海洋研究開発機構(JAMSTEC)は8月18日、東京電力福島第一原子力発電所(東電福島原発)南東沖の大陸斜面において、放射性セシウムが付着した東電福島原発沖の海底堆積物が沖合に向かって移動している様子を捉えることに成功したと発表した。同成果はJAMSTECと米ウッズホール海洋研究所(WHOI)の研究によるもので、8月18日付けで米国化学会の学術誌「Environmental Science and Technology」に掲載された。JAMSTECとWHOIは、2011年7月より、東電福島原発から南東へ約100km離れた大陸斜面の1点の水深500mと1000mに海中を沈降してくる粒状物を捕集する装置を設置し、同地点同水深の粒状物を継続的に捕集することで、2011年の東電福島原発事故により放出された放射性セシウムの量を測定してきた。その結果、粒状物からは事故から約3年が経過した2014年7月においても事故由来の放射性セシウムが検出された。放射性セシウムの沈降量と濃度は2011年9-10月に最大となり、その後、2012年9-10月と2013年9-10月に小規模な増加が観測された。特に、2013年9-10月の場合は、東電福島原発から100km圏内を複数の台風が通過しており、浅海域の海底堆積物が巻き上がり、海流によって沖合の観測点まで輸送されやすい状況にあったと考えられる。また、通常の海洋生物活動に伴う沈降量の季節変動では、9-10月に沈降量と濃度の増加が起こる可能性は低いという。JAMSTECは今回の成果について「今後の東電福島原発沖の海洋環境やその生態系への影響を評価するためには、海底堆積物に付着した放射性セシウムが今後どれぐらいの速さで減少していくのかを明らかにすることが重要です。そのため放射性セシウム濃度が低下するメカニズムである、海水への再溶解、底生生物による堆積物の攪乱による希釈効果に加え、本観測研究による海底堆積物の再懸濁と流れによる外洋域への水平輸送量をより定量的に明らかにしていきます。」とコメントしている。
2015年08月18日元ライブドア社長で実業家の堀江貴文氏ら各界の著名人が、原発テロを描いた映画『天空の蜂』(9月12日公開)に関してコメントを寄せた。同作は堤幸彦監督がメガホンを取り、俳優の江口洋介と本木雅弘が初共演する映画。作家・東野圭吾氏が1995年に発表した同名小説を原作に、原発テロ事件とその危機に立ち向かう人々の"8時間の攻防"が描かれる。映画の舞台は1995年8月8日の日本。最新鋭の巨大ヘリ「ビッグB」が一人の小学生を乗せたまま、福井県内の原子力発電所「新陽」の真上に静止する。遠隔操作によるハイジャックを実行した犯人は"天空の蜂"と名乗り、「日本全土の原発破棄」を要求。従わない場合は大量の爆発物を搭載したビッグBを原子炉に墜落させると予告する。原発の恩恵と危険性、翻弄されるマスコミ、人々の心理状態など、劇中で描かれるシーンの数々は現実とも重なり合う。2011年に発生した東日本大震災とその後を予見したような内容であるため公開前から注目を集め、試写室の連日の混雑ぶりにもそのことが表れている。一足早く作品を観た著名人から、その感想が届いた。堀江氏は、本作を「原発推進派は原発がゼロリスクでなく時には事故が起きることを正直に告白した上で有用性を主張すべきだし、反対派は感情論で何でも反対、どんな手段を用いても阻止すべき的な短絡的な動きをしてはならないよ、という戒めの映画」と説明。「その裏には感情を表に出さず黙々と働く、しかし時には非難を恐れて自分の意見を言わない卑怯な大衆が隠れている。言い訳を許さない映画」とも評している。「経済や強い力に依存する国民性や、そこに潜む『沈黙の怖さ』を、20年前に原子力の問題と絡めた物語をこの時代に映画化したことが画期的です」というのは音楽プロデューサーの小林武史氏。「フクシマ以前だからこそ、逆に伝わってくるエソラゴトの怖さは、人間を置き去りにして進みかねない科学や経済や政治の怖さでもあります。時代は懲りずに繰り返します。必見」と呼びかける。俳優陣からは「安易な臭いがしない映画である 安易な褒め言葉が似合わない映画である。 映画屋が作った、本物の映画である」(坂上忍)、「最後まで真相が分からず、ハラハラドキドキしました。