40年近くもの間、「プラグリェース」と名付けられたロシアの無人補給船は、「サリュート」や「ミール」、そして国際宇宙ステーションといった宇宙ステーションに向けて、「宇宙の定期便」として運用に必要不可欠な補給物資を送り届けてきた。プラグリェースは有人宇宙船「サユース」をもとに開発され、サユースが改良されると共に、プラグリェースも改良を、あるいはその逆もまた然りと、両者は常に一心同体となって、宇宙開発の歴史を歩み続けてきた。そして12月21日、最新の、そしておそらく最後となる改良が施された「プラグリェースMS」が宇宙に飛び立った。プラグリェースMSとはどんな補給船なのか、従来のプラグリェース補給船から何が変わったのか。そして、その先にどんな意味があるのかについて見ていきたい。○プラグリェースMSロシア連邦宇宙庁は12月21日、新型補給船「プラグリェースMS-01」を搭載した「サユース2.1a」ロケットの打ち上げに成功した。2日後の23日には国際宇宙ステーション(ISS)とのドッキングにも成功し、2436kgの補給物資を送り届けた。ロケットは日本時間12月21日17時44分39秒(カザフスタン時間12月21日14時44分39秒)、カザフスタン共和国にあるバイカヌール宇宙基地の第1発射台(通称「ガガーリン発射台」)を離昇した。ロケットは順調に飛行し、約9分後にプラグリェースMS-01を軌道に投入した。プラグリェースMS-01はその後、太陽電池パドルやアンテナの展開に成功。そして約2日間の飛行を経て、23日19時27分にISSの「ピールス」モジュールにドッキングした。プラグリェースMS-01はこの後2016年7月までISSに係留される。プラグリェースMSはロシアのRKKエネールギヤ社が開発した新しい補給船で、今回が初めての飛行であった。シリーズとしては初期型、M型、そして現行のM-M型に続く第4世代になる(厳密にはもう少し細かい種類がある)。MS型の外見は従来のプラグリェースとあまり変化はない。しかし部品から機体の構造全体に至るまで、さまざま箇所に改良が加えられている。ロシア国産の自動ランデヴー・ドッキング・システム「クールスNA」プラグリェースも、また有人のサユースも、宇宙ステーションとのランデヴー(接近)とドッキングには「クールス」と名付けられた装置を使用している。この装置は「2AO-VKA」、「AS-VKA」、「2ASF1-M-VKA」、そして3基の「AKR」の、合計6基のアンテナからなり、電波を使ってドッキング相手のステーションとの相対的な距離や速度、角度などを測り、そのデータをコンピューターで処理。その結果に基づき宇宙船は自動で操縦される。これまでサユースやプラグリェースに使われていたクールスは、正確には「クールスA」と呼ばれているが、このクールスAは大きく2つの欠点がある。まず1つはアンテナが展開式、あるいは可動式であり、故障によってアンテナの展開や格納、可動ができなければ、ランデヴー・ドッキングができなくなる危険性を抱えている。実際に、大きな失敗や事故にはつながらなかったものの、アンテナが展開できない、あるいは格納できないという問題が過去に発生している。また、クールスAの電子機器を製造しているのはウクライナの企業であり、ロシアにとっては入手しづらいという問題もあった。クールスが開発されたのはまだソヴィエト連邦が存在したころであったが、ソ連崩壊後に独立したウクライナは、ロシアに対してクールスAの価格を吊り上げるようになった。クールスAはサユースやプラグリェースにとって必要不可欠な装備であり、ロシアは言い値で購入しなければならない状態となり、かつては一度使用したクールスAの電子機器を取り外し、スペースシャトルで持ち帰って再使用するといったことも行われていた。そこでロシアは2003年から、クールスAと互換性をもたせつつ、部品をすべてロシア製にし、かつ可動部を少なくした、「クールスNA」の開発に着手した。外見も大きく変わり、クールスAの2AO-VKAと3基のAKR-VKAの合計4基のアンテナが、AO-753Aと呼ばれる1つのアンテナに置き換えられている。AO-753は機体に固定されているため、展開機構に起因する問題が起こり得なくなる。さらに測定誤差も小さくなり、消費電力も少なくなるなど、性能も向上している。クールスNAは2012年に打ち上げられた「プラグリェースM-15M」と、2013年の「プラグリェースM-21M」に試験的に搭載され、実際にISSとのドッキングで使われた。このときの試験結果は芳しくなく、何度かの試験の中で失敗と成功が半々ぐらいというものだったが、今回のプラグリェースMS-01では問題は起きず、無事にISSとのドッキングを果たした。新型飛行制御システム「ASN-K」新型の飛行制御システム「ASN-K」は、ロシアの全地球測位システム「GLONASS」を利用し、自身の軌道を測定することができる。これまでプラグリェースやサユースにそうした機能はなく、地上から軌道を観測し、そのデータを送るしかなかった。また、このASN-Kと、サユース2.1aロケットの高い軌道投入精度とを組み合わせることで、打ち上げからISS到着までの所要時間を、最短で4時間ほどにまで短縮することも可能だという。新型通信システム「EKTS」従来のプラグリェースやサユースは、ロシア国内にある地上局のアンテナとしか通信ができなかったため、ロシアの上空を通過すると通信ができなくなるという制約を抱えていた。しかしプラグリェースMSでは新たに衛星通信用のアンテナを装備し、静止軌道に配備されたロシアの通信衛星「ルーチ5」を中継することで、1日のうち83%ほどは、ロシアの地上局と通信ができるようになるという。また、従来の「クヴァーントV」と呼ばれる通信システムはウクライナ製だったが、EKTSはロシア製となる。この他にも、次のような点が改良されている。新しい太陽電池パドルによる出力の向上。外部に超小型衛星を搭載、放出できるコンテナーを搭載(10 x10cmのキューブサットで最大24機まで搭載可能)。尾部にある軌道変更用スラスターを改良。エンジンを4基搭載し、そのうち1基が壊れてもドッキング可能に、また2基が壊れても安全に軌道離脱が可能。映像システムが新しくなり、外部カメラからの映像がより鮮明に。新型のバックアップ制御システム「ブーク」の追加。スペース・デブリ(宇宙ゴミ)や宇宙塵などとの衝突に備えたシールドの強化。LEDを使った照明システムの搭載。角速度センサーの改良。ドッキング機構にバックアップ系統を追加し、ISSのドッキング面との結合の信頼性が向上。これらの改良点は有人宇宙船のサユースにも採用されることになっている。改良されたサユースは「サユースMS」と呼ばれ、2016年6月に初飛行を行う予定となっている。サユースMSではまた、以下の改良も施される。これらはプラグリェースMSには必要ないため、サユースMSだけの改良点となる。GLONASSと米国のGPS受信機を装備し、大気圏再突入後の帰還カプセルの位置を正確に測定可能に。また予定外の地域に着陸した場合の捜索活動も容易になる。宇宙飛行士が船外を見るための光学式のペリスコープ(潜望鏡)を廃止し、映像を見て操縦する形に。○ロシア宇宙開発、復活の狼煙となれるか新技術をふんだんに盛り込んだプラグリェースMS-01の成功は、実は完璧なものではなかった。サユースとプラグリェースには、クールスが問題を起こした場合に備え、「TORU」という手動のドッキング・システムが搭載されているが、プラグリェースMS-01がISSに接近する際、このTORUが使えなくなるという問題が発生した。もしクールスNAがなんらかの問題を起こしていれば、ドッキングができなかった可能性もある。もちろん、宇宙船という複雑なシステムであればひとつやふたつの故障は起こるものであり、そのために冗長系と呼ばれる、予備の部品や装置が用意されている。今回もクールスNAのバックアップであるTORUの故障だったからこそ、ドッキングそのものには影響は出なかった。それでも本来は起こるべきものでなく、やや不安は残る。現在、ロシアの宇宙技術が低迷していることは、すでに多くの人が認識している。今年だけでも、4月には「プラグリェースM-27M」が打ち上げに失敗し、5月には「プラトーンM」ロケットが打ち上げに失敗。7月には日本人の油井宇宙飛行士が乗った「サユースTMA-17M」が、打ち上げ後に太陽電池パドルの片方が開かないという問題を起こした。12月には「サユース2.1v」ロケットが、衛星の分離に失敗する事故を起こしている。ロシアのロケットや衛星の打ち上げ数の多さは考慮する必要はあるが、しかし、ほぼ同じ打ち上げ数である米国や中国の失敗の少なさを考えると、ロシアの失敗数の多さは際立っている。ロシアでは数年前から宇宙産業の改革が始まっているが、今のところ目立った変化はまだ現れていない。とくに新しい技術は失敗の原因となりやすいことを考えると、今後プラグリェースMSが2号機、3号機、4号機……と、今回のTORUの一件のような問題を起こさず成功を重ねることができるか、そしてサユースMSの運用も無事に軌道に乗るかが、この改革が成功したか否かを見極める試金石となるだろう。また、現在ロシアはサユースに代わる、まったく新しい宇宙船「PTK NP」の開発も進めており、プラグリェースMS、サユースMSの技術も活用されることになっている。PTK-NPの初飛行は2021年ごろに予定されている。プラグリェースMS、サユースMSが成功するかどうかは、PTK NPにたすきをつなぐためにも、そして何よりロシアの宇宙開発の威信回復のためにも、重要な意味をもっている。また、ISS計画に参加する米国や欧州、そして日本にとっても他人事ではない。とくにサユースMSの1号機には大西卓哉宇宙飛行士が搭乗することになっており、その後も日本人が搭乗する機会があるだろう。なにより、有人宇宙船は人の命がかかっていることもあり、今後の動向を注意深く見守っていく必要がある。【参考】・・・Progress-MS cargo ship・Progress MS Spacecraft begins Debut Mission to ISS with successful Launch atop Soyuz Rocket | Spaceflight101・Kosmonavtika - par Nicolas Pillet - Le système radar de rendez-vous Kours
2015年12月25日2016年の宇宙、どうでしょう? ということで、予測が秒単位でできることから、どーなるかわからんことまで「素人でも手軽に観察・参加できる」宇宙に関わるあれこれを、サクっと紹介しちゃいます。今回は、2016年1~6月の半年分をば。なお、1年分のデータが入っている年鑑、手帳などが1000~3000円程度で売られています。データ量を考えるとリーズナブル。どんなのがあるのかは、昨年の記事をみてくださいませ。○1月~2月東京、名古屋、大阪など太平洋側の大都市では、天気もよく、星を見るベストシーズンです。特に東京周辺は、連続10日快晴とかになる時期ですなー。雪に閉ざされる日本海側は、しんどいところはありますが、共通することがあります。明るい星が多いんです。晴れさえすれば、ともかく、明るく、星が見えるのです。ボヤーっとながめても、もちろんOKですが、ちょっと名前がわかるとうれしいですな。形に特徴がある「オリオン座」をみつけて、そこから展開するのが定番でございます。図を参照くださいませ。オリオン座の真ん中に三つ並んだ星のならびを、延長していくのがポイントでございます。あ、実際にはずっとデッカく見えますよー。1月7日は、明け方に注目。月と金星と土星が接近します。さらに9日は金星と土星が手を伸ばした先にある5円玉の穴に入るくらいの大接近があります。金星は、メチャクチャ明るいのですぐにわかりますよ。あ、明け方。夜明け前ですのでくれぐれもお間違えなく! 夕方には見えません。さて、宇宙探査の方に目を向けてみます。日本ネタがありますよー。2月12日、日本のX線天文衛星ASTRO-Hが打ち上げられます。X線は、天体から出てくる光の大半を占めていますが、大気がジャマして地上ではとらえられません。そこで、人工衛星の登場ってわけです。この分野では日本が世界のトップを走っています。打ち上げは午後6時ごろを予定。成功を期待しましょー。米・欧・インド・ロシアもそれぞれ衛星の打ち上げ予定がありますが、海洋衛星のジェイソン3(米)とセンチネル3A(欧)が目を引きます。米欧の2機、目的がほぼ同じ地球海面の監視なんですよ-。ふーむ。また、インドは独自の航法衛星を打ち上げ予定です。○3~4月3月9日の午前10時すぎ~正午すこし前まで日食があります。11時ごろに見るのがいいでしょう。わずか2割欠ける程度ですが、日食めがねとか遮光板で見られます。前に買っておいたのがある方は、ぜひ探しておいてください。なお、この日食、インドネシアの一部からグアムの沖合で皆既日食になります。ツアーは「インドネシア日食」でググるとたくさんでてきます。30万円くらいから、豪華客船を使う200万円なんてのもあります。皆既日食は見ると「日食病」になるほど魅力的な現象だそうですが、お金以前に、休みとれないなー(お金もない)。3月半ばから木星がみごろになります。東に見えます。これはもう7月くらい(このころは西)までオッケー。とても明るい白っぽい星ですのですぐにわかると思いますよ。4月18日には、夕方の空に水星がみごろになります。ほぼ2016年ベストですかね。これは、また近くになったらご紹介しますねー。水星は肉眼で十分見えるのですが、見えるタイミングがきびしくて、そのぶん難易度が高いんですよ。4月22日は満月です。まあ、満月は29.5日ごとにあるので、年に12~13回あるんですけど、この日の月はこの年で一番地球から遠いんですね(平均より1割ほど遠い)。その分小さく見えます。デッカい場合はスーパームーンという言い方が広まってますが(学術用語じゃないです)、小さい場合は、サテ、プリティムーンとかリトルムーンとでも言うんでしょうかねー。あと4月18日~24日は科学技術週間です。この前後、各地の大学や研究所が一般公開されたりしますよ。特に、茨城県の筑波地区はすごく楽しいらしいです。詳しくは科学技術週間のWebサイトで。毎年科学ポスターの無料配布もありますが、2016年はどんなネタなんでしょうね。ノーベル賞がらみで生物由来有用物質かしらん?さて、宇宙探査では大ネタ。3月14日にヨーロッパ&ロシアのエクソマーズ2016火星探査機が打ち上げられます。2017年末に火星に到着して大気を調べ、着陸テスト機を分離させます。さらにおっかけて2018年に打ち上げられるエクソマーズ2018の中継基地の役割も果たします。こちらは、着陸して自走できる探査機、ローバーなのでございます。火星は2年ごとに地球に追い越され、そのときに接近になるのですが、このときが、観察および宇宙探査機打ち上げのチャンス。近いからね。2016年はまさに接近の年なのです。なお、日本は、先日金星到達に成功した、金星探査機あかつきが、このころから本格観測に移行します。○5~6月5月7日の明け方、みずがめ座エータ流星群の活動がピークになります。日本では観察しにくい(見えますけどね)のですが、南半球で早起きをするとよく見えます。2016年の条件では最良。連休で南半球に旅行に出かける方は、ちょっと意識してもいいかもですね。まあ、海外の夜、外に出るのは怖いので安全な場所が確保できる場合に限られますな。5月31日、2016年のビッグニュース! 火星が最接近となります。地球に追い抜かれ、非常に近くなるんですな。2016年の接近度合いは5点満点で4点くらい。かなーり、近づくのです。8時には東の空から異様に明るくて赤い星が見えます。で、実際に観察しやすいのは、接近の後6~8月になります。しばらく火星が楽しめます。各地で観察会も開かれるはずですので、望遠鏡で見てみると、火星の極の氷が白く輝いている様子など見られると思いますよー。なお、このころから土星も見ごろになっています。火星の近くにある星ですが、このころの火星を見なれちゃうと、ちょっとひかえめに感じちゃうかも。6月21日には、国際宇宙ステーションにソユーズ宇宙船が向かいます。中には日本人飛行士の大西卓哉さんも搭乗。大西さんの初宇宙になります。大西さんは東大を出て、全日空のパイロットだった人でございます。もっと高い空を目指したということですなー。チョイとはみ出して、7月4日には米国の木星探査機ジュノーが、木星に到達します。たぶん、その前から木星の画像が発表されると思いますよー。その後ジュノーは木星を南北に周回する衛星となり、北極から南極まで、木星を詳細に探査する予定となっています。しかし7月4日ですか、インディペンデンス・デー(独立記念日)ですな。好きですなー、こういうの米国は。ということで、来年も宇宙を楽しんでいきましょー。著者プロフィール東明六郎(しののめろくろう)科学系キュレーター。あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。
