私自身、16歳のときにカナダに留学し、ホストファミリーに助けられた思い出があり、いつか私もホストファミリーとして外国の子どもを受け入れたいという思いがありました。そして、昨年8月にブラジル人の17歳の女の子がわが家にやってきました。彼女は6カ月の留学生活を終え、今年1月末にブラジルへ帰国しました。私たち家族は、ホストファミリーの役割を終えひと段落。嵐のように過ぎ去った日々が遠い昔のようです。5か月間という短い間でしたが、ホストファミリーになって気づいたことや、わが家の変化を紹介します。わかっていたけど、食文化の違いはストレス!私自身、英会話には自信があったのですが、今回留学生と生活を共にしてみて言葉だけではない、いろいろな違いを感じました。たとえば、アジア圏だとそこまで違わない食文化ですが、ブラジルと日本となるとそうはいきません。ブラジルでは、豆と肉の煮込み料理とライスを食べる機会が多いそう。はじめての日本食に戸惑うこともあるだろうなと思ってはいましたが、予想以上の食の違いに驚きました。外国では、鶏皮や脂身を食べる習慣がないとはわかっていたのですが、留学生も例外ではなく、肉選びには苦労しました。次にブラジルにもあるけど、個人的に生魚、タコ、イカ、ツナ、貝などの魚介類が好きじゃないと言われ、頭を悩ませることに。海藻は食べる習慣がなく、焼き魚や味噌汁も好きじゃない様子。朝食は、オートミールやパンとシリアルがいいと言われ、お互いに別々のものを食べるなど、食の悩みは最後までつきることがありませんでした。結局、留学生が好きだった食事は、カレーライスとシチュー、餃子、ラーメン、パスタ、オムライス。食べ慣れたものや、味がはっきりしているものが好きなようでした。心のモヤモヤは、話し合いでしか解決しない出したものを食べてくれない、好き嫌いが多いことにストレスに感じていると、コーディネーターの人に相談したところ、正直にその気持ちを伝えてみてほしいと言われました。日本では避けがちですが、お互いの気持ちを正面からストレートに伝えて話し合うことが大事だとのこと。「せっかく日本に留学しているのだから、食べてみないのはもったいない。出されたものを食べてみる努力は必要だし、日本ではそれが作った人へのマナーでもある。食べた上で生理的にムリだったらしょうがない」ということを伝えました。すると「わかった、努力する。だけど朝はパンかシリアルがいい」という返答が。モヤモヤ悩んでいたことも、相手に伝えるだけですっきり。不満やモヤモヤは、話し合わないと解決しないということがわかりました。日本人特有の言いまわしや、相手に遠慮して控えめに伝えるのでは、留学生には伝わりません。ストレートに気持ちを伝えることはことは、決して悪いことではないことだと気づかされました。ただし、話し合ったからといって、その問題が解決するかは別の話ですが…。息子にとって英語が身近に。サッカーにも興味留学生に対する悩みは、SNSばかりする、毎日部屋で英語で電話するなどいろいろとありました。その姿を見て、自分がホームステイしていた頃を振り返ると、私自身決してほめられるような態度でなかったこと、ホストマザーに苦労をかけていたことに気づきました。親になってはじめて親の気持ちがわかるように、ホストマザーになってはじめてホストマザーの気持ちがわかった瞬間でした。留学生を受け入れたことで、5歳の息子が英会話教室へ通いはじめるきっかけになり、苦手意識があった英語も楽しいと言っています。それに、スポーツが苦手だった息子が、留学生とサッカーをしたことがきっかけで好きになりました。プレゼントに買ってもらったサッカーボールで元気に遊んでいます。苦労したことも楽しかったことも含めて、過ぎてしまえばいい思い出。今後もメールしたり、交流が続けられたらいいなと思っています。<文・写真:フリーランス記者三浦麻耶>
2019年04月06日前々からやってみたかったこと…それはホストファミリーになること。アパート住まいの時は空き部屋がなくムリでしたが、一軒家に引っ越した今は一部屋余っているということで、ホストファミリーになることに!今年の8月末、わが家にブラジルから留学生がやってきました。留学生を受け入れようと思ったきっかけ「どうしてホストファミリーになろうと思ったの?」とよく聞かれますが、筆者はカナダに留学していたことがあり、ホームステイは身近な存在。5歳児の息子に世界には日本語以外の言葉を話す人もいるということ、「英語」の存在を意識させたかったということもあり、子どもにとっていい経験になるのでは…と留学生を受け入れることに決めました。