11月7日、天王洲銀河劇場にてミュージカル『スリル・ミー』が開幕する。2011年の初演から早くも5度目の再演となる、カルト的人気を誇る異色のミュージカルだ。舞台上の“私”と“彼”がピアノ伴奏のみで歌い綴るのは、優美で残虐な愛の物語。才知と容色に恵まれたふたりの青年がスリルを求めて犯罪へと堕ちていく様を、観客は固唾を飲んで見守り、やるせない結末に胸を打ち抜かれる。俳優の組み合わせによって、その狂気の愛がさまざまな色に変化するのも悩ましく、さらに一度、二度…と観劇を重ねるリピーターが増幅していくのである。今回もまた、尾上松也&柿澤勇人、田代万里生&伊礼彼方、松下洸平&小西遼生による3組の新ペアが誕生。気になる競演を探るべく、稽古場を訪れた。ミュージカル『スリル・ミー』チケット情報本番同様の衣装を着てスタンバイしていたのは、松下と小西のペアだ。今回は尾上と伊礼のふたりが初参加なので、松下と小西は唯一の、経験者同士の初顔合わせである。演出の栗山民也による稽古の順番も、信頼を受けての“トリ”になるそうで、この日も演出家のチェックを前に通し稽古を敢行。ピアノの朴勝哲が奏でるオープニングの調べで、いざスタートだ。重い足取りで現れた松下の集中力が、すぐさま空間を『スリル・ミー』の世界へと変えていった。ふたりが“事件”を起こすまでのスリリングな助走が、これまで以上のスピード感を持って観る者の興奮をあおる。音楽はせつなく美しいが、彼らの歌はけっして美声を届けるものではない。旋律に乗せて時に心の叫びを訴え、時に絶望をつぶやく。驚いたのは、松下と小西の掛け合いに、まるで初演からペアを続けていたかのような強固なつながりを見たことだ。小西“彼”に「お前がいないとだめなんだ」と言われて振り返る松下“私”の、一瞬の歓喜の表情がせつなく胸に刺さる。狂気の快楽を装いながら、人間らしい苛立ちをのぞかせる小西の瞳にも引き込まれる。初タッグによる新鮮な衝撃と、既視感を覚える不思議な安定感に終始魅せられた。充実の通し稽古を終えて、小西は「すでに何度も演じていて作品の細部を知っているからこそ、もっと知らない部分を探ろうとするお互いの気配を感じて面白かった。ふたり芝居だから相手が伝えてくるものを確実に受け取らないと何も進まない。受け取ろうとする心の余裕を持てていることがいいですね」と手応え十分の様子。松下は「小西くんが演じる“彼”は、ほかのどの“彼”よりも内に秘めるものが多い。この人、なぜこんなに不器用なんだろう…と惹かれます。その独特の陰を探っていくのは遣り甲斐がある」とパートナーへの信頼を語った。こうした楽しみな化学変化は、ほかの2組の間にもきっと起こっているはず。今回もやはり3組すべて見届けずにはいられないだろう。公演は11月7日(金)から24日(月・祝)まで東京・天王洲銀河劇場、11月29日(土)大阪・サンケイホールブリーゼにて。取材・文上野紀子
2014年10月28日歌舞伎俳優の尾上松也が10月23日(木)、東京・タワーレコード渋谷店で開催された「DCコミックス バットマン75周年記念 渋・原ジャックイベント」のオープニングに出席。「バットマン」シリーズの大ファンを公言する尾上さんは、爽やかな白のジャケットにバットマンのロゴTシャツを合わせたスタイルで登場すると、“バットマン愛”を熱く語り尽くした。バットマンの生誕75周年を記念し、バットマングッズを集めた期間限定ショップ、 ゲームやフォトロケが楽しめるコーナー、バットマンカフェなど、バットマンファン垂涎のイベントの数々が東京の渋谷・原宿エリアで開催中。尾上さんは、「ティム・バートン監督でマイケル・キートン主演の『バットマン』(’89)を観たときに、ものすごい世界観に圧倒された」と子どもの頃からのバットマンファン。自宅には多数のフィギュアも所有しているそうで、「バットマンの魅力は完璧じゃないところ。スーパーマンみたいな超人的な力を持ってるわけじゃなく、人間そのものなので欠点もあるけれど、正義感を貫く男のかっこよさがある」とリスペクトを表した。