俳優・モデルの中村アン(35)が7日、自身のインスタグラムを更新。ざっくり胸元の大胆肌見せショットを披露した。中村は「デザイナーのエルサ・ペレッティが、Tiffanyのデザイナーに就任してから、今年で50周年を迎えます。今回、彼女が暮らしインスピレーションを育んだスペインのサンマルティヴェルを訪れました」と紹介し、複数枚の写真をアップ。「日本でも多くの人々から愛されている 、ボーンカフ,ビーン,オープンハートなど、その創作の地で作品に触れることができ、私自身、母から初めて譲り受けたジュエリーがビーンでした」と振り返り、胸元が“ざっくり開いた”大胆な着こなしを披露。今回の旅を「スペシャルな経験になりました」と語っている。
2024年10月07日元サッカー日本代表・中村憲剛が4日、自身のインスタグラムを更新した。中村憲剛 引退試合開催を発表「感謝の気持ちをプレーで伝えられたらと思います。」「「KAWASAKIフレンズ」現時点で出場してくださるメンバーを発表させていただきました‼︎各年代で共に戦った選手たちです。みなさん、本当にありがとうございます」と綴り、画像ををアップ。中村は、引退試合として今年の12/14に「明治安田 presents 中村憲剛 引退試合」を控えており、その出場選手が書かれた画像を公開した。続けて「追加選手はまた後日発表させていただきます‼︎と綴り、この投稿を締めくくった。 この投稿をInstagramで見る 中村憲剛(@kengo19801031)がシェアした投稿 この投稿にファンからは「FW陣がPKキッカーを巡ってケンカしまくるシーンが見える」「メンバー凄すぎ⚽」といったコメントが寄せられている。
2024年10月05日中村獅童が1日、自身のインスタグラムを投稿した。【画像】中村獅童、美人妻を顔出し公開!息子らも交えたファミリーショットに「うわぁ素敵」の声「君もラーメン好きなのね。#夏幹」と綴り、最新ショットを投稿。次男のラーメン好きに対する親しみが感じられる、微笑ましい投稿である。 この投稿をInstagramで見る Shido Nakamura(@shido_nakamura)がシェアした投稿 ファンからは「デコ可愛いすぎる」や「お子様ラーメン」とコメントが寄せられた。
2024年10月01日明治座花形歌舞伎が8年ぶりに復活する『明治座 十一月花形歌舞伎』の製作発表会見が9月27日、都内で行われ、出演する中村勘九郎、中村七之助が出席した。平成23(2011)年以来、次世代を担う花形俳優たちが大役に挑む話題性や、歌舞伎に馴染みのない人にも分かりやすいエンターテインメント性に富んだバラエティ豊かな演目を上演してきた明治座花形歌舞伎。令和2(2020)年3月には、中村勘九郎、中村七之助を中心とした座組で『明治座 三月花形歌舞伎』を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴い全公演中止に。それから4年の時を経て明治座花形歌舞伎が帰ってくる。中村勘九郎勘九郎はコロナ禍に見舞われ、上演が中止になってしまった当時を「明治座さんには久しぶりに出演させていただくこともありまして、気合を入れて、稽古に励んでいたが、心のバランスを保つのに大変だった記憶がございます」と振り返り、「お客様にご覧いただけず、芝居が不要不急と言われた悔しさをバネにして、4年半やってまいりました。それをお返しする、本当にいい機会だと思います」と意気込みを語った。コロナ禍については、七之助も「本当に職業を変えなければいけないんじゃないかと本気で考えた」と当時の苦しみを吐露し、「一歩一歩、皆様の力で進んでまいり、明治座に戻ってこられたこと、本当にうれしく思います。一生懸命に勤めます」と背筋を伸ばしていた。中村七之助『明治座 十一月花形歌舞伎』は勘九郎、七之助をはじめ、花形公演に相応しい華やかな顔ぶれが揃う。昼の部は歌舞伎の様式美溢れる『車引』、長谷川伸の傑作『一本刀土俵入』、華やかな女形舞踊『藤娘』、夜の部は義太夫狂言の名作『鎌倉三代記』、息もつかせぬ早替わりが圧巻の『お染の七役』と多彩な演目が上演される。中村屋三代の芸として、長年受け継がれる昼の部『一本刀土俵入』の茂兵衛役を勤める勘九郎は、「父からは、細かく台詞回しなどを教わった」と父・勘三郎さんの十三回忌の年に上演される所縁深い演目にしみじみ。中村屋伝来の小道具も登場し、「わらじとふんどしは祖父からのもので。六代目の手ぬぐいは、使う日にちを決めておかないと、切れてしまうので大変です。ひと月の公演で、2回くらい出せたら。本当に見えないパワーをもらえるような気がする」と先達に感謝を示した。一方、七之助は夜の部『お染の七役』にて5度目のお染を勤め、早替えにも挑むことに。「床山さん、衣装さん、お弟子さんと息を合わせるのみですね」と舞台裏を明かし、「舞台上でのことは、初役の時に本当に細かく教わりました。稽古好きの父が『また稽古に行くのか』というくらいでしたね。明治座さんは、劇場の導線がいろいろ変わると思いますし、稽古の時に一生懸命話し合いながらやっていきたい」と抱負を語った。取材・文・撮影:内田涼<公演情報>『明治座 十一月花形歌舞伎』2024年11月2日(土)~11月26日(火)※11月11日(月)・20日(水)休演開演時間:昼の部 11:00 / 夜の部 16:00会場:東京・明治座■昼の部一、菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)一幕車引長谷川伸 作村上元三 演出二、一本刀土俵入(いっぽんがたなどひょういり)二幕五場三、藤娘(ふじむすめ)長唄囃子連中【配役】『車引』松王丸:坂東彦三郎梅王丸:中村橋之助桜丸:中村鶴松藤原時平:坂東楽善『一本刀土俵入』駒形茂兵衛:中村勘九郎お蔦:中村七之助堀下根吉:中村橋之助若船頭:中村鶴松波一里儀十:喜多村緑郎船印彫師辰三郎:坂東彦三郎老船頭:市川男女蔵『藤娘』藤の精:中村米吉■夜の部一、 鎌倉三代記(かまくらさんだいき)一幕絹川村閑居の場四世鶴屋南北 作渥美清太郎 改訂於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)二、お染の七役(おそめのななやく)三幕中村七之助早替りにて相勤め申し候浄瑠璃「心中翌の噂」(しんじゅうあしたのうわさ)【配役】『鎌倉三代記』佐々木高綱:中村勘九郎時姫:中村米吉おくる:中村鶴松母長門:中村歌女之丞三浦之助義村:坂東巳之助『お染の七役』油屋娘お染・丁稚久松・許嫁お光・後家貞昌・奥女中竹川・芸者小糸・土手のお六:中村七之助鬼門の喜兵衛:喜多村緑郎油屋多三郎:坂東巳之助船頭長吉:中村橋之助丁稚長松:坂東亀三郎腰元お勝・女猿廻しお作:中村鶴松山家屋清兵衛:坂東彦三郎庵崎久作:市川男女蔵チケット情報()公式サイト
