第80回ゴールデン・グローブ賞のノミネーションが発表され、日本のアニメ『犬王』(湯浅政明監督)がアニメ映画賞にノミネートされた。作品賞(ドラマ部門)に、ジェームズ・キャメロン監督の渾身作『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』や大ヒット作『トップガン マーヴェリック』といったエンターテイメント超大作がノミネート。キャメロン監督は監督賞にもノミネートされたが、同賞には女性監督のノミネートはなかった。『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』最多は『スリー・ビルボード』マーティン・マクドナー監督の最新作『イニシェリン島の精霊』が8部門で、A24作品の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が6部門で続いた。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』非英語映画賞には、カンヌ国際映画祭監督賞を受賞した韓国パク・チャヌク監督の『別れる決心』や、『バーフバリ』S・S・ラージャマウリ監督による『RRR』も選出された。『別れる決心』受賞者・受賞作品は2023年1月10日に開催される授賞式にて発表。昨年は、主催する「ハリウッド外国プレス協会」ことHFPA(=Hollywood Foreign Press Association)の人種差別や特権体質が問題視され、トム・クルーズら俳優やAmazon、Netflix、ワーナー・メディアがボイコットを表明。授賞式は無観客開催で米NBCがテレビ中継を取りやめたが、今回は同局にて授賞式の放送が決定している。※主なノミネートは以下のとおり【映画部門】作品賞(ドラマ部門)『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』『エルヴィス』『フェイブルマンズ』『TÁR』『トップガン マーヴェリック』作品賞(ミュージカル・コメディ部門)『バビロン』『イニシェリン島の精霊』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』『逆転のトライアングル』監督賞ジェームズ・キャメロン『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』バズ・ラーマン『エルヴィス』マーティン・マクドナー『イニシェリン島の精霊』スティーヴン・スピルバーグ『フェイブルマンズ』脚本賞『TÁR』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』『イニシェリン島の精霊』『ウーマン・トーキング 私たちの選択』『フェイブルマンズ』主演男優賞(ドラマ部門)オースティン・バトラー 『エルヴィス』ブレンダン・フレイザー『ザ・ホエール』ヒュー・ジャックマン 『The Son/息子』ビル・ナイ 『生きる LIVING』ジェレミー・ポープ『The Inspection』(原題)主演女優賞(ドラマ部門)ケイト・ブランシェット『TÁR』オリヴィア・コールマン 『エンパイア・オブ・ライト』ヴィオラ・デイヴィス『The Woman King』(原題)アナ・デ・アルマス 『ブロンド』ミシェル・ウィリアムズ 『フェイブルマンズ』主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)レスリー・マンヴィル 『ミセス・ハリス、パリへ行く』マーゴット・ロビー 『バビロン』アニャ・テイラー=ジョイ 『ザ・メニュー』エマ・トンプソン『Good Luck to You, Leo Grande』(原題)ミシェル・ヨー 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)ディエゴ・カルバ『バビロン』ダニエル・クレイグ 『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』アダム・ドライバー『ホワイト・ノイズ』コリン・ファレル『イニシェリン島の精霊』レイフ・ファインズ 『ザ・メニュー』助演男優賞ブレンダン・グリーソン『イニシェリン島の精霊』バリー・コーガン『イニシェリン島の精霊』ブラッド・ピット『バビロン』キー・ホイ・クァン『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』エディ・レッドメイン『グッド・ナース』助演女優賞アンジェラ・バセット『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』ケリー・コンドン『イニシェリン島の精霊』ジェイミー・リー・カーティス 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』ドリー・デ・レオン『逆転のトライアングル』キャリー・マリガン『SHE SAID/シー・セッドその名を暴け』アニメ映画賞『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』『犬王』『Marcel the Shell with Shoes On』(原題)『長ぐつをはいたネコと9つの命』『私ときどきレッサーパンダ』非英語映画賞『西部戦線異状なし』(ドイツ)『アルゼンチン1985 ~歴史を変えた裁判~』(アルゼンチン)『CLOSE/クロース』(ベルギー・フランス・オランダ)『別れる決心』(韓国)『RRR』(インド)主題歌賞「Carolina」『ザリガニの鳴くところ』「Ciao Papa」『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』「Hold My Hand」『トップガン マーヴェリック』「Lift Me Up」『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』「Naatu Naatu」『RRR』【テレビ部門】作品賞(ミュージカル・コメディ部門)「アボット エレメンタリー」「一流シェフのファミリーレストラン」「Hacks」(原題)「マーダーズ・イン・ビルディング」「ウェンズデー」作品賞(ドラマ部門)「ベター・コール・ソウル」「ザ・クラウン」「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」「オザークヘようこそ」「セヴェランス」主演男優賞(ドラマ部門)ジェフ・ブリッジス「ザ・オールド・マン~元CIAの葛藤」ケヴィン・コスナー「イエローストーン」ディエゴ・ルナ「キャシアン・アンドー」ボブ・オデンカーク「ベター・コール・ソウル」アダム・スコット「セヴェランス」主演女優賞(ドラマ部門)エマ・ダーシー「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」ローラ・リニー「オザークヘようこそ」イメルダ・スタウントン「ザ・クラウン」ヒラリー・スワンク「アラスカ・デイリー」ゼンデイヤ「EUPHORIA/ユーフォリア」主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)ドナルド・グローヴァー「アトランタ」ビル・ヘイダー「バリー」スティーヴ・マーティン「マーダーズ・イン・ビルディング」マーティン・ショート「マーダーズ・イン・ビルディング」ジェレミー・アレン・ホワイト「一流シェフのファミリーレストラン」主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)キンタ・ブランソン「アボット エレメンタリー」ケイリー・クオコ「フライト・アテンダント」セレーナ・ゴメス「マーダーズ・イン・ビルディング」ジェナ・オルテガ「ウェンズデー」ジーン・スマート「Hacks」(原題)助演男優賞ジョン・リスゴー「ザ・オールド・マン~元CIAの葛藤」ジョナサン・プライス「ザ・クラウン」ジョン・タトゥーロ「セヴェランス」テイラー・ジェームズ・ウィリアムズ「アボット エレメンタリー」ヘンリー・ウィンクラー「バリー」助演女優賞エリザベス・デビッキ「ザ・クラウン」ハンナ・アインビンデル「Hacks」(原題)ジュリア・ガーナー「オザークヘようこそ」ジャネール・ジェームズ「アボット エレメンタリー」シェリル・リー・ラルフ「アボット エレメンタリー」作品賞(ミニシリーズ・テレビ映画部門)「ブラック・バード」「ダーマーモンスター:ジェフリー・ダーマーの物語」「ドロップアウト~シリコンバレーを騙した女」「パム&トミー」「ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル」主演男優賞(ミニシリーズ・テレビ映画部門)タロン・エジャトン「ブラック・バード」コリン・ファース「ザ・ステアケース -偽りだらけの真実-」アンドリュー・ガーフィールド「アンダー・ザ・ヘブン 信仰の真実」エヴァン・ピータース「ダーマーモンスター:ジェフリー・ダーマーの物語」セバスチャン・スタン「パム&トミー」主演女優賞(ミニシリーズ・テレビ映画部門)ジェシカ・チャステイン「George & Tammy」(原題)ジュリア・ガーナー「令嬢アンナの真実」リリー・ジェームズ「パム&トミー」ジュリア・ロバーツ「ガスリッド 陰謀と真実」アマンダ・セイフライド「ドロップアウト~シリコンバレーを騙した女」(text:cinemacafe.net)■関連作品:トップガン マーヴェリック 2022年5月27日より全国にて公開©2019 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.犬王 2022年5月28日より全国にて公開©“INU-OH” Film Partnersエルヴィス 2022年7月1日より全国にて公開© 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reservedアバター:ウェイ・オブ・ウォーター 2022年12月16日より全国にて公開© 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.RRR 2022年10月21日より全国にて公開警官の血 2022年10月28日より新宿バルト9ほか全国にて公開© 2022 ACEMAKER MOVIEWORKS & LEEYANG FILM. All Rights Reserved.イニシェリン島の精霊 2023年1月27日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開©2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.バビロン(2022) 2023年、全国にて公開© 2022 Paramount Pictures. All Rights Reserved.エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 2023年3月3日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.フェイブルマンズ 2023年3月3日より全国にて公開© 2022 Universal Pictures. ALL RIGHTS RESERVED.別れる決心 2023年2月17日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED
2022年12月13日本年度ノーベル文学賞を受賞したフランスの作家アニー・エルノーの、若き日の実体験に基づく小説「事件」を映画化した『あのこと』。この度の受賞を記念し、本作の主人公アンヌが親友に妊娠を告げるシーンの本編映像が解禁された。12月10日にスウェーデンのストックホルムにて行われたノーベル賞授賞式。本作の原作小説「事件」の作者アニー・エルノーが今年の文学賞に選ばれ、彼女も授賞式に参加した。映画の舞台となる1960年代のフランスでは、法律で人口中絶が禁じられており、何らかの処置を受けた女性と関与した医師や助産婦、さらには助言や斡旋をした者にも懲役と罰金が科されていた。今回解禁となる映像は、妊娠への焦りと恐怖を1人で抱えきれなくなったアンヌが、親友に事実を告げるシーン。アンヌと同じ学部に通い、ともに勉学に励み、ときには3人でクラブへ夜遊びに出かける、心許せる親友であるエレーヌとブリジットに打ち明けている。彼女たちの前で膨らんできたお腹を見せると、絶句する2人。「処置する。お願い、誰か探して」と助けを求めるアンヌに、エレーヌは手を差し伸べようとするが、ブリジットは「私たちには関係ない。刑務所に入りたい?」と制する。そして「好きにして。でも巻き込まないで」とアンヌを冷たく見放すも、やるせない表情を見せる、というシーン。いくら親友であっても、中絶に手を貸せば自身も罪を問われることになってしまう時代。彼女たちもアンヌと同じように夢を持ち、大学に進学した自身の努力を簡単に無駄にするわけにはいかないのだ。望まぬ妊娠によって、友情すらも失い、孤独な状況下におかれるしかないという、女性ゆえに理不尽な待遇をうけるアンヌ。本作の監督を務めたオードレイ・ディヴァンは、脚本を執筆する前に作者のエルノーと一緒に過ごし、エルノーから当時のこと詳しく聞いたという。ディヴァン監督は、「話をしながらエルノーは目に涙を浮かべていました」とふり返り、「80歳を超え今なお、いえていない彼女の痛みと激しい悲しみをどうにかして世に伝えたいと強く思いました」と語っている。またエルノー本人は小説の中で「わたしの経験を過去の話として埋もれさせてしまってもよい理由があるとは思えない」と記しており、相当な覚悟を持って「事件」を執筆したことがうかがえる。アニー・エルノー原作映画『シンプルな情熱』特別上映決定さらに『あのこと』の公開を記念して、エルノー原作映画『シンプルな情熱』(21)が、Bunkamuraル・シネマでの特別上映が決定。原作はエルノーが1992年に発表した作品で、自身の実体験が赤裸々に綴られ、日本でも人気作家から熱く支持された。『シンプルな情熱』教師のエレーヌには、『若い女』でリュミエール賞有望女優賞を受賞した実力派レティシア・ドッシュ。年下の既婚者アレクサンドルを演じるのは、かつて英国ロイヤル・バレエ団の史上最年少プリンシパルを務め、現在は異端のダンサー、俳優としても活躍するセルゲイ・ポルーニン。レバノン出身のダニエル・アービッド監督が原作のスピリットを忠実に映画化することに成功。2020年カンヌ国際映画祭に公式選出され絶賛された。『あのこと』はBunkamura ル・シネマほか全国にて順次公開中。『シンプルな情熱』は12月16日(金)よりBunkamuraル・シネマにて特別上映。(text:cinemacafe.net)■関連作品:シンプルな情熱 2021年7月2日よりBunkamuraル・シネマほか全国にて公開©2019 L.FP. Les Films Pelléas – Auvergne - Rhône-Alpes Cinéma - Versus productionあのこと 2022年12月2日よりBunkamuraル・シネマほか全国にて公開© 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS - FRANCE 3 CINÉMA - WILD BUNCH - SRAB FILM