また、ステージに集結したバットマンのコスプレイヤー“75”名たちに、「このコスチュームはどこに売ってるんですか?」と聞くなど興味津々。「獅童さんもスパイダーマンのコスチュームを持っているので、僕もバットマンの衣装をオーダーメイドで作ってみたい!」とハロウィンへの期待を膨らませていた。そんな先輩の中村獅童さんは、交際中の元読者モデルとの再婚を先日発表したが、尾上さんも「おめでたい。獅童さんが幸せになってくれるなら、慕っている後輩としてはすごくうれしい」と祝福。そこで、交際が報じられている女優の前田敦子さんとの結婚予定について突っ込まれると、「考えられないですね」と思わず苦笑い。すると隣りにいたバットマンが尾上さんを守るように芸能レポーターの前に立ちはだかり、報道陣の笑いを誘っていた。「DCコミックス バットマン75周年記念 渋・原ジャックイベント」は、渋谷・原宿エリアにて10月23日(木)~11月3日(月・祝)までの12日間開催される。(text:cinemacafe.net)
2014年10月23日歌舞伎俳優・尾上松緑の長男・藤間大河が、「歌舞伎座六月大歌舞伎」の夜の部「蘭平物狂(らんぺいものぐるい)」で3代目尾上左近を名乗り初舞台を踏むことが決まり、4月24日、都内で会見を行った。「歌舞伎座六月大歌舞伎」チケット情報藤間は平成18年1月生まれの8歳。2009年10月歌舞伎座『音羽嶽だんまり』の稚児音若で初お目見得。これまで本名で数々の舞台を踏んできた。会見に同席した尾上菊五郎は「初お目見得から、いろいろな役をやって、その都度成長してきた。なかなかしっかりした子役です。私どもの頃に比べるとレベルが高い」と太鼓判を押した。祖父(三代目松緑)、父も名乗った左近を襲名した藤間は「尾上左近でございます。よろしくお願いいたします」と緊張気味に挨拶。父の松緑は「舞台の上でお客様から拍手をいただくことをとても喜ぶたちのようですので今のうちは舞台の上でのびのびと芝居ができることが一番だと思う。ですから、あまりうるさいことは言わないつもり。でも親の気持ちからすると、そうはならないかもしれませんが」と話し、年若い歌舞伎俳優に期待を込めた。「歌舞伎座六月大歌舞伎」は6月1日(日)から25日(水)まで。チケットの一般発売は5月12日(月)午前10時より。なお、チケットぴあではインターネット先行抽選「プレリザーブ」を実施、5月4日(日・祝)午前11時から8日(木)午前11時まで受付。
2014年05月02日城田優らが出演するミュージカル『ロミオ&ジュリエット』が9月3日、東京・東急シアターオーブで開幕した。主人公のロミオは城田、古川雄大、柿澤勇人のトリプルキャスト。ヒロインのジュリエットはフランク莉奈、清水くるみがダブルキャストで務める。ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』チケット情報作品は、シェイクスピアの不朽の名作を原作に、2001年にフランスで初演されたもの。日本では2010年に宝塚歌劇団星組が初演、宝塚での再演を重ねるとともに、2011年は城田らの出演で男女混合版としての日本オリジナル版も上演された。今回はフレッシュなキャストも多数加わった、待望の再演である。初日及び公開舞台稽古でのキャストは、城田ロミオ、フランク・ジュリエット。城田は2年前よりも格段に歌唱力、表現力が増し、ミュージカル俳優としてもひと回りもふた回りも大きくなったようだ。ジュリエットへの愛、それを失うことからの絶望をほとばしる情熱で演じるさまは圧巻で、彼のロミオを観るだけでもこの作品へ足を運ぶ価値がある。フランクも愛らしい姿はそのままに、初演時より歌声が伸びやかになり、ジュリエットの細やかな感情をうまく客席へ伝えた。ほかのキャストも熱演という言葉がぴったりで、中でも荒々しさの中に切なく純粋な感情を秘めたティボルトを作り上げた加藤和樹や、仲間たちの死を見届け最後に残されるベンヴォーリオを説得力ある演技で見せた尾上松也などが印象的。特に歌舞伎俳優である尾上の豊かな歌唱力に驚かされた。