パルコ・プロデュース 2021『ジュリアス・シーザー』は、女性キャストたちだけで描かれるシェイクスピア劇。その見どころを吉田羊さんに聞きました。意外にも、シェイクスピア劇への出演は初めてだという吉田羊さん。「観客として観るシェイクスピアって難解で、途中でセリフを聞き逃すと置いていかれてしまうんですよね。役者としては、舞台上の俳優の胆力とパッションに圧倒されるのだけど、それをどう楽しんでいいかわからない。でも、今思えば、自分と関係のないものだと決めつけて、その魅力に向き合おうとしてこなかっただけなのかなと感じています」というのも、今回初タッグとなる森新太郎さんの演出を受けて、これまで抱いてきたシェイクスピア戯曲のイメージがガラッと変わったそう。「森さんは演出するうえで、英語の原典を引用されるんです。たとえば、同じ“自由”という言葉でも、自ら闘って得ていく“liberty”と人間がもともと持っている権利としての“freedom”では、ニュアンスが違いますよね。そういう言葉ひとつひとつを読み解いて、シェイクスピアが表現しようとする真意を理解して演じさせようとしてくださる。ひとつひとつに時間をかけるので、稽古が始まって10日ほどですが、まだ本読み段階(笑)。それでも、シェイクスピアで大事なのは言葉で、役者同士が言葉という武器を手に戦う作品ですから、着実に理解は深まっていると思います」森さんの稽古は声を荒げることなく淡々と快活に、でも何度も何度も何度も同じ場面を繰り返すスタイル。「98点では満足しない方なんですよね。だから100点が出るまで何度も繰り返すんです。でもそれって、役者を信頼してくれているからで、だからこっちも食らいついていけるんです。何より森さん自身がおもちゃを与えられた子供みたいに、誰より稽古を楽しんでいますから。あと、演出するときに用いる比喩の表現が本当に面白くて」そんな森さんからは、「役の感情に流されないように」ということも。「今回は、言葉を伝えることを重視しているため、感情を作るのは大事だけれど、流されずに言葉をしっかり相手に投げていく訓練をしています。これまで、『セリフを歌うな』というダメ出しはされてきましたが、今回は逆。言葉のリズムが音楽の旋律のようで、口にするうち自然に体に馴染んで気持ちよくなっていく。今まで感じたことがない体験です」舞台『ジュリアス・シーザー』は、共和制ローマの最高実力者・シーザーの暗殺を巡る権力闘争と愛憎の物語。吉田さんはシーザーの親友ながら、暗殺に力を貸すことになるブルータス役。なんと今作は、すべての役が女性キャストによって上演される。シェイクスピアの時代の上演スタイルを踏襲して全役男性で演じられることはときどきあるが、オールフィメールは珍しい試み。「最初こそ俺という一人称に違和感がありましたけど(笑)、戯曲の中の性別を固定するようなセリフは今回ほぼカットされていますし、性別を超えた人間の物語として観ていただけるんじゃないでしょうか。ジェンダーレスが声高に叫ばれる昨今ですが、根本にあるのは、性別で人間をはかるなってことだと思うんです。どんな感情も人間が等しく持つもので、性別によって区別されるものではない。この作品を通じて、そういうメッセージを発信できたらと思うし、そういう意味でまさに今やるにふさわしい作品ですよね」嫉妬や欲が渦巻く中で、ブルータスは「私利私欲がなくて、誠実だと誰もが評する人物」。「人望が厚く優しいけれど、ここぞというときに詰めが甘くて、その優しさが自分の首を絞めていく。そんな人間味のあるブルータスをお見せしたいと思っています」近年の吉田さんといえば、ジェーン・スーさんのエッセイをドラマ化した『生きるとか死ぬとか父親とか』や、異色の設定で話題を呼んだドラマ『きれいのくに』など、ひと癖ある作品に出演している印象が。「脚本、演出家、企画…判断基準はいろいろありますが、基本的にやりたいかやりたくないかの直感です。お芝居って心なので、自分が面白いと思って取り組めないと伝わってしまう。だからこそ心を大事に作品を選んでいきたいなと思うんです」ならば今回の舞台、出演を決めた最大のポイントはどこですか?「優先順位をつけるのは難しいですが、一番はPARCO劇場かな。選ばれた俳優しか出られない劇場のイメージ。長く小劇場で演劇をやってきて、あそこに呼ばれるようになりたいと奮闘してきたので、成功させるぞという思いで臨みます」共和制末期のローマ。次々と戦果を挙げ権力を増大化させていくシーザー(シルビア)の存在を危ぶんだキャシアス(松本)。ブルータス(吉田)を仲間に引き入れ、シーザーを暗殺する。その知らせを聞いたアントニー(松井)は…。10月10日(日)~31日(日)渋谷・PARCO劇場作/ウィリアム・シェイクスピア演出/森新太郎出演/吉田羊、松井玲奈、松本紀保、シルビア・グラブ、三田和代ほか全席指定1万1000円ほかパルコステージ TEL:03・3477・5858大阪、山形、福島、宮城、富山、愛知公演あり。よしだ・よう福岡県出身。舞台を中心に活動する中、2009 年の『returns』や‘11年の『国民の映画』などの三谷幸喜演出舞台に出演し注目を集める。最近の出演作にドラマ『恋する母たち』など。ブラウス¥75,900 スカート¥86,900ピアス¥26,400(以上sacai TEL:03・6418・5977)※『anan』2021年10月13日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・梅山弘子ヘア&メイク・井手真紗子インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2021年10月12日マシュマロ・ウェーブ主催による坪内逍遥訳シェイクスピア「テンペスト」『アラシ』が2021年11月3日 (水・祝) ~11月7日 (日)に若葉町ウォーフ(神奈川県横浜市)にて上演されます。チケットはカンフェティ(運営:ロングランプランニング株式会社、東京都新宿区、代表取締役:榑松 ⼤剛)にて10月8日(金)より発売開始です。カンフェティで10月8日(金)よりチケット発売開始 公式ホームページ 重厚長大で敷居の高いシェイクスピア劇をまるでウィキペディアで調べるように気軽に楽しむ「マシュマロ・ウェーブシェイクスペディアシリーズ」。自由で斬新な観劇スタイルの確立を夢見て劇場を飛び出し庭園や温泉や酒場で今までに7本のシェイクスピア劇を上演してきました。シェイクスピア全37作のうちの8本目の今回は満を持しての劇場公演。大嵐により難破した者たちがたどり着いた絶海の孤島での出会い、再会、陰謀、魔法そして若き二人の恋!!神奈川県演劇連盟による2019年2021年「青少年のための芝居塾」の塾生たちが多数参加。神奈川演劇界の新しい波が、竹久圏のライブによる音楽に乗り、マシュマロ・ウェーブと共に、大海に大きなうねりを起こし、横浜・若葉町の波止場(ウォーフ)にたどり着きます。神奈川県演劇連盟 マシュマロ・ウェーブ1986年設立。同年旗揚げ公演。以来主に渋谷ジアンジアン、青山円形劇場、本多劇場などで活動し、さらに池袋や下北沢などの喫茶店やバー、古民家、リゾートホテル、横浜のスタジオなど、場所を問わない演劇を続けている。東京、神奈川を拠点に活動中。マシュマロ・ウェーブ坪内逍遥訳シェイクスピア「テンペスト」『アラシ』公演期間:2021年11月3日 (水・祝) ~2021年11月7日 (日)会場:若葉町ウォーフ(神奈川県横浜市中区若葉町3-47-1)■出演百音 / 正岡香乃 / 叶橋 / 加藤鈴 / 九井悠樹 / 河原進特別出演: 古屋治男濱田早苗演奏:竹久圏■スタッフ構成・演出: 木村健三舞台監督: 古屋治男照明: 近藤隆文音楽: 竹久圏音響: 小橋豊衣裳ヘアメイク: 濱田早苗・九井悠樹美術・宣伝美術: 正岡香乃イラスト: 百音映像: 金子琴音、越美絵制作: 横井典子(合同会社ヨコタン)■公演スケジュール11月3日(祝・水) 18:3011月4日(木) 14:00/18:3011月5日(金) 14:00/18:3011月6日(土) 14:00/18:3011月7日(日) 14:00※開場は、開演の30分前※上演時間:約1時間■チケット料金一般:2,700円学生:2,000円(全席自由・税込) 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2021年10月12日シェイクスピアのローマ史劇の名作を、女性キャストだけで上演することで注目を集めている、森新太郎演出・吉田羊主演『ジュリアス・シーザー』が10月10日、東京・PARCO劇場で開幕した。その演出力の高さから俳優たちから最も信頼されている演出家・森新太郎が、3月に上演された『Romeo and Juliet ーロミオとジュリエットー』に続いて今年2本目のシェイクスピア劇を手がける本作。もとは男性による政争劇だが、性別を意識させるセリフをあえて排除し、オールフィメールキャストたちが「男性」を演じるのではなく、「人間」を演じるよう演出。人の業や欲望、正義や信念といったものをつまびらかにしながら、よりリアルな人間たちのドラマを浮き彫りにしていく。初日を終えて森は、「権力闘争劇の金字塔ともいうべき本作が、これほどまでに様々な感情の渦巻く人間ドラマであるとは知りませんでした。オールフィメールで臨んだことによって、この作品の新たな魅力に出会えたような気がします。歴史劇や政治劇の類い、そして何よりもシェイクスピア劇といったものに普段まったく食指が動かぬ方にこそ、是非観ていただきたく思います」とコメント。主人公・ブルータスを演じる吉田羊は、「お客様が入って、この作品の最後のピースが埋まったというか、物語が完成したなという感じがしました」と初日公演の感想を述べ、「シリアスな物語にも関わらず笑いが絶えず、毎日、演出をつけられた役者が目に見えて変わっていく様がとても面白かったです」と稽古を振り返る。見どころについては「“言葉”によって突き動かされていく人々の物語を、かくもドラマティックかつパワフルに仕上げた森新太郎氏の手腕! そう来たか!と唸って頂きたいです!」と息巻く。シーザーの腹心の部下・アントニー役の松井玲奈は、「稽古中の『芝居は呼吸。息を吸ったときに感情が生まれる』という森さんの言葉が強く印象に残っています。今まで感じていたことがハッキリとした言葉で表された時、ハッとするものがあり、この現場での大きな学びの言葉となりました(中略)アントニーを演じる上では、生まれた感情を殺さないようにしたいと考えています。ブルータスとアントニーの演説場面は大きな見どころのひとつです。民衆の心が動かされていくように、客席の皆様の心までも動かす演説ができるよう、ひとりひとりの心に強く訴えかけていきたいと思います」と稽古での手ごたえと見どころについて語った。シーザー暗殺を企てるキャシアス役の松本紀保は、稽古を振り返り「キャストが女性だけなので、稽古場でのリラックスした時間は女子校の休み時間の様な雰囲気で、笑顔のたえない時間でした」としつつ、「演出の森さんとは 2 回目ですが、とにかく容赦ないダメ出しの嵐は 2 回目も健在でした。役者の心に火をつけるのがとても上手な演出家だと思います。今回は歌手、スポーツ選手、芸人さんなど、〇〇さんのようにという例えを使われていてそこがとてもわかりやすく面白かったです」「この作品は全てが見せ場なので、1シーンたりとも見逃せない! なかでも民衆達が扇動されていく姿は、現代にも通じるも のがあるのではないでしょうか」とコメントを寄せた。シルビア・グラブが演じるジュリアス・シーザーは今回「妻のキャルパーニアの前では弱みをかなり見せてます」とのこと。「男たちのドラマであるのはもちろん、今回、森さんはキャラクターのヒントとしていろんな俳優や有名人の名前を持ち出し、そのキャラクターに近づけていくキャストの皆さんを見るのが楽しかった。古畑任三郎をはじめ、松岡修造さんからオードリーの春日さんまで、バラエティに飛んだキャラクターたちがステージ上に隠れています」と松本同様、独特な森演出についてふれた。上演は10月31日(日)までPARCO劇場にて。その後、大阪・山形・福島・宮城・富山・愛知と全国を巡る。
