東京医科歯科大学はこのほど、同学の難治疾患研究所・幹細胞医学分野の西村栄美教授らの研究グループが「加齢による薄毛・脱毛の仕組み」を解明したことを明らかにした。同研究成果は、国際科学誌「Science」の2月5日号に発表されている。人間の皮膚は加齢に伴って次第に薄くなり、毛も細く次第に減少していく。これまで老化研究は盛んに行われているが、実際に生体内でどのような変化がおこっているのかは不明で、なぜ老化するのかその仕組みについての解明は困難と考えられてきたという。今回、同研究チームは毛を生やす小器官である毛包(もうほう)が、幹細胞を頂点とした「幹細胞システム」を構築していることと、マウスにおいても加齢によって薄毛が見られることに注目。加齢による薄毛脱毛のしくみを明らかにするために、マウスの毛包幹細胞の運命を生体内で長期にわたって追跡し、ヒトの頭皮の加齢変化と合わせて解析した。その結果、幹細胞を中心とした「毛包の老化プログラム」が存在することがわかった。毛周期ごとに毛包幹細胞が分裂して自己複製すると同時に、毛になる細胞を供給する。その際に生じたDNAの傷を修復するための反応が、加齢に伴って長引く細胞が現れる。このような毛包幹細胞においては、毛包幹細胞の維持において重要な分子であるXVII型コラーゲンが分解される。XVII型コラーゲンの分解により、毛包幹細胞が幹細胞性を失ってしまうと、毛をつくる幹細胞が表皮となって落屑(フケ・垢として脱落)する。これにより毛包幹細胞プールとそのニッチが段階的に縮小し、毛包自体が矮小化(ミニチュア化)するため、生えてくる毛が細くなって失われていくことが明らかになった。研究チームは、毛包幹細胞が幹細胞性を失って表皮角化細胞へと分化するよう運命づけられることをマウスで見出し、ヒトの頭皮の毛包においても同様の現象を確認したという。また、マウスの毛包幹細胞においてXVII型コラーゲンの枯渇を抑制すると、一連の加齢変化を抑制できることがわかった。同学は「この研究成果は、老化の仕組みについて新しい視点を与えると同時に、脱毛症の治療法の開発やその他の加齢関連疾患の治療へとつながることが期待できるものと考えられます」とコメントしている。
2016年02月05日-------------------------------------------大学1年生のみなさん! 「大学デビューのホントのところ」、知りたくないですか? 本連載は、かつて大学デビューに半分成功・半分失敗したトミヤマユキコ(ライター・大学講師)と清田隆之(恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表)が、過去の失敗を踏まえ、時に己の黒歴史を披露しながら、辛く苦しい学生生活を送らないためのちょっとした知恵をお授けする。そんな連載です。-------------------------------------------○「なんでもできそう」の罠12月です、師走です。師=教員も大忙しのシーズンですが、学生だっていろいろと忙しいですよね。クリスマスや年末年始のお楽しみで忙しいだけでなく、この時期は、2年生からの専門課程をどうするか決めねばならない大学が多いため、そっちで頭を悩ませているひともいるハズ。ということで今回は、失敗の少ない進級の仕方について考えてみたいと思います。AコースとBコースの2択です、ということならわりと話は早いのですが(それでもかなり悩むとは思いますけど)、5つも6つも選択肢があると、当然一発では決められなくなってきますよね。「やりたいこと」がハッキリしていない学生ほど、悩む時間も長引いてしまいます。その結果「なんでもできそう」なコースの人気が高くなるわけですが、これは大いなる罠です! 気をつけて!「やりたいこと」がまだよくわからないから、いつか「これだ!」となったときに、なんでもやれるような、いろいろなジャンルの学問が学べるマルチなコースにいれば安心……その気持ち、痛いほどよくわかります。実際、マルチなコースの人気は年を追うごとに高まってきています。○「なんでもできそう」は「なんにもできない」しかし「なんでもできる」は、かなりの確率で「なんにもできない」と直結しています。たとえば、和洋中なんでもあるバイキング(ビュッフェ)を想像してもらいたいんですが、あれって結局、料理がどれだけ美味しくても、自分で皿に盛りつけた瞬間から素人感丸出しのゴチャゴチャプレートになっていくじゃないですか? なにこれ、エサ? みたいな感じになってるひと、いっぱいいますよね?あれをキレイに盛りつけるには、相当のセンスと鍛錬が必要。それと同じで、マルチなコースを選択するのであれば、それを使いこなすだけのセンスが学生の側にないとダメなんです。そして、いまの時点で「やりたいこと」が見つかっていないようなぼんやりさんは、たいていそのセンスを持っていない!……となると、マルチなコースには、一部のセンスある系学生と、その他大勢のぼんやりさんが集まってくるのであって、そこで繰り広げられるのは、センスある系学生の台頭と、彼らを見て劣等感を募らせるぼんやりさんの凋落。この格差をみることほど、教員にとって辛いことはありません。だから言いたい。ぼんやりさんこそ偏っておけ! と。バイキングよりもまずはフレンチのコースだけをがんばって食べなさい! と。じつはわたし自身、過去に苦い経験をしているのです。学部生のころ(法学部でした)、なんとなく偏りの少ないコースにいたほうがいいだろうと、自分では賢い選択をしたつもりで民法コースに進み(憲法や刑法はマニアックというイメージが支配的だったため)、その中でもさらに柔軟性が高いことで知られるゼミに入ったのですが、もう柔軟性が高すぎて、「○を極めました」と言えることがなにひとつない!いや、副幹事長として運営とかは相当がんばった……コミュ力もアップした……それは嬉しいけど、でもそれって、ほかの場所にいてもできたことだし、もはや学問関係ないんですよね。いまから考えたら著作権法のゼミとかに入っておくべきだったとわかるのですが、後の祭りでございます(泣)!○ぼんやりさんこそ偏りが必要他のことならともかく、学問に関して、最初から「浅く広く」ができる学生は、そう多くありません。就職への不安などから、ついあれこれ学べるコースに惹かれてしまいそうな時こそ、そうした環境を本当に使いこなせるかどうかを己に問うてみてください。そして、ぼんやりさんに偏ってみることをオススメする理由がもうひとつあります。それは、一回がっつり偏っておいたほうが、本当にやりたいことを見つけやすいということ。ここでいう「偏る」とは、ある系統だった学問領域について専門的に学んでゆくことを指していますが、その過程でかならず「これ向いてる!」「これ無理!」と思う瞬間が出てきます。向いてることに気づけたら、儲けもの。そして無理なことに気づくのも、とてもいいことです。何が好きで、何が嫌いか、何が得意で、何が苦手か。得意を伸ばす方がいいのか、苦手を減らす方がいいのか……こうした自己分析はすべて「とりあえず偏ってみる」ことでしかはじめられないのです。偏るとか、ある一定の型に嵌められる、というのは、抑圧されることです。しかし、抑圧があってこそ、そこから自由になろうとする強い心が育まれると、わたしは言いたい。キツすぎて病んじゃうほどの抑圧からは全力で逃げるべきですが、筋トレだと思えるレベルの抑圧については、引き受けておくに越したことはありません。たぶん、みんな将来が不安なんだと思います。だから自分の中にいくつもの可能性を持っておきたいんだと思います。しかし、偏ることをむやみやたらと恐れるひとより、己の偏りを知り、得意分野ではバリバリ活躍して、苦手分野では誰かに頼ることを恥ずかしがらないひとの方が、重宝されるし、愛されます。なぜ愛されるのか? それは「偏り」というのが「個性」の別名だからです。学生としてどんな偏りを身につけられるか、いかに面白く&チャーミングに偏っていくか。そこを考えることが何より大切なのではないでしょうか。トミヤマユキコライター・大学講師。「週刊朝日」「文學界」でブックレビュー、「ESSE」「タバブックス」でコミックレビューの連載を持つライター。早稲田大学などでサブカルチャー関連講義を担当する研究者としての顔も持っている。「パンケーキは肉だ」を合い言葉に、年間200食を食べ歩き『パンケーキ・ノート』(リトルモア)にまとめた。Twitter @tomicatomica清田隆之/桃山商事1980年、東京生まれ。失恋ホスト、恋のお悩み相談、恋愛コラムの執筆など、何でも手がける"恋バナ収集ユニット"「桃山商事」代表。男女のすれ違いを考えるPodcast番組『二軍ラジオ』を更新中。雑誌『精神看護』やウェブメディア「日経ウーマンオンライン」「messy」などでコラムを連載。著書に『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)がある。Twitter @momoyama_radio
2015年12月09日誰もがおひとりさまになりやすい現代、血縁や地縁といった強い絆よりも、“ウィーク・タイズ”と呼ばれるゆるい人間関係が人生を切り開いてくれると語るのは、東京大学教授の玄田有史さんです。ニートや引きこもりなど若者の労働問題を調査・研究する中で、“孤立化”の問題と向き合ってきた玄田さんに、おひとりさまが本当の意味で“孤立”してしまわないための生きるヒントを、前編に引き続き伺いました。前編「ゆるくつながる“第三の居場所”を確保しよう」はこちら感情・勘所・人生観をとぎすませ!玄田有史さん――前回、現代人には“ウィーク・タイズ”と呼ばれるゆるいつながりが重要になるというお話を伺いました。おひとりさまが生きていく上で、他に意識していた方がいいことってありますか?玄田:“ウィーク・タイズ”を結ぶには、“心の窓”を閉じないことが大切。そのためには、ネット上ではなくて、やっぱりリアルでの出会いが必要だと思うんです。しゃべり方とか表情の微妙なニュアンスって、まだ直接のコミュニケーションじゃないと伝わらないじゃないですか。5年後、10年後には、ネットの表現力ももっと多様になっているかもしれないけど。以前、一年に何度も佐渡ヶ島へ行く女性に、「なんでそんなによく佐渡ヶ島に行くの?」って聞いたら、「季節ごとに違う佐渡の匂いがするから」みたいなことを言ってました。なんか素敵な人だな、と思っちゃった(笑)。――いいですね、詩的な感性です(笑)。玄田:今は、現地に行かなくても映像や音は疑似体験ができる。でも、言われてみれば確かに“匂い”だけは、実際にその場にいないと体感できない。おいしいけどどうしても空気が合わないお店とか、性格や価値観が違うのにどうしても離れられない恋人とか、そういうのって、言葉やデータでは絶対に表せない雰囲気やニュアンスでしか判断できない。それって結局、生身でしか味わえない匂いや肌触りのことだったりするわけです。そういう感覚を大切にできる人って、幸せだと思う。そういう“カンを磨く”っていうのは大事でしょう。引きこもり当事者を支援している人に教えてもらったんだけど、人間には“3つのカン”が大事なんだそうです。