初日前日に行われた会見では、城田は「2年前の初演が非常に高い評価をいただいた。その再演ということで高い壁やプレッシャーとの戦いだったのですが、前回の感動を越えられるものを作っていこうと頑張ってきました。観に来てくださるすべてのお客さまのために、一回一回、愛に生きて愛に死んでいきたい」と力強く意気込みを語った。また、自分が演じるロミオについては「冒頭は夢見がちのところがあるのですが、後半、ジュリエットと引き裂かれてからの僕の作るロミオは、これでもかというくらい弱いロミオ。2幕のボロボロ感は僕が一番やばいかも(笑)。それほどまでに仲間やジュリエットという存在が大きい」とアピール。同じくロミオを演じる古川は「ロミオの透明なイメージに薄い紫を入れたような、純粋なロミオを演じたい。それがジュリエットに出会って真っ赤になる」、柿澤は「ロミオはイメージ的には王子様なのですが、実際に本を読んだらそうでもない。舞台では実際に目の前にジュリエットが現れてくれるし、まわりには仲間が常にいるので、それを情熱的に愛するだけです。あまり背伸びすることなくやりたい」と、それぞれ自身のロミオをアピールしていた。公演は10月5日(土)まで同劇場にて。10月12日(土)から27日(日)までは大阪・梅田芸術劇場 メインホールで上演される。チケットはともに発売中。東京公演では当日引換券(オリジナルグッズ付)も発売中。
2013年09月04日橋本治作、蜷川幸雄演出による“騒音歌舞伎(ロックミュージカル)”『ボクの四谷怪談』が9月17日に東京・シアターコクーンにて開幕した。橋本が36年前に勢いのままに書き上げて封印していた怪作を、蜷川が恐るべき嗅覚で発掘し、上演を実現。鶴屋南北作『東海道四谷怪談』の確かな枠組みから自由奔放に暴発した作品世界の中、佐藤隆太を始めとする豪華すぎる出演陣が鈴木慶一の音楽に乗り、小気味よい狂騒を繰り広げる。奇妙奇天烈なパワーが爽快感を呼ぶ舞台だ。開かれた定式幕の向こうにあるのは「昭和51年にして文政八年、さらに元禄十四年であり、しかも南北朝時代」という設定だ。蜷川はそのハチャメチャなカオスをオーバーチュア(序曲)できっちりと提示する。歌舞伎さながらの扮装で見得を切る登場人物たちが、一瞬にしてジーンズ姿へ変身。されど腰には刀あり。70年代ファッションが当時のロックの匂いを助長する。この舞台の主人公、民谷伊右衛門(佐藤)は主義主張の見えぬ、つかみどころのない男として登場する。前半の軽快なリズムを作るのは、伊右衛門に天真爛漫な愛をぶつけるお梅役の谷村美月と、お梅の父の伊藤喜兵衛に扮して熟練の怪演をみせる勝村政信のふたり。谷村の自己中心的純愛、可憐な小悪魔ぶりが面白い。佐藤が、周囲の雑音に巻き込まれているようでわが道をゆく伊右衛門の秘めた芯をのぞかせ、後半へ向けてじっくりと感情を吐き出していく様を巧みに表現。そんな伊右衛門の対極にいるのは「俺には生き甲斐がある。お前にあるのか!」と暑苦しく迫る与茂七(小出恵介)だ。敵討ちという“正義”に向かいながらも狡猾な匂いをふんだんに振りまく小出与茂七の、妖しい魅力がおかしさを生む。二幕に入ってお岩役の尾上松也、伊右衛門の母・お熊役の麻実れいなどが登場して支柱がさらに定まり、騒音に拍車がかかる。とくに歌舞伎への敬意を蜷川から託された松也が突出した存在感をみせ、美声で魅了する。〈三角屋敷の場〉でのお袖(栗山千明)と直助(勝地涼)のラップ競演は愉快な見どころだ。そしてクライマックス、台本8ページ分ともいわれる佐藤の独白シーンでの熱演は圧巻のひと言。一瞬、得体の知れぬ感動にとらわれそうになるが、ラストは「野暮な解釈はいらない」とばかりにキャスト全員がエネルギーを放出し切る、熱量がピークに達するエンディング。大暴走する四谷怪談は上演時間3時間半弱(休憩2度あり)。見終えてまずは呆然、その後にあっぱれな清々しさが後を引く衝撃作だ。10月14日(日)までシアターコクーンにて上演された後、10月19日(金)から22日(月)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて公演が行われる。取材・文:上野紀子