2021年10月11日彩の国シェイクスピア・シリーズ第37弾『終わりよければすべてよし』が5月12日、彩の国さいたま芸術劇場にて開幕した。1998年のスタート以来、 芸術監督・蜷川幸雄のもと国内外に次々と話題作を発表してきたシェイクスピア全37戯曲の完全上演を目指す彩の国シェイクスピア・シリーズ。新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、第35弾『ヘンリー八世』終盤4公演、第36弾『ジョン王』全公演が中止となり、シリーズの上演は約1年3カ月ぶり。2016年に2代目彩の国シェイクスピア・シリーズ芸術監督として就任した吉田鋼太郎が、 本シリーズを演出するのは『アテネのタイモン』『ヘンリー五世』『ヘンリー八世』に続き4作目。シェイクスピア作品の中でも問題劇と評される本作であるが、バートラムとヘレン、それぞれの成長物語としてフィナーレを飾るにふさわしい大団円となっている。俳優として数々のシェイクスピア戯曲に向き合ってきた吉田だからこそ、長大なシェイクスピアの台詞であっても、一つひとつの言葉を観客に伝わるよう演者に指導し、最終舞台稽古まで細かい修正を重ねた。個性豊かな登場人物は、現代に生きる私たちにも重なる部分が多く共感できる作品に仕上がった。舞台一面に曼珠沙華(彼岸花)を咲かせる幻想的な劇場空間は、まさに“冒頭3分で観客の心を掴む”蜷川演出を彷彿させ、シリーズ最終作への吉田の意気込みを感じる。曼珠沙華の中を縦横無尽に行き来しながら、スピード感ある場面転換で話が展開する。藤原竜也が演じるのは自分の意志に従い自由に生きる、血気盛んな若き伯爵バートラム。物語の軸として、ヘレンや王侯貴族たちに慕われ、存在感ある魅力が必要な役どころだ。藤原は蜷川幸雄に鍛えられた感性をいかんなく発揮し、吉田からは「最後の作品には竜也がいなくては」と信頼と期待が大きい。バートラムに恋する美しい孤児ヘレンを演じるのは、シリーズ初参加の石原さとみ。稽古開始当初はシェイクスピア独特の言い回しに戸惑いながらも、演出の吉田はもちろん、藤原ら共演者に積極的に相談し、身分違いの恋に悩みながらも強い意志で道を切り開くヘレン像を見事に作り上げた。そして溝端淳平、横田栄司、宮本裕子、正名僕蔵、山谷花純、河内大和ら、本シリーズに欠かせない実力派俳優陣がバートラムとヘレンの異色の恋物語に彩りを添える。上演時間は約2時間40分。埼玉公演は彩の国さいたま芸術劇場にて5月29日(土)まで続く。その後、6月には宮城や大阪、豊橋、鳥栖の全国4箇所で上演を予定。埼玉公演は、各公演の開演2時間前までSAFオンラインチケット( )にて販売中。藤原竜也(バートラム役)・コメント23年続いたシェイクスピア・シリーズの最後の作品なので、 ばっちり締めたいと思います!今回演じるバートラム伯爵はかっこよく、 演じるほどに面白い役です。鋼太郎さんたちと台本に向き合い、 丁寧に稽古してきたので、 千穐楽まで精一杯頑張りたいと思います。石原さとみ(ヘレン役)・コメントもちろん舞台への怖さやプレッシャーはありますが、 稽古がとてもとても楽しくて刺激的で学びが本当に多く、 幸せな時間でした。 舞台に立てる感謝と、 そしてなによりも足を運んでくださる皆様に心からの感謝を込めて全力でヘレンを演じさせていただきます。 心から尊敬する演出家の吉田鋼太郎さんを最後まで信じ抜き、 存分に楽しめたらと思います!私演じるヘレンは藤原竜也さん演じるバートラムから嫌われています。 身分の差をわきまえて生きてきた私ですが、 知恵や知識や前向きさ、 そしてなによりもバートラムが好きだから絶対に手に入れたいという力強さがあります。藤原竜也さんの女好きなクズ男ぶり、 横田栄司さんの化けの皮が剥がれる変化など、 魅力的なキャラクターばかりの喜劇作品です。 現実を忘れてシェイクスピアの世界を存分に楽しんで頂けたら幸いです。吉田鋼太郎(演出・フランス王役)コロナ禍の中、 感染症対策を万全に行い、 無事初日が開きました。 これからも気を引き締めて、 埼玉公演、 地方公演を乗り切っていきたいと思います。そして初日は、 蜷川幸雄前芸術監督の命日です。 今回は、 彩の国シェイクスピア・シリーズ最終作ということもあり、 本当に特別な作品になっていると思います。藤原竜也さん、 石原さとみさんはじめキャストは、 渾身の演技で劇場にすごい風を巻き起こしています。 最高の舞台になっておりますので、 最後まで皆さんにお届けできるよう頑張ります!■公演情報『終わりよければすべてよし』<埼玉公演>5月12日(水)~5月29日(土)会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール<宮城公演>6月4日(金)~6日(日)会場:名取市文化会館<大阪公演>6月10日(木)~13日(日)会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ<豊橋公演>6月18日(金)~20日(日)会場:穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホール<鳥栖公演>6月26日(土)~28日(月)会場:鳥栖市民文化会館 大ホール
2021年05月13日1998年のスタート以来、芸術監督・蜷川幸雄のもと、シェイクスピア全37戯曲の完全上演を目指す「彩の国シェイクスピア・シリーズ」は、蜷川亡き後、2016年10月に二代目芸術監督・吉田鋼太郎が就任し、翌年12月に『アテネのタイモン』によって再開された。そのシリーズ最後の作品となる『終わりよければすべてよし』について、演出・出演の吉田鋼太郎に話を聞いた。「なんとか希望を見出そうとしている人」はすごく美しい――お稽古がスタートして、現時点で感じている手応えをお聞かせください。『終わりよければすべてよし』は、シェイクスピア作品の中でもあまり上演されないものです。なぜかと言うと、不備な点があるとか、扱いづらいとか、終わり方がちょっと苦いとか、カタルシスがないとか、そういうことらしいのですが、実際に稽古をしてみて、ひょっとしたらこれは『ハムレット』と双璧の面白い芝居なんじゃないかと思い始めています。これはアピールでも宣伝でもなんでもなくてね。――それはなぜですか?この作品の主人公でもある(石原さとみ演じる)ヘレンは、自分の運命を自分の力で切り拓いていき、自分の思うような人生を手に入れるという人なんです。そのパワー、その力強さ、そのひたむきさ、そして可憐さがとても魅力的で、その一言一言に、その行動に、目が釘付けになります。『終わりよければすべてよし』メインビジュアル――それをうかがうと、逆になぜこの作品が「問題劇」と言われているのかが気になります。物語の序盤でヘレンは、(藤原竜也演じる)バートラムと結婚をするのですが、その結婚は王の権力によって決められたもので、バートラムはそれを拒否するんですよ。それでヘレンも一度は身を引くけれども、やっぱりバートラムが好き、自分のものにしたいと、ある策略をします。一言でいうと、バートラムをだましてベッドを共にする。それで妊娠するんですけど、え、それやっていいことなの!? って話じゃないですか。それはちょっとダークな話なんじゃないの?と。そういう苦さがある芝居なんですよ。ただそれは、裏を返せば非常に現実的なんですけどね。そこには夢も希望もないかもしれないけども。――なるほど。そういうこともあって、みんなこの芝居をどう解釈していいかわからなかったというところがある。でもそれは戯曲を“読んで”思うことであって、実際に稽古をしてみると、全然そうじゃないんです。そこがシェイクスピアのすごいところ。やっぱり人間は、自分のしあわせを勝ち取るためにあらゆる努力を惜しまない、あるいは、惜しまないほうがいいじゃないですか。諦めちゃうよりも。そういう「なんとか希望を見出そうとしている人」はすごく美しいわけです。それによって周りの人間たちも感化されて、どんどん変わっていくんですね。この作品はそういう美しい構造を持っていることが、稽古しているうちにわかってきて、これはものすごく感動するんじゃないかと思っています。蜷川組の血を受け継ぐ藤原竜也と、“全部持ってる”石原さとみの共演――どんな芝居になりますか?盛りだくさんな芝居になると思いますよ。俳優たちがすごく個性的だし、役も人間臭くて、いつにも増して個性的だから。――さらに描かれるものも盛りだくさんで。そう、そこが面白いところなんですよ。しめやかなところはしめやかだし、悲しみのどん底になることもあるし、だけど賑やかなところはめっちゃ賑やかっていう。ふり幅がすごく激しい芝居です。それを俳優さんたちがキッチリ体現してくれれば、どこを観ていいかわからないくらい盛りだくさんな芝居になると思います。――藤原竜也さんがこのシェイクスピア・シリーズの最後の作品に出演されるのが嬉しいです。やっぱ竜也が出ないとね。蜷川さんなしには語れない俳優人生だから。ぜひこの作品には出てほしいとオファーしました。――稽古場ではいかがですか?もうね、蜷川組の血を受け継いでいますから。「そこでそんなことする?」「そこでそんな大きい声出す!?」「そこで転がる!?」みたいな(笑)。やりたい放題やっていますよ。やっぱり竜也が芝居すると、蜷川さんがいるなって感じがしますね。他のキャストも、「こういうところなんだ、蜷川組の稽古場は」とびっくりしていますしね。楽しいです。――石原さとみさんはどんな方ですか?役にピッタリですよ。悲しむ時はその悲しみ方も深いし、そこから立ち直るパワーもすごいし、行動していく賢さ、パワー、情緒、頭脳……石原さとみは全部持ってるから。――それ以外の皆さんも個性的ですよね。そう。だから、それぞれの個性を出して、やりたいようにやってくれと言っています。強烈だと思うよ~(笑)。――ご自身も出演されますが。強烈だと思う!(笑)――(笑)。登場人物も個性的なのですか?基本的にこの芝居の登場人物は、人間の“負”の部分を持っています。例えば(横田栄司演じる)パローレスはいつも嘘ばかりついて、自分を良く見せようとする。僕が演じるフランス王は、権力を振りかざしてみんなに言うことを聞かせようとする専制君主。道化のラヴァッチも常に軽口を叩いていて、その軽口は肉欲、性欲のことなんです。でもそういう人はおそらく現実にもいますよね。つまりみんな非常に人間的。これでもかというくらい人間的な登場人物です。今作は蜷川さんが残した“無名な作品”の最たるもの――「彩の国シェイクスピア・シリーズ」の最終作品となりますが、そこはどうお感じですか?感慨深いです。僕自身が俳優として鍛えてもらったシリーズですし、僕の人生において絶対に大切な現場だったので。まさかその最後の演出を自分がやるとは思ってもいませんでした。責任は重大であるというプレッシャーはあるんだけれども、それは心地よい……と言うとカッコつけすぎなんだろうけど。このシリーズを楽しみされているお客さんはたくさんいらっしゃいますし、このシリーズに出演してきた綺羅星の如き俳優さんたちもたくさんいらっしゃいますし、その人たちが最後に「よかったね」と言えるような作品に、絶対にしてやろうと思っています。――楽しみです。自画自賛になりますが、このシリーズでは「え、この戯曲がこんなふうになるの!?」とよく言っていただけるんですよ。というのも、蜷川さんが残したのが無名な作品ばかりだったから。今回はその最たるものになると思います。シリーズファイナルの演出は、最初のシーンで劇場の半数の人が泣く!?――おっしゃる通り、吉田鋼太郎演出のシェイクスピアはわかりやすい、ということは、シリーズのキャストの方々からも何度もうかがいました。なぜなのでしょうか?それはおそらく僕が18歳からシェイクスピア作品をやっているからだと思います。ものすごい本数をやってきましたから。だいたい、本で読むシェイクスピアって全然面白くないんですよ。やっぱり芝居でやってこそ。そこは絶対に守らなきゃいけないというか。本で読んだほうが面白かったと思われないようにしなきゃいけない、というのはずっと自分の使命のようになっています。――余談ですが、ラストならではの演出もあったりするのでしょうか?あります。最初のシーンを見たらわかるようにしてあります。そこで劇場の半数の人が泣くと思います。――半数も泣くんですか!?(笑)。具体的には言えないけどね。俺だったら泣きます。――コロナ禍での上演についてはどう思われていますか?今年の1月に『スルース~探偵~』(演出・出演)という芝居をやった時に、お客さんって本当に芝居が観たいなんだなってことがよくわかったんですよ。もうね、ものすごい観ますもん。食い入るようにして。「今観なきゃ、いつ観られなくなるかわからない!」というような感じで。観る側にそれだけの意欲があるのであれば、こっちはそんなに工夫しなくてもいいんじゃないかという気すらしました。そうなると、こっちの負担は減るんですよ。怠けられるという意味ではなくてね。いい関係性ができるから、「さあ観てくれ!がんばるから観てくれ!」じゃなくていいわけです。どちらかというと今までの俺は「さあ観てくれ!」が強いほうだったので、それでお客さんは「ちょっとうるさいな」とか「そんな大きい声出さなくてもいいのにな」とか(笑)。――ちなみに前作『ジョン王』の中止はどう思われていますか?そこは延期と考えていただきたいです。