2015年12月23日油井亀美也さんら、3人の宇宙飛行士が乗ったロシアの宇宙船「サユースTMA-17M(ソユーズ)」が、12月11日(現地時間)、141日間にわたる国際宇宙ステーション(ISS)での長期滞在ミッションを終え、地球に帰還した。同宇宙船は日本時間12月11日18時49分、アリェーク・カノネーンカ宇宙飛行士(露宇宙庁)、油井亀美也宇宙飛行士(JAXA)、チェル・リングリン宇宙飛行士(NASA)の3人を乗せて、国際宇宙ステーションの「ラスヴェート」モジュールから分離。単独で飛行した後、21時19分から軌道離脱のための噴射を開始し、完了後に各モジュールを分離した。宇宙飛行士が乗った帰還モジュール部分は21時49分ごろに大気圏に再突入し、パラシュートを展開しつつ降下。そして22時12分(カザフスタン時間19時12分)ごろに、カザフスタン共和国のジェズカズガンの北東にある平原地帯に着陸した。当時、現地の天候は悪く、着陸の瞬間の映像などはなく、宇宙船との通信もできない状態が続いたが、約5分後に無事に着陸に成功したことが確認された。その後、回収部隊が到着し、宇宙飛行士らは船外へ出ることとなった。3人の健康状態は正常だという。油井飛行士は帰還後「ただいま。体調は大丈夫です。重力を感じます。寒いけれど、みなさん大丈夫ですか? 宇宙も素晴らしいけど、地球も素晴らしい。冷たい風が心地よい。ゆっくりシャワーでも浴びたいが、ツイッターをフォローしている人がたくさんいるので、発信していきたい」と語った。同宇宙船は2015年7月23日に、今回帰還した3人を乗せて打ち上げられた。3人は到着後、141日間にわたってISSに滞在し、さまざまな実験や、ISSにやってくる補給船の運用などを行った。帰還は当初、12月22日と計画されていたが、11月に予定されていた新型のプログレス補給船の打ち上げが12月21日に延期となり、宇宙船の到着や出発が集中し、運用が大変になることから、帰還日の前倒しが決まった。また今回の着陸は、2012年以来の夜間着陸となった。サユース宇宙船がISSとの往復で使われるようになって以来、着陸が夜間になったのは、サユースTM-34(2002年)、サユースTMA-4(2004年)、サユースTMA-5(2005年)、サユースTMA-7(2006年)、そしてサユースTMA-05M(2012年)で、今回で6例目となる。○12月15日には新しい飛行士が出発、21日には新型補給船の打ち上げも油井飛行士らが帰還したことで、現在ISSにはスコット・ケリー飛行士(NASA)、ミハイール・カルニエーンカ飛行士(露宇宙庁)、シルゲーイ・ヴォールカフ飛行士(露宇宙庁)の3人が滞在している。今後、12月15日には、ユーリィ・マレーンチェンカ士(露宇宙庁)、ティモシー・コプラ飛行士(NASA)、ティモシー・ピーク飛行士(欧州宇宙機関)の3人の宇宙飛行士を乗せた「サユースTMA-19M」宇宙船が打ち上げられ、ISSは再び6人体制となる。この3人はISSの第46/47次長期滞在員として、約半年間滞在する予定となっている。また12月21日には、ロシアの新しい無人補給船「プラグリェースMS」の打ち上げも予定されている。プラグリェースMSには新型の航法システムや、自動ランデヴー・ドッキング・システムなど、多くの新しい技術が採用されており、ミッションが成功するかどうかが注目される。○現在のISS滞在員第43/44/45/46次長期滞在員(2015年3月23日~2016年3月)スコット・ケリー(NASA)ミハイール・カルニエーンカ(露宇宙庁)第45/46次長期滞在員(2015年9月2日~2016年3月)シルゲーイ・ヴォールカフ(露宇宙庁)参考・РОСКОСМОС. МЕЖДУНАРОДНЫЙ ЭКИПАЖ КОРАБЛЯ «СОЮЗ ТМА-17М» ВЕРНУЛСЯ НА ЗЕМЛЮ・NASA Astronaut Kjell Lindgren Safely Returns to Earth | NASA・JAXA | 油井宇宙飛行士搭乗のソユーズ宇宙船(43S/TMA-17M)の帰還について・ソユーズ宇宙船(43S)着陸!:油井宇宙飛行士ISS長期滞在 - 宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター - JAXA
2015年12月12日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月24日、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中の油井亀美也 宇宙飛行士が搭乗するソユーズ宇宙船の帰還予定日が12月11日午後10時10分頃(日本時間)に決まったと発表した。同宇宙飛行士は7月23日にカザフスタン・バイコヌール宇宙基地から宇宙に出発し、第44/45次長期滞在クルーとして国際宇宙ステーション(ISS)に滞在。滞在中は8月19日に種子島宇宙センターからHII-Bロケット5号機により打ち上げられたISS補給機「こうのとり」5号機(HTV5)のロボットアームによるキャプチャ(把持)を担当するなどした。なお、帰還日時は、帰還予定日の数日前に開催される飛行準備審査会で最終決定されることとなる。
2015年11月24日宇宙飛行士の古川聡氏が代表を務める研究プロジェクト「宇宙からひも解く新たな生命制御機構の統合的理解(宇宙に生きる)」のキックオフミーティングが10月6日に都内で開催された。宇宙空間では無重力による骨格筋の萎縮、体液シフト、閉鎖環境による体内リズムの不調、宇宙放射線被ばくなど、人間の身体にとってさまざなリスクがある。古川宇宙飛行士は2011年に約5カ月半、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在し、宇宙酔いや地球帰還後の平衡感覚の喪失などさまざまな身体の変化を実際に体験した。その経験を通じて宇宙における生物学的リスクが「相乗的に作用するのでは?地上でも関連する問題があるのでは?」と感じたことが、同プロジェクトの発足を決意した理由だという。キックオフミーティングで登壇した古川宇宙飛行士は「これまで人類は宇宙に挑戦するためにさまざまな物理的障害を克服してきました。今、宇宙滞在最大のテーマは、無重力などの生物学的障害の克服です。宇宙という極限環境で地球生命体はどこまで恒常性を維持できるのか、それは"人類コスモ化"への挑戦、そして地上での問題へもつながっていると考えられます。」とプロジェクトの意義を語った。同プロジェクトの期間は2015年度から2019年度までの5年間で、宇宙という極限環境での生命制御機構の解明を目指し、無重力、閉鎖環境、放射線という3つの要素が生命体に与える影響について研究を行うほか、これら3つの要素を横断的につなぐ研究テーマを公募する。
2015年10月06日●宇宙行きはゴールではなく夢に向けた第一歩宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2015年8月26日、金井宣茂(かない・のりしげ)宇宙飛行士を、国際宇宙ステーション(ISS)の第54/55次長期滞在搭乗員に任命したと発表した。出発は2017年11月ごろ、滞在期間は約半年間が予定されている。それを受け、8月27日には記者会見が行われ、宇宙飛行士になろうと思ったきっかけや、このミッションに向けた意気込みなどが語られた。金井さんはISSでどのような活動を行うのか。そしてそれに対する意気込み、また自身を「"もぐり"の宇宙飛行士」と呼ぶ理由、さらに金井さんの後の、日本の有人宇宙活動について、見ていきたい。金井宇宙飛行士に関連する記事・【インタビュー】ISS長期滞在が決定した金井宇宙飛行士が語る - 宇宙旅行が当たり前になるためにロケット以外で重要なものとは・【レポート】海底から火星を見据えて - JAXAの金井宣茂 宇宙飛行士が語った宇宙へのリハーサル・JAXAの金井宣茂宇宙飛行士、ISS第54次/55次長期滞在搭乗員に決定○「宇宙行きはゴールではなく夢に向けた第一歩」金井さんは1976年生まれで、現在38歳。2002年に海上自衛隊に入隊し、医師の資格を有する幹部自衛官(医官)を務めた。金井さんは特に、水に潜って作業を行う隊員(潜水員)の健康管理を専門とする、潜水医学の医師(潜水医官)でもあった。そんな中、JAXAは2008年3月31日に、新しい日本人宇宙飛行士を募集すると発表した。それまでの宇宙飛行士が「日本人が宇宙に行くこと」や、「日本人がスペース・シャトルを使ったミッションを行うこと」を目的として選ばれたのに対して、このときは「国際宇宙ステーション搭乗宇宙飛行士」、つまりISSで働き、その利用によって新しい成果を生み出す飛行士を選ぶことを目的としていた。これに金井さんは応募し、厳しい選考を経て、2009年の2月に宇宙飛行士候補者の補欠として選ばれ、同年9月には正式に採用されることになった。同期には、現在ISSに長期滞在している油井亀美也(ゆい・きみや)宇宙飛行士や、2016年6月に打ち上げ予定の大西卓哉(おおにし・たくや)宇宙飛行士がいる。医師から選ばれたのは向井千秋さん、古川聡さんに次ぐ3人目、また自衛隊出身は油井さんに次ぐ2人目となった。宇宙飛行士候補者に選ばれた後、2009年からは油井さんや大西さん、また米航空宇宙局(NASA)とカナダ宇宙庁の宇宙飛行士候補者らと共に、宇宙飛行士になるための訓練が始まった。そして、2年後の2011年に、ISS搭乗資格をもつ宇宙飛行士として正式に認定され、さらにそれ以降も、実際に宇宙へ飛び立つ日を目指し、米国やロシア、日本で訓練を積み重ねていた。そしてついに、それが叶う日が決まったのである。金井さんは記者会見で、「私の夢は、より宇宙が身近になり、まるで海外旅行に行けるような感覚で、誰でも宇宙旅行を楽しめるような時代が来ることです。それを実現するために活躍したいと思っています。今回、宇宙飛行という大任を受けましたが、これは自分にとってゴールではなく、その先の夢に向かって進むための第一歩であると考えています」と語った。○滞在期間は半年間、さまざまな実験を予定現在の予定では、金井さんは2017年の11月ごろに、地球を出発し、ISSの第54/55次長期滞在員として約6カ月間にわたって滞在。ISSの運用や科学実験を行うことになっている。往路、復路ともに、ロシアのサユース宇宙船に搭乗する予定となっている。また2016年1月からは、打ち上げに向けて、サユース宇宙船への搭乗や、ISSの長期滞在に必要な訓練を開始するという。ISS滞在中に、金井さんが具体的にどのような実験を行うのかは、まだこれから決められることになっているが、金井さんは医師であり、また潜水医学の専門家でもあることから、JAXAでは医学や医療に関する実験への貢献を大いに期待しているという。たとえば「きぼう」の大きな利用テーマのひとつに「健康長寿社会の貢献」というものがある。宇宙空間では、筋肉の老化や骨の密度の減少が、地上より速く進むことがわかっており、その研究によって、日本が直面している高齢化社会への、何らかの貢献ができないかということが考えられている。金井さんがこのテーマに関する研究を行うことは大いに考えられる。また、打ち上げまで時間が十分にあることから、「金井さんならでは」のミッションも考えていきたいという。記者会見で金井さんは、次のように期待を語った。「現在『きぼう』では、ダークマターの謎を追う実験や、生きたマウスを飼育して、そのまま地球に持ち帰る実験、また超小型衛星の放出などを行っていますが、これらは『きぼう』を造っていた段階では、まったく想像していなかった新しいアイディアだったり、夢物語だったりしたものが、現実になったものです。私のミッションは2年後。2年後になると、宇宙産業だけではなく、他の産業からもたくさんの研究者が宇宙に参入してきたり、より低価格に、より手軽で、よりスピーディに宇宙空間を使うような動きがさらに加速していると思います。今現在、世界中の誰もが想定していないようなおもしろい実験、最先端の科学を切り拓くような実験が、2017年には待っていると思います。それに向けて全力疾走でがんばりたいと思います」。○"もぐり"の宇宙飛行士にしてネモ船長ところで、金井さんのように、潜水医学を専門としているお医者さんの間では、初対面の人に「私、"もぐり"の医者なんです」と自己紹介するという、伝統的なギャグがあるのだという。もちろん、この場合の「もぐり」の本当の意味は、ブラック・ジャック先生のような「モグリ」ではなく、「潜り」のことである。そこで金井さんは、それに引っ掛けて、自身を「"もぐり"の宇宙飛行士」と呼び、会場の笑いを誘った。また、金井さんは宇宙飛行士の仲間たちから、「NEMO」(「ニーモ」、もしくは「ネモ」)というコール・サインで呼ばれているという。これは、ジュール・ヴェルヌの名作『海底二万里』や『神秘の島』に登場する潜水艦「ノーチラス号」のネモ船長、また『ファインディング・ニモ』に登場するクマノミの「ニモ」(ネモ船長に由来)にちなんでおり、金井さんが潜水医学の専門家であることから名付けられたのだとされる。ちなみに、金井さんは今年7月20日から8月2日にかけて、米フロリダ州の沖にある海底実験室「アクエリアス」で、NASA極限環境ミッション運用訓練に参加したが、この訓練がNASA Extreme Environment Mission Operationsの頭文字から「NEEMO」(「ニーモ」)と呼ばれていることから、関係者の間では「NEMO in NEEMO」(ニーモの中にニーモ(ネモ)がいる)というギャグが流行ったという。"もぐり"の宇宙飛行士であり、現代のネモ船長でもある金井宇宙飛行士が、ISSでどんな活躍を見せてくれるのか。それはきっと『海底二万里』と同じぐらい、あるいはそれ以上におもしろく、驚異に満ちた冒険譚になるに違いない。●日本人宇宙飛行士と、日本の有人宇宙活動の未来○金井さんがサユースに乗る最後の日本人宇宙飛行士に?ところで、金井さんはもしかすると、サユース宇宙船に搭乗する最後の日本人宇宙飛行士になるかもしれない。2011年にスペース・シャトルが引退して以来、NASAは新型宇宙船が完成するまでのつなぎとして、ロシアからサユース宇宙船の搭乗権を購入し続けており、そこにNASAの宇宙飛行士を乗せて飛ばしている。また、金井さんを始め、これまでサユースに搭乗した日本人宇宙飛行士の搭乗権も、このNASAがロシアから購入した分の中から割り当てられている。しかし現在のところ、NASAは2018年の打ち上げ分までしか購入していないため、2017年11月に地球を出発し、2018年の春ごろに帰還する金井さんが、サユース宇宙船に乗る最後の日本人宇宙飛行士になる可能性がある。なお2017年には、米国の民間企業2社(ボーイング社とスペースX社)が開発している新型の宇宙船が完成し、NASAやJAXA、欧州宇宙機関(ESA)やカナダ宇宙庁などの宇宙飛行士は、サユースではなく、この新型宇宙船によって打ち上げられる予定となっている。つまり、金井さんの次に飛ぶ日本人宇宙飛行士は、この民間の新型宇宙船に乗りこむことになる可能性が高い。ただ現在、予算不足などが原因で開発に遅れが出ており、また今後、開発中に問題などが発生することも考えると、2017年に間に合わない可能性は十分考えられる。そうなると、NASAはまたサユースの座席を購入せざるを得なくなるため、金井さんが最後ということにはならないかもしれない。○9年後のISS金井さんの宇宙飛行が決定したことで、現在の日本人宇宙飛行の中で、宇宙飛行を経験していない人はいなくなる。現在のところ、ISSは2020年まで運用されることが決まっているが、米国などはそれを2024年まで延ばすことを提案している。すでにロシアやカナダはこの提案に賛同しており、日本と欧州は2016年まで決定を先送りするとしている。仮に2024年まで運用を延長することになったとしても、金井さんが現在38歳ということを考えると、9年後でも十分に現役として活躍できる年齢だ。実際にJAXAは、2013年11月に、宇宙飛行士の新規採用を当面の間凍結する、と明言している。この当面、というのが、具体的にどれぐらいの期間を指すのかはわからない。もっとも、それはJAXA自身も知らないし、決められることでもない。現在の日本の宇宙開発は、内閣府の中に設置された「宇宙開発戦略本部」が取り仕切っており、また同様に内閣府に設置されている「宇宙戦略室」が、計画の企画や立案、調整を、そして「宇宙政策委員会」が審査や意見などを行っている。しかし現在、これらの中では有人宇宙計画の評価はあまり高くなく、今の段階で決まりつつあることといえば、コストを削減した上での「きぼう」の継続的な運用や、宇宙ステーション補給機「こうのとり」の改良ぐらいで、ISS"以降"の、日本の有人宇宙計画については、何も具体的なことは決められていない。金井さんの例にみるように、新しい宇宙飛行士を育成するには年単位の時間がかかり、さらに新しい有人宇宙計画を立てるのにはそれ以上の時間がかかる。ISSの運用終了まで長くともあと9年、残された時間は多くはない。○米欧は火星や小惑星へ、ロシア、中国は新宇宙ステーション建造ところで、他国はISS以後の世界を、どのように見据えているのだろうか。まず米国NASAは、かねてより月や火星、小惑星を有人探査を行う計画を進めており、現在はそのための新型宇宙船「オライオン」と、新型の超大型ロケット「スペース・ローンチ・システム」(SLS)の開発を行っている。オライオンは2014年12月に無人での試験飛行に成功し、2018年11月にはSLSの初打ち上げも兼ねて、月まで行って帰ってくる無人の試験飛行を行う予定を立てている。有人飛行は2021年以降に予定されており、月の近くまで運んできた小惑星に宇宙飛行士を送り込んで探査が行われる。そして2030年代には、火星への有人飛行が計画されている。また欧州は、この米国の計画に参加する意向を示しており、オライオン宇宙船の「サーヴィス・モジュール」と呼ばれる、エンジンやバッテリー、生命維持装置などが搭載されている部分の開発と製造は、欧州側が担うことになっている。これは計画の首根っこを押さえているのと同じであり、計画の内容などに対して、ある程度の口出しができる権利をもつ。一方ロシアは、ISSに結合されているロシア側のモジュールの中から、比較的新しいモジュールだけを分離して独立、さらにそこに新しいモジュールを結合させて、新しい宇宙ステーションを造る構想を持っている。ロシアが主導権を握る形にはなるものの、欧米にも参加を呼びかけてはおり、第2の国際宇宙ステーションのような存在になる可能性もある。また、その先には月の有人探査も視野に入れているという。ただ、ロシアは近年、宇宙産業の力が低下しており、また連邦予算も厳しい状況にあるため、今後計画がどうなるかはまだわからない。中国は2003年に「神舟五号」宇宙船によって有人宇宙飛行に成功し、2008年には「神舟七号」によって船外活動(宇宙遊泳)にも成功している。さらに2011年には、宇宙ステーション「天宮一号」の打ち上げにも成功し、無人の神舟宇宙船によるドッキング試験を経て、有人の「神舟九号」と「神舟十号」が訪れ、「天宮一号」の内部で科学実験などが行われるなど、ゆっくりとではあるが、着実に有人宇宙開発を進めている。そして現在は「天宮二号」の開発を進めると同時に、より大型の宇宙ステーション「天宮」の開発も進めており、2018年に最初のモジュールを打ち上げ、2022年以降に完成させる予定とされる。もし予定通り計画が進めば、2022年から2024年にかけて、宇宙にISSと「天宮」の、2つの大型宇宙ステーションが存在することになる。また、最近ESAは、中国との宇宙開発における協力体制を強化することを検討しており、たとえばESAの宇宙飛行士が「天宮」を訪れる、ということもあるかもしれない。その他、インドも独自の有人宇宙船の開発を進めており、2014年12月には無人でのサブオービタル(軌道に乗らない)飛行試験に成功している。いずれは実際に人を乗せ、地球をまわる軌道に打ち上げることが計画されている。また、イランも有人宇宙船の開発を進めており、数年のうちにサブオービタル飛行を行うとしている。○日本はどの選択を採るかこの状況の中で、まずロシアや中国の宇宙計画に参加することはまず考えられないし、ましてや、日本が独自に何らかの有人宇宙計画を立ち上げることも考えにくいため、米国と歩調を合わせるか、あるいは有人宇宙活動そのものを止めてしまうか、という選択肢しかないだろう。しかし前者の場合、欧州がオライオンのサーヴィス・モジュールの開発で、計画の根幹を握っているのと比べると、日本がこれから参加を表明したところで、貢献できる部分は少ない。たとえば「はやぶさ」のような無人探査機で、有人探査の露払いをすることなどは考えられるが、それは日本でなければできないことではない。また、そもそもミッションの内容からして、参加できる宇宙飛行士の人数はISSより少なくなるため、日本人宇宙飛行士が搭乗できる機会も必然的に少なくなる。そのため、貢献に見合うだけの利益が得られるかはわからない。参加するにしても、「どういう形で参加するのか」が重要となり、大きな議論となるだろう。たとえば年間何百億という予算を使いながら、アポロ計画以来初めて月に降り立つ宇宙船に、日本人宇宙飛行士が乗っていなければ、大きな批判を受けることになるかもしれない。毛利衛宇宙飛行士がスペース・シャトルで宇宙を飛んでから、今年で23年になる。以来、宇宙開発事業団(NASDA)、そして現在JAXAは、有人宇宙船を持たないながらも、有人宇宙活動に関する知見を着実に蓄積してきている。その実績をどう生かすのか。あるいは、捨ててしまうのか。選択のときが迫っている。国際宇宙ステーションを越え、月や火星、小惑星、そしてさらにその先の世界で挑みたいと夢見ている少年・少女たちは、今も日本中に大勢いるはずだ。たとえ困難な道でも、何らかの形で、彼らに夢を叶えるチャンスが訪れ、そして油井さんや大西さん、金井さんらの跡を継ぐ、新しい世代の宇宙飛行士が生まれることを切に願いたい。参考・・・・・
