参加しました。その映画祭に今度は自分の映画で参加できることが、とても嬉しいです。チェン・ユーシュン監督作品は面白くて完成された世界観を持っています。僕たちなりに日本でリメイクすることの意味を考えながら、悩みに悩み、素敵なスタッフ・キャストとともに『1秒先の彼』という作品を完成させました。オリジナルとは設定を少し変更し、舞台を京都にしたことで、日本でのリメイク作品としての意義を持ち、物語やキャラクターが生き生きとしたものになったと思います。『1秒先の彼女』を観て、「台湾に行きたい!」と思いましたが、『1秒先の彼』を観て、台湾の方々にも「京都に行きたい!」と思ってもらえたら嬉しいです。台湾の皆さんがこの作品を観て、どう思うのかな……と緊張しながらも、チェン・ユーシュン監督はじめ、オリジナルのキャスト・スタッフの皆さんにも楽しんでいただける作品になっていたら本望です。『1秒先の彼』は7月7日(金)よりTOHO シネマズ日比谷ほか全国にて公開。(cinemacafe.net)■関連作品:1秒先の彼女 2021年6月25日より新宿ピカデリーほか全国にて公開©︎MandarinVision Co, Ltd1秒先の彼 2023年7月7日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開©2023『1秒先の彼』製作委員会
2023年05月31日齊藤工が監督を務める映画『スイート・マイホーム』が、「第25回上海国際映画祭」に正式出品されることが決定した。「上海国際映画祭」は、1993年から行われているアジア圏最大規模の映画祭で、今年は6月9日から18日まで行われる。新居購入をきっかけに家族が遭遇していく恐怖の連鎖を描く『スイート・マイホーム』が出品されるのは、GALA部門。これまで、加賀まりこと塚地武雅が親子役で共演した『梅切らぬバカ』、『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM "Record of Memories”』などが出品された。「第20回上海国際映画祭アジア新人賞部門」で長編初監督作である『bank13』が最優秀監督賞を受賞した齊藤監督。ワールドプレミアとして世界初上映を迎えることについて「大いに映画表現の背中を押してくれた特別な映画祭ですので上海に新作を持って伺える事は感慨深いです」と明かし、「そんな個人的な事以上に窪田正孝さん、蓮佛美沙子さん、奈緒さん、窪塚洋介さんをはじめとする日本を代表する演者の皆さんの極限の表現を撮影の芦澤明子さんが捉えて下さった『スイート・マイホーム』が海を渡る事は本作を制作する上で一つの目的だったので非常に嬉しく思います」と意気込みを語り、同映画祭へ参加することも発表された。そして、蓮佛美沙子、奈緒、窪塚洋介、中島歩、里々佳、松角洋平、根岸季衣らのベールに包まれていた役どころも明らかに。蓮佛さんが主人公・清沢賢二(窪田正孝)の妻で、暖かい新居への引っ越しを夢見るひとみ役。奈緒さんが賢二とひとみの新居「まほうの家」の営業担当で住宅会社の社員・本田役。窪塚さんが賢二の兄・聡を演じる。中島さんは長野県警の警察官・柏原役、里々佳さんは賢二が働くスポーツジムのインストラクター・原友梨絵、松角さんが賢二たち家族に何らかの執着を見せる住宅会社社員・甘利、根岸さんが聡と賢二の母・美子を演じる。また併せて、新居の前で来客を見送る清沢一家、押入れの中で何かに怯える賢二の兄・聡、車の中で刑事・柏原からある事件の話を受ける賢二、モデルルームで来客を応対する住宅会社社員・本田などの場面写真も公開された。『スイート・マイホーム』は9月1日(金)より全国にて公開。(cinemacafe.net)■関連作品:スイート・マイホーム 2023年9月1日、全国にて公開予定©2023『スイート・マイホーム』製作委員会 ©神津凛子/講談社