2024年09月27日歌舞伎俳優の中村勘九郎(42)が27日、都内で開かれた『明治座十一月花形歌舞伎』制作発表に出席した。『明治座十一月花形歌舞伎』で行われる演目『一本刀土俵入り』の小道具について、勘九郎は「僕も今使わせていただいているわらじは、祖父からのわらじだったり。手ぬぐいは大変です。6代目からの手ぬぐいがあるんですよ。使う日にちを決めないと、切れちゃうんで。このひと月公演の間で2回ぐらい出せたらいいなと思います。あとはふんどしも祖父からのふんどしで」と紹介。「それを身につけさせていただくと、何やら本当に見えないパワーをもらっているような気がして、役ができるなと思いますね」と代々受け継がれた小道具に対する思いを語った。中村家の明治座での公演は2016年以来、8年ぶりとなる。2020年に勘九郎、七之助を中心とした座組で「明治座三月花形歌舞伎」を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、全公演の中止を余儀なくされた。『明治座十一月花形歌舞伎』は11月2日~26日の開催。昼の部は歌舞伎の様式美が凝縮された『車引』、長谷川伸作の『一本刀土俵入』、女方舞踊の人気作『藤娘』が公演される。夜の部では、義太夫狂言の名作『鎌倉三代記』、早替りが見どころの『お染の七役』など多彩な演目が催される。イベントには中村七之助(41)のほか、松竹取締役副社長・演劇本部長の山根成之氏、明治座代表取締役社長の三田芳裕氏も登壇した。
2024年09月27日歌舞伎俳優の中村勘九郎(42)、中村七之助(41)が27日、都内で開かれた『明治座十一月花形歌舞伎』制作発表に出席した。中村家の明治座での公演は2016年以来、8年ぶりとなる。2020年に勘九郎、七之助を中心とした座組で「明治座三月花形歌舞伎」を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、全公演の中止を余儀なくされた。勘九郎は「2020年の3月、 未知のウイルス、まだまだコロナという名前もなかったような何かよくわからないものが蔓延して、芝居ができなくなる。私たちも明治座さんには久しぶりに出演させていただくこともありまして、本当に気合を入れて、稽古に励んでいたんですけれども、幕が開かないかもしれないけど、やるかもしれないっていう状況の中で稽古をする時が1番きつかったですね。お客様にお目にかけられないものを稽古しているということに対して、心のバランスを保つのに大変だった記憶がございます」と振り返った。そして「今回こうやって明治座に帰ってこられること、本当に嬉しく思います。お客様に見ていただけなかった、そして芝居が不要不急と言われた悔しさをバネにして、4年半やってまいりましたけれども、それをお返しする本当にいい機会だと思います」と意気込みを示した。七之助も当時について「本当に職業を変えなくちゃいけないんじゃないかと本気で思いました」とコロナ禍での苦しかった思いを吐露。「まあまだ解決はしてないでしょうけれども、1歩1歩、 皆様の力で進んでいき、こうして明治座に戻ってこられましたこと、本当に嬉しく思います。一生懸命努めます」と語り、来場を呼びかけた。『明治座十一月花形歌舞伎』は11月2日~26日の開催。昼の部は歌舞伎の様式美が凝縮された『車引』、長谷川伸作の『一本刀土俵入』、女方舞踊の人気作『藤娘』が公演される。夜の部では、義太夫狂言の名作『鎌倉三代記』、早替りが見どころの『お染の七役』など多彩な演目が催される。イベントには松竹取締役副社長・演劇本部長の山根成之氏、明治座代表取締役社長の三田芳裕氏も登壇した。
2024年09月27日フリーアナウンサーの中村仁美が26日、自身のインスタグラムを更新した。【画像】中村仁美、テニス界の強者たちとミックスダブルス!緊張感溢れる一戦を報告「昨夜は長男達と木下グループジャパンオープンへ」と綴り、最新投稿をアップ。会場の選手の様子が伝わるショットなど、複数枚の写真を公開した。中村は日ごろからテニスへの情熱を明かしており、「なんだか凄い瞬間に立ち会った気がする✨興奮して眠れませんでした…」と締めくくった。 この投稿をInstagramで見る 中村仁美(@nakamura_hitomi_official)がシェアした投稿 この投稿にファンからは、「めちゃめちゃ良い試合で会場も大興奮でしたね‼️」「分かります( ˇωˇ )私は、テレビ観戦*゜していました」などのコメントが寄せられている。
2024年09月26日フリーアナウンサーの中村仁美が22日、自身のインスタグラムを更新した。【画像】中村仁美、テニス界の強者たちとミックスダブルス!緊張感溢れる一戦を報告「前略、大とくさん楽しすぎました〜✨」と綴り、最新投稿をアップ。「昔からの馴染み深〜い大好きなお二人と早朝のメイク室から爆笑しておりました」と明かし、ビビる大木、岡田圭右との楽しそうな3ショットなど、3枚の写真を公開した。 この投稿をInstagramで見る 中村仁美(@nakamura_hitomi_official)がシェアした投稿 この投稿にファンからは、「笑顔満開ですね。」「わぁ中村さんスリーショットやわ〜かっこいい笑顔ポーズ」などのコメントが寄せられている。