親子・家族・同僚などさまざまな人間関係のなかで、いろいろな感情が切なかった」(福士蒼汰)、「壮大なテーマの中に激しいアクションシーンがあり、ハラハラしながらも親子の絆、同僚への信頼、大切な人への愛が描かれており、お互いへの思いが深まるすてきな作品です」(前田敦子)、「信じられないほど美しい緊張感と緊迫感。物語の幕が開いてすぐに、涙が止まらなくなり、後半は一時も目が離せない。いろいろなことがおかしい今の日本…たくさんのことが悲しい"今"に、観るべき…渾身の一作」(広末涼子)など。また、木下優樹菜が「手に汗握るだけではなく、体中から汗が湧き出るうえに涙無しでは見られないのでバスタオルを用意してください! フジモンには湯原(江口さん)と三島(本木さん)のように、仕事においても人生においても自分がこう!と思った信念を貫き通してほしいと思います!」、藤本美貴が「日本が直面している問題を描いた作品。今を生きる私たちにとって重要なテーマで、未来を作っていく子供たちにも伝えなければいけないと思いました。家族のために頑張っているお父さんたちをもっと応援したい気持ちになりました」とコメントを寄せるなど、ママタレントにも話題は広がっている。(C)2015「天空の蜂」製作委員会
2015年08月07日東芝と国際廃炉研究開発機構(IRID)は6月30日、福島第一原子力発電所(福島第一原発)2号機の原子炉格納容器内の状況を把握する調査のための小型ロボットを開発したと発表した。福島第一原発 2号機は、燃料デブリの取り出し手順や工法の検討に向けた燃料デブリの分布状況の確認が必要となっており、同ロボットは、今後の原子炉格納容器底部付近の調査に向けた容器内のプラットホーム上の落下物や損傷の有無、状態などの確認のほか、原子炉格納容器底部付近へのアクセスルートの状態を確認することを目的として開発された。機体サイズは長さ約54cm、幅約9cm、高さ約9cmながら、CCDカメラを2台、LEDライト(カメラ内蔵用12灯×2台+単体1台)、放射線量計を1台、温度計を1台搭載。有線ケーブルによる遠隔操作に対応し、直径約10cm程度のパイプの中を通り抜けて格納容器内に進入する予定だという。また、走行中に倒れた場合でも、自力で復帰することが可能な機構も取り入れられているという。なお、同ロボットは操作訓練が7月に実施され、8月中の現場投入が計画されている。
2015年07月01日フジテレビは、東日本大震災からちょうど4年を迎える3月11日(水曜 14:00~16:50)に、原子力発電に焦点を当てる報道特番『震災と原発と日本の覚悟』を、福島から生放送する。キャスターは安藤優子と、福島テレビアナウンサーの坂井有生。番組では、原発事故での避難から帰還に揺れる福島県楢葉町や、廃炉作業を妨げる汚染水など、原発の現状や原発を巡る問題を様々な角度から取材。さらに、動物や昆虫におきた異変や、原発事故による甲状腺がんへの影響といった問題について、複数の専門家や研究者の見解を聞いていく。当日は、原発の廃炉作業と福島復興の拠点でもあるJヴィレッジ内の特設スタジオから生放送し、政府主催の追悼式典や、14時46分の被災3県の表情を中継。ゲストに福島県出身の西田敏行などを迎える。フジテレビの吉澤建一プロデューサーは「問題を未来へ先送りしたまま、原子力のエネルギーを享受するのか。『そうだ』との考えもあるでしょうし、反対の意見もあるでしょう。番組に求められるのは、人々の判断材料のよりどころとなる正確かつ幅広い情報、多様な視点を提供することかと考えています」とコメントしており、原発を含む今後のエネルギーについて、番組で問題提起していく考えだ。
2015年03月10日1986年4月26日、世界でも最も悲惨な事件が起きた。チェルノブイリ原発事故、その現場近郊の立入制限区域で撮影された初の映画『故郷よ』が先日公開を迎えた。現在もその過去は消え去ることなく、人々の教訓として、そして傷として爪痕を残す。本作でその舞台となったその事故現場からわずか3キロの場所にあるウクライナ北部のプリピチャ。同じウクライナを“故郷”とし、そこに生きた女性を演じた女優、オルガ・キュリレンコにその胸の内を語ってもらった。オルガが本作で演じたのは、結婚式当日にチェルノブイリ原発事故で夫を失った女性・アーニャ。主人公とはいえ、本作は女性監督ミハル・ボガニムの長編デビュー作。