――なんですかそれは?ぜひ教えてください。玄田:ひとつめは、“感情”の“感”。嬉しい、悲しい、楽しい、悔しい……といった喜怒哀楽を、しっかりと自分の中で自覚すること。悔しいときは悔しいって叫んでいいし、嬉しいときは興奮して人に見られたら恥ずかしいようなことをしてもいい。そうやって自分の感情を常に磨いておかないと、いざというときに心が動かなくなっちゃう。2つめは“勘所”の“勘”。「こんなことしたら危ないな」とか、「こうすればバレないな」っていう、言語化できないさじ加減。これを身につけるためには、「あの一杯でやめときゃ二日酔いにならなかったな」みたいな痛い失敗経験も必要になる。そして、最後の3つめが“人生観”の“観”。「あなたはどう生きていきたいの?」って急に聞かれても、誰も簡単には答えられないだろうけど、“感情”を磨いて、“勘所”を身につけていくと、だんだん「私はこういう風に生きていくんじゃないかな」っていうのが見えてくると思う。この“3つのカン”は、常に意識して磨いていった方がいいと思う。――その3つは、“感”→“勘”→“観”の順番に、ピラミッド型の構造になっているのでしょうか?玄田:そうかもしれません。“感情”が磨かれていないと、“勘所”が身につかない。“勘所”がそなわって、初めて“人生観”もはっきりしてくるのかもしれない。――でも、ネット上で知り合って、オンラインだけでやりとりしているような関係では、“3つのカン”を磨いたり、“ウィーク・タイズ”を結んだりすることはできないんですか?玄田:オンラインでのつながりって、案外“ストロング・タイズ”になっちゃうんじゃないですか。インターネットって、最初は世界中と自由にゆるくつながれるものだと思っていたけど、結局みんながネットで見ているものや参加しているコミュニティって、固定化されていてすごく閉じている感じがする。いつも行く常連のお店みたいで。それはもう“ストロング・タイズ”ですよ。常連の店に行ってもいいけど、そこでいつものマスターと話し込むんじゃなくて、ふらりと入ってきたひとり飲みの客同士が、一期一会で肩の力が抜けた雑談をして楽しかったって言える社会の方が、僕はずっといいと思いますけどね。――でも、雑談しているときとか、この時間って得なのかなとか、意味あるのかなって考えてしまうんですよね。玄田:雑談ってすごく大事でしょう。それに、意味なんか考えてたら、友達なんか作れない。ある新聞記者に、「希望を持つのに一番大事なものは何でしょうか?」って聞かれたことがあって、「それは遊びでしょう」と答えたら、「先生がおっしゃる遊びの意味がわからないので、教えてください」って。遊びに意味を求めるのかと思って、現代の息苦しさはこれだと感じました。遊びなんて、意味があるかどうかわからないから遊びなんです。意味があるからやるのは、遊びじゃなくて仕事でしょ。意味があるか、価値があるかなんて、後からわかること。そういうことをするのが現代人はちょっと苦手になっているんじゃないでしょうか。――すぐ身になることがしたい、すぐ役に立つことを知りたい、なるべくコスパがいいほうを選びたい、というのが最近の風潮ですよね。それだけ余裕がなくなっているのかもしれません。玄田:そのほうがスマートだし、それも悪くないと思うけど。でも、そう思ってたって、どうせ人生ってそんなにうまくはいかないですよ(笑)。安心・安定ばかり求めているとすぐ老けちゃう?玄田:僕、安心って嫌いなんですよ。特に、まだ若いのに安心や安定を求める人には、そんなのやめとけよと言いたくなる。明日何が起こるんだろう、どんなトラブルが降り掛かってくるんだろうって、心がザワザワするくらいのほうがいいですよ。あんまり安心ばっかり求めていると、すぐ老けますよ。――「安心を求めているとすぐ老ける」って、おもしろいですね。玄田:歳を取ると一年がどんどん短く感じるようになるじゃないですか。あれにはちゃんと理由があって、毎日がルーティンになって、先が予測できてしまうからだそうです。ほら、知らない場所に旅に行くと、行きよりも帰りの方が圧倒的に時間が短く感じるでしょう?あれと同じなんです。だから、安心ばっかり求めていると、若いのに“帰り道”みたいな人生になっちゃう。自分の中に予測できない部分を持っていないと、人生なんてすぐ終わっちゃいますよ。――たとえば、人生において予測できない要素ってなんですかね?玄田:愛じゃないですか(笑)。最近は、若者があまり恋愛しないとか言われているけど、たぶんそのほうがラクで安心だからだと思うんです。それは決して悪いことじゃない。ないけど、少なくともザワザワはしない。予測できない人と付き合うと、きっとへとへとに疲れるだろうけど、予測できちゃうような人とばかり付き合ってても、つまらないんじゃないかな。もちろん、どちらがいいかは自由だけど。確かに、安心や安定を取るのはラクだけど、若いうちは、わからないことや不安なことを面倒くさがらないほうがいいですよ。だって、生きるって基本的にぜんぶ面倒くさいことだから。それを嫌がってたら、年寄りと一緒です。――おひとりさまの中には、結婚しなくてもこの先大丈夫だろうかと不安に感じている人もいると思います。今のお話を聞いていて、そんなとき「別に安心を取らなくてもいい」と思えたら、少しは気がラクになるんじゃないかなと思いました。玄田:考え方の問題かもしれないけど、先のことがわからないからといって不安になるよりは、先のことがわからないから面白いんじゃないのって思えるかどうかじゃないのかな。あと、おひとりさまで生きていくには、妄想力や想像力がとても大事になってくると思う。おひとりさまは、家族や友だちが先に死んでしまうかもしれない、いざというときにひとりで野垂れ死にするかもしれない、という最悪の事態を常に自分で想像しないといけないわけでしょう。それが嫌だなと思ったら、そうならないように、今できるだけのことを全力でやって、後はどうなってもしょうがない、と祈るしかない。きっとこれからは、そういう生き方や気の持ちようが必要とされていくような気がします。――悲観的でも楽観的でもなく、粛々と自分の人生を生きられたらいいですね。玄田:結婚しなくたって、良いことも悪いこともあるし、結婚したらしたで、良いことも悪いこともある。おひとりさまだからって、自己卑下する必要はないけれど、正当化しすぎる必要もない。自分のことに満足してる人よりも、なんだかなあ、しょうがないなあって思いながら生きている人の方が、なんか信用できませんか?(笑)僕は“まんざらじゃない”って言葉が好きなんです。死ぬときに「私の人生、幸せだった」と言い切って死んでいけたらそりゃいいけど、そんなこと本当にあるのかなって思うんですよね。「まあ悪くなかったな、まんざらじゃなかったかな」くらいの生き方でいいんじゃない?人生の勝ち負けなんて、だいたい五分五分だし。――そう考えたら、少し楽に生きられるかもしれませんね。玄田:知り合いの老人に「夢を持ったまま死んでいくのが夢だ」と言った方がいて、すごくいいなと思ったことがあります。たとえば、芸術家が「これが自分の最高傑作!やりきった!」なんて言ってたら、生きているけど“終わってる”人なんだなって思う。それだったら、無念だった、叶わなかった、もっとできたのに……って思いながら死んでいくほうが、よっぽど素敵だと思うんです。――幸せにしろ、成功にしろ、達成しちゃったと思ったら終わりですもんね。常に“まだ途中だ”と思い続けるからこそ意味があるというか。玄田:そうそう。もちろん、孤立化というのは、国が政策や制度によって対応していかないといけない問題ではあるんです。親が死んだ後に食っていけなくなって生活保護を受ける人や、今では高齢者の引きこもりもとても多い。ただ、おひとりさまが増えているのはある意味、社会の成熟の証でもあると思うんです。“ストロング・タイズ”の話と同じで、「組織があってはじめて人は幸せになれる」という考え方から、「組織に所属していれば安心、という生き方はもう限界かもしれない」というふうに、社会が変化してきている過渡期ならではの現象という気もする。だから今、自らすすんでおひとりさまを選んでいる人たちは、時代のフロンティアなのかもしれない。そういう人たちが「まんざらじゃなかったかな」って思いながら死んでいける世の中になってほしいんです。text/福田フクスケ玄田有史(げんだ・ゆうじ)1964年、島根県生まれ。東京大学社会科学研究所教授。専攻は労働経済学。若年者の失業問題に迫り、雇用の本質的な問題提起をした『仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在』(中央公論新社)で、サントリー学芸賞を受賞。ニート(若年無業者)の問題を日本に知らしめた第一人者としても知られ、希望を個人の内面ではなく社会の問題としてとらえる「希望学」を研究・提唱している。主な著書に『孤立無業(SNEP)』(日本経済新聞出版社)、『希望のつくり方』(岩波新書)など。
2015年12月08日住宅設備・建材の総合メーカーであるLIXILは12月2日、東京大学大学院 情報学環ユビキタス情報社会基盤研究センター長である坂村健教授と共同で、住生活におけるIoTの活用に向けた「LIXIL IoT House プロジェクト」を開始したことを発表した。同社は、2020年までに「世界で最も企業価値が高く、革新的で信頼されるリビングテクノロジー企業となる」というビジョンを掲げており、このビジョンのもと、これまでも人やモノ、家が情報で結びついた「住生活の未来」について研究を重ねてきた。2009年に研究を開始した研究施設「U2-Home(ユースクウェアホーム)」では、センサーを使用し、生活シーンに合わせて住環境をコントロールするなど、情報化された住まいでの生活について研究してきた。LIXIL 代表取締役社長 兼 CEOの藤森義明氏は、「LIXIL IoT House プロジェクト」の開始に至った経緯について、次のように説明した。「われわれの競合や未来について考えたとき、今の競合相手は10年後、20年後の競合相手ではないだろう。今と同じ延長線上の2030年や2040年を考えると、今とはまったく違った競合がビジネスを持って行ってしまうのではないだろうか。本当の競争相手は、メーカーではなく、IoTやビッグデータを持っている大きな会社や、ソフトとハードを組み合わせていくような技術を持つ会社だ。今まさに、新しいことを考え出さないと、10年後、20年後の未来はなくなってしまうかもしれないという危機感が、IoT House プロジェクトを立ち上げるきっかけとなった」(藤森氏)本プロジェクトでは、社員モニターを活用した実生活での検証や、理想モデルに基づく実証実験施設での検証などを通じて、住まいの中でのIoTの可能性を追求していくとしている。LIXIL 取締役 専務執行役員 R&D本部長の二瓶亮氏は、住まいのIoTの可能性について、次のように述べた。「IoT Houseによって、新しい住生活や生活価値の向上、家自体の性能の向上、さらには今まで以上に地域社会とつながる豊かなコミュニティ社会の実現へと広げていくことができるだろう。