2024年09月22日歌舞伎俳優の中村勘九郎(42)の妻で俳優の前田愛(40)が20日、自身のインスタグラムを更新。家族ショットや妹・前田亜季(39)との写真を公開した。勘九郎と前田愛は2009年に結婚し、歌舞伎俳優として活躍する長男・勘太郎くん、次男・長三郎くんがいる。投稿では「夏休みの最後に日光江戸村へ」とつづり「忍者劇場アクション凄かった~しのびがとってもかっこよかった!!みんなの大興奮がそのまま写真に」とポーズをキメる家族写真や、前田愛と妹・亜季との2ショットも掲載している。この投稿にフォロワーからは「さすが俳優一家!決めますね~」「久しぶりの前田姉妹そして父さんが1番気合い入ってて笑った」「相変わらず美人姉妹ですね」「愛さん&亜希さんのツーショット最高すぎます」などのコメントが寄せられている。
2024年09月20日女優でモデルの中村アンが19日、自身のインスタグラムを更新。【画像】中村アン「アンチャンネル」開設をインスタ報告!ファン歓喜!!「」とだけ綴り、自身が写った写真など数枚をアップした。白いバラの花束を抱きしめ、にっこり微笑む中村の表情がかわいいと話題だ。 この投稿をInstagramで見る 中村 アン(@cocoannne)がシェアした投稿 この投稿には多くのファンの関心が寄せられている。
2024年09月19日女優でモデルの中村アンが12日、自身のXを更新。【画像】中村アン 最新スタイルを公開!「ファンクラブオープンしました よろしくお願いします!」と綴り、1枚の写真をアップ。この日中村はOFFICIAL FANCLUB「アンチャンネル」をオープンさせた。ファンクラブの限定コンテンツでは、ファンクラブ限定デザインのデジタル会員証や、プライベートショットを含めたBLOGを更新するなど豪華内容となっている。今後も中村の活躍に目が離せない。ファンクラブオープンしました㊗️よろしくお願いします! pic.twitter.com/CPqyHQl7ZZ — 中村 アン (@AnneNakamura) September 12, 2024 この投稿にファンからは「アンちゃん㊗️ ファンクラブオープン㊗️おめでとうございます♂️ 嬉しすぎてテンパりましたよ〜㊗️無理せずにやってね楽しみにしてまーす❤️」「ファンクラブ開設おめでとうございます開設とっても嬉しいです 12時過ぎに早々と入会させていただきました」「アンちゃん❤️嬉しい〜入会しました❗️配信楽しみです」などのコメントが寄せられた。
2024年09月12日夏の恒例、歌舞伎座の「八月納涼歌舞伎」第二部で上演される『梅雨小袖昔八丈髪結新三』で、主人公の新三に初めてのぞむ中村勘九郎。祖父の十七世中村勘三郎、父の十八世中村勘三郎が演じ、幼い頃から憧れていたという役柄への、新たな挑戦だ。7月23日に実施された取材会では、「新三ができるような役者になれて嬉しく思う」と明かし、舞台への意気込みを熱っぽく語った。父の新三をもっと見たかった「『髪結新三』を初役でやらせていただく。これはもう、念願でございました」と語る勘九郎。役柄への熱い思いが、とめどなくあふれてくる。「祖父の勘三郎、父・勘三郎共に大事にしていた演目で、まあカッコいい。色っぽい。子供心を鷲掴みにされた役です。昭和61[1986]年でしたから僕は5歳かそこらでしたが、祖父の新三の舞台に丁稚の役で出ているんです。まだ勘太郎になる前、本名(波野雅行)で出ていた時ですが、もう祖父の新三がカッコよくて。弟(中村七之助)と一緒に車に乗ると、新三の永代橋の台詞を、まだ舌が回らないのに喋っていた記憶があります」河竹黙阿弥の代表作のひとつ。髪結の新三は、材木問屋白子屋の一人娘お熊をかどわかし、身代金をせしめようとする悪党だが、その粋でいなせな風情がなんとも抗い難い魅力を放つ。髪結新三=中村勘九郎(撮影:渞忠之)「祖父が亡くなった後の、父の新三もカッコいい。僕も早く勝(勝奴)で出たいと思っていましたが、平成中村座(平成24[2012]年5月)で、初めて父の新三の近くで勝をやらせていただき、その呼吸、間、息遣い、そして空気感というものを体験できた。いまとなっては──あれが最初で最後になると私も思っていませんでしたが、財産になっております」父の勘三郎が57歳の若さで亡くなったのは、その年の12月だ。「父の新三をもっと見たかったですし、しっかり習いたかったという思いはありますが、父をはじめとする先輩方が作った納涼歌舞伎で新三ができる幸せをかみしめながら、プレッシャーの中で過ごしています」この日、取材会の前には新三のスチール写真の撮影も行われた。「憧れている役の“なり”を身にまとわせてもらうと、『始まるな』『しっかりエンジンをかけなきゃ』という思いに。江戸の庶民のリアルを表現する、しかし現代劇になってはいけない、という父の教え──生世話(きぜわ)というものを、いまの世代に伝えるためにもしっかりとやりたいと思います」世話物の中でもとくに、江戸の人々やその暮らしをよりリアルに描き出す生世話。同時に、群像劇としての魅力も指摘する。「新三ひとりでは成り立たない世界観がある。父の新三でずっと勝をやっていたあーちゃんにいに(松本幸四郎)が弥太五郎源七で、大家さん(家主長兵衛)で坂東彌十郎さんも出られる。そして、手代忠七で弟が出るのも感慨深い。呂律が回らない子どもの頃に台詞を言い合っていた“永代橋”をふたりでできるのは、“エモい”なと(笑)。さらに中村扇雀さんは後家お常で締めてくださる。皆でこの江戸の町、粋というものを表現できたらいいなと思っています」皆、必死に生きているからこその魅力5、6年前から、自らやりたいと申し出ていたという新三。ようやくそれが叶った今年は、奇しくも父・勘三郎十三回忌の追善イヤーだ。「父が、見えない力で助けてくれた、この話を通してくれたのかなという気持ちもあります。新三はとにかくエッチじゃないといけない。色っぽい、ではなくて──。そのエッチさというのは、父の、祖父の、あの匂い立つようなもの──それをどう表現すればいいかっていうのは、ないんです。早くやりたかったというのはそういうことで、積み重ねていくことで変わっていくものがあるんじゃないか。