創立30周年を迎えたキャラメルボックスの記念公演第2弾『カレッジ・オブ・ザ・ウィンド』が、5月9日、新神戸オリエンタル劇場で初日の幕を開けた。1992年の初演が開幕したのもこの劇場。劇団屈指の人気作の4回目、8年ぶりの上演とあって、場内は幅広い年代の観客たちの熱で溢れていた。脚本・演出の成井豊が「初期の代表作であると同時に、その後のキャラメルボックスの方向性を決めた記念碑的な作品」と言う通り、劇団が大切にする“人が人を想う気持ち”を真正面から捉えた、清々しくも深みのある快作だ。キャラメルボックス『カレッジ・オブ・ザ・ウィンド』チケット情報大学生の高梨ほしみは、家族6人でキャンプに向かう途中交通事故に遭い、祖母や両親、妹と弟を一瞬で失う。病院でほしみは、幽霊となってついてきた家族5人と明るく会話。コメディの要素も交じった丁々発止のやり取りの中に、実はバラバラだった家族の事情が見えてくる。ほしみの父・ギンペイ役の福本伸一(ラッパ屋)と、ほしみの母・ナミコ役の西牟田恵の頼もしい客演で、複雑だけどシリアスになり過ぎないラインが保たれ、ほのぼのとしたムードも。趣向を凝らした“ゴースト・ダンス”も目に楽しい。さらにほしみの叔父・鉄平が、ほしみの病院に逃げ込んでくる。新聞記者の鉄平はあるメモリーカードを手に入れたことから、事件に巻き込まれていた。彼を追う刑事たちの言動さえあやしく見えてくる二重構造で、謎は深まるばかり。この謎がほしみの家族の物語と巧く絡み合い、同時進行しながら怒濤のクライマックスへと突入してゆく。ほしみ役を演じたのは入団7年目の原田樹里。自然と家族をひとつにする屈託のない笑顔と確かな演技力で期待に応えた。ときに全身を振り絞るかのように訴える一途な想い。交通事故だけでなく彼女に降りかかる苦難は相当なものだが、可愛くも屈強なこのヒロインが放つ台詞に、観客は本当の優しさ、本当の強さを教えられる。きっと誰もが愛する家族を思い出さずにいられないのではないか。魂が浄化されるような瞬間が確かに存在し、客席からはすすり泣きが聞こえた。また菊川(多田直人)という存在ゆえに生まれる鉄平の心の闇も、男女を問わず引きつけるはずだ。鉄平を熱演した畑中智行が、肩をふるわせながら妻・あやめ(渡邊安理)への想いを打ち明けるとき、そしてふたりがある奇跡を起こすとき、夫婦という矛盾だらけな関係の先にある尊さに感動を覚える。舞台上を占める病院のセットは、蜘蛛の巣などでところどころ覆われどこかの廃墟のようだ。ここにテーマ曲である小田和正の『風のように』が流れ、白いライトが照らされると、まるで天国のようにも見える。「あの風のようにやわらかく生きる君がはじめて会った時から誰れよりも好きだった」という歌詞が、いつまでも頭から離れない。神戸公演は5月14日(木)まで。その後、5月30日(土)から6月14日(日)まで東京・サンシャイン劇場で公演。東京公演の終演後イベントの実施も決定。詳細は5月12日(火)発表予定。取材・文:小野寺亜紀
2015年05月11日今年、劇団結成30周年を迎えている演劇集団キャラメルボックスのアニバーサリー公演第2弾『カレッジ・オブ・ザ・ウィンド』がまもなく開幕する。4月末、この作品の稽古場を取材するとともに、作・演出の成井豊、メインキャストの原田樹里、畑中智行に話を聞いた。キャラメルボックス『カレッジ・オブ・ザ・ウィンド』チケット情報物語の主人公は、年に一度の家族旅行の道中で事故に遭い、自分以外の家族全員をなくしてしまった大学生・高梨ほしみ。病院に運ばれたほしみだったが、その目には亡くなったはずの家族が見えていた。彼らは幽霊になって家族旅行を続けていたのだ。さらに、ほしみの叔父・鉄平もまた、ほしみのいる病院へ逃げ込んでくる。彼は何故か刑事に追われているようで…。切なくも温かい家族の物語にスリリングな展開が交錯し、劇団を代表する名作との呼び声が高い。1992年の初演から数え、今回で4回目の上演だ。人気作ながら8年ぶりの上演となった理由を、成井は「劇団結成30年ですので、過去の代表作を再演をせねばと思ったらやっぱりこの作品しかない。さらに、今だったら過去3回と比較してもベストの『カレッジ~』を作れる役者が揃った。一番ベストのタイミングで、“満を持して”ですね」と力強く語る。ヒロイン・ほしみを演じるのは入団7年目の原田。健康的で溌剌とした笑顔が魅力の女優だが、彼女については成井が「普段の原田がほしみにぴったり」、畑中が「ほしみは演じる人を選ぶ、本当に特殊な役。人間性が求められ、求心力のある人じゃないとできない。彼女は稽古中でもそういう“居方”をしてくれている」と、共に太鼓判を押す。その原田は「ほしみという役にすごく共感と憧れを抱き、いつかやりたいと思っていました。家族との関係性もすごく自分と似ているんです。我が家もほしみと同じく6人家族で、仲は良いけどうまくいかない部分もあり、でも年に一度必ずスキー旅行に行っているんです。その時はみんなすごく仲良いんですよ」と思い入れを語り、「本当にこれにすべてを賭ける、私の身体も心もほしみちゃんにあげる! というつもりでやっています」と意気込んだ。ほしみと家族の物語の一方で、展開の読めないミステリアスなパートを担うのが鉄平を演じる畑中。この日の稽古場では飄々とした顔を見せたかと思えば、やるせない思いを迸らせ、男の切なさを全身で表現していた。「この台本は役者の手を加えやすい、自由度の高い本。逆に言えば、ただセリフをしゃべるだけでは成立しない。4度目の上演ですが、僕たちは一から改めて台本に向き合っています。自分たちも頑張りますので、絶対に楽しんでいただけると思います!」とアピール。成井も「テーマは“家族”。家族を愛しなさいとか偉そうなことを言うつもりはありませんが、例えばこのお芝居を観て、ケンカしていたお母さんに家に帰ったら謝ってみようかなとか、そんな風に思っていただければ」と話した。ベストかつ意気込み充分なキャストで名作がどう生まれ変わるのか期待したい。公演は5月9日(土)から14日(木)まで兵庫・新神戸オリエンタル劇場、5月30日(土)から6月14日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて。チケットは発売中。
2015年05月08日キャラメルボックスが劇団創立30周年記念の第3弾として、筒井康隆の小説『時をかける少女』を今夏、東京と大阪で上演する。1967年の発刊以来、幾度となくドラマ、映画、アニメへと映像化されてきた同小説だが、舞台での上演は意外にも今回が初めて。キャラメルボックス『時をかける少女』チケット情報舞台化にあたり、原作者である筒井の了承のもと、劇団の脚本・演出を務める成井豊が小説のその後の物語として新たに脚本を執筆する。17才の少女、マナツは幼馴染みの輝彦と一緒に、大学の研究室で起きた爆発事故に遭遇。その衝撃でタイムリープしてしまう。舞台版では小説の主人公・芳山和子がマナツの伯母として登場。32年前、高校生だった和子もタイムリープしていた、という設定で、過去と現在を繋ぐキーパーソンになりそうだ。他にも重要な人物がマナツを不思議な体験へと導くなど、キャラメルボックスならではの物語になる模様。出演は、マナツ役に劇団の若手・木村玲衣が扮し、元劇団員の近江谷太朗、D-BOYSの池岡亮介が客演として参加する。《脚本・演出:成井豊のコメント》キャラメルボックス創立30周年記念公演の第3弾は、『時をかける少女』。実は製作総指揮の加藤昌史から「せっかく30周年なんだから、成井さんが本当に好きなものを舞台化してください」と言われ、「だったらこれしかない」と選んだのがこの物語。僕は1983年に作られた、原田知世さん主演の映画『時をかける少女』が大好きなのです。今回は原作の小説の作者である筒井康隆さんのご了承をいただき、この物語のその後を描きます。17歳の少女が経験するひと夏の冒険。ご期待ください。公演は7月28日(火)から8月9日(日)まで東京・サンシャイン劇場、8月20日(木)から24日(月)まで大阪・サンケイホールブリーゼにて上演。チケットの一般発売は5月16日(土)午前10時より。なおチケットぴあでは、4月29日(水)午前11時よりプレイガイド最速先行〈いち早プレリザーブ〉の申込みを開始する。