例えば、人の排泄物にはたくさんの健康情報が含まれており、この情報をトイレがセンシングすることで、健康状態を人に伝えたり、予防医療や健康管理へつなげていくことができる。また、IoTで獲得した情報を使って、家の中で人の動きを見守り、安全・安心な暮らしの実現や、家の実年齢を把握しながら、最適な手当をすることで、家全体の性能の向上を図ることができる。さらに、IoT Houseを介して家に住まう人同士や、人と人とのつながりを地域コミュニティにつなげていくことで、リアルな社会での関わりが広がり、世の中を明るくすることにも貢献できるだろう」(二瓶氏)また、住まいのIoTに大切なこととして、「いつまでも使い続けられること」「プライバシーが守られていること」「非常時でも困らないこと」「簡単に設置し、簡単に使えること」が挙げられ、これらのポイントがクリアされるよう、検証を進めていくという。約30年前から住宅の未来について研究を重ねてきたという坂村教授は、今回のプロジェクトについて次のような意気込みをみせた。「80年代と比べて何が変化してきたかというと、コンセプトや機能は同じでも、実装技術が非常に変化してきた。例えば、半導体の大きさやネットワーク技術の進歩である。昔はコンピューターとセンサーをつなぐには大量の電線が必要だったが、IoT Houseは無線でつながってしまうだろう。すべてのものがインターネットにつながっているということは、住宅の部品全部が直接的に、インターネットに直結できる時代だということ。これは今までできないことだった。しかし、この部品が大量生産されないと、IoTの住宅を一般に普及させることはできない。IoTが住宅に適用できるかどうかは、部品メーカーにかかっている。これまでの研究の知見をこのプロジェクトにたたきこむことによって、LIXILと世界最高の住宅をつくる。2017年には、その時点で考えられる最高の未来住宅をつくる」(坂村氏)今後のロードマップとしては、まず第1フェーズ(2015年~2016年)で構想・予備実験を行い、第2フェーズ(2016年~2017年)では実証環境の構築、そして第3フェーズ(2017年~)では、実際に実証実験による有効性の検証が実施される予定となっている。
2015年12月03日大阪市立大学はこのほど、魚が顔の模様の違いで他個体を識別することを実証したと発表した。同成果は同大大学院理学研究科の幸田正典教授の研究グループによるもので、11月26日に米科学誌「PLOS ONE」のオンライン版に掲載された。魚類にも相手を視覚で識別している種類がいることは知られていたが、相手のどこを見て識別しているのかはわかっていなかった。今回の研究では、個体ごとに異なる顔の模様をもち、相手を視覚で識別するタンガニイカ湖のカワスズメの一種「プルチャー」を用いた検証実験を実施した。「プルチャー」は縄張りをもち、隣の顔見知りには寛容だが、知らない相手には非常に攻撃的になる。実験では、モニター画面上の隣人と他人の画像を水槽越しに見せたところ、実験個体は隣人モデルはあまり警戒しなかったが、他人モデルは長時間警戒し、モニター画像でも隣人と他人を区別できることがわかった。次に、隣人の顔画像を他人の全身画像に貼ったモデルと、他人の顔画像を隣人の全身画像に貼ったモデルを作成して見せたところ、隣人顔のモデルでは警戒時間が短く、他人顔のモデルでは警戒時間が長かったことから、「プルチャー」が相手の顔の模様の違いを見分けて個体を識別していることが示された。さらに、およそ0.5秒で峻別できることもわかり、同研究グループはこれらの結果から同種の顔認識能力はヒトにも劣らないものであるとしている。また、同研究グループは同じ個体が何度も出会い個体識別能力をもつとされる魚種の顔には個体ごとの独特の模様が見られ、同じ個体が繰り返し出会わず個体識別が必要ない魚種には顔模様が見られないことを発見し、このことから視覚で個体識別する魚種の多くは顔の模様で識別していることが示唆された。
2015年11月26日慶應義塾大学は、同大学医学部内科学教室(循環器)の福田恵一教授、髙月誠司准教授らが、Appleの医学・医療研究および健康リサーチ向けに設計したオープンソース・ソフトウエアフレームワーク「ResearchKit」を利用して、国内で初めてiPhoneを用いた臨床研究を開始したことを明らかにした。ResearchKitを使って木村雄弘特任助教が開発した、不整脈・脳梗塞を早期に発見し、生活の質を守ることを目的とするアプリ「Heart & Brain」を利用して、Apple Watchが記録した心拍数のほか、歩数、運動量などのヘルスケアデータを収集、データを解析することで、病気の早期発見に結び付けられるかどうかといった検討を進めていく。心房細動という不整脈は、脳梗塞のリスクを約5倍にする可能性が示唆されており、脳梗塞で入院した患者の5分の1に心房細動が潜んでいるとも言われている。心房細動が原因で起きる脳梗塞はしばしば重症であり、命に関わることが多いため、早期診断と早期予防が肝心なのだが、必ずしも症状を伴うとは限らないので、発見が困難な面がある。そこで、高機能なセンサーを搭載するiPhone、Apple Watchを利用し、ヘルスケアデータを収集する方法が採用された。臨床研究には自由に参加することができ、被験者には、効率的な医学情報構築の可能性を評価するため、不整脈、脳梗塞のリスク、生活の質に関する質問票に回答してもらう。iPhone/Apple Watchのセンサーが日常集積したデータを解析し、脳梗塞検出に役立つ可能性のある運動評価検査も行っていくとのことだ。なお、収集されたデータは、個人が特定できない形で保存され、機密保持に万全を尽くして取り扱われる。臨床研究データ解析以外の目的に使用されることもない。前述した通り、研究への参加は自由意思によるものなので、データ送信前であればいつでも研究への参加を中止することができる。研究協力への費用負担も発生しない。本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業」の支援によって行われている。「Heart & Brain」アプリの配布は既に始まっており、App Storeから無料でダウンロードできる。
2015年11月26日大日本印刷(以下、DNP)は10月23日、東京大学出版会(以下、東大出版会)および丸善と共同で、大学教員の授業スタイルに合わせたオリジナル教材を、紙と電子を問わず、最適な媒体で提供する「大学・大学教員向け教材開発支援サービス」を開始した。同社によると、大学における講義の短期化(クォーター制の実施など)やアクティブ・ラーニングの普及など、教育・学修環境が変化する中で、大学の教科書の利用頻度や販売部数が減少傾向にある一方、講義内容に合わせて教員がオリジナル教材を作成して学生に配布するケースが増加しているという。しかし、教材制作やその際に使用するコンテンツの著作権処理、配布作業などで教員の負荷が高く、その負荷低減のために、オリジナル教材の制作・出版、販売・流通を一貫して行うサービスが求められていた。このたび提供を開始する「大学・大学教員向け教材開発支援サービス」は、教材として有効な図書や学術論文、Webサイトの情報などを活用し、コンテンツの獲得から制作、出版、販売・流通までを3者で担うことで、印刷物や電子の教材として提供するもの。制作した教材は、授業に合わせて、プリントオンデマンドを活用した紙の書籍と電子書籍のどちらでも提供可能なほか、教材にISBNコードを付与し、教員の研究成果として、授業以外の出版市場での販売をサポートすることもできる。また、大学などの教育機関に対し、学内のスタッフが教員の教材制作・出版の相談を受けたり、Web入稿・簡易編集システム運用のサポートを行う教材開発センターの設置や大学出版会の設置を支援していく。なお、DNPが教材の制作・流通のためのシステム開発と提供を、東大出版会が教材編集・教材制作とそれに関連する著作権処理などを、丸善が教材作りの営業と制作した教材の販売を担当する。3者は今後、丸善を窓口に教員および大学(教育機関)単位で販売し、年間1億5,000万円の売上を目指す考えだ。
2015年10月23日スウェーデンのカロリンスカ研究所は10月5日、今年のノーベル医学・生理学賞に北里大学の大村智 特別栄誉教授ら3名を選出したと発表した。今回は、アイルランドのWilliam C. Campbell氏、中国のYouyou Tu氏との共同受賞で、大村特別栄誉教授は抗寄生虫薬のエバーメクチンを発見した業績が評価された。エバーメクチンから開発されたイベルメクチンはアフリカなどの感染症に対し大きな効果をあげている。同教授はこれまでにも、2014年に医学への顕著な業績に与えられるガードナー国際保健賞を受賞するなど、寄生虫病に対する治療法の研究で国際的な評価を得ていた。
2015年10月05日東京医科歯科大学はこのほど、同大学難治疾患研究所生体情報薬理学分野の古川哲史教授らの研究グループが、国立循環器病研究センターや理化学研究所などとの共同研究によって、運動中の突然死に関連する新たな遺伝子をつきとめたことを明らかにした。マラソンなどの運動中において、約1万人に1人の頻度で突然死が発生しており、その原因としては肥大型心筋症などの遺伝性疾患の関与が知られている。心臓に一見異常がない人でも、運動時の突然死は同程度の頻度で見られるが、その原因はほとんど分かっていないという。心臓には、静脈から血液を受け取る心房と動脈に血液を送り出す心室があるが、そのメカニズムは異なっている。心房は下方に位置する心室に血液を送るため、電気信号が上から下に伝わるが、心室は上方にある大動脈・肺動脈に血液を送り出すため、下から上に伝わる。この電気信号伝達の逆転を可能にしているのが、心室に特異的に存在する細胞集団・His-Purkinje系だ。多くの臨床データが、致死的な不整脈の発生にHis-Purkinje系が関与することを示唆しているが、その機序はほとんど分かっていなかった。そこで、致死的不整脈とHis-Purkinje系の関係を明らかにするため、His-Purkinje系に選択的に発現する遺伝子・IRX3と不整脈の関連性を検討。その結果、IRX3の遺伝子異常がマウス・ヒトの両方において、一見正常な心臓でみられる致死的不整脈に関与することおよび、致死的不整脈は運動などの交感神経の緊張が高まったストレス下で生じることが明らかになったという。研究チームはこの結果を受け、「今回、平常時は健常な心臓で運動・ストレスに関連して起こる致死的不整脈に関与する遺伝子としてIRX3を世界で初めて明らかにした」点を強調。さらに「本研究成果は、健常人における運動中の突然死の原因解明に貢献し、このような事態の発生に関する予測・予防法の開発が期待できるものであると考えられます」とコメントしている。なお、同研究成果は、国際科学誌の「European Heart Journal」(欧州心臓病学会誌)のオンライン版において、10月2日午前2時30分(英国時間)に発表されている。