近い将来、必ずやります。小栗(旬)くんも久しぶりのシェイクスピア作品でとても意気込んでいたからね。必ずやるつもりです。――では最後に、個人的に楽しみになさっていることを教えてください。ラストシーンです。「問題劇」と言われる所以のひとつで、なんとなく気持ち悪いラストシーンなんです、本で読むとね。でも多分、シェイクスピア全作品の中で一番素敵なラストシーンだと思う。よくぞこの『終わりよければすべてよし』を書いてくれたと思うくらい。この大団円に、こういうシーンを持ってきてくれるっていうのがね。もう全部がうまくいっている感じがして。もちろん、蜷川さんは亡くなったし、コロナ禍でもあるから、「すべてよし」とは言えないけれど、「終わりよければすべてよし」は願いでもあるので。幕が開くのを楽しみにしていてください。取材・文:中川實穗撮影:HIRO KIMURA公演情報彩の国シェイクスピア・シリーズ第37弾『終わりよければすべてよし』作:W・シェイクスピア翻訳:松岡和子演出:吉田鋼太郎出演:藤原竜也 / 石原さとみ / 溝端淳平 / 正名僕蔵 / 山谷花純 / 河内大和 / 宮本裕子 / 横田栄司 / 吉田鋼太郎廣田高志 / 原慎一郎 / 佐々木誠 / 橋本好弘 / 鈴木彰紀 / 堀源起 / 齋藤慎平 / 山田美波 / 坂田周子 / 沢海陽子【埼玉公演】2021年5月12日(水)~2021年5月29日(土)会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール【宮城公演】2021年6月4日(金)~2021年6月6日(日)会場:名取市文化会館 大ホール【大阪公演】2021年6月10日(木)~2021年6月13日(日)会場:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ【豊橋公演】2021年6月18日(金)~2021年6月20日(日)会場:穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール【鳥栖公演】2021年6月26日(土)~2021年6月28日(月)会場:鳥栖市民文化会館 大ホール最新の公演情報につきましては、公式サイトにてご確認ください。(本ページに掲載された情報は5月7日時点のもの)
2021年05月07日「彩の国シェイクスピア・シリーズ」のフィナーレにあたる舞台『終わりよければすべてよし』が、2021年5月に、彩の国埼玉芸術劇場 大ホールで上演される。宮城・仙台、大阪、愛知・豊橋、佐賀・鳥栖での公演も予定。「彩の国シェイクスピア・シリーズ」がフィナーレへ「彩の国シェイクスピア・シリーズ」は、シェイクスピア全37戯曲の完全上演を目指すシリーズ。1998年のスタート以来、芸術監督・蜷川幸雄のもと、国内外で次々と話題作を発表してきた。2016年10月には、故・蜷川幸雄の後を継ぎ、シリーズ二代目芸術監督に俳優・吉田鋼太郎が就任。2017年12月に『アテネのタイモン』でシリーズを再開させ、2020年2月に上演した『ヘンリー八世』では、その演出手腕が高い評価を得た。23年の時を経てフィナーレを飾る第37弾『終わりよければすべてよし』は、若き伯爵バートラムに恋する身分違いの孤児ヘレンを中心とした物語。バートラムが縦横無尽に駆け巡る姿や、バートラムに一途に好意を寄せるヘレンの様子に、最後まで釘付けになる作品だ。藤原竜也&石原さとみ&吉田鋼太郎が出演キャストには、フィナーレに相応しい豪華メンバーが集結。バートラム役を藤原竜也、ヘレン役を石原さとみが務め、芸術監督の吉田鋼太郎もフランス王役で出演する。<ストーリー>舞台はフランス。ルシヨンの若き伯爵バートラムと家臣のパローレスらは、病の床にあるフランス国王に伺候するためパリに向かう。バートラムの母ルシヨン伯爵夫人の庇護を受ける美しい孤児ヘレンはバートラムに想いを寄せているが、身分違いで打ち明けられない。ヘレンは優れた医師の父から受け継いだ秘伝の処方箋で瀕死の国王を治療し、見返りに夫を選ぶ権利を与えられる。ヘレンはバートラムを指名するが、バートラムは貧乏医師の娘とは結婚しないと断固拒否、しかし国王に叱責されしぶしぶ承諾する。やむを得ず結婚したもののヘレンと初夜を共にする気のないバートラムは「自分の身に着けている指輪を手に入れ、自分の子を宿さなくては夫婦にならない」と手紙で宣言し、伊フィレンツェの戦役へ赴く。ヘレンは巡礼の旅という口実のもと、彼を追ってフィレンツェへ。そこでキャピレット未亡人の家に身を寄せ、当地でバートラムが大きな戦功を上げたこと、そしてバートラムが未亡人の娘ダイアナに求愛していることを知る。ヘレンは真の妻となるためにダイアナとキャピレット未亡人に協力してもらい、ある計画を実行に移す…。【詳細】『終わりよければすべてよし』上演時期:2021年5月場所:彩の国埼玉芸術劇場 大ホール住所:埼玉県さいたま市中央区上峰3-15-1TEL:048-858-5500チケット発売:3月27日(土)予定※仙台、大阪、豊橋、鳥栖公演あり。<キャスト>バートラム:藤原竜也ヘレン:石原さとみデュメイン兄弟:溝端淳平ラフュー:正名僕蔵ダイアナ:山谷花純デュメイン兄弟:河内大和ルシヨン伯爵夫人:宮本裕子パローレス:横田栄司フランス王:吉田鋼太郎
2021年01月23日第一線で活躍中の声優陣によるリーディング形式で、シェイクスピアの代表作『マクベス』が、11月26日(木)よりサンシャイン劇場にて上演されることが発表された。『マクベス』は、実在のスコットランド王マクベスをモデルにした、シェイクスピアの四大悲劇のひとつ。勇猛果敢な一面と小心な性格を持ち合わせた将軍マクベスは、妻と一緒に謀って主君を暗殺し、王位の座を得るが…。演出は映画監督や舞台演出家として活躍する深作健太が担当する。出演者は各公演6名ずつ日替わりで登場。主人公のマクベス役として、『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』で毒島メイソン理鶯の声を担当する神尾晋一郎、『テニスの王子様』のアニメやミュージカルにも出演経験のある豊永利行など、豪華声優陣が第1弾キャストとして発表された。今回の『マクベス』はただ座って読むスタイルの朗読劇ではなく、深作が声優の表現力を最大限引き出す演出で上演されるとのことだ。「声のプロフェッショナルが奏でるリーディングシェイクスピア『マクベス』」作:ウィリアム・シェイクスピア翻訳:平田綾子構成・演出:深作健太期間:2020年11月26日(木)~12月6日(日)会場:サンシャイン劇場出演:《第一弾発表公演》11月27日(金)19:00神尾晋一郎、古賀葵、代永翼、増元拓也、竹内栄治、帆世雄一11月29日(日)13:00豊永利行、安済知佳、中島ヨシキ、坂泰斗、矢野奨吾、堀江瞬11月29日(日)19:00豊永利行、諏訪彩花、中島ヨシキ、坂泰斗、矢野奨吾、堀江瞬12月4日(金)19:00中島ヨシキ、工藤晴香、小野友樹、山中真尋、竹内栄治、汐谷文康12月6日(日)12:30駒田航、石見舞菜香、石谷春貴、荻野晴朗、村田太志、市川蒼12月6日(日)18:00駒田航、大原さやか、石谷春貴、笠間淳、中澤まさとも、榊原優希
2020年10月30日新国立劇場が2009年より続けてきたシェイクスピア歴史劇シリーズが、本日10月2日(金)に開幕する『リチャード二世』をもっていよいよ完結する。通しで観ると9時間を超える上演時間となった2009年の『ヘンリー六世』三部作に始まり、2012年の『リチャード三世』、2016年の『ヘンリー四世』二部作、そして2018年の『ヘンリー五世』まで。毎回ほぼ同じスタッフ・キャストが集結するだけでなく、『ヘンリー六世』と『リチャード三世』、『ヘンリー四世』と『ヘンリー五世』では同一俳優が同じ役を引き継いで演じるという、世界的にみても珍しい趣向で演劇界の話題をさらってきた。今回は役こそ異なるが、岡本健一、浦井健治、中嶋朋子らお馴染みの面々が再集結。演出はもちろん、鵜山仁が務める。文・町田麻子
2020年10月02日ついに緊急事態宣言が4月末まで延期になってしまった。すでに多くの公演が延期や中止になっている演劇界にはまだまだ厳しい日々が続きそう。せめてもの応援の気持ちを込めて刀ミュの配信作(dアニメストア、DMM.comで配信)をレビューする企画、ようやく3本目。ミュージカル『刀剣乱舞』〜三百年の子守唄〜(2017年公演)です。ちょうど「葵咲本紀」の無料配信の日に書いており、感慨無量です。前半、ややネタバレ気味、クライマックスは抑えめでお送りします。○■江戸幕府のために動くことになる3作目「阿津賀志山異聞」に登場した石切丸(崎山つばさ)が再び本丸に。今度は、にっかり青江(荒木宏文)、妖刀・千子村正(太田基裕)、蜻蛉切(spi)、物吉貞宗(横田龍儀)、大倶利伽羅(財木琢磨)の6振りで戦国時代へ。目的は歴史遡行軍によって江戸幕府が誕生しなくなることを阻止すること。3作目の刀ミュは、「阿津賀志山異聞」「幕末天狼傳」とは構成をちょっと変えてきて、続いて見ていると不意を突かれる。冒頭は、前2作のような歴史の再現ではなく、本丸で石切丸と大倶利伽羅が語らうところからはじまる。そして、石切丸の回想という形式で物語が紡がれる。石切丸は手帳に回想録を挿絵入で記している。石切丸の似顔絵! でも、大倶利伽羅は「なれあうつもりはない」とすげない。そして回想へ――。妖刀・千子村正(太田基裕)がソロ「脱いで魅せまショウ」をシャウト気味に歌う。出てきたとき、天井から下りてくるキラキラの紫の電球がアナログながらシアトリカル。ロン毛で口調と仕草は女性的でも上腕二頭筋がむちむちに鍛えられているところが倒錯的。今回の刀剣男士の任務は、天文11年(1542年)、12月三河、岡崎城付近で消息を断ったにっかり青江(荒木宏文)と大倶利伽羅(財木琢磨)の救出。2振りは時間遡行軍の戦いに巻き込まれていた。ここでいつもの歴史の再現。だがそれは遡行軍によって歴史を変えられてしまう瞬間で……。徳川家康を生んだ松平家の家臣が次々討死し、滅びる寸前。でも、そこに希望の光が……。刀剣男士出陣の時の歌と乱舞は、石切丸・千子村正・蜻蛉切・物吉貞宗の4振りによる「鼓動」。新鮮だけど、ちょっとさみしい。このお預けプレイによって、あとで6振りが歌って乱舞する場面にいっそう喜びが増すというニクイ仕掛けとなっている。時間遡行軍によって破壊されてしまった歴史の再生のため、6振りは徳川家の家臣に扮し、にっかり青江と大倶利伽羅が行きがかり上、預かった赤ん坊・竹千代(後の家康)を育てることになる。○■刀剣男士が家臣を演じるという展開ネタバレになるが、石切丸は服部半蔵、にっかり青江は酒井忠次、千子村正は井伊直政、蜻蛉切は本多忠勝、物吉貞宗は鳥居元忠、大倶利伽羅は榊原康政に扮することになるが、いきなり6振りが家臣に変身するわけではなく、徐々に家臣になっていく。物吉貞宗は徳川家康の守り刀だったため赤ん坊に思い入れが深い。赤ん坊を胸に抱き、ねんねん……と子守唄「瑠璃色の空」をやさしく歌う。タイトルが「三百年の子守唄」というだけにこの歌が全編を彩っていく。赤ちゃんが出てくるだけでこんなにも雰囲気が変わるものなのだなあとほうっとなる。刀剣男士たちに芽生える小さきものへの愛情。歴史を守るために斬るということよりも、刀剣男士たちが生命を育んでいく。石切丸と蜻蛉切と物吉貞宗が歌う生命を尊ぶ「希望の源」のときの3振りの声のなんと澄んだことよ。守り刀としてまた幸運を司る物吉貞宗が竹千代への愛情が深いことは当然だが、クールに見えて意外と面倒見のいいのがにっかり青江。意外なことに、にっかり青江が面倒を見ていたという石切丸のナレーションに審神者(観客)が沸く声が配信では収録されている。「食べてしまおうかな」のにっかり青江のセリフでも審神者は沸く。蜻蛉切は大きな身体で父親らしい。大倶利伽羅と千子村正だけまだ竹千代に関わらない。千子村正「ふたりで一緒に暮らしませんか」大倶利伽羅「馴れ合うつもりはない」ここでも審神者は沸く。大倶利伽羅と千子村正のコンビプレーには何度もくすぐられた。○■演技論にも通じるセリフが響くそして、あっという間に10年が経過!天文20年(1551年)駿府、ちょっとさみしん坊な竹千代を物吉貞宗とにっかり青江が励ます。ここで物吉貞宗が「かあかあ ゲコゲコ」と、「きらきら」(「阿津賀志山異聞」より)を歌うのがかなりうれしかった。さらに「かざぐるま」の歌とともに、竹千代が刀剣男士に剣や学問を習いながら成長していく。歌に合わせて剣や勉強をするスケッチ描写のなかで舞台の奥から少年、青年……と俳優が現れて、バトンタッチするように入れ替わっていくところはアナログならではのスマートな見せ方。天文24年(1555年)竹千代、13歳。