2015年09月01日●自衛隊時代に培った知識を宇宙に国際宇宙ステーション(ISS)第54/55次の長期滞在搭乗員に決定した金井宣茂宇宙飛行士は東京都生まれの38歳。同宇宙飛行士は、防衛医科大学校を卒業後、自衛隊呉病院などを経て、海上自衛隊 第一学術科学校 衛生課に所属し、2009年に日本人宇宙飛行士候補者として選抜された。自衛隊時代は潜水艦などに搭乗し、乗組員の精神状態を管理していたという。2年後に予定されているミッションに向けて意気込む金井宇宙飛行士に話しを伺った。○水中医学というユニークな経歴を宇宙へ持っていく-- このたびはISSへの長期滞在決定、おめでとうございます。金井宇宙飛行士が、宇宙飛行士を目指したきっかけは何だったのでしょうか?もともと子供の頃に宇宙に興味があったわけではなく、当時は毛利さんとか向井さんのミッションが取り上げられていて「スペースシャトルってすごいな」くらいに思っていたので、まさか自分が宇宙飛行士になるとは想像していませんでした。大人になって海上自衛隊で仕事をするうちに、水中医学という特殊な環境での医学運用やオペレーションのサポート作業をしていくと、それが有人宇宙飛行のミッションサポートや医学的問題に通じることが多い事に気づきまして、だんだん宇宙飛行という潜水とは全く違う世界に自分がこれまで勉強してきたことを持っていったら何か面白い仕事ができるんじゃないかなと感じ始めたところから宇宙飛行士を目指すようになりました。--そうすると自衛隊に入隊されてからある程度時間が経った後に宇宙飛行士を目指したということになりますが、目指し始めてからどれくらいの期間で実際に宇宙飛行士になれたのでしょうか?私は2005年から2006年にかけて半年ほど米海軍に勉強に行かせてもらっていて、日本に帰ってきたくらいから宇宙飛行士を目指そうということを決めて勉強をしたり情報集めたりしていました。それから2008年4月に宇宙飛行士の応募があって、タイムリーに「宇宙飛行士になってみませんか」という話が舞い込んできたわけです。本当にご縁がご縁を呼んで、いつの間にかこの場所にいるという感じです。--金井宇宙飛行士の場合はタイミングもかなり良かったということなんですね。宇宙飛行士になるにあたって訓練などで、自衛隊時代の経験が活きているなと感じますか?自衛隊で仕事をしていて良かったなと思うのは、集団生活が全然苦にならないとうことです。ほかには入隊したばかりの新人教育でわざと理不尽なことを言われたりなどしたことは、メンタル面での鍛錬につながったと感じます。--そういったご経験は宇宙飛行士の選抜でも有利に働いたのでしょうか?私は採用する立場ではないのでなぜ選ばれたのかはわからないですが、「私は普通の人では体験できないような経験をもっているので、この経歴を宇宙業界でうまく使ってください」ということをアピールしたので、ユニークな経歴という点を買っていただいたのかなとは感じています。○普通の人が宇宙に安心して行けるように--そのユニークなご経験についてもう少し詳しくお伺いさせてください。海上自衛隊時代は潜水艦乗組員の健康状態や精神状態をチェックされていたそうですが、これまでの宇宙飛行士の訓練の中で、潜水艦と共通する点はあるのでしょうか?(海上自衛隊時代は)将来に不安を抱いている若い幹部候補生の悩みを聞いたり、人間関係に悩みを抱いて船を降りたいという隊員の心理状況を確認して、配置を変わってもらったりといったことをやっていました。なので閉鎖環境でどういう気の持ちようでいたらいいのかとか、孤独になったり寂しくなったりしないためにどうしたら良いのかという知識や自分なりの対処法などは、過去に学んだものが使えているんじゃないかなと思います。--逆に宇宙と深海で違う部分はあるのでしょうか?宇宙がユニークなのは無重力ということで、無重力がゆえのいろいろな体の問題があります。例えば体液シフトといって、地上では体の下半身にたまっている体液が相対的に上半身に分布するので、顔がむくんだり、ずっと鼻づまりがしているような感じがしたり、ひどい人では頭が痛くなったりします。そういう宇宙ならではの体の変化というものを自分で経験してみないとと思っています。宇宙にはこれまで限られた人しかいっていなくて、全てのデータがきちんと残っているわけではないし、昔は研究していなかったことが実は問題があるということがわかって、最近になって調べ始めたりしています。宇宙医学はまだ始まったばかりで、もっと色んな人が宇宙に行ってそこでどういうことが起きるのかを調べる必要があります。その始まりの部分に私は携わらせてもらっているので非常に面白いです。また、これは記者会見でも述べさせてもらったことなのですが、地球低軌道を色々な人に使ってもらうこと、もっと言うと海外旅行に行くような感覚で普通の人が宇宙空間に行って帰ってくることを考えると、「高血圧があるんだけど大丈夫なの?」「体に障害があるんだけどそれでも宇宙を楽しめるの?」と聞かれたときに「もちろんです!」と言えるだけの宇宙医学のバックグラウンドであったり安全な宇宙技術というものを先に進めたいと思っています。●「宇宙医学」は日本宇宙開発の強みとなり得る○アメリカとロシアは日本と違う感覚を持っている--宇宙旅行の実現というと、どうしてもロケットなどハードの部分が注目されがちですが、それを利用する人に対してのケアも重要なのですね。話は変わりますが、金井宇宙飛行士はソユーズロケットでISSへ飛び立つことになります。ロシアでは少し前に事故が続きましたが、同国の宇宙開発についてはどのような印象をお持ちでしょうか?宇宙飛行士の感覚としては非常に信頼感がある開発と言えますね。事故は続きましたが、それは有人ではないロケットでの事故でした。ロシアはそこを割り切っていて、全てのロケットを有人飛行と同じレベルでやろうと思うとすごいお金がかかってしまいます。(無人ロケットでは)そこまで求めずに、ある程度リスクは許容して安く、たくさん打ち上げると。逆に有人の方は多少お金がかかっても安全性をきちっとやります。特にソユーズは昔から使われている宇宙船で信頼性は高いと感じます。面白いのは米ロは失敗を悪いと思わないんですね。日本の場合は失敗すると大問題になりますが、彼らは「ロケットは難しいんだから落ちて当たり前でしょ」と、落ちても大丈夫なようなスケジューリングであったり安全管理をしています。もちろん、なぜ落ちたのかという点は厳しく追究して次に活かします。そういったところが合理的というか日本人とは違う感覚だなと感じますね。--日本と米ロでは宇宙開発に対する感覚の違いがあると。以前ある日本人宇宙飛行士の方が「アメリカの宇宙船は飛行機で、ロシアの宇宙船は潜水艦のようだ」と仰っていましたが、金井宇宙飛行士はそういった感覚はお持ちですか?空気清浄機であったり二酸化炭素を取らなきゃいけないとか、たしかに宇宙船と潜水艦ってテクノロジーの部分で似てますよね。またソユーズは信頼性の高い古典的な技術が使われているので、潜水艦でも使われている技術がソユーズでも使われていることも考えられます。あとソユーズには船長の足下に潜望鏡がついていて、それを覗きながらドッキングをします。そういった意味でも「ロシアの宇宙船は潜水艦のようだ」という比喩は面白いですね。○宇宙医学を日本宇宙開発の強みに--それでは最後のトピックについてお話を伺っていきたいのですが、医学分野のご出身という観点から、ISSでのミッション全体を通じて、どのようなことを期待していらっしゃいますか?宇宙開発は国際協調であると同時に国際競争でもあります。NASAとかロシアは組織の大きさであったり予算の多さでこれまで非常に良い仕事をどんどんやってきました。それ自体は非常に良い事なんですが、その中でJAXAが光っていくためには何をすれば良いのかと考えたときに、宇宙医学という分野で日本の強さを見せることができるのではないかと考えています。(宇宙医学という分野は)先輩宇宙飛行士の向井千秋さんが立ち上げて、古川さんが中心となって世界レベルの研究を推し進めようとしています。チームジャパンとして勝負していく中で、宇宙医学を宇宙飛行士としてサポートできれば良いなと思います。--「宇宙医学が日本の強みとなる」と仰るのはどのような技術が根拠となるのでしょうか?日本はタンパク結晶実験というのをスペースシャトルの時代から続けてきました。NASAもやっていたのですが、あまりうまくいかなかったので途中でやめてしまいました。日本だけが地道に続けてきて、それが今花開いてタンパクが実は筋ジストロフィーや歯周病の薬になるんじゃないかといった成果に結びつきつつあります。このノウハウは日本しか持っていないもので、この知見をもとにもっと効率良い方法でできないかというところを急ピッチで進めています。こうした強みを伸ばしていくということをやっていかなければならないと思います。また、マウスを宇宙へ連れて行って戻すという実験を油井さんが今やっていますが、2年後は宇宙でマウスの子供を作って、大人になってから地球へ戻すということができるかもしれません。ほ乳類は宇宙で生育できるのかということを検証するということは、月の周りにコロニーを作ってそこで人間が繁栄する、といった昔アニメで見たような世界が近い状況にあるということになって、そういう実験を担当するかもしれないと思うと非常に楽しみです。--2年後の科学技術の進歩によって可能性はさらに広がりますね。無重力って面白くて、例えばiPS細胞などでは3Dの臓器を作る上で重力が難しさを生んでしまっているところがあります。もし重力が無いことで機能する臓器をより手軽に作ることができれば、そのノウハウを重力下での臓器作成に活用できるかもしれません。アイデア次第で宇宙は色んなことに使えますので、より多くの研究機関を惹き付けるような営業活動もやっていかなければいけないと思います。実際、時代の流れとしてそういう方向に行っていますので、2年後いろいろな産業が宇宙に入ってくることで今では想像できないようなイノベーションが起こるんじゃないかなと期待しています。
2015年08月31日8月19日に種子島宇宙センターからHII-Bロケット5号機により打ち上げられた宇宙ステーション(ISS)補給機「こうのとり」5号機(HTV5)は24日、ISSに到着し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の油井亀美也 宇宙飛行士が操作するISSのロボットアームによってキャプチャ(把持)された。ISSのロボットアームを操作して「こうのとり」をキャプチャしたのは、同宇宙飛行士が日本人としては初めてとなる。キャプチャに成功した油井宇宙飛行士は「宇宙開発の中では1つの小さな歯車だが、自分の仕事をしっかりできて、この瞬間だけは一等星並に輝けたかと思います。」とコメント。また、若田光一 宇宙飛行士がアメリカ航空宇宙局(NASA)のミッション管理センターでリード・キャプコムとして、油井宇宙飛行士をサポートした。「こうのとり」には食料や衣服、実験装置などの物資が搭載されており、物資を届けたあとはISSの不要品を積み込んでISSへ再突入する。
2015年08月24日7月23日、油井亀美也宇宙飛行士ら3人の打ち上げ中継を、フロリダ沖の海底基地で見守る人たちがいた。金井宣茂JAXA宇宙飛行士を含む欧州、NASAの宇宙飛行士たちだ。「我々3人は油井飛行士と一緒にNASAで訓練を受けた同級生。宇宙に行くチャンスが身近に迫ってきているのを感じて、興奮した」と金井飛行士は笑顔で言った。7月20日(月)から14日間、金井飛行士らは海底基地で行われるNASAの訓練に参加した。「NEEMO(NASA Extreme Environment Mission Operations)」は国際宇宙ステーション(ISS)のリハーサルとも呼ばれる訓練で今回が20回目。ISSで長期滞在を行う宇宙飛行士のほとんどはこの海底訓練を経て宇宙に飛ぶ。NEEMO訓練に参加する宇宙飛行士たちは、アストロノート(宇宙飛行士)をもじってアクアノートと呼ばれる。なぜ、宇宙に行くために海底で訓練をするのだろう? ポイントは2つある。1つは環境が似ていること。海底20mにある基地アクエリアスは、さながら「海底にある宇宙ステーション」。幅3m×長さ約15m(「きぼう」日本実験棟船内実験室をやや細長くした大きさ)の基地内は空気で満たされシャツ姿で暮らせるが、空気や電力・通信など生命維持のための機能はすべて外部から供給されていて、常に安全を意識しなければならない。また簡単には外に出られない「隔離環境」であり緊張感を伴う点がISSと似ている。2つ目はその閉鎖環境を利用して、宇宙と同じようにミッション(任務)を行うこと。アクアノートたちのスケジュールは分刻みで決められている。さらに宇宙飛行中と同じように、海上にミッションコントロールセンター(管制室)が設けられ、管制官と密に交信しながら作業が行われていく。金井飛行士によると、今回のNEEMO訓練ではこの通信をわざと10分遅らせてやりとりしているという。「将来、火星に行くことを想定すると、火星との交信には往復で20分かかります。すぐに会話ができない中でどのようにミッションを効率的に行うか。10分のタイムラグでストレスがかかると同時に、知的好奇心が刺激されてさまざまなアイデアを仲間うちで話ながら進めています」(金井飛行士)。チームにはコマンダー(船長)役の宇宙飛行士がいる。様々なトラブルを乗り越えてチームワークやリーダーシップ、フォロワーシップを磨きながら、仕事を安全確実に行っていくことが、この訓練の大きな目的だ。○将来の火星探査を見据えて14日間の訓練中には、海底を火星と見立ててアクアノートたちが船外活動を行った。「NASAは急ピッチでISS後の話し合いをしています。小惑星や火星ミッションなどのアイデアが出ているが、具体的な技術について、何が将来の探査に必要なのか、NASAもまだ手探り状態と感じている」と金井飛行士は指摘する。たとえば重力の小さな小惑星や火星の衛星を探査する際、足場はどうするのか。磁気がなくコンパスが使えない火星でどうやってナビゲーションを行うのか、など実際に活動するために検証しなければならない課題は多い。海底の活動時、宇宙服に取り付ける錘の重さを変えることによって、火星に近い重力を作り出すことができる。アクアノートたちは「海底の火星」でさまざまなツールの作業性や手法を検証する。また、海底基地内ではITツールの検証も行った。たとえばメガネ型ウェアラブル端末。今回、金井飛行士は会見中にマイクロソフトの現実拡張ヘッドマウントディスプレイ「HoloLens」を見せ、「ISSや月のミッションを想定して作業性を評価している」と説明してくれた。宇宙飛行士が見た風景を地上の科学者も同じように見られるかもしれない、という可能性が広がるツールだ。元々、金井宣茂宇宙飛行士は、海上自衛隊のお医者さんで、ダイバーの健康管理も行っていた。アメリカで一年間、潜水医学を学んだ際、潜水医学のドクターが宇宙飛行士になった事実を知り、宇宙飛行士を目指すようになった。「自衛隊時代はサポート役で地上に残りダイバーの健康管理を確認する役目でした。実際に潜ってみてこんなに大変だったのかと新しい発見があった」と吐露する。NEEMO訓練初期にはチームワークで失敗ばかり。多国籍の仲間と一緒に仕事をする中で相手の嫌な面を見ていたが、訓練が進むにつれて、得意な面が見えるようになり、「今ではあうんの呼吸で仕事ができるようになった」という。「日本の強みは宇宙医学。力量と経験を高め、次世代の宇宙飛行士として将来の日本の宇宙開発を担っていきたい。」海底から宇宙をめざし、力強く抱負を語った。
2015年08月06日宇宙航空研究開発機構(JAXA)所属の油井亀美也 宇宙飛行士が搭乗したソユーズ宇宙船が7月23日6時2分(日本時間)、カザフスタン・バイコヌール宇宙基地より打ち上げられた。宇宙船は6時11分(日本時間)に地球の軌道上に入り、打ち上げは成功した。油井宇宙飛行士は、第44/45次長期滞在クルーとして国際宇宙ステーション(ISS)に約5ヶ月滞在し、フライトエンジニアとして、「きぼう」日本実験棟を含むISS各施設のシステム運用、日本および国際パートナーの科学実験をはじめとする宇宙環境の利用に重点をおいた活動などを行う。また、8月16日に種子島宇宙センターから打ち上げられる予定のISS補給機「こうのとり」5号がISSへドッキングする際に、ISSのロボットアームを操作して「こうのとり」を把持する操作を担当する。地球への帰還は12月22日頃を予定している。油井宇宙飛行士は5月27日に国際宇宙ステーション(ISS)へと向かう予定だったが、5月に発生したプログレス補給船による国際宇宙ステーション(ISS)へのドッキング断念を受けて延期されていた。