2015年10月05日神奈川大学は9月30日、「何世代にもわたって細胞分裂できるモデル人工細胞」の構築に成功したと発表した。同成果は同大学理学部の菅原正 教授らの研究グループによるもので、9月29日の英国科学誌「Nature Communications」に掲載された。菅原教授らはこれまでの研究で、細胞膜に見立てたジャイアントベクシルという直径3~10μmの人工分子膜でできた袋が、外部から膜分子の原料を取り込み、膜内でその原料から膜分子を作り出すことで自らを成長・分裂させ、さらに内部で染色体のモデルであるDNAを増幅することを報告していた。しかし、分裂後はDNAの複製に必要な原料分子が枯渇し、親細胞と同様の効率よい分裂を行わせることができなかった。今回の研究では、DNA複製の原料を外部から摂取する方法を開発し、DNAが枯渇した子供細胞に、内部でのDNA複製能力を回復させ、孫細胞を作らせることに成功。さらに、この人工細胞では現実の細胞と同様に摂取期、複製期、成熟期、分裂期を巡回する周期性が存在することを確認した。今後、この人工細胞が繰り返し分裂していく中で優れた形質をもつ「変異種」が出現し「進化」するモデル人工細胞が誕生する可能性もあるという。同研究グループは今回の成果について「物質からどのようにして生命が誕生したかの謎の解明に通じる研究であり、原始地球での生命誕生や、原始生命からどのような形で萌芽的な進化の仕組みを備えるに至ったかを知る手がかりになる」としている。
2015年09月30日アディダス オリジナルス(adidas Originals)が9月17日、シンガーソングライターのリタ・オラとのコラボレーションコレクション「adidas Originals by Rita Ora」から、新作コレクション「Space Shifter Pack」を発売する。漆黒の闇とまばゆい光が支配する宇宙の多次元空間を表現した同コレクション。ブラックを基調に、見る角度によって色がレンズのように虹色に輝く素材が用いられた。アパレルでは、クラシックなトラックトップとショーツを用意。フットウェアでは、マルチレンズのリフレクティブ加工を施した「スーパースター(Superstar)」と「インスティンクト(Instinct)」の2点が展開される。取扱いは、アディダス オリジナルスショップ、アディダス オリジナルス取り扱い店、及び公式オンラインショップにて。
2015年09月16日慶應義塾大学は9月14日、第20回慶應医学賞の受賞者に東京工業大学の大隅良典 栄誉教授と米ワシントン大学のJeffrey I. Gordon 教授を選出したと発表した。大隅教授の受賞研究テーマは「オートファジーの分子機構の解明」。同教授は細胞が自分自身のタンパク質などの細胞成分を分解し再利用する「オートファジー現象」を出芽酵母の遺伝学的手法を用いて解析。世界に先駆けてオートファジーに不可欠な遺伝子群を同定し、それらの機能と生物学的意義について明らかにした。一方のGordon教授の受賞研究テーマは「ヒト腸内細菌の病態生理的意義」で、ゲノムシークエンスによる腸内細菌の分類法を開発した。また、肥満および幼年期の栄養不良に、腸内細菌叢が密接に関与すること、さらに腸内細菌が食物の栄養価を規定することも解明した。同賞は世界の医学・生命科学の領域において医学を中心とした諸科学の発展に寄与する顕著、かつ創造的な研究業績をあげた研究者を顕彰するもので、過去の受賞者からノーベル賞受賞者6名を輩出している。なお、受賞者には賞状とメダルおよび賞金1000万円が贈呈される。
2015年09月15日森永乳業は31日、「大学いも風アイス」を発売する。○大学いもとごまの味わい同商品は、九州産のさつまいもを使用した大学いも味アイスを、黒煎りしたゴマをトッピングした大学いも味チョコでコーティングしたバーアイス。アイスとコーティングチョコの甘さの大学いもの風味と、香ばしい黒煎りゴマの風味とプチプチとした食感が楽しめる。主要売場はスーパーマーケット、CVS、一般小売店。内容量は50ml×5本。オープン価格(店頭予想価格250円前後・税込)。
2015年08月30日8月23日、Apple Store, Ginzaにおいて『TEACHER’S NIGHT:語学学習とiBooks テキストブックの最新事例』が開催された。早稲田大学グローバルエデュケーションセンターのヴァレリオ・ルイジ・アルベリッツィ准教授が登壇し、同氏自身が制作し講義で使用しているデジタル教材の事例を通じて、iPad/iPhoneを使った学習の可能性を語った。○デジタル教材を導入する意義アルベリッツィ氏が日本語を学んだ1990年代、教材といえば文型を覚えるための理論編と会話的なアプローチの応用編を並べた典型的なテキストブックだった。しかし、この学習方法では「頭で分かっていてもなかなか話せない」。現在も大学の講義では紙のテキストや辞書が使われ、テープレコーダーがないと授業ができないという先生もいるそうだ。また、学生がただ聞くしかない"一斉講義型"の授業も存在し、「Death by PowerPoint (つまらないプレゼンで聴衆が寝る状況の例え)」ならぬ「Death by 講義型授業」を引き起こしていると、ユーモアを交えながらアルベリッツィ氏は指摘した。しかし、問題は笑って済まされない。学生による授業評価が科目の抹消にもつながる可能性がある現在。低い評価が続けば、学生がイタリア語を学ぶ機会が失われてしまう。一方で大学には「グローバルな人材の育成」が求められている。そのためにはどんな教育が必要なのか。それを考える時、アルベリッツィ氏はいつもある詩人の言葉を思い出すという。アルベリッツィ氏 「学生のバケツに知識を詰め、単位を取ればすぐひっくり返されるようでは、グローバルな人材は育ちません。では、何をするべきか。ポイントは、自分の頭で考える授業を目指すことです」教育の場はとかく保守的になりがちだが、「何らかの形で学生に届かせるために、色々なツールを試す必要がある」と氏は述べる。ここで間違ってはいけないのは、ただiPadを渡しただけでは何も変わらない、ということ。アルベリッツィ氏は、デジタル教材を使う教育の最も大きな課題は「能力を発揮させるために、デバイスと学習者に合ったコンテンツを作成」することだと強調した。○iPadを中心とした学習環境へ続いて、アルベリッツィ氏のデジタル教材における現在までの試みが紹介された。氏が現職に就いた2012年の時点で、大学の施設はどこでもICT教育ができる環境になっていたが、氏が利用可能な機材は用意されていなかった。そこで、まずは学生が持っているスマートフォンで、音声認識ソフト『Dragon Dictation』を「発音ドリル」として活用した。2013年春に初めて15冊のデジタルブックを中心にiTunes Uの「イタリア語入門」コースを作成し、内容を徐々に拡充。単語学習には『Qizlet』を導入。iPadは旧世代含めた10台の貸し出し機を使用していたが、2014年に学内の研究助成金や個人的な寄付、この取り組みを評価したイタリア文化会館からの寄贈により、一人一台を用意できる環境が整った。現在の環境はひとつの完成形といえるだろう。アルベリッツィ氏 「今年度はiPadを中心に、講義ではデジタルブックとiTunes U、単語学習はQuizlet、資料参照には『Padlet』を使います。そして今年から黒板を一切使わず、『MetaMoJi Note』というアプリで書き、授業が終わったら板書を学生の端末と大学のiTunes Uに送ります。さらに、実際に話して練習するロールプレイにおいても、台本を書いたり会話の様子を撮影し検証することにiPadを活用しています」○学習者の体験を中心に置いた教材デジタル教材が紙の教材と最も大きく違う点は、理解を助ける疑似体験的なコンテンツの存在だ。タップして意味を調べる、問題に回答し先生に送る、触れて回答を確認する。こうした作業が理解し覚えることに役立つと考える氏は、デジタル教材の制作においては「読み手としての学習者の体験を中心に置かなくてはならない」と強調する。例えば、欧米の大手出版社が出すデジタル教材は紙の発想から縦位置でデザインされたものが多く、テキストと並行するべき練習やインタラクティブな要素が、レイアウト的な制限から隅にやられたり、ページをめくらないと使えないことがある。こうした操作の煩わしさが学習を妨げるとして、氏の教材では読者の目がスワイプにそって情報を得ることができる横位置を用いている。さらに、見やすく連続した学習体験を目指し、コンテンツの所在がきちんと伝わり、機能を重視したレイアウトになるよう工夫を重ねてきた。アルベリッツィ氏 「最初に作ったテキストブックにもインタラクティビティはあるものの、ただ置いてあるだけでした。コンテンツの量や並べ方を整理し、枠線の種類やレイアウトを工夫して、読み手が情報を自分の力で見つけられるよう考えました」テキストブックの制作にiBooks Authorを用いる理由について氏は、簡単に使え、テンプレートが豊富なこと、そして利用できるデバイスの幅広さを挙げた。当初はiPadのみだったが、Macに対応し、昨年からはiPhone 6シリーズでも使えるようになった。iPhoneのシェアが高い学生にとってこれは大きな利点となる。また、サードパーティ製のウィジェットに対応したことで、インタラクティブな要素をより幅広く活用できるようになったことも理由に挙げられた。○挑戦、フィードバック、再挑戦最後にアルベリッツィ氏は、デジタル教材を使った講義の成果を示した。生徒からの評価は非常に高く、iPadが学習の役に立ったかという質問に対しては100%がポジティブな回答をした。また、期末テストの成績の推移を見ると、iPad導入以降単位を落とす割合が減っていることが分かる。特に一人一台を使えるようになってからは、不合格者の数が大きく減り、A+とAの割合が増えている。来期もイタリア語の学習を続けたいと回答した学生に理由を尋ねると、「もっと上達したいと思った」「話せるようになるのが楽しかった」など、学習に対する積極的な姿勢が見られた。もちろん、ただiPadを導入すれば成果が上がるわけではない。アルベリッツィ氏 「レベルの高いコンテンツを届けるには、裏の仕事が大事。単語学習には頻度別リストから現在のイタリア語で用いられる上位600語ずつのセットを作り、ロールプレイもその単語に対応させています」レイアウトやメディアの用い方から単語の選び方、学生からのフィードバックを改善に反映させるところまで、"どう学んでほしいか"という氏のコンセプトがクォリティの高い教材に反映されていると言える。教育が本来持つ進歩の可能性を示したイベントとなった。アルベリッツィ氏は最後に、来場者へ向けて次のように述べた。アルベリッツィ氏 「iBooks Authorをぜひ使ってみてください。使わなくては次の道が見えてきません。挑戦することがポイントなのです」