2023年05月30日6月9日から18日まで開催される第25回上海国際映画祭が、長編コンペティション部門などの作品ラインアップを発表した。日本からは長編コンペティション部門に山田洋次監督作『こんにちは、母さん』と熊切和嘉監督作『658km、陽子の旅』がノミネート。同部門には日本の2作品のほか、中国、インド、イギリス、スペイン、ロシアー/ジョージア、イラン、ベルギー、イタリアからの作品が候補に挙がっている。Asian New Talent部門には金子由里奈監督作『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』、アニメーション部門には西澤昭男監督作『とんがり頭のごん太-2つの名前を生きた福島被災犬の物語-』が選出された。これらの作品は、同映画祭のゴールデンゴブレット賞の受賞対象となり、受賞作品は6月17日に発表される。また、日本の選りすぐりの作品を上映するNippon Express部門第2弾も発表。藤井道人監督作『ヴィレッジ』、松本優作監督作『Winny』、森井勇佑監督作『こちらあみ子』、成島出監督作『銀河鉄道の父』、高橋正弥監督作『渇水』が選出された。同映画祭の公式サイトによると、毎年Nippon Expressで上映される作品は大人気で、チケットはほぼ完売になるという。上海国際映画祭は中国本土で開催される映画祭として唯一、国際映画製作者連盟(FIAPF)の認定を受けている映画祭。(賀来比呂美)■関連作品:こんにちは、母さん 2023年9月1日より全国にて公開©2023「こんにちは、母さん」製作委員会658km、陽子の旅 2023年7月28日よりユーロスペース、テアトル新宿ほか全国にて順次公開©2023「658km、陽子の旅」製作委員会
2023年05月30日現地時間5月27日夜、フランスで開催されていた第76回カンヌ国際映画祭の授賞式にて、映画『Perfect Days』で主演を務めた役所広司が男優賞に輝いた。日本の俳優の受賞は、2004年の『誰も知らない』の柳楽優弥以来2人目で、さらにエキュメニカル審査員賞も受賞し、作品としてはW受賞となった。エキュメニカル審査員賞は、キリスト教徒の映画製作者、映画批評家らによって1974年に創設されたもので、日本人の監督作では過去に青山真治監督の『EUREKA(ユリイカ)』が2000年、河瀬直美監督の『光』が2014年、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が2021年に受賞しており、邦画としては4作品目となる。併せて、役所広司本人、さらに会場で感動の表情を浮かべていた監督のヴィム・ヴェンダース、そしてカンヌで一緒にプレミア上映に立ち会ったキャストからコメントが到着した。■役所広司日々を丁寧に静かに重ねるように生きる。この平山という男を演じるのは、大きな挑戦でした。ヴィム・ヴェンダースという偉大な監督には、フィクションの存在であるこの男にとても大きなリスペクトがありました。それが私を導き、平山という男をこの世界に生み出した気がします。このような賞をいただいてとても光栄です。日本の、世界の、映画が少しでも、もっと素晴らしいものになるようにこれからも努力を重ねていきたいと思います。日本でもみなさんに、「平山」という男をご紹介できる日が楽しみです。■ヴィム・ヴェンダースこれ以上の言葉を私は見つけることができない。“役所広司は、監督をする者にとって最高の俳優である”彼こそが俳優である。それも最高の俳優だ。彼こそが平山であり、『PERFECT DAYS』というこの映画の心臓であり、魂なのだ。この映画を通じて私たちはゆっくりと平山の視線や生き方を受け入れていく。彼の目を通してこの世界をみつめる。そうすることで彼が選びとった人のために生きるというその姿に癒しを感じるようになる。他の俳優でも平山を「演じる」ことはできるだろう。けれど役所広司は平山そのものになった。穏やかさ、謙虚さ、大きな心。同じようなひとに対してだけでなくすべてのひとに対しても。自然に対してもそれをもつ。とくに木々には静かで美しい感情を抱いている。カンヌの劇場から泣いて帰る人がいるとしたら、それはこの偉大な俳優が彼らを旅に連れ出したのだ。彼らの魂に、より良く生きることとは何か。満たされた生き方はどういうものか。そういう考えに火をともしたのだ。こんなことを成し遂げる俳優は世界にそうはいない。私は彼と一緒に映画をつくれたことをとても幸せに思う。この賞は、私と、そしてカンヌに集まったチームの全員が待ち望み、そして夢にみたものである。■中野有紗受賞、本当におめでとうございます。役所さんの演技、作品に取り組む姿勢は私の心に強く響きました。役所さんの存在の素晴らしさが更に世界に伝わったような気がして、自分の事のように嬉しく感じています。その様な受賞作品に、私も出演させて頂けた事を心より光栄に思って居ります。本当におめでとうございました。■アオイヤマダ受賞おめでとうございます。人それぞれの日常や居場所が主人公であり、それこそが平和ということ。与えられた時間を精一杯生きること。