2015年07月23日2013年アカデミー賞長編アニメ部門審査対象となった「神秘の法」のスタッフが再び結集し謎に包まれた宇宙の世界に迫る、人類未体験のスペース・エンターテイメント『UFO学園の秘密』が、10月10日(土)より公開決定。ポスタービジュアルと実力派声優陣が発表された。舞台は、ナスカ学園――高校2年生のレイ、アンナ、タイラ、ハル、エイスケら5人はひと夏の大事件に遭遇した。ある日、ハルの妹ナツミに原因不明の異変が起きる。心配した5人は宇宙科学の研究を進める夜明教授に助けを求め、宇宙人によるアブダクション(誘拐)が明らかになる。5人はナツミを助けるため立ち上がるが、次々と不可解な事件が発生。それは学園に潜入したレプタリアン(宇宙人)の罠だった…。監督を務めるのは、アニメ「カウボーイビバップ」のセットデザインで知られ、「ふしぎの海のナディア」や「新世紀エヴァンゲリオン」「キャプテン翼」など数々の名作アニメから、最近では「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」「デュラララ!!」などを手掛けた今掛勇。そしてキャスト陣には実力派声優の名前がずらり。アニメ「ダイヤのA」の沢村栄純役で知られ、2015年第9回声優アワードにて新人男優賞受賞した逢坂良太。アニメ「ちはやふる」綾瀬千早役の瀬戸麻沙美。多くのアニメ作品でメインキャラクターを演じ、アーティスト活動も盛んな柿原徹也。「スマイルプリキュア!」黄瀬やよい役の金元寿子。「ハマトラ」「FAIRY TAIL」に出演する羽多野渉。そして、「ルパン三世」石川五右衛門役を始め多くのアニメに出演、さらに『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなどイライジャ・ウッドの吹き替えを務める浪川大輔らが演じる。併せて公開されたポスターでは、センターにレイ、アンナ、タイラ、ハル、エイスケを中心に、背景には壮大な宇宙が広がり、本作のカギとなるベガやダークサイド・ムーンが描かれている。「この地球(ほし)は宇宙に必要か」というキャッチコピーからは、本作の物語の広さが伺えるが…意図せず宇宙の秘密に肉薄した彼らがどんな結末を迎えるのか、気になる内容は劇場でチェックしてほしい。『UFO学園の秘密』は10月10日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年07月16日●星出宇宙飛行士も「まるで本物」と太鼓判宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2015年6月23日、筑波宇宙センター(茨城県つくば市)にある展示館「スペースドーム」をリニューアルした。スペースドームはJAXAで開発された人工衛星の試験モデルや、実物のロケット・エンジンなどが多数展示されており、宇宙ファンのみならず、家族連れや修学旅行生などでも賑わう人気のスポットだ。今回、開館から5周年を迎えたのに合わせ、展示物などが追加され、新たに生まれ変わることになった。今回は、オープン前日の6月22日に行われた内覧会の様子を、写真を交えてお伝えしたい。○スペースドームスペースドームは2010年にオープンし、実物のロケット・エンジンをはじめ、人工衛星や宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)の試験モデルなど、数多くの展示物が公開されており、現在までに約140万人もの来場者が訪れている人気の高いスポットだ。またオープン前日の22日には、報道関係者や日本宇宙少年団(YAC)の子供たちを招いての内覧会が行われた。筑波宇宙センターの今井良一所長は挨拶の中で「今年4月に、JAXAは国立研究開発法人になりました。国が一致団結して、世界のいろんな課題を解決していこういう考えの下でできたものです。それも踏まえ、この展示の中で、人工衛星やロケット、『きぼう』モジュールといったJAXAの取り組みが、宇宙開発という枠を超えて、社会や科学のいろんな課題にどう貢献していくのか、ということを見ていただければと思います。ぜひ楽しい宇宙体験をしていただければと思います」と語った。また、宇宙飛行士の星出彰彦さんも駆けつけ、子供たちに向けて「私も中学・高校時代は筑波の学校に通っていました。当時はもちろん『スペースドーム』はまだありませんでしたが、筑波宇宙センターには足しげく通い、本物を体験する機会がありました。この『スペースドーム』もロケット・エンジンや衛星など、本物のものがありますから、それに触れ、そして宇宙開発を感じてもらい、将来を背負っていって欲しいと思います」と語りかけた。今回のリニューアルでは、大きく3つの点が変わっている。○「きく」シリーズの試験モデルが大集合まずひとつは、人工衛星の展示エリアが一新されたことだ。筑波宇宙センターは実用衛星を多く生み出してきた場所であり、これまでも「ゆり」のプロト・フライト・モデル、また「きく7号」、「きく8号」、「こだま」、「いぶき」、「だいち」、そして「かぐや」の試験モデルなどが展示されていた。これらは地上で試験をする目的で造られたもので、実際に宇宙に行くことはなかったものの、衛星の大きさや機能などは実物とほぼ同じように造られているため、目の前にすると圧倒されるほどの迫力がある。そして今回のリニューアルでは、新たに「きく」、「きく3号」、「きく4号」の試験モデルが追加され、技術試験衛星「きく」シリーズの挑戦の歴史を、ほぼ実物に近い機体を目の当たりにしながら知ることができるようになった。星出飛行士は「これまで宇宙開発事業団(NASDA)、JAXAが開発し、実際に運用してデータを得てきた衛星の実物をお見せしています。ぜひ本物を感じていただければと思います」と語った。○オービタルビジョンもうひとつは「オービタルビジョン」と名付けられた、床面に大きな映像を映し出す装置が追加された点だ。ここではロケットが飛行する様子や、人口衛星の宇宙空間での動きがリアルに体験できるようになっており、「ロケットは打ち上げ後、どこへ向けて、どのようにして飛んでいくか」、また「人工衛星はどこを飛んでいて、何をしているのか」といったことを体験できる。星出飛行士も「足元にガーッと映像が出てきて、よい勉強になります」と語る。また、上映される映像は随時更新されていくとのことなので、今後にも期待したい。○「きぼう」実物大モデルがよりリアルにそして、JAXA曰く「一番の目玉」が、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」の実物大モデルが、よりリアルなものに更新されたことだ。「きぼう」の実物大モデルはこれまでも展示されていたが、今回のリニューアルにより、昨年開催された「宇宙博2014」で展示されたものと入れ代わることになった。なお、これまで展示されていた方のモデルのうち、船内実験室については、石川県小松市にある「サイエンスヒルズこまつ」で展示されるという。星出飛行士は「実際に宇宙で組み立てて作業してきた私が言うのもなんですが、本当はこれが本物なんじゃないかと思うぐらい精巧にできています」と太鼓判を押す。また星出飛行士は、このモデルを造った方と会って話をしたところ、そのこだわりように驚いたという。「たとえば『ラベル』。いろんな実験装置やものをどこに置くかを示したり、識別をするために、手すりなどに番号を書いたラベルが付いているんですね。そのラベルの形や、貼られている場所や位置、さらには文字のフォントなどが、非常にリアルに作られています。しかも見えないところにあるものまで再現されています」。「そして『音声』。『きぼう』実物大モデルの中に入ると、若田宇宙飛行士が地上と交信をしている音声が流れていますが、これはあとで録音したものではなく、実際に若田飛行士が、『きぼう』の中から筑波宇宙センターやヒューストンのジョンスン宇宙センターと交信した、実際の肉声が使われています」。さらに、星出飛行士が驚いた点が2つあるという。まず「音」。ISSの中は、空調のファンや機械から出るノイズが聞こえるが、それが再現されているのだという。そして、空調のファンから出る「風」についても、出てくる場所などが忠実に再現されているのだという。星出飛行士は「そんなところまで再現しているのか、と驚きを持ちました。ぜひ『きぼう』の風を感じて欲しいと思います」と、その驚きを語った。展示館の見学にあたっては事前申し込みは必要なく、自由に見学することができる。休館日は毎週月曜日(祝日、夏休みなどの月曜日は開館)と、施設点検日、年末年始(12月29日~1月3日)。開館時間は10時から17時までとなっている。また展示館とは別に、「きぼう」を実際に運用している様子や、宇宙飛行士を養成するための施設なども見学できるツアーも用意されている。こちらはJAXAのウェブサイトから要申し込みとなる。これから夏休みも始まるので、ぜひ訪れてみてはいかがだろうか。●写真集
2015年07月06日日本の民間人として初の国際宇宙ステーション(ISS)宇宙飛行士資格を取得予定のクリエイティブ・ディレクターの高松聡さんが、日本時間の6月22日午後4時に、今後の展開についてモスクワ市内のホテルで記者会見を行った。会見では、今年9月に予定していた宇宙船・ソユーズ号への搭乗を取り止め、引き続きロシア「星の街」で宇宙飛行士資格取得のための訓練を継続することを明かした。また、世界初の有人宇宙旅行を提供しているスペース・アドベンチャーズ社と「宇宙飛行士訓練契約」に加えて、「ISSへの宇宙飛行契約」の締結を発表。現在、スペース・アドベンチャーズ社と当契約を締結している民間人は、Googleの共同設立者であるセルゲイ・ブリン氏と高松さんの2人となり、ISS搭乗民間人としては、8人・9人目の快挙となる見通しだ。搭乗は、2年後から4年後になる予定。さらに会見では、ISS搭乗時に自身が実行する「宇宙を共有できるプロジェクト」についても発表。複数のプロジェクトを構想中と前置きしながらも、「宇宙から見る地球」の地上での再現と「宇宙から写真を撮影する」ことを地上で実現するという、2つのプランを明かした。地上で誰もが「リアルな宇宙体験」を共有できることを目標とし、16年から本格的にプロジェクトの構想、コラボレートするアーティスト・テクノロジスト・エンジニア・サイエンティスト・企業とのプラン化、機材選定、ソフトウェアの開発などを行う計画だ。高松さんは今回の決定について、「私がISSで実施しようと考えているアートプロジェクトを実現するには最先端のデバイス・テクノロジーとソフトウェア・テクノロジーが必要です。1カ月の検討の結果、本年9月のソユーズ打ち上げまでには、これらの準備を高いレベルで完了することはできないという最終結論に達しました。そして、十分な準備のあと、最適なタイミングでフライトを選択することにしました」と話している。高松さんは、電通を退社後、日本初の宇宙旅行代理店SPACE TRAVELを12年に設立。今年の1月からロシア「星の街」で宇宙飛行士訓練を開始した。「新しいタイプの宇宙飛行士」を目指すと話すように、自身のSNSで日々の訓練や生活の様子をリアルタイムで発信している。さらにこの日、これまで体験した訓練の様子を約40分間のビデオで初公開した。
2015年06月22日ロシア連邦宇宙局は6月9日(現地時間)、油井亀美也宇宙飛行士が搭乗するソユーズ宇宙船(43S/TMA-17M)の打ち上げ目標日を7月23~25日と発表した。具体的な日程は後日決定される予定。油井宇宙飛行士は5月27日に予定されていた打ち上げで国際宇宙ステーション(ISS)へと向かう予定だったが、プログレス補給船による国際宇宙ステーション(ISS)へのドッキング断念を受けて延期されていた。同日の発表では今年12月までの打ち上げ計画が発表されており、油井宇宙飛行士の打ち上げの前に7月3日にプログレス補給船の打ち上げが行われることになる。今回発表された計画は以下の通り:7月3日:プログレス補給船(M-28M)(ソユーズUロケット)7月23日~25日:油井宇宙飛行士搭乗のソユーズ宇宙船(43S/TMA-17M)(ソユーズFGロケット)9月1日:ソユーズ宇宙船(TMA-18M)(ソユーズFGロケット)9月21日:プログレス補給船(M-29M)(ソユーズUロケット)11月21日:新型プログレス補給船(MS)(ソユーズ2.1aロケット)の最初の打上げ12月15日:ソユーズ宇宙船(TMA-19M)(ソユーズFGロケット)なお、これらの日程は今後、日本を含む参加国間で安全性などの確認をした上で正式に決定される。
2015年06月10日ロシア連邦宇宙局は5月12日(現地時間)、プログレス補給船による国際宇宙ステーション(ISS)へのドッキング断念を受けて、5月27日に予定していたソユーズ宇宙船の打ち上げを延期すると発表した。延期となった打ち上げにはISS第44次/第45次長期滞在クルーに任命されている油井亀美也 宇宙飛行士が搭乗する予定だった。新しい打ち上げ予定日時は7月下旬を目標としているという。プログレス補給船は、4月28日に行われた打ち上げで制御不能の状態に陥り、5月8日に大気圏に突入して消滅したばかりで、油井飛行士が参加するミッションへの影響が懸念されていた。
2015年05月13日●有人火星探査の実現を目指して2015年3月28日から、国際宇宙ステーション(ISS)で、2人の宇宙飛行士による1年間の宇宙長期滞在が始まった。ISSの長期滞在は半年間が通例となっており、1年にもおよぶ滞在は史上初めてのことだ。このミッションに挑むのは、ロシア連邦宇宙庁(ロスコスモス)所属のミハイール・カルニエーンカ宇宙飛行士と、米航空宇宙局(NASA)所属のスコット・ケリー宇宙飛行士の2人。彼らは第43~46次長期滞在員として2016年3月までISSに滞在し、長期にわたる宇宙空間での生活が、人体にどのような影響を与えるかを調べることになっている。将来、人類が火星や小惑星、さらに先の星々に向けて旅立つとき、年単位の宇宙滞在は避けては通れない道だ。今回のミッションはそんな未来に実現に向けた、大きな一歩となる。○1年間の宇宙滞在カルニエーンカ宇宙飛行士とケリー宇宙飛行士の2人は、ロスコスモス所属のギナジィ・パーダルカ宇宙飛行士と共にサユースTMA-16M宇宙船に乗りこみ、カザフスタン時間2015年3月28日1時42分(日本時間2015年3月28日4時42分)に、カザフスタン共和国にあるバイカヌール宇宙基地の1/5発射台、通称「ガガーリン発射台」から旅立った。彼らを乗せたサユースFGロケットは順調に飛行し、打ち上げから約9分後に地球を回る軌道に入った。そして打ち上げから約6時間後の日本時間10時33分に、国際宇宙ステーション(ISS)のポーイスク・モジュールに到着した。すでにISSには、2014年11月24日から、テリー・バーツ宇宙飛行士(NASA、コマンダー)、アントーン・シュカープリラフ宇宙飛行士(ロスコスモス、フライト・エンジニア)、そしてサマンサ・クリストフォレッティ宇宙飛行士(欧州宇宙機関(ESA)、フライト・エンジニア)の3人が搭乗しており、ここに今回打ち上げられた3人が合流し、ISSは6人体制での運用となる。ISSの長期滞在期間は、おおよそ4か月から6か月間が通例となっている。これまでで最長の滞在記録は、2006年9月18日から2007年4月21日まで滞在したミハイル・チューリン宇宙飛行士とマイケル・ロペス-アレグリア宇宙飛行士による215日間で、今回のカルニエーンカ、ケリー宇宙飛行士のように、1年間も滞在するのはISSにとって史上初のことだ。これまで、連続で宇宙に滞在し続けた世界最長の記録は、1994年1月9日から1995年3月22日の437日間、ロシアの宇宙ステーション「ミール」に滞在したヴァレーリィ・パリャコーフ宇宙飛行士が持っている。2位は1998年8月13日から1999年8月28日の379日間にわたってミールに滞在したシルゲーイ・アヴデーイフ宇宙飛行士、3位は1987年12月21日から1988年12月21日のちょうど1年間滞在したヴラジーミル・チトーフ宇宙飛行士とムサー・マナーラフ宇宙飛行士だ。カルニエーンカ、ケリー宇宙飛行士が、今回のミッションで厳密に何日間滞在するのかはまだ決まっていないが、ちょうど1年間ならチトーフ、マナーラフ宇宙飛行士の記録に並ぶことになり、もし1日でも伸びるようなら、記録が塗り替えられることになる。○有人火星探査に向けて今回のミッションは、長期間の宇宙滞在が人間の体にどのような影響を与えるのかを調べることが目的とされる。将来、人類が火星や小惑星、さらに先の星々に向けて旅立つとき、年単位の宇宙滞在は避けては通れない道だ。どういうミッション内容かにもよるが、例えば有人火星探査であれば、500日間は宇宙船に乗って宇宙を航行する必要があると想定されている。これまでの研究で、人間が長期間宇宙に滞在すると、視力が落ちたり、筋肉が萎縮したり、また骨量が減少したりすることがわかっている。また、それには個人差があることもわかっている。しかし、そうした衰えがどの程度まで進行するのか、またそれは防いだり、進行を遅らせたりすることができるのか、といったことについては結論が出ていない。つまり人間の体が、火星や、さらにその先の星への飛行に耐えられるかどうかは、まだわかっていないのだ。今回のミッションでは、宇宙滞在中の2人の睡眠パターンの調査や、頭蓋骨の内部の圧力の変化の調査、代謝の変化を通じたストレスや免疫機能の調査、運動活動を通じた身体機能の調査、体にいる微生物の調査などが実施され、地球への帰還後もさらに調査が続けられるという。なお、ISSには常に緊急帰還用にサユース宇宙船が係留してあるため、万が一体に何かが起きたとしても、すぐに地球に帰ることは可能だ。また、ケリー宇宙飛行士にはマーク・ケリー氏という一卵性双生児の兄弟がおり、2人のDNAを比べることで、宇宙と地球上での変化の違いなども調べられるという。余談だが、マーク・ケリー氏は元宇宙飛行士で、スペースシャトルで4回飛行した経験を持っている。●宇宙滞在の合計日数の世界記録も更新○パーダルカ宇宙飛行士は世界記録を更新今回のミッションではもうひとつ、パーダルカ宇宙飛行士による宇宙滞在の合計日数の世界記録も作られる予定だ。現時点での合計日数の世界記録保持者はシルゲーイ・クリカリョーフ宇宙飛行士で、6回の宇宙飛行で計803日滞在している。2位はアリキサーンドル・カレーリ宇宙飛行士の759日、3位はシルゲーイ・アヴデーイフ宇宙飛行士の747日だ。パーダルカ宇宙飛行士はこれまで4回の宇宙ミッションを行い、宇宙滞在日数を合計すると710日で第4位の記録だが、今回のミッションで約半年間宇宙に滞在するため、これらの記録をごぼう抜きにし、1位になることになる。