元服 松平元康と名を改める→永禄2年(1559年) 長男・信康誕生と、どんどん月日は流れ約20年が経過。さらに永禄3年(1560年)桶狭間の戦い、敵は織田信長。いよいよ合戦!今回は、長い年月をかけて歴史の流れのなかで生き家康を慈しみ育て、その家康の嫡男・信康まで育て、その父と子の悲劇を見届けることが物語の中心になっていることは揺るぎないが、興味深かったのは、その流れの中に演技論のようなものがさりげなく盛り込まれているように感じたことだった。それは主として蜻蛉切に関する部分である。彼は主だった本多忠勝になりすましている。合戦前に「堂々とした演技ではないですか」と千子村正にからかわれ、「任務だから耐えているものの申し訳ない気持ちでいっぱいなのだ」と気に病んでいた。悩みながら月日はさらに流れ、元亀元年(1570年)6月、浅井・朝倉、織田・徳川がぶつかり合う姉川の戦い。史実では本多忠勝が大活躍することになっている。それを踏襲しないといけない蜻蛉切は自分が演じることで主を冒涜しているんじゃないかという思いに苛まれる。ここで蜻蛉切を諭す物吉貞宗のセリフは、まるで演技論のように響いた。「別の存在なんです」「なろうと思わなくていんです」「忠勝さまへの思いを戦にぶつければいいんです」現実の話、俳優が歴史上のヒーローやゲームやアニメや漫画のキャラクターを演じるとき、おそらくこういう怖れを抱くのではないだろうか。とくにモデルのいない架空の人物を演じるときでさえ、台本に書かれた人物と自分が完全に同じ考えをもっているわけではないから、どうしてこの役はこんな行動に出るのか、こんなことを考えるのかと疑問を抱くことだってあるだろう。そういうとき俳優はどうするのか。「別の存在なんです」「なろうと思わなくていんです」「思いを戦(芝居)にぶつければいい」……のかもしれない。蜻蛉切と物吉貞宗のやりとりにそんなことを思った。子育てを意外と楽しんでいるにっかり青江の「興味のないこと苦手なことに手を出すのも悪くはない」というセリフも、得意じゃない役をやってみるのも悪くないというふうにもとることができそう。ただこれはべつに、このキャストがキャラに合っている、合ってないという意味ではまったくない。すごく合っていると思う。3次元の肉体をもった俳優たちが2.5次元化するために、いかに身体と技術を極めているかと思いをいたすたび感動を覚えるばかりなのである。物吉貞宗の言葉によって蜻蛉切が、ちゃんとしないと「あの人(本田忠勝)が歴史に残らない」「それは俺自身を許せん」と思い込んでしまうところが単純でかわいい。蜻蛉切は夢中で闘いながら歌う「ただ、勝つために」。「あの人」と歌うたび、その響きが切ない音がして、何度もリピートしてしまう。そこが配信の良さである。○■シェイクスピアをも連想させる「三百年の子守唄」では刀剣男士が6振りそれぞれの誰かとの関係が丁寧に描かれている。長い年月のなかで6振りが順番に誰かと深く関わって、歴史をつないでいくかのように。物吉貞宗とにっかり青江が竹千代(家康)を育て、蜻蛉切が本多忠勝を想い、大倶利伽羅が吾平と触れ合い、石切丸と千子村正が信康の人生に立ち会う。信康をあやすときは石切丸が子守唄を歌う。馴れ合わない一匹狼的な大倶利伽羅もついに榊原康政として徳川に参加。サムライになりたい農民・吾平(高根正樹)に剣を教えているうちに意外な感情が芽生えてくる。石切丸と剣を交えたとき「軽い」と言われてしまうのだが、石切丸が重心を低くした安定感のある殺陣に対して、大倶利伽羅はふわりと身を翻して軽やか。この違いも面白い。そんな大倶利伽羅の剣はやがて……。最後の最後で千子村正が井伊直政として参加。井伊家家臣・木俣の子孫である私としては思い入れもひとしおであった。余談はともかく。千子村正は徳川家と因縁深い刀である。ここで千子村正が徳川に参加することで歴史はどうなるのか(物吉貞宗に対する千子村正のセリフが好きです)。服部半蔵の役割を演じる石切丸の心中は……。長らく一緒に生きてきた刀剣男士たちが徳川家康と信康の顛末にどう向き合うのか。天正7年9月15日、運命の日がやってくるーー。「理由なんかどうでもいい歴史がそうだからそうする」「歴史の流れのなかで哀しい役割を背負う人もいるようだよ」このセリフも演技論っぽく思う。シェイクスピアのセリフにこういうものがある。「この世界すべてが一つの舞台、人はみな男も女も役者にすぎない。それぞれに登場があり、退場がある、出場がくれば一人一人が様々な役を演じる、(以下略)」(『お気に召すまま』より。松岡和子訳)歴史に存在する者たちもそれぞれの役割を懸命に演じているだけなのかもしれない。そして第二部。烏帽子をとると石切丸の雰囲気が全然違う。おなじみの歴史パートの方々の太鼓の演奏は、徳川家のセリフありだった。進化した太鼓の演奏のなかで刀剣男士がついに脱ぐ。上腕二頭筋披露大会。誰の筋肉のつき方が好みかじっくり見てしまう。また配信で見ると、劇場で肉眼で見るのとは違い、画面のなかに入った刀剣男士たちがほんとうに「刀」サイズに見えて愛おしさがさらに増すことに気づいた。
2020年05月08日エス・テー・デュポン(S.T. Dupont)が、新作ペンコレクション「スウォード」の誕生に伴い、限定コレクション「シェイクスピア」を2020年3月21日(土)に発売する。なお、「シェイクスピア」は新店舗である、日本橋三越本店にて3月18日(水)より先行販売される。新たなペンコレクション「スウォード」はイギリスの作家、エドワード・ブルワー=リットンの”The pen is mightier than the sword.(ペンは剣より強し)”という名言にインスパイアされて誕生した。ペンが思考や感情を表現する強い武器であることを表現している。「スウォード」初の限定コレクションは「シェイクスピア」だ。今回のアイテムには、代表的な戯曲「ハムレット」の有名なシーンを象徴する髑髏が施されている。コレクションには「スウォード」ペンに加えて、「ライン2」ライターもラインナップ。「スウォード」ペンはボールペン、ローラーボールペン、日本橋三越本店限定の万年筆が展開される。キャップトップに髑髏、ボディにはシェイクスピアのサインがデザインされている。またライターは、側面に髑髏を飾り、ローラーにシェイクスピアのサインを刻んでいる。各アイテムは、シェイクスピアの誕生年にちなんで、世界限定1,564個で販売される。【詳細】エス・テー・デュポン 新作ペン「スウォード」限定コレクション「シェイクスピア」発売日:2020年3月21日(土)取り扱い:エス・テー・デュポン各店舗価格:・「スウォード シェイクスピア」ペンボールペン 188,000円+税、ローラーボールペン 204,000円+税、万年筆 253,000円+税・「ライン2 シェイクスピア」ライター 274,000円+税カラー:イエローゴールド、ナチュラルラッカー、グリッターダスト※各商品世界限定1,564点※万年筆は日本橋三越本店限定で発売。■先行販売場所:エス・テー・デュポン 日本橋三越本店の店舗情報オープン日:2020年3月18日(水)住所:東京都中央区日本橋室町1-4-1 日本橋三越本店本館1F営業時間:10:00~19:30(百貨店に準ずる)定休日:百貨店に準ずる※問い合わせ先は3月18日(水)以降、オフィシャルサイトにて掲載予定。オープン記念ギフト:限定「シェイクスピア」万年筆の購入者先着10名に人気のライター「ライン2」を象ったキーホルダーを、エス・テー・デュポン製品を38,500円(税込)以上の購入者先着20名にオリジナルノートブックをプレゼント。【問い合わせ先】エス・テー・デュポン 銀座ブティックTEL:03-3575-0460
2020年03月14日新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から劇場を閉鎖していたBunkamuraル・シネマが再開、公開延期となっていた『シェイクスピアの庭』が3月11日(水)より公開決定。併せて、稀代のシェイクスピア俳優である監督・主演のケネス・ブラナーが、特殊メイクによってシェイクスピアへと変貌していく貴重なメイキング映像も到着した。本作は、「ヘンリー八世」上演中にグローブ座を焼き尽くした大火災の後に断筆、故郷で過ごしたシェイクスピアの知られざる最期の日々を、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー出身で、舞台はもちろん『ヘンリー五世』『から騒ぎ』『ハムレット』など映画でもシェイクスピア作品と深く関わってきたケネス・ブラナーが監督・主演。10代の頃からシェイクスピアに魅了されてきた生粋のシェイクスピア俳優であるケネス。今回満を持して自らがシェイクスピアを演じるにあたり、「神格化したシェイクスピアではなく、あくまでも生身の人間として描く」ことに注力したという。情熱とロマンに溢れ、知的活力がみなぎる戯曲を書くことができる作家を、一人の人間として描こうと考えたと語っている。役作りにおいては、ロンドンのナショナル・ポートレイト・ギャラリーにあるチャンドス肖像画を参考にしたといい、「あの肖像画を何度も見にいくうちに、ウィリアム・シェイクスピアの魂がそこにある気がしてきたのです。見た目を再現することが彼を存在させることになり、私を知っている観客には私を感じさせないことが、実際の彼に近づくことになると考えました。広い額、縮れて波打つ髪、髭、細長い鼻……、できるだけ同じ外見にしようとしました」とも語っている。このたび解禁となるメイキング映像内では、ケネスがシェイクスピアへと変貌していく特殊メイクの過程を捉えつつ、「ケネスは誰よりも上手にシェイクスピアを演じた。まるで生き写し」と確信を込めてコメントする年上の妻アンを演じたジュディ・デンチの姿が。さらに、「シェイクスピアを演じた俳優は大勢いるが、現代の俳優ではブラナーが一番だ」と太鼓判を押す、サウサンプトン伯爵役のイアン・マッケランの姿が収められている。『シェイクスピアの庭』は3月11日(水)よりBunkamuraル・シネマほか全国にて順次公開(横浜シネマ・ジャック&ベティでは現在公開中)。(text:cinemacafe.net)■関連作品:シェイクスピアの庭 2020年3月6日より全国にて順次公開© 2018 TKBC Limited. All Rights Reserved.
2020年03月11日いまもなお愛され続ける英国の文豪ウィリアム・シェイクスピアが、故郷で過ごした晩年を描く『シェイクスピアの庭』。この度、本作の監督・主演であるケネス・ブラナーと、年上妻を演じた名女優ジュディ・デンチが語る特別映像が到着した。「ヘンリー八世」上演中にグローブ座を焼き尽くした大火災の後に断筆し、故郷ストラットフォード・アポン・エイヴォンで過ごした知られざる最期の日々を、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー出身で、舞台はもちろん、映画『ヘンリー五世』『から騒ぎ』『ハムレット』などシェイクスピア作品と深く関わってきたケネス・ブラナーが映画化。一方、ジュディ・デンチといえば、オールド・ヴィック・シアターの舞台「ハムレット」でオフィーリア役を演じてから50余年、古典劇と現代劇の両方を見事に演じ、観客・批評家の両方から愛されてきたベテラン。『恋におちたシェイクスピア』(’98)では米アカデミー賞助演女優賞受賞、2016年にはローレンス・オリヴィエ賞で史上最多8度目の受賞を果たした英国を代表する大女優。本作では、シェイクスピアの8つ年上の妻アンを演じている。ブラナーとはロイヤル・シェイクスピア・カンパニー時代から共演を重ね、すでに35年以上のキャリアを共にした仲。ブラナーにとってデンチは“シェイクスピア劇の達人”として、絶大な信頼を寄せる存在でもある。デンチも、本作の出演オファーを受ける際、ブラナー本人が車で自宅まで来ると聞き「ガソリンの無駄使いはやめて、出ます」と即答したという。今回解禁となる特別映像内では、デンチが「ハムネットの死を扱ったのは、この作品が初めて」と、夭折したシェイクスピアの実の息子について触れながら、脚本を称賛。また、ブラナーはシェイクスピアの成功者としての一面よりも、彼の「トラウマから引き起こされた出来事に魅力を感じた」と本作の企画の意図について述べ、妻や娘たちに翻弄される“人間シェイクスピア”を描いた「家族の物語」であると語っている。『シェイクスピアの庭』は3月6日(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:シェイクスピアの庭 2020年3月6日よりBunkamura ル・シネマほか全国にて順次公開© 2018 TKBC Limited. All Rights Reserved.