2022年12月12日2022年のノーベル文学賞に輝き、現代のフランス文学界でもっとも注目を集めている作家アニー・エルノー。これまでに数々の衝撃作を世に送り続けていますが、今回ご紹介するのは、自身が経験した違法な中絶体験をもとに描いた小説『事件』を映画化し、大きな反響を呼んでいる話題作です。『あのこと』【映画、ときどき私】 vol. 537貧しい労働者階級に生まれたものの、飛びぬけた知性と努力で大学に進学し、未来を約束する学位にも手が届こうとしていたアンヌ。前途有望な彼女の毎日は、輝いていた。ところがある日、大切な試験を前に予期せぬ妊娠が発覚してしまう。学位と自分の未来のために、いまは産むことができないアンヌだったが、1960年代のフランスで中絶は違法とされていた。そこで、アンヌは自らの力であらゆる解決策に挑むことになるのだが……。第78回ヴェネチア国際映画祭では、審査員全員が満場一致という他を寄せ付けない結果で最高賞となる金獅子賞を獲得した本作。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。オードレイ・ディヴァン監督2008年から脚本家として活動し始め、さまざまな作品の脚本を手掛けてきたディヴァン監督。2019年に監督デビューを果たしたのち、監督2作目となる本作で各国の賞レースを席巻し、一躍脚光を浴びています。今回は、中絶というテーマに挑んだ理由や原作者とのやりとりで感じたこと、そして作品に込めた思いなどについて語っていただきました。―原作は1960年代のフランスを舞台にした実話ですが、いまの時代にこの作品を映画化したいと思ったのはなぜですか?監督実は、最初から映画化したいと思っていたわけではなく、ただこのテーマに興味があって本を読み始めたのがきっかけでした。なぜなら、ちょうどそのときには私も中絶をしたばかりだったので、違法な中絶と合法な中絶にどのような違いがあるのかを対比したいと思ったからです。そして、実際に両者の間には大きな差があることを知りました。あとは、主人公のアンヌが性的な欲望だけでなく、「勉強をしてもっと上に行くんだ」という欲求を持っている知的な女性であることも惹かれた点です。―なかでも、違いを感じた部分についてお聞かせください。監督特に、違法な中絶の場合は、きちんとした医療体制下で行われるものではないので命を落とすかもしれませんし、もしかしたら告発されるかもしれないというリスクがあります。ただ、そういった部分にサスペンス性があると感じたこともあり、映画化に向けて脚本を書き始めました。自分のなかに突き刺さったのは、怒りの感情―ということは、ご自身の経験が反映された部分もあったのではないかなと。監督そうですね。といっても、私の体験と違法な中絶とでは、まったく違うものだと感じました。それでも本を読んでいて私に突き刺さったのは怒り。それは、「どうして私たち女性は自分のカラダの運命さえも自らの手で変えることができないのだろうか」という怒りです。私は政治学も勉強しているので、いまでも世界のあらゆるところで違法な中絶が行われていることを知っています。それだけに、このことは決して過去の話ではないという思いもありました。―制作過程では、原作者のアニー・エルノーさんと1日一緒に過ごしたそうですが、そのなかで印象に残っている彼女とのエピソードについても教えてください。監督彼女との関係性というのは、私にとっては非常に重要なことでした。というのも、今回は単に彼女の作品を映画化するわけではなく、彼女自身の人生をもとにしているので、とても繊細なことでもあったからです。そこで、私が彼女にお願いしたのは、本には書き切れなかった部分を教えてほしいということ。それはまるで、扉の裏側を見せてもらうような感じでもあったので、デリケートであると同時にワクワクする瞬間でもありました。―実際、ご本人からお話を聞いて感銘を受けることもあったのではないでしょうか。監督確かに彼女に話してもらったことのなかには、興味深い話がたくさんありました。なかでも印象的だったのは、彼女が感じた恐怖。非常に厳しい法律を犯してまで中絶をしたわけですから、それに対する恐怖心というのはものすごくあったと教えてくれました。そして、忘れられないのは、中絶を行ったときの話をしていた彼女の目に浮かんでいた涙。その姿を目の当たりにしたとき、若い頃に味わった苦痛が80歳を越えたいまなお彼女のなかにあり、傷が癒えていないことを痛感せずにはいられませんでした。中絶の権利は、合法化されたいまでも脆弱に感じる―劇中では、アンヌを演じたアナマリア・ヴァルトロメイさんがアニーさんの心情を見事に体現されていたと思いますが、演出面で意識されていたことはありますか?監督私たちの仕事は共同作業なので、私がオーケストラの指揮者のようにそれぞれのパートをどうしたらまとめられるかを考えました。今回のアナマリアは、知的で最高のパートナーだったので、この作品における哲学を理解し、同じ方向を見ることができたと思います。私自身はリハーサルを何度も繰り返すタイプではなく、どちらかというとリスクを取るほうですが、現場では限界に到達してはアナマリアが的確なものを差し出してくれる、ということの繰り返しでした。―フランスでは1975年に人工妊娠中絶が合法化されましたが、それによってフランス人女性に何か影響を与えたとお考えですか?監督法律ができたかどうかにかかわらず、「中絶をする」ということに対して女性が抱く感情的な部分は昔もいまも変わっていないように感じています。医療体制が整っていたとしても、危険が伴うことはありますし、自分の人生をかけて行うものでもあると思うので。もちろん、女性の自立に貢献した部分はあるかもしれませんが、私からするとこの権利はとても脆弱なものに見えています。―なぜそう感じたのでしょうか。監督たとえば、今回私が「中絶をテーマにした作品を撮りたい」と話したとき、資金を出す人たちからは「すでに合法化されているものなのに、どうしていまこのテーマを扱うんだ」と言われました。そういった反応が思った以上にあり、いまでも難しさを感じることが多かったからです。ただ、私はそのときにプロデューサーに対して「じゃあ、第二次世界大戦は終わっているのに、なぜ第二次世界大戦をテーマにした作品を撮るんですか?あなたはそれに対してもダメと言いますか?」と反論しました。この作品には、性別を超えて真実を伝える力がある―そんな反発の声をよそに、本作は各国の賞レースでも高く評価されましたが、中絶の問題は国や文化によっても捉え方が異なるので、性別や観客によって作品に対する見方に違いもあったのでは?監督私としては、どの国でも性別や文化の違いを超えて、みなが身も心も委ねて大きな船に乗り込んで一緒に旅をするような体験をしてくれたという印象を持ちました。とはいえ、男性のなかには映画の最中に気絶をしてしまったほど衝撃を受けた方もいらっしゃったようですが……。それ以外は、男女ともに同じような反応が多かったので、そのときにこういった出来事があったことを知らない人たちに事実を伝える力がこの作品にはあることに気づかされました。といっても、私の目的はそこで答えを出すことではなく、あくまでも観客に対して問題提起をすること。若い女性が身体的かつ精神的な苦痛を伴いながら孤独のなかでこういった経験をしていたことを知っていただき、自分のなかでそれぞれ考えてほしいと思っています。―日本はフランスよりも早い1948年に中絶が合法化されてはいますが、現在も中絶においては原則として配偶者の同意を必要とする数少ない国(世界203ヵ国のうち日本を含む11の国・地域のみ)です。女性の自己決定権がない中絶に関してはどのように思われますか?監督そんなふうに男性の同意を必要とする背景には、いまだに女性よりも男性のほうが大事であるという考え方が残っているのではないかなと。もちろんすべてにおいてとは言いませんが、そういった部分はいまでも多い気がしています。自由に判断を下せているのか、つねに自問してほしい―では、日本についてもおうかがいしますが、日本に対してはどういった印象をお持ちですか?監督もうすぐ初めて来日しますが、日本に行くことは私にとっては夢のひとつでもありました。なぜなら、私は日本の文化やアーティストのことをとても敬愛しているからです。なかでも私が若いときから影響を受けているのは、是枝裕和監督。私にとって重要な映画監督といえば、ケン・ローチ、ダルデンヌ兄弟、そして是枝監督なのです。―日本の女性たちにとってもアンヌと同様に妊娠や中絶は人生における大きな問題でもあるので、本作を通してananweb読者に向けて伝えたいメッセージがあればお願いします。監督私は答えを差し出したり、アドバイスを押し付けたりするようなことをするのは好きではないので、みなさんに疑問を投げかけるとすれば、「あなたにとってそれは本当に大事なことですか?そして、それはする意味があることですか?」ということでしょうか。そんなふうに、自問すること忘れないでほしいと伝えたいです。そして、判断を下すときに自分が自由に判断できているかも、自分自身に問いかけてもらいたいと思います。私の話をすると、日本とフランスで文化の違いはあるかもしれませんが、仕事をする際にも日常生活においても、あまり性別による差を考えることはありません。それよりも、一人の人間として生きることをつねに心がけるようにしています。赤裸々な真実を目の当たりにする!一人の女性を襲う戸惑い、怒り、孤独、そして恐怖といったあらゆる感情をリアルに体感し、衝撃に打ちのめされる本作。まるで自分が体験しているかのような錯覚を起こしてしまうほどの痛みを味わい、圧倒的な没入感へと引き込まれてしまうはず。目を逸らすことのできない現実を突き付け、観る者に忘れられない映画体験を与えてくれる必見の1本です。取材、文・志村昌美胸を突き刺す予告編はこちら!作品情報『あのこと』12月2日(金)Bunkamura ル・シネマ他 全国順次ロードショー配給:ギャガ️© 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS - FRANCE 3 CINÉMA - WILD BUNCH - SRAB FILMS️©Richard Giannoro
2022年12月01日アジアのノーベル賞 マグサイサイ賞受賞の眼科医・服部匡志著『人間は、人を助けるようにできている』はじめに公開アジアの平和や発展に尽くした個人や団体をたたえ、「アジアのノーベル賞」とも呼ばれるマグサイサイ賞の授賞式が、11月30日にフィリピンで行われ、日本の眼科医、服部匡志さん(58)に賞が贈られました。ベトナムでの長年の無償治療が評価され、今回の受賞となりました。(出典:2022年11月30日 NHKニュ―スより )服部匡志さんの著者『人間は、人を助けるようにできている』 は、およそ20年にわたり日本とベトナムを往復し、現地の人たちに白内障などの手術を無償で行ってきた服部匡志医師の現地での情熱にあふれたエピソードと、思いが詰まった一冊です。今回は、その本書より服部先生のベトナムでの治療にかける思いが詰まった「はじめに」を公開します。※以下、本文より抜粋はじめに患者さんとその家族は人生を懸けて僕のところにやって来る。だから僕も人生を懸けて手術に挑む。結果、患者さんの眼に光が戻り、笑顔がよみがえる。心からあふれる最高の笑顔。けっしてお金では買うことのできない、その笑顔が僕に生きる勇気と力を与えてくれる。ベトナムでの無償の医療活動を続けて八年になる。僕は現在、開業せず、どこの大学や病院にも属さないフリーの眼科医だ。一カ月の半分は、北は盛岡から南は鹿児島まで約十カ所の病院を渡り歩いて診察と手術を行う毎日。残りの半分はベトナムの首都ハノイと地方へおもむき、貧しい人たちへの無償の活動をしている。自宅で丸一日過ごせるのは年に一日か二日。忙しい毎日だ。日本で得た収入で家族の生活とベトナムでの活動費用をすべてまかなう。ベトナムでは、患者さんからはいっさいの金銭を受け取らず、渡航費、滞在費、医療品代などもすべては持ち出しで活動を続けている。僕の生き方に疑問を持つ人や、いぶかしがる人もいる。「なぜ、そんなことをしているのか?」とよく聞かれるが、なぜだろう、その答えは僕にもいまだにわからない。ただ、目の前に困っている人たちがいる。失明の危機にさらされているのに手術を受けられない人たちがいる。彼らを放っておくわけにはいかない。自分の技術で彼らを救うことができるなら、遠慮せずに助けたい。その思いだけだ。僕は眼底(網膜硝子体もうまくしょうしたい)という、眼の中ではもっとも難しい部位が専門だ。カメラでいうなら水晶体はレンズで、眼の奥にある網膜はフィルムにたとえられる。瞳から入った光や色は網膜で映像として感知される。網膜は再生が利かず、人工物に取り替えることができない。だから網膜のキズは致命傷になる。少しでもキズがつくと景色はぼやけ、光はゆがんでしまう。普段、多くの人は眼の大切さを意識しない。見えることが当たり前だと思っているからだ。