これまで『007』シリーズでボンド・ガールを務めたこともあり、そして世界的なトップ・モデルとして活躍する彼女が、なぜ無名監督の処女作にオーディションを受けてまで出演したのだろうか?オルガ自身、女優としての自負はもちろんあっただろう。だからこそ「正直ビックリしたわ(笑)」とオーディション当時をふり返る。「最初、脚本を読んで非常に詩的な脚本で魅了されたし、役に惚れこんだの。ミハルは芸術家だと思うわ。それにウクライナで起こった大惨事を扱っていたから。その事件当時、私はすでに生まれていて、小さかったけどニュースになっていたことは覚えていたの。だから、とても親近感を抱いたのよ。でも、製作側からオファーが来ることに慣れてしまっていたから、オーディションをすると言われたときは戸惑ったの(笑)。でも、私が抱いている思いを、役を通して作品に投影できると思ったの」。そんなボガニム監督のこだわりもあってか、「この役を演じなければいけないと強く感じたの」とオルガは作品への、役への思いがさらに強くなったと語る。実際に、資金集めに苦労していることを知ると、自らが製作費を集めるために奔走したほどだ。「この作品は、私にとって特別なプロジェクトで、赤ん坊のようなものなの。悲劇ではあるけど、私の国で起きた出来事がテーマになってるからね。このストーリーは語り継がれるべきなの。『このテーマは話し合われるべき?』、『この作品は上映するべきか?』と地元の人々によく聞かれたけど、毎回『もちろん』と答えていたわ。何か悪いことがあって、怖かったり後悔するようなことが起こると、話し合わずに何も起こらなかったかのように振る舞う人もいるけど、私はそれには反対なの。話し合って、実際に起きたことを人々に伝えなきゃダメなの。同じ過ちや問題を将来繰り返さないためにもね」。女優として、ウクライナ人として、ひとりの女性として、使命を胸に本作を育てたというオルガ。しかし、彼女が「惚れ込んだ」と語るその役柄は、悲劇に飲み込まれ葛藤や恐怖に苛まれる続ける女性だ。そこには“事件の傷”そのものとしての意味も孕んだ難役だった。「こういった悲劇的な大きな出来事を経験したという人を、私たち経験しなかった者が“自分だったらどうだっただろう”と考えるのは非常に難しかったわ。何故かというと、彼らの悲しみや苦しみやそのほかにも沢山の伺い知れないことによって選択肢が決まってくるからなんだと思うの。でも、私が思うにアーニャは未知のことを恐れていたんじゃないかと思うの。彼女は何かいろいろ精神的な問題を抱えていたのは明らかで、例えば人生を恐れていたりそういったことがあったのではないかと思うの。また同じようなこと(大きな悲劇)が起こるんじゃないかと恐れてしまうんだと思うわ」。そして、“ゾーン”と呼ばれる立ち入り禁止地域での撮影を敢行するなど、オルガの言葉の通り「語り継がれるべき」物語であるべく、可能な限りリアルな状況で行われた。その一つに、被爆したために髪の毛が大量に抜け落ちるというシーンがあるが、“美”を追求するモデルでもある彼女にとってはかなりの恐怖体験だったのだとか。「とってもリアルに撮影しようと、髪の毛の中にニセの毛を入れておいて、自然に髪の毛が落ちるように撮ったの。だから、手の中に抜けた毛がいっぱい落ちたりして本当にかなり恐ろしいシーンだったわ…。でも、それはスーパーモデルでも銀行員でも教師でも誰でも、非常にこのシーンというのはかなり恐ろしい瞬間だと思う」。そして、この問題は2011年に起きた東日本大震災をきっかけに、教科書に載っている海の向こうの悲劇ではなく、ここ日本でも“起こり得る”事件なのだと思い知らされた。今回の日本での公開を受けて、オルガは最後にこんな言葉でインタビューを締めくくった。「人間というのは、最後には“生きる”ことしかできないんだと思います。人生というのは先に進んでいくものなので、希望を失わずに、どうにかなる、うまくいくと信じていくしかないと思います。ただ、私に言えることと言えば、このようなことが起こらないように祈りましょう」。(text:cinemacafe.net)■関連作品:故郷よ 2013年春よりシネスイッチ銀座ほか全国にて公開