2012年09月20日鬼才・橋本治が約40年前、作家デビューする以前に書き下ろしたという幻の戯曲『ボクの四谷怪談』。偶然、戯曲を目にした蜷川幸雄が長らく上演を温めていたというその舞台が、豪華な役者陣と、音楽監督に鈴木慶一を迎え、9月17日に東京・シアターコクーンにて初日の幕を開けた。“騒音歌舞伎(ロックミュージカル)”と銘打つ通り、鶴屋南北の有名な歌舞伎『東海道四谷怪談』をベースに、ファッションや風俗を執筆当時の1970年代に置き換え、随所にロックなど多彩な音楽を散りばめた異色作。開演前には、フォトコールと記者会見が行われた。ネオンサインがきらめく舞台に大音響でロックが流れ、ヒッピー風の男や着物姿の女、テキ屋風のオヤジに通りすがりの商売女など、雑多な登場人物が次々に現れては歌うオープニング。次に場面は飛び、「御休処」と書かれた小屋の前。後ろには書き割りの松が立ち、セットは歌舞伎の舞台さながらだ。Tシャツにジーパン姿の伊右衛門(佐藤隆太)が地面に売り物を広げていると、友人の直助(勝地涼)がやってくる。セーラー服が可憐なお袖(栗山千明)を紹介されて直助は喜ぶが、リーゼント姿の直助にお袖は気のない様子。ふたりが去ると、今度はスーツ姿の与茂七(小出恵介)が現れ、「お前、生きてて面白いか?」と伊右衛門を挑発する。敵討ちの計画を得意げに語る与茂七と、「どうだっていいじゃねぇか」とぶっきらぼうに返す伊右衛門。両者の掛け合いはそのまま歌につながり、「生き甲斐」と「死に甲斐」をそれぞれに主張する歌声が交差して広がる。会見では、「伊右衛門はずっとモヤモヤを抱えているので、僕も初めはどう演じたらいいか迷ってしまって。(蜷川と何度も仕事をしている)小出くんにはだいぶ助けられました」という蜷川作品は初参加の佐藤に、隣で小出が照れくさそうにするひと幕も。「蜷川さんは稽古でOKだった演技も、初日でやっぱりダメと言い出したりするから」と暴露する小出に、いつの間にか後ろから見ていた蜷川が「うるさいよ!」と突っ込むなどチームワークは万全の様子。「舞台上でパワーを放出していきたい」(勝地)、「台本がブッ飛んでいるので、驚きつつ楽しんでもらえたら」(栗山)と語るふたりも笑顔だ。その他、尾上松也(お岩役)や三浦涼介、谷村美月ら若手実力派の熱量を、麻実れい、勝村政信らベテラン勢がしっかりと支える本作。高揚感と共に伝わるその面白さは、ぜひ劇場で体感してほしい。騒音歌舞伎(ロック・ミュージカル)『ボクの四谷怪談』は、10月14日(日)までシアターコクーン、10月19日(金)から22日(月)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。取材・文佐藤さくら
2012年09月18日ゴジゲン(現在休止中)主宰の松居大悟、数多の演出家たちの舞台に立ってきた安藤聖、映像から舞台まで幅広い役柄をこなす尾上寛之の3人が、新演劇ユニット「おかぼれ」を結成。9月26日(水)より、東京・駅前劇場にて#001『鳴らす理由』を上演する。同世代の3人がなぜ今新ユニットを結成し、演劇で勝負するのか。その思いのたけを語ってもらった。おかぼれ『鳴らす理由』チケット情報結成の経緯を尋ねると、その発起人となったのは意外にも尾上だと言う。「去年『カスケード~やがて時がくれば~』という舞台に出た時に、演出家の岩松了さんに1年間ワークショップをやっていただいたんです。そこで教えてもらったことをそのままにしてしまうのがとてももったいなくて、共演者だった聖ちゃんに、何か一緒にやれないかなと誘ったんです」。そこで安藤が白羽の矢を立てたのが松居だ。「やっぱり尾上くんとやるからには、同世代の作・演出家が欲しかったんです。松居くんの口癖が『パッション』なんですが(笑)、それってすごく大事なこと。松居くんなら、この年代でしか出せないパッションを共有し合える仲間になれると思ったんです」。松居がそう呼びかけられたのが、ちょうどゴジゲンの休止が決まったころ。