2015年08月26日日本に留学経験があり、日本語や日本事情に精通したユンさん。36歳の若さで、韓国の国立大学建築学部の教授に就任したエリートで、現在は、韓国の建築学会のために日々奮闘しています。ユーモアたっぷりに、ご自身のキャリアについて語っていただきました。■これまでのキャリアの経緯を教えてください建築分野に進んだ理由は、私が学生だった当時、韓国では国家プロジェクトとして建築学が重要視されていたことがあります。また、幼いころから美術を習っていて、漠然と建築物に興味を持つようになりました。大学卒業後、ソウルの漢陽大学建築学部にて修士課程修了後、1995年より日本の国立T工業大学に留学し、工学博士号を取得しました。当時の研究テーマは、環境共生型の都市を実現するため、「息をする壁体」という建築素材の研究と開発に取り組んでいました。博士号取得後、そのまま同大学の研究室にてリサーチアソシエーターとして勤務。勤務中に、図らずも研究室の日本人の後輩に一目ぼれをし、縁あって国際結婚をしました。結婚後、日本建築研究所で研究員として3年間勤務の後、2005年に韓国の国立大学の建築学部の助教授に就任することになり、10年ぶりに韓国に帰国しました。以来、韓国の建築学会のために日々全力を尽くしています。■現在のお給料について教えてください国家機密…というのは冗談ですが、満足しています(笑)。韓国に来る前も日本でそれなりに貰っていたのですが、当時は円安だったので、退職して韓国に帰国する際には相当損をしてしまいました。■今の仕事で気に入っているところ、満足を感じる瞬間は?やはり、自分の研究が必要とされ、その成果が認められた時が一番うれしいですね。また、自分の教え子達が卒業後に活躍している姿を目にしたり、たまに研究室に訪ねてきてくれるのも楽しみです。■逆に今の仕事で大変なこと、嫌な点は?仕事自体に不満はありませんが、韓国では仕事絡みで飲み会をすることが多く、お酒があまり飲めない私は、飲み会はいつも大変です。■日本人のイメージは? あるいは理解しがたいところなどありますか?私が日本に留学する直前の1995年3月、オウム真理教による地下鉄サリン事件が起きました。当時の私は「日本とは一体どういう国なんだろう?」と衝撃と不安を抱えたまま日本に渡りました。しかし、いざ大学の研究室に入ってみたら、今まで出会ったこともないような実に個性豊かな面白い仲間たちに出会え、すぐに打ち解けることが出来ました。例えば、私が暮らししていたアパートは1階の部屋だったのですが、夏に窓を開け放して寝ていたら、夜中に仲間たちがこっそりやってきて、部屋にロケット花火を打ち込まれたり(良い子の皆さんは危ないので、絶対に真似しないでくださいね・笑)、今は立場上、公言出来ない事も多いですが、とにかく楽しい思い出がたくさんあります。また、日本はオタクの地位が高いのも自由で良いな、という印象です。オタクっぽい趣味や行動も評価され、一定の地位を得ている。研究室には個性の強い人も多数いましたが、皆それぞれが自分の研究分野に精を出し、認められていたと思います。■最近TVやラジオ、新聞などで見た・聞いた日本のニュースは何ですか?日韓関係のニュースは、あまり見ないようにしています。日本のスポーツ中継や報道番組、お笑い番組は面白いので、今でもYouTubeなどでチェックして楽しんで見ています。すこし古いですが、私が日本に留学していた頃は、久米宏さんのニュースステーションに衝撃を受けました。韓国にはあのような報道番組はありませんでしたから、「ニュースって、こんなに面白く放送できるものなんだ!」と非常に斬新でした。また、今は日本で活躍している韓国の野球選手の試合はいつも必ずチェックしていますね。特にソフトバンクの李大浩の活躍が気になりますね…って、すみません、全然最近のニュースではないですね。■ちなみに、今日のお昼ごはんは?今日は、出張先の大学でハンバーグ定食を食べました。普段は自分の大学の近くで同僚ととることが多いです。学生街ということもあって、食べるところには困りません。ランチの後は、必ずカフェでカプチーノを一杯飲むのが私の楽しみです。■休日の過ごし方を教えてください比較的、時間の自由の効く職業ではありますが、忙しい時は、土日や時間帯関係なく、韓国各地で会議などの重要な仕事が入ります。しかし、どんなに忙しくても1カ月に一回は、週末に時間をとって家族と過ごすようにしています。どうしても時間が取れない時は、出張先に家族を連れていくこともあります。体を動かすのが好きなので、ジムに通ったり、自然の中でキャンプをして過ごしたり、映画を見に行ったりもしますね。アウトドアは学生時代から好きで、日本でもテント一式を買ってキャンプに行っていました。日本には施設の整った良いキャンプ場がいっぱいあっていいですね。最近では韓国もアトドアブームで、いろんなキャンプ場が整備されてきたので、楽しみです。■将来の仕事や生活の展望は?日本の大学との共同研究を増やして、妻のためにも韓国と日本を行き来できる生活をしたいです。
2015年08月05日11歳の少女ライリーの頭の中の"感情たち"を描いたディズニー/ピクサー長編アニメーション20周年記念作品『インサイド・ヘッド』が、7月18日に公開を迎えた。同作では、ライリーが寝ている間の頭の中も描かれているが、現実に起きたことが夢に出てくるという仕組みは、本当なのだろうか。筑波大学の柳沢正史教授が"夢の仕組み"を解説した。同作では、ライリーが眠りにつくと、"ヨロコビ"以外の感情たちも眠りに入るが、"ヨロコビ"にだけ重要な任務がある。それは、ライリーが悪夢にうなされないよう、どんな夢を見ているか監視すること。感情たちがいる司令室では、ライリーが寝ている時に見る夢の映像が映し出される仕組みになっている。そしてその映像は、司令室から遠く離れた"夢の製作スタジオ"で、その日ライリーに起きた出来事を基に夢監督が指揮を執り、映画を撮るかのように作られている。国際統合睡眠医科学研究機構の機構長も務める柳沢教授は、同作で描かれている"現実に起きたことが夢に出る"という仕組みについて、「夢は起きている間に体験したことの断片を組み合わせて作られるので、もちろん現実が反映されます」と回答。また、なぜある特定の場面が夢に出てくるのかは判明しておらず、夢は主観的なものなので研究対象としては難しいというが、「ライリーが学校で泣いてしまったということが夢に出てくるのは、ライリーの心理状態を表しています。彼女にとって泣いたことは、とても深い記憶なのでしょう」と話す。さらに教授は「眠っている間も脳が休んでいる状態ではないことがしっかり表現されていました」と続ける。ライリーが寝ている間も"夢の製作スタジオ"は働いており、完全に頭の中がストップした状態にはならない。教授は「例えば楽器の練習をしてから寝ると、弾けなかった部分が起きたら弾けるようになったり、勉強も一晩寝ると暗記できていたりすることが多い。これは寝ている間に"思い出の整理"を行っているためで、記憶の定着が起こるからです」と解説し、「これは科学的に実証されている」と力強く語る。劇中でも、眠っている間に思い出の整理が行われていることをコミカルに表現。"思い出の保管場所"には今までライリーが記憶した思い出ボールがたくさん並んでおり、その中から不必要と判断された思い出は、記憶消し女と記憶消し男によって掃除機のようなもので吸い取られていく。最後に、教授は本作のテーマについても言及。「人間が進化してきた過程で、"ビビリ"は危険を避けるため、"イカリ"は自己防衛など、それぞれ生存のために絶対に必要な感情」と言い、その上で「本当に悲しむことができる動物は、人間と一部の霊長類だけです。だから"カナシミ"がなぜ必要なのかというテーマは、とても面白い」と感慨深く述べた。(C) 2015 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
2015年07月21日東京都・小平市の武蔵野美術大学美術館は、同大学教授・小野皓一の作家活動の軌跡と同大学での教育・研究成果を展覧する「小野皓一展武蔵野美術大学教授退任記念」を開催する。会期は9月1日~9月26日(日曜・祝日休館、ただし9月21日は特別開館)。開館時間は10:00~18:00(土曜・特別開館日は17:00閉館)。入場無料。同展は、小野氏の在独時から近年の作品まで約60点を一堂に集め、美術作品における物質性を一貫して追求してきた作家活動の軌跡と、同学での教育・研究の成果を展覧するもの。小野氏は、1970年本学油絵学科を卒業後まもなく渡独、国立ベルリン美術大学を修了後ベルリンを中心に制作を続け、2009年に同大学教授に着任し、2017年3月をもって退任する。小野氏は、今日の「絵画」が成立する要因と意味について研究を深め、物質が美術作品となることの境界を明らかにしようと試みてきており、この試みは、小野氏の代表的シリーズ《Writing Over Squares on Canvas》、《Destroying Squares on Canvas》などのシリーズとして発表され、現在までもその探求は続けられているということだ。なお、同展では、小野氏の代表的シリーズ《Writing Over Squares on Canvas》、《Destroying Squares on Canvas》、《Plate Tectonics》の中から、ベルリンで制作された70年代の作品から近年の作品までを揃え、その軌跡を通覧することができる。また、《Destroying Squares on Canvases》シリーズのうち、80年代から90年代にかけて制作された5色の大型作品、Earth・Water・Fire・Wind・Emptinessの全作が揃う、初めての機会となるということだ。また、関連イベントとして、和田浩一(宮城県美術館学芸部長)・小野皓一(武蔵野美術大学 通信教育課程教授)による対談が開催される。開催日時は9月3日16:30~18:00。入場無料。