2020年02月26日シェイクスピアの全作(!)を横糸に、江戸末期の人気講談『天保水滸伝』を縦糸にして織り込んだ、井上ひさし作の壮大にして遊び心あふれる戯曲『天保十二年のシェイクスピア』。1974年に初演され、2002年にはいのうえひでのり演出、2005年には蜷川幸雄演出によって再演された伝説的な音楽劇が、蜷川の演出助手を長く務めた藤田俊太郎の演出でよみがえる。舞台は江戸末期の下総国清滝村。旅籠を取り仕切る鰤の十兵衛(辻萬長)は、跡継ぎを決めるにあたり、3人の娘に父への孝養を問う。父に取り入ろうと、美辞麗句を並び立てる長女・お文(樹里咲穂)と次女・お里(土井ケイト)。一方、三女・お光(唯月ふうか)だけは父を心から愛していたためおべっかの言葉が出ず、父の不興を買って家を追い出されてしまう。月日は流れ、天保12年。跡を継いだお文とお里が支配する清滝村に、醜い容姿と歪んだ心を持つ佐渡の三世次(高橋一生)が現れる。さらにはお文の息子・きじるしの王次(浦井健治)が父の訃報を聞き、無念を晴らすため村に帰ってきて……?ほかに木場勝己や梅沢昌代ら、豪華キャストが集結。ミュージカルを中心に活動する俳優が多く揃っていること、そして宮川彬良が音楽を手がけることから、過去の上演以上に音楽劇的要素が強まりそうな気配もあるが、果たして……。注目の舞台は、2月8日(土)から29日(土)まで東京・日生劇場で、3月5日(木)から10日(火)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演される。文:町田麻子
2020年02月08日ケネス・ブラナーがシェイクスピアを演じ監督も兼任、ジュディ・デンチ、イアン・マッケランら豪華キャストが揃う映画『シェイクスピアの庭』。この度、あたたかなポスタービジュアルと予告編が到着した。没後400年以上を経たいまもなお数々の名作が愛されている英国の偉大な文豪ウィリアム・シェイクスピア。本作は、断筆したシェイクスピアがロンドンを去り、故郷ストラットフォード・アポン・エイヴォンで過ごした“人生最期の3年間”にスポットをあて、知られざる<人間シェイクスピア>を描き出す感動作。公開された予告編では、ロンドンから故郷に戻ったケネス・ブラナー演じるシェイクスピアが、約20年ぶりに帰ってくるシーンからスタート。しかし、シェイクスピアの久々の帰還に妻と娘たちは戸惑いを隠せず。映像からは家族との溝が感じられる。また、シェイクスピアが幼くして亡くなった愛する息子のために庭を造ると言い出し、家族たちは長年秘めていた思いを打ち明ける場面も登場している。そして同時に到着した本ポスタービジュアルでは、「真実の愛はすぐそばにある」というコピーとともに、シェイクスピアに妻アン(ジュディ・デンチ)、長女スザンナ(リディア・ウィルソン)、次女ジュディス(キャスリン・ワイルダー)といった家族が、あたたかく寄り添う形で写し出されている。『シェイクスピアの庭』は3月6日(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国にて順次公開。(cinemacafe.net)■関連作品:シェイクスピアの庭 2020年3月6日よりBunkamura ル・シネマほか全国にて順次公開© 2018 TKBC Limited. All Rights Reserved.
2020年01月09日文豪ウィリアム・シェイクスピアの知られざる最期の日々を描いた、ケネス・ブラナー監督・主演作『ALL IS TRUE』が邦題を『シェイクスピアの庭』として公開されることが決定した。没後400年以上を経て、いまもなお愛され続ける幾多の名作を世に送り出した英国の偉大な文豪、ウィリアム・シェイクスピア。本作では、「ヘンリー八世」上演中にグローブ座を焼き尽くした大火災の後に断筆した、シェイクスピアの知られざる最期の日々を描く。監督・主演を務めるのは、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー出身で、舞台はもちろん、『ヘンリー五世』『から騒ぎ』『ハムレット』など映画でも監督・主演としてシェイクスピア作品と深く関わってきたケネス・ブラナー。「才能に溢れたシェイクスピアは、なぜ49歳の若さで引退したのか?」というブラナーの抱いた疑問から生まれた本作は、断筆したシェイクスピアがロンドンを去り、故郷ストラトフォード・アポン・エイヴォンで過ごした人生最期の3年間にスポットをあてた、心揺さぶる感動作に仕上がっている。シェイクスピアの妻アンを演じるのは、『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』『オリエント急行殺人事件』などに出演し、『恋におちたシェイクスピア』では米アカデミー賞助演女優賞に輝き、2016年ローレンス・オリヴィエ賞で史上最多8度目の受賞を果たした大女優ジュディ・デンチ。シェイクスピアの「ソネット集」の“美青年”のモデル、サウサンプトン伯爵に扮するのは、『美女と野獣』や『X-MEN』シリーズに出演し、映画・演劇・TVドラマなどでゴールデングローブ賞やトニー賞など60以上の受賞歴をもつ『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの名優イアン・マッケラン。また、衣装を『ある公爵夫人の生涯』で米アカデミー賞を獲得したマイケル・オコナー、音楽を『ハムレット』『いつか晴れた日に』で米アカデミー賞候補となったパトリック・ドイルが担当するなど、キャスト・スタッフともに名だたる才能が集結し、「シェイクスピアの晩年を描く初めての映画」というブラナーの“悲願のプロジェクト”を完成させた。『シェイクスピアの庭』は2020年3月6日(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2019年12月10日青木豪が演出・上演台本を手掛ける『十二夜』(原作:ウィリアム・シェイクスピア)が2020年3月に上演される。主演を務める前山剛久と青木豪に話を聞いた。【チケット情報はこちら】本作は、青木がシェイクスピアの本場でもあるイギリス留学から帰国してすぐの2013年に初演され、観客から「こんなに笑えるシェイクスピアは初めて!」と好評を得た作品の再演。当時は客席で観た前山も「めちゃくちゃ笑いました。誰もが楽しく観られるようにアレンジされていた」と振り返り、青木は「“なんちゃってシェイクスピア”です」と語る。「僕らが勝手にシェイクスピアをやったらこんな感じになりました、すみません!みたいなイメージです。例えば衣裳も、“なんちゃって”で遊んでたらこうなっちゃったんです、というような。今回もそのコンセプトは変えません。楽しいことやってるから来て!というふうにつくりたい」今回、7年ぶりの再演で前山を主役(ヴァイオラ役)に抜擢したのは「前ちゃんとは2013年にシェイクスピア作品の『お気に召すまま』をやったのですが、そこから相当活躍してるって聞いて。なのでもう1回、前ちゃんとやるべきだと思いました」という期待から。前山は「豪さんともう1度やりたいと思っていたのでめちゃくちゃ嬉しい。『お気に召すまま』ではオーディションでメインのロザリンド役に選んでもらいました。あのとき豪さんが見つけてくれた、あれがスタートだったという思いがあるんです」と明かす。当時は「いい意味で、それまでで1番追い込まれました。豪さんの稽古って毎回トライしなきゃいけないし、殻にこもるとハッキリ指摘される。でもそのおかげで殻が破れた」。そしてそれ以降、前山は舞台『刀剣乱舞』や『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』など人気2.5次元作品に出演し、この11~12月は宮本亜門演出の『イノサンmusicale』が控えるなど活躍を続けており、「豪さんには僕自身の変化も見てもらいたい気持ちがあります」と意気込む。その他出演者も彩り豊か。納谷健、新納慎也、春海四方、小林勝也らが名を連ね、前山も「納谷健がいて新納さんがいるって時点で稽古場が想像できなくなる(笑)」と言う幅の広さだが、青木は「台詞をしっかり言えて美しく届けるってことがちゃんとできる人たちと、華と勢いのある若い人たちを組み合わせたかった。面白いものができるに決まってるさって気持ちでいます」と化学変化が楽しみになるひと言。前山が「豪さんのシェイクスピアは他にない魅力がある。ぜひ観に来てほしいです」と誘う『十二夜』は2020年3月6日(金)から22日(日)まで東京・本多劇場、3月29日(日)から31日(火)まで大阪・近鉄アート館にて上演。12月1日(日)まで、チケットぴあにて2次プレリザーブ受付中。取材・文:中川實穗
2019年11月28日吉田鋼太郎が演出を手掛ける彩の国シェイクスピア・シリーズ第36弾 『ジョン王』が2020年6月8日(月)より、彩の国さいたま芸術劇場 大ホールで上演。その後、7月には名古屋・御園座と大阪・梅田芸術劇場シアターでも公演を予定していたが、全公演中止となった。彩の国シェイクスピア・シリーズ完結までラスト2作彩の国さいたま芸術劇場を舞台に、シェイクスピア全37作を上演する企画として1998年にスタートした彩の国シェイクスピア・シリーズ。スタート以来、芸術監督・蜷川幸雄のもとで、大沢たかお、菅田将暉、藤原竜也、松坂桃李ら豪華俳優を主演に迎えて国内外に次々と話題作を発表してきた。2017年12月からは、シリーズ2代目芸術監督に俳優・吉田鋼太郎が就任。「アテネのタイモン」でシリーズが再開され、2019年2月に吉田の初演出作品「ヘンリー五世」が上演された。2020年2月には阿部寛主演『ヘンリー八世』の公開を控えており、完結まで残すところ2作品となっている。小栗旬主演、初の歴史劇挑戦へ2020年6月に上演となる第36弾は、英国史上最も悪評の高い王であろうジョンの治世の時代を描いた歴史劇『ジョン王』。今回は、女性の登場人物含めすべての役を男性キャストが演じる“オールメール”公演となり、吉田鋼太郎が、演出を引き続き務める。主演は、本シリーズ4作品目にして初の歴史劇への挑戦となる小栗旬。生命力とユーモアにあふれ世の中をシニカルに見つめる若者“私生児”フィリップ・ザ・バスタードを演じる。そして、タイトルロールのジョン王役は本シリーズ常連の横田栄司、ジョン王が敵対する“フランス王”役は演出も兼ねる吉田鋼太郎が務める。小栗旬は、今作への出演に際し、次のようにコメントした。「僕にとって演劇の師である鋼太郎さんから、 ついに演出を受けられるのが非常に嬉しいです。 シェイクスピアの膨大で美しいセリフを、 きちんとお客様に届けて物語を伝えられるように自分を見つめ直したいと思っています。今回僕が演じる"私生児"は、 このビジュアルのように王族達を見下すような皮肉屋ですが、 稽古場では鋼太郎さん、 横田さんたちと向き合ってシェイクスピア作品を演じるのに必要な演劇筋肉を、 鍛えていきたいと思っています。 」ストーリーイングランド王ジョン(横田栄司) の下へ、 先王リチャード1世の私生児だと名乗る男が現れる。 ジョンの母エリナー皇太后はその 私生児フィリップ(小栗旬) を親族と認め従えることを決める。そこへ フランス王フィリップ2世(吉田鋼太郎) からの使者がやってくる。 領地の引渡しと、 イングランド王位を正当な王位継承者であるアーサーに譲り、 領地を引き渡すよう、 要求しにきたのだ。 それを拒んだジョン王は、 私生児を従えてフランスと戦うために挙兵する。戦闘を開始した英仏両軍の互角の勝負の中、 私生児が両軍に戦闘地の市民への攻撃を提案、 一転して両軍は協力体制となるが、 今度は市民がイングランド王女とフランス皇太子の結婚を提案、 両国の和睦を促す。 賛同した両王のもと、 すぐに結婚式が行われるが、 今度はそこにローマ法王の大使パンダルフが現れ、 フランス王に対し、 キリスト教会と対立するジョン王との関係を絶つか、 ローマ法王の呪いを受けるかの選択を迫る。 悩んだ末にフランス王はジョン王と手を切ることを決意するが、 結果としてフランス軍は敗れてしまう。 両王の思惑が入り乱れる中、 事態は展開し――。【作品詳細】彩の国シェイクスピア・シリーズ第36弾 『ジョン王』■<中止>埼玉公演期間:2020年6月8日(月)~28日(日)会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホールTEL:0570-064-939(休館日を除く10:00~19:00)■<中止>名古屋公演日時:2020年7月3日(金)18:30、4日(土)12:30/17:30、5日(日)13:30、6日(月)12:30会場:御園座TEL:052-222-8222(10:00~18:00)■<中止>大阪公演日時:2020年7月10日(金)18:30、11日(土)12:30/17:30、12日(日)13:30、13日(月)13:30、14日(火)13:30/18:30、15日(水)休演、16日(木)18:30、17日(金)13:30、18日(土)12:30/17:30、19日(日)13:30、20日(月)12:30会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティTEL:06-6377-3888(10:00~18:00)【チケット払い戻しについて】5月16日(土)に予定していたチケットの一般発売はなし。 各種先行販売で購入したチケット代金は払戻し対応となる。各公演の払い戻しの詳細については公式HPより確認。払い戻しの返金に時間がかかる場合あり。キャスト:小栗旬、横田栄司、中村京蔵、玉置玲央、白石隼也、植本純米、間宮啓行、廣田高志、塚本幸男、飯田邦博、二反田雅澄、菊田大輔、水口てつ、鈴木彰紀(※)、竪山隼太(※)、堀源起(※)、阿部丈二、山本直寛、續木淳平(※)、大西達之介、坂口舜、佐田 照/心瑛(Wキャスト)、吉田鋼太郎(※)はさいたまネクスト・シアター出演者スタッフ:作 :W.シェイクスピア翻訳:松岡和子演出:吉田鋼太郎(彩の国シェイクスピア・シリーズ芸術監督)【問い合わせ先】彩の国さいたま芸術劇場TEL:0570-064-939(休館日を除く10:00~19:00)