2015年04月03日今年、劇団結成30周年を迎えたキャラメルボックスの、アニバーサリーイヤー第1弾となる公演が2月21日、大阪・サンケイホールブリーゼにて開幕した。演目は、人気の『クロノス・ジョウンターの伝説』シリーズで、10年ぶりの再演となる『クロノス』と、新作『パスファインダー』を2本立てで上演。異なる雰囲気の2作ながら、どちらも熱量の高いステージが展開されている。キャラメルボックスクロノス・ジョウンターの伝説 チケット情報SF作家・梶尾真治の短編小説を原作にした『クロノス』は、2005年に上演された作品。物質を過去へ飛ばせる機械、クロノス・ジョウンターをめぐるタイムトラベルものだ。主人公は、機械の開発に携わる吹原(すいはら)和彦。ある日、想いを寄せる蕗来美子(ふき・くみこ)が勤める花屋に、タンクローリーが衝突。吹原は彼女を救うべく、クロノスに乗り、事故が起きる直前へと自分自身を跳ばした…。ひとりの男が、大切な人を守るために奔走する純粋なラブストーリーは、キャラメルボックスの真骨頂だ。“不完全なタイムマシン”に乗り、何度も失敗し、体力を消耗しながら愛する人を助けようとする吹原。その吹原に扮する畑中智行の全身全霊の熱演が、観る者をグイグイと惹き込み、心を揺さぶる。一方の『パスファインダー』は、脚本・演出家の成井豊が書き下ろした新作。39歳の研究員・笠岡光春が、23年前に亡くなった兄の秋路(しゅうじ)に会うため、タイムスリップする物語。キャラメルボックスが得意とする“家族”の絆を軸に、そこで出会った少女リンとの不思議な縁が描かれている。39歳になっても「世界を変えるような発見」もできず、焦燥感に駆られる光春。しかし彼が過去に戻ることで、いろんな人の人生や心境に影響を与え、自分自身も変わっていく。岡田達也がその光春の姿を丁寧に表現している。また、客演に迎えた陳内将が、周囲から理解されずとも、やりたいことに突き進む秋路を好演。ナチュラルにキャラメルボックスの世界観に溶け込んでいる。両作とも、テンポ感の良さが心地良い。主人公はほぼ出ずっぱりで、ライティングの切替えを駆使しながらシーンを展開。緊迫感の中にも随所に笑いを交え、緩急つけた演出で楽しませてくれる。西川浩幸はクロノスに人生のすべてをかける研究者・野方役として、どちらの作品にも出演。同じ役ながら、『クロノス』ではピリッと舞台を締め、『パスファインダー』ではコミカルさを交えて柔軟に演じ分け、ベテランの貫録を見せる。また、『パスファインダー』では、秋路のセリフに劇団の想いを重ね、30周年を迎えたキャラメルボックスの演劇への熱を改めて観客に提示。演劇の力を信じるキャラメルボックスのブレない姿勢に、今後も期待したい。大阪公演は25日(水)まで。東京公演は3月6日(金)から22日(日)までサンシャイン劇場にて上演。チケット発売中。一部のぴあ店舗ではハーフプライスチケットの取り扱いもあり(詳細は公式HPに掲載)。取材・文:黒石悦子
2015年02月23日キャラメルボックスの新作公演『太陽の棘 彼はなぜ彼女を残して旅立ったのだろう』が12月10日、東京・サンシャイン劇場にて開幕した。今作は脚本家・ほさかよう(演劇プロデュースユニット「空想組曲」主宰)に脚本を依頼し、劇団の成井豊が演出する新しい取り組みだ。キャラメルボックスと言えば「人が人を想う気持ち」をスローガンに掲げ、幾多の困難の末にその想いを成就させる物語を得意としている。だがこの舞台では「死別を契機に、残された人達が故人の本心を探る」という、劇団史上類を見ない物語に挑んだ。大切な存在に先立たれた人々のやりきれぬ心情を丁寧に描き、新たな刺激と可能性を呈示した意欲作に仕上がった。キャラメルボックス『太陽の棘彼はなぜ彼女を残して旅立ったのだろう』チケット情報物語は、事故で恋人を失った女性と兄を亡くした弟と従姉妹が、兄が残した手紙を手掛かりに東北へ旅に出るところから始まる。今作で劇団公演に初主演する鍛治本大樹は、弟・永沢亮二を演じる。心根の優しい青年を全身で体現化し、見事大役を果たしていた。最愛の恋人を失った星宮明音役を務めるのは岡内美喜子。残された側の悲しみを背負い複雑に揺れ動く心状は、岡内の確かな演技力により一層の真実味を増していた。そして、物語のキーパーソンである兄の永沢恭一を演じるのは多田直人。宮沢賢治を敬愛し、聡明さと正義感を持つ恭一の姿に多田自身の存在が重なった。“自己犠牲の精神”ゆえに命を落とした恭一の心の奥を探る旅は、賢治の未発表童話『ペンネンノルデの伝記』になぞられたストーリーに彩られながら、ドラマの後半で徐々に明らかになっていく。近しい者同士であっても、感情のすれ違いやどうにもならない過去のエピソードなど、人間の清濁に迫ろうとするほさか脚本の特色が随所に見られる。また、白を基調としたセットが組まれ、全体的にソリッドな舞台空間に仕上がっているのは、作品が持つ哀感の影響か。背景の白壁に画像や照明を映し出す演出は、他のキャラメルボックス作品では見かけず新鮮な印象を残す。ほさかの脚本と、演劇への熱情を包み隠さず表現するキャラメルボックスの化学反応が新たな世界を広げたと言える。来年、創立30年を迎えるキャラメルボックス。新しい刺激を内包した今回のコラボレーションは、劇団の更なる挑戦を予感させた。公演は24日(水)まで。なお、同劇場では『ブリザード・ミュージック』を25日(木)まで同時上演中。チケットは公演前日までチケットぴあにて発売。取材・文:園田喬し
2014年12月12日キャラメルボックス 2014 クリスマスツアー『ブリザード・ミュージック』が、11月22日、新神戸オリエンタル劇場で開幕した。1991年の初演以来4度目の再演となる人気作。心温まるファンタジーながら初日の舞台では、来年30周年を迎える劇団の“決意”のようなものを感じた。それは“一本の芝居を作る”という物語の中に詰め込まれた演劇人の率直な思い、そして4年ぶりに主役を演じる西川浩幸の役者魂ゆえだろう。キャラメルボックス『ブリザード・ミュージック』チケット情報西川は初演よりずっと梅原清吉役を演じている。13年ぶりの再演となった今回も自らの強い意志でこの役に挑んだ。「若人よ来たれ!君もクリスマスに芝居をやらないか!」という新聞広告を出した90歳の清吉。彼はなぜ、宮沢賢治の未発表童話『ペンネンノルデの伝記』を基にした脚本を書き、自ら主演すると言い出したのか。70年前の彼の秘めた想いが次第に明らかになっていく。物語は清吉の芝居を、クリスマスまでの1週間で作り上げるのを軸に展開していくが、いくつもの波乱が巻き起こる。まず大金をはたいた清吉に対して家族たちが大反対。特に息巻く息子の清一郎を演じた阿部丈二の、顔芸とも言える演技に笑いが起きる。3人の孫や清一郎の妻・妙子(坂口理恵)らは、いつの間にかサポート側に転じているのが微笑ましい。家族に向けた成井豊(脚本・演出)の温かい目線、さらに宮沢賢治へのリスペクトが作品を普遍的なものにしている。一方泥臭いぐらい熱いのが役者チーム。頼もしい筋トレを披露する釜石(三浦剛)、元タカラヅカ男役だと言う水沢(前田綾)、ジャッキー・チェーンに憧れる久慈(畑中智行)ら演技スタイルも様々な5人が、エチュードで芝居を作り上げるから支離滅裂でオカシイ。5人は宮沢賢治が生きた時代の若者を演じるうちに絆を深めていく。さらにキーパーソンとなるのが、清吉がつれてきた24歳の看護師・ミハル。彼女は清吉にとっての“ミューズ”なのだが、渡邊安理演じるミハルは現代的で明るくちょっと勝気な女性。だからこそ終盤、彼女が着物で演じ切ったもうひとりのミハルの意外な行動と台詞が心に響く。舞台は劇場という空間のみ。無造作に置かれた大道具を役者自らの手で動かし、命が吹き込まれる。物語は特に後半、ZABADAKの音楽と共に時空の壁を一気に超えるような爽快感と緊張感で加速していく。学生服を着た90歳の清吉じいさん。頑固な中にあるくもりなき純粋さ、死生観にまでたどり着くような台詞を、西川は強い目力で伝え切った。初日のカーテンコールでは、「今日のことは一生忘れないと思います」(西川)と感無量な表情。まさに劇団にとっても観客にとっても、忘れられない再演となるはずだ。神戸公演は11月27日(木)まで。その後東京・サンシャイン劇場で12月5日(金)から25日(木)まで上演。なお、東京公演では10日(水)から24日(水)まで、ほさかよう作、成井演出の新作『太陽の棘彼はなぜ彼女を残して旅立ったのだろう』を同時上演する。取材・文:小野寺亜紀
