今年のカンヌで喝采を浴びた是枝裕和監督の最新作『空気人形』が9月26日(土)に公開を迎え、是枝監督、ペ・ドゥナ、ARATA、板尾創路による舞台挨拶が行われた。この舞台挨拶のために来日したペ・ドゥナは「緊張していますが、初日を迎えて感無量です。“空気人形”として生きて時間は幸せでした」と笑顔で語った。是枝監督も初日を迎えてホッとした様子。アメリカを含む世界15か国での本作の公開も決まり「よかったです」と喜びを口にしたが、「何より日本で多くの人に観ていただきたいと思っています。今回は力を入れて、みんなで『笑っていいとも!』にまで出ましたので(笑)」とユーモアたっぷりに日本の観客にアピールした。ARATAさんは、本作を「是枝監督が詩のように綴った人間讃歌です。観終わって生まれた感情を大切に家に持ち帰ってください」と呼びかけた。板尾さんは、“勝負服”の純白のタキシードで登場!「撮影はちょっと孤独でした。ARATAくんと一緒の芝居はほとんどないし、監督は静かで、ぺ・ドゥナとはほとんどしゃべらなかったし…」と正直に明かしつつ「完成した作品を観て、参加してよかったな、と思いました」と胸を張った。続いて、話題はこのメンバーで参加したカンヌ国際映画祭の思い出に。板尾さんは「レッドカーペットがデカかったです。普段はどこに収納してるんでしょうか?幅が広くて継ぎ目もなくて、保管が大変そうですね」と心配そうに語り、笑いを誘った。そのカンヌで、本作の上映の際にARATAさんと板尾さんは居眠りをしてしまったとか…。上映後、会場は歓声と拍手で包まれたそうだが、板尾さんは「僕が目を覚ましたことに対して拍手してもらってるかのように思えました。『板尾、起きたわー』って(笑)」と苦笑いを浮かべつつ「それぐらい、素晴らしい映画なんです!」と無理矢理まとめた。ARATAさんも「上映する日の朝にカンヌに着いて、取材、取材で…、上映前には食事会もあって『危険だな』と思ってたんですが。気がついたら話が飛んでるワケです…(笑)。隣りを見たら板尾さんも目を閉じてて『助かった!』って思いました」と申し訳なさそうにふり返った。これに対してペ・ドゥナは「2人が寝てたことは知りませんでした。夜の上映でしたが、人間は夜の方が感性が鋭いものです。私はハマりこんで観てました。思わず涙を流したとき、ARATAさんが黙ってハンカチを差し出してくれたんですが、寝てても優しく私を気遣ってくれていたんですね(笑)」と見事なフォロー。是枝監督は、このやり取りに「複雑な気持ちです…。今日、観に来てくださったみなさんはペ・ドゥナさんや私の側の方々だと信じています」と横目で板尾さん、ARATAさんをチラリ。さらにこの日は、10月11日に30歳の誕生日を迎えるペ・ドゥナと、本日“誕生日”を迎えたこの映画のためにケーキの形をした特製ボードが登場。ペ・ドゥナは「30歳が本当の意味での女優としてのスタートだと思っています」と笑顔でさらなる飛躍を誓った。『空気人形』はシネマライズ、新宿バルト9ほか全国にて公開中。■関連作品:空気人形 2009年9月26日よりシネマライズ、新宿バルト9ほか全国にて順次公開© 2009業田良家/小学館/『空気人形』製作委員会■関連記事:みずみずしく純粋な空気人形に、感情の素晴らしさを再確認『空気人形』ペ・ドゥナ『空気人形』インタビュー誰もが持つ“空っぽ”な感覚とそれを満たすものペ・ドゥナ、ARATAを「頼れる人」で板尾は「近づけない感じ」ARATA、メイド従業員に手ほどき「ぺ・ドゥナをしっかり研究して」オダギリジョーも飛び入り参戦!トロント映画祭で『空気人形』観客総立ちの絶賛
2009年09月26日カンヌこぼれ話。今年の審査委員長はフランスの大物女優イザベル・ユペール。去年の審査委員長ショーン・ペンもレッドカーペット上でタバコを吸ったり(吸殻で燃えるほど、やわな素材じゃないだろうが)、問題児ぶりを発揮していたが、ある意味で今年はそれ以上だったかもしれない。審査員9人のうち、ユペールに加え、アーシア・アルジェント(イタリア)、ロビン・ライト・ペン(アメリカ)、スー・チー(台湾)、シャルミラ・タゴール(インド)と女優が5人を占める異例の構成だったため、不協和音が事前から心配されていたが、やっぱり審査員同士が相当揉めた様子。まあ、そういったうわさは毎年のようにあるのだが、特に今回はユペールが2001年にミヒャエル・ハネケ監督の『ピアニスト』でカンヌの女優賞を獲得しているだけに、ハネケの受賞が予想され、実際そのとおりの結果になった。そのため、ユペールが強権発動したのではともっぱらの評判に。もちろん、ハネケのパルムドール受賞作『THE WHITE RIBBON』(原題)が優れた作品なのは間違いないのだが、授賞式では毎年大物プレゼンターが発表するはずなのを自ら発表するなど、異例のひいきぶりを発揮していたのも確か。授賞式後の会見でユペールは「ハネケが私の大好きな監督なのは確かだし、だから彼の映画に2度出演したのよ。彼の映画は人間の魂に深く向き合っている」と、堂々たるもの。やんちゃ娘のアーシア・アルジェントも「(会議室の)扉の向こうの話は、ここではしないわ」と大人の発言だった。しかし、審査員間のトラブルなどどこ吹く風でニッコニコだったのが、ロビン・ライト・ペン。夫ショーン・ペンと別居した直後だったため、13日の開幕記者会見ではピリピリぶりがこちらにも伝わってくるほどだったが、ロビンがカンヌにいる間に反省したらしいショーンが離婚申請を取り下げたため、「意見の違いはあっても、全員が心を開いて語り合ったわ。そこには本物の愛があったの」と終始ご機嫌だった。(photo/text:Ayako Ishizu)第62回カンヌ国際映画祭特集■関連作品:第62回カンヌ国際映画祭 [映画祭]■関連記事:【カンヌ現地レポ 13】52歳の新星!ブラピを喰った男演賞俳優クリストフ・ワルツ【カンヌ現地レポ 12】娘シャルロットの快挙に母ジェーン・バーキンも絶叫!【ハリウッドより愛をこめて】次世代アイドルC・クロフォードが『フットルース』に!ショーン・ペン、再び離婚申請を撤回【カンヌ現地レポ 11】最高賞はミヒャエル・ハネケ作品に!シャルロットに女優賞
2009年06月03日