2019年10月10日村井良大、沙央くらまらが出演するミュージカル『ラヴズ・レイバーズ・ロスト -恋の骨折り損-』が現在、東京・シアタークリエで上演中だ。シェイクスピアの同名戯曲が原作だが、村井曰く「シェイクスピアっぽいところってどこなんだろうなって思う(笑)」ほど現代的にアレンジされた、スタイリッシュかつスピーディに展開するロックミュージカル。オシャレでハイソな美男美女が、恋に振り回され大騒ぎするさまをコミカルに描いている。チケット情報はこちら大学卒業後5年たち、その間放蕩三昧してきた国王と学友たちが「これから3年間は恋愛禁止、ひたすら勉学に身を捧げる」と誓うところから物語は始まる。しかしそこに隣国の王女とその友人たちがやってきて……。オシャレなリゾート風な住宅にバーカウンター、ドレスアップした登場人物たち。キャストはハンドマイク、時にはスタンドマイクを使い、バラエティ豊かな楽曲を熱唱していく。たしかに、シェイクスピアの戯曲に感じる“古典”っぽさは一切ない。最新鋭の“攻めた”ミュージカルだ。若手実力派俳優たちを軸にしたキャスト陣も、それぞれの役柄を楽しそうに演じている。村井良大、渡辺大輔、入野自由、三浦涼介ら男性陣はタキシード姿を粋に着こなす一方で、パジャマ姿などの可愛らしい姿も。沙央くらま、中別府葵、伊波杏樹、樋口日奈ら女性陣は華やかなパーティドレス姿で、目にも楽しい。大雑把に言うと“焼けぼっくいに火がついた”男女らの話だが、ここに大山真志、田村芽実が扮する別のカップルの恋の物語が絡み、見栄を張って素直になれないイケてる男女らが、自分の恋と向き合っていく。劇中、マシンガンが登場したりジープが登場したりパワフルでにぎやかな作品だが、恋に素直になれなかったり、恋しておバカになってしまう若者の姿は、シェイクスピアの時代も現代も変わらないなぁ……と、しみじみ思ってしまう。初日前日には、出演者による囲み取材も。「この舞台、ジープとかジャグジーとか、色々なものが出てきます。何が飛び出すかわからない。今までこういうミュージカルってみたことないなって自分でも思います」(村井)、「ひと場面ひと場面すべて濃厚で笑いがあり、ちょっとホロリとするような場面もたくさんあるので、たくさんの皆さまに楽しんでもらいたい」(沙央)、「稽古も毎日楽しかった」(三浦)、「たくさん面白い人がいっぱい出てきます」(渡辺)、「私たち自身、何回やっても面白くて楽しい」(樋口)と、口々にアピール。会見も笑顔がいっぱいで、キャスト陣のその姿からも、作品の楽しさが伝わってきた。公演は10月25日(金)まで、同劇場にて。チケットは発売中。
2019年10月03日1975年に芥川比呂志、岸田今日子らを中心に設立され、今も橋爪功や金田明夫、文芸・演出部には森新太郎らを擁する演劇集団円。ベテランから若手までがそろって上演される舞台は、シェイクスピアなどの古典やチェーホフ、イプセンなどの近代劇、また別役実、太田省吾、岩松了、渡辺えり、さらにはハロルド・ピンターやマーティン・マクドナーの現代戯曲までと幅広い。「そこに通底するはずの真に劇的なものは何かを、自由に柔軟に問い続ける」(公式サイトより)という姿勢は、12年ぶりのシェイクスピア作品となる今回の『ヴェニスの商人』でも健在だ。足かけ2年のテキレジ(テキストレジー。上演に際して台本に手を入れること)に挑み、劇中ではシャイロック役を務める金田明夫に話を聞いた。物語は商人であるアントーニオが、友人バサーニオのために高利貸し・シャイロックから金を借りた顛末と、バサーニオとポーシャら複数のカップルの話が並行して展開する。キリスト教徒(アントーニオら)とユダヤ教徒(シャイロック)の対立など、読む者にいくつもの視点を差し出すのがシェイクスピアの特徴だが、金田はあえて「時代も国も設定しない。素舞台に、衣裳もシンプルなジャケットで」と言い切る。「人間が対立している構図なんて、古今東西どこにでもあるでしょう。シンプルな舞台にすることで、お客様もシャイロックかアントーニオか、誰かしらに“ああ、これは自分だ”と投影しやすくなる。シェイクスピアの舞台を観ることに、イタリアだとかイスラエルだとか、もっと言えば日本や韓国、アメリカ……どこの国だというのは関係ないと思うから」と金田はその意図を語る。それでは今回、どこに主軸を置くかというと、「家族ですね」とこちらも即答だ。「これまで何度かシェイクスピアを上演してきたけれど、いつも感じるのは“家族の物語”だということ。シェイクスピアの戯曲は、さまざまなものが複雑に絡み合っているバケモノみたいなホンなので、僕らもつい騙されがちなんだけど(笑)。この作品だって突き詰めれば、結局はシャイロックと娘のジェシカの話なんですよ。あと、ポーシャと死んだ父親の話。それから指輪をめぐる、バサーニオとポーシャの夫婦の話。結局はそこから物語が派生するっていうのは、シェイクスピアだろうがチェーホフだろうが、あの『スター・ウォーズ』だって同じだなって」と金田は笑う。またシェイクスピアが“難解”とされている理由に、独特の長ゼリフがあるのは知られているとおり。金田はこの点もテキレジをしながら、出演者が声に出して読み上げる作業を数カ月前から繰り返し、台本を練り直してきた。長ゼリフを相手の「……」で区切るというのも、金田が考えた工夫の一例だ。「役者というのは不思議なもので、“……”が挟まっていると、そこでちゃんと芝居をするんですよ。そうすると観客の目線も自然に、テレビドラマでいう“パン”(カメラの視点が移動する)して、“クローズアップ”になるでしょう」と金田。「俺、新劇俳優にしちゃ、イヤらしいくらいドラマに出ているからさ」と自虐で笑わせるが、観客を飽きさせることなく、同時に役者の側にも芝居の組み立てをしやすくさせる配慮は、映像と舞台の両方で活躍する金田ならでは。セリフ自体も現代の言い回しだが、よくある“今風”のようにくずしすぎない、ほどよい口語体となっている。「今回の稽古でも言い続けているのは、ひと頃の“新劇”のイメージのような、お客さんを置き去りにした舞台には絶対しないでね、ということ。シェイクスピアって何言ってるか分かんないとか、眠くなるとか言われるけれど、それは違うということを伝えるためにはどうしたらいいか。そこを考えてほしいので」一方で、「せっかく他の商業的な舞台とは違う“新劇”でやっているんだから、お客さんに無理におもねることはしなくていいんじゃないか、と。今回は(座席数が)200人くらいの小屋なんで、セリフも声を張らずに普段の会話のようなトーンでね。それでも濃密に感じられるような空間をお届けしたいと思っています」と語った。最後に改めてシャイロックをどう思うか聞いてみると、「女房が死んだ後、娘をこよなく愛して大切に育てた、ただのオヤジですよ。自分の生きている世界には、相反する組織やイデオロギーがあることも分かっている。そんな世界で質素倹約で暮らして、でも娘にはしっかりと持参金を持たせて、同じユダヤ教徒と幸せな結婚をさせたいというのが唯一の夢だった、ただの男です」とサラリ。口調とは裏腹に、その表情には充実ぶりがにじむ。演劇集団円が贈る『ヴェニスの商人』。その味わいは、劇場で存分に堪能してほしい。東京・吉祥寺シアターにて10月3日から13日まで。取材・文:佐藤さくら
2019年09月30日『かもめ』(2016年)のトレープレフ役で初舞台を踏み、鮮烈な印象を残した坂口健太郎。その坂口が、前作に引き続き熊林弘高の演出で、シェイクスピアの傑作喜劇『お気に召すまま』でオーランド役に挑む。【チケット情報はこちら】近年連続ドラマの主演を務めるなど、俳優としてノリに乗っている坂口。そんな彼にとっても3年前の『かもめ』は、特別な1作になっているようだ。「初舞台ということもありましたし、すごく幸せな、宝物のような時間だったと思います。歴史のある作品でもあり、トレープレフという役をつくり上げていく上で悩むこともありましたが、演出の熊林さんが“坂口さんを通したトレープレフが、今回の舞台での1番のトレープレフになるから”と言ってくださって。それは自分にとって大きな糧になったと思いますし、あのタイミングで、あの作品に携われたことは、とてもいいめぐり逢いだったと思います」アーデンの森を舞台に、青年オーランドと男装した娘ロザリンドとの恋の駆け引きを描く本作。演出の熊林が本作を選んだ理由は、ひと言「勘」だと言うが、続けて「実は非常に人間の内面を見せている、イコール“私とはいったい何なのか”を突き詰めている作品」と語っているように、“喜劇”と位置づけられてはいるが、それは単に笑える、面白い話というわけではない。坂口も「無茶苦茶一生懸命やっている姿に笑ってしまったり、笑わせようとしているシーンで逆に冷めてしまったり。“悲劇”とか“喜劇”って言い方はしますが、そこにどういう感情が芽生えるかは人それぞれ。つまりこの作品も、そこはお客さんに委ねちゃっていいのかなと思っているんです」と微笑む。熊林と一部のキャスト、スタッフは、本番5か月前の段階からすでに、この何層にも入り組んだ戯曲を読み解く作業を進めているという。「僕はまだ参加出来ていませんが、『かもめ』の時も実感したんですよね。すべての角度から解釈を進めていくことで、どんな変更にも違和感なく対応出来るということを。本番に向けて少しずつ固めていく作業ももちろん大切ですが、熊林さんの場合、1度つくったものでもどんどん変えていって、全部がまるで液体のように混ざっていく。それって上澄みだけじゃなく、作品の理解度がすごく深かったからこそ出来たことだなと。だから今回も、オーランドという人物の内面にどれだけ迫っていけるかが非常に大事になると思いますし、その作業が今からとても楽しみです」公演は7月30日(火)から8月18日(日)まで、東京・ 東京芸術劇場プレイハウスにて。その後新潟でも上演。取材・文:野上瑠美子
2019年05月13日満島ひかり、坂口健太郎、満島真之介らが出演するウィリアム・シェイクスピアの名作喜劇「お気に召すまま」が、今夏、東京芸術劇場にて上演されることが決定した。シェイクスピアの名作喜劇を演出するのは、気鋭の若手演出家・熊林弘高。2016年上演の舞台、チェーホフ作「かもめ」では、広い空間を効果的に使い、非常に挑戦的かつ魅力的な作品に仕立て高い評価を得た。今回の舞台では、「かもめ」に出演した俳優陣が複数参加。百鬼オペラ「羅生門」以来、2年ぶりの舞台出演となる満島ひかりがロザリンド役、「かもめ」の主人公のひとりである悩める青年・トレープレフ役で舞台デビューを果たし、今回2度目の舞台出演となる坂口健太郎がオーランドー役を。そして中嶋朋子、小林勝也、山路和弘と、「かもめ」から引き続き再度集結した。そのほか、熊林作品で初舞台を踏み、2015年の「ハムレット」以来4年ぶりに姉弟共演となる満島真之介、『空飛ぶタイヤ』「潜入捜査アイドル・刑事ダンス」の中村蒼、個性派俳優の温水洋一も参加、舞台を盛り上げる。<ストーリー>青年オーランドー(坂口健太郎)は、追放された前侯爵の娘・ロザリンド(満島ひかり)と恋に落ちるが、父の遺産を継いだ実の兄オリヴァ―(満島真之介)に命を狙われていると知り、アーデンの森に逃げる。同じくロザリンドも、伯父である新公爵に追放されることに。彼女はオーランドーを追って従妹で新公爵の娘シーリア(中嶋朋子)と、召使のタッチストーン(温水洋一)を伴い森に向かう。女道中では危険だからと、ロザリンドは男装して“ギャニミード”と名乗る。森で暮らすオーランドーは、ロザリンドのことばかり想っている。そこに“ギャニミード”が登場して彼の恋の悩み相談に乗る。ついには「自分をロザリンドだと思って口説いてごらん」と言い、オーランドーは彼が実はロザリンドだと知らずに、思いのたけを告白。2人の恋愛ごっこは次第にエスカレートしていく…。「お気に召すまま-As You Like It-」は7月下旬~8月中旬、東京芸術劇場プレイハウスにて上演予定。※ほか豊橋、新潟、兵庫、熊本、北九州公演あり(cinemacafe.net)