2015年07月06日5月26日に開催されたNVIDIAの「ディープラーニングフォーラム2015」において、東京大学の松尾豊 准教授が「人工知能の未来-- ディープラーニングの先にあるもの--」と題して講演を行った。人工知能のこれまでの歴史から、最新のディープラーニングの研究状況、そして、その先に来るものについて分かりやすく説明されており、非常に参考になる講演であった。○これまでも2度、ブームが起こっていた人工知能研究脳は電気+化学変化で情報処理を行っているマシンである。とすれば、プログラムで脳の機能を実現できるはずという考えから、研究が始められ、1956年に「人工知能(Artificial Intelligence)」という言葉が作られた。1960年代には第1次AIブームが起こり、推論と探索で人工知能を実現しようとした。このアプローチは、解きたい問題を推論・探索問題として記述できるおもちゃ的な小さな問題は解けるが、大規模な実用的な問題は解けない。例えば、チェスや将棋、碁などはすべての手を探索すれば解けるはずであるが、場合の数が多く、現実には計算できない。このように、実用的な問題が解けないことから1970年代にはAI研究は下火になり、冬の時代に入る。1980年代になると、知識を教えてやれば、それをベースに推論と探索を行うエキスパートシステムが考案され、第2次のAIブームが起こった。わが国では、多額の研究費を投入して第5世代プロジェクトが行われた。知識を記述して教え込めばAIシステムは賢くなり、伝染性の血液疾患の診断を行うMYCINなどのエキスパートシステムが開発された。しかし、知識を記述するルールが数万にもなると、書ききれない、メンテナンスができないなどの問題が明らかになってきた。また、対象が広がると、一般的な常識が必要となり、教える知識が爆発的に多くなってしまうという問題があるという。"He saw a woman in the garden with a telescope."は、文法的には、彼は庭にいる彼女を望遠鏡で見たとも、彼は望遠鏡を持って庭にいる彼女を見たとも訳せる。常識的には前者が正しそうだが、なぜ、それが分かるのか? そして、これをどのようなルールとして記述して人工知能に教えられるのかというような問題が起こる。また、どこまでの因果関係を考えるのかというフレーム問題がある。将棋のゲームならルールの範囲の手だけを考えればよいが、駒を置く音が周囲に与える影響や駒の移動に伴う重力場の変化の影響まで考え始めるとキリがない。しかし、なぜ、これらを無視して良いのか、その知識をどのように記述するかという問題も出てくる。さらに、人間は、縞と馬の知識があれば、動物園で初めてシマウマを見た時にも、これはシマウマと分かるが、シマとウマという言葉とその実体との対応が分かっていない(シンボルグラウンディングング問題)コンピュータには、このようなことはできない。知識を書けば賢くなるが、知識を書くのがとても大変というか、これって本当にできるのか? ということで1995年ころからAI研究は下火になり第2の冬の時代に突入した。これまでの人工知能の壁は、表現の獲得の壁で良い特徴量とそれによって定義される概念を作る作業はコンピュータには出来ず、人間がやるしかなかった。(次回は6月1日に掲載予定です)
2015年05月29日「ご教授ください」と「ご教示ください」。どちらも似たような意味で使われている言葉ですが、この2つの言葉に違いはあるのでしょうか?使い分けが難しい言葉「ご教授」と「ご教示」について御紹介します。■ご教授・ご教示の意味「教授」は学問や技芸を教え授ける意味で使われる言葉です。一方「教示」はというと、知識や方法を教え示すという意味の言葉です。つまり「ご教授ください」では学問や技芸を教え授けてくださいという意味で使われ、「ご教示ください」は知識や方法を教え示してください、という意味で使われる言葉だと考えられます。ただし「教授」の示す学問や技芸、「教示」の示す知識や方法のその違いが何かというと、明解にはわかりづらいもの。学問も体系化された知識と方法であり、技芸には美術・工芸・芸能などで物を取り扱うための方法も含まれるからです。そのためこの2つの言葉を明解に使い分けすることは難しく、どちらかというとより専門的な内容を尋ねたいときや、目上の方に尊敬の意味を込めて物を尋ねるときなどに「ご教授ください」を、物事の手順や方法を尋ねるときや、目上の方に指導を乞うときなどに「ご教示ください」を使うのが一般的に望ましいとされています。■2つとも書き言葉?また「ご教示ください」は口にするには少し堅い印象になる言葉。そのため話し言葉ではなく、メールや文章での書き言葉として「ご教示賜りますよう~」等の定型文で用いられることが多いようです。「ご教授ください」も同様で「ご教授願います」等、書き言葉としてよく使われています。話し言葉では「お教えください」や「ご指導ください」等がよく使われています。■似ている言葉「ご指南」と「ご指導」更に「ご教授」と「ご教示」に似た言葉として「ご指南」や「ご指導」もあります。いずれも書き言葉として用いられることが多く「ご指南賜りますよう~」「ご指導ご鞭撻のほど~」等の定型文によく用いられています。指導は目的や方向に沿って教え導くという意味、指南は武術や芸事などを教え示すという意味です。ビジネスシーンでは言葉の使い分けに厳しい人に出会うこともあるため、覚えておくとよいかもしれません。意味が似ていて使い分けの難しい言葉が、日本語には多くあります。特に仕事上では僅かな言葉づかいを指摘されることも多いため、知識として言葉の意味を覚えておくととても助かります。是非、参考にしてみてください。(画像は本文と関係ありません)
2015年05月24日トム・ハンクスの妻で女優のリタ・ウィルソンが乳がんと診断され、両乳房の切除手術を受けたことを公表した。58歳のリタは14日(現地時間)、「PEOPLE」に「健康上の問題があり、ブロードウェイの舞台『Fish in the Dark』(原題)を降板しました」という一文で始まる声明を寄せた。「先週、夫に付き添われ、家族や友人の愛とサポートを受けて、乳がんのために両乳房の切除と再建の手術を受けました。浸透性小葉がんと診断されたのです。現在回復中ですが、最も重要なのは完全回復の見込みだということです。なぜか?早期発見ができ、素晴らしい医師たちに恵まれ、セカンドオピニオンを受けたからです」と声明は続く。リタは毎年乳がん検診を受けていて、一度は「がんはない」という結果が出たが、乳がんを患ったことのある友人の勧めでセカンドオピニオンを受け、がんが見つかったという。「セカンドオピニオンが健康にとって重要であることをみなさんに伝えたいから」と公表を決意したという。「愛ある協力的な夫、家族、友だち、そして医師たちに恵まれて、感謝しています。乳がん治療と再建手術の進歩の恩恵を受けられたことにも感謝しています」と綴るリタは快方に向かっていて、5月5日(現地時間)にはブロードウェイの舞台に再び立つ予定だ。(text:Yuki Tominaga)
2015年04月16日岡山大学はこのほど、「舌表面の汚れの付着面積が大きい人は、呼気中のアセトアルデヒド濃度が高い」ことを、同大学の森田学教授らの研究グループと北海道大学山崎裕教授が共同研究で突き止めたことを明らかにした。「アセトアルデヒド」は、アルコールを代謝する過程で産生される物質のこと。たばこの煙にも含まれ、口の中の細菌がアルコールやグルコースを代謝して産生することも報告されている。高濃度で摂取した場合の発がん性も指摘されているが、世界保健機構は生理的濃度であっても、長期間の暴露はがんのリスクがあるとしている。今回、森田教授と横井彩(医員)の研究グループは、同大医療支援歯科治療部と北海道大学山崎裕教授と共同で、舌の上に白いこけのように付着している汚れ「舌苔(ぜったい)」の面積と、口の中のアセトアルデヒド濃度を健常者65人で調査した。すると、舌苔(ぜったい)の付着面積が大きい人は、小さい人に比べて口の中のアセトアルデヒド濃度が高いことが明らかになった。これまで、アセトアルデヒドの発生原因は、たばこやアルコールが考えられていたが、今回の研究で舌苔(ぜったい)からも発生していることが判明した。あわせて舌苔(ぜったい)を取り除く舌清掃を行うと、口の中のアセトアルデヒド濃度が減少することも確認できた。口の中のアセトアルデヒドは、口や喉のがんの原因になることが指摘されている。今後、さらなる研究を重ねることにより、舌清掃でがんを予防することも期待できるとのこと。同研究成果は2015年3月6日の「Journal of Applied Oral Science」電子版で公開している。
2015年04月01日なかなか寝つけない夜ってありますよね。もしかするとリラックスできていなくて、呼吸が乱れているかも?この呼吸に着目したのが、タカラトミーアーツのぬいぐるみ「ハグ&ドリーム」です。脳・呼吸生理学の権威、昭和大学の本間生夫・医学部教授が監修しています。かわいいぬいぐるみをだっこするだけで安眠できるなら、幸せですよね!扁桃体が興奮していると眠れない本間教授の理論は以下の通りです。人がリラックスするには、大脳辺縁系(へんえんけい)にある扁桃体(へんとうたい)が鎮静していることが重要です。扁桃体が鎮静することによって、呼吸も落ち着いてきます。扁桃体は、神経細胞の集まりで、情動反応の処理などに主要な役割を果たしています。夜に目が冴えて眠れないときは、この扁桃体が興奮状態になっているのです。結果的に呼吸は浅く速くなります。熟睡するには、呼吸が落ち着いていることが重要なのです。「ハグ&ドリーム」は、動物が生きて呼吸する自然な動きを再現した振動体を内蔵しています。ぬいぐるみの5秒サイクルの振動に合わせて呼吸することで、理想的な呼吸サイクルに導かれてリラックスする手助けをします。飾っておくだけでも癒される就寝時、赤ちゃんを抱くように「ハグ&ドリーム」を抱きしめ、横たわれば、ぐっすり眠れること間違いなしです!お子さんをはじめとして、ぬいぐるみを抱っこして眠る習慣の人は多いはず。大人の女性にも多いかもしれませんね。もしかしたら男性にもいるかも!? そんないつものぬいぐるみを「ハグ&ドリーム」に替えるだけで熟睡できるなら、お得だと思いませんか?抱きしめて眠るだけでなく、ふだんは部屋に飾っておくにも嬉しいものです。置いてあるだけで癒されるかわいさです。「ハグ&ドリーム」は、医療機器ではありませんので効果には個人差がありますが、夜に興奮状態で眠れないというあなた、試してみる価値はありますよ! 今まで安眠グッズをいろいろ試してみても眠れなかった人にオススメです。Photo by Jonathan
2015年03月25日PHP研究所は3月13日、書籍『もてるための哲学』(小川仁志 著/PHP新書/税別780円)を発売した。○"モテ"について哲学を借りながら解説同書でいう「もてる」は、たんに異性からチヤホヤされることではなく、人として幅広く人気があるということだそう。著者の小川仁志さんは、20代後半のフリーター生活を経て、働きながら哲学の博士号を取得。著書も数多く出版し、この春からは山口大学准教授に。「すべて"もてた"からだ」と言う。「もてると、周りが元気になるだけでなく、自分の人生が成功に導かれることになります。人間関係はトラブルの最大の原因にもなるため、ここがうまくいってさえすれば日常のほとんどは楽しく過ごすことができるのです。つまり、『もてる力』とは『コミュニケーション力』なのです」モテ期継続中という著者が、「理屈と理論で成り立つ哲学をもちいてコミュニケーションのあり方について考えてみる」という同書。異性だけでなく、家族や職場の人たちとの人間関係をスムーズにするためにはどう考えたらよいのか、どう行動したらよいのか。情熱・尊敬・信頼・寛容・自信の5つをキーワードに、哲学を借りながら平易かつ徹底的に解説する。著者自身の恋愛、仕事、家族に関するエピソードや、ソクラテス、プラトン、パスカル、ラッセル、ヘーゲルといった哲人たちの名言や理論も多数登場。教養を深めながら、「もてる力」の本質と極意もさぐりだせるという。