2014年11月25日キャラメルボックスが劇団創立30周年第1弾として来年2月より、人気の連作もの「クロノスシリーズ」を2本立てで上演する。キャラメルボックス 30th vol.1 クロノス・ジョウンターの伝説 チケット情報同シリーズはSF作家・梶尾真治が1994年から書き続けてきた連作短編小説『クロノス・ジョウンターの伝説』を舞台化するもの。物質を過去へ射出する機械クロノス・ジョウンターをめぐるタイムトラベルシリーズだ。キャラメルボックスでは2005年の『クロノス』を皮切りに、『あした あなた あいたい』『ミス・ダンデライオン』『きみがいた時間 ぼくのいく時間』『南十字星駅で』と、合計5つの作品を舞台化している。今回の2本立ては、10年ぶりの『クロノス』と新作『パスファインダー』。新作は同シリーズに成井豊が初めて書下ろすオリジナル作品で、成井が脚本・演出を担当して今秋上演された、Dステ15th『駆けぬける風のように』に出演した陳内将をゲストに迎える。■『クロノス』ストーリー吹原和彦(すいはらかずひこ)は研究員として、クロノス・ジョウンターの開発に携わっていた。ある日、会社の近くの交差点で、タンクローリーが横転し、角の花屋に突っ込む。花屋の中には、吹原が中学時代から思いを寄せていた、蕗来美子(ふきくみこ)がいた。事故が起きる直前に行って、彼女を助けよう!吹原はクロノス・ジョウンターに乗り込み、自分自身を過去へと跳ばした……。■『パスファインダー』ストーリー笠岡光春(かさおかみつはる)は23年前に亡くなった兄・秋路(しゅうじ)に会うため、クロノス・ジョウンターで過去へ跳ぶ。ところが、23年前に到着した瞬間、自転車で通りかかった少女と衝突。少女は頭を強く打ち、記憶を失ってしまう。それでも少女は「リン」という自分の名前だけは覚えていた。光春は秋路とともに、リンの身元を調べることにするが……。公演は2月21日(土)から25日(水)まで大阪・サンケイホールブリーゼ、3月6日(金)から22日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて。チケットの一般発売は12月20日(土)午前10時より。
2014年11月13日今年10周年を迎えたD-BOYSが、2007年から続けている舞台公演、通称“Dステ”。ついに15作目となる今回は、演劇集団キャラメルボックスの成井豊が、劇団の人気シリーズ『風を継ぐ者』の新作をDステのために書き下ろした。しかもDステを初めて見た時に「出演者ひとりひとりの、芝居に対する真摯な姿勢に激しく感動」したという成井自らが、演出も担当するという注目作。主人公の新選組隊士・立川迅助に扮するのは、NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』でヒロインの幼なじみ・泉源太役を好演して人気上昇中の和田正人だ。そのゲネプロが、10月9日、サンシャイン劇場にて行われた。慶応3年(1867年)10月。新選組は、徳川慶喜の大政奉還を実現させた坂本龍馬(岡田達也)と中岡慎太郎(山田悠介)を探していた。新選組隊士の立川迅助(和田)と小金井兵庫(加治将樹)は、沖田総司(陳内将)と共に潜伏場所へと向かうが、坂本の仲間である陸援隊士の南国塊人(三浦剛)たちに見つかり斬り合いとなる。そのさなか、喀血した沖田を守って背中を斬られた迅助だったが、坂本のとりなしで3人は屯所へと戻る。だが土方歳三(遠藤雄弥)は新選組の掟として、背中を斬られた者は切腹しなければならないと告げる。自分も切腹すると言う沖田を前に、土方は「10日以内に下手人を斬れば迅助の罪を免じる」と言うのだが…。迅助役の和田は、近年のTVドラマでの活躍を経てグンと芝居の厚みが増した印象。剣の腕はからっきしだが、生来の明るくてひたむきな性格から坂本龍馬をも惹きつける迅助像に説得力を与えた。一方の沖田役・陳内は、美しく端正なたたずまいで好演。狂言回し役を担う加治の安定感、陸援隊々長の中岡役・山田の落ち着いたセリフ回しも印象に残る。岡田や三浦らキャラメルボックスからの客演組が本作の世界観を土台から支え、要所要所で舞台を引き締めているのが頼もしい。ゲネプロの前に行われた囲み会見では、和田が「10周年を迎えてみんな気合いが入っています。これからはもっとDステをアピールしていきたい」と語ると、陳内も「新選組や陸援隊の隊士たちは、世の中が混乱するなか正義をもって戦う。自分たちも命をかけて演じ切りたい」と作品に惚れ込んでいる様子だ。新選組の勘定方・三鷹銀太夫役の堀井新太は「舞台は生ものだから、僕たちが頑張っている様子を一瞬一瞬届けたい」と興奮気味に話し、D-BOYS卒業生の遠藤が「D-BOYSのいいところはチャレンジ精神なので、これからもそこを忘れず盛り上げてほしい。後輩の活躍ぶりは尊敬しています」と言うと、横から堀井が「何をおっしゃるんですか!」と嬉しげに答えて他の3人が吹き出す一幕も。充実の表情に加えてチームワークの良さが伝わる会見となった。公演は10月19日(日)まで東京・サンシャイン劇場、10月24日(金)から26日(日)まで大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ、10月31日(金)・11月1日(土)に愛知・名鉄ホールにて。チケット発売中。取材・文佐藤さくら
2014年10月10日キャラメルボックスが劇団史上初の試み「キャラメルボックス・アラカルト」で新作『太陽の棘 彼はなぜ彼女を残して旅立ったのだろう』を12月、東京・サンシャイン劇場にて上演する。この企画は劇団外の作家が脚本を書き下ろし、キャラメルボックスの成井豊が演出を担当するというもの。第1回目となる今回は“ダークファンタジー”と評される作風で注目を集める若手脚本家・ほさかよう(演劇プロデュース・ユニット「空想組曲」主宰)と成井の初タッグが実現する。劇団員の多田直人、岡内美喜子、そして、劇団公演で初の主演を務める鍛治本大樹の3名に、今作にかける意気込みを訊いた。キャラメルボックス 公演情報キャラメルボックスで多数の出演歴を誇る岡内と多田は、「この公演はキャラメルボックスにとって、最大級の新風を運んでくる企画になると思います」(岡内)、「ほさかさんの力をお借りして劇団員の新たな一面も発掘出来ると思いますし、それプラス、劇団公演初主演の鍛治本大樹にも非常に期待しています。劇団として、幾重にも新しいトピックスがある公演です」(多田)と、大きな期待を寄せる。先輩からのエールを受けた入団7年目の鍛治本は「作品自体を面白くすることは勿論ですが、『野心を持った鍛治本はここまでやるんだ!』という姿をきちんとお見せしたいです。その姿を目撃しに、是非劇場へお越しください」と、自らを奮い立たせるように熱く胸の内を語った。成井がほさかに依頼した題材は、同時上演する『ブリザード・ミュージック』にも登場する宮沢賢治の未発表童話『ペンネンノルデの伝記』。各々が担う役柄について、「キャラメルボックスの主演像とはちょっと異なるタイプ」(鍛治本)、「自分の役が最も謎めいています」(多田)、「女性のお客様は、私に感情移入しながら物語を見守っていくであろう役なので、頑張らないといけないと思っています」(岡内)と三者三様にコメント。ファン待望の新作ドラマは、人気劇団の新たな一面を予感させる。『太陽の棘 彼はなぜ彼女を残して旅立ったのだろう』は、12月10日(水)から24日(水)までサンシャイン劇場にて上演。また、13年ぶりに再演するキャラメルボックスの人気作『ブリザード・ミュージック』が11月22日(土)から27日(木)まで兵庫・新神戸オリエンタル劇場、12月5日(金)から25日(木)まで東京・サンシャイン劇場にて同時上演される。チケットは共に一般前売り中。なお、インタビューの全文はチケットぴあサイトに掲載。取材・文:園田喬し