スタートダッシュは遅かったけれど、これから工夫していきたい」登場人物は小悪党だったり腹黒かったりとひと癖ある人ばかりだし、騙したり仕返しされたりと、皆褒められないことばかりやっている。それなのに不思議と魅力的、コミカルにさえ感じられる。「皆、必死に生きている。嫌な芝居に見えないのは、そこなんじゃないかなと思います。瞬間瞬間を一生懸命に生きているんです。それと、あの空気感。鰹の売り子の声や、永代橋の雨。そうした描写がところどころにある。季節感は大事ですね。また、江戸のリアルな言葉。それはもう本当に普通の言葉ですから、フラットに観ていただけるんじゃないかなと思います。新三なんて、女の子をかどわかしてしまう、とんでもない男です。いまや舞台でしか観られない人たち。いま、作家がこれを新しく書いたら怒られてしまうけれど、残してくれたからできるわけですから、演劇、芝居というものを大事にしていきたいな、と思います」今回の納涼歌舞伎では、この第二部『髪結新三』以外にも、第一部では山本周五郎原作の『ゆうれい貸屋』で屑屋の幽霊又蔵を、第三部でも京極夏彦が書き下ろす新作『狐花葉不見冥府路行』に上月監物で出演する。「それも父の精神です。『研辰の討たれ』で忙しかろうが、初役で『鼠小僧』をやっていようが、一部二部三部、と出ておりました。お話をいただいたら、断る理由はないんです。『ゆうれい貸屋』は改めて本を読み、僕らの『ゆうれい貸屋』ができればといいなと思っています。『狐花』については京極先生の世界観、その美しさ、情景を舞台でどう表現できるか、我々にかかっているなと感じています。まだ本はできていませんが、どのくらいしゃべらなきゃいけないのか──大変です、本当に(笑)」“ドラえもんのアンキパン”が欲しいくらいと冗談めかすが、「でも、楽しまなきゃ!芝居は楽しんだもの勝ち」と前のめり。楽しみつつ、もちろん、歌舞伎を担い、伝えていく者としてのこだわりは、決して忘れない。「いまの人だからわからない、新しいものをやればいいんだよってなってしまうと、それは歌舞伎ではないなと思います。それは、歌舞伎の終わる瞬間。──ここでまた“教科書”が出てくるわけですよ。安西先生の『諦めたらそこで試合終了ですよ』って、あの、(漫画の)『スラムダンク』ですけれども(笑)、もうその通りだなと思います」猛暑の中での納涼歌舞伎。初めて足を運ぶ人も、必ず楽しめる舞台を作ると意気込む。「外の熱中を避けて、芝居に熱中していただくようなものを作るので、ぜひ足を運んでいただきたいなと思います」取材・文:加藤智子<公演情報>「八月納涼歌舞伎」【第一部】11:00~一、『ゆうれい貸屋』二、『鵜の殿様』【第二部】14:30~一、『梅雨小袖昔八丈髪結新三』二、『艶紅曙接拙紅翫』【第三部】18:15~一、『狐花葉不見冥府路行』2024年8月4日(日)~8月25日(日)※13日(火)、19日(月)休演※21日(水)第三部は貸切※幕見席は営業会場:東京・歌舞伎座チケット情報:()公式サイト:
2024年07月27日明治座花形歌舞伎が8年ぶりに復活することが決定し、11月に『明治座 十一月花形歌舞伎』が上演されることが発表された。明治座花形歌舞伎は平成23(2011) 年以来、次世代を担う花形俳優たちが大役に挑む話題性や、歌舞伎に馴染みのない人にも分かりやすいエンターテインメント性に富んだバラエティ豊かな演目を上演してきた。令和2(2020) 年3月には、中村勘九郎、中村七之助を中心とした座組で『明治座 三月花形歌舞伎』を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴い全公演中止に。それから4年の時を経て明治座花形歌舞伎が帰ってくる。『明治座 十一月花形歌舞伎』は中村勘九郎、中村七之助をはじめ、花形公演に相応しい華やかな顔ぶれが揃う。昼の部は歌舞伎の様式美溢れる『車引』、長谷川伸の傑作『一本刀土俵入』、華やかな女方舞踊『藤娘』、夜の部は義太夫狂言の名作『鎌倉三代記』、息もつかせぬ早替わりが圧巻の『お染の七役』と多彩な演目が上演される。<公演情報>『明治座 十一月花形歌舞伎』公演期間:11月2日(土) 初日~26日(火) 千穐楽※休演日は11月11日(月)、20日(水)会場:明治座開演時間:昼の部 11:00 / 夜の部 16:00【演目・配役】■昼の部一、菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)一幕車引長谷川伸 作村上元三 演出二、一本刀土俵入(いっぽんがたなどひょういり)二幕五場三、藤娘(ふじむすめ)長唄囃子連中『菅原伝授手習鑑 車引』松王丸:坂東彦三郎梅王丸:中村橋之助桜丸:中村鶴松藤原時平:坂東楽善『一本刀土俵入』駒形茂兵衛:中村勘九郎お蔦:中村七之助堀下根吉:中村橋之助若船頭:中村鶴松波一里儀十:喜多村緑郎船印彫師辰三郎:坂東彦三郎老船頭:市川男女蔵『藤娘』藤の精:中村米吉■夜の部一、 鎌倉三代記(かまくらさんだいき)一幕絹川村閑居の場四世鶴屋南北 作渥美清太郎 改訂於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)二、お染の七役(おそめのななやく)三幕中村七之助早替りにて相勤め申し候浄瑠璃「心中翌の噂」(しんじゅうあしたのうわさ)『鎌倉三代記』佐々木高綱:中村勘九郎時姫:中村米吉おくる:中村鶴松母長門:中村歌女之丞三浦之助義村:坂東巳之助『お染の七役』油屋娘お染・丁稚久松・許嫁お光・後家貞昌・奥女中竹川・芸者小糸・土手のお六:中村七之助鬼門の喜兵衛:喜多村緑郎油屋多三郎:坂東巳之助船頭長吉:中村橋之助丁稚長松:坂東亀三郎腰元お勝・女猿廻しお作:中村鶴松山家屋清兵衛:坂東彦三郎庵崎久作:市川男女蔵【チケット】(税込)一等席(1階席・2階席正面)15,000円二等席(2階席左右)7,500円三等A席(3階席正面)5,000円三等B席(3階席左右)3,000円※未就学児入場不可※車いすスペースは明治座チケットセンター及び明治座切符売場にて販売いたします。※三等B席は舞台の一部が見づらい可能性のある座席です。■一般発売電話・ネット予約:9月21日(土) 10:00~