「3人ともちょうど20代後半で、いろいろ鬱屈したものも抱えている。だからドロドロしてるけど、初期衝動のキラキラもあるというか。その両方が混在したものが出来るんじゃないかと思い、ふたつ返事でやるよって答えましたね」と松居は振り返る。「やるからには自分たちが今やりたいことを」と考える中、松居の口から出たのは「スタジオに入りたい」という言葉。「今までは芝居に音楽を当てるのって、僕の中では抵抗があったんです。でもそうじゃないアプローチの仕方もあるんじゃないかと。結果、すごくおもしろい作り方が出来ているなと思います」。演出家は置かず、3人のディスカッションから芝居は立ち上がっていく。そんな芝居作りを安藤は、「3人が3人とも、ちゃんとこの台本に対していろんなアイデアを自由に言い合えている。その環境がすごくいいなと思いますし、作品自体も豊かになっていると思います」と語る。また尾上も、「岩松さんに教えてもらったことを大事にしつつ、この3人でしか作れない作品になっている。改めて芝居が好きなっているし、今楽しくてしょうがないですね」と笑顔を覗かせた。最後に「ライブ感覚で楽しんで欲しい」と口をそろえた3人。彼らが見せる初期衝動とは?その行方は、もう間もなく劇場で明らかとなる。公演は9月26日(水)から30日(日)まで東京・駅前劇場にて上演。チケットは発売中。取材・文:野上瑠美子
2012年09月14日作家・橋本治が東大在学中に書いた幻の戯曲が、蜷川幸雄の演出で上演される。その名も『ボクの四谷怪談』。鶴屋南北の怪談をベースに、生きる目的を求めて右往左往する若者たちの姿を描く“騒音歌舞伎(ロックミュージカル)”だ。橋本ならではのポップな現代語で綴られたセリフに加え、鈴木慶一によるオリジナル・ロックナンバーが随所で炸裂する。物語を担うのは橋本が「七人の侍」と名づけた若者たちで、民谷伊右衛門を演じる佐藤隆太は、今回が蜷川演出初挑戦となる。騒音歌舞伎(ロック・ミュージカル)「ボクの四谷怪談」 チケット情報「蜷川さんから声をかけていただけるとは思ってもいなかった」と率直に驚きを語る佐藤。近年では映像での活躍が目覚ましいが、「自分を試される場」という舞台への思い入れは深い。「役者として今まで何を積んで来たのか、あらわになるのが舞台だと思う。その怖さを感じているからこそ逃げたくないし、出来るだけ舞台に立ちたいと願い続けています。でも、ここまで大きな山に向き合うことになるとは(笑)」。共演陣には小出恵介、勝地涼、栗山千明ら、蜷川演出を経験済みの若手も多く、「一番の後輩のつもりでアドバイスをもらいたい」と笑う。「第一線を走りながら、なお挑戦を続けられる蜷川さんのパワーを感じたい。コテンパンにやられる可能性も含めて、楽しみです」。伊右衛門は病身の妻お岩を持て余し、職も生きがいも定まらず運命に流される。しかし女にはモテる、やっかいな色男だ。映像作品での「熱く真っ直ぐな男」像から、人生に戸惑い、真摯に悩む男性像へと表現の幅を広げている佐藤にとって、さらに新境地を拓く役柄でもある。「自分が思う以上に“熱い男”というイメージを抱いている方も多くて、驚くことはありますね。そう思っていただくのは光栄な一方で、役者としてどんな役にも挑戦したい。絶好のチャンスをいただきました」。今回は「ロックミュージカル」だけに、伊右衛門が歌うナンバーもしっかりある。実は1999年、佐藤が俳優デビューを飾ったのもミュージカルの舞台(宮本亜門演出『BOYS TIME』)だったが、「僕は歌が決してうまくないんです」と告白するのがこの人らしい。「目指すところは“魂をガツンと届けられる”歌と芝居です。思えば初舞台の時は、歌も芝居もダンスもピカイチで下手なのに、よくもあれだけ堂々としていたなと(笑)。10年以上役者をやってくると、どんどん芝居することが怖くなってくるんです。何も恐れずにハチャメチャをやっていた、あの時の自分も無くさずにいたいですね」。共演は小出恵介、勝地涼、栗山千明、三浦涼介、谷村美月、尾上松也、勝村政信ほか。公演は9月17日(月・祝)から10月14日(日)まで東京・シアターコクーン、10月19日(金)から22日(月)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。チケットは東京・大阪ともに7月21日(土)より一般発売開始。なおチケットぴあではインターネット先行抽選を東京は7月11日(水)11時まで、大阪は7月10日(火)11時まで受付中。取材・文:市川安紀