また、クリカリョーフ宇宙飛行士とアヴデーイフ宇宙飛行士はすでに宇宙飛行士を引退しており、カレーリ宇宙飛行士は引退こそしていないがもう高齢なため、おそらく当分の間、パーダルカ宇宙飛行士の記録が抜かれることはないだろう。○宇宙旅行者枠の復活今回の1年間の宇宙滞在によって、副次的に宇宙旅行者の飛行機会が訪れることになった。宇宙旅行者とは文字通り、国の代表である宇宙飛行士としてではなく、宇宙飛行に掛かるお金を自分で負担し、旅行者として宇宙に行く人のことだ。ロシアは、サユース宇宙船の座席を販売することで外貨を稼ぐという試みを行っており、また米国のスペース・アドヴェンチャーズ社という会社が仲介人となって、これまでに実業家のデニス・チトー氏や、ゲーム・クリエイターのリチャード・ギャリオット氏、「シルク・ドゥ・ソレイユ」の創設者ギー・ラリベルテ氏など、これまでに7人が宇宙旅行者としてISSに行っている。だが、ISSの6人体制が始まったことや、またスペースシャトルが引退したことで、販売できる座席の余裕がなくなり、2009年を最後に中断されていた。ISSは現在6人体制で運用されているが、6人の宇宙飛行士を一度に打ち上げるのではなく、3人の宇宙飛行士を6か月ごとに、3か月ずらして打ち上げることで維持されている。ある3人の宇宙飛行士が打ち上げられれば、そのときすでにISSには3人の宇宙飛行士が滞在しており、合流後6人で運用される。その3か月後に先に滞在していた3人が地球に帰還すると、直後に新しい3人の宇宙飛行士が打ち上げられ、ISSはまた6人体制になる、の繰り返しだ。だが、今回はその3人のうち、2人が1年もの間滞在し続けるため、2席分の空きが生じることになり、パーダルカ宇宙飛行士は1人で帰還しなければならなくなってしまう。そこで今回は変則的に、まずサユースTMA-16Mの帰還の前にサユースTMA-18Mを打ち上げ、一時的にISSを9人体制にし、その直後にサユースTMA-18MでISSにやってきたうちの2人と一緒に、パーダルカ宇宙飛行士がサユースTMA-16Mで帰還するという運用が行われることになっている。この場合、サユースTMA-18MでISSにやってくるうちの2人の宇宙滞在が約2週間ほどしかないが、ここに今回が初の宇宙飛行となる新人のアンドレアス・モゲンセン宇宙飛行士と、宇宙旅行者として参加する、世界的歌手のサラ・ブライトマン氏が充てられていることになった。新人と旅行者にとって2週間はちょうど良い、というわけだ。現在サラ・ブライトマン氏は、ロシアのモスクワの郊外にある、通称「星の街」と呼ばれる宇宙飛行士の訓練センターで、宇宙飛行に向けた訓練などを行っている。宇宙旅行者は、ただ単にサユースに乗るというわけにはいかず、厳しい身体検査や、宇宙飛行の理論からサユース宇宙船の仕組みや構造の学習、地上の設備や航空機を使った訓練などを受けなければならないためだ。○付記: 今後のISSへの宇宙飛行士の飛行予定以下に、今後カルニエーンカ、ケリー宇宙飛行士が帰還するまでの、ISSへの宇宙飛行士の飛行予定を一覧にまとめた。名前の横は(所属機関、サユース宇宙船での役目)を示す。なお、日付は現時点での予定であり、今後延期される可能性がある。・サユースTMA-16M打ち上げ(2015年3月27日)ギナジィ・パーダルカ(ロスコスモス、コマンダー)ミハイール・カルニエーンカ(ロスコスモス、フライト・エンジニア)スコット・ケリー(NASA、フライト・エンジニア))・サユースTMA-15M帰還(2015年5月11日)アントーン・シュカープリラフ(ロスコスモス、コマンダー)サマンサ・クリストフォレッティ(ESA、フライト・エンジニア)テリー・バーツ(NASA、フライト・エンジニア)・サユースTMA-17M打ち上げ(2015年5月26日)アレーク・カノネーンカ(ロスコスモス、コマンダー)油井亀美也(JAXA、フライト・エンジニア)チェル・リングリン(NASA、フライト・エンジニア)・サユースTMA-18M打ち上げ(2015年9月1日)シルゲーイ・ヴォールカフ(ロスコスモス、コマンダー)アンドレアス・モゲンセン(ESA、フライト・エンジニア)サラ・ブライトマン(宇宙旅行者)・サユースTMA-16M帰還(2015年9月11日)ギナジィ・パーダルカ(ロスコスモス、コマンダー)アンドレアス・モゲンセン(ESA、フライト・エンジニア)サラ・ブライトマン(宇宙旅行者)・サユースTMA-17M帰還(2015年11月5日)アレーク・カノネーンカ(ロスコスモス、コマンダー)油井亀美也(JAXA、フライト・エンジニア)チェル・リングリン(NASA、フライト・エンジニア)・サユースTMA-19M帰還(2015年11月20日)ユーリィ・マレーンチェンカ(ロスコスモス、コマンダー)ティモシー・ピーク(ESA、フライト・エンジニア)ティモシー・コプラ(NASA、フライト・エンジニア)・サユースTMA-18M帰還(2016年3月)シルゲーイ・ヴォールカフ(ロスコスモス、コマンダー)ミハイール・カルニエーンカ(ロスコスモス、フライト・エンジニア)スコット・ケリー(NASA、フライト・エンジニア)
2015年04月13日1日のうち夜は一度訪れる、というのは地球上の話で、宇宙ステーションでは1日に何度も昼と夜が訪れるそうです。考えただけでも体がおかしくなってしまいそうですよね。それに対応すべく極地での研究が進められているそうです。南極における睡眠の研究過酷な環境下では、人の眠りはどのように変化するのか――今回は「地球上で宇宙と環境が似ている場所」と考えられている南極で行われた睡眠の研究に注目します。宇宙旅行が身近なものになっていくと予測される現代。宇宙での睡眠は、今後ますます興味をひく対象になっていくでしょう。時代を先取りして、知っておいても損はないですよね!研究は、南極越冬隊の隊員数名に対して3、6、9、12月に心電図や脳波などの医学データの取得と、睡眠に関するアンケートをとる、というものです。宇宙と南極は似ている?前提条件として、宇宙と南極が似ているという理由は次の通りです。・日照時間が通常と異なる。宇宙ステーションは90分間で地球を1周するため昼夜が45分サイクルで入れ替わり、24時間周期になっている宇宙飛行士は体調を崩すことがある。・運動が必要になる。宇宙では無重力の影響で筋力が弱くなるため、宇宙飛行士には日々のトレーニングが義務付けられている。南極では屋外の行動が制限されるため、越冬隊に義務付けられてはいないが、トレーニングが必要である。・入浴が制限される。宇宙ステーションには風呂もシャワーもない。南極は昭和基地以外には入浴施設がない。そのため、清潔に保つ技術が必要になる。ますます進む極地での研究南極での睡眠研究の結果は「一部の例外を除いて、ほぼ良好な状態だった」そうです。例外とは、睡眠時無呼吸症候群の傾向がみられた隊員のことですが、これは測定前からその傾向があったと考えられています。ただ、この研究結果は事前に先行研究の報告から「睡眠の質の低下や気分の悪化」などの情報があったことから、それを回避すべく食事や睡眠の時間を調整したため「ほぼ良好」となったのではないかとも言われています。これからさらに南極や宇宙など、過酷な状況下での睡眠に関する研究は進んでいくでしょう。また、最新の結果が発表され次第、ご報告したいと思います!Photo by PhOtOnQuAnTiQuE
2015年03月30日第1回では、国際宇宙ステーションの成り立ちと、ロシアが2024年に国際宇宙ステーションの運用から抜けること、そしてその後、3基のロシア側モジュールを引き連れて、ロシア独自の宇宙ステーションを建造することといった内容の方針を発表したことを紹介した。今回は、その3基のロシア側モジュールを基に建造される「ロシアの宇宙ステーション」が、いったいどのようなものなのかについて紹介したい。○ISSから分離される3基のモジュールロシア連邦宇宙庁が2015年2月24日に発表した文書の中で、国際宇宙ステーションから分離すると記されているのは、「多目的実験モジュール」(MLM、愛称「ナウーカ」)、「ウズラヴォーイ・モジュール」(UM)、そして「科学・電力モジュール」(NEM)の3基だ。ナウーカ・モジュールは、軌道上で科学実験を行うことを目的としたモジュールとして開発されている。ナウーカとは「科学」という意味だ。これまでに打ち上げられたロシア側モジュールのザリャー、ズヴィズダーは、宇宙飛行士の居住区や倉庫などの用途で使われているため、ナウーカは初の科学実験を目的としたロシア側モジュールとなる。打ち上げにプロトーンMロケットが使われる。ウズラヴォーイ・モジュールは、球体に6か所のドッキング・ポートを持った形をしている。少し詳しい人なら、昔「ミール」宇宙ステーションの中心にあった、ドッキング部分を思い出すかもしれない。ウズラヴォーイ・モジュールもまさにミールと同じように、この6か所のドッキング・ポートにモジュールを結合させ、巨大なステーションを建造することが考えられている。もちろんソユース宇宙船やプログレス補給船のドッキングも可能だ。ウズラヴォーイとは「結節点」や「中心点」といった意味で、まさに各モジュールをつなぐ節として機能する。打ち上げの際は、プログレス補給船の先端にある軌道モジュール部と取り替えるような形で搭載され、ソユース2ロケットで打ち上げられる。科学・電力モジュールは、実験区画と巨大な太陽電池を持つモジュールで、ロシア側モジュールに対して電力を供給し、また独立後も発電所として機能する。以前は「科学・電力プラットフォーム」と呼ばれており、規模も今よりもう少し大きなものであったが、計画は中止され、部品の一部はラスヴェート・モジュールへ流用されている。その後計画が見直され、規模を縮小した科学・電力モジュールの開発が始まった。打ち上げにはプロトーンMか、アンガラー・ロケットが用いられる予定だ。この3基のモジュールはまだ打ち上げられておらず、地上で開発中、もしくは保管中の状態にある。計画では、まずナウーカを打ち上げ、ズヴィズダー・モジュールの地球側のドッキング・ポートに結合する。そして後ろからウズラヴォーイを結合し、それを介する形で科学・電力モジュールを結合する。ウズラヴォーイはすでに完成しているとされるが、こうした組み立て方であることから、まずナウーカが先に打ち上げられないことには何もできない状況にある。しかしナウーカは製造が遅れており、打ち上げは早くても2017年以降になるといわれている。したがってウズラヴォーイや科学・電力モジュールはさらにその後ということになる。ただ、ロシアにとって都合の良いことに、もし予定通りに2017年に打ち上げられたとしても、2024年時点で7年しか宇宙で使われていないことになり、また打ち上げが遅れれば遅れるほど、その時間はより短くなる。ナウーカの設計寿命は15年ほどとされているため、ロシアにとっては寿命が十分に残った状態のモジュールを、自身の宇宙ステーションに使えることになる。○国際"じゃない"宇宙ステーションナウーカ、ウズラヴォーイ、科学・電力モジュールを引き連れて独立したロシアの宇宙ステーションは、それだけは少し貧相だが、徐々に新しいモジュールが結合され、かつてのミールに匹敵するほどの宇宙ステーションが造られる予定だ。まだその具体的な姿かたちは明らかにされていないが、ソヴィエト・ロシアの宇宙開発に詳しいWebサイト「RussianSpaceWeb」によれば、「オーカT-2」、「トランスフォーマブル・モジュール」、「モジュール・シップヤード」という3基が結合される可能性があるという。オーカT-2は、ソユース2.1bロケットで打ち上げられる比較的小型のモジュールで、主に実験場として使用されるという。かつてはオーカ2-MKSと呼ばれており、国際宇宙ステーションへ結合するために造られていたが、計画変更により中止されている。トランスフォーマブル・モジュールは空気で膨らむモジュールで、主に居住区として使用されるようだ。モジュール・シップヤードは、宇宙飛行士が船外活動する際の出入り口(エアロック)が装備されている他、宇宙飛行士を乗せた宇宙船や補給物資を積んだ補給船のドッキング・ポートとしての機能も持つという。実際にどうなるかはまだ不明だが、ウズラヴォーイのドッキング・ポートは6か所あるから、もう1つモジュールが増えることもあるだろう。ロシアはこの新しいステーションを使い、有人月探査を始めとする将来の有人深宇宙探査に向けた足がかりとして、宇宙飛行士の長期滞在実験や、深宇宙探査から帰ってきた宇宙飛行士のリハビリ施設として使うことを目指しているという。○高緯度宇宙ステーションとヴァストーチュヌィ宇宙基地このロシアの宇宙ステーションは、国際宇宙ステーションよりも軌道傾斜角(赤道上からの傾き度合い)が大きくなるといわれている。国際宇宙ステーションの軌道傾斜角は51.6度だが、このロシアのステーションのそれは64.85度になり、また高度も高くなるという。その理由について、ロスコスモスのオレーク・オスターペンコ前長官は「ロシアの上空を通過する頻度が増え、地表が観測しやすくなる」と語ったりしていたが、それは事実ではあっても、おそらく最大の理由ではないだろう。ロシア上空を通過する頻度が増えることで交信可能な時間も増え、また軌道傾斜角が大きいことで宇宙船や補給船の打ち上げがしやすくなるという、どちらかといえばロシアが単独で宇宙ステーションを運用する際の、運用上の必然からもたらされたものであると考えられる。軌道傾斜角が大きいことで宇宙船や補給船の打ち上げがしやすくなる、という点については少し説明が必要かもしれない。現在ロシアは、国際宇宙ステーションへのモジュールや宇宙飛行士、補給物資の打ち上げ場所として、バイコヌール宇宙基地を使っている。バイコヌールはカザフスタン共和国内にあるため、ロシア政府は料金を払って使用している状態にある。ちなみにロシアは、ロシア北東部にプレセーツク宇宙基地を持っているが、ここは地球を南北に回る極軌道への打ち上げに特化した基地であり、国際宇宙ステーションへの打ち上げには使われていない。一方で、ロシアは極東部に「ヴァストーチュヌィ」という新しい宇宙基地を建設している。ヴァストーチュヌィはバイコヌールに取って代わる宇宙基地に位置づけられており、ここが完成すれば、カザフスタンに気兼ねなく、新しいモジュールや宇宙船、補給船を打ち上げられるようになる。しかし、このヴァストーチュヌィ宇宙基地は立地上、国際宇宙ステーションの軌道傾斜角である51.6度の軌道への、有人宇宙船の打ち上げには適していない。というのも、東側には太平洋が広がっているため、万が一ロケットが飛行中に問題を起こして宇宙船を緊急脱出させた場合、宇宙船は太平洋上に着水する羽目になるからだ。ソユース宇宙船は基本的に着水するようには造られておらず(まったくできないというわけではない)、救助用の船なども新たに用意しなければならない。一方、軌道傾斜角64.85度へ向けた打ち上げであれば、ロケットはシベリア北部のツンドラ地帯を突っ切ることになり、ロケットから脱出した宇宙船は陸上に降りられることになるため、捜索や回収が比較的簡単になる。(次回は3月17日に掲載予定です)
2015年03月13日「国際宇宙ステーション」――それは、地球の地表から高度400kmを、秒速7.7kmで飛ぶ、サッカー場ほどもある巨大な建造物である。建設や運用には米国をはじめ、ロシア、カナダ、欧州、そして日本など、世界16か国が参加する一大国際協力プロジェクトでもある。これまでに述べ216人もの宇宙飛行士が訪れ、人類の有人宇宙開発の前哨基地として日夜実験や研究が続けられている。しかし、始め有るものは必ず終わり有り、国際宇宙ステーションもいつかは運用を終えなければならないときがくる。しかし、いつ終わらせるのか、そしてその後の各国の有人宇宙計画はどうなるのかは、まだはっきりとは決まっていない。その中で、ロシア連邦宇宙庁(ロスコスモス)は2015年2月24日、国際宇宙ステーションより先の有人宇宙計画について、いち早く具体的な計画を打ち出した。それは2024年で国際宇宙ステーションから離脱し、ロシア単独で新しい宇宙ステーションを造るというものだ。○国際宇宙ステーションとは国際宇宙ステーションは1998年、最初のモジュール「ザリャー」の打ち上げから建設が始まった。モジュールというのは、宇宙ステーションを構成する部品のことだ。巨大なステーションを一度に打ち上げることはできないので、部品単位で次々に打ち上げて、それらを宇宙でくっ付けて組み立てるという方法が採られている。国際宇宙ステーション計画はもともと、1984年に米国のレイガン大統領によって提唱された「フリーダム」という宇宙ステーションが発端となっている。フリーダムは米国を中心に、日本や欧州諸国、カナダなどが建設に参加する計画で、当時世界は東西冷戦下にあったため、フリーダムによって、西側諸国の結束の強さをソヴィエト連邦に示威する意味合いがあった。フリーダムといういかにもな名前も、レイガン大統領自らが付けたものだ。当初の予定では、1492年のコロンブスによるアメリカ大陸発見から500年目にあたる、1992年には完成しているはずだった。しかし複雑な設計や、予算削減による資金難によって開発は遅れ、何より冷戦の終結によって、フリーダムはいつまで経っても宇宙へ打ち上げられることはなく、存在意義も失われつつあり、1991年には米議会によって計画が中止寸前にまで追い込まれる有様だった。1993年、NASAはフリーダムの規模を小さくした「アルファ」という宇宙ステーションへの計画変更を発表する。一方、1991年に誕生したロシアは、ソ連時代に打ち上げられた「ミール」という宇宙ステーションを引き続き運用しており、また新しく「ミール2」を建造する計画を持っていたが、資金難により計画はほとんど進んでいなかった。そこでNASAはロシアと手を結び、アルファとミール2を合体させる形で、新しい宇宙ステーションを造ることを決定する。それが今の国際宇宙ステーションとなった。そして、もともとミール2のモジュールとして開発されていたザリャーの打ち上げを皮切りに、ユニティ(米、1998年)、ズヴィスダー(露、2000年)、ディスティニー(米、2001年)、クエスト(米、2001年)、ピールス(露、2001年)、ハーモニー(米、2007年)、コロンバス(欧、2008年)、「きぼう」(日、2008-2009年)、ポーイスク(露、2009年)、キューポラ(米、2010年)、トランクウィリティ(米、2010年)、ラスヴェート(露、2010年)、恒久型多目的モジュール(米、2011年)といったモジュールが打ち上げられ、ステーションに結合されていった。