2024年07月17日小説家・京極夏彦の書き下ろしによる新作歌舞伎『狐花 葉不見冥府路行』(読み:きつねばな はもみずにあのよのみちゆき)が、2024年8月の歌舞伎座『八月納涼歌舞伎』の第三部で上演されることが決定した。今年小説家デビュー30周年という節目の年を迎える京極。歌舞伎の舞台化のために執筆された本作は、累計発行部数1,000万部を超える人気シリーズ『百鬼夜行』の主人公・中禅寺秋彦の曾祖父・中禪寺洲齋の時代を描き、美しい青年の幽霊騒動と作事奉行らの悪事の真相に中禪寺が迫る、謎と驚きと切なさが胸を揺さぶる物語だ。演出・補綴は今井豊茂が務める。出演者には、8月の歌舞伎座の恒例となった『八月納涼歌舞伎』を中心となり盛り上げてきた、松本幸四郎、中村勘九郎、中村七之助が名を連ねた。併せて京極と幸四郎からコメントが到着した。なお『狐花 葉不見冥府路行』の小説版は7月26日(金) に発売される。■京極夏彦 コメント(撮影:森 清)小説家三十年の節目の機にお声掛け戴き、斯様な仕儀と相成りました。文字のみを扱い用い馬齢を重ねて参りましたが、此度は黒、柿、萌黄の大舞台。文字ならぬ名優の方々の身体に意を委ねまする怪しの狂言。まるで作法も文法も違いますれば、果たして如何なる仕上がりとなりますものか、身の引き締まる思いに御座います。何卒、心静かにご高覧戴きまするよう、伏して御願い上げ奉ります。■松本幸四郎 コメント『百鬼夜行』シリーズは、危険な香りを感じつつも嬉しくなるエンターテイメントで、凄い艶やか、まさに凄艶(すごつや)な世界で大好きな作品です。今回、ついに京極夏彦さんが新作歌舞伎を書き下ろすということで、「待ってました!」という気持ちです。異次元旅行をお客様とともに楽しみたいと思います。小説家デビュー30年を迎えられた京極さんの書き下ろし歌舞伎で、僕が22年間夢見続けた傾(かぶ)いた歌舞伎を作り上げたいと思っています。<公演情報>歌舞伎座『八月納涼歌舞伎』公演日程:2024年8月4日(日)~25日(日) ※休演:13日(火)・19日(月)会場:東京・歌舞伎座上演演目:第三部『狐花 葉不見冥府路行』(午後6時開演予定)ほか詳細はこちら:
2024年05月24日歌舞伎町に昨年オープンしたTHEATER MILANO-Zaにて今年5月、「歌舞伎町大歌舞伎」と銘打っての歌舞伎公演が開催されることになり1月23日、記者懇親会が開催。中村勘九郎、中村七之助、中村虎之介、中村鶴松が出席し、意気込みを語った。THEATER MILANO-Zaの開場1周年を記念して行われる今回の公演。勘九郎は以前、中村獅童がオフシアター歌舞伎として赤堀雅秋の演出で歌舞伎町で上演された『女殺油地獄』に出演したことに触れ「歌舞伎町という、猥雑というか、人間の欲と野望が渦巻く場所が合っているなと思い、いつか新宿で(歌舞伎公演を)やりたいなと思っていました」と語り、歌舞伎町のど真ん中での歌舞伎公演の実現の喜びを口にする。中村勘九郎今回、上演されるのは、虎之介と鶴松が出演し、親の仇である工藤祐経の元へと向かおうとする曽我五郎と、それを引き留めようとする小林朝比奈の妹・舞鶴の“引き合い”を舞で見せる荒事舞踊『正札附根元草摺(しょうふだつきこんげんくさずり)』、勘九郎と勘太郎、長三郎の父子競演で、七夕の夜の雷夫婦のケンカの顛末を軽妙洒脱な舞踊で表現する『流星』。さらに、小佐田定雄の脚本で、落語の「貧乏神」を題材にした世話狂言の新作歌舞伎『福叶神恋噺(ふくかなうかみのこいばな)』も披露される。以前から行なってきたコクーン歌舞伎(Bunkamura シアターコクーン)では、古典に新たな解釈を加えて現代の観客に発信してきたが、今回の「歌舞伎町大歌舞伎」について、勘九郎は「歌舞伎町という特殊な場所で演じるにあたって、僕らのホームである歌舞伎座と演出を変えずに、歌舞伎の本来持つ魅力、歌舞伎の底力をぶつけてみようじゃないかということで、こういうラインアップになりました」と説明する。『福叶神恋噺』に関しては、まだ台本が完成していないとのことだが、落語版の主人公の貧乏神を女性(貧乏神おびん)に変更して七之助が演じ、彼女がとり憑く飲んだくれの大工の辰五郎を虎之介、おびんの先輩の貧乏神すかんぴんを勘九郎が演じる。中村七之助七之助は新作歌舞伎を上演する点について、普段の歌舞伎座などの客層との違い、初めて歌舞伎を観るという観客が多いであろうという点を意識したと明かす。「長屋の喜劇で落語味があふれた作品で、情というよりもおかしみが多いふたりの掛け合いがほとんどなのですが、それを舞台でやるには落語のテンポ感に負けるところがあるので、そこも考慮して、僕が主演でもあるので貧乏神を女性にしました。どう転んでいくのか? オチもすごく落語的で、舞台的にはそのままだと難しいので、(貧乏神を)女性としたのも、これは推測ですが(辰五郎との間に)恋愛感情が生まれるんじゃないかと」と舞台ならではのアレンジを予測する。中村鶴松中村虎之介話題が歌舞伎町にまつわる思い出になると、鶴松は大学時代に友人と一緒に飲みに行った店で「お会計を見たら『20万』とあって……(苦笑)」とぼったくり被害に遭ったことを告白。服を破られながらも逃げ出して「半分裸でタクシーに乗って、それ以来、(歌舞伎町には)近づかないでいました」と明かし、これには勘九郎から苦笑交じりに「『昔と違って浄化されていると思う』と書いといてください(笑)。安心してお越しください!」と報道陣に要望が……。その勘九郎は、友人がオーナーを務めるホストクラブに遊びに行った経験を明かし「男が相手でも(ホストたちが)命がけでちゃんとコールをしてくれて、『これはハマっちゃうかもしれないな』と思いました(笑)」と述懐。この経験を踏まえつつ(?)、今回の公演の宣伝について、中村亀鶴さんから、歌舞伎町近辺で見かけるホスト広告トラックを活用した広告を打ってみてはどうかと提案があったことを明かし、虎之介も「白いスーツを着て(笑)」と乗り気な様子を見せ、写真撮影でもカメラマンからの「ホスト風のポーズで」との要望に一同応えるなど、笑いを誘っていた。取材・文・撮影:黒豆直樹<公演情報>「歌舞伎町大歌舞伎」昼の部:12:00~夜の部:16:00~【演目・出演者】※昼夜同一狂言一、正札附根元草摺(しょうふだつきこんげんくさずり)流星(りゅうせい)「正札附根元草摺」曽我五郎時致:中村虎之介小林妹舞鶴:中村鶴松「流星」流星:中村勘九郎牽牛:中村勘太郎織女:中村長三郎二、福叶神恋噺(ふくかなうかみのこいばな)落語「貧乏神」より小佐田定雄 脚本今井豊 茂 演出貧乏神おびん:中村七之助大工辰五郎:中村虎之介貧乏神すかんぴん:中村勘九郎2024年5月3日(金・祝)~5月26日(日)会場:東京・THEATER MILANO-Zaチケット情報:()松竹公式サイト:公式サイト:
2024年01月25日歌舞伎俳優・中村勘九郎の長男・勘太郎(12)、そして次男・長三郎(10)。幼い頃から舞台に立ち続け、歌舞伎ファンの期待も大きい2人にインタビュー。2人は宮藤官九郎×中村勘九郎の強力タッグで2022年10月・11月に上演された新作歌舞伎『唐茄子屋 不思議国之若旦那』に出演しており、1月5日からは全国の映画館で「シネマ歌舞伎」としての上映を控えている。古典落語「唐茄子屋政談」に「不思議の国のアリス」の要素を織り交ぜた同作では、父・勘九郎が役をつとめる自己愛強めな若旦那や、叔父・中村七之助による花魁の傾城桜坂らとともに舞台に。不思議の国で子供の姿になってしまった若旦那(小)を勘太郎、長屋に住む貧乏親子の子供・イチと若旦那(超ミニ)を長三郎がつとめた。インタビューでは、ふだんの古典とは違う内容に苦労も多かったという同作について、また兄弟の性格の違いやお年玉の使い道などについても話を聞いた。○出演した新作歌舞伎『唐茄子屋 不思議国之若旦那』が「シネマ歌舞伎」として全国上映――『唐茄子屋 不思議国之若旦那』は宮藤官九郎さんが脚本・演出をつとめた新しい作品で、ふだん出演される作品とは違ったと思いますが、いかがでしたか?勘太郎:今までは昔からある古典の芝居をやっていたんですけど、今回はゼロから作らなければいけないので、稽古では毎日のようにセリフを変えたりして大変でした。長三郎:いつもの僕たちがやっている古典の歌舞伎とはまた別に宮藤さんの演出が入ることによって、難しくて、稽古も大変でした。――宮藤さんの面白さは感じましたか?勘太郎:感じました。長三郎:演出のしかた、「お芝居をこうやりたい」というところが面白かったです。勘太郎:若旦那のポーズとか、「あざーす!」というセリフとか、ふだんあんまり言わないので、難しかったです(笑)――お父さんの勘九郎さんが若旦那、勘太郎さんが若旦那(小)、長三郎さんが若旦那(超ミニ)と、3人で1人の役をつとめて、相談したことなどありましたか?勘太郎:まんじゅうを食べて池に飛び込むと姿が変わる演出なんですけど、その時の入り方や出方とか、どう変わるのかとか、みんなで相談しました。長三郎:お兄ちゃまが言った通り、池の場面の話し合いが多かったです。――そういう時の勘九郎さんは、優しいですか? それとも厳しいですか?長三郎:優しいし、怖いし、両方です! お家とは一緒じゃなくて。1つの役をやるから、みんなで合わせる演出の時は、間ぐらいの感じでした。――今回の『唐茄子屋』の好きなシーンを教えてください。勘太郎:冒頭のお祭りの場面で後ろの扉を開けるところ(舞台奥が開いて外の景色と一体となる平成中村座ならではの仕掛け)があるんですけど、扉を最初から使うので、面白いなあと思います。長三郎:見どころということですね。僕は2つあるんですけど、1つ目は、最初の橋のところです。始まる前に僕はおじじ(七之助)と一緒にいて、幕が開いてから橋の上とか色々と行くんですけど、そこをしっかり見ていると、僕とおじじは(わざと)避けてる人がいるんです。そこも映ってたら見てほしいです。勘太郎:そんなことしてたの!? あともう1つは?長三郎:あともう1つはパラレルワールドの吉原。たぶん昔あんな感じじゃないと思うんですけど、面白いです。勘太郎:歌舞伎というと、どうしても古典のような硬い感じだと思っちゃうかもしれないんですけど、『唐茄子屋』は笑えるところがあって、演出が面白いので、そこを見てほしいなと思います。長三郎:古典だと決まっている演出だけど、新作で宮藤さんが作っていて色々と変わっているから、そこが面白いので楽しみにしていてほしいと思います。――今回は「シネマ歌舞伎」として上映されますが、最近観て面白かった映画などはありますか?長三郎:僕が1番楽しみにしてるのは『ウィッシュ』かな。あと『ミュータント・タートルズ』(映画『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』)面白かったです!勘太郎:『マリオ』(『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』)は?長三郎:『マリオ』も面白かった。今年(2023年)めちゃくちゃ観てるじゃん! 『BLUE GIANT』って今年?勘太郎:『BLUE GIANT』、面白かった。長三郎:家族で観ました。――家族4人で映画に行くことが多いんですか?勘太郎:多いです。長三郎:みんなで帰りの車で曲を聴きます。勘太郎:主題歌の曲とかを聴きます。――勘九郎さん、七之助さんと一緒にお芝居をする機会も多いですが、憧れたり感謝したりすることはありますか?勘太郎:おーわん(勘九郎)がやったことがあるお芝居と、おじじ(七之助)がやったことあるお芝居が違うので、その時々に教えてもらうことができます。長三郎:2人ともいろいろと違うお芝居をやってきてるので、たとえば「連獅子」はおじじもお父ちゃまもやってるということは2つアドバイスをもらえるし、どちらかがやっていてもアドバイスをもらえるし、いいなと思いました。――歌舞伎の家に生まれたことについてはどう思っていますか?長三郎:びっくりしてます。勘太郎:びっくりしてるんだ。長三郎:やっぱりお芝居やってると大変だなあと思うこともある。