2012年07月03日俳優の津川雅彦が、映画監督としてのマキノ雅彦の名で、舞台『男の花道』の演出を手がける。『男の花道』は、講談や映画、歌舞伎、舞台の題材にも幾度となく取り上げられ、友情物語の代名詞とも言える名作。7月からの上演に先立ち、6月11日、都内稽古場にて中村福助、中村梅雀ら出演者とマキノ雅彦が会見を行った。『男の花道』チケット情報物語は歌舞伎俳優と蘭学者の男の友情を軸に展開する。江戸時代、大坂で人気の女方役者・加賀屋歌右衛門(福助)は、ひそかに失明の危機を抱えていたが、蘭学者・土生玄碩(梅雀)による大手術によって、役者生命の危機を救われる。これをきっかけに、ふたりは強い友情を結ぶことになる。だがある日、玄碩に災難が降りかかり、刻限までに歌右衛門が駆けつけなければ切腹させられるという窮地に陥る。友を助けるため、歌右衛門は満員の舞台を抜け出すことを決断する。会見で梅雀が「今回はただならぬ縁」と話す。マキノは「叔父であるマキノ雅弘監督による1941年の映画版をもとにしているという縁で、今回ご指名いただいたと思っています」と挨拶。福助も「この物語は、私と梅雀さんの先祖である3代目・歌右衛門と土生玄碩の友情を描いた作品。私にとって歌右衛門という名は、大叔父でもあり師匠でもあった6代目・歌右衛門のイメージが一番強い。役者としても人間としても目標にしている名前です」と語った。この日は初めての台本の読み合わせを終えたばかり。マキノは「なんといっても福助ちゃんと梅雀ちゃんのキャラクターが素晴らしくて素敵。“平成の男の友情”を作りたいということで、脚本には新しい試みが加わっており、古さを感じない、おもしろい友情関係が成立している」と自信をのぞかせた。梅雀も「頂点を目指す人間が陥りがちな部分でお互いが追い詰められ、でもお互いの友情によって救いあうというところが感動的。普遍的なテーマを感じます。(セリフも)私たちにぴったりに書かれていて、やっていて自然にのっていける」と話していた。歌舞伎以外の舞台に初出演となる福助は「最高のスタッフと出演者に恵まれて幸せ。日ごろからかわいがっていただいているマキノ雅彦監督とご一緒できるので楽しみです。梅雀さんと本当に友情を結び合えたらと思っています。普段からの仲は……良いですよね?」と梅雀の顔をうかがって話し、会場をなごませていた。また、満員の舞台を抜け出す決断について質問されると「(実際には)やっぱり行けないですよね」とコメント。役者として歌右衛門と玄碩の友情の篤さをたたえていた。なお、今回の公演は、歌右衛門が大坂から江戸に移った東下りにちなんで、7月1日(日)からの大阪公演を皮切りに岐阜、東京の順で上演される。共演は尾上松也、風間俊介、一色采子、風花舞、真由子、森本健介、春田純一ほか。音楽は宇崎竜童が担当。取材・文:大林計隆
2012年06月12日文壇の鬼才・橋本治の幻の戯曲『騒音歌舞伎(ロックミュージカル)「ボクの四谷怪談」』を蜷川幸雄の演出により、東京・Bunkamuraシアターコクーンにて9月・10月に上演することが決定した。出演は佐藤隆太、小出恵介、勝地涼、栗山千明ら若手俳優から、麻実れい、勝村政信、瑳川哲朗らベテラン勢が顔を揃える。本作は、現代を生きる若者たち<七人の侍>の自分探しの青春群像劇で、作家・随筆家として多くの名作を輩出しながら、古典文学の現代訳や二次創作にも意欲的な橋本治が学生時代に書き下ろした幻の戯曲。それを蜷川が発掘、舞台化するもの。登場人物のねじれた青春が疾走する破天荒な物語は、橋本のダイナミックかつ繊細な手法で抽出された現代性と、『四谷怪談』の作者・鶴屋南北へのオマージュが見事に昇華されている。