それに、ひとりっ子の息子にきょうだいのような存在がいる経験をさせてあげたいという思いもありました。ホストファミリーになるには?旅行者を短期間受け入れる有償ボランティアもありますが、高校生を受け入れるホストファミリーは無償ボランティアです。「ホストファミリー受け入れ」で検索すれば、留学生のコーディネートしている団体が出てくるので、あとは資料請求してフォームに添ってホストファミリー登録するだけ。私が選んだ団体は5か月か10か月の受け入れを選べ、「いきなり10カ月だと負担が大きいかな?」と、5か月間の受け入れを希望しました。私はキャパオーバー、息子は赤ちゃん返り⁉︎留学生がやってきて、私にも子どもにも大きな変化が。最初はどの程度日本語が話せるか分からないので、会話はほぼ英語。会話が分からない息子は、話に割り込んでこようとしたり、わがままを言ってみたり、ちょっとした赤ちゃん返りの状態に。私も役所での手続きや学校への挨拶の付き添いに加え、15年ぶりの英語にキャパシティがいっぱいになっていて、1週間ほどは息子を構う余裕がありませんでした。また、最初のうちはいろいろと手を貸す必要があり、まさに大きい子どもがひとり増えた感じでした。息子は公園でサッカーをしたり、食事の世話をしてもらったり。まさにきょうだいができたような毎日。留学生が修学旅行で不在のときは「どこにいるの?」「いつ帰ってくるの?」と気になってしょうがないみたいでした。英語が苦手な5歳児が変わってきた⁉︎留学生が来る前までは「英語わからないんだよね〜」と、バイリンガルで放送されているアニメを英語に切り替えると「わからないから日本語にして!」と怒っていた息子。それが今では文句を言わずに英語で観ています。それ以外にも幼稚園の英語遊びで覚えてきた英語の歌を歌ったり、「how do you say 〇〇 in English?」(英語で○○はなんて言うの?)というフレーズを使って英語に興味を持ったり。留学生に英語を教えてもらうと、たまにびっくりするくらいいい発音! 「子どもってなんでもすぐ吸収できるんだな〜」と感心して見ているところです。そして、寝る前の「good night」は欠かさない息子。留学生と過ごす残りの2か月。ホストファミリー生活の中でどんな変化が待っているのか楽しみです。<文・写真:フリーランス記者三浦麻耶>
2018年11月27日世界各国の留学生を、家族の一員として受け入れる「ホストファミリー」。異国の文化に触れられる、お金をかけずに英語を学べる、というメリットがある一方で、他人と暮らす上でのトラブルも気になるところです。そこで、ドイツ人留学生を10カ月間受け入れた、主夫で漫画家のムーチョさんにインタビュー。ホストファミリーとしての日常や娘さんの反応など、体験談を聞きました。■娘たちの英語教育のために、15歳ドイツ人留学生のホストファミリーに――最初に、ホストファミリーになったきっかけを教えてください。ムーチョ:わが家には現在、10歳と8歳の娘がいます。僕も妻も帰国子女ということもあり、『英語を話せるようになって欲しい』という思いが強く、スカイプ英会話やアフタースクール(学童保育)などさまざまな方法を試行錯誤していました。娘たちはそれなりに楽しんでいましたが、肝心の語学力があまり伸びない。やはり、1日の大半を過ごす家庭の環境を変える必要性を感じたんです。そこで、Airbnbのホストに登録して、外国人旅行者を受け入れることにしました。――家の中に外国人がいれば、自然と英語を聞いて話すようになる、ということですね。家に知らない人を泊めることに、奥さまの反対はなかったのでしょうか。ムーチョ:妻は当初、反対していました。でも、説明会に連れて行ってセキュリティの話を聞いたり、僕自身がAirbnbの良さをプレゼンしたりするうちに、理解してくれるようになりました。ホストは1年半ほど続けたんですが、みんな良い人ばかりで楽しい経験でしたね。とはいえ、やはり数日〜1週間程度でいなくなってしまうので、人間関係を築くのは難しい。当時住んでいたマンションでAirbnbが禁止されてしまったこともあり、長期で受け入れるホストファミリーに興味を持つようになりました。そんな時にたまたま近所で開かれていたホストファミリー仲介業者の説明会に参加したところ、紹介リストに載っていた留学生がこちらの希望にぴったりだったんです。――15歳のドイツ人の女の子ですよね。どういった点が希望と一致していたのでしょうか。ムーチョ:娘たちに英語を学ばせるのが目的ですから、英語が得意なことは第一条件です。