でも、想像してほしい。もし眼が見えなくなったとしたら、こんなに怖いことはない。この恐怖に直面し、闘っている人が現実に大勢いる。「ベトナムの赤ひげ先生」と呼ばれることがあるが、僕は何も特別な存在ではない。多くの人に支えられながら、がんばれていることに感謝したい。ボランティアは崇高なものでも、格好いいものでもない。とても地味な活動の連続だ。今回、この本を通じて世の中にはまだまだ自分の知らない世界があることを 知ってもらえたら、そして健康な身体で眼が見えて、毎日美味しいごはんを食べられることがどれほど幸せなことかを感じてもらえたら、こんなにうれしいことはない。そして、ひとりでも多くの人が生きる勇気とよろこびを受け取ってくれること を願っている。世界は広い。そして人間はすばらしい。2010年12月吉日服部匡志著者プロフィール服部匡志(はっとり・ただし)著者:服部匡志1964年大阪生まれ。フリーの眼科医。父親の入院中の心ない医師の言葉がきっかけとなり、「患者の痛みをわかる医者になる」と決意。京都府立医科大学卒業後、日本各地の病院で経験を積む。2002年よりベトナムのハノイ国立眼科病院で最先端の内視鏡を駆使して網膜剥離や糖尿病網膜症などの治療、指導を始める。その技術は世界トップレベルで、誰もが認める凄腕。ベトナムでは報酬をいっさい受け取らず、日本で稼いだアルバイト代で旅費、滞在費、治療費などをまかなっているため、「ベトナムの赤ひげ先生」と呼ばれることも。2003年に発足したアジア失明予防の会(木下茂理事長)の活動をサポートしている。2005年に当時の町村外務大臣より感謝状が贈呈される。2006年に宮沢賢治「イーハトーブ賞」を受賞。2007年にベトナム保健省より「人民保健勲章」を受章。2008年に全国日本学士会より「アカデミア賞」、(財)世界平和研究所より「中曽根康弘賞」奨励賞を受賞。現在も精力的に活動を続けている。(情報は刊行当時のものです)書籍情報表紙タイトル:人間は、人を助けるようにできている著者:服部匡志ページ数:216ページ価格:1,540円(10%税込)発行日:2015年7月2日ISBN:978-4-86063-435-3書籍紹介ページ: amazon単行本: kindle版: 楽天: 目次はじめに第1章ベトナムへ第2章親父の死第3章幸せ物質第4章お前はどうしたいんだ?第5章毎日が宝物第6章行けるところまで第7章瞬間を生きるおわりに 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年12月01日ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作『あのこと』より本編映像が解禁。併せて監督コメントも到着した。本作は、本年度ノーベル文学賞を受賞したアニー・エルノーの実体験を基にした小説「事件」の映画化。1960年代、法律で中絶が禁止されていたフランスを舞台に、望まぬ妊娠によって人生を左右されることとなる少女の苦悩と葛藤を描く。主人公アンヌは貧しい労働者階級の家庭に生まれながらも勤勉で優秀、教師になることを夢見る女子大生。そんな彼女の日々の生活にある会話から、時代の女性像を浮き彫りにする、象徴的なシーンを捉えた本編映像が解禁された。宿舎から実家に帰省し、両親が営むカフェに顔を出すアンヌ。「大学はどう?」と常連の女性客に声をかけられたアンヌだが、代わりに母親が「優等生でもうすぐ学士よ」と自慢する。女性客は「優秀なのは知ってる」とアンヌの手を見て答え、「肉体労働者とは違う。私はペンキ塗り、工場で働いていると手の色が分からなくなる」と教えてくれる。場面は変わり、家の中での出来事。ため息をつく父をよそに、母はアンヌにお金を渡し「本でも買って」と笑いかける。階級の垣根を越えることなく労働者の道を歩む女性客。未来有望なアンヌ。優秀な娘が誇らしい母。3者のなにげないやりとりが意味深い。監督のオードレイ・ディヴァンは原作小説を読み、「まず浮かんだのは<激しい怒り>です。妊娠を告げられた瞬間から、苦しみを受けたに違いない少女の体や、彼女が直面したジレンマに対する理不尽さに憤りを覚えました。そして、命をかけて中絶するのか、それとも子供を産んで自分の未来を犠牲にするのか。私はそれをイメージに変換しようとしました」と信念を持って映像化することを誓ったとふり返る。また原作者のアニー・エルノーに実際に会い、話を聞いたことについて、「政治的な背景をより正確に理解した上で、女性たちが決意の瞬間に抱いた恐怖に触れることができました」と語っており、彼女たちの選択は当時の政治によっても大きく左右されていた事実を知ったと明かしている。『冬の旅』©1985 Ciné-Tamaris / films A2また、映像に登場するアンヌの母親役を演じるのはサンドリーヌ・ボネール。アニエス・ヴァルダ監督最高傑作といわれる『冬の旅』でヒッチハイクで放浪する少女を演じ、セザール賞主演女優賞を最年少で受賞している。かつて問題を抱えた繊細な少女像を演じた彼女が、本作では娘の夢を応援する母として登場するのも感慨深い。『冬の旅』は1985年製作の映画であるが、30年以上の歳月を経て現在順次公開中。自由を渇望し孤軍奮闘する女性像は本作にも通じるものがある。女性の生き方の選択肢がいまよりももっと少なかった時代。彼女たちの姿を通して見えてくるものがきっとあるはずだ。『あのこと』は12月2日(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国にて順次公開。『冬の旅』は全国にて順次公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:あのこと 2022年12月2日よりBunkamuraル・シネマほか全国にて公開© 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS - FRANCE 3 CINÉMA - WILD BUNCH - SRAB FILM
2022年11月30日映画賞レースのトップを飾る第47回報知映画賞の各賞が発表され、『沈黙のパレード』で難解な事件を解決する天才的物理学者を演じた福山雅治が主演男優賞を初受賞、主演女優賞は『前科者』の演技が評価された有村架純が初受賞。作品賞・邦画部門は石川慶監督、妻夫木聡主演の『ある男』が受賞した。主演女優賞:『前科者』有村架純報知映画賞はスポーツ新聞が単独開催する初の映画賞として、1976年に誕生。読者参加型の映画賞が大きな特色であり、各映画賞や映画祭の先陣を切って発表されるため、その年の受賞者・受賞作品を占う意味でも大きな注目を集めている。助演男優賞:横浜流星「流浪の月」なお、作品賞(海外)は130億円超えのメガヒットとなった『トップガン マーヴェリック』が受賞した。第47回報知映画賞各賞作品賞・邦画『ある男』監督賞片山慎三『さがす』主演男優賞福山雅治『沈黙のパレード』主演女優賞有村架純『前科者』助演男優賞横浜流星『流浪の月』助演女優賞尾野真千子『20歳のソウル』『千夜、一夜』『サバカン SABAKAN』新人賞嵐莉菜『マイスモールランド』/白鳥晴都『ぜんぶ、ボクのせい』作品賞・海外『トップガン マーヴェリック』アニメ作品賞『劇場版 四畳半タイムマシンブルース』(text:cinemacafe.net)■関連作品:トップガン マーヴェリック 2022年5月27日より全国にて公開©2019 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.20歳のソウル 2022年5月27日より全国にて公開©2022「20歳のソウル」製作委員会前科者 2022年1月28日公開© 2021香川まさひと・月島冬二・小学館/映画「前科者」製作委員会流浪の月 2022年5月13日より全国にて公開(c)2022「流浪の月」製作委員会沈黙のパレード 2022年9月16日より全国にて公開©2022「沈黙のパレード」製作委員会ある男 2022年11月18日より全国にて公開©2022「ある男」製作委員会さがす 2022年1月21日よりテアトル新宿ほか全国にて公開©2022『さがす』製作委員会マイスモールランド 2022年5月6日より新宿ピカデリーほか全国にて公開予定©2022「マイスモールランド」製作委員会サバカン SABAKAN 2022年8月19日より全国にて公開©2022「SABAKAN」Film Partners四畳半タイムマシンブルース 2022年9月30日より全国にて3週間限定公開©2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会ぜんぶ、ボクのせい 2022年8月11日より新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開© 2022『ぜんぶ、ボクのせい』製作委員会千夜、一夜 2022年10月7日よりテアトル新宿、シネスイッチ銀座ほか全国にて公開(C)2022 映画『千夜、一夜』製作委員会
2022年11月30日中絶が違法とされた1960年代のフランスを舞台に、本年度ノーベル文学賞受賞作家アニー・エルノーの実体験を基に描いた「事件」を映画化した『あのこと』から、場面写真が一挙に解禁となった。原作者アニー・エルノーエルノーの実体験をもとに描かれた物語を、『ナチス 第三の男』などの脚本で知られるオードレイ・ディヴァンが信念を受け継ぎ映画化。望まぬ妊娠をした大学生のアンヌの誰にも言えない孤独な戦い切り取った、美しく瑞々しい場面写真が解禁された。映画の舞台となる1960年代のフランスでは中絶は違法とされ、望まぬ妊娠をした女性たちは夢を諦めて子どもを産むしか選択肢はなかったが、本作の主人公である若く聡明なアンヌはどんな方法を使ってでも希望に満ちた自身の将来と夢を掴み取ろうと必死にもがく。そんな彼女の意志の強さが瞳から伝わる場面写真の数々となっている。秘密を抱えて勉学に励む様子、鏡の前で自分の体の変化を確認する姿、そして、ふと訪れる予期せぬロマンス。迫りくる恐怖に駆られ、自ら編針を熱消毒する様子も――。アンヌが“あのこと”に至るまでの日々が切り取られている。アンヌ役には『ヴィオレッタ』で鮮烈なデビューを飾ったアナマリア・ヴァルトロメイが扮し、確固たる信念を胸にひとり困難立ち向かう勇気ある少女の姿を力強く演じている。本作ではナレーションは一切なく、わずかなセリフと印象的な瞳だけで語っているが、場面写真からもその目力を感じることができる。また、柔らかい光に包み込まれたきらめく青春を描くような映像は、輝くような色使いが特徴のアメリカの写真家トッ ド・ハイドと、人物のありのままを映し出すことで知られるデンマークの写真家ジェイコブ・ホルトを参考に画作りをしたという。すべてのカットがアート作品のような映像美も見どころとなっている。『あのこと』は12月2日(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:あのこと 2022年12月2日よりBunkamuraル・シネマほか全国にて公開© 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS - FRANCE 3 CINÉMA - WILD BUNCH - SRAB FILM
2022年11月03日東京は上野公園にもほど近い繁華街の地下にある「シアター上野」は、この界隈で唯一のストリップ劇場だ。薄暗かった場内に、大音量でマドンナの曲が流れ始めると同時にピンクや紫の照明が灯り、ミラーボールが回転を始めた。その瞬間からお客たちの視線は、ステージ上で、シルバーに輝く衣装に身を包んだ金髪の踊り子・新井見枝香さん(42)にくぎ付けとなる。リズムに乗ってステップを踏みながら、スカートの裾をヒラヒラさせたり、体を大きくのけ反らせ、一枚一枚衣装を脱ぎ捨ててゆく。しなやかな肢体の艶めかしさとは裏腹に、ときどき見せるキュートな笑顔に会いたくて通い続けるファンも多い。軽快だった曲調から一転、5曲目のバラードとともに、花道から客席に突き出したストリップ特有の丸い「盆」に歩み出たころには、体を包むのはごくわずかな衣装だけ。スポットライトの下で、その全身が神々しく輝く。15分ほどのステージを終え、彼女が小さく「ありがとうございました」と呟いたとき、客席には涙する若い女性客の姿もあった。新井さんは、ストリッパーに加えて、書店員、エッセイストの顔を持つ異才。出版界では、自身が選出する「新井賞」の創設者でもあるカリスマ書店員だ。突然のストリップデビューで周囲を驚かせたのは、20年冬だった。「今年2月には働いていたHMV&BOOKS日比谷コテージ店が閉店したこともあり、誤解されることも多いんですが、書店員は辞めていません。まだ渋谷店のほうで勤務していて、三足のわらじ生活は続いているんです」今なお書評やイベント出演などの依頼も多く、多忙なスケジュールは10日間刻みという。「ストリップの興行がだいたい1公演10日間で、月のアタマ、ナカ、ケツで分かれているので、その舞台のないときに書店員として働いています。ですから、1カ月まるごとストリップが入れば、書店での仕事はできない月も。そこは、みんなが協力してくれて、『行っておいで』で、地方へも送り出してくれます。ありがたいですね」思えば、街の書店もストリップも、世の中からどんどん姿が消えて、希少な存在に。「書店員として働き始めた14年前には、自分がまさか踊り子になるなんて思ってもいませんでした。芸の世界なので、昔ながらの先輩後輩の厳しいしきたりもありますが、私は、いいおねえさんたちにも囲まれて。今日のこの衣装も実はお下がりなんですよ」■成績は常にトップクラスだった学生時代。大学中退後、ひょんなことから三省堂書店へ80年7月24日、東京都台東区根岸の生まれ。卸業を営む父親と専業主婦の母親、4つ年上の兄がいる。「友達の家がラブホテルをやってたり、近くには吉原があったりでしたが、あの下町の雰囲気は今も大好き。子供のころは、お小遣いも十分にもらっていたし、両親はふだんから私の意思を尊重してくれました。ですが、私自身、すごく考えるタイプだったので、難しい子、育てにくい子だったんじゃないかと思います。本は好きでしたね。