2014年09月26日テイラー・スウィフトが豊胸手術を受けたのではないかと話題になっている。今月9日(現地時間)に開催されたピープルズ・チョイス・アワード2013でフェイヴァリット・カントリー・アーティスト賞を受賞したテイラーは、授賞式に出席した際、いつも以上に胸の谷間を強調したセクシーなドレスを着て登場し、普段よりも胸が大きくなっている印象を与えていたことから、豊胸手術を受けていたのではないかとうわさになっているという。今回のうわさについて、マイケル・フィオリッロ医師はインタッチ誌にテイラーは豊胸手術を受けてAカップからBカップにしたのではないかと話し、「インプラントの跡がよく分かりますね」と分析している。胸を大きくして自信をつけたテイラーはその後、13日(現地時間)にゴールデン・グローブ賞の直後に行われたアフターパーティーで、親友のジェニファー・ローレンスが『世界にひとつのプレイブック』で共演したブラッドリー・クーパーに色目を使ってすり寄って行ったものの、あっけなく断られている。(text:cinemacafe.net)
2013年01月18日演劇集団キャラメルボックスの2012年を締め括るクリスマスツアー『キャロリング』が、11月18日に兵庫・新神戸オリエンタル劇場で幕を開けた。『阪急電車』や『図書館戦争』などでも知られる作家・有川浩とのコラボレーション企画の本作。キャラメルボックスでの上演を前提とし、脚本・演出の成井豊と有川が共同で考えた原案をもとに、有川が原作小説を提供するという新たな試みだ。キャラメルボックス『キャロリング』公演情報詳細舞台はクリスマス一色に染まった東京。12月25日に倒産することが決まった子供服メーカーの社員・大和俊介(阿部丈二)と折原柊子(前田綾)は、惹かれ合いながらも結婚に対する意識のすれ違いから、距離を置いてしまう。そんな中、会社が運営する学童でひとり母の帰りを待つ少年・田所航平(林貴子)に関わっていくうちに、ある事件に巻き込まれ……。心に深い傷を抱え、ときに冷ややかな感情を表す主人公の大和。そして、不仲の両親に心を痛め、感情を爆発させる航平。登場するのはどこかしらに孤独を感じさせる人たちばかりだ。“クリスマス”や“子供服”で想像される温かなイメージとは裏腹に、舞台上には常にピリピリとした空気が流れる。しかし、シリアスな場面でも笑いを挟み込むキャラメルらしさももちろん忘れない。緩急つけたストーリー展開が観客の心を揺さぶり、笑いと涙を誘うのだ。真っ直ぐな子供の心に触れた大人たちの変化や、不器用にしか生きられない人間たちの、根底に流れるそれぞれの優しさを感じ取ることができる。大和役の阿部は、一見爽やかな好青年だが、その奥にはしっかりと闇を滲ませて演じ、ゾクッとさせる瞬間がある。航平を演じる林は、ストレートな感情表現とキラキラした目で12歳の子供を好演。大人の心を動かす、胸に迫るフレーズを投げかける。ほか若手を中心とした面々に、航平の父親・祐二を演じる大内厚雄や、祐二が務める整骨院の院長・坂本冬美を演じる岡田さつき、子供服の会社社長・大森美紀子らベテラン俳優陣が落ち着いた存在感で舞台の空気を締めている。自分が抱える不幸や過去を理由にして前へ進めない人たちの背中を、そっと押してくれるこの物語。緊迫した空気が解放される瞬間は心地よく、最後は思わず笑みがこぼれる。兵庫公演は11月25日(日)まで。その後、12月3日(月)より東京・サンシャイン劇場でも公演。なお、平日公演限定で有川浩書下ろし、登場人物のその後を描く「あの人からの手紙」を終演後に朗読する特別企画も。“手紙”は3種類あり日替わりで朗読。チケットぴあでは「あの人からの手紙」3通が付く特別チケットも発売中。取材・文:黒石悦子
2012年11月19日演劇集団キャラメルボックスのクリスマスツアーが、11月18日(日)、兵庫・新神戸オリエンタル劇場でスタートする。作家・有川浩とのコラボレーションに注目が集まる新作『キャロリング』の内容を探るため、出演者の阿部丈二と前田綾を直撃した。単に小説を舞台化するわけではない。主宰の成井豊が原案を考える段階から加わっているだけでなく、事前に各キャストと有川が面談する機会も設けられた。さらには、「自分の役名を決めてくるという宿題をいただいた」(前田)というから珍しい。「それからは、皆のもとにメールで1章ずつ、書き上がった小説が送られてきたんです、5回に分けて。まさに連載の感覚で読み進めていきました」(阿部)。自分たちが名付け、それぞれの持ち味を投影した登場人物が織りなす、オリジナル・ストーリー。東京・月島を舞台に、経営難に陥った子供服メーカーと周囲の人間模様が、丁寧かつ軽妙に描かれる。阿部の演じる大和俊介と前田が演じる折原柊子は、その会社の同僚という設定だ。「心の奥に傷を抱えていて、表に出す部分と内面のバランスがとれない人」(阿部)、「温かい家族のもとで伸び伸びと育った普通の女の子」(前田)と語るとおり、両者の個性は対照的。自分にはない部分に惹かれ合う一方で、心の距離をなかなか埋められず、結婚へと踏み出せないでいるふたりが、ある事件に巻き込まれてしまう。有川作品の魅力について阿部が「僕は『シアター!』から読み始めたのですが、一作ごとに作風が異なって、その引き出しの多さに驚かされます。共通しているのは、キャラクターがしっかり描かれていること」と語る横で、前田も大きくうなずく。「そう。読むうちに、どんどん登場人物を好きになっていくんです。一人ひとりに対する作者の深い愛情を感じます」。『キャロリング』について阿部は、「恋愛、親子、夫婦、仲間、恩人など様々な関係が凝縮して描かれている。そして最後には、方向は違っても、全員が次の一歩を踏み出すんです。ファンタジーではないし、シビアな現実も書かれていますが、前向きな気持ちで劇場を出られる作品だと思います」と魅力を語った。キャラメルボックスにぴったりの季節といえば、クリスマスを思い浮かべる観客は多いだろう。「私自身、学生のときにクリスマス公演を観て感動して、入団しよう!と決めたんです」と話すのは前田だ。「皆さんにもぜひ、年に一度のイベントとして楽しく過ごしていただきたいですね。そして『キャロリング』がこの季節に観たくなる定番の作品になればうれしいです」。11月18日(日)から25日(日)まで新神戸オリエンタル劇場、12月3日(月)から25日(火)まで東京・サンシャイン劇場にて上演。チケット発売中。