一般的にドイツ人は英語が上手ですし、発音もきれいなんですよ。若い方が娘たちと仲良くなりやすいと考えたので、15歳という年齢もベストでした。――他人と同じ家で暮らす、という点に不安はありませんでしたか?ムーチョ:やはり最初は不安でしたから、「まずは3カ月間だけ」という契約にしました。最初はお互いに気をつかっていましたが、1カ月が経った頃には他人という感覚がなくなり、家にいるのが自然になりましたね。とても良い子でしたし、10カ月まで継続することにしたんです。実は、家の中に、第三者がいることにはメリットがあって、子どもを怒鳴ったり夫婦ゲンカをしたりということがほとんどなくなったんですよ。人前で大声を出すのは、やはり恥ずかしいですからね。言い合いではなく話し合いをするようになったことで、家の中の雰囲気が良くなりました。 ■子どもたちの英語を学ぶ動機付けに! 留学生を通し世界を知った10カ月間――ホストファミリーとして、主夫であるムーチョさんの役割は大きかったと思われます。ご自身のライフスタイルに変化はありましたか?ムーチョ:基本的に、ホストファミリー側がライフスタイルを変える必要はないんですよ。「お弁当に肉が多い」と言われたことがあったんですが、娘たちは肉が大好き。僕は毎朝3人分のお弁当を作っているので、彼女のために別のものを用意することはしません。 「食べないなら仕方ないね。でも変えないよ」というスタンスです。――15歳というと難しい年頃ですし、トラブルはなかったのでしょうか。ムーチョ:朝寝坊するとか、手伝いをサボるとか、小さなトラブルはたくさんありましたよ。彼女は背が高くて見た目は大人みたいでしたが、中身はまだまだ子ども。娘たちと同じように叱っていたので、「うざい」と思われていたかもしれません。例えば、露出の多いファッションを注意したら、「日本人は気にしすぎ」と言われ、「ここは日本だから合わせるべきだ」と言い合いになったこともありました。しょせんは他人同士なので、意見をすりあわせるのは大変。でもその分、分かり合えた時の喜びはひとしおでしたね。――娘さんたちも、仲良くなれましたか?ムーチョ:次女はすぐになついて、いつも一緒に遊んでもらっていました。長女とは趣味が合うようで、一緒にアニメのイベントなどに出かけていたようです。娘たちと仲良くしている姿を見るのは、親としても楽しく幸せな気分でしたね。ただ、彼女が日本語を身につけるスピードがとても早くて、娘たちとの会話は日本語になっちゃったんですよ。なので、英語力は思ったほど伸びなかったのですが、英語・ドイツ語・日本語を操る彼女を通して語学の大切さを学べたのが何より大きいと思います。海外に行って、外国の人と話すのは楽しい。楽しむためには英語を勉強するのが必要不可欠。というように、英語を学ぶための、長期的な動機付けができたと思います。――今後もまた、ホスフトファミリーをやりたいと思われますか?ムーチョ:もちろんです。彼女が帰国して以来、「38歳になってこんなに寂しいことがあるのか」という気持ちを味わっています。妻の方は割とドライなんですが、一緒にいる時間が一番長かった僕が一番つらいんですよね。10カ月間ホストファミリーをやってみて気づいたのは、情報の少なさ。そこで、Facebookで、ホストファミリーが情報交換できるグループ ホストファミリー・ジャパン を立ち上げたんです。例えば、僕が利用していた仲介業者では毎月1万円が支給されていたのですが、調べてみると1日2000円のところもあるんですよ。そういった情報も、知らないと損をしてしまいます。日常のちょっとした悩みやトラブルなども、ホストファミリー同士で気軽に話し合える場にしたいと思っています。ムーチョ:なかには『英語が話せないから』とか『部屋が狭いから』とホストファミリーを諦めている人もいますが、まったく問題ありません。言葉が通じなければスマートフォンの翻訳アプリなどを使えばいいですし、お子さん2人と同じ部屋に留学生を受け入れている家庭もあります。お金をかけずに英語や異文化が学べるホストファミリーを、ぜひみなさんにもおすすめしたいと思っています。ムーチョ PROFILE主夫歴約10年。WEB漫画家。慶応義塾大学卒業後、オリエンタルランド人事部を4年で退職し、2007年より専業主夫として家事・育児全般を担当。ウェブ漫画を執筆しながら、外国人留学生を受け入れるホームステイを身近にする活動をしている。・ ホストファミリー・ジャパン ・ ムーチョ ・ 育児と家事4コマ漫画ブログ「カタルエ」
2017年09月10日