そして、決して一人では生きられないこと。私はこの作品に携わらせて頂き、改めて意識することができました。ヴィムさんがみつめる日本には、私たちが気がつくことができない、新芽のような美しさがあります。素晴らしい機会を下さったこと、本当に感謝しております。■田中泯嬉しい!役所さんの受賞が自分のことのように嬉しい。そうして『PERFECT DAYS』を受け入れたフランス、カンヌにヤッホーだ。この作品に関わった全ての人の心の内に秘められていたことがこの結果だった、と僕は信じます。ヴェンダース監督がそんな人々の先頭で喜びに浸っているに違いない。役所さんが体現した平山さんは、自分のテンポとメロディーで生きたい人々の本当の例題となるでしょう。言葉少ない役所さんは、ずっと踊っていた!<作品情報>『PERFECT DAYS』原題:『PERFECT DAYS』/上映時間:124分/製作:日本/日本配給予定【スタッフ】監督:ヴィム・ヴェンダース脚本:ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬エグゼクティブ・プロデューサー:役所広司プロデュース:ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬【キャスト】役所広司、柄本時生、中野有紗アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり田中泯、三浦友和 ほか(C)2023 MASTER MIND Ltd.『PERFECT DAYS』トレーラー
2023年05月29日23日(現地時間)、第76回カンヌ国際映画祭で監督としての6年ぶりの新作『首』が公式上映され、終了後にスタンディングオーベーションを受けた北野武(76)。上映前には、同作の出演者である西島秀俊(52)、加瀬亮(48)、中村獅童(50)、浅野忠信(49)、大森南朋(51)らとともにレッドカーペットを歩いたが、そのなかで紅一点、着物を着た女性の姿が。豪華俳優陣の中心で手を振る武の隣に手を繋いで寄り添っていた親密な様子のその女性は、武の現在の夫人だと、一部スポーツ紙やテレビが報じている。武は’19年に長く別居していた前夫人との離婚が成立。18歳年下の現在の夫人とは‘20年に再婚をしている。現・夫人は武のマネジメントも手掛けていると報じられており、公私のパートナーだ。夫人は、これまで公の場に姿を現したことがなかったため、ネット上では、《たけしの新しい奥さん初お目見え?》《この人が武さんの奥さんか…》《前の奥さんはまったく出てこなかったけど、やっぱり違うタイプなんやなー》《たけしさん本当に溺愛してるんだなぁ新しい奥さんを…レッドカーペットまで手を繋いで歩くのびっくり》《手つないでたー素敵》と、さまざまな反応が上がっていた。
2023年05月25日先ごろ開催されたアカデミー賞でポール・メスカルが主演男優賞の候補になったのをはじめ、英国アカデミー賞、カンヌ映画祭など多くの映画祭・映画賞で絶賛を集めた映画『aftersun/アフターサン』がいよいよ26日(金)から公開になる。本作は主人公の女性が、20年前の夏に父と訪れたリゾート旅行を振り返る様を描いた作品で、大きな事件が起こるわけでも、劇的な展開があるわけでもないが、観る者の心と記憶を刺激する描写がふんだんに盛り込まれ、映画的な魅力が細部にまでつまっている。本作はなぜ、ここまで観客を魅了するのか? 監督と脚本を手がけたシャーロット・ウェルズに話を聞いた。ウェルズ監督はスコットランド出身で、ニューヨークを拠点に活動する映画監督。大学院で映画制作を学び、いくつかの短編を手がけた後、初の長編作品にこのプロジェクトを選んだ。主人公の女性ソフィは、ホームビデオの映像を観ている。あの夏、11歳だったソフィは父に連れられてトルコのリゾート地に出かけた。いつもは離れて暮らしている父との日々。ビデオに記録された空はどこまでも青く、ふたりは朝から晩まで遊んで、穏やかに時間が過ぎていく。しかし、ソフィはビデオ映像にうつる父の知らなかった一面を見つけ出していく。本作では劇中で父の知られざる一面が劇的に描かれることはない。しかし、観客は11歳のソフィの目を通して父との日々を眺めているうちに、父の抱えているものに少しずつ気づいていく。「多くの映画監督は“ストーリーを伝えるための劇の構造”を選びがちですよね。でも私は、観る人ともっと深いつながりが持てる作品をつくりたいと思っています。