2012年11月14日演劇集団キャラメルボックスが、今年11月にスタートするクリスマスツアーの演目を発表した。キャラメルボックス『キャロリング』公演情報タイトルは『キャロリング』で、小説家・有川浩とキャラメルボックスの成井豊が共同で原案を手がける。その原案を、成井の脚本によって舞台化し、有川は小説として仕上げる、というユニークな試みだ。キャラメルボックスは、東野圭吾、恩田陸、重松清ら国内の人気作家の作品から、ロバート・A・ハインライン作『夏への扉』、ダニエル・キイス作『アルジャーノンに花束を』など世界的な名作SFまで、数々の小説の舞台化に取り組み、成果を残してきた。今回は、そんな彼らにとっても新鮮なコラボレーションとなるに違いない。そして、演劇と文学、それぞれの特性を再発見できる機会になりそうだ。キャラメルボックス『キャロリング』は、11月18日(日)から25日(日)まで兵庫・新神戸オリエンタル劇場、12月3日(月)から25日(火)まで東京・サンシャイン劇場にて上演。チケットは9月9日(日)より一般発売される。また、有川による小説『キャロリング』は、『別冊文藝春秋』9月号より短期集中連載が行われる予定。
2012年08月03日若者をターゲットとするメンズカジュアルウェアからアパレル雑貨、オリジナルブランドやライセンス商品の企画・製造・販売を行うクルーズカンパニーはこのほど、「豊天商店」からタイガースコラボアイテムの新商品を発表した。老若男女の幅広いファンに愛されている豊天商店は、若者をターゲットに、同社が大切に育ててきたオリジナリティの高いブランド群だ。このほど発売されるのは、「阪神ラブー 吸汗速乾 半袖ポロシャツ」と「元祖タイガースボーダー 吸汗速乾 キッズコンボセット」。どちらも素早く汗を吸収し、さらっとした着心地が持続する「ZERO COOL」素材を使用。「半袖ポロシャツ」はホワイト / ブラック / ライトピンク / パープルの4色で、サイズはS~LLを展開、価格は1,552円。「キッズコンボセット」はオフホワイト / ブラックの2色展開で、価格は1,321円となる。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年07月24日アメリカのSF作家、ダニエル・キイスによる発表から半世紀以上を経た今も、世界中で読み継がれているベストセラー『アルジャーノンに花束を』。知的障害者チャーリイ・ゴードンが人工知能の手術を受けたことで対峙する家族や恋愛、友情などを、チャーリイの一人称による「経過報告」を用いて繊細に描いた名作だ。キャラメルボックスでは初の舞台化となる本作で、多田直人と阿部丈二がアクアとイグニスチームに分かれ、ダブルキャストでチャーリイを演じている。7月22日、多田らが出演するアクアチームの初日を東京・サンシャイン劇場で観た。キャラメルボックス『アルジャーノンに花束を』チケット情報パン屋で働く32歳のチャーリイ・ゴードン(多田直人)は、賢くなりたいと心から願いながら知的障害成人センターに通って勉強に励んでいた。そんなチャーリイを見守る教師のアリス・キニアン(渡邊安理)は、ビークマン大学の研究室が行う人工知能の手術を勧める。研究室で、先に手術を施され複雑な迷路をクリアするハツカネズミのアルジャーノンに出会い驚くチャーリイ。ついにニーマー教授(大内厚雄)らによる手術を受け、日に日に自分の知能が高まっていくことに喜ぶチャーリイだったが、それはこれまで理解できなかった家族や同僚たちの行動の意味に気づくことでもあった。演出の成井豊と真柴あずきは、チャーリイの知能の高低によって単語や助詞の使い方が変化する「経過報告」の文字を、舞台奥に映し出すことで印象的に挿入。名訳といわれる原作の日本語訳(翻訳:小尾芙佐)がもつ文学的味わいを損なうことなく再構築する。繊細なたたずまいの多田と、強い眼差しをもつ渡邊という瑞々しいコンビを取り囲むのは、ニーマー教授役の大内やチャーリイの母親ローズを演じる坂口理恵、父親マットに扮する三浦剛ら劇団のベテラン陣。清濁併せ呑みながら人間社会を生きているかれらがリアルだからこそ、概念上の善悪でしか判断できない未成熟なチャーリイの戸惑いが際立ってみえる。親子、友人、恋人、教師と教え子、それらの関係性で浮き彫りになる個人の尊厳。一筋縄ではいかない多面的な問題が、舞台というフィールドで立ち上がり具現化された。それでも物語の導入部や、チャーリイとアルジャーノンが逃避行を繰り広げるくだりなどは、未知の世界へと足を踏み出す若者の揺れる思いを伝えて爽やか。原作通りの切ない幕切れも気持ちのよい感動を残すのが、キャラメルボックスならではの魅力だろう。公演は7月21日(土)から8月12日(日)まで東京・サンシャイン劇場、8月16日(木)から24日(金)まで兵庫・新神戸オリエンタル劇場にて開催。チケットは発売中。取材・文:佐藤さくら
2012年07月23日演劇集団キャラメルボックスの新作『無伴奏ソナタ』が、5月25日、東京グローブ座で開幕した。本作は、劇団初期の作品に取り組む「アーリータイムス」シリーズの1作目。1987年に発表された同劇団の舞台『北風のうしろの国』のもとにもなり、オースン・スコット・カードの同名SF小説が原作となっている。演劇集団キャラメルボックス『無伴奏ソナタ』チケット情報物語は、政府によりすべての人間の職業が幼少期に決まってしまう時代に生まれた、クリスチャン・ハロルドセンを軸に展開する。クリスチャンは2歳にして音楽の神童と認定され、“メイカー”として生きていくことに。両親からも引き離され、音楽に関するすべての情報が遮断された、森の中の一軒家で暮らすこととなったクリスチャン。そこで、ただひたすら大好きな音楽を作り、演奏をする日々を送っていた。そして30歳になったある日、運命を大きく変えるものが彼の手に渡ってしまう。それは外界の男が持ち込んだ、バッハの『無伴奏ソナタ』が入ったレコーダーだった……。原作はわずか30ページほどの短編というが、脚本・演出の成井豊(共同演出:有坂美紀)が舞台上に表現したのは、ある音楽の天才が辿った壮大な一生の物語だ。「音合わせ」「第一章」「第二章」「第三章」「喝采」という5部構成となっており、前半では“メイカー”としての輝かしい一面が描き出される。しかし後半は音楽を奪われ、決してクリスチャンにとって幸福な時間とは言えない。それでもこの作品に光が失われないのは、どんなに音楽を禁じられても、本当の意味で彼から音楽を奪うことは出来ないということ。そして周囲の人々は、一時でも彼の音楽から幸せを得ることが出来るからだ。クリスチャンを演じた多田直人は、本作で役者として大きなステップアップを果たしたと言える。これまではどこか飄々とした役柄が似合っていた多田だが、音楽に没頭する時の眼差し、そしてそこから溢れるさまざまな感情。激しくも繊細なその演技に、大きく心揺さぶられる。またクリスチャンを監視し続ける“ウォッチャー”を演じた、文学座の石橋徹郎の起用も絶妙。不気味な存在感の中に、どこか切なさをも醸し出し、それがラストで確かな実を結ぶ結果となった。天才と言われる人のことを、市井の人々が理解することはなかなか難しい。しかしそんな市井の人々の何気ない行動が、天才への拍手喝采となり得ることもある。クリスチャンの音楽とは、人生とは何だったのか?悲劇の中に光を見た、感動的なエンディングが忘れられない。東京公演は5月30日(水)まで東京グローブ座にて開催。その後、6月2日(土)から4日(月)まで兵庫・新神戸オリエンタル劇場にて上演される。チケットは発売中。取材・文:野上瑠美子