またこれと並行し、ステーションの横に伸びるトラス構造物や、そこから広がる太陽電池パドルなどが2000年から2009年にかけて打ち上げられ、さらにカナダ製のロボットアームや、ステーションの外に設置する実験機器なども打ち上げられ、組み立てられていった。国際宇宙ステーションはひとまず、2011年7月をもって「完成」ということになっているが、今後も3基のロシア側のモジュールが打ち上げられる予定であり、また米国のビグロゥ・エアロスペース社が開発する、空気で膨らむ形式のモジュール(インフレータブル・モジュールという)も打ち上げが計画されており、本当の意味ではまだ未完成だ。○ロシアが打ち出した方針ロスコスモスが2月24日に発表した方針は、同庁内で開催された、今後の有人宇宙計画について話し合う会議の中でまとめられたものだ。座長はロスコスモスの前身にあたるロシア航空宇宙庁(ロスアヴィアコスモス)の長官を務めていたこともあるユーリィ・コープチェフ氏である。今後この方針は、産業界のトップも交えた会議の中で、最終的に決定されるという。ロスコスモスが発表した方針は、大きく3つの項目から構成されている。国際宇宙ステーション計画には2024年まで参加する。2024年時点でロシアが保有する国際宇宙ステーションのモジュールのうち、3基を切り離し、それらを基にロシア独自の宇宙ステーションを建造する月探査にも力を入れ、無人探査を行った後、2030年代中に人間を送り込む現在、参加各国の間では、国際宇宙ステーションは2020年まで運用されること決定がなされている。2014年に米国が、ステーションの運用を2024年、あるいは2028年まで延長したいという方針を打ち出したが、まだ計画に参加しているすべての国からの了解は得られていない。例えば日本は現在態度を保留しており、2016年度に決定するとしている。その中で、国際宇宙ステーションに多くのモジュールを提供し、宇宙飛行士や物資の輸送でも主力となっているロシアが、いち早く「わが国は2024年に手を引く」と表明したことは、米国による国際宇宙ステーションの2024年までの延長案をロシアが受け入れたということと同時に、ロシアが抜けることで2024年以降の国際宇宙ステーションの運用に大きな改革が必要になること、あるいは運用を終了せざるを得なくなる可能性もあることを示している。実は、ロシアではかねてより、国際宇宙ステーションから撤退し、独自の宇宙ステーションを持つことを検討し続けていた。また2014年には、ドミートリィ・ロゴージン副首相が、ウクライナ問題を巡る米露の対立を背景に「2020年以降は国際宇宙ステーションに参加しない」と発言したこともあった。一部のメディアで「ロシアが米国に妥協して2024年まで付き合うことを決定した」という論調があったのも、そうした事情があったためだ。この「妥協」という見方は、ある意味では正しい。現在のロシアの宇宙開発は、以前ほどではないにせよ資金不足の状態が続いており、軍事衛星から民間向けの通信衛星に至るまで、開発や打ち上げ時期が軒並み遅れている。また、ロケットの打ち上げ失敗や衛星の故障も増えており、現在信頼性の回復に向けた努力が続けられている最中にある。ロシアにとっては、国際宇宙ステーションに2024年まで参加し続けることで、なるべく投資を抑えつつ、また見方によっては他国がその一部を負担する形で、自力で有人宇宙活動ができるぐらいにまで資金力や技術力を回復させたいという狙いがあるのだろう。ところ、実はロシアは、2001年ごろから独自の宇宙ステーションを持つ構想を持っていた。近年ではOPSEKという名称で研究も進められていた。今回の方針の下敷きには、今までの検討や研究の蓄積があるのだろう。ちなみに、2001年にロシア独自の宇宙ステーションを持つべきと主張していた人物こそ、この会議の座長を務めたユーリィ・コープチェフ氏であった。
2015年03月13日『宇宙戦艦ヤマト2199』と『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』の軌跡を音楽で綴るシンフォニーコンサート「宮川彬良 Presents『宇宙戦艦ヤマト2199』コンサート2015」が2月28日~3月1日にかけて、千葉県・舞浜アンフィシアターにて行われた。2012年に劇場でのイベント上映からスタートした『宇宙戦艦ヤマト2199』シリーズの音楽を、オリジナル・アレンジ・新曲の3つのアプローチから新たなる"ヤマトサウンド"を構築した宮川彬良氏。今回のコンサートでは、ヤマトの航海を音楽で追体験することをコンセプトに、第1部『追憶の航海』と第2部『星巡る方舟』の2部構成で楽曲をセレクトし、ミュージシャン60名が劇判と同じ編成で生演奏を行うという特別なコンサートとなった。第1部のオープニングを飾ったのは、弦と管楽器による落ち着いた曲調の「銀河航路BG」、2曲目は美しいスキャットで知られるYucca氏が登場する「無限に広がる大宇宙」。そして「夕日に眠るヤマト」「地球を飛び立つヤマト」と続き、ヤマトの航海が始まるシーンを再現した。中盤では、約40名の混声合唱団によるガミラス国家「永遠に讃えよ我が光」、ドメルとの死闘を中心にした「コスモタイガー(Wan・Dah・Bah)」「ヤマト前進」「ヤマト渦中へ」も演奏され、観客たちの気持ちを否応なしに盛り上げていく。そしてラストには、デスラーとスターシャの心情を描くシーンで使用された「孤高のデスラー」「虚空の邂逅」が演奏され、ヤマトは無事イスカンダルに到着し、第1部は幕を閉じた。休憩を挟み、第2部は第一バイオリンのソロが美しい「宇宙戦艦ヤマト2199 メインテーマ」からスタート。しかし、ティンパニの迫力が迫る楽曲「蛮族襲来」で空気は一変。その後「ジレルの囁き」では橋本一子氏が登場し、『星巡る方舟』のストーリーやシーンを思い出させる楽曲が続いていく。第2部の終盤では「大決戦-ヤマト・ガミラス・ガトランティス-」「方舟は星の海へと還る」「わかれ」「わかれ-出航-」と、『星巡る方舟』の劇中で使用された曲順と同じ流れで演奏が行われた。最後に、混声合唱団にYucca氏と橋本一子氏が加わった「Great Harmony ~for yamato2199」が斉唱され、ステージに設置されたスクリーンに"大志"のフレーズと地球の姿も。そして、地球が青く変わっていく姿が投影され、コンサートは盛況のうちに幕を閉じた。なお、このコンサートの模様を収録したBlu-ray Audio&CD『宮川彬良 Presents 宇宙戦艦ヤマト2199 Concert 2015』が、6月10日に日本コロンビアから発売されることも決定。価格は、Blu-ray Audioが5,184円、CD(2枚組)が4,104円。(C)西﨑義展/2014 宇宙戦艦ヤマト2199 製作委員会
2015年03月04日●17年越しで打ち上げられたDSCOVR米国のスペースX社は2月10日、地球・宇宙天気観測衛星「DSCOVR」を搭載した、「ファルコン9」ロケットの打ち上げに成功した。この打ち上げは2つの点で大きな注目を集めた。ひとつは、DSCOVRがかつてアル・ゴア元米副大統領の肝いりで開発が始まったものの、打ち上げ中止などの紆余曲折の末に、実に17年越しで打ち上げられた衛星であったこと。そしてもうひとつは、ファルコン9の第1段機体が海上への着水に成功したことだ。○17年越しで打ち上げられた「ゴアサット」DSCOVRは米航空宇宙局(NASA)と米海洋大気庁(NOAA)が開発した衛星で、太陽から放出される荷電粒子や、磁気嵐の状況といった「宇宙天気」を観測すること、また地球の昼側(太陽光が当たる側)を常時観測することを目的としている。DSCOVRは「Deep Space Climate Observatory」の略で、直訳すると「深宇宙の気象観測所」といった意味になる。またDSCOVRという略語は、「発見する」という意味の「Discover」に掛けられている。打ち上げ時の質量は570kgで、設計寿命は約2年が予定されている。軌道は、太陽・地球系のラグランジュ第1点と呼ばれる場所に投入される。下図にあるように、この場所は常に太陽と地球の間に存在しているので、太陽と地球の間の環境や、お互いがお互いに与える作用を観測したり、また地球の昼側を観測し続けるのに適している。DSCOVRには、大きく3種類の観測機器が搭載されている。まず「PlasMag」は、太陽から地球に向かって飛んでくる荷電粒子や電子、そして磁場などを観測する。「NISTAR」は地球のエネルギー収支を観測する。そして「EPIC」は、地球表面からのエネルギーの放射量やエアロゾル、オゾン、雲の動きなどを観測することを目的としている。DSCOVRは実に17年越しに打ち上げられた衛星だ。DSCOVRの開発は、もともと1998年に開発がはじまったトリアーナ(Triana)計画をその源流に持つ。トリアーナという名前は、1492年にコロンブスの艦隊がアメリカ大陸に訪れた際、最初に船から大陸を発見した乗組員の名前にちなんでいる。そしてトリアーナにはもうひとつ、「ザ・ブルー・マーブル」のような青く輝く地球の写真を、ほぼリアルタイムで世界中に配信するというミッションも課せられてた。「ザ・ブルー・マーブル」というのは、1972年にアポロ17の宇宙飛行士たちが撮影した、太陽の光を全面に受けて、宇宙に浮かぶビー玉のように輝く地球の写真のことだ。トリアーナを使い、現代の、そして常に最新のブルー・マーブルの映像を世界中に配信することで、環境問題や世界平和への意識を高めることが期待されていた。これは当時のアル・ゴア米副大統領の肝いりで進められたもので、後の証言によると、トリアーナはそもそも、このゴア副大統領の提案が発端となって計画が立ち上がり、他の科学機器はその後に徐々に付け加えられていったのだという。また、ゴア副大統領は太陽・地球系のラグランジュ第1点の持つ価値や、衛星からの観測で分かることなどについて、深い知識を持っていたという。しかし周囲からの評判は芳しくなく、「高価なスクリーンセーバーに過ぎない」と非難されたり、必要性を強固に訴えるゴア氏の名前を取り「ゴアサット」などと揶揄される始末だった。また、他の機器による科学ミッションについても「すでにある気象観測衛星からのデータで十分」という批判が集まるようになり、すでに衛星はほとんど完成していたにもかかわらず、2001年に計画は中止されることになった。トリアーナはスペースシャトルで打ち上げることが予定されていたが、国際宇宙ステーションの建設や、ハッブル宇宙望遠鏡の修理ミッションの方が優先順位が高かったために中止され、打ち上げ手段がなくなったのだ。ちなみに、打ち上げが中止される直前の時点で、トリアーナは、2003年2月1日に空中分解事故によって悲劇的な結末となった、STS-107コロンビアで打ち上げられることが計画されていた。また、この中止の背景には政治的な事情があったといわれることもある。ゴア氏は2000年の米大統領選挙に民主党候補として出馬し、激しい選挙戦の末、共和党候補のジョージ・W・ブッシュに破れている。トリアーナが中止されたのは、まさにブッシュ政権が誕生したのと同じ2001年のことであり、当時のことについて触れられた記事などでは「ブッシュ大統領はゴアサットを見せしめとして潰したのだ」などと書かれることもある。だが、スペースシャトルの運行予定が詰まっていたことは事実であり、かといって別のロケットで打ち上げるには追加予算が必要になること、さらに衛星の必要性が疑問視されていたことから、たとえゴア氏の息のかかった衛星でなかったとしても、打ち上げは中止されていたと見るのが自然だろう。トリアーナは打ち上げ中止となったが、しかし解体されることにはならなかった。NASAは、ゴダード宇宙飛行センターの窒素が充填された箱の中でトリアーナを保管し、いつか打ち上げの機会が巡ってくるときを待ち続けた。2003年には、トリアーナからDSCOVRへと名称が変更された。そして2009年、トリアーナ改めDSCOVRに、NOAAが救いの手を差し伸べた。当時NOAAは、NASAが打ち上げたACE(Advanced Composition Explorer)という太陽風の観測衛星に観測機器を提供し、宇宙天気の研究や、大規模な太陽嵐が発生する可能性があるときには警報を出すといったミッションを行っていた。しかしACEは1997年に打ち上げられた衛星であり、老朽化が進んでいたことから、NOAAでは後継機を欲していた。そこで目をつけたのが、ほぼ完成した状態で保管されていたDSCOVRだったのだ。NOAAの資金提供によって、約8年ぶりに保管庫から出されたDSCOVRは、まず各機器が正常に動くかが確かめられた。また搭載する観測機器はトリアーナ時代と変わらないが、NOAAの要求に合わせて再調整が行われた。こうしてDSCOVRは、姿かたちこそ変わらないものの、ミッションの主役はNASAからNOAAへ移り、新たに宇宙天気の観測を目的とした衛星として生まれ変わった。また、DSCOVRには米空軍も資金を提供している。これには2つの狙いがあった。まず1つ目は、宇宙天気の情報は米空軍の活動、特に弾道ミサイルの発射などを探知するための早期警戒衛星の運用にとって重要であること。そして2つ目は、新興企業のスペースX社が開発した新型のファルコン9ロケットに、1回でも多くの打ち上げの機会を提供することで、「育てる」という狙いがあった。ロケットに打ち上げ機会を提供するために衛星を新しく造るのはお金がかかるし、かといって単なる重りを打ち上げたり、あるいは空荷で打ち上げるのはもったいない。そこで、ある程度製造が終わっていたDSCOVRに資金提供が行われ、DSCOVRの復活を後押しした。米空軍が提供した分の金額は、ほぼすべて打ち上げ費用に充てられた。こうした紆余曲折を経て、DSCOVRは米東部標準時2015年2月11日18時3分(日本時間2015年2月12日8時3分)、米国フロリダ州にあるケープ・カナヴェラル空軍ステーションのSLC-40から旅立った。ロケットは順調に飛行し、約35分後に予定通りの軌道にDSCOVRを投入した。DSCOVRは現在、太陽・地球系のラグランジュ第1点に向けて飛行を続けている。2月24日にはその道程の半分を通過している。観測が始まれば、宇宙に浮かぶ、青く輝く地球の画像が、毎日のように送られてくる。それはきっと息を呑むほど美しいものに違いない。DSCOVRの打ち上げに立ち会ったゴア氏は、自身のblogの中で次のように語っている。「DSCOVRは、地球に関する私たちの理解を深め、市民や科学者たちに異常気象の現実を教え、その解決策を考えるためのミッションへ旅立った。そしてDSCOVRはまた、この地球の美しさと、そして脆さを映し出し、このたったひとつの地球を守る義務を思い起こさせてくれる、すばらしい機会を与えてもくれるだろう」。●ファルコン9ロケットは着水に成功○ファルコン9の第1段は精度10mで着水今回の打ち上げにおける世間の注目は、どちらかというと積み荷のDSCOVRよりも、それを打ち上げるファルコン9ロケットの第1段機体の回収試験に集まっていた。スペースX社は、ロケットを再使用することで、打ち上げにかかわる費用を大きく引き下げることを目指しており、その最初のステップとして、打ち上げを終えて地球に戻ってきたロケットの第1段機体を、広い甲板を持つ船で回収する、という試験を進めている。同社はこれまで、垂直離着陸実験機による試験飛行や、打ち上げ後に第1段を海上に降ろす着水試験を行い、今年1月10日には船の上に着地する試験に初挑戦した。ロケットは巧みに制御されつつ船の真上まで舞い戻りはしたものの、甲板に激しく衝突するように着地し、残念ながら完璧な成功には至らなかった。その詳細については、拙稿『隼は舞い降りられるか? - 再使用ロケットに賭けるスペースXの野望と挑戦』を参照していただければと思う。今回のDSCOVRの打ち上げでは、1月の試験と同じく、太平洋上に用意した回収船の上にロケットの第1段機体を着地させることを目指していた。しかし、打ち上げ当日に着地予定海域を嵐が襲い、船が出せなくなってしまった。また船自体も、エンジンの1つに問題を抱えていたという。あくまで主目的はDSCOVRを打ち上げることにあったので、回収船が出せないからといって打ち上げが延期されることはなかった。しかし、スペースX社は転んでもただでは起きなかった。船こそないものの、本番さならがらに、海のある一点を目指して着水させることを試みた。その結果、約10mの精度で垂直に安定して降下することに成功したという。同社のイーロン・マスクCEOは「天気が安定していれば、船の上に降り立つことは可能だろう」とTwitterで述べている。もちろん今回がうまくいったからといって、次の試験で成功するとは限らないが、それでも可能性は高くなったと言ってよいだろう。ファルコン9の次の打ち上げは3月1日以降に予定されているが、この打ち上げと、さらにその次の打ち上げでは、ロケットの持つ能力を最大限に使う必要があり、着地に使うための追加の推進剤や着陸脚を積む余裕がなく、回収試験は実施されない見通しだ。次に回収試験が実施されるのは、今年4月に予定されているドラゴン補給船運用6号機の打ち上げの際となる予定なので、今しばらく待たねばならない。なお、同社は1月27日に、「ファルコン・ヘヴィ」ロケットの打ち上げを描いたCGアニメを公開した。ファルコン・ヘヴィは、ファルコン9の第1段を3基束ねて、より重い人工衛星を打ち上げられるようにしたもので、現時点で今年中に初の打ち上げが行われる予定だ。ファルコン・ヘヴィも機体の再使用することが考えられており(再使用しなければもっと重いものを打ち上げることができる)、このアニメでも、3基の第1段機体が打ち上げた場所にきれいに舞い戻ってくるという、にわかには信じられないような光景が描かれている。次の回収試験に向けて、期待は高まるばかりだ。参考・ ・ ・ ・ ・