ですからこれまでも余計なものは可能な限り排除して、本当に必要なものだけを残すというやり方で映画をつくってきました。本作でもすべてを説明するのではなく、作品の中に余白を残すことで観客にメッセージを読み取ってもらいたいと思いました」監督が語る通り、本作では過剰な説明やセリフは登場しない。カメラの動き、俳優の表情や気配、父と娘の空気感の変化……“映画の言語”を駆使して物語が綴られる。「大学院で映画を学んだのですが、最初にやるレッスンは“映画の音を消してもストーリーがちゃんと伝わるか?”でした。そのことはいつも意識しています。脚本を書く上ではストーリーを前に進めたり、新しい情報を伝えるようなセリフもありますが、私の書くセリフは日常の中にある”とりとめのない言葉”が多いですし、創作する過程ではフォーム(構造)を通じてストーリーを伝えることを大切にしています。それに無駄なセリフを排除して、静寂な時間をつくることで、別の要素を映画の中に入れることができるんです。カメラワークや、音がスクリーンの画とシンクロしていたり、ズレていたり……しっかりとビジュアルで語ることで、そういった別の要素が強まる可能性もつねに意識しています」そこで重要になったのが、フィルムでの撮影だ。本作は“かつて父と娘が旅行中に撮影したハンディビデオの映像を、成長した娘が見る”という設定だが、撮影は全編35ミリフィルムで行われた。「撮影監督のグレゴリー・オークのこだわりでもあったのですが、35ミリフィルムで撮影することは本作を語る上では欠かすことのできない要素でした。デジタル撮影にはない質感が35ミリにはあり、本作が描く記憶のぼんやりとした感じ、ソフトな質感を表現するためにはフィルムが必要だったのです。デジタル撮影だとあまりにもクッキリとし過ぎてしまうのです。フィルムで撮影することで、古い写真や使い捨てカメラで撮った写真の感覚を表現できると思いましたし、フィルムのルックを用いることで観客が“あの時代”を意識せずにさかのぼれると思いました」なぜ、『aftersun/アフターサン』は多くの観客を魅了し続けるのか?さらに本作では編集と構成(どの順番でシーンを語っていくか?)に長い時間が費やされたという。この物語では父と娘はひとつのリゾート地で何日も過ごしている。脚本上では「時間の経過を表現するために、1日のはじまりは必ず同じシーンからはじまるようにしていた」そうだが、完成した映画では時間の経過が曖昧に感じられるようにシーンが構成され、時おり成長した現在のソフィの場面が挟み込まれる。時間が単純に一直線に進んでいくのではなく、過去を振り返る時に誰もが体験する“おそらくこの順番で出来事が起こったはずだけど、一部だけ記憶の順番が曖昧”という感覚を本作は編集によって実現しているのだ。「撮影監督のグレゴリーと、編集を担当したブレア・マックレンドンとは同じ大学院で、短編も一緒につくってきました。私たちは創作のテイストも似ているし、目指している部分が同じなんです。ですから、撮影を終えて、編集前に自分とブレアのために“編集用の脚本”を用意したのですが、結果的には一度も開くことはありませんでした。ブレアは物語が時系列的に一直線に進んでいくことを好まないので、時間が経過して次の日がやってくる“境界線”をうまくボカすような編集をしてくれました。基本的には朝が来て、夜になり……と進んでいくのですが、時折、ソフィが同年代の子どもたちとプールに入るシーンや、彼女が男の子と遊ぶ場面を違う流れの中に上手に盛り込んでいくことで、記憶のもつ“順番が曖昧な感じ”を表現することができたと思います。これはブレアのおかげですね」さらに本作ではシーンの並びを精緻に検討して構成することで、観客が少しずつ父の知らなかった一面に気づいていくことに成功している。人は映画を観ている時、その映画がまだ上映中であっても、数分前に観ていたシーンの印象が変わることがある。映画の前半で楽しそうな人として登場したキャラクターが、あるシーンで得られる情報によって“さっき観たあのシーンの彼は楽しそうにしていたわけではないのだ”と気づくことがある。記憶は人の中で固定されるものではない。記憶はたえず変化し、更新されていく。「そのことはすごく意識しましたし、本作はそのような構造の作品だと思います。この映画を観てくださる方は、最初は父と娘の楽しいバケーションを観ていると思っています。しかし、それがどんどん変化していく、それらが積み重なることで、結末には観客がある感覚を抱くことになる。