そういう歌舞伎の家の子として生まれたから偉いってわけでもないし、偉くないってわけでもないので。勘太郎:そんなに気にしてないってこと?長三郎:気にしてないです。――お父さんが歌舞伎俳優で、自分も舞台に立つということについてはいかがですか?長三郎:緊張があります。勘太郎:責任は感じます。でもあんまり意識してないです。長三郎:してないよね? 2人とも。――ちなみに、長三郎さんの前髪はこだわりですか?長三郎:こだわりじゃないです。結構前だけど、ちっちゃい時に切ったのがずっと続いてるんだよね。これ、寝癖がついても水とブラシだけで一瞬で直っちゃうんです。勘太郎:それは、髪がつるつるだからだよ。長三郎:そうなの?勘太郎:そうです。長三郎:お気に入りというわけでもないし、似合ってるというわけでもないので、あんまり気にしてないです。(答えが)「気にしてない」ばっかりだったらだめかな?勘太郎:本心だからいいんだよ。長三郎:違う髪型でもいいし、あんまり気にしてないです。でも坊主はやだ!――勘太郎さんは、中学生になって変化はありましたか?勘太郎:やっぱり成長期なので、身長は伸びてきて、もうママは抜きました。161cmくらいです。長三郎:みんな抜くよね! 足の長さも半端ないよね? ぐっと伸びていくじゃん!○長男と次男、性格の違いは?――お話を聞いていると、兄弟でもお二人の性格が違うのかなと思ったんですけど、お互いにどういうふうに思っていますか?勘太郎:短気!長三郎:怒りっぽい!勘太郎:ポジティブです。長三郎:僕はポジティブですね。――やっぱりお互いに「違うな」と感じるんでしょうか?勘太郎:はい。僕はおとなしい方の性格だと思います。長三郎:内弁慶で、借りてきた猫。あなたは内弁慶で外弁慶。勘太郎:どういうこと?――これまでのお話の様子でも、勘太郎さんは穏やかなのかなという印象がありましたが…長三郎:穏やかではないなあ、それが!勘太郎:穏やかです。――いろいろ物語を自分で書かれることもあると聞きました。長三郎:それはこっち(勘太郎)です。お芝居を作って、総監督、演出家です。で、僕はおもちゃを貸したり、道具を集めたりとか。かわいい人形で文楽をします。勘太郎:動かせるやつならなんでも。長三郎:僕はごくごくたまにしか書かないです。(勘太郎に)最近ね、めちゃくちゃいいの作ったんだよね。2つも! 面白かったですよ!――たとえば、大きくなった時に、今回のように新しい歌舞伎の脚本を書いたりするのはどうですか?長三郎:もしあったら、演出は(勘太郎に)頼みます! 今のちっちゃい頃に作った芝居を思い出して書く可能性もありますね。――最後に、お正月ということで、お年玉で買いたいものはありますか?長三郎:お年玉で買いたいもの、何かな〜?勘太郎:お年玉は預かられちゃってるから、使えないです(笑)。貯金してます。長三郎:お年玉、ママに渡したらずっとママが預かってる。 使おうとする気持ちと、使いたくない気持ちがある。大人になったら、うわ〜っ! と。勘太郎:そんなに好き放題にやったらダメだよ。長三郎:「ガリガリ君」買いまくる!■三代目 中村勘太郎2011年2月22日生まれ、東京都出身。父は六代目中村勘九郎、母は女優の前田愛。2017年2月歌舞伎座『門出二人桃太郎』の兄の桃太郎で三代目中村勘太郎を名のり初舞台。2月は十八世中村勘三郎十三回忌追善「猿若祭二月大歌舞伎」に出演。■二代目 中村長三郎2013年5月22日生まれ、東京都出身。父は六代目中村勘九郎、母は女優の前田愛。2017年2月歌舞伎座『門出二人桃太郎』の弟の桃太郎で名のり初舞台。2月は十八世中村勘三郎十三回忌追善「猿若祭二月大歌舞伎」に出演。
2024年01月03日「若手歌舞伎役者の登竜門」といえば新春浅草歌舞伎。今年も若手花形俳優たち、そして貫禄のベテラン勢が顔を揃える。1980年に、二世中村吉右衛門、五世中村勘九郎(十八世中村勘三郎)、坂東玉三郎の顔ぶれで「初春花形歌舞伎」としてスタートして以来、東京浅草のお正月を彩ってきた。今年の浅草歌舞伎第1部は時代物の傑作『本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)十種香』で幕を開ける。武田信玄の息子の勝頼が切腹したと聞いてもなお、勝頼の姿絵を前に一途に祈る情熱的な八重垣姫の恋を描く。『与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)源氏店』では、深い因縁で結ばれたお富と与三郎が運命的に再会する物語が粋にドラマチックに繰り広げられる。田舎者のどんつくと江戸っ子たちを比べながら、華やかに江戸の風俗を楽しむ舞踊『神楽諷雲井曲毬(かぐらうたくもいのきょくまり)どんつく』で、出演者が勢ぞろいする。第2部の一幕目は重厚な時代狂言の傑作、『一谷嫩軍記熊谷陣屋(くまがいじんや)』だ。かつて受けた恩と忠義、16歳の我が子への思いのはざまで苦悩する熊谷直実の人生とは。『流星(りゅうせい)』は雷夫婦の喧嘩を可笑しみを持って描く洒脱な舞踊。そして第2部の打出しは『新皿屋舗月雨暈魚屋宗五郎(さかなやそうごろう)』。家族を思うからこそ、ついに宗五郎は禁酒の誓いを破る。出演者が全員そろう切狂言だ。12月に行われた『新春浅草歌舞伎』取材会よりそして今年で浅草歌舞伎を卒業するメンバー達が思い出をこう語る。「この浅草歌舞伎をひっぱっていく立場を任された初年度の2015年、任せてもらううれしさと不安の中、みんなが積極的に僕に連絡くれて”僕にできること何でもします”と言ってくれたのがすごく心強かったですね。皆でワンチームとなってこの浅草歌舞伎を良くしようという気持が固まった、あの年のことがやはり一番思い出深いです」(尾上松也)。「この浅草歌舞伎は(二世中村)吉右衛門のおじ様の、播磨屋の演目をさせていただける大事な機会でした。中でも「太十」(『絵本太功記』十段目)の武智光秀を勤めさせていただいたとき、おじさまから直接顔をしていただいたことが忘れられません。その後の自分の顔をする際の基本となっています」(中村歌昇)。