2015年02月27日2015年2月11日、欧州宇宙機関(ESA)は、再使用型宇宙往還実験機「IXV」の飛行試験に成功した。IXVは「リフティング・ボディ」と呼ばれる、胴体そのものが翼のような役目を果たす形をしており、未来の欧州のロケットや宇宙機の開発にとって重要なデータを集めた。IXVの飛行時間はわずか100分ほどであったが、欧州の宇宙開発の未来にとっても、そしてリフティング・ボディという「翼なき翼」の歴史にとっても、新たな章を刻むものとなった。○翼なき翼、リフティング・ボディ人類は古来より、鳥のように空を飛ぶことを夢見てきた。オットー・リリエンタールやライト兄弟がその夢を叶え、続いてその手が宇宙へと伸ばされたとき、しかし宇宙飛行において翼は必ずしも必要ではないことを知った。けれども、宇宙空間から地上のある一点を狙って着陸することを考えたとき、翼は依然として魅力的であり続けた。スペースシャトルなどが軒並み大きな翼を持っているのはそうした理由がある。だが、打ち上げや宇宙空間を飛行する際には、翼は役に立たず、単なる重荷でしかない。また宇宙船が大気圏に再突入する際、その速度は極超音速の、とてつもないものになるが、そのとき翼は大きな抵抗となり、また高熱からその翼をどうやって防護するかは難しい問題であった。さらに胴体から大きく張り出した翼は、構造的に弱点でもあった。そこで、翼がなくとも飛行を制御することができるよう、胴体そのものが揚力を生み出すような形をした機体が考えられた。それが「リフティング・ボディ」である。フティング・ボディは1950年代の米国で本格的に研究がはじまり、またソヴィエト連邦や欧州、日本でも研究が行われた。その過程でいくつかの実験機による飛行実験が行われたものの、すべて大気圏内の飛行であったり、あるいは宇宙空間には出たものの、軌道速度と比べ非常に遅い速度であったりと、純粋に「翼のないリフティング・ボディ機が宇宙を飛び、地球に帰還する」ことが実証されたのは、今回のIXVが世界で初めてのことであった。○IXVIXVが開発された背景には、ESAが2003年に立ち上げた「将来打ち上げ機準備計画」(FLPP:Future Launchers Preparatory Programme)というプログラムがある。これは将来のロケットにとって必要となる技術や要素を開発することを目的としたもので、例えば機体の信頼性の向上や製造や運用の簡略化、環境への影響の低減といった技術目標が立てられており、その中に「Reusability」、つまり再使用化も盛り込まれている。IXVという名前はIntermediate Experimental Vehicleの頭文字から取られているが、Intermediate(中間)という言葉が入っているのは、この将来の欧州のロケット開発に向けた長期的なロードマップの中の「中間的」な要素に、IXVが位置付けられているためだ。ESAやフランス国立宇宙科学センター(CNES)、ドイツ航空宇宙センター(DLR)では、2005年ごろからリフティング・ボディの実験機「PRE-X」や、再突入実験機の「AREV」、「EXPERT」の研究が行われており、IXVの開発にあたってはこれらの成果が受け継がれている。なおEXPERTは、実際にロケットに搭載して飛行試験が行われる予定だったが、打ち上げのために確保していたロシア製ロケットの都合で打ち上げが無期延期となっている。IXVはタレース・アレーニア・スペース社によって開発と製造が行われた。全長5.0m、全高1.5m、全幅2.2m、打ち上げ時の質量は1,845kgほどで、前述したように翼はなく、革靴のような姿かたちをしている。大気圏内での飛行制御には、胴体後部に装備された、足ひれのような2枚の板状の翼を使う。機体の姿勢制御はもちろん、飛行方向を左右に、距離にして400kmほど変えることもできるという。今回の飛行試験に先立ち、2012年には米国アリゾナ州のユマ実験場において、高度5,700mの高さからIXVの試験機を空中投下し、パラシュートを展開させる試験が実施された。また2013年には、地中海の上空3,000mから試験機を投下し着水させる試験も行われている。IXVは「ヴェガ」ロケットの先端部分に搭載され、現地時間2015年2月11日10時40分(日本時間2015年2月11日22時40分)、南米仏領ギアナにあるギアナ宇宙センターのヴェガ射場(SLV)から離昇した。当初、打ち上げは10時ちょうど(日本時間22時ちょうど)に予定されていたが、ロケットと地上設備との間のテレメトリーの接続が切れるという問題が発生したため、40分間延期されることになった。打ち上げ後、ロケットは順調に飛行し、17分59秒後に高度340kmの地点でIXVを分離した。IXVはそのまま慣性で上昇を続け、高度412kmまで到達した。そしてそこから下降をはじめ、やがて大気圏に再突入した。機体は高度120km付近で秒速7.5kmに達し、最大で摂氏1,700度もの高熱にさらされながら、大気を突っ切っていった。IXVのミッションは、地球周回軌道に乗ることを意図していなかったが、高度120km付近で秒速7.5kmというのは、宇宙船が地球周回軌道から離脱し、大気圏に再突入する際とほぼ同じ条件である。灼熱の環境を抜けたIXVは、大気圏内を滑るように飛行し、やがて速度がマッハ1.5にまで落ちたところで、最初のパラシュートが展開し、続いて2つ目のパラシュートも展開した。そして高度約26kmのところで主パラシュートが展開し、IXVは回収船の待つ海上へと降りていった。打ち上げから約100分後の日本時間2月12日0時19分ごろ、IXVはガラパゴス諸島のすぐ西の太平洋上に着水し、海上で待機していた回収船「Nos Aries」によって回収された。機体の状態は正常で、機体の各所には取り付けられていた、計300個を超えるセンサからのデータも予定通り得られ、ミッションは完璧な成功であったという。このあとIXVはESAの施設へと送られ、約6週間をかけて、初期分析が行われることになっている。ESAのJean-Jacques Dordain長官は「IXVは再突入と再使用の能力において、ESAのために新たな章を拓きました」と語った。(次回は2月24日に掲載予定です)参考・・・・・
2015年02月23日アメリカ航空宇宙局(NASA)はこのほど、今年に実施される第45次国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在ミッションのポスターを公開した。ポスターは、映画『スターウォーズ』をモチーフに、日本人の油井亀美也宇宙飛行士を含む6人の宇宙飛行士が「ジェダイの騎士」に扮している。第45次ISS長期滞在クルーは、第43次長期滞在からクルーを務めるスコット・ケリー宇宙飛行士とミカエル・コニエンコ宇宙飛行士、第44次長期滞在からクルーを務めるオレッグ・コノネンコ宇宙飛行士、油井宇宙飛行士、チェル・リングリン宇宙飛行士、第45次長期滞在からクルーを務めるセルゲイ・ヴォルコフ宇宙飛行士の計6名。油井宇宙飛行士らが搭乗する「ソユーズTMA-17M宇宙船」は2015年5月に、ヴォルコフ宇宙飛行士が搭乗する「ソユーズTMA-18M宇宙船」は同年10月に打ち上げられる予定。10月の打ち上げ時には歌手のサラ・ブライトマンも旅行者として参加し、短期で滞在する予定となっている。NASAは宇宙飛行に対する認知度を高めるため活動の一環として、ISS長期滞在クルーをポスターという形で紹介している。そのポスターは、映画をモチーフにしたものが多く、これまで『マトリックス』『スター・トレック』『パイレーツ・オブ・カリビアン』を模したポスターが公開されている。
2015年02月13日アメリカ航空宇宙局(NASA)は2月10日(現地時間)、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した、宇宙空間に浮かんだ笑顔のように見える銀河団の写真を公開した。輪郭、2つの目、ボタンのような鼻、口元でかたどられたものは「SDSS J1038+4849」と呼ばれる銀河団。目のように見えるオレンジの光は「SDSSCGB 8842.3」「SDSSCGB 8842.4」という遠く離れた場所にある2つの銀河で、口元は、強い重力によって光が曲がる「重力レンズ」によるものだという。顔の輪郭のような曲線は、重量レンズのリング状の像である「アインシュタイン・リング」と呼ばれるものとのことだ。この写真は2012年4月にアップロードされたもので、今回、ハッブル望遠鏡が撮影した膨大な写真から「お宝画像」を見つけ出すコンテストで見つかったもの。
2015年02月12日一般人を対象に、宇宙旅行の企画・販売をする会社が現れた現代では、海外旅行が身近なものになったように、宇宙旅行も非日常なことではなくなる日がくるかもしれません。でも宇宙での睡眠って、実はちょっと特殊なようです。宇宙旅行が現実のものに将来的には身近なものになると考えられている宇宙旅行。実際に海外にある宇宙旅行会社では、2015年以降の出発予定で、1人25万ドル(約2,500万円)の価格で募集をスタートしました。上記の旅行は、宇宙の滞在期間が4分弱と非常に短いものですが、すでに約700人が予約をしているそうです。日本国内でも宇宙旅行を企画する会社が設立されており、本当に現実のものになりつつあるようです。現在では数分の宇宙滞在ですが、きっと科学技術がさらに進歩すれば長期間滞在できるようになるでしょうね。でも、果たして宇宙ではグッスリ眠ることができるのでしょうか。宇宙では睡眠不足になる?宇宙飛行士は宇宙でどのように寝ているのでしょうか?無重力の中では上下と言う概念がなくなるので、寝ようと思えばどのような向きでも寝ることができるようです。ただ、睡眠中にふわふわと浮いて、どこかに飛んでいってしまうので、寝袋を使って動かないように壁などに縛り、固定して眠るのだそうです。不眠に悩む宇宙飛行士の割合は非常に高く、全体の6~7割とも言われています。なぜ宇宙ではこんなにも不眠に悩まされるのでしょうか?睡眠不足解消に睡眠薬も宇宙における不眠の原因は、以下の7つが考えられています。(1)就寝スペースが十分ではない、狭い(2)無重力による宇宙酔い、体内環境の変化(3)普段の環境と異なることからくる精神的緊張(4)換気ファンなどの騒音、睡眠環境(5)(宇宙飛行士は)作業が多いため睡眠不足になる(6)睡眠構造が変化する(深い睡眠が減少する)(7)その他の生活要因(スペースシャトル内での90分周期のサイクルなど)これらを解消するために宇宙飛行士は睡眠薬を利用したり、耳栓・アイマスクを活用しているそうです。なかなか静かで快適な環境でグッスリ……どはいかないようですね!Photo by NASA’s Marshall Space Flight Center
2015年01月29日●「何もかも皆懐かしい…」沖田艦長はやっぱりかっこいい人はなぜ宇宙に惹かれるのだろうか。サイエンスやテクノロジーの領域においても、映画や漫画・アニメーションといったクリエイティブな領域においても、宇宙は多くの人の想像力を駆り立てるものであり続けている。現実の宇宙も創作の宇宙も、一般の社会に生きる今の我々にとっては触れ得ぬ存在だが、実際に宇宙を経験したことのある人にとっては、それはどのようなものであるのだろうか。今回は2010年にスペースシャトル ディスカバリーで宇宙へ飛んだ宇宙飛行士・山崎直子氏にお話しを伺う機会を得た。山崎氏が最初に宇宙へ憧れを持つきっかけになったのは、子供の頃に『宇宙戦艦ヤマト』や『銀河鉄道999』といった作品をテレビで見たことだったという。憧れるところまでは多くの人が同じでも、一生のうちに実際に宇宙に行く経験ができる人はごくわずか。今の時点では、特別に訓練された人たちが宇宙で特定の任務をこなす、宇宙飛行士だけだ。宇宙を経験した人にとって、実際の宇宙とはどんなものなのか、映画やアニメーションなどのSF作品はどのように見えるのだろうか。山崎氏にお話を伺った。○大人になったらみんな宇宙に行けると思った――子供の頃は、どんな作品をご覧になっていましたか?幼稚園生の頃に『宇宙戦艦ヤマト』を見ていました。おぼろげに『アルプスの少女ハイジ』も見たいと思っていた憶えもあるのですが、3歳違いの兄の影響でヤマトを見はじめて。そうしたら、面白かったんです。子供心に、宇宙はすごいな、いつか行きたいなと。大人になったらみんな行けるんじゃないかと思っていました。他にも、子供が普通に見るような『キャンディキャンディ』や『ドラえもん』も好きでしたが、最初に見始めた『宇宙戦艦ヤマト』は強烈でした。宇宙という舞台そのものにワクワクしましたし、後で見直すといろいろといい場面もあるんですよ。沖田艦長の『何もかも皆懐かしい』というシーンも。沖田艦長は子供の頃からカッコいいと思っていましたね。」――JAXAにも『ヤマト』をはじめSF作品のお好きな方が多いそうですね。そういったSF作品から感化されて、JAXAやNASAで働いているという方はたくさんいます。日本以外の宇宙飛行士の中にも日本のアニメオタクという人が何人かいて、『銀河鉄道999』や『宇宙戦艦ヤマト』、ジブリ作品などを英語で見たそうです。宇宙飛行士は訓練を開始してから実際に宇宙に飛ぶまで、とても長い道のりです。その間に計画もどんどん変わり、実際に宇宙に行けるかどうかわからない中で、小さい時からの"好き"という単純な思いがある意味一番のモチベーションというか、エネルギーになっていたと思います。だから何年かかっても、大変なことがあっても、それが苦ではない気持ちは大きかった。エンジニアや研究開発で携わっている方も長丁場であることが多いので、そういう好奇心が支えるところは同じなのだろうと。――それらの作品を改めて思い返して、印象深いエピソードはありますか?『銀河鉄道999』ではあの当時から"機械と人間"という奥の深いテーマを扱っていて、考えさせられました。『宇宙戦艦ヤマト』では、今でこそ高エネ研(高エネルギー加速器研究機構)などでいろいろな実験が行われている"反物質"というものがあの当時から出てくるんです。『さらば』(劇場2作目『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』1978年)はテレサという反物質世界の女性が登場して、最後は『ヤマト』と一緒になることで自爆し、なんとか地球を救うという話でした。それが中学高校の物理でアインシュタインの[E=mc²]という公式が出てきて、実際の公理で表されるのだということにびっくりしたんです。ある意味美しいというか……。それで物理が好きになりました。でも、それが一歩間違えれば原子爆弾にもなるという科学の両面性を知ったのも作品の影響です。『ヤマト』の中でも古代君が敵を倒した後に「なぜ戦わねばならないのだろう」というシーンがあり、そうした勧善懲悪ではない奥深さも描かれていました。現在は完全新作劇場映画『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』もあり、こちらも観に行きたいと思っています。●そうして行った宇宙は案外"普通"に生活できる場所○現実が想像を追いかける――実際に宇宙に行かれた人の目から見ると、SF作品とはどんな存在ですか?私から見るとSF作品は本当にすごいと思います。私たちの世界の何歩も先を行っていて、その後を現実世界が追いかけているという感じです。それこそ、ジュール・ヴェルヌの小説(『月世界旅行』1865年)から始まって、アーサー・クラークが作品に描いた静止衛星が今は実際にたくさん使われていたり。最近では宇宙エレベーターも、まだSF的な部分はありますが、いろいろな実験や研究を重ねて材料の開発も進められています。宇宙だけではなくテクノロジー全般について、SFやアニメの想像力はすごいと思います。私たちは未来を想像して技術開発や発明をしていきますが、どうしても今あるものに頼って、そこから一歩二歩先を考えるのですが、それをSF作家さんやアニメを作る人は、何百年、何千年先をスポーンと見てしまうのでしょうね。こうなったらいいなと将来をワクワクしながら考えることは同じだと思いますが、そのスケール感はすごいものだと思います。――そういう想像力が、何かをやりはじめる動機になるのかもしれませんね。最初から難しそうだと思ったり現実的な壁を見てしまうと、モチベーションが下がったり、じゃあいいやと諦めてしまうところもあると思います。私も最初から宇宙飛行士の訓練に11年かかると言われていたら、もしかしたら(宇宙飛行士を目指すかどうか)考えていたかもしれません。でも、何か楽しそう、やりたいという思いから始まると、それが苦でないから、何年かかろうとあっという間のように感じます。やっぱり、最初のモチベーション、ワクワク感は大きいですね。――これからのSF作品には、どんなことを描いて欲しいと思いますか?学生時代に見た『エヴァンゲリオン』や『攻殻機動隊』など、必ずしも宇宙ではなくても、人とロボットの関係や、人がどんどん改造されてコンピュータの世界との境界がどうなっていくのか、それは進化と呼べるのか、そもそも生命とは何かなど、いろいろなことを考えさせられます。描いて欲しいことがあるとするなら、これからは宇宙だけ、ロボットだけという分野ごとではなく、いろいろなことが同時並行で進んでいくので、それらが融合していくとどうなるのだろうということには興味がありますね。人が宇宙へどんどん進出して、再生医療が進んで病気が治り、機能を補うだけでなく強化された身体が造られ、コンピュータやロボットやITの技術も進んで……と、想像力が掻き立てられます。○宇宙は"普通"に生活できる場所――現実の宇宙は、SFとはどのように違うものなのでしょうか?小さい頃に宇宙へ行くというと、それこそイスカンダルのような遠い所へ行くことを考えていましたが、今人間が行き来しているのは地上約400kmにある国際宇宙ステーションで、まだまだ地上にへばりついているような状態です。そこに行き来するにも大変という、現実の厳しさがあります。でも、そうして行った宇宙は案外"普通"に生活できる場所でした。長い間訓練をして行くので特別なところだというイメージがありましたが、宇宙食でご飯を食べて、お風呂には入れないけれどタオルで身体を拭いて、歯磨きをして、夜は寝て、日中は起きて仕事をして……と。人は宇宙でも、生活をすればそこが日常生活になるんですよね。もちろん、壁一枚隔てれば真空の宇宙という危機感は、地上の安心感とは比べものになりませんけど最長滞在記録を持っているのはロシアで(※ワレリー・ポリャコフ宇宙飛行士。1994年1月8日から1995年3月22日まで、427日間滞在)、そうやって人が宇宙に生活するようになると、適応して進化していくのではないかという提唱もあるんです。本当に宇宙にいると、そんな気がしますね。●アニメやSFの世界を現実が追いかけている私はISSとスペースシャトルで滞在が15日間と比較的短かったんですけど、その間でもすぐに上下感覚が切り替わるんです。宇宙船の中では天井に明かりがあり、床に少し濃い色があって、"上下"は区別されているんですけど、それに関係なく、自分が宙ぶらりんになっていれば天井が自分にとっての"床"と思えて、自分はちゃんと立っているという感覚になります。だから、他の人にただ「上にあるものを取って」と言っても通じなくて、「あなたの上」とか「宇宙船の天井」と言わなくてはならないのですが、それにもすぐ慣れます。会話をする時に相手と逆さまになって話すのも全然普通で、人の顔も真っ直ぐだけでなく逆さまになった顔で思い浮かべたり、そういった想像も変わってきます。