2015年03月20日いよいよ佳境を迎えつつあるドラマ『マッサン』。ドラマでは、マッサンを支える妻 エリーのけなげな姿が人気ですが、実際の彼女はどんな女性だったのでしょう。数々のマッサン本からは、私たちも共感できる彼女の本当の生き方が見えてきます。「マッサンの夢は私の夢」・・・そう信じて生涯を異国の地 日本で、夫のウィスキー作りの夢の実現を支えた女性、リタことジェシー・ロベルタ。ドラマでは“エリー”と呼ばれていますが、彼女の本当の通称は“リタ”。リタの生き方を紹介した本は、これまでも数多く出版されていましたが、今回の朝ドラの影響で再注目されています。そうした彼女の生き方に触れると、リタがどれほど強く、愛にあふれた人だったかがわかります。愛する人を失った悲しみと出会い祖国スコットランドを捨てて、日本人の竹鶴と結婚することを選んだリタ。なぜそこまでして?と私たちはリタの行動力に驚かされましたが、本を読むとその理由も見えてきます。リタにはマッサンと出会う前に同郷の婚約者がいました。しかし愛を誓ったにもかかわらず戦争で帰らぬ人となってしまったのです。それはリタにとって、愛する人を戦争で奪われたというトラウマとなって生涯つきまといます。そんな時に現れた異国の恋人 マッサンは、リタの心の傷を癒してくれたことでしょう。そして今度こそ“失いたくない”という強い想いがあったに違いありません。森瑶子さんが書いた『望郷』は、森さんらしい情緒あふれる表現力で、リタとマッサンのロマンスを描いています。リタの伝記をもとにしたフィクションですが、恋愛小説として一気に読めてしまう面白さがあります。日本の壁を超えようとしたリタまた、リタはもともと病弱で、繊細な心の持ち主でした。そんな彼女が、どのように日本での困難を乗り越えてきたのか?ドラマでは「渡る世間は鬼ばかり」のあの人が大いに鬼姑ぶりを発揮していましたが、あれは何も竹鶴家に限らず当時の日本は長男の嫁に対して非常に封建的なところがありました。そんな日本の時代背景と、当時リタを支えていた人々、リタの心の葛藤を客観的に描いているのが『リタの鐘が鳴る』(早瀬利之著)です。本の中では取材に基づいて、当時リタを知る人たちの証言やリタの写真が出てきます。そのため本当の素顔が見えてくるという点でも、この本はオススメです。まだ日本では恋愛結婚は一般的ではなかった時代に、異国の花嫁 リタがどうやって周囲の人々の偏見をはね返す努力をしてきたか。着物を着て、漬け物や和食を作り、一生懸命日本人になろうとしていたリタ。それは並大抵の苦労ではなかったことがわかります。夫の夢をあきらめさせない、支えるチカラウィスキー作りの夢に向かいながらも、何度も挫折しそうになるマッサンを、リタはどうやって支えてきたのでしょうか。『リタの鐘が鳴る』では、その叱咤激励ぶりが、当時を知る人々の証言からも浮かび上がってきます。夫が仕事を失った時も、家庭教師などをしながら地道に家庭を支えていたこと。そして夫が窮地に立たされている時も、陰ながら支援を取り付ける努力をしてきたこと。事実、マッサンの独立時に支援者となったのは、リタが家庭教師をしていたのが縁でつながった人々でした。夫婦共同経営的な強い信念そんなリタには、夫を支えるあるやり方がありました。それは夫の状態を常に顔色や態度から把握し、もうそろそろ限界だ、となる少し前に話し合いをしようとすることです。今では夫婦が話し合いをするのは当たり前のことかもしれませんが、当時の日本では、まだまだ「女は男の仕事に口出ししない」というのが通例でした。けれどもリタは、「マッサンの夢は私の夢」という強い想いから、夫の気苦労をそれとなく聞き出し、常に夫を叱咤激励してきたのです。そのためにも夫の仕事の人間関係をよく把握し、そうした人々とのコミュニケーションのつなぎ役を買って出ることもいといませんでした。現代でいう夫婦共同経営的な発想が、リタにはありました。夫に頼りきるのではなく、夫と一緒に夢を実現するという発想は、リタの強さの原点でもあったのでしょう。けっしてあきらめない、生き方そしてどれほどリタは、夫マッサンへ愛情を注いでいたのでしょうか。ウィスキー作りを軸に描いたドキュメンタリー『マッサンとリタ』(オリーヴ・チェックランド著和気洋子訳)では二人の関係性がよくわかりますが、中でも心に残ったのは、リタが愛読していたというロバート・バーンズの詩の一節です。「恋人よ、たとえ海が枯れても、たとえ岩が太陽の炎に解けても、それでも私はあなたを愛します。命の時計が秒を刻む限り」・・・そこからは、夫を愛するリタの強い覚悟さえ伺えます。文化の違いや、経済的困難、戦争による軋轢など、さまざまな苦境の中にあっても、故郷に帰ることなく、夫のそばに添い遂げたリタという女性の生き方は、私たちに勇気を与えてくれます。決して夢をあきらめないということ、それは現代の私たちにも、何か生きるヒントを与えくれるに違いありません。ぜひ、ドラマと一緒に、リタの生き方を読み解いてみてはいかがでしょう。・ 望郷 ・ リタの鐘が鳴る ・ マッサンとリタ ・ リタとマッサン
2015年03月06日村田英一 京都大学情報学研究科准教授、田野哲 岡山大学教授、梅原大祐 京都工芸繊維大学准教授らによる研究グループは3月3日、スマートフォンなどの携帯端末が近くの端末同士で相互に連携して、基地局と通信する技術を開発したと発表した。無線LANやLTE(Long Term Evolution)などで利用されている「MIMO(Multi-Input Multi-Output)伝送」は、同じ周波数で同時に複数の信号を伝送できる技術であり、アンテナ数にほぼ比例した通信容量が得られる。これに対し、今回開発された技術は、近傍の端末が高周波数帯を利用して相互に連携することによって(下図の緑の線)、等価的に多数のアンテナを備えた1つの端末として機能させるもの。これにより、連携するユーザー数にほぼ比例して通信容量を拡大することが可能(下図の赤の線)。今回開発した技術は、多くの人が通信を行うと1人当たりの伝送速度が減少するような、電車やバス内、イベント会場など、人が集まっていながら相対的にはあまり動かない環境での利用に特に適している。今回の研究成果は、電子情報通信学会移動通信ワークショップ(無線通信システム研究会、スマート無線研究会、短距離無線通信研究会、複雑コミュニケーションサイエンス研究会併催)で発表される。
2015年03月04日アディダス オリジナルス(adidas Originals)とシンガーソングライターのリタ・オラ(Rita Ora)によるコラボレーションコレクション「アディダス オリジナルス バイ リタ・オラ(adidas Originals by Rita Ora)」が3月5日、「Rita Ora Super Pack」を発売する。アパレルとシューズからなる今回のコレクションでは、積極性や自信、楽天主義を主張するポップアートグラフィックを、大胆かつテクニカルなカラーで美しくデザイン。真っ赤なリップ、猫のような目、プラチナブロンドの髪など、オラの印象的な容姿の特徴をコレクション全体に散りばめた。その中に、コミックブック特有の擬音である「Kapow」をモチーフとして取り入れている。ファブリックにはきらびやかなトリコットやカラダのラインをいかしたメッシュ、スーパーソフトなジャージ素材などを使用。一方、シューズでは「スーパースター」をベースに、遊び心にあふれたダイナミックなカラーパレットが展開される。全国の「アディダス オリジナルス」直営店、及びブランドの公式オンラインショップで販売される。
2015年02月18日世界の大学の順位付けを行ういわゆる「世界大学ランキング」は、さまざまな企業や大学、政府などが作成し、公表しているが、中でも総合的な大学のランキングとして世界トップクラスとして認識されているのが、英国の世界大学評価機関Quacquarelli Symonds(QS)が毎年公表する「QS世界大学ランキング(World University Rankings:WUR)」だ。しかし、こうした大学ランキングは、なにをどうやって採点、格付けされ、順位づけされているかは、該当する大学自身も良くわかっていないことが多い。そうした現状を踏まえ、2014年12月17日、都内で「第1回 大学研究力強化ネットワーク・カンファレンス」が開催され、QS AsiaのCEOを務めるMandy Mok氏がQS大学ランキングならびにQSアジア大学ランキングがどのような評価で順位づけされるのか、について日本の大学関係者などに説明を行った。○6つの評価指標で構成される「QS世界大学ランキング」世界3500超の大学を対象としているQS世界大学ランキングの評価は有識者からの評価が50%、各種データからが50%となっており、その内訳としては、他大学の教授・研究者といった関係者からの評価が40%、企業人事などの採用権限を持つ人がどういった人を採用したいか、という点10%、そして教員単位の引用論文数と学生1人あたりの教員比率、外人教員の比率。留学生の比率で構成で構成される。評価指標項目:配分研究者による評価:40%雇用者の評価:10%学生1人あたり教員比率:20%教員1人あたり論文引用数:20%外国人教員比率:5%留学生比率:5%ちなみに、各教育機関からの回答率としては日本は35%で非常に悪いとするほか、米国、欧州の圏内では企業評価の比率が多い一方、韓国はまったくなく、日本は35位という位置づけになっているという。では、医科系のみの大学などの特殊な事業がある場合の評価はどうなるかというと、「現実的な話をするとQSやQSのパートナーが開催したセミナーの参加者リストなどに基づいてアンケートを送っているほか、そうした参加者にさらに関係者を紹介してもらって、改めてQSから連絡を行っている。たとえば雇用者として医療機関は企業ではないという見方もあるが、日本の場合、そもそも雇用主からの回答率自体が悪く、日本全体のランキングの向上を目指すのであれば、そうした企業側に対するアプローチなども必要だ」と同氏は説明する。○世界大学ランキングとは評価ポイントが異なる「QSアジア大学ランキング」一方の「QSアジア大学ランキング」も評価の比率は「QS世界大学ランキング」と同じかというと、実は異なっている。雇用者の評価10%、学生1人あたりの教員比率20%、外人教員の比率5%、留学生の比率5%は変わらないが、他大学の教授などの評価が30%と低くなり、教員1人あたり論文引用数がない変わりに、教員1人あたりの論文発表数15%、論文1件あたりの被引数15%が加えられている。評価指標項目:配分研究者による評価:30%雇用者の評価:10%学生1人あたり教員比率:20%教員1人あたりの論文発表数:15%論文1件あたりの被引数:15%外国人教員比率:5%留学生比率:5%○大学のランク付けを星付けでも実施QS世界大学ランキングは6つのカテゴリでの評価だが、これとは別に細かな評価をしてもらいたいというニーズに合わせたサービスとして、星付けによる評価も行っている。最高「5つ星+(☆☆☆☆☆ PLUS)」までの格付けがさまざまな分野でなされるこの仕組みについて、同氏は「ランク付けされたくないと思うかもしれないが、グローバルの評価基準をもとに、協定校の提携を行いたいと思っても、海外から見た大学の評価はなかなか難しいものがある。このランク付けの意味としては、例えば、留学生が希望の大学を調べたりするときに、世界の統一基準としての1つの目安として使ってもらうことなどが考えられると説明する。ちなみに、やはり世界大学ランキング上位の大学は星の数が多いところが多いという。ただし、カテゴリごとの評価となるので、例えば「教育」については星5つだが、「国際的」という面では星3つ、ということもあり、そうした大学は教育分野で星5つ、という点をアピールしたブランディングを推し進める戦略を展開しているという。なお同氏は、QSそのものについて、単なる格付けを行う企業というものではなく、そうした格付けをもとに、大学や研究機関にブランディングを提供する企業である、と説明しており、世界に日本の大学をアピールして、存在感を増していくための手助けができれば、としていた。