「最初の年、本当にお客さまが来て下さるのか不安と闘いながらも、盛り上げるための事前の宣伝活動として、短期間に大量のバラエティ番組に皆で出演しまくったのが強烈に思い出に残っています」(坂東巳之助)。「2019年の『乗合船恵方萬歳(のりあいぶねえほうまんざい)』は、まさに全員が同時に舞台に出た貴重な機会でした。また千穐楽の日に幕が締まったあと、客席降りしたのを思い出します」(坂東新悟)「先輩から受け取ったバトンを何とかしなきゃと思っていた最初の年の初日、お客さん入ってるかなと心配で幕だまりから皆で見た覚えがあります。お客さんがいっぱい入ってるのを確認して皆で“よかったね”と言い合ったことがよみがえります」(中村種之助)。「最初の年、せっかくだから『お年玉挨拶』を二人組でやってみようということになりました。でも緊張しすぎてどうにもかけあいがうまくいかず、翌年からまたひとりでの挨拶に戻ったことを覚えています(笑)。ポスター用に一人ひとりのカラーも決めましたね。僕はピンクで、今日(12月取材会時)もピンクのネクタイをしております」(中村米吉)。「ゴレンジャーならぬナナレンジャーを模してポスター、作りましたね。目を引くチラシ作りに皆でああでもないこうでもないと言い合って工夫したことを思い出します。この浅草歌舞伎は地域密着型の公演で、浅草の旦那衆や女将さん衆に公演期間中皆でお礼を言いに行ったことも思い出です」(中村隼人)。コロナ禍で昨年は行われなかった恒例の『お年玉年始ご挨拶』が4年ぶりに復活する。また昨年は第1部、2部で出演者を二分していたが、今年は部を越えてそれぞれの出し物にメンバーが相互に出演、まさに浅草歌舞伎ならではの楽しみな顔合わせも復活する。数々の古典の大役に挑む若手花形俳優たちに今年も会いに行こう。文:五十川晶子<公演情報>「新春浅草歌舞伎」出演:尾上松也、中村歌昇、坂東巳之助、坂東新悟、中村種之助、中村米吉、中村隼人、中村橋之助、中村莟玉【第1部】11:00~お年玉〈年始ご挨拶〉一、『本朝廿四孝 十種香』出演八重垣姫:中村米吉武田勝頼:中村橋之助腰元濡衣:坂東新悟白須賀六郎:中村種之助原小文治:坂東巳之助長尾謙信:中村歌昇二、『与話情浮名横櫛 源氏店』作:三世瀬川如皐出演切られ与三郎:中村隼人妾お富:中村米吉番頭藤八:市村橘太郎蝙蝠の安五郎:尾上松也和泉屋多左衛門:中村歌六三、『神楽諷雲井曲毬 どんつく』出演荷持どんつく:坂東巳之助親方鶴太夫:中村歌昇太鼓打:中村種之助大工:中村隼人子守:中村莟玉若旦那:中村橋之助芸者:中村米吉白酒売:坂東新悟田舎侍:尾上松也【第2部】15:00~お年玉〈年始ご挨拶〉一、『一谷嫩軍記 熊谷陣屋』出演熊谷直実:中村歌昇相模:坂東新悟藤の方:中村莟玉梶原平次景高:中村吉之丞堤軍次:中村橋之助源義経:坂東巳之助白毫弥陀六:中村歌六二、『流星』出演流星:中村種之助三、『新皿屋舗月雨暈 魚屋宗五郎』作:河竹黙阿弥出演魚屋宗五郎:尾上松也女房おはま:坂東新悟小奴三吉:中村種之助磯部主計之助:中村隼人菊茶屋娘おしげ:中村莟玉菊茶屋女房おみつ:中村歌女之丞父太兵衛:市村橘太郎鳶吉五郎:中村橋之助召使おなぎ:中村米吉岩上典蔵:坂東巳之助浦戸十左衛門:中村歌昇2024年1月2日(火) ~1月26日(金)会場:東京・浅草公会堂()
2024年01月02日2024年5月3日(金・祝) から26日(日) に東京・THEATER MILANO-Zaで上演される『歌舞伎町大歌舞伎』の追加出演者と演目が発表された。THEATER MILANO-Zaの開業1周年に彩りを添える本公演。中村勘九郎、中村七之助に加え、新たに中村虎之介、中村勘太郎、中村長三郎、中村鶴松の出演が決定した。公演の幕開きは、曽我兄弟の仇討を題材にした作品で、荒事の豪快な趣向と華やかさを併せ持つ長唄の舞踊『正札附根元草摺』。続いて、七夕の夜、牽牛と織女の前に現れた流星が、雷の夫婦と子ども、婆の4人の騒動の様子を踊り分ける軽妙洒脱な舞踊『流星』。そして落語の『貧乏神』を題材に、どこか憎めない貧乏神をはじめ、個性豊かな登場人物たちが織り成す世話狂言の新作歌舞伎『福叶神恋噺』で打ち出しとなる。<公演情報>『歌舞伎町大歌舞伎』2024年5月3日(金・祝) ~26日(日) 東京・THEATER MILANO-Za■一、正札附根元草摺、流星〈正札附根元草摺〉曽我五郎時致:中村虎之介小林妹舞鶴:中村鶴松〈流星〉流星:中村勘九郎牽牛:中村勘太郎織女:中村長三郎■二、福叶神恋噺落語『貧乏神』より脚本:小佐田定雄演出:今井豊茂貧乏神おびん:中村七之助大工辰五郎:中村虎之介貧乏神すかんぴん:中村勘九郎詳細はこちら:
2023年12月21日2024(令和6)年2月東京・歌舞伎座、3月名古屋平成中村座で上演される「十八世中村勘三郎十三回忌追善興行」の合同取材会が11月28日、都内で行われ、中村勘九郎、中村七之助が出席した。時代物から世話物、新歌舞伎に新作歌舞伎、舞踊に至るまで、幅広い分野で当り役を持ち、人々を魅了し続けた十八世中村勘三郎。その十三回忌追善では、勘三郎の長男・勘九郎、次男・七之助をはじめ、由縁の出演者と演目が揃い、名優を偲ぶ。1987(昭和62)年1月歌舞伎座『猿若江戸の初櫓』猿若=十八世中村勘三郎(当時 五代目勘九郎)©松竹1992(平成4)年10月南座『青砥稿花紅彩画 白浪五人男』弁天小僧菊之助=十八世中村勘三郎(当時 五代目勘九郎)©松竹2月歌舞伎座では、寛政元(1624)年に初代猿若(中村)勘三郎が、後の中村座である猿若座の櫓をあげ、江戸で初めて歌舞伎興行を創始したことを記念して始まった「猿若祭」を開催。続く3月名古屋平成中村座では、初代勘三郎生誕の地とされる愛知県名古屋市中村区で、十八代目中村勘三郎襲名披露として、平成18(2006)年以来となる同朋高校体育館での公演が実現する。勘九郎は歳月の流れに思いをはせながら、「祖父が父に『追善興行ができるような役者になっておくれ』と言っていた通り、追善興行ができるのは本当にうれしい」としみじみ挨拶し、「親孝行は何ひとつできていなかったと思うが、これで少しは親孝行ができるのかなと思う」