親から『読め』じゃなく、自分で近所の個人の本屋さんへ、もう呼吸するように普通に立ち寄って、読みたい本があれば買っていました。お風呂掃除のお手伝いで、母からもらえる図書券がうれしかった。『不思議の国のアリス』は、どんだけ読んでもいまだに意味がわからないですが、あの暗さとか不可解さに惹かれます」地元の公立小学校を出て、中学からは東邦音楽大学の付属校へ。「成績は、小学校からめちゃめちゃよかったです(笑)。あと、東京のコというか、みんなマセてて、小5のころなんて、ソニプラ大好きで、今よりよっぽど化粧濃かったですね(笑)。一方、あの地元で、うちの小学校だけ先進的というか、中学から私立に上がる子が多かったんです。私は小学校からブラスバンドで基本的に楽器はなんでもできたので、中学はピアノで入りました」相変わらず、はた目には優等生に見られていたかもしれない。「成績は学年で2番くらい。教科書の下に隠して谷崎潤一郎やボーイズラブを読んでいたのは、授業がつまらなかったから(笑)」14歳のころ、そんな彼女を夢中にさせるものと出合う。「GLAYをテレビで見て、ハマりました。すぐにライブに通う楽しみも覚えて。ナマのステージは、ときにボーカルやバンドの音が外れたりもします。それまで親しんでいたクラシックではありえないんですが、あの粗削りな感じに、もうグッときてしまって」高校では、理不尽な校則について黙ってはいられなかった。「『茶髪はダメ』で水色にするんですが、今度は『色はダメ』で、脱色したり(笑)。スカートの丈の長さも、なぜダメなのかという説明に納得がいかないと、先生にも理詰めで反論する、イヤな生徒だったと思います。単純な好奇心から吉原の最高級ソープの面接に行ったのもこのころ。鼻で笑われて帰されましたが」そのまま東邦音大に進み、ホルンを専攻するが、やがて自ら組んだロックバンド活動に夢中になり、大学を中退する。「バンドのせいというより、大学が私の思っていた姿とは違ってたんです。音楽を追求するというよりは、まずは教職を取ろうという周囲の雰囲気を受け入れられなかった。子供を育てる大切な仕事のはずなのに、『とりあえず教職』はありえないと思いました。両親も、私の性格をわかってますから、『そうだよな』という感じで、反対はありませんでした」大学中退後、池袋のアイスクリーム店でアルバイトを始めた。「ここでオープニングスタッフから3年ほど働き、その後、パン屋もおもしろそうだと思って面接を受けて、その帰りに偶然、『書店員募集』のポスターを目にするんです。結局、書店のほうが、その場で即決で採用となるんです。パン屋も受かっていましたが、そのまま書店で働き始めました。すると思いがけず、これまでの人生でいちばん楽しいと感じるほどの世界が待ってたんです」こうして28歳で三省堂書店有楽町店に入店。社会人として一足目のわらじを履いて、今日まで続く長い書店員生活が始まった。■初めてストリップを見て一瞬で「ポカーン」「もともと本好きでしたが、本って一人で読むもので、そこで完結してるじゃないですか。それが書店で働き始めたら、地下に休憩室があって、私しか知らないだろうと思っていた作家の話で、みんなで盛り上がってたりして、そうか、こんな人たちが、あの本屋の刺激的な棚を作っていたのかと。バイトも早番・遅番とフルフルで入って、遅番では夜10時過ぎに勤務を終えても話が尽きなくて、飲みに行ってまた本談議。振り返れば、あの一時期、奇跡的に本のスペシャリストが集まっていたのかも」さらに終業後、売場を歩いて自分の財布で読みたい本を買うことがルーティンとなっていく。「手に取る本は、光って見えるんです。今の自分の状態とか関心や、前に読んだ本とどこかでつながっていたり。ただ書店員としては、単に本好きの自分を押し通すのではなく、いかに会社に利益をもたらすかということを考え、実践するのが私は好きでした。いわばゲーム感覚で、売ることを楽しんでいた。店頭のポップなんかも、自分の思いを吐き出すより、あえてキャッチーな言葉を使って、お客さんの気を引くことを考えました」14年の新井賞の創設も、その思考の上にある。「もともとは、直木賞で私がいちばんおもしろいと思っていた候補作が落ちたのがきっかけ。当時、カリスマ書店員という言葉も流行って取材も多かったから、ここで私が賞を作れば、もっと売ることができるのではと。当時、契約社員でしたが、会社も信頼して自由にやらせてもらえました」芥川賞・直木賞と同じタイミングで年2回発表される新井賞は信頼度も高く、やがて「本家の賞よりも売れる」と業界で噂されるほどに。ちなみに第1回の受賞作は千早茜さんの『男ともだち』で、その後も、辻村深月さんや三浦しをんさんらが受賞している。17年には、初めての著書『探してるものはそう遠くはないのかもしれない』(秀和システム)を出版し、エッセイストの肩書も加わり、二足のわらじ生活へ。こうして多忙ながら充実した生活を送っていた18年6月、知人の直木賞作家で新井賞受賞者でもある桜木紫乃さんからメールが届く。〈見枝香よ、書を捨てて小屋へ行こう。おやつは鰻だ〉ストリップ観劇への誘いだった。これがきっかけで新井さんは「三足のわらじ」生活を送ることになる。もともと「人付き合いが苦手」と話す新井さんだが、40代間近になって、活動の場を広げた背景には何があったのだろうか。「ストリップは、やってみて、好きだから、としか言いようがないです(笑)。噓がない世界。会社員の看板も書店員としてのキャラも、今までのものをぜんぶ脱ぎ捨てて裸になって、自分に何が残るだろうって思いました」自分の思いにどこまでも素直に、気負いなくーー。そんな生き方に惹かれる女性たちは多く、ストリップ劇場でもトークイベントでも、新井さん目当ての追っかけ、ファンの姿と出会うのだった。【後編】女の体は祝福されていると思ったストリッパーデビューの書店員語る舞台の魅力へ続く
2022年10月30日10月22日より開催!福山市ぬまくま文学館では、「ぬまくま文学館菊花展」を次のとおり開催します。菊には長寿の力があるとされ、時に薬として、時に心を和ませる花として、古くから日本人に愛されていました。菊の花が、一年の中で最も美しく見頃を迎える季節に、恒例の「ぬまくま文学館菊花展」を開催します。菊愛好家の方々が、一日一日大切に育てられた菊を、当館の中庭に展示します。菊を育てられた方々の思いに触れながら、秋を彩る菊をごゆっくりとご鑑賞ください。期間2022年(令和4年)10月22日(土)~11月4日(金)※10月24日(月)、31日(月)は休館日時間9:00~17:00(最終日13:00まで)場所福山市ぬまくま文学館(枝広邸)(広島県福山市沼隈町大字常石2323番地2)内容中庭にて菊の展示(11月1日(火)から能登原桜地区の大菊も展示予定)入館料無料主催公益財団法人ふくやま芸術文化財団福山市について福山市(市長:枝広 直幹)は、瀬戸内海沿岸のほぼ中央、広島県の東南部に位置し、高速道路網のアクセスが良く新幹線「のぞみ」も停まる、人口約46万人の拠点都市です。福山市には四季折々の美しさを見せる自然、温暖な気候、海・山・川から得られる恵みがあります。100万本のばらが咲き誇る「ばらのまち」としても知られ、潮待ちの港として栄え日本遺産に認定された景勝地「鞆の浦」や、JR福山駅の新幹線ホームから見え、今年築城400年を迎える「福山城」、2つの国宝をもつ寺院「明王院」などの名所があります。産業としては、鉄鋼業や繊維産業など多様な製造業が集積し、ものづくりのまちとして発展してきました。デニム生地は、世界のハイブランドにも活用されるなど高い品質が評価されています。福山市ホームページ トップページ : 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年10月11日積水ハウス株式会社は、本日発表の「第16回キッズデザイン賞」においてキッズデザイン協議会会長賞を受賞しました。キッズデザイン賞は、キッズデザイン協議会(本部:東京都港区虎ノ門)主催の子どもや子どもの産み育てに配慮したすべての製品・サービス・空間・活動・研究を対象とする顕彰制度です。キッズデザイン賞受賞作品214点の中から、優秀作品へノミネートされた36作品が最優秀賞、優秀賞、奨励賞(キッズデザイン協議会会長賞)、特別賞として選出されます。キッズ・ファースト企業である積水ハウスは、第1回キッズデザイン賞から16年連続、累計107作品を受賞しています。キッズデザインマーク▼奨励賞 キッズデザイン協議会会長賞「エルミタージュクール」受賞部門:子どもたちを産み育てやすいデザイン部門 個人・家庭部門エルミタージュクール説明:子育て世代の「もしこんな住まいがあったら・・・」を叶える賃貸住宅です。乳児期~児童期の子を持つ世帯に特化した間取りのほか、安心して子どもを遊ばせることができる中庭、親同士で子どもの預かり合い等を想定したキッズラウンジ、子どもの学びを手助けするterakoya(寺子屋)など、子育てを支援する要素を多数備えています。(受賞理由)「子育て世帯ならではのニーズ、例えば見守りをしながら家事のしやすい動線、外遊びを自由にさせられるような中庭、一時預かりに使えるような空間や遊び場などを備えた賃貸住宅であり、子育てに特化した思い切った空間提案として高く評価した。賃貸住宅の共用部でここまでの設備と取組は貴重であり、ニーズも高いだろう。」エルミタージュクール 外観エルミタージュクール 中庭積水ハウスは“「わが家」を世界一幸せな場所にする”というグローバルビジョンのもと、今後も人生100年時代における「幸せ住まい」を追求し続けてまいります。エルミタージュクール 公式サイト: キッズデザイン賞 公式サイト : 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年09月22日近年、映画賞の演技部門において、「男優賞」「女優賞」と性別で分けることをやめ、「ジェンダー・ニュートラル」(性的に中立)な形を取る動きが加速している。すでにジェンダー・ニュートラル化を行ったベルリン国際映画祭、今年開催の授賞式から実施するゴッサム賞などに続き、インディペンデント・スピリット賞も演技部門の性別区分けの廃止を表明。主催者のフィルム・インディペンデントが公式ホームページにて発表した。同団体のトップのジョシュ・ウェルシュは、「私たちは、性別に関わらず素晴らしい演技を称えるため、すでに動き出している映画祭や映画賞に加わることに喜びを感じています。また、男性か女性かの選択を強制することなく、ノンバイナリーの俳優たちをスピリット賞に迎えられることもうれしく思います」とコメント。また、インディペンデント・スピリット賞はこれまで製作費が2250万ドルまでの作品を対象としていたが、昨今の物価・製作費高騰により、製作費3000万ドルまでに引き上げられた。「新しい上限を設けたことで、これまでと同じように幅広い作品を称えることができます」としている。インディペンデント・スピリット賞授賞式は2023年3月4日に開催される。(賀来比呂美)
2022年08月24日脚本・シライケイタ、監修・佐藤B作、演出・永井寛孝第4回かつしか文学賞舞台公演「立石ロッキー」が2022年9月24日 (土) ~ 9月25日 (日)にかめありリリオホール(東京都葛飾区)にて上演されます。チケットはカンフェティ(運営:ロングランプランニング株式会社、東京都新宿区、代表取締役:榑松 ⼤剛)にて7月15日(金)13:00より発売開始です。カンフェティで7月15日(金)13:00よりチケット発売開始 葛飾に生きる人々のふれあいを描く「かつしか文学賞」舞台化企画第4弾葛飾区が「文化芸術創造のまちかつしか推進事業」の一環として実施している文化芸術創造事業「かつしか文学賞」。葛飾をテーマに小説を公募し、大賞作品を脚本・舞台化。平成24年より3年に一度発表公演を行い、好評を博してきた。昨年、第4回の大賞受賞作『立石ロッキー』を脚本・シライケイタ、監修・佐藤B作、演出・永井寛孝 他のもと、一般公募によりオーディションでキャストを選出し、本番に向け稽古を続けていたが、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言の発出によりやむなく上演中止となった。あの感動と興奮を体感せずに終われない!!2月に制作陣と出演者の熱意で上演を決定。4月より稽古を再開し半年間にわたる稽古を経て2年越しの上演を迎える。公演概要第4回かつしか文学賞 舞台公演「立石ロッキー」公演日:2022年9月24日 (土) ~ 9月25日 (日)会場:かめありリリオホール(東京都葛飾区亀有三丁目26番1号)■スタッフ原作: 牧野恒紀 / 脚本: シライケイタ / 監修: 佐藤B作 / 演出: 永井寛孝■タイムテーブル9月24日(土) 13:00開場/14:00開演9月25日(日) 13:00開場/ 14:00開演■チケット料金一般:1,500円シンフォニークラブ会員:1,300円高校生以下:1,000円(全席指定・税込)※4才以上有料、3才以下膝上無料(席が必要な場合は有料) 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年07月26日オリンピックやワールドカップ、世界選手権などでよく見る国旗。知っているつもりでも、いきなり聞かれたら???となりますよね。脳トレ感覚で楽しんでみてください。ヒント放射線の研究でノーベル物理学賞、ノーベル化学賞の2つを受賞するという偉大な功績を遺した女性の出身国です。さらに歴史を遡ると、あのフレデリック・ショパンもこの地の出身者です。正解は…ポーランド共和国ポーランドはバルト海に面した東欧の国であり、ヨーロッパの中央に位置しています。首都ワルシャワ国旗の由来白は実直さや善を、赤は勇敢を表す。そして、紋章学の原則に則り、上は白、下は赤と定められました。オマケノーベル賞を二度も受賞したのはマリ・キュリー夫人。夫のピエール・キュリー博士との研究で、ピッチブレンドという鉱石が金属ウランよりも強い放射線を出していることを発見。その中からポロニウムとラジウムという新しい放射性物質を取り出すことに成功しました。出典元:世界の国旗出典元: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』あわせて読みたい🌈【超・歳の差で結婚した大統領】がいる、この国はどこでしょう?