2019年02月15日ウィリアム・シェイクスピア作の舞台『ハムレット』 が、岡田将生主演で公演。期間は東京・渋谷のBunkamura シアターコクーンにて2019年5月9日(木)から6月2日(日)まで、大阪・森ノ宮ピロティホールにて6月7日(金)から11日(火)まで。岡田将生がハムレットに挑むシェイクスピア四大悲劇の1つ『ハムレット』。デンマーク王子ハムレットが、父を殺し、母親と王位を奪った叔父へ復讐を誓う様を描いた、不朽の名作だ。タイトルロールを演じるのは、『伊藤くん A to E』や『家族のはなし』といった映画やテレビドラマのみならず、舞台『ニンゲン御破算』などでも活躍する岡田将生。初舞台作品で、演出家・蜷川幸雄に「いつか君とシェイクスピアをやりたい」と言われていたこともあるといい、待望のシェイクスピア作品への出演となる。恋人オフィーリアには、『日日是好日』『ビブリア古書堂の事件手帖』『来る』など、話題の映画に数多く出演する黒木華、主人公の母親王妃ガートルードには、NHKの連続テレビ小説『半分、青い。』で母親役を好演した松雪泰子が出演。復讐に燃えるレアーティーズには青柳翔、ノルウェー王子フォーティンブラスには村上虹郎と若手の注目株が、ポローニアスには山崎一、クローディアスには福井貴一と実力派ベテラン陣が揃う。また、ホレイシオに堅山隼太、劇中劇の女王に秋本奈緒美といった精鋭キャストが脇を固める。演出を務めるのは、今作で日本初登場となる、ロンドンを拠点に活動する演出家サイモン・ゴドウィン。美術・衣裳は、トニー賞にノミネート経験もあるデザイナーのスートラ・ギルモアが担当する。あらすじ舞台はデンマーク。国王が急死し、王の弟クローディアスは王妃ガートルードと結婚し、跡を継いでデンマーク王の座に就く。父王の死と母の早い再婚とで憂いに沈む王子ハムレットは、従臣から父の亡霊が夜な夜なエルシノアの城壁に現れるという話を聞き、自ら確かめに行く。父の亡霊に会ったハムレットは、実は父の死はクローディアスによる毒殺だったと告げられる。父の復讐を誓ったハムレットは狂気を装う。王クローディアスと王妃ガートルードはその変貌ぶりに憂慮するが、宰相ポローニアスは、その原因を娘オフィーリアへの実らぬ恋ゆえだと察する。父の命令で探りを入れるオフィーリアを、ハムレットは無下に扱う。やがて、王が父を暗殺したという確かな証拠を掴んだハムレットだが、母である王妃と会話しているところを隠れて盗み聞きしていたポローニアスを刺殺してしまう──。【詳細】シアターコクーン・オンレパートリー2019 DISCOVER WORLD THEATRE vol.6Bunkamura30周年記念公演『ハムレット』作:ウィリアム・シェイクスピア出演:岡田将生、黒木華、青柳翔、村上虹郎、竪山隼太、玉置孝匡、冨岡弘、町田マリー、薄平広樹、内田靖子、永島敬三、穴田有里、遠山悠介、渡辺隼斗、秋本奈緒美、福井貴一、山崎一、松雪泰子翻訳:河合祥一郎演出:サイモン・ゴドウィン美術・衣裳:スートラ・ギルモア企画・製作:Bunkamura■東京公演期間:2019年5月9日(木)~6月2日(日)時間:13:00~、18:30~ ※日によって公演時間が異なる。会場:Bunkamura シアターコクーン(東京都渋谷区道玄坂2-24-1)チケット発売日:3月2日(土)10:00チケット取扱い:・Bunkamuraチケットセンター(10:00~17:30/オペレーター対応) 発売日初日特電TEL:03-3477-9912、3/3以降TEL:03-3477-9999、オンラインチケットMY Bunkamura(要事前登録)、Bunkamuraチケットカウンター(Bunkamura1F 10:00~19:00)※発売日初日の取扱いはなし、東急シアターオーブチケットカウンター(渋谷ヒカリエ2F 11:00~19:00)※発売日初日の取扱いはなし・チケットぴあ 発売日初日特電TEL:0570-02-9980(10:00~23:59/Pコード不要)、3/3以降TEL:0570-02-9999(24時間・音声自動応答/Pコード:490-619)、オンラインサイト、セブンイレブン(24時間 毎週火・水曜日の1:30AM~5:30AMを除く)、チケットぴあ店舗・イープラスオンラインサイト、ファミリーマート各店舗(店内Famiポート直接購入)・ローソンチケット 発売日初日特電TEL:0570-084-632(10:00~23:59/Lコード不要)、3/3以降TEL:0570-000-407(10:00~20:00/オペレーター対応)、オンラインサイト、ローソン・ミニストップ各店舗(店内Loppi直接購入 Lコード:32828)■大阪公演期間:6月7日(金)~11日(火)時間:13:00~、18:30~ ※日によって公演時間が異なる。会場:森ノ宮ピロティホール(大阪市中央区森ノ宮中央1-17-5)チケット発売日:4月14日(日)10:00チケット取扱い:・チケットぴあ 発売日のみTEL:0570-02-9530、発売所TEL:0570-02-9999(Pコード:491-541)、オンラインサイト・ローソンチケット 発売日のみTEL:0570-08-4653、発売日翌日以降TEL:0570-00-0407、0570-08-4005(Lコード:53693)、オンラインサイト・CNプレイガイド 発売日翌日以降TEL:0570-08-9977 0570-08-9999、オンラインサイト・イープラスオンラインサイト・森ノ宮ピロティホール 窓口販売問い合わせTEL:0570-200-888(10:00~18:00/キョードーインフォメーション)
2018年11月22日彩の国シェイクスピア・シリーズ第34弾となる舞台『ヘンリー五世』全19公演が、2019年2月8日(金)から24日(日)まで、埼玉・彩の国さいたま芸術劇場にて開催される。彩の国シェイクスピア・シリーズ最新作1998年のスタート以来、芸術監督・蜷川幸雄のもとで国内外に次々と話題作を発表してきた、シェイクスピア全37戯曲の完全上演を目指す彩の国シェイクスピア・シリーズ。2017年冬、故・蜷川幸雄に代わり俳優・吉田鋼太郎が芸術監督に就任し、『アテネのタイモン』と共に同シリーズが再び始動した。蜷川幸雄演出『ヘンリー四世』のその後を描く吉田演出では2作目、シリーズ第34弾となる本作の原作は、史劇『ヘンリー五世』。2013年にシリーズ第27弾として蜷川の演出で2部作を1本にまとめて上演された『ヘンリー四世』のその後の時代を描いた作品だ。前回、国王陛下の放蕩息子・ハル王子と無頼者の酔いどれ騎士・フォルスタッフという、シェイクスピア作品に登場するキャラクターの中でも高い人気を誇るコンビを演じた松坂桃李と吉田鋼太郎が、再びタッグ。ハル王子に松坂桃李、演出&説明役に吉田鋼太郎松坂桃李演じる、ハル王子改めイングランド王ヘンリー五世の活躍を中心に、英仏百年戦争の激戦のひとつである「アジンコートの戦い」に臨む両国の民衆や貴族、軍人たちの姿を描いた群像劇となっている。吉田は本作では、作品の各幕で観客を物語へいざなう説明役(コーラス)を務める。溝端淳平、横田栄司、河内大和ら出演他の出演者には、ヘンリー五世を挑発し戦いへと推し進めるフランス皇太子役に、『ヴェローナの二紳士』で主演を務めた溝端淳平、その父フランス王役に本シリーズに欠かせない名優・横田栄司、無頼漢のピストル役にシリーズ初参加の中河内雅貴、イギリス軍の騎士フルエリンに前作『アテネのタイモン』で名演をみせた河内大和など、個性豊かな俳優陣が名を連ねる。開催概要舞台『ヘンリー五世』開催期間:2019年2月8日(金)〜24日(日) 全19公演会場:彩の国さいたま芸術劇場大ホール※埼玉公演後、ツアー公演の予定あり。演出:吉田鋼太郎(彩の国シェイクスピア・シリーズ芸術監督)出演:松坂桃李、吉田鋼太郎、溝端淳平、横田栄司、中河内雅貴、河内大和間宮啓行、廣田高志、原慎一郎、出光秀一郎、坪内 守、松本こうせい、長谷川志、鈴木彰紀、竪山隼太、堀 源起、續木淳平、髙橋英希、橋本好弘、大河原啓介、岩倉弘樹、谷畑 聡、齋藤慎平、杉本政志、山田隼平、松尾竜兵、橋倉靖彦、河村岳司、沢海陽子、悠木つかさ、宮崎夢子<チケット>一般発売日:2018年11月17日(土)チケット料金:[一般]S席9,500円、A席7,500円、B席5,500円[SAFメンバーズ]S席8,600円、A席6,800円、B席5,000円[U-25(B席対象)]2,000円(劇場のみ取り扱い)※U-25チケットは、公演時に25歳以下である事が条件。入場時に身分証明書の提示が必要。※SAFメンバーズの予約はSAFチケットセンター、劇場・会館窓口にて受付。チケット取り扱い:・SAFチケットセンター TEL:0570-064-939(休館日を除く10:00〜19:00)[窓口]彩の国さいたま芸術劇場、埼玉会館・イープラス・チケットぴあ TEL:0570-02-9999・ホリプロオンラインチケット・ホリプロチケットセンター TEL:03-3490-4949(平日10:00~18:00、土曜10:00~13:00、日祝・休)※その他詳細は公式WEBサイト(より。■仙台公演期間:2019年3月2日(土)~ 3日(日)<全3回>劇場:仙台銀行ホールイズミティ21・大ホール■大阪公演期間:2019年3月7日(木)~ 11日(月)<全6回>劇場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ【問い合わせ先】彩の国さいたま芸術劇場TEL:0570-064-939(休館日を除く10:00〜19:00)
2018年09月06日宮藤官九郎さんがシェイクスピアの『マクベス』にヘヴィメタルを組み合わせて脚色した劇団☆新感線の『メタルマクベス』。昨年オープンした、客席が360度回転する劇場・IHIステージアラウンド東京でキャストを変えて連続上演される。「新感線に宮藤さんにシェイクスピアって、演劇のオイシイところを全部ミックスしたような作品。12年前の初演時、出たかったと悔しい気持ちで客席で観ていた思い入れの強い演目で、21年ぶりに劇団に帰れるって、こんな嬉しいことはないです」橋本さとしさんが新感線の作品に出演するのは、’97年の退団以来だ。「稽古初日、僕は当然ノスタルジックな気持ちもあり、少し緊張して行ったわけですよ。でも、顔を見た途端、(主宰で演出の)いのうえ(ひでのり)さんがいきなり演出を付けだし…鞄を置く前ですからね(笑)。劇団員の方々も特別な想いで迎えてくれるわけでもなく、当たり前のように普通に話しかけてくる。一瞬で当時の空気に戻って、久しぶりに帰ってきた実家みたいな感じでした」長い年月で大きく変わったのは、劇団のネームバリューと公演の規模。「でも、いのうえさんの頭の中にあるものは、当時から何も変わってなくて、変わったのは、それを舞台上で具現化できるだけの技術と力が追いついてきているってこと。『一瞬、空中で止まってほしい』とか、無茶ブリも相変わらずです(笑)。ただ、360度客席が回転する劇場のノウハウを身につけたいのうえさんからは、次々と新しいアイデアが湧き出てくる。いま50代になって当時と同じ体のキレを要求されつつ、そのアイデアに食らいついていくだけで必死です。それでも、いのうえさんの求めるもの全部に応えたいし、劇団を離れて、『レ・ミゼラブル』などのミュージカルに本気で挑んで身につけたものも見せていきたい。自分を信じる力を教えてくれたこの場所で、すげーもんをお届けしますって自信を持って宣言したいです」はしもと・さとし劇団退団後は『レ・ミゼラブル』などの本格ミュージカルや、蜷川幸雄演出作のほか映像作品も多数出演。近作にドラマ『ブラックペアン』が。『メタルマクベス』2218年の廃退した近未来と、バンドブームに沸いた1980年代の日本とを行き来しながら、マクベスの世界が展開。ミュージカル界きっての歌い手、濱田めぐみさんとのコンビにも注目。7月23日(月)~8月31日(金)豊洲・IHIステージアラウンド東京作・宮藤官九郎演出・いのうえひでのり出演/橋本さとし、濱田めぐみ、松下優也、山口馬木也、猫背椿、粟根まこと、植本純米、橋本じゅん、西岡徳馬ほか全席指定1万3500円(税込み)ステージアラウンド 専用ダイヤルTEL:0570・084・617(10:00~20:00)※『anan』2018年7月25日号より。写真・土佐麻理子インタビュー、文・望月リサ
2018年07月22日女優・観月ありさが舞台『シェイクスピア物語』に出演することが13日、わかった。第1弾キャストとしてほかに、五関晃一(A.B.C-Z)、藤本隆宏、小川菜摘、秋野太作が発表された。同作は、イギリスの作家トム・ストッパードの原作をヒントに、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』がなぜ生まれたのかを紐解いていく。観月はヒロイン・ヴァイオラを演じ、男役にも挑戦。さらに、シェイクスピアのライバル俳優であり友人のネッド役を五関、ヴァイオラを金で娶ろうとするウェセックス卿を藤本、ヴァイオラの母親・マーガレットを小川、シェイクスピアの理解者である劇場主・ヘンズロー役を秋野が演じる。シェイクスピア役をはじめとした他キャストは後日発表となる。関東公演は神奈川県芸術劇場KAATで12月23日~25日、1月7日~9日の8公演限定で行われる。大阪は1月21日~22日に梅田芸術劇場メインホール、名古屋公演は1月28日に中日劇場。脚本・上演台本を元生茂樹・福山桜子が担当し、演出は佐藤幹夫が務める。