2015年02月18日NHKで放映中の「マッサン」の妻、リタは「あなたの夢を共に生き、お手伝いしたいのです」と故郷スコットランドを離れ、内助の功で夫を支えるピュアで健気な生き方で私たちを魅了します。このマッサンとリタのように夫婦2人支え合い生きた、純印度式カリーなどで有名な老舗、中村屋の創業者である相馬愛蔵とその妻、黒光(こっこう)のことをご存知ですか?黒光は、リタが生まれる21年前の1875(明治8)年、星良(ほし・りょう)という本名で仙台に生まれました。“アンビシャス・ガール”と呼ばれた少女時代を経て、結婚、出産、起業。明治の終わりから大正、昭和初期にかけて多くの芸術家たちをサポートし、中村屋に彼らが集ったその様子は、のちに“中村屋サロン”と呼ばれました。夫を支え、自らの生き方も貫いた彼女の足跡をご紹介します。相馬黒光(そうまこっこう)という鮮烈な生き方黒光の自伝「黙移」には、自伝的要素だけでなく、大正デモクラシーと呼ばれた当時の自由な空気、時代の変化が描かれており、歴史を知るうえでも貴重な史実が満載。女子教育のプロセスとしても実に興味深い書籍です。このころは女性が学問を続けることが、まだ一般的ではなかった時代。しかし、向学心の強い黒光は、生まれ故郷の宮城女学校で学んだのち、当時の女学生たちの憧れの的、ミッションスクールの最高峰で英語教育の名門、フェリス女学院に転校しました。さらには、進歩的かつ芸術的な校風を求めて、作家の島崎藤村や北村透谷が講師を務めていた明治女学校に転校します。その女学校時代だけでも、多彩な友人に囲まれ、ストライキを起こしたりプラトニックラブに翻弄されたりとチャレンジングな日々。彼女のペンネームでもある“黒光”は、明治女学校校長が「あなたの才気溢れる光を黒い色で隠しなさい」と命名したもの。いかに才気煥発であったかがうかがえます。中世ヨーロッパのような芸術支援の殿堂 “中村屋サロン”卒業後、黒光は故郷の知人の紹介で長野の相馬愛蔵に嫁ぎますが、1901(明治34)年に上京します。そこで本郷の「中村屋パン」を居抜きで買い取り、中村屋の店名をそのままに創業します。初めて食べたシュークリームの美味しさに驚き、パンにできないか考え、クリームパンを創案します。そのクリームパンは今でも日本の三大菓子パンのひとつといわれています。その後、新宿に本店を構えてからは、彫刻家の荻原守衛(碌山)、画家の中村彝(なかむら・つね)、ロシアから訪れた盲目の詩人ワシリー・エロシェンコら、多くの芸術家に中村屋の敷地内にあった洋館を解放。彼らを物心両面でサポートします。相馬夫妻や彼らを「安曇野」という小説に書いた作家の臼井吉見は、「まるで中世ヨーロッパのサロンのようだった」と描写しています。この中村屋サロンは日本の近代芸術・文化を牽引し、大きな刻印を残す偉業を果たしたのでした。2014年10月、中村屋は本店を建て替え、商業ビル「新宿中村屋ビル」としてグランドオープンし、3階には「中村屋サロン美術館」という美術館を併設しました。現在は、「開館記念特別展」が開催中(2015年2月15日まで)。黒光の情熱的な意志が、現在も脈々と受け継がれているのを感じます。昭和2年発売の純印度式カリー、ボルシチ、中華まんは現在も人気商品黒光のすごいところは、実業家としての商品開発センスも然り。インドの革命家ラス・ビハリ・ボースとの出会いから、日本で初めて純印度式カリーを発売しました。また、ロシアの詩人ワシリー・エロシェンコとの出会いをきっかけにボルシチやピロシキなどのロシア料理を、中国視察旅行では、月餅や包子(パオズ、現在の中華まんじゅう)と出合い、日本人の口に合うようにアレンジして発売しました。彼女の企画・発想力はとても素晴らしく、それらが現在も中村屋の人気商品として愛され続けているのは、ご存じの通りです。黒光は自らの志を持ち、夫とともに仕事に励みながら、己から溢れ出る光を黒色で消すことなく、周囲を愛の力で照らし続けました。リタより6年早い1955年、79歳でこの世を去った黒光。こんな圧巻な女性が日本に存在していたということに、勇気が湧いてくる気がします。人生の折々に迷ったら、ぜひ彼女の自伝「黙移」を開いてみてはいかがでしょうか。
2015年02月05日中部テレコミュニケーションは、同社が提供するスマートフォン向け地図情報アプリ「ちずコレ」にて、愛知大学および常葉大学との産学連携コンテンツの配信を開始している。「ちずコレ」は、中部地域を中心としたあらゆる情報を選別し、独自の視点で編集して配信するスマートフォン向けアプリ。地図情報とともに話題のスポット、グルメ情報などのコンテンツを提供している。今回、本アプリと産業連携したのは、地域文化保全と観光振興を研究テーマにする愛知大学 地域政策学部の学生と、天竜浜名湖鉄道沿線に所在することから地域性を活かした経営学教育を行う常葉大学 経営学部の学生。天竜浜名湖鉄道沿線の風光明媚な自然豊かな魅力を発信するため、学生たち自らがコンテンツの企画段階から、情報収集、取材、編集までの一連の作業を行った。同産学連携による「ちずコレ」配信コンテンツは、以下の3つ。「愛知大・常葉大生が厳選in天浜 古きが新鮮、見どころ満載編」マップ「愛知大・常葉大生が厳選in天浜 ぶらっと入れる、お食事処編」マップ「愛知大・常葉大生が厳選in天浜 思い出をお土産と一緒に編」マップ同社は今回の産学連携を通じて、中部地域の魅力を発信し続けるとともに、地域貢献を行っていくという。
2015年02月03日「大学全入時代」―。大学入学者は毎年約60万人、進学率は50%に上っています。一方で問題となっているのが中退者の増加。大学入学者の10人に1人が退学しているとも言われ、「大学を辞める」はもはや珍しい話ではありません。そこで気になるのが中退者の「その後」。彼らはどこに“居場所”を見つけ、どう人生をリスタートしているのでしょうか。今回はこの問題に詳しい日本大学通信教育部の栁川浩昭氏に中退者を取り巻く現状についてインタビュー。実際の中退経験者にも登場していただき、退学の理由や現在の生活についてお聞きしました。○退学者が増えている背景は?――昨年9月に文科省が発表した2012年度の大学、短大、高等専門学校の中退者は7万9,311人で、前回調査(2007年度)よりも約1万6千人増えています。大学入学者に限って見ればその10%が中退しているとも言われていますね。栁川氏「基本的な背景に『誰でも(大学に)入れる』ということがあるのではないかと思います。偏差値教育だから、やりたいことよりも入れる大学を優先してしまう。安易な選択と言ったらいいでしょうか。その結果、入学しても『想像とは違う』ということになってしまう」――そうした中退者はそれからどうしているのでしょうか。栁川氏「中退者の『その後』を具体的に調査したデータはありませんが、おそらく多くは就職するか、他大学に移り学歴を繋げていくか。専門学校や資格取得の学校に行く人もいます。もちろんニートになってしまうということもあるとは思いますが。ただ、大学との『不一致』が理由で辞めた場合はやはり学歴を繋いでいく方向を考えるケースが多いようですね」○通信教育課程に「通う」という選択――日本大学通信教育部には他大学からの入学・編入学は多いのでしょうか?栁川氏「はい。2014年度の本学への入学生は約1,800人いましたが、そのうち他大学の中退者は約180人でした。本学の場合、入学生の中には教職などの資格取得を目的にした学生も多いので、卒業を目指す入学者の中での他大学中退者の割合は2割近くになり、毎年増えている状況です」――どんな理由で貴校を選ばれる方が多いのですか。栁川氏「日大通信教育部では通信学習、スクーリング、メディア授業といった学習方法を提供しているのですが、他大学中退者の多くが『昼間スクーリング』を選んでいます。通信教育課程の校舎を持つ本学ならではのもので、キャンパス生活を楽しむことができる。そこに魅力を感じて入学する学生は多いようです」○自分で決めた道だから頑張れる――中退経験者の内藤さんにもお話を聞きたいと思います。内藤さんは現在日大経済学部経済学科通信教育課程の3年だそうですが、以前は?内藤さん「はい。大学の国際関係学部に3年まで在籍していました。実際に通っていたのは2年の8月までです。入学したばかりのころからずっと『大学を辞めたい』とは言ってはいたんですが……」――どうして辞めたいと?内藤さん「付属高校から推薦で入ったこともあって、特に勉強したいこともなく流れで入っちゃったという感じでした。その大学でもいろいろあって人間関係でつまずいたり。『あぁうまくいかないなあ』と。親には反対されましたが、何度も話し合って退学を許してもらいました」――退学後の進路は自分で?内藤さん「はい。自分自身がどうしたいのか、じっくり考えました。ふつうの大学に入りなおすよう親には言われましたが、同じような環境はもう嫌だったんです。そこで母が今の大学のことを調べてきてくれて。ここで止まったらいけないと思い、入学を決めました」――入ってみてどうでしたか。内藤さん「普通の大学と一番違うなぁと思うのは、集まっている学生の年齢や経歴がいろいろなところ。ただみんな勉強がしたくて学校に来ている感じでとても意欲的でまじめです。社会人経験者も多いので、就職のこととか、会社のこととかそういったことも相談できる相手がいるのもいいですね。そんな勉強仲間に囲まれているせいか、以前に比べ積極的になったし、昔からの友人には『明るくなった』とも言われます」――大学3年といえばいよいよ就職活動ですが。卒業後は?内藤さん「手に職を持ちたいという気持ちもあり、資格を取得したいと思っています。興味があるのは社会福祉士です。自分自身つまずいて悩んだ時期があるので、同じように悩んでいる人を助けられるような仕事をしたいと思っています」――最後に中退したことについて今はどう考えていますか。「良かったと思っています。無理して前の学校に通って卒業できたとしてもその先でつまずいたと思いますから。自分で考え直して、自分で決めた道なので、勉強にも意欲的になったし、いろんなことに積極的になれました。自分に自信が持てるようになりました。これから就職活動もありますが、就職支援もしっかりしてくれるので心強いですね」大学入学者の1割が中途退学している今の状況、あなたはどう思いましたか?決して他人事ではないと思われたのではないでしょうか。取材協力:日本大学通信教育部昼間・土曜・夏期・夜間・東京・地方スクーリングにより,仕事との両立を考えている方にも,通学をメインにして単位を修得したい方にも,自分のスタイルにあわせたスクーリング受講が可能。ウェブサイトはこちら。
2015年01月30日