2012年05月28日ドラマ化や映画化もされ、すっかり全国的なブームとなった東野圭吾原作の“ガリレオ”シリーズ。帝都大学理学部准教授の天才・湯川学が独自の視点で事件を解決してゆくミステリーだが、中でもこの『容疑者Xの献身』は東野が直木賞を受賞した作品でもあり、深い人間ドラマに魅了されたというファンは多い。発表当初から原作に惹かれ、舞台化に動き出したキャラメルボックスの演出家・成井豊もそのひとり。今回は、大きな反響を呼んだ2009年の初演から3年ぶりの再演となるが、続投の岡田達也、西牟田恵、川原和久らに近江谷太朗と小林正寛も加わりさらにパワーアップ。初日に先駆け、公開稽古が5月12日に行われた。キャラメルボックス『容疑者Xの献身』チケット情報物語は高校の数学教師・石神(近江谷)が、アパートの隣に住む靖子(西牟田)の部屋で不審な物音を聞くところから始まる。数日後、隅田川の河川敷で男の死体が発見され、容疑者に被害者の元妻である靖子が浮上。さっそく警視庁捜査一課の刑事の草薙(小林)と上司の間宮(川原)は捜査に動き出す。そんなある日、草薙が友人で帝都大学准教授の湯川(岡田)に捜査状況を話すと、湯川の顔色が一変。石神は湯川の大学の同期であり、“天才”と認める頭脳の持ち主だったのだ。研究生活を送っているとばかり思っていた旧友との意外な再会に、湯川は戸惑いながらも石神の部屋へと向かうが……。地味なセーター姿でうつむき加減に話す近江谷は、まさに平凡な教師のたたずまい。だが抑揚なくやや早口で話すその口調が、かつて才能を認め合った旧友との会話では微妙に色を変える。石神のよりどころとは、一体どこにあったのか。結末を知った後、改めてその表情を反芻したくなる石神だ。対する岡田は痩身に銀縁眼鏡が似合い、青年らしさが残る湯川。表情はシニカルだが石神にかける言葉は熱を帯び、同期でありながら対照的な道を進むことになったふたりの切なさが浮かび上がる。さらに本作のキーは、靖子役の西牟田だろう。美人だが、毎日を精一杯生きる靖子として西牟田が存在したからこそ、石神の想いがただの恋愛にとどまらないことが腑に落ちる。物語を引っ張る小林、意外な表情を見せる川原ら、周りのキャストも舞台を引き締めていた。公開稽古後に行われた囲み会見では、東野の大ファンという近江谷が「映画版や前回の舞台版とは石神役へのアプローチを変えてみたんです。ぜひ観に来てほしい」と意気込みを語った。「“献身”とはどういう意味なんだろうと、ずっと考えています」という岡田も、「その意味をお客さんと一緒に考えられれば」とコメントした。公演が進むに連れて、さらに広がりを見せる舞台が期待できそうだ。公演は6月3日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて上演。その後、6月7日(木)から12日(火)まで大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、6月15日(金)・16日(土)に東京・THEATRE1010にて開催される。なお、チケットぴあではサンシャイン劇場と梅田芸術劇場のみ『容疑者Xの献身』の原作本付チケットも発売中。取材・文佐藤さくら
2012年05月14日帝都大学理学部准教授の天才・湯川学が、さまざまな事件をユニークな視点で解決していく“ガリレオ”シリーズ。直木賞作家・東野圭吾の原作をもとにドラマ化・映画化された人気シリーズだが、実はキャラメルボックス主宰の成井豊が原作に惚れ込み、舞台化に向けて動き出したのはそれより前のこと。念願の舞台化となった2009年の『容疑者Xの献身』は大きな反響を呼び、東野からも「こんなふうに芝居にできるのかと驚いた」とお墨付きをもらった本作が、待望の再演を迎える。前回からの続投となる湯川役の岡田達也と、捜査一課の刑事・間宮役の川原和久に、本作の魅力を語ってもらった。キャラメルボックス『容疑者Xの献身』チケット情報インタビューは終始、クールな表情で時折ボソッと冗談を言う川原と、楽しそうに笑い転げる岡田という、なんともいい雰囲気で行われた。川原は同劇団に5度目の客演とあって、すっかりなじみのメンバーといったところ。「普段の僕はアニキ(川原)に甘える弟といった感じで、天才の湯川とは正反対のキャラ。それだけに初演の時は悩みぬきました」と岡田は話す。「膨大な量のセリフに、キャラメルでは珍しい盆(回り舞台)が使われたりしたので、(段取りなど)覚えることがたくさんあるしね」と横から言葉をかける川原。続けて「成井さんがあえて原作に忠実に舞台化したので、登場人物が発する言葉は小説のまま。役者には難しいリズムだけれど、それが原作ファンの方にも好評だった理由のひとつかもしれないですね」と初演を振り返った。物語は、湯川も認める天才数学者でありながら、家庭の事情によって高校教師の道を選んだ石神(近江谷太朗)と、その想い人の靖子(西牟田恵)が起こした事件を軸に展開。石神が抱える闇に戸惑いながらも事件を解明しようとする湯川と、“湯川ファン”を自認して捜査の進捗を教えてしまう間宮とのやりとりは、劇中でもホッとするひとコマだ。「川原さんは普通のセリフでも、ニヤッとするような色をつけて投げてくれるからうれしい」という岡田に、「緊張感のある舞台だから、箸休めになればいいと思って」と少々照れ気味の川原。一方、物語の根幹を成す石神の愛については、「冷静に考えたらいびつな愛のかたち。でも泣けてしまうのは何故なんだろうと思います」と川原が言えば、「本来なら肯定しづらい人間の汚い部分。でもこんな風に読者や観客の心を動かしてしまうのがすごい」と岡田も口を揃える。もし、愛する人が罪を犯したら?との問いには「一緒に警察に行こうね、と優しく言います(笑)」(岡田)、「まず話をよく聞いてあげて、弁護士をつけて……。自分に出来ることを精一杯やるかな」(川原)との答えが返ってきた。愛する人を持つ者すべてに宿る愛のかたち。その一端を、本作でぜひ垣間見てほしい。取材・文:佐藤さくら公演は5月12日(土)から6月3日(日)まで東京・サンシャイン劇場、6月7日(木)から12日(火)まで大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、6月15日(金)、16(土)に東京・THEATRE1010にて開催。ぴあでは原作本付チケットを発売。
2012年05月01日2007年の初演時に大好評を博した、演劇集団キャラメルボックスの人気作『トリツカレ男』(原作:いしいしんじ『トリツカレ男』<新潮文庫刊>)が、2月16日、東京・赤坂ACTシアターにて再演の幕を開けた。演劇集団キャラメルボックス『トリツカレ男』チケット情報イタリアの片田舎で、レストランのウエイターとして働くジュゼッペ。彼は何かひとつのものにハマると、その何かにとことん“トリツカレ”てしまうことから、周囲からは「トリツカレ男」と呼ばれていた。これまでに彼を魅了してきたのは、オペラに探偵、昆虫採集に外国語と、ジャンルはさまざま。三段跳びに至っては、なんと世界記録をも打ち出してしまったほどだ。そんな彼の前に、ひとりの少女・ペチカが現れる。母親の病気療養のためロシアからやって来たペチカに、一瞬にして心奪われてしまったジュゼッペ。“恋”にトリツカレたジュゼッペは、相棒であるネズミのトトと共に、ペチカを幸せにすべく奔走するのだが……。楽しくて、切なくて、そして心あたたまる、これぞ演劇集団キャラメルボックスといった作品。劇中、キャラメルボックスが得意とするダンスシーンに、陽気なイタリアを象徴するようなパフォーマンスなどが織り込まれ、観ているだけでワクワクするような、エンタテインメント性が高い作品に仕上がっている。主人公のジュゼッペを演じたのは、初演に引き続き劇団員の畑中智行。真っすぐに突き進む愛すべき青年役を、高い身体能力と豊かな感情表現により好演した。ヒロインのペチカ役には、キャラメル初参加となる星野真里。見た目のかわいらしさはもちろん、ペチカの複雑な心情を要所、要所ににじませ、観客の心をグッとつかむ愛らしいヒロイン像を作り上げた。ネズミのトト役には、こちらもキャラメル初参加となる金子貴俊。元々金子が備えているキュートなキャラクター性が、トトという役柄と見事にマッチ、その存在をしっかりとアピールして見せた。また観客の大きな笑いを誘っていたのは、インコのニーナ役の渡邊安理とギャングのボス・ロミオ役の阿部丈二。セリフの間やトーン、予測不可能な動きに加え、衣裳の派手さも目を引く。そんなふたりの演技は時に過剰とも思えるのだが、本作には不思議とピタリとハマり、逆に大きな魅力へと繋がっていた。脚本・演出の成井豊が、本作のテーマとして掲げるのは「人を好きになるということ」。その願いは、観客の心に確実に届いているはずだ。公演は同所にて2月29日(水)まで開催。その後、名古屋、大阪を回る。チケットは発売中。文:野上瑠美子