でも、それは人生そのものがそうだと言えますし、“振り返る”という行為もそうですよね。過去を振り返る時、当時はとても楽しい思い出だったのに、何年か経ってから振り返ると、別の感情が湧き上がってくる。あの時の楽しさを思い出したいけれど、今の感情とぶつかり合ってしまう。そういうことが誰にでもあると思いますし、そのこともこの映画では表現したかったのです」この映画が世界中の多くの観客を魅了しているのは、父と娘の関係を上手に描いたからでも、親子の普遍的なドラマを描いたからでもない。曖昧な記憶が変化/更新される中で、新たな一面を発見し、当時の記憶と現在の感情がぶつかり合う……誰もが一度は経験する感覚を見事に描き出したことが本作の最大の魅力だろう。監督が目指した通り、本作は単に物語やキャラクターを提示するだけでなく、観客と“深いつながり”をもつことに成功したのだ。「公開される前は、私と同じような体験をした方や、似たような体験をした観客だけにこの映画を理解してもらえると思っていました。父と娘の関係だったり、父の抱えている問題が観客に響くだろうと予想していたのです。しかし、映画が公開され、そうではないことが証明されました。この映画はそれ以上の広がりをもって受け入れられました。それは本当にうれしいことですし、今後も自分の信念を貫いて創作を続けていきたいと思っています」誰もが過去を振り返る。楽しかった思い出、つらい記憶、あの日のあの人の印象……しかし、それらは自分が時を経て、経験を重ねることで変化していく。人は何度も過去を振り返り、そのたびに新しい過去に出会う。あの時はわからなかった父の気持ちがわかるようになる。新たに父と出会うことができるのだ。これから多くの人がふとしたきっかけで、映画『aftersun/アフターサン』を振り返ることになるだろう。そのたびに、観客の記憶の中に、あの日のリゾート地の父と娘が、思ってもみなかった新しい姿で出現するはずだ。『aftersun/アフターサン』5月26日(金) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国公開(C)Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022
2023年05月24日話題のインド映画が上映される「インド大映画祭 IDE 2023 in K’s cinema」より予告編が公開された。特定非営利活動法人「インド映画同好会」が、貴重なラインアップを揃えて贈る「インド大映画祭」。『愛と勇気のヒーロー チェンナイエクスプレス』の監督ローヒト・シェッティ×ランヴィール・シン&ディーピカー・パードゥコーン夫妻が出演する日本初公開作品『サーカス』のほか、『バンバン!』『WAR ウォー!!』のリティク・ローシャン主演『ヴィクラムとヴェーダ』(ヒンディ版)、名作『スルターン』、さらにシークレット作品、日本初公開3作と話題作が一挙公開される。『サーカス』この度公開された予告編では、まず、日本初公開となる1本『サーカス』のランヴィール・シンのダンスシーンが軽快な音楽とともに流れ、タイトルロゴが現れるという、まさに「祭」のオープニングにふさわしい予告編の冒頭。その後「サーカス」が2組の双子を取り換えたことから始まる物語であることが示され、さらに2本の日本初公開作品『ガルギ 正義の女神』では父の疑いを晴らそうとする少女の強い目のシーンや、『ラストファーマー』の1人で農地と寺を守ろうとする老人の姿を映し出す。『ラストファーマー』次に今回プレミア先行上映される『ただ空高く舞え』『ヴィクラムとヴェーダ』(ヒンディ版)がインド版のポスターの絵柄で、コピーとともに紹介され、【衝撃枠】の『野獣一匹2』、名作『スルターン』、『ヴィクラムとヴェーダー』(タミル版)、【スポットライト枠】の『ひとかけらの愛』、【クラシック枠】の『サチン』、『隠された顔』、『若き獅子』が紹介されていく。ランヴィール・シン、ディーピカー・パ―ドゥコーン、スーリヤ、リティク・ローシャン、R・マーダヴァン、ヴィジャイ・セードゥパディ、カールティ、ヴィジャイなど、次々とインドを代表する俳優たちの顔が次々映し出される、華やかな予告編となっている。まだ発表されていないシークレット枠での上映作品にも注目したい。「インド大映画祭 IDE 2023 in K’s cinema」は6月17日(土)~7月7日(金)、新宿 K’s cinemaにて開催。(text:cinemacafe.net)
2023年05月24日