2022年07月11日2021年にノーベル平和賞を受賞した、ロシアの独立系新聞『ノーバヤ・ガゼータ』紙の編集長、ドミトリー・ムラトフさん。2022年6月20日に開催された競売にメダルを出品し、日本円で約140億円で落札されたことを『ノーバヤ・ガゼータ』のInstagramで報告しました。売上金は、ロシアによる軍事侵攻で避難を余儀なくされた、ウクライナの子供たちとその家族を支援する、国連児童基金(ユニセフ)に全額寄付されるとのことです。 この投稿をInstagramで見る Новая газета. Европа(@novayagazeta_eu)がシェアした投稿 『ノーバヤ・ガゼータ』は、ロシアのウクライナ侵攻に異議を唱え続けていましたが、ロシア政府からの圧力を受け、2022年3月末に発刊停止に追い込まれました。産経新聞によると、今回メダルを出品したムラトフさんは、競売会場で次のように語っていたそうです。「メダルをもう目にすることはないだろうが、この資金で恩恵を受ける人たちの未来を見たい」産経新聞ーより引用ムラトフさんの行動に、世界中から称賛や応援の声が届いています。・英断ですね。メダルを賞の意味の通りに、役立てていて素晴らしい。・このメダルの重さを、改めて考えさせられました。この方が、この先も安全でいられますように。・もう1回、ノーベル平和賞もらってもいいくらい、すごいこと。ロシアの侵攻により、平和な日常を突然奪われた、ウクライナの人々。やっとの思いをして国内外に避難できても、慣れない土地で、先の見えない不安と大きな悲しみを抱えていることでしょう。そういった人々に多くの支援が行き届き、希望を見出すきっかけになることを祈るばかりです。[文・構成/grape編集部]
2022年06月22日Netflixで配信中のドラマ「39歳」でソン・イェジンの相手役を務めたヨン・ウジンが主演、ノーベル文学賞候補作家による小説を映画化した『人民に奉仕する』(原題)が邦題『愛に奉仕せよ』として公開決定。ポスタービジュアルと予告映像が解禁された。模範兵士として師団長社宅の炊事兵になったムグァン。彼の目標は、ただ妻と子どものために出世の道を進むこと。しかし、師団長が出張する間に2人きりとなった若妻スリョンの誘惑に、ムグァンは自身の目標や信念、そして抑えきれない禁じられた恋との狭間で葛藤する…。「39歳」では主人公と恋に落ちる皮膚科医キム・ソヌ役を好演、ドラマ「七日の王妃」「君の歌を聴かせて」、映画『ときめきプリンセス婚活記』『キム・ソンダル大河を売った詐欺師たち』など、柔らかい眼差しや深みのある演技力で観客を魅了してきた“恋愛職人”ヨン・ウジンが、俳優歴14年目にして最も大胆なイメージチェンジを披露する。様々なタブーを犯してしまう上官の妻との危険な愛の間で揺れる模範兵士ムグァン役を務め、濃密なベッドシーンや、葛藤する感情の深みも完璧に演じ、韓国公開前から大きな話題を呼んだ。そんなムグァンの人生を揺るがす魅惑的な女性像を見事に体現するのは、『罠Deep Trap』でマ・ドンソクの妹を演じたジアン。彼女は「メロドラマの持つ二面性に惹かれた。これまで私が演じてきた作品では美しく平穏な愛に重点を置いていた。ただ本作では破滅的で危険な愛を描いており、これまで演じなかった要素を見せられると思うと欲が出た」と明かしている。また、「100日の郎君様」「ナビレラ ーそれでも蝶は舞うー」ほか、『哀しき獣』ではハ・ジョンウ演じる主人公の命を狙うバス会社社長役でインパクトを与え、第48回大鐘賞映画祭の助演男優賞を受賞したチョ・ソンハが強大な権力を誇る師団長役に。自身が演じた役を「権力と名誉のためなら全てを捨てることができ、骨の髄まで軍人としての精神が生きており、燃え盛る炎の中にも飛び込むことができるような人物」と語る通り、抜群の存在感で物語に緊張感を与えている。原作は、その性描写により刊行直後に発禁処分となったノーベル文学賞候補作家・閻連科(えんれんか)による「人民に奉仕する」。監督は、2010年の長編初監督作『ビー・デビル』で第47回大鐘賞や第8回大韓民国映画大賞の新人監督賞を受賞し、2013年にキム・スヒョン主演で695万人を動員した大ヒット映画『シークレット・ミッション』を手掛けたチャン・チョルスが9年ぶりの新作として手掛けた。『愛に奉仕せよ』は6月24日(金)よりシネマート新宿ほかにて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:愛に奉仕せよ 2022年6月24日よりシネマート新宿ほか全国にて公開© 2022 JNC MEDIA GROUP. All Rights Reserved.
2022年04月27日美しいメロディが貫く浮遊感のあるオルタナティブロックを奏でる羊文学のセカンドフルアルバム『our hope』はサウンドアプローチも歌詞も歌も、あらゆる面で進化が感じられる。ダンスに接近した「OOPARTS」など、これまでの羊文学にはなかったようなサウンドが随所で聴けるのだ。これまでの決まりを外してチャレンジした。「これまで自分の中で、3人で鳴らせる音しか鳴らさないのが正直なんだっていう謎の決まりがあったんですけど、前のアルバムでその方向性でできることはいったん満足したんです。今回その決まりを外して新しいことにチャレンジしてみたら、意外といろいろできるんだなって思いました。『パーティーはすぐそこ』はポップス寄りのコーラスワークとサウンドを心がけてみたり、『光るとき』と『ワンダー』はコーラスを重ねてみたり、『OOPARTS』はシンセを取り入れました」(塩塚モエカ・Vo&Gt)「今回ドラムのテックさんを入れたこともあり、これまでのドライでダークなイメージより、ポップな振れ幅が生まれたんです。例えば『パーティーはすぐそこ』はJポップ寄りの抜けが良いスネアサウンドになっています。全体的に叩き心地も大きく変わって、演奏しててすごく楽しかった」(フクダヒロア・Dr)「前はぱっと思いついたアイデアを軸にベースを弾いていたんですけど、今回は事前にプリプロ合宿をしたこともあって、曲を客観的に聴いてからじっくりリズムパターンを考えました。プリプロ合宿はとても楽しかったし、そうやって作ったことでみんなの考えもスムーズに一致していきましたね」(河西ゆりか・Ba)「確かに、アレンジやメロディをギリギリまで妥協なく詰めていけたのはプリプロ合宿が大きかったと思います」(塩塚)今作では塩塚さんのデモの作り方も大きく変わったという。「今までは弾き語りの音源をふたりに渡すことが多かったんですけど、今回はパソコンで簡単に作ったデモを渡したんです。例えば『OOPARTS』は、完成版は前半がシンセ中心で後半がバンドサウンド強めの構成ですけど、デモは全部シンセで作りました。それをバンドでアレンジしたら一回全部バンドサウンドになったんですけど、やってるうちに私がシンセのパートを入れたくなって、前のバージョンと合体させたんです。そういう着地の仕方ができたのもデモの作り方が変わったからだと思います」(塩塚)「弾き語りの時は、スタジオで初めて具体的に『こういう感じなんだ』ってわかったんですが、今回は曲のイメージを最初からつかみやすかったですね」(河西)「『OOPARTS』の打ち込みみたいなサウンドは、デモの時点でスーパーカーさんとかのバンドのリファレンスもあって、’00年代や’10年代の雰囲気を想像しました。羊文学にこういうシンセのバンドサウンドの幅があるんだっていうのが、デモの時点から新鮮でした」(フクダ)塩塚さんの書く歌詞は、フィクション性の強いものから、まっすぐに力強いメッセージを放つものまでアプローチは様々。世界や“君”を肯定する「光るとき」をはじめ、希望を感じる歌詞が印象に残る。「今までは自分の暮らしの愚痴を広げた歌詞が多かったんですけど、周りの人の影響もあって世界のことに視野が広がったところもあります。でも実はそれも突き詰めれば暮らしの愚痴ではあるんです(笑)。歌詞を書くのが上手くなったんだと思いますし、サウンドが明るくなったので抜けが良くなった感じはありますね。音楽って面白いですよね」(塩塚)メジャー2ndフルアルバム『our hope』。TVアニメ『平家物語』主題歌「光るとき」など全12曲収録。【初回生産限定盤(CD+BD)】¥5,000【通常盤(CD)】¥3,300(Sony Music Labels)ひつじぶんがく左から、河西ゆりか(Ba)、塩塚モエカ(Vo&Gt)、フクダヒロア(Dr)。2017年に現在の編成となる。’20年メジャーデビュー、ニューアルバム『our hope』をリリース。河西さん・キャミソールドレス¥22,000(イェンスtm@j-e-n-s.jp)トップス¥35,200(アカネ ウツノミヤ/ブランドニュース TEL:03・3797・3673)スニーカー¥39,600(グラウンズcustomer@fools-inc.com)塩塚さん・ドレス¥38,500(イェンス)スニーカー¥29,700(グラウンズ)その他はスタイリスト私物※『anan』2022年4月27日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・中井彩乃ヘア&メイク・kika取材、文・小松香里(by anan編集部)
2022年04月25日日本の文学作品・文豪をイメージしたコラボレーションカフェ「文豪達のティータイム -日本近現代文学の世界へ-|YOU+MORE!×フェリシモミュージアム部×秋葉原和堂」が、2022年4月20日(水)から5月15日(日)まで、東京・秋葉原和堂にオープンする。近現代日本文学“文豪たちの文学作品”がお茶に芥川龍之介、夏目漱石、宮沢賢治、江戸川乱歩、中島敦…など、明治から昭和にかけての近現代日本で生まれた、文学作品にフォーカスしたカフェが限定登場。店内では、フェリシモが手掛けた、文学作品をイメージした香り豊かなティーとともに、文豪たちにインスピレーションを受けた特製スイーツやフードメニューを味わうことができる。芥川龍之介『蜘蛛の糸』へオマージュを捧げた紅茶は、蓮の花をイメージした香りが広がる華やかな仕上がり。夏目漱石『虞美人草』をイメージした紅茶は、作中に登場するアイスクリームのような甘い香りを楽しむことができる。スイーツメニューからは、中島敦に着想を得たスイーツプレートが展開。代表作『山月記』に登場する虎・李徴をイメージしたバナナロールケーキと、作家本人が持つ逸話より中国発祥のデザート・杏仁豆腐をセットにした。他にも「江戸川乱歩のおにぎりセット」「高村光太郎のレモンケーキ」なども、期間限定でラインナップ。紅茶も、“色が変化する”中島敦『山月記』モチーフのティーや、チョコレート風味の江戸川乱歩『孤島の鬼』の紅茶など、個性豊かなフレーバーが目白押しだ。【詳細】文豪達のティータイム -日本近現代文学の世界へ-|YOU+MORE!×フェリシモミュージアム部×秋葉原和堂開催期間:2022年4月20日(水)11:00~5月15日(日)20:00(L.O.19:30)場所:秋葉原和堂住所:東京都千代田区外神田6-14-2サカイ末広ビル地下1階食事提供時間:11:00~22:00(フードL.O.21:00/L.O.21:30)<期間限定コラボカフェメニュー例>・文学作品イメージティー&まるで本みたいなミルクレープのセット 800円・中島敦の杏仁豆腐と虎風ロールケーキセット 800円・江戸川乱歩のおにぎりセット 900円・宮沢賢治の鉱物バニラアイス 700円・夏目漱石のアフタヌーンティーにぴったりペイストリー&スープセット 900円