身体的にも、重力がないと体液がどんどん上に動いていき筋肉も衰えるので脚が細くなり、反対に顔は"ムーンフェイス"と言われるようにむくんで丸くなるんです。だから、脚は細く、頭は大きく、胴体は背骨と背骨の間隔が伸びるので長くなるという、宇宙人の想像図に出てくるような体型に近づくんです。本当に人が宇宙で生活していくと、姿も変わっていくのはあながち嘘ではないだろうと感じます。――それが二世代目、三世代目と続けば、新しい能力を身につけても不思議ではないですね。その意味では、中学生の頃に読んだ萩尾望都さんの『スター・レッド』などは火星での何世代にも渡る物語で、どんどん能力が変化していく話ですし、竹宮惠子さんの『地球(テラ)へ…』も、人が宇宙へ行くと新しい集団ができて、文化が生まれ……という内容です。これらもテクノロジーとは別の心理的な面で興味を持った作品です。○世界の多様な在りかたを考えるために――将来的に、普通の人が普通に宇宙へ行けるようになるでしょうか?あと一歩、二歩くらいでしょうかね。動き出せば早いと思います。飛行機だと1903年にライト兄弟が初飛行をした後、民間の利用が一般化するのに50~60年くらいかかりました。宇宙ではガガーリンさんが世界初の有人宇宙飛行をしたのが1961年、スペースシャトルの運用開始が1981年です。今は宇宙旅行用の宇宙船の開発も行われていて、申し込んでいる人も何百人といるようですが、一般の人にとって現実的な料金になるまでにあと20年くらいでしょうか。――山崎さんもまた宇宙へ行きたいと思っていらっしゃいますか?もちろん、行きたいです。旅行も良いですが、仕事でも行きたいですね。宇宙飛行士ですから。宇宙へ行くのに年齢制限はありません。『プラネテス』という作品で、スペースデブリ(宇宙のゴミ)を掃除する会社が描かれていましたが、今は本当に宇宙を掃除する会社が作られて、現在は必要な技術を開発中です。アメリカでは小惑星で資源を発掘する企業も設立されました。国の宇宙飛行士だけでなく、民間が独自に宇宙飛行士を宇宙に派遣するという世界にあと10年20年でなってくると思います。その点でも、アニメやSFの世界を現実が追いかけているなと感じます。――見て想像するだけでなく、現実的に足を踏み入れられる場所として、宇宙が身近になってくる時代なんですね。私自身、子供の頃も今も、SF作品やアニメからすごく影響を受けて、本当に考えさせられてきたと思います。現実の中で接することができるのは今この時代、この場所の限られた世界でしかありませんが、作品の中では過去や未来や宇宙の果てなど、時間と空間の制限を超えて本当に幅広い世界に接することができるのが醍醐味だと思います。私たちが今いる世界が全てではなく、色々な世界の在り方がたくさんあるんです。これからの世の中の在り方を決めていくのは私たち一人ひとり、特に若い世代の人たちであって、自分が何をするか、それでどんな未来になるのか、SFやアニメはそういった想像力を持つ力になると思います。宇宙の話に限らずいろいろな種類の作品に接して、考えていってほしいと思います。■プロフィール宇宙飛行士・山崎直子千葉県松戸市生まれ。1999年国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士候補者に選ばれ、2001年認定。2004年ソユーズ宇宙船運航技術者、2006年スペースシャトル搭乗運用技術者の資格を取得。2010年4月、スペースシャトル・ディスカバリー号で宇宙へ。ISS組立補給ミッションSTS-131に従事した。2011年8月JAXA退職。内閣府宇宙政策委員会委員、日本宇宙少年団(YAC)アドバイザー、松戸市民会館名誉館長、立命館大学および女子美術大学客員教授などを務める。著書に『宇宙飛行士になる勉強法』(中央公論新社)、『夢をつなぐ』(角川書店)、『瑠璃色の星』(世界文化社)など。
2015年01月15日2015年の宇宙、どうでしょう?ということで、予測が秒単位でできることから、どーなるかわからんことまで「素人でも手軽に観察・参加できる」宇宙にかかわるあれこれを、サクっと紹介しちゃいます。今回は、上半期分をば。宇宙にかかわるできごとは、予測が秒単位でできるものから、いきなりやってくるものまで、いろいろでございます。という2014年の「宇宙、どうでしょう」おかげさまで、私の近くでは、かなーり好評でございました。特に「ロゼッタについて早く知っておけてよかった」ってな声が多かったですな。もちろん、詳しくは、天文手帳、天文年鑑、星空年鑑2015を、あと、ライトな宇宙好きむけに、藤井旭の天文年鑑2015なんてのもあります。アプリだと iOS限定ですが、アストロガイド2015なんてのがございますので、ご参照くださいませ。ここでは、2014年版と同じく、まあ、ファンってわけじゃないけど、たまには空を見るかな。話題になったら、気になるかなという「素人でも手軽に観察・参加できる」宇宙にかかわるあれこれを紹介しちゃいます。○1月~2月星がいちばんよく見える時期です。明るい星が集中しているんですな。特に関東地方は、晴れ続けますねー。ただ、日本海側は、雪ですねー。雲の上ではという注釈をつけないといけません。日本は広い。晴れさえすれば、「オリオン座」。そう3つ星が並んでいる、あれがみえますね。オリオン座がわかれば、3つ並んだ星を、左にズーッと延長した先にある、明るーーい星が、シリウス。焼き焦がすものという意味がある星ですな。距離は8.7光年。本州から肉眼で見える、一番近くにある恒星でもあります。逆にオリオン座の3つ並んだ星を、右にズーッと延長すると、赤っぽいアルデバラン、そのさきに、モヤっとか、ゴチャっとか見えるのが「すばる」でございます。これくらいチェックできれば、ちょっと星に詳しい人としてはじゅうぶんです。あ、ビートたけしさんの前ではやらないように、あの人は本当によく知っていますから-。さて、宇宙探査というと、アメリカ勢の動きが目立ちます。まず1月29日、SMAP探査機が打ち上げ。ジャニーズアイドルとは関係なくて、地球の水の探査をするのでございます。2月中ごろ、DAWN(ドーン)探査機が、小惑星ケレス付近に到着します。1801年、最初に発見され小惑星帯最大の直径950km。ほぼ球形で、しかも大気があり、水蒸気を吹き出しているなんて発見もありました。DAWNは夏にかけてケレスをまわる軌道に入り、詳細な探査をはじめます。むー、楽しみですなー。また、同じく2月中ごろから、冥王星探査機ニューホライズンズも、冥王星の本格的探査にかかります。これも夏にかけて冥王星に突撃。横を通り過ぎるフライバイ探査でございます。冥王星は氷のかたまりと予想されておりますが、さてどんな姿をしているのでしょうね?探査機の運用には、直径が100mという巨大なアンテナを使って通信をするのですが、アンテナのスケジュール調整大丈夫かいなと思ってしまいます。リアルタイムでどのアンテナ使っているかなんてわかりますよー。○3~4月3月なかごろ、アメリカは「MMS」という地球の磁場の探査衛星を打ち上げます。4月4日の夜には、「皆既月食」があります。夜9時前後に皆既になる、観察のしやすい月食なので、またお知らせしますねー。双眼鏡で見るのがいいですよー。4月13日~19日は、国の科学技術週間です。毎年、つくばの学園都市などは特にお祭りみたいな感じだそうです。神奈川県相模原市のJAXAや埼玉県和光市の理化学研究所など、若手の研究者を中心に一生懸命って感じでとてもいいですよー。詳しい情報は3月末くらいにこちらで。一家に一枚XXXな科学ポスターの配布も各地の科学館などでされます。そうそう、ヨーロッパの彗星探査機、話題になったロゼッタちゃんは、チュリモフゲラシメンコ彗星によりそいながら、活発になっていく彗星のモニターをしています。彗星は太陽に接近して活発になりますと、噴水のように身体をまき散らします。どこまで見ていられるか? それも注目でございます。ロゼッタのツイッターのつぶやきも注目です。太陽への最接近は8月13日です。○5~6月このころ、夕方の空に、木星と金星、2つの明るい星がよく見えております。さらに5月5~9日くらいは、木星・金星を結んだ下に、水星が見やすくなっているのですが、ちょっとわかりにくいかもしれません。5月5~6日にみずがめ座エータ流星群がピークです。といっても条件はあまりよくないですね。明け方のみ、流れ星がふだんの倍ほど(1時間に5~6個)になります。6月には、ロシアのソユーズ宇宙船で、日本の油井宇宙飛行士が、国際宇宙ステーションに行く予定…なんですが、ロシアがちょっとグダグダになっているので、さてどうなりますか。宇宙はわりと影響受けにくいそうなんですけど、やはり政治や経済が左右するところはありますからね。後半分は、また6月ごろにお知らせいたしますねー。著者プロフィール東明六郎(しののめろくろう)科学系キュレーター。あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。
2014年12月24日宇宙誕生の秘密とその仕組みを解き明かすシリーズ番組「解明・宇宙の仕組み」のシーズン3が、7日からドキュメンタリーチャンネル「ディスカバリーチャンネル」でスタートした(毎週金曜23:00~)。28日に放送される第4話「宇宙の最初の1秒間」は、複数の専門家の意見を交えてビッグバンの謎に迫る。今のところ、現在の宇宙の起源とされている現象"ビッグバン"。何千億個もの銀河やそれを形作っている材料のすべてが凝縮した小さな1点、それがビッグバンを経て一瞬のうちに宇宙へと変貌を遂げた。宇宙の最初の1秒間は、宇宙の歴史上で最も重要な時間。なぜならば、その間に空間、時間、エネルギー、物質が一瞬のうちに生まれて動きはじめたからだ。しかし、今の時間の概念では、この宇宙創生の瞬間を語ることはできない。そこで、「10億分の1秒」のような想像を絶するほどの時間を表す単位「プランク時間」が用いられる。もともと、空間と時間は限りなく小さな1点の「純粋なエネルギー」の中にあった。そしてプランク時間が動きはじめた時に空間と時間は解放され、空間が膨張を開始。ビッグバンは「空間の中」で起こったのではなく「空間自体の爆発」と考えられている。そして、物質から星や銀河を作るために必要不可欠な「重力」が発生。強すぎず弱すぎない重力のお陰で、さまざまな物質が誕生していくことになる。宇宙の数ある謎の1つが、「どこを眺めても同じような銀河がほぼ均等に散らばっている」こと。1979年に宇宙学者のアラン・グースは、その謎を解き明かす説として「インフレーション理論」を提唱した。それは「生まれたての宇宙が想像を絶する速さで膨張した」という内容で、アラン・グースは「急激な膨張が、宇宙を構成する要素を均等にばらまき、宇宙に秩序ある配置をもたらした」と考えた。このインフレーション理論から時は流れて2014年3月。南極からの観測データが科学界を騒然とさせた。それは「宇宙誕生の直後に起こったことを伝える痕跡を捉えた」というもので、観測データはインフレーション理論にほぼ合致。同理論ではほかの宇宙を発生させた可能性もあるため、複数の宇宙が存在する「多元宇宙」やわれわれと全く同じ人々が全く同じ人生を歩んでいる「並行宇宙」など、「どんな宇宙でも存在しうる」と考えている科学者も現れた。そのほか、番組ではアインシュタインの「物質は凝縮されたエネルギー」という考えが与える影響、アメリカ・ロングアイランドにある研究所での「粒子の衝突実験」、ビッグバンの解明が大きく前進した「ヒッグス粒子」についても解説している。ビッグバンを経て、陽子と中性子が原子核を作りはじめ、38万年後に原子が誕生し、そこから数億年後に原子が集まって星が生まれ、90億年以上をかけて太陽や地球が誕生。今回の番組は、この壮大な"過去"を振り返りながら「すべての運命は、宇宙の最初の1秒間で決まっていたのです」という言葉で締めくくられている。(C)2014 Discovery Communications, LLC.
2014年11月28日宇宙には必ず終わりが訪れるという。それはいつ、どのように迎えるのか。宇宙誕生の秘密とその仕組みを解き明かすシリーズ番組「解明・宇宙の仕組み」のシーズン3が、7日からドキュメンタリーチャンネル「ディスカバリーチャンネル」でスタート(毎週金曜23:00~)。14日の番組では、「宇宙の終わり」をテーマに「明日にも人類が滅亡する可能性もある」という衝撃の仮説を、宇宙学者や天体物理学者ら複数の専門家の意見を交えて検証する。宇宙滅亡の鍵を握るのは、収縮させる「重力」と時空の「膨張力」。重力が勝れば宇宙は収縮を繰り返して超高密度の火の球になり、逆の場合は限りなく冷え込んでいく。この両者の綱引きで膨張力が勝った状態を「ビッグフリーズ」、重力が勝った状態を「ビッグクランチ」と呼び、釣り合った場合はそのままの状態が保たれる。現在はこの均衡状態にあるといわれている。太陽は天の川銀河を形作る2千億個の恒星の1つにすぎず、天の川銀河も直径900億光年以上の広がりに散らばる無数の銀河の1つにすぎない。番組は、巨大な銀河から小さな原子までもが「いずれ死を迎える」と断言している。そのはじまりは138億年前。高温で高密度の小さな一点が突然急膨張をはじめた。この「ビッグバン」からすべての物が生まれ今でも時空自体を膨張させているが、絶妙な加減の重力が働いていたことから、現在まで宇宙は均衡を保っている。40年前までは、ビッグフリーズとビッグクランチのどちらも起こらないとする説が主流だったが、1970年代にダークマターが発見されたことで状況は一変する。それは光を発することも反射することも、遮ることもない謎の物質で、宇宙をつなぎとめる役割を果たす一方、破滅の危険ももたらしている。つまり、大量の物質であるダークマターが存在していることで重力が優位になり、ビッグクランチ説が有力に。ところが、90年代になると宇宙の膨張を加速させる謎の"ダークエネルギー"の存在が判明する。正体不明のそのエネルギーは物理学史上最大の謎と言われ、真空そのものに存在する。重力に反発するエネルギー、いわゆる「反重力」の作用をもたらしていると考えられており、NASAが最先端の機器で宇宙に存在するダークエネルギーの量を調べたところ、全体のほぼ4分の3を占めていることが明らかになった。しかも、そのエネルギーは宇宙の膨張に伴って増え続けているという。球を頭上に投げた時と同じように減速していくと思われた宇宙の膨張が、加速しているという現実。この物理の法則に反した現象が、このエネルギーに関係するいわれている。宇宙を膨張させるダークエネルギーの存在が分かったことから、ビッグクランチ説は消滅。空間とダークエネルギーの関係が対等なら、宇宙は一定の速度で膨張し続け、ビッグフリーズに終わる。しかし、ダークエネルギーの増加率が上回れば、別の結末が待ち受けている。「ビッグリップ」は、「すべてが引き裂かれる」という新たな説。最後の数分で宇宙のすべての星や惑星が破壊され、その残骸が小さなかけらとなる。原子が破壊され光子が残り、最終的には時空すらも引き裂き、現実が消滅。宇宙の終わりは、ビッグリップか、それともビッグフリーズか。いずれにせよ、このダークエネルギーの性質を解明しない限りは、正確な「宇宙の最終章」を描くことはできない。現在、最も有力視されているシナリオがビッグフリーズで、気の遠くなるような時をかけて、冷え切った死を迎えるというもの。それを唯一打ち消す可能性があるといわれているのが「相転移」と呼ばれる現象だ。水の温度を下げると氷になるような物質の変化を指し、真空でもそのような現象が起こり得るとされている。真空からエネルギーが相転移によって放出されると、物理の法則が崩壊。新たな宇宙の"泡"が古い宇宙を一気に飲み込み込んでしまう。ビッグバンの瞬間から、1兆分の1秒にも満たない間に何かが相転移を引き起こし、すべてを破壊しながら急激に膨張した結果、現在の宇宙が誕生したとされている。今、われわれが目にしているものは、すべてそのエネルギーが作り出したもの。古い宇宙が持っていたエネルギーは新しい宇宙を作るために使われ、残ったものがダークエネルギーとも考えられる。相転移をもたらす"泡"は宇宙を光の速さで駆け抜け、膨張する泡が届いた途端に、惑星も星雲も銀河も破壊されてしまう。そして、古い宇宙から新しい物理の法則をもった新宇宙が誕生。それは意識しない一瞬の出来事。物理の法則が変わった瞬間に、すべてが消滅する時を迎えるということになる。この相転移がいつ起こるかは想定できないが、発生確率を予測することはできる。可能性としては、100億年か200億年に1度起こるとされていることから138億年が経過した現在の宇宙で起こっていないのは幸運ともいえる。宇宙学者のローレンス・クラウスは番組の最後でこんな言葉を残している。「ダークエネルギーの正体が分からない限り、何も定かなことは言えません。宇宙の将来をはじめ、多くのことが謎のままです。だからこそ、胸が躍るんです」。(C)2014 Discovery Communications, LLC.
2014年11月13日「宇宙戦艦ヤマト」のTVシリーズ第1作をベースに、新たなスタッフで制作した「宇宙戦艦ヤマト2199」のすべてが詰まったムック本『宇宙戦艦ヤマト2199ぴあ』が11月26日(水)に発売される。イラストギャラリーをはじめ、ヤマト第1作を現代的にリメイクしたTVシリーズ(2013年)クロニクル、10月公開の総集編となる映画「追憶の航海」解説、そして12月6日(土)公開の完全新作映画「星巡る方舟」の新設定完全紹介など、「2199」シリーズの魅力を凝縮。新作映画の総監督を務める出渕裕や、総集編のエンディング主題歌を唄う水樹奈々、中村繪里子、内田彩ら豪華声優陣のインタビューも満載で、表紙はTVシリーズのエンディングイラストを手がけた漫画家・麻宮輝亜による最新描き下ろしとなっている。現在「BOOKぴあ」では、予約購入者特典として表紙イラストのオリジナルクリアファイルがもらえるキャンペーンを実施している。■『宇宙戦艦ヤマト2199ぴあ』2014年11月26日(水)発売1350円(税込)ぴあ<コンテンツ内容>◎「宇宙戦艦ヤマト 2199 星巡る方舟」新設定全紹介◎7大スペシャルインタビュー・出渕 裕総監督・結城信輝・宮川彬良・山寺宏一・水樹奈々・中村繪里子・内田 彩◎描き下ろしイラスト◎濃縮「宇宙戦艦ヤマト 2199」クロニクル◎「2199」プラモデル完全ガイド他※麻宮騎亜描き下ろしB3ポスター付★BOOKぴあ予約購入特典★麻宮輝亜描き下ろし表紙イラストのオリジナルクリアファイルプレゼント(送料無料)■『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』12月6日(土)より公開
2014年11月13日