2012年02月17日いしいしんじのファンタジックな小説『トリツカレ男』をキャラメルボックスが舞台化。連日満員御礼となった2007年の初演は、劇団代表で脚本・演出を手掛けた成井豊が「ここ10年で1、2を争う、我々やる側の手ごたえとお客さんの好評が見事に一致した公演」というほどの成功を収めた。その自信作にふたりのゲストを迎え、5年ぶりに再演。初演より続投で主役ジュゼッペを演じる劇団員の畑中智行、ゲストの星野真里(ヒロインのペチカ役)、金子貴俊(トト役)に話を聞いた。キャラメルボックス『トリツカレ男』チケット情報星野演じるペチカは、外国から来た謎めいた少女。片言でしか話せないが、その胸にある悲しみを抱えている。「台本で読む限りでは本当にかわいらしくて、ジュゼッペが彼女の魅力にとりつかれてしまうのも無理はないというような女の子(笑)。でもそのイメージでやってしまうとアニメのキャラクターのようになってしまってしまうから、いろんな感情が渦巻く生身の女性として存在してほしいと先日成井さんに言われたところです」(星野)。金子演じるトトはジュゼッペの良き相棒で、なんとネズミ役!金子は成井演出の『つばき、時跳び』(2010年)の出演で成井からの信頼を得てのキャラメル出演となる。「前回、成井さんに『もっと、こうして』など指示された記憶が全くなくて。今回は、いろいろご指導いただいています。客演としての参加ですが、キャラメルの劇団員として接していただいている気がして嬉しいです。キャラメルの皆さんは普段のリアクションも舞台上みたい(笑)。もちろん稽古でも『わっ、次こう来たの?』の繰り返しで、今必死に戦ってますね!」(金子)。そのトトと行動をともにするジュゼッペ役の畑中は、初演との違いを予想する。「初演は、トトを演じた劇団の大先輩の岡田達也と僕との素の関係性が反映されて、親が子を叱るような構図でした(笑)。でも今回の金子さんとは歳が近いので、一緒に遊んで話を進めていくというような画になるのではないかと思います。初演よりだいぶやかましくなるかもしれませんね(笑)」(畑中)。東京公演は、劇団史上最大規模の赤坂ACTシアターでの上演。「ジュゼッペの三段跳びや大道芸など、大仕掛けで見せるシーンが多い作品。大劇場でやるともちろん迫力が増すはず!」(畑中)。それに加え、ラストシーンも初演以来5年越しとなる成井の思いが込められた、新しい趣向に変更予定だ。キャラメルのモットーの“人が人を想う気持ち”が巨大な空間に充満する、そんなハートウォーミングな体験をしにいこう。取材・文:武田吏都
2012年02月03日キャラメルボックス『トリツカレ男』の製作発表が1月23日、都内で行われ、主演の畑中智行、客演の星野真里、金子貴俊、脚本・演出の成井豊が登壇した。「トリツカレ男」のチケット情報いしいしんじの小説を原作にしたこの舞台は、2007年に初演し、劇団内でも高い人気を誇る。何かに凝りだすと寝食を忘れてしまう主演のジュゼッペ役は畑中が続投。彼を陰日向になって助ける友達のネズミ・トト役には金子、またジュゼッペが恋する外国から来た無口な少女・ペチカ役に星野が扮し、新たなキャスティングで挑む。レストランのウェイターであるジュゼッペ(畑中)はオペラ、探偵、昆虫採集、外国語と様々なものに熱中し、ついには三段跳びに手を出し、世界新記録を樹立してしまう。そんな彼になかなか上達しがたい恋という難題が降ってきた。外国からやってきて、ジュゼッペの国の言葉を話せない美しい少女・ペチカは、心の中に多くの哀しみを抱えていて……。稽古を始めて1週間という短期間ながら、既に現場の盛り上げ役となっているという金子はネズミ役を演じることについて訊かれ、「昔、“オカマウス”というオカマのマウスの役をやったことがあります」と答え、早速会場を笑わせる。成井との縁は、成井が脚本・演出を担当した2010年の明治座公演『つばき、時跳び』に出演し、次回作もやろうと声をかけられたことと話し、「新しい金子貴俊を見せられたら。この舞台は勝負の作品」と意気込む。一方、星野は「現場の雰囲気は、自分のことで精一杯なので、金子さんにお任せして」と謙遜しながらも、「姉が早稲田の演劇サークルに入っていまして、その直属の先輩方が作られたキャラメルボックスに出演ということで、私以上に姉が興奮しております。家族の期待にも応えられるよう、精一杯努力したい」と、劇団との意外なつながりも披露した。前回から続投となる畑中は、常に一緒にいるトト役が金子に変わったことについて訊かれ、「トトがお兄さん肌、ジュゼッペが叱られながら導かれる構図は変わらないと思いますが、初演のトトを演じた岡田達也は劇団の先輩で、プライベートの関係性がそのまま舞台に出た。今回は金子さんとは年がひとつ違いで、仲の良い同学年の兄弟のようなイメージで舞台に乗るのでは。初演よりもやかましくなるかも」と、早くも金子とのマッチングを楽しんでいるようだった。作・演出の成井はホームグラウンドのサンシャイン劇場から赤坂ACTシアターへ初進出すること、初演との演出の違いについて訊かれ、「劇場の高さ、深さ、(サンシャイン劇場より)客席2倍であることを考慮すると、今までと同じことをしたら半分のお客さんにしか伝わらないものになってしまう。演出も新たに一から考え直さなくてはいけない」と語り、稽古での試行錯誤の一端がうかがえた。東京公演は2月16日(木)から29日(水)まで、同劇場にて。その後3月10日(土)・11日(日)の愛知・名鉄ホール、3月15日(木)から20日(火・祝)までは大阪・サンケイホールブリーゼにて上演する。チケットはいずれも発売中。
2012年01月24日演劇集団キャラメルボックスの新作にして、人気シリーズ「成井豊の世界名作劇場」の第3弾が、10月13日、東京・あうるすぽっとにて初日の幕を開けた。これまでに成井は、本シリーズでシェイクスピアに材をとった『僕の大好きなペリクリーズ』、エドモン・ロスタンの『シラノ・ド・ベルジュラック』と、世界的な名戯曲に挑んできている。そんな彼が今回チョイスしたのは、なんとドイツ人作家エーリッヒ・ケストナーによる児童文学『飛ぶ教室』。「なぜ児童文学?」と思われる人も多いかもしれないが、成井にとっては前2作同様、非常に思い入れの強い作品。そんな彼の情熱は、舞台上の役者たちの身体を通し、観客に忘れ得ぬ感動を残してくれた。キャラメルボックス『飛ぶ教室』チケット情報舞台はドイツにある、ヨハン・ジギスムント高等中学校。マルチン(多田直人)を中心とする仲良し5人組は、仲間のジョーニー(井上麻美子)が書いた『飛ぶ教室』という芝居をクリスマスに上演しようとしている。その練習に励む5人だったが、ある日クラス全員分の書き取り帳が、実業学校の生徒たちに奪われる事件が起こり……。まさにキャラメルボックスと言うべき作品である。仲間との友情、恩師に対する尊敬、親子で育まれる愛情。そんな人間にとってとても基本的な、と同時にとても大切な感情を、優しく、そして素直に描き出している。キャラメルボックスが芝居を作る上で、常に掲げてきたであろうキーワードが、“永遠の青春”。本作はまさに青春そのものであり、キャラメルボックスとこれ以上ないほどの相性のよさを見せている。今回は学園ものということもあり、キャラメルボックスの中でも若手を中心にキャスティング。マルチン役の多田は、近年主役としての安定感がぐんと増し、本作でも物語に一本芯を通すような心強さをもたらしている。またストーリーテラーでもあるケストナー役の左東広之や、ジョーニー役の井上が、元気で明るい作品の世界観を体現。またマチアス役の筒井俊作は、愛嬌たっぷりにコミカルなキャラクターを演じ、客席の笑いを誘う。そして大きな愛で生徒たちを包み込むベク先生を演じたのが、青年座の大家仁志。役柄そのままの存在感を発揮し、作品に味わいという奥行きを与えていた。公演は同劇場にて10月23日(日)まで上演。その後、東京・かめありリリオホールにて10月29日(土)・10月30日(日)、福岡・北九州芸術劇場中劇場にて11月5日(土)・11月6日(日)にて公演が行われる。チケットは発売中。取材・文:野上瑠美子