2022年04月23日ロックバンド・羊文学と円山ジェラートによるコラボレーションジェラートが登場。2022年4月20日(水)より、円山ジェラートの北海道・江別蔦屋店、大丸札幌店、東京・東急蒲田店などで販売される。大阪や名古屋のTSUTAYAでも期間限定販売を予定。羊文学と円山ジェラートがコラボ円山ジェラートは、「米津玄師」や「鬼滅の刃」などとコラボレーションしてきた北海道札幌を拠点とするジェラートショップ。北海道産の牛乳など、こだわり素材を使用したフレーバーが特徴だ。そんな円山ジェラートが、オルナティブロックバンド・羊文学とコラボレーションしたジェラートを販売。4月20日(水)にリリースされる羊文学の最新CDアルバム『our hope』から着想した期間限定フレーバーを展開する。最新アルバム『our hope』着想の6フレーバーフレーバーは、『our hope』に収録された6曲からインスピレーションを得た6種。テレビアニメ「平家物語」のOPテーマ「光るとき」をイメージした塩レモンミルクや、アニメ映画『岬のマヨイガ』主題歌の「マヨイガ」を表現した杏仁豆腐など、個性豊かなラインナップだ。<フレーバー>・光るとき:塩レモンミルク優しいあまさのミルクベースに、爽やかなレモンが香る、初夏を感じさせるジェラート。後味にほんのり残る塩味もポイント。・ラッキー:ベリーベリーチョコチップ甘ずっぱいフランボワーズとブルーベリーの中に、ダークチョコを加えたソルベ。青春時代の心の葛藤を表現。・ワンダー:チョコミント爽やかなミントフレーバーとチョコレートの食感を楽しむアイス。・OOPARTS:スパイシーチャイオリジナルブレンドのスパイスを配合し、ミルクベースと合わせた紅茶ジェラート。宇宙にいるかのようなスパイシーさを表現。・マヨイガ:杏仁豆腐濃厚なミルクベースに杏仁豆腐と牛乳を合わせた人気ジェラート。杏仁の風味が、どこか懐かしい気持ちにさせる。・予感:マンゴーソルベ濃厚なマンゴーソルベで、アグレッシブさを表現。ディッピング&オリジナルパッケージで販売店頭では、ショーケースからコラボレーションフレーバーをディッピングで提供するほか、6フレーバーをセットにしたオリジナルパッケージでも販売。アルバムの盤面を再現したカップシールのデザインや、羊文学の写真を用いたオリジナル化粧箱に注目だ。【詳細】「羊文学」×「円山ジェラート」コラボレーションジェラート発売日:2022年4月20日(水)10:00販売店舗:円山ジェラート江別蔦屋店・大丸札幌店・東急蒲田店、円山ジェラートECサイト※ECサイトではパッケージ販売のみ。価格:・ディッピング ※店舗によって価格が異なる。シングルサイズ:380円〜430円ダブルサイズ:450円〜500円トリプルサイズ:500円〜550円・パッケージ販売 3,500円 ※オンラインストアは送料別。※一部蔦屋書店でも期間限定販売予定。TSUTAYA牧野高校前店(大阪・枚方市)・TSUTAYA新道東駅前店(北海道・札幌市)・名古屋みなと 蔦屋書店(愛知・名古屋市)を予定。一部店舗では販売開始日が異なる場合がある。
2022年04月16日家具が記憶した人の営みの気配を掬い上げ手渡していく、被災文学。清水裕貴さんによる、小説『花盛りの椅子』。「東日本大震災のあと、壊れた家の中にぽつんと置かれたままの家具などを被災地で見かけ、何か気配がするというふうに感じていました。それが意外と記憶に残っていて」その後、何年も経ってから親族が急死したために清水裕貴さんはマンションの後片付けなどを請け負う。そのときふと、それらの記憶が結びついた。「たとえば壁紙を剥がしたら、叔父の、さらに前の住人が貼った壁紙まで出てきて、部屋の中に歴史の層ができていたわけです。生活の痕跡を垣間見て、『被災地で見た傷だらけの家具の中にも生活の痕跡って膨大にあっただろうな』と。それで、家具の気配を感じる人や家具職人を交えた物語を書きたくなったんです」『花盛りの椅子』の主人公は、古家具を修理したり大きく作り直したりして販売する「森野古家具店」で働く〈鴻池さん〉だ。勤め始めて9年が経つが、リメイク職人としてはまだまだで、日々職人たちのアシスタントや事務仕事をこなしている。「人って災害のような大きな悲劇を、そんなに簡単に自分の中で処理できないと思うんですね。鴻池さんは『世界はこうあってほしい』とかがあまりない人で、空っぽだからこそ、死者のすごく小さな声や、ささやかな痕跡に気づけるのかなと思って。すごい長い時間をかけて物事を考え、静かなメッセージを受け取れる人に設定したという感じですね」津波にさらわれたのちに森野古家具店に持ち込まれたアンティークの椅子と、鴻池さんの不思議な縁。台風で水浸しになった箪笥のリメイクがなかなか完成しない本当の理由。豪奢な古民家の襖に宿る、一族のつらい歴史。家具が有機物のように人と人とをつなぎ、人の心の柔らかな部分に触れてくる。「小説内でも書きましたが、普通の古家具屋なら扱わないレベルの損傷具合です。その分、幻想譚として書けたところもあります。人間はどうしても忘れてしまうし、代謝するし、動く動物の忙しなさが虚しく思えることがあって。でも家具なら、その部屋の中にとどまっている。生活の些末なことさえずっと覚えてくれているとしたら、とてもいじらしい存在ではないかと感じるんですよね」本を閉じてなおさまざまな感情が湧き上がる。すばらしい小説集だ。清水裕貴『花盛りの椅子』リメイクを待つ家具をモチーフに描かれる、連作短編集。ヒロインだけでなく、家具店の社長や、常連客、腕利き職人たち…、魅力的な人物が活躍する5編。集英社1980円しみず・ゆき1984年、千葉県生まれ。武蔵野美術大学卒。2016年、三木淳賞受賞。著書に「女による女のためのR‐18文学賞」大賞受賞作を含む短編集『ここは夜の水のほとり』(新潮社)。撮影:村松聡※『anan』2022年4月13日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2022年04月12日出産の際、母親の多くが体験する『陣痛』。赤ちゃんが出られるように子宮が収縮するとともに、腹部に波のように押し寄せる痛みがあります。イラストレーターの塩り(@shio_03)さんも、陣痛を経験した2児の母親。ある日、陣痛について知った4歳の長女から、浮かない顔でいわれた言葉があるといいます。優しさの塊 pic.twitter.com/yKQuYaWS42 — 塩り (@shio_03) April 4, 2022 長女は、塩りさんが陣痛に耐えて出産したことを理解していました。だからこそ「自分のせいで苦しめた」と感じ、謝罪したいと思ったのでしょう。しかし…塩りさんは陣痛を長女に謝ってほしいと考えたことはありません!「陣痛は、長女が誕生のために頑張った証でもある」ということを伝えると、長女は理解した様子。笑顔で「ありがとう」といったのでした。一連の出来事に心打たれた人は多く、「なんて優しい子」「優しさのノーベル賞を差し上げます!」と反響が上がっています。親子で頑張ったからこそ今があると思える、塩りさんの考え方は素敵ですね。[文・構成/grape編集部]
2022年04月11日2022年のアカデミー賞作品賞のほか、助演男優賞、脚色賞の計3部門を受賞した『コーダ あいのうた』。今年初めに行った、シアン・ヘダー監督の単独インタビューをお届けします(2022年1月20日配信記事)。『コーダ あいのうた』【映画、ときどき私】 vol. 448豊かな自然に恵まれた海の町で、耳の不自由な両親と兄と暮らす高校生のルビー。4人家族のなかで唯一耳が聞こえるルビーは、家族のために幼い頃から“通訳”となり、家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期に入り、ルビーは秘かに憧れるクラスメイトのマイルズと同じ合唱クラブを選択。ルビーに歌の才能があることに気がついた顧問の先生から、都会の名門音楽大学への受験を強く勧められる。ところが、ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じることができず、家業のほうが大事だと大反対。家族を選ぶ決断をした娘に対し、父は意外なある行動を取ることに……。2014年に製作され、大ヒットとなったフランス映画『エール!』をリメイクした本作。昨年開催されたサンダンス映画祭では史上最多受賞に加え、映画祭史上最高額となる約26億円で配給権が落札されたことでも大きな話題となりました。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。シアン・ヘダー監督本作の脚本と監督を務め、その実力が高く評価されているヘダー監督。今回は、取材を重ねるうえで得た気づきや手話から学んだこと、ろう者と作り上げた現場で感銘を受けた出来事などについて、語っていただきました。―最初は、脚本家として本作の依頼を受けたそうですが、監督も手掛けることになったいきさつから教えてください。監督私はもともと監督も脚本も手掛けるフィルムメイカーなので、脚本家として雇われた当初から監督もしたいという思いはありました。製作陣としては、私がどんな脚本を出すかで監督も任せるか検討しようと考えていたようですが。その後、脚本の出来に満足していただけたので、監督も任せてもらえることになりました。―この作品に惹かれた理由はどんなところですか?監督オリジナルの作品を観たとき、物語をより深く掘り下げるポテンシャルがすごくある作品だなと感じました。たとえば、家族の描かれ方やそれぞれのキャラクターをより立体的に描けると思ったんです。特にこの家族というのは、聴者とろう者の両方に属しているようで、両方ともに属していないような存在なので、そんな彼らの道のりをしっかりと見せたいと考えました。取材を通して、いろいろな発見があった―タイトルのコーダ(CODA)とは「Children of Deaf Adults」のことで、⽿の聴こえない両親に育てられた⼦どものことを指していますが、今回は実際にコーダと呼ばれる子どもたちにも取材を行ったそうですね。彼らと出会ったことで脚本に影響を与えた部分もあったのではないでしょうか。監督すごくいい質問なので、この話ができるのはうれしいです。脚本を書き始めたころ、まずはSNSや友人を通じてコーダの経験がある人たちを探したんですが、話を聞いていくと、人によってまったく違う経験もあれば、共通点もあり、いろいろな発見がありました。そのなかでも、興味深かったのは、大人同士の会話の通訳をしなければいけなかったので、まだ心の準備ができてない年齢からかなり大人な話題に触れなければいけないということ。彼らは早く大人になることを求められてしまうんですよね。ときには「どうして自分だけこんなに頼られなければいけないんだ」とコーダであることを重荷に思うこともあるそうですが、同時に「自分は家族にとってすごく重要な人間なんだ」という誇りも持っていると感じました。そういった彼らの心にある矛盾はおもしろいと思ったので、キャラクターにも反映させています。劇中でも描いているように、性的な話を何でもはっきり言ってしまう親がいる人や家のなかの音がうるさくて大変だったという人など、リサーチのなかでは笑える話もたくさん聞かせてもらいました。手話は人と人をつなげてくれる言語だと感じた―劇中では手話の持つ表現力の美しさも感じましたが、監督ご自身も手話を習得されたとか。実際に体験してみていかがでしたか?監督手話で話すときは、中身のない話をする余地がないように感じました。というのも、いまそこで起きている真実だけを話し、それを心から信じて伝えるので、社交辞令や沈黙が怖いから意味のないことを口にする、みたいなことがない言語というのが私の受けた印象です。あと、手話ではスマホを見ながら話したりできないので、人の目を見ながらでないと話せないという意味でも人と人とをつなげてくれる言語なのではないかなと。100%相手と向き合うこと、しっかりと考えてから自分の思いを伝えること、言葉の選択など、いろいろなことを手話から学びました。―なるほど。本作は超高額で配給権の争奪戦が行われたり、各賞レースでも有力候補として注目を集めたりしていますが、いまの状況をどう受け止めていますか?監督とにかくワクワクして興奮しています!今回の作品を通して、現場の作り方やコミュニケーションの取り方も変わりましたし、聴者とろう者が一緒になって作品づくりをする過程もとても誇らしく思っていたので。実は映画が完成した時点で、「私は人生で最高の経験をしてしまった」と感じていたので、そこがピークだと思っていたんです。なので、そのあとに起きたことは予想もしていなかったことばかりで、本当に奇跡のような出来事。こんなふうに評価をされ、作品がさらに成長していくとは思っていなかったので、いまはただ喜びでいっぱいです。うれしかったは、ろう者の俳優たちが評価されたこと―出演者のみなさんも、同じお気持ちだと思います。監督あとは、自分の作品に出てくれた俳優たちが称賛を受けているというのが、何よりもうれしいです。母親を演じたマーリー・マトリンは、オスカーの受賞経験がありながらいままであまり多くの機会が与えられていませんでしたし、父親役のトロイ・コッツァーと兄役のダニエル・デュラントもあまり知られていない俳優でしたから。いろいろな賞にノミネートされていて、感動しました。いままで苦労してがんばってきた彼らがこの作品で報われてよかったです。―本当に、素晴らしい演技でした。耳の聞こえない人の役は聴覚に障がいのある人に演じてほしいというのが、監督の当初からのこだわりだったとうかがっています。実際に彼らと現場をともにして、気づかされることもあったのでは?監督最初は、現場に手話の通訳を入れて彼らと話をする計画でしたが、初日の撮影をした際、彼らが私ではなくて通訳さんのほうしか見ていないことに気がつき、うまくつながれていないように感じてしまったんです。そこで、できれば通訳を介さずに進めたいと彼らに相談をしました。当時は私の手話もまだ流暢ではなかったので、表情や目を使ったり、お互いの体を触れ合わせたり、照明で合図をしたり、いろいろな形でコミュニケーションを取ることに。撮影を進めながらやり方を探していくような感じでしたが、それはとても親密なプロセスとなりました。彼らとは手話や言葉を使わなくても理解できるほどになったので、さまざまな発見とともに楽しい現場でしたね。自分が思うほど、他人との違いは大きくない―まもなく公開を迎える日本には、どのような印象をお持ちですか?監督実は日本にはまだ行ったことがないんですが、すごく行きたい場所のひとつではあります。日本の文化や食事が大好きなので、ぜひ日本を訪れてさまざまな経験をしたいです。―それでは最後に、日本の観客に向けてメッセージをお願いします。監督この映画では、ある家族を中心に描いているものの、普遍的な物語になっているので、ろう者でも聴者でも、誰でも共感していただける作品になっていると思います。あとは、この作品がきっかけで、ろう者の方々とコミュニケーションを取ってみたいと手話の勉強を始めていただく方が増えたらうれしいですね。いまの時代は自分と違うものに対する恐怖心が大きくなっており、他者とつながれないと感じている人も多いと思うので、この映画を通してそういった“バリア”を少しでも壊せたらいいなと。誰もが同じ人間で、同じような葛藤や家族の問題を抱えているものなので、自分が考えているほど他人との違いは大きなものではないというのも知ってほしいと思っています。家族の愛に、胸も目頭も熱くなる!理想と現実という名の“荒波”にもまれながらも、夢が広がる大海原へと飛び込む少女から勇気をもらえる本作。そして、家族がお互いを想う涙あり笑いありの愛には、誰もが魅了されてしまうはず。耳も心も虜にする美しい歌声とともに、爽やかな感動に包まれてみては?取材、文・志村昌美心が震える予告編はこちら!作品情報『コーダ あいのうた』1月21日(⾦)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー※バリアフリー字幕版も上映決定(詳細はHPの劇場情報欄にて)配給:ギャガ© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS
2022年03月28日プロデューサー組合賞(PGA)が発表された。劇場用映画賞を受賞したのは、『コーダ あいのうた』。オスカーの作品賞と同じ投票方式を採用し、投票者のかぶりも多いPGAは、オスカー予測で非常に重視される。ひと足先に『コーダ〜』は俳優組合賞(SAG)も受賞しており、フロントランナーである『パワー・オブ・ザ・ドッグ』を深刻に脅かすことになった。ドキュメンタリー映画賞は、『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった日)』。劇場用アニメーション賞は『ミラベルと魔法だらけの家』。テレビドラマ賞は『メディア王〜華麗なる一族〜』、コメディシリーズ賞は『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』、ミニシリーズ賞は『メア・オブ・イーストタウン/ある殺人じ事件の真実』だった。文=猿渡由紀
2022年03月22日監督組合賞(DGA)が発表された。劇場用長編映画賞を受賞したのは、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のジェーン・カンピオン。この受賞で、カンピオンのオスカー監督賞受賞は、より確かなものになった。1949年から昨年までの間に、DGAの結果とオスカー監督部門の結果が一致しなかったことは7回しかない。劇場用映画初監督賞の受賞者は、『ロスト・ドーター』のマギー・ギレンホール。ドラマシリーズ部門は『メディア王〜華麗なる一族〜』のマーク・マイロード、コメディシリーズ部門は『Hacks』のルチア・アニエロ」、テレビ用映画またはミニシリーズ部門は『地下鉄道〜自由への旅路〜』のバリー・ジェンキンスが受賞した。『パワー・オブ・ザ・ドッグ』Netflixで配信中文=猿渡由紀
2022年03月14日「第45回日本アカデミー賞授賞式」が3月11日(金)に開催され、『ドライブ・マイ・カー』が最優秀作品賞を受賞した。8部門において優秀賞を受賞している『ドライブ・マイ・カー』だが、作品賞以外にも監督賞、主演男優賞などすべてにおいて最優秀賞に輝き、圧倒的な強さを見せつけた。『ドライブ・マイ・カー』は、『寝ても覚めても』の濱口竜介監督が、村上春樹の同名短編小説を原作に、自ら脚本も手掛けた意欲作。愛妻を亡くした舞台演出家・家福(西島秀俊)が喪失感と向き合い、再生へのきっかけをつかむまでを戯曲もシンクロさせつつ描き、観る者の心を揺さぶった。本作は第74回カンヌ国際映画祭で4つの賞を受賞したのを皮切りに、世界の名だたる映画賞を席巻、第94回米アカデミー賞では日本映画史上初となる作品賞ほか、4部門でノミネートとなる快挙を達成している。檀上に西島さんと共に立った濱口監督は、ブロンズ像を手にし、「ありがとうございます。関わったキャスト、スタッフの皆さんのおかげで獲れた賞です」と挨拶。その前に受賞した最優秀監督賞のスピーチで、濱口監督はこれまでの自身の作品や思いについて触れながら、「1日1日の仕事が未来を作っていくと思います。間違えることもあるかもしれないけど、引き返して、今いるところから進んでいくしかないと思います。少しでもいい社会やいい世界に…と言うと大げさですけど、この場所からしか始まらないと思います。映画界の今の仲間、未来の仲間と一緒に映画を作っていけたらうれしいです」と心を込めた。最優秀主演男優賞を受賞した西島さんも、「本当にありがとうございます。世界で見ていただいているのも、世界の大きな波みたいなものかなと思っています。平和が訪れるように、人々が心の絆を取り戻せるように、心から祈っています。この作品が希望の光になる、そのために必要なものが何か耳を傾ける、そのことを伝えているのかなと思っています。濱口監督の言う通り、自分のやれることを今後も精一杯やっていきたいと思います」とスピーチした。そのほか、最優秀アニメーション作品賞は『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が受賞。ブロンズ像を受け取った東映の紀伊宗之は、「皆さんが長い時間と心血を注いで作ったものです。2度延期になりましたが、東宝さんと一緒に配給の仕事をして、本当にほっとしたというのが感想です。カラーの皆さんも喜んでいると思います。持って帰ってお伝えしようと思います」とやわらかい表情で話していた。(cinamacafe.net)■関連作品:ドライブ・マイ・カー 2021年8月20日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開(C)2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
2022年03月11日言葉を紡ぎ、重ね合わせることで生まれる、文学ならではの焦がれと高まり。作家が描き出すストーリーに没入し、艶めく表現に身をゆだねてみればきっとこれまでになかった文学の楽しみ方に出合えるはず。ここでは“禁断の恋”を描いた作品をご紹介します。禁断の恋他人には言えないからこそ燃え上がり、盛り上がる。禁じられた関係を描いた4冊。森本木林さんselect『私の男』桜庭一樹孤児になった10歳の花を、若い淳悟が養女に迎えるが――。「ページを進めるごとに過去へ戻っていく描写は、読者に息を呑むような緊迫感を味わわせてくれます。腐りきっているはずの愛に、どうしてこんなにも激しく心揺さぶられるのか。淳悟と花の異様な関係は、巻き込まれた人々の人生を狂わせながら、より純度の高い愛に到達していくようです」。文春文庫836円三宅香帆さんselect『卍(まんじ)』谷崎潤一郎2組の男女の関係が卍のように交錯する、倒錯的な愛を描く。「同性愛を描きつつ、不倫の恋愛でもあるという、何重にも張り巡らされた『禁断』の恋に、ページをめくるたびに引き込まれてしまいます。関西弁で語られる恋愛は、深くて、本能的。性別を超えて、体が恋愛にのめり込む様子が子細に表現される谷崎ワールド。気づけば夢中になってしまいます」。新潮文庫539円川田未穂さんselect『ふがいない僕は空を見た』窪 美澄年上の主婦と肉体関係を持つ高校1年生をはじめとする5人の視点で語られる連作長編。「人妻との不倫、しかもコスプレをしてアニメキャラになりきってのSEX。ただごとではない設定だけど、彼も彼女も普通でいられなかったのは何故?それぞれ生きることに厄介さを抱え、躓きながらも生きていく。答えは1つでなくともその意味が胸に迫ります」。新潮文庫605円及川貴子さんselect『愛その他の悪霊について』ガブリエル・ガルシア=マルケス訳・旦 敬介悪魔憑きとして隔離された少女と、彼女の悪魔祓いのために訪れた青年神父を描く。「初めは激しく対立した二人ですが、いつしか惹かれ合います。青年神父は彼女が悪魔に取り憑かれているとは思えなくなりますが、彼の所属する教会はそれを認めない…。揺らぐ信仰、命、愛。本当に信じられるものはなんなのか。泥土の中の美しい祈りのような作品」。新潮社2200円森本木林(きりん)さん読書研究家、本スタグラマー、ライター。4歳から読書を始めた無類の本好き。「私らしく生きていくための読書案内」をSNSやウェブメディアで発信している。Instagramは@morimoto_kirin三宅香帆さん書評家、作家。批評やエッセイの執筆のほか、文章の書き方や小説の読み方を伝える講師業も。好きなものは、小説と少女漫画と宝塚と女性アイドル。近著に『それを読むたび思い出す』(青土社)が。川田未穂さん雑誌『オール讀物』(文藝春秋)編集長。2020年に女性初の編集長に就任。’21年、大人がじっくり読める質の高い恋愛小説を広めることを目的とした「本屋が選ぶ大人の恋愛小説大賞」を創設した。及川貴子さん日本出版販売ブックディレクター。本と出会うための本屋『文喫 六本木』にて、企画選書や展示イベントの企画を担当するほか、本のある空間のプロデュースを行う。よく読むジャンルは海外短編小説。※『anan』2022年3月9日号より。写真・小笠原真紀取材、文・宮尾仁美撮影協力・TITLES(by anan編集部)
2022年03月05日読書を愛し、自身も表現活動に携わる、文筆家・木村綾子さんとモデル・前田エマさん。文学と焦がれや高まりの関係、焦がれを感じる好きな作品についてなど、あれこれ語っていただきました。木村綾子&前田エマが考える、文学における焦がれの正体木村綾子:“焦がれる”という言葉から連想したのは、届かなさ、わかり合えなさ、一方通行の思い…そんな満たされなさを抱える相手に抱く思いでした。そんな本を今日は持ってきましたが、前田さんのセレクトも楽しみにしてきました。前田エマ:私もです!私は今までの人生でトップレベルで好きな本を持ってきました。欠けているからこそ求め、憧れ、そして“焦がれる”。すごく共感します。木村:私は、たとえ肉体的な交わりがあっても、人間は本質的にひとりだという孤独感から逃れられないからこそ、官能が刺激されると思うんです。そういう意味で、村田沙耶香さんの作品は、自分自身の肉体に対する違和感や反感まで突き詰めていて凄みがあります。性というものを徹底的に疑うんですよね。たとえば『地球星人』では、男女が結婚するのに性は必要なのかを疑うし、『しろいろの街の、その骨の体温の』では生理や女性性を疑う。前田:私は『しろいろの~』が村田作品でいちばん好きでお守りのような本です。多くの作家が今日まで繰り返し孤独と寂しさ、“動物としてのヒト”と“人間としての人”との葛藤を描いてきました。体を重ねるほど相手が遠くなる普遍的な感情もたまらない。木村:前田さんは、気になるところに付箋をつけるんですね。私は角を折り曲げちゃうんです。前田:読み返してみたら付箋を貼っている箇所の多くが匂いの描写でした。それも香水のような芳香ではなく、汗の酸っぱさや肉体が交わったときに漂う湿った匂い。匂いは私にとってとても大事なんでしょう。木村:血なまぐさいのも官能をくすぐられませんか。田村俊子の『生血』は、一晩男の人と過ごし処女を喪失した翌日から物語は始まります。赤い金魚を眺めて生理を思い出し「目刺しにしてやりたくなる」とか、生殖と殺意が同居しているような表現が頻出します。前田:官能が死と隣り合わせというのはよくわかります。『本格小説』で、死の淵に立つヒロインのよう子に、主人公の太郎が「おまえをずっと殺したかった」と言う場面があるんです。「いつから?」「出会ったときから」。愛しすぎているゆえに究極の感情に至るのはすごく人間らしいなと。その二人の愛の行方は、よう子の生家で住み込みの家政婦をしていた冨美子の視点で描かれます。実は太郎との間に関係があったようなのですが「匂わせ」だけで描かれないんです。直接的な性描写よりずっとノックアウトされました。木村:人間の想像力はたくましいので、実際に書かれている文字情報以上のもの、たとえば自分がしてきた経験や見聞や五感で得たものを同時にそこに読み取ってしまうんですよね。だからこそ、同じ文章が書かれていても、それぞれにイメージするものが違う。私が中学2年生で『仮面の告白』を読んだときに、ちらっと本から目を逸らしたときに映った、銀杏の揺れる枝葉や前の席の男子の背中が生々しくて。