また多種多様な音楽が効果的に挿入されており、橋本の<四谷怪談>と<ミュージカル>への情熱がほとばしる超大作だ。音楽はロックの黄金時代といわれる1970年代に本格的な活動を開始した鈴木慶一が手掛ける。執筆されてから40年の間、活字にもされたことなく静かに眠り続けていた貴重な戯曲を、蜷川が若い俳優たちの体を通してどのように表現するのか期待したい。公演は9月17日(月・祝)から10月14日(日)まで同劇場にて上演。チケットは7月21日(土)より一般発売する。【キャスト】佐藤隆太小出恵介勝地涼栗山千明三浦涼介谷村美月尾上松也麻実れい勝村政信瑳川哲朗青山達三梅沢昌代市川夏江大石継太明星真由美峯村リエ新谷真弓清家栄一塚本幸男新川將人ほか
2012年03月12日映画『洋菓子店コアンドル』が2月11日(金・祝)に公開を迎え、都内劇場にて舞台挨拶が行われ、主演の江口洋介、蒼井優をはじめ、江口のりこ、尾上寛之、戸田恵子、深川栄洋監督が登壇した。ケーキ作りをやめた元天才パティシエと恋人を追って上京したケーキ屋の娘が都内の人気パティスリーで出会い、それぞれが再生していく姿を描いたハートフルな物語が展開する本作。舞台挨拶当日、朝からの雪にもかかわらず多くの観客が劇場に足を運んだ。劇中、苦労したシーンや思い入れのあるシーンは?という問いに江口さんは「ケーキを作るのは結構楽しくて、道具を買って家でも練習しました。そのかいあって、映画の中でも“伝説のパティシエ”に見えているな、と自画自賛してます。実際、ケーキを作るシーンがどんなふうに見えるか気になって仕方ないんです」と笑顔で語った。一方の蒼井さんは「(演じた)なつめは感情の起伏が激しいので、十村(江口さん)や、(江口のりこさんを指しながら)こっちの江口さんの家に押しかけたりするんですが、どちらの家に押しかけるのも午前中の撮影で…。朝6時に鹿児島弁で一気に話すのは難しかったです」と苦笑交じりにふり返った。江口のりこさんも撮影のためにケーキ作りの練習に励んだそうだが「映画を観たら、机をふくシーンばかりだったので…残念です」とポツリ。戸田さんは店のオーナー役とあって「自分の店ということで、かわいく、愛おしかった」と愛情たっぷりの様子。そして、なつめの恋人役を演じた尾上さんは「優ちゃんと喧嘩し、言い合いになるところは鹿児島弁だったから大変でしたが、楽しかったです」と笑顔でふり返った。これに蒼井さんは「(尾上さんが演じた)海の新しい彼女を演じたコは事務所の後輩なんですが、『やっぱり若いコがいいのかぁ』って思いました」と満面の笑みを浮かべて恨み節?これには客席から笑いがわき起こった。そして、バレンタインデー間近ということで登壇陣それぞれにバレンタインの思い出は?という質問がなされたが、6人とも全くと言っていいほど良い思い出はないようで…。代わりに、とばかりこの日は女性陣3人から男性陣にケーキのプレゼントが渡された。蒼井さんからケーキを受け取った江口さんは「嬉しいものですね」とニンマリ。最後に蒼井さんは「小さなお話、小さな世界の物語ですが、注げるだけの愛情は注いだと自負しています!」と静かに、力強く語り、温かい拍手がわき起こった。『洋菓子店コアンドル』は新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開中。■関連作品:洋菓子店コアンドル 2011年2月11日より新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開© 2010『洋菓子店コアンドル』製作委員会■関連記事:江口洋介×蒼井優インタビュー甘い幸福を生み出す職種“パティシエ”を演じてみて自分チョコは低調ぎみ?『洋菓子店コアンドル』バレンタインアンケート発表蒼井優主演!『洋菓子店コアンドル』コースター&プレスセットを5名様にプレゼント洋菓子店オーナーを演じた戸田恵子、プロのパティシエも「働きたい」と太鼓判スイーツ作りが似合う男No.1は藤木直人!向井理、岡田将生ら甘〜いマスクが上位に
2011年02月14日