2011年10月14日宮沢賢治の作品に着想した短編で構成される演劇で東北に元気を届けたい……。エンターテインメント演劇に定評のある演劇集団キャラメルボックスが行う東北応援無料ツアーに先駆けて、10月4日・5の2日間、「キャラメルボックス東北ツアー壮行会『賢治島探検記』東北バージョンin BRAVA!」が大阪・イオン化粧品 シアターBRAVA!にて開催された。2日目には1日3回公演を敢行。秋雨の降りしきる中を最終回に駆け付けた観客からは、渾身の演技を魅せた俳優たちに割れんばかりの拍手と声援のエールが贈られて、壮行会の名にふさわしい一夜となった。舞台は街の片隅にある小さな空き地。そこにやってきた大学の文学部のゼミの一行を率いる教授(坂口理恵)が「ここが賢治島だ」と主張し、自説を証明するために学生たちと宮沢賢治の童話を芝居として上演する。劇中劇では『セロ弾きのゴーシュ』をもとにした『ゴーシュ弾かれのセロ』と、『銀河鉄道の夜』をもとにした『光速銀河鉄道の夜』が、歌や楽器の生演奏を交えて、心地よい疾走感と共に展開される。本作は彼らの第二のホームタウン・神戸を襲った阪神淡路大震災の後に、坂口が「被災地の路上でも上演できる作品を」と提案して作られた。それゆえ東北バージョンはいたってシンプルな舞台美術に最小限の照明と音響で、だからこそ俳優の表現力が欠かせないわけだが、実力派揃いの面々にそんな心配は無用。また、文学的な難しさなどは全く感じられず、観終わった後に宮沢賢治の作品を読み返したいという思いにさせるのは、構成(成井豊)と演出(成井・真柴あずき・大内厚雄)のなせる業なのだろう。しかし、時間に余裕がない中で決定された壮行会ながら、多くの観客が詰めかけたというのは、キャラメルボックスがファンに恵まれている証だ。が、それは彼らがこれまで真摯にがむしゃらに演劇に取り組んできたからこそのことで、さらには実際に行動することを決めた彼らに、東北の人たちへ何かしたいと思う関西の観客も気持ちを託したかった表れなのかもしれない。カーテンコールで坂口が「元気を届けてきます」、大内が「行ってきます」と言うと、場内は観客たちの「行ってらっしゃい」の声であふれた。キャラメルボックスにとっての『賢治島探検記』が沢山の人たちの想いを携えてついに東北の地でスタートする。応援無料ツアーは10月7日(金)岩手県・花巻市交流会館からスタートし、岩手県・田野畑村、宮城県・気仙沼市、仙台市、塩竃市、南三陸町、福島県・いわき市で開催。詳細は公式サイトにて。取材・文:本田裕一郎
2011年10月06日演劇集団キャラメルボックスのアナザーフェイス公演『ナツヤスミ語辞典』が8月3日、東京・新国立劇場 小劇場にて開幕した。アナザーフェイス公演とは、他劇団とのタッグでひとつの作品を作る、劇団独自の公演形態。14年ぶりとなる試みだが、今回は結成6年目の若手注目劇団、柿喰う客とのコラボレーションだ。キャラメルボックス・アナザーフェイス「ナツヤスミ語辞典」のチケット情報中学2年生のカブト・ヤンマ・アゲハは、ある夏休みの日、ヤンマがプールの水を抜いてしまったことがバレてプール掃除をさせられている。そこへやってきた男・ウラシマ。彼がカブトのカメラで撮った写真を翌日現像してみると、そこに写っていたのは15年前の風景だった……。元気いっぱい、生意気ざかりの女子中学生たちのキラキラした日常と、彼女たちが体験する不思議な出来事。そこに“夏休み”という響きに潜む甘酸っぱい感傷をふりかけたノスタルジックな物語。キャラメルボックスでは過去3度上演されている成井豊の傑作戯曲だが、今回は柿喰う客の中屋敷法仁が演出を手がけることでどう生まれ変わるのかに注目。ラップ調のオープニングから度肝を抜かれ、リズムを重視した台詞の応酬なども若さがほとばしっていて、爽快感がある。出演は、キャラメルボックスと柿喰う客の俳優が、それぞれ約半数ずつ。なんといってもカブト・ヤンマ・アゲハ、そして彼女らと衝突するカニタニたち含め、女子中学生たちが良い。自分でプールの水を抜きながら、先生が生徒を疑うなんて!と言い放つところなど、リアルで小憎らしいかぎり。悪ガキといえば男の子の専売特許という印象があるが、元気な悪ガキ女子ここにあり、と高らかに宣言しているようで、見ていて小気味が良い。タフさが持ち味の柿喰う客の俳優はもちろん、キャラメルボックスの俳優たちも、伸び伸びと楽しそうに演じているのが客席にも伝わった。パワフルな俳優たちは時に必要以上にデフォルメされた演技で大きな笑いをも生んでいく。だが、意外なまでに、そのパワーが瑞々しさとなり、物語のピュアさを際立てた。中学2年生の夏休みという、受験や将来のこともまだ保留にしていられる自由な時間。そこに現在進行形で生きる彼女たちはその貴重さに気付いているのかいないのか。だが彼女たちも能天気なだけではない。両親の真実を知ったカブト、幼いが故に真っ正直な信念を持って大人たちとぶつかるヤンマなど、この夏の出来事は彼女たちを成長させる。そして同時に彼女たちのまっすぐな気持ちは、まわりの大人たちにも変化をもたらしていく。「夏休みは終わるからこそ素晴らしい」とカブトに言った元教師・クサナギは、「終わらないかもしれないものを、自分の手で終わらせちゃいけない」と顔をあげる。シンプルなセットの中で賑やかに動き回る俳優たちによって浮き彫りになった物語のスピリット。それは自分の人生を力強く肯定する、前向きな気持ちだ。公演は8月11日(木)まで同所にて。チケットは発売中。
2011年08月04日驚きの誕生日プレゼント6月9日、イギリスのある女の子が、驚くべき誕生日プレゼントを受け取りました。なんと、6,000ポンド(約76万円)もする豊胸手術を受けられる美容整形券。7歳になったポピーは大喜びしているということですが、このプレゼントは、イギリスで物議をかもし出しています。プレゼントの贈り主は、母親のサラ・バージさん50歳。現在、美容ビジネス事業やクラブ経営を手がける実業家で、ポルノ小説家としても活躍するイギリスのセレブです。彼女は、これまでに約7500万円投じて、美容整形を繰り返している、「リアル・バービー」として知られています。バージさんは、娘の誕生日に、約150万円をかけ、セレブパーティーを開催。娘ポピーにパソコンやスワロフスキー製アクセサリー、高級スパ利用券など高価なプレゼントを贈りました。そして極めつけは、豊胸手術券でありました。7歳の少女は、憧れであった母親のような美乳を早く手に入れたいと興奮気味ですが、法律で16歳までは整形手術は受けられないということです。シンデレラより有名セレブに憧れバージさんは今回のプレゼントは、娘の願いをかなえるためであると語ります。「ポピーは、普通の子。ただ、白雪姫やシンデレラではなく、シェリル・クロウのようになりたいと願っているの。」果たして、7歳の誕生日プレゼントに豊胸手術券はふさわしいのでしょうか。ポピーが、外見だけでなく内面もステキな女性になるのか、今後注目していきましょう。元の記事を読む
2011年07月05日