小説で描かれている官能が肌感覚と直につながったと感じた瞬間でした。前田:すごい大人びた素敵な中学生ですね(笑)。木村:『溺レる』も、結構暴力的なセックスがあったり、排泄の場面があったり、五感が刺激される作品集です。前田:谷崎潤一郎の『痴人の愛』は外せませんよね。木村さんも谷崎をお持ちですね。木村:『瘋癲老人日記』。谷崎は死ぬまで性や欲望に従順で奔放で、女性の肉感…特に足ですよね、その憧れと渇望の描写がすごい。前田:谷崎の趣味をこれでもかというくらい見せられて笑ってしまう。エロティシズムって滑稽な面もあるのだなあと思います。木村:前田さんは、山田詠美さんもお好きですか。前田:『蝶々の纏足・風葬の教室』は何度も読みました。私は、同性愛者でも異性愛者でも、女の子が最初に焦がれる相手は女の子だと思っていて。ちゃんのまつ毛が長くてキレイだな、触ってみたいな、とか。この一冊には女の子同士の小さな焦がれが、膨れ上がり変化していく様子が描かれているように思います。官能に意味を持たせたり娯楽にするのは大人ですが、決して大人だけのものではないと思います。木村:焦がれるって、人にとって本能的なものかもしれませんね。木村綾子さんselect『溺レる』川上弘美焦がれているからこそ増す8組の男女の愛しさと孤独。男に言われるがままに一緒にあてもない旅を続ける女の愛欲を描く表題作など、全8編。「二人の間に愛やセックスがあっても、決してわかり合えない部分がある寂しさがさまざまなシチュエーションで描かれ、皮膚感覚に迫ってきます」。文春文庫660円『仮面の告白』三島由紀夫男性にも女性にも惹かれる複雑な内面が吐露される。自身の性的指向とアイデンティティに苦悩する青年の告白小説。「直接的な性描写があるわけではないのに、たとえば聖セバスチャンの殉教図を見た〈私〉の内面描写で『ああ、射精したんだな』とわかるんですよね。言葉で官能の魅力を味わえる一冊」。新潮文庫新装版 649円前田エマさんselect『本格小説』水村美苗歴史のうねりと運命的な愛を描く、日本版『嵐が丘』。アメリカンドリームを掴み凱旋帰国した東太郎と、軽井沢のお屋敷の娘・よう子の引き裂きがたい絆はどうやって生まれたのか、運命的な愛に翻弄された登場人物たちの生と死を追う。「冨美子の語りの行間から伝わる太郎への思いが切ないです」。新潮文庫上巻924円、下巻825円『蝶々の纏足(てんそく)・風葬の教室』山田詠美息を詰めるように読む、少女期の繊細な心の動き。〈私〉が語る幼なじみのえり子との関係と成長を描く「蝶々~」を含む全3編を所収。「『風葬~』を、村田沙耶香さんがインタビューで“人生でいちばん読み返した小説”に挙げていたので、手に取った本なのですが、『蝶々~』にもとても感動しました」。新潮文庫572円木村綾子さん(写真右)文筆家。中央大学大学院にて太宰治を研究。現在は文筆業のほか、ブックディレクション、イベントプランニングなどで活躍する。昨年8月より、作者と読者がつながるオンライン書店「コトゴトブックス」をスタート。前田エマさん(写真左)モデル。東京造形大学在学中からモデル、エッセイ、写真、ペインティング、ラジオパーソナリティなど、ジャンルにとらわれない活動が注目を集める。雑誌やウェブメディアでエッセイの連載を多数持つ。※『anan』2022年3月9日号より。写真・小笠原真紀取材、文・三浦天紗子撮影協力・TITLES(by anan編集部)
2022年03月05日27日(現地時間)、第28回全米映画俳優組合賞授賞式(以下、SAGアワード)が行われた。アカデミー賞の行方を占う賞として重要視されている同賞で、最高賞の位置付けにあるキャスト賞には『コーダ あいのうた』が選ばれた。ほかの候補作品は『ベルファスト』『ドント・ルック・アップ』『ドリームプラン』『ハウス・オブ・グッチ』だった。テレビ部門では、昨年Netflixで大ヒットし、最高賞にあたるアンサンブル賞(作品賞)、ドラマシリーズ男優賞、同女優賞、スタント・アンサンブル賞の計4部門にノミネートされた「イカゲーム」が作品賞を除く3部門を受賞した。※第28回全米映画俳優組合賞の受賞結果は以下の通り【映画部門】■キャスト賞『コーダ あいのうた』■主演女優賞ジェシカ・チャステイン『タミー・フェイの瞳』■主演男優賞ウィル・スミス『ドリームプラン』■助演女優賞アリアナ・デボーズ 『ウエスト・サイド・ストーリー』■助演男優賞トロイ・コッツァー『コーダ あいのうた』■スタント・アンサンブル賞『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』【テレビ部門】■ドラマシリーズ作品賞「キング・オブ・メディア」(別タイトル:サクセッション)■ドラマシリーズ女優賞チョン・ホヨン「イカゲーム」■ドラマシリーズ男優賞イ・ジョンジェ「イカゲーム」■コメディシリーズ作品賞「テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく」■コメディシリーズ女優賞ジーン・スマート「Hacks」■コメディシリーズ男優賞ジェイソン・サダイキス「テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく」■テレビ映画・リミテッドシリーズ女優賞ケイト・ウィンスレット「メア・オブ・イーストタウン/ある殺人事件の真実」■テレビ映画・リミテッドシリーズ男優賞マイケル・キートン「DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機」■スタント・アンサンブル賞(コメディ&ドラマシリーズ)「イカゲーム」■生涯功労賞ヘレン・ミレン(Hiromi Kaku)■関連作品:【Netflix映画】ブライト 2017年12月22日よりNetflixにて全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】マッドバウンド 哀しき友情 2017年11月17日よりNetflixにて全世界同時配信【Netflixオリジナルドラマ】オルタード・カーボン 2018年2月2日より全世界同時オンラインストリーミング2月2日(金)より全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】レボリューション -米国議会に挑んだ女性たち-コーダ あいのうた 2022年1月、全国にて公開© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS
2022年02月28日「日本アカデミー賞」において、唯一、一般の映画ファンが投票に参加できる「日本アカデミー賞 話題賞」の投票が2月4日に締め切られ、最終結果が「ナインティナインのオールナイトニッポン」内で発表された。45回目の開催を迎える「日本アカデミー賞」。この話題賞は、1980年の第3回日本アカデミー賞から創設され、「オールナイトニッポン」リスナーの投票を元に、今年、最も話題を集めたと思われる作品と俳優を決定する。今回の日本アカデミー賞 話題賞は、作品部門で庵野秀明総監督作『シン・エヴァンゲリオン劇場版』。俳優部門では、『花束みたいな恋をした』で熱演を見せた菅田将暉が選ばれた。ニッポン放送では、受賞者のスペシャルインタビューも交え、今年も日本アカデミー賞授賞式の模様を「オールナイトニッポン0(ZERO)~第45回日本アカデミー賞スペシャル~」とし2時間に渡って放送する。ニッポン放送「オールナイトニッポン0(ZERO)~第45回日本アカデミー賞スペシャル~」は3月11日(金)27時~全国ネットで放送。(cinemacafe.net)■関連作品:シン・エヴァンゲリオン劇場版 2021年公開予定花束みたいな恋をした 2021年1月29日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開©️2021『花束みたいな恋をした』製作委員会
2022年02月25日映画『わたしは最悪。』が、2022年7月1日(金)より公開される。カンヌ国際映画祭<女優賞>受賞、第94回アカデミー賞【脚本賞】【国際長編映画賞】ノミネート作品。ヨアキム・トリアー監督のアカデミー賞ノミネート作品映画『わたしは最悪。』は、『⺟の残像』『テルマ』で話題を呼んだ北欧を代表するヨアキム・トリアー監督の最新作。“異彩を放つ”ラブストーリーとして世界の賞レースを席巻しており、カンヌ国際映画祭では主演のレナーテ・レインスヴェが<女優賞>を受賞。第94回アカデミー賞では【脚本賞】【国際長編映画賞】にノミネートされている。“異彩を放つ”ラブストーリー映画『わたしは最悪。』は、理想と現実の間で揺れ動きながら、自分の気持ちに向き合い行動する主人公ユリヤと、その周りの人たちを、時にロマンティックに、時に痛烈に描き出すというストーリー。海外メディアは、「これは新しい!恋愛ドラマに⻘春モノを掛け合わせて、こんなにも⽢美で魅惑的なものができるとは」「⼤爆笑と悲痛が同居するヨアキム・トリアー監督のベスト作品」などと評している。<映画『わたしは最悪。』あらすじ>ユリヤは30歳という節目を迎えたが、人生はどうにも方向性が定まらない。学⽣時代は成績優秀で、アートの才能や⽂才もあるのに「これしかない!」という決定的な道が⾒つからず、いくつもの才能を無駄にしてきた。いまだ⼈⽣の脇役のような気分のユリヤは、グラフィックノベル作家として成功した年上の恋⼈アクセルからしきりに妻や⺟といったポジションをすすめられる。ある夜、彼女は招待されていないパーティに紛れ込み、若くて魅力的なアイヴィンに出会う。ほどなくしてアクセルと別れて新しい恋愛に身を投じ、今度こそ人生の新たな展望を見出そうとするが――。新星レナーテ・レインスヴェがカンヌ国際映画祭<女優賞>受賞■主人公・ユリヤ...レナーテ・レインスヴェ30歳という節目を迎えたが、人生の方向性が定まらない主人公。時に自己嫌悪に陥り、周りを傷つけながらも、自分の気持ちに正直に人生の選択をしていく。主演を務めるのはノルウェーの新星レナーテ・レインスヴェ。奔放でありながら、その年代特有の心の機微を大胆かつ繊細な表現力で演じ切り、カンヌ国際映画祭<女優賞>をはじめ、各国の賞レースで高い評価を得ている。監督のヨアキム・トリアーも、「この映画を作るきっかけは、レナーテだった。彼女の舞台での演技に魅了され、主演を務めたことのなかった彼女のために脚本を書いた。主人公のキャラクター造形、複雑な心境を作っていくうえで、彼女に助けられたことが沢山ある。人間ドラマ、コメディなどたくみに演じられる素晴らしい才能を持っている、今一番の女優だと思う」とレナーテ・レインスヴェの演技を絶賛した。■アクセル…アンデルシュ・ダニエルセン・リーユリヤの年上の恋人で、グラフィックノベル作家として成功。ユリヤに妻や母として生きることを勧め、身を固めたがっている。演じるのは、『パーソナル・ショッパー』『ベルイマン島にて』のアンデルシュ・ダニエルセン・リー。■アイヴィン…ヘルベルト・ノルドルムパーティでユリヤと出会う若い青年。主にコメディ作品で⾼い⼈気を誇る、ノルウェーの俳優ヘルベルト・ノルドルムが演じる。【詳細】映画『わたしは最悪。』公開日:2022年7月1日(金)監督:ヨアキム・トリアー脚本:ヨアキム・トリアー、エスキル・フォクト出演:レナーテ・レインスヴェ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ハーバート・ノードラム原題:The Worst Person In The World2021/ノルウェー、フランス、スウェーデン、デンマーク/R15+
2022年02月17日スペインのアカデミー賞と称される、ゴヤ賞を主催するスペイン映画芸術科学アカデミーは、ゴヤ賞において「International Goya Award」(国際ゴヤ賞)を創設したことを発表。初の受賞者にケイト・ブランシェットを選出したことを明らかにした。「国際ゴヤ賞」は、「異なる文化や人々を結び付け、媒介者として映画に貢献してきたアーティストを称えるための賞」だという。ケイトは「映画界において並外れた人物」であり、「私たちの記憶に残る、忘れられない役を演じてきた」ことが評価されたという。インターネットでは「ケイトにふさわしい賞!彼女は史上最高の俳優の一人」「本当にすごい俳優。どの映画を観ても異なる英語を話すから、どこの出身か知らなかったけれど、オーストラリア人なんだね」と受賞に「納得」という声が寄せられている。ケイトは、俳優業では、米アカデミー賞を2度受賞し、ゴールデングローブ賞と英国アカデミー賞は3度受賞。その他の賞の受賞歴は数知れず。近年はプロデューサーとしても手腕を発揮している。母国オーストラリアで権威のあるシドニー・シアター・カンパニーの舞台監督を務めたこともあった。本業以外には、環境問題や人道支援にも取り組んできた。国際ゴヤ賞は2月12日に開催される第36回ゴヤ賞授賞式にて、ケイトに授与される。(Hiromi Kaku)
2022年02月07日