2016年11月13日『ヘンリー六世』三部作(09年)、『リチャード三世』(12年)と続いた新国立劇場のシェイクスピア・シリーズに、待望の第三弾『ヘンリー四世』が登場する。『ヘンリー六世』ではタイトルロールを、『リチャード三世』では、リチャードを倒すリッチモンド伯、後のヘンリー七世を演じた浦井健治が、今度はヘンリー六世の父、後に名君ヘンリー五世と称えられるハル王子に扮する。「7年前、ヘンリー六世を演じながら、ずっと父・ヘンリー五世の偉大さを感じていました。その役を演じることができるのは、とても光栄に思います。壮大な企画に関わる皆さんの熱意にこたえたいですし、僕自身もやるからには全力で臨みます」新国立劇場演劇『ヘンリー四世』チケット情報第一部では、ハル王子は父王の心配をよそに、素行のよくない中年騎士フォールスタッフと遊びほうけてばかりいる。しかし、反乱が起きてハル王子もフォールスタッフも戦場へ。第二部では、フォールスタッフが抵抗勢力の討伐に向かうが、ハル王子がヘンリー五世として即位したことを聞きつけ、恩賞目当てに王宮へ向かう。しかし、待っていたのは思いがけないハルの変貌だった。1・2部を通して上演すると6時間にもなる大作だ。「第一部は喜劇タッチで、ハルとフォールスタッフの親密さが大事だと思っています。ふざけ散らすのは、結構エネルギーが必要ですけど(笑)。第二部では、時代が大きく動いていく歴史劇になっていて、全く違うのが面白い。6時間と言っても戯曲を読んだ体感としては長くはありません。ハルとフォールスタッフの人間的な変化が面白くて、夢中で読みました。お客様にも楽しんでいただけるのではないかと」ハル王子は、やんちゃなこともするが、父との葛藤を乗り越えていく強さも持っている。「ただの放蕩息子ではなく、何か考えがあって、庶民の中に混じっていると思います。そのほうが父との和解のシーンがより深いものになる気がします。頭もいいですし、比喩の言葉もセンスがすごくいい。まだ、演出の鵜山さんのお話を聞いていないのでわかりませんが、王子としての自覚は忘れずに、品を失わないようにしたいですね」演出の鵜山仁とは、新国立劇場では3作目、他作を含めると5作目のつきあいとなる。「一番インパクトがあったダメ出しは“その長台詞ではお客さまが飽きる”。同じトーンでしか語っていなかったからですが、鵜山さんは色に例えて、そこは青、次は赤とイメージを言ってくれて、叫べというのもありました。結局、叫ばないことになったのですが、一度叫んだことが僕の中に残って、その台詞の表現が変わるのです。全てを把握した演出で、ついていくのに迷いはありません」身分を超えた友情、父と息子の葛藤と和解、そして目まぐるしく変わる権力の行方など、多彩な魅力に満ちた『ヘンリー四世』を、浦井はしっかりと背負って堂々と立つ覚悟だ。公演は11月26日(土)から12月22日(木)まで東京・新国立劇場中劇場にて上演。チケット発売中。取材・文:沢 美也子
2016年09月16日23日(現地時間)、ウィリアム・シェイクスピア没後400年を記念したイベントがシェイクスピア出身地の劇場で行なわれ、ベネディクト・カンバーバッチらが出演、イギリス王室のチャールズ皇太子も参加した。23日、シェイクスピアの故郷であるイギリス中部のストラトフォード=アポン=エイヴォンの王立シェイクスピア劇場では、イアン・マッケランやジュディ・デンチ、ヘレン・ミレン、ベネディクト・カンバーバッチといった俳優たちが出演するイベントが開かれた。国内ではTVで生中継され、ヨーロッパ各地の映画館に配信されたイベントでは、「ハムレット」に出てくる有名な台詞「生きるべきか死ぬべきか(To be, or not to be)」をどう演じるべきかをディスカッションするという寸劇が行なわれた。ベネディクトや、現在ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーでハムレットを演じているパーパ・エシデュをはじめ、俳優たちがそれぞれのスタイルで台詞を言うが、誰も納得しない。ハムレットの扮装をしたジュディがイアンと議論しているところに「ちょっとひと言、いいですか?」と言いながら、客席からステージに上がってきたのはなんとチャールズ皇太子。デンマークの王子、ハムレットの気持ちがわかるのは自分だとばかりに、「生きるべきか死ぬべきか。…それが問題だ」と台詞を披露した。「それが」の後に一呼吸置いて「問題だ」を強調する台詞回しに、皇太子を見守っていたベネディクトたちが「なるほど!」と得心した表情を見せるという寸劇に、客席は大いに湧いた。(text:Yuki Tominaga)
2016年04月25日演出家・蜷川幸雄がシェイクスピア戯曲37作品の上演を目指す“彩の国シェイクスピア・シリーズ”。その第32弾『尺には尺を』で、藤木直人が初のシェイクスピア舞台に挑むこととなった。昨年、蜷川の演出舞台『海辺のカフカ』に出演し、ロンドンやニューヨークほかを巡るワールドツアーを経験。長いツアーが終わる直前に、本作への出演が決まったという。「尺には尺を」チケット情報「ようやく『海辺~』が終わる……と思っていた時だったので、ツアー最終のソウル公演の千秋楽は「でも、まだ終わらないんだな…。半年後にはもうシェイクスピアの舞台に立っているの!?」という気持ちでした(笑)。お客様の前で演じるのは当然エネルギーがいるし、緊張感もありますけど、何よりも蜷川さんの前で演じるほうが緊張するんですよ(笑)。だから、またあの稽古場の緊張感を味わうのか…って思いましたね」喜劇であると同時に、衝撃的な展開から問題劇とも呼ばれる本作。藤木が演じるのは、侯爵(辻萬長)の代理でウィーンの統治を任された青年アンジェロだ。とくに性道徳について厳しく市井を取り締まるなか、アンジェロは不貞の罪を犯した貴族クローディオに死刑を宣告する。しかしクローディオの妹イザベラ(多部未華子)に恋をしてしまい……。「内容が気になってしまって」という藤木は、上演台本を渡される前に、戯曲を購入して読んでみたそうだ。「400年前の本であって、文化も大きく違い、独特な言い回し…。やっぱり難解というイメージがありました。しかも、その後に上がってきた上演台本が、内容は同じでも表現がことごとく違っていたんですよ(笑)。そこが翻訳劇の難しいところだなと。英語の台詞という正解があるのに、異文化である日本語に置き換えて上演するということ。でも、その挑戦を蜷川さんはずっと続けてきて、いろんな意見を言われながら闘ってきて、世界に認められた。『海辺~』のワールドツアーでは行く先々で熱狂的に迎え入れてもらったんですが、それは蜷川さんのやってきたことの証なんだなと感じましたね」前作と違い、今回は主演として稽古場の中心に立ち、蜷川の指揮を真っ向から受けとめる。「蜷川さんがどのような切り口で演出されるのか、その楽しみはあります。まあ、自分が出ない立場だったらその楽しみだけで済んだんですが(笑)。打たれ弱いんですよね」と苦笑いしつつ、覚悟は決めている。「蜷川さんが『この役を藤木がやってもいい』と言ってくださったのだから、応えるしかない。ハードルは限りなく高いし、逃げ出したくなるようなことが待っているでしょうけど、通過すべき時間なのかなと思います。あまり台詞を“独特で難解”と意識し過ぎず、自分の言葉として発せられるように頑張っていきたいと思います」公演は、5月25日(水)から6月11日(土)埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 大ホール、6月17日(金)から19日(日)まで福岡・北九州芸術劇場 大ホール、6月24日(金)から27日(月)大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演。チケットは発売中。取材・文:上野紀子
2016年04月11日2016年元旦に開幕する宙組宝塚大劇場公演の制作発表会が、11月12日に宝塚バウホールで行われた。演目は没後400年となる劇作家シェイクスピアを主人公にしたミュージカル『Shakespeare~空に満つるは、尽きせぬ言の葉~』と、宙組トップスター・朝夏まなとの大きく真っ直ぐな瞳をテーマにしたダイナミック・ショー『HOT EYES!!』。宝塚歌劇団102周年の年頭を飾る、注目のオリジナル作品二本立てだ。宝塚歌劇宙組公演『Shakespeare~空に満つるは、尽きせぬ言の葉~』/『HOT EYES!!』のチケット情報まずはミュージカルの役柄に扮した朝夏まなと、宙組トップ娘役・実咲凜音(みさき・りおん)、宙組男役スター・真風涼帆(まかぜ・すずほ)によるパフォーマンスが披露された。ウィリアム・シェイクスピア役の朝夏は、伸びやかな歌と清々しい存在感が際立つ。「歌詞がとても美しく詩的なのでそこを大切に演じました」と朝夏。シェイクスピアの妻アン・ハサウェイ役の実咲も美しい歌声を披露し、「ウィリアムに興味をもって近づいていくチャーミングさを意識しました」と語る。爽やかな雰囲気のトップコンビとは相反する光を放っていたのが、ハンズドン卿ジョージ・ケアリー役の真風。髭をたくわえた渋い容姿で力強くソロナンバーを歌い、「“悪”ではなく“欲”を大切に演じました」と話す。謎多き雰囲気で、物語を盛り上げそうだ。パフォーマンスの最後は朝夏がひとり舞台上で、主題歌『Will in the World』を堂々と歌う。朝夏の代表曲になりそうな壮大で美しい楽曲だ。作・演出の生田大和はこの曲について「ウィリアム自身が世界に立ち、世界へと願いが広がるというイメージ」と明かし、今回のシェイクスピア役は“清廉さと人を惹きつけるチャーミングさがある”朝夏の魅力に基づいた人物像になると語る。「いつかシェイクスピア作品に出られたらと思っていましたが、まさか本人役をやらせていただけるとは(笑)。ひとりの男としての部分と、色々な言葉を生み出す作家としての部分、その二面性を大事に演じたいです」(朝夏)『HOT EYES!!』は、朝夏が宙組トップになってから初の新作ショー。宝塚歌劇団のショー作家の旗手・藤井大介は、「朝夏率いる今の宙組のダイナミックさを、よりゴージャスにお見せするショーにしたい」と話す。そのダイナミックさを活かす試みでもあるのが、全場面で大階段のセットを使う大胆な演出。『オペラ・トロピカル』(草野旦作・演出)以来宝塚では33年ぶりとなる。「草野先生の作品を学生時代に観て衝撃を受け、いつかやってみたいと思っていた演出です」という藤井の思いを受け、朝夏は「足腰を鍛えます!」と笑顔で応えていた。兵庫・宝塚大劇場公演は2016年1月1日(金・祝) ~ 2月1日(月)まで。また、2月19日(金) ~ 3月27日(日)まで、東京宝塚劇場にて上演される。チケットぴあでは兵庫・宝塚大劇場公演のWEB先行抽選「プレリザーブ」を11月18日(水)11:00 ~ 11月23日(月・祝)11:00まで受付。取材・文/小野寺亜紀
2015年11月17日シェイクスピアの時代にならって男性キャストだけで演じる“オールメール”作品。蜷川幸雄演出・監修で上演されてきた彩の国シェイクスピア・シリーズの最新作『ヴェローナの二紳士』が、この秋お目見えする。溝端淳平が初めての女役に挑むなど、魅力的なキャストが揃うなか、溝端演じる娘の恋人役に三浦涼介が抜擢された。同じ蜷川演出の『わたしを離さないで』でも鮮烈な演技を見せた三浦。初めてのシェイクスピアで、さらなる進化を遂げようとしている。舞台『ヴェローナの二紳士』チケット情報三浦が蜷川演出作品に出演するのは、2012年の『ボクの四谷怪談』、2014年の『わたしを離さないで』に続き、3度めとなる。「蜷川さんはとても愛のある人。そのおかげで、前向きになったり、お芝居が楽しいと思ったり、この先も続けていっていいんだなと思えたりしたんです」とその出会いの大きさを語る。ゆえにまずは、「蜷川さんとまたお仕事するということに自分の意味を置きたい」と言う。蜷川によって開いた可能性と力を自らで存分に活かしたいのだ。「しかも、以前、蜷川さんから弱い役のほうが向いてると言われたことがあって、今回演じる役はそれとは真逆なので。蜷川さんが納得するものを見せるという意味で勝負だなと思っているんです」。『ヴェローナの二紳士』で三浦が演じるのはプローティアス。溝端扮するジュリアという恋人がいながら、留学先のミラノで親友の想い人に横恋慕するという、いわば自分の思いのままに生きる男である。「本当に自分の思いにまっすぐな人なんです。相手に対しても隠しごとなくぶつかっていって、失うものがあってもいいから自分を全うしようっていう。そこはちょっと自分に近い部分もあるので(笑)、描かれている時代も環境も違うんですけど、違和感なく台本を読めました」。シェイクスピアの世界に初めて触れて、“美しい”とも感じたそうだ。「台詞はちょっと難しい言葉が並んでいたりするけど、噛み砕いていけば本来の人間の姿が見えてくるような感じがするんです。今は情報がありすぎて、人に何かを伝えるにも遠回りしたりしているから、言葉とか行動がこれぐらいまっすぐでいいんじゃないかなと思ったりします」。また、男性が女役を演じることで“美しさ”がより高まるという期待も。「男ならではの女性の美しさへのこだわりみたいなものってあると思うので(笑)、その美しい娘たちに本気で惚れたいと思います」。オールメールだからこそ広がるイマジネーションがある。その喜びを、演者とともに味わいたい。公演は10月12日(月・祝)から31日(土)まで埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 大ホール、11月6日(金)から9日(月)まで大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ、11月14日(土)・15日(日)は愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール、11月21日(土)から23日(月・祝)まで福岡・キャナルシティ劇場にて。取材・文:大内弓子
2015年08月20日