2013年02月09日環境省は10月30日、東京電力福島第1原発事故の国直轄の除染関連業務に関し、作業員に支払われる「特殊勤務手当」を適正に支給するよう、事業者に周知徹底を求める通知を出した。通知によると、除染関連業務における特殊勤務手当の適正な支給について、「各方面から指摘がなされている」という。環境省によると、除染関連業務においては、共通仕様書に規定されているとおり、下受注者などを含む全ての作業員に対して、労賃に加え、業務内容などに応じた特殊勤務手当を支給すること、適正な賃金および特殊勤務手当が支給なされたことを証する賃金台帳などの書類を工事の完了後速やかに監督職員に提出しなければならないことになっている。通知では、受注者においては、再度仕様書の関連規定を確認し、下受注者などに対してこの規定の周知徹底を求めている。この規定に関しては、受注者と直接雇用関係にある社員などにも適用されるという。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年11月05日原子力規制委員会の2012年度の第7回会議が24日、原子力規制委員会庁舎で開かれた。同会議では、全国16の原発で事故が起きた場合を想定した放射性物質の拡散シミュレーションの試算結果が公表された。拡散シミュレーションは、道府県が、地域防災計画を策定するにあたり、防災対策を重点的に充実するべき地域の決定の参考とすべき情報を得るため(※)に、原子力発電所の事故により放出される放射性物質の量、放出継続時間などを仮定し、周辺地域における放射性物質の拡散の仕方を推定するもの。原子力規制委員会では、「シミュレーション上の限界があるので、あくまでも目安として参考にすべきデータであることに留意が必要である」としている。拡散シミュレーションマップは以下の通りとなっている。緑の線で結ばれている四角の点が、方位別のめやす線量を超える距離となっている。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年10月25日政府は19日午前に開かれた閣議で、2030年代の原発稼働ゼロを盛り込んだ「革新的エネルギー・環境戦略」に関して、文書全体の閣議決定を見送ることを決定した。これは、事実上同戦略を”参考文書”にとどめるものとなる。閣議では、今後のエネルギー・環境政策について、「同戦略を踏まえて、関係自治体や国際社会との議論を続け、不断の検証と見直しを行う」などの方針を表明。これにより、2030年代の原発稼働ゼロ方針が後退する恐れも出てきた。「革新的エネルギー・環境戦略」とは、原発稼働ゼロを目指し、「(1)40年運転制限性を厳格に適用する、(2)原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ、再稼働とする、(3)原発の新設・増設は行わない」の3原則を掲げた指針で、14日に発表されたもの。政府はこの中で「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」と表明していた。同戦略に関しては、日本経済団体連合会(以下、経団連)の米倉弘昌会長、日本商工会議所の岡村正会頭、経済同友会の長谷川閑史代表幹事は18日に合同会見を開催。2030年代の原発稼働ゼロを目指す「革新的エネルギー・環境戦略」について批判し、撤回するよう求めていた。記者会見では、経団連の米倉会長が「(原発稼働ゼロとすることで)国内産業の空洞化は加速し、雇用の維持が困難になることは明らかで、国家戦略会議がとりまとめた成長戦略とも全く整合性がとれていない」と批判。さらに、「原発稼働ゼロを宣言すれば、原子力の安全を支える技術や人材の確保が困難となる。また、核不拡散・原子力の平和利用の重要なパートナーとして位置付け、日本との連携を強力に進めてきた米国との関係にも悪影響を与えるなど、国益を大きく損なう」と指摘し、その上で政府に対し、「経済界として、このような戦略を到底受け入れることはできない。政府には責任あるエネルギー戦略をゼロからつくり直すよう、強く求める」と要望していた。国家戦略室は3団体による記者会見の影響はないとし、「今後も新戦略の内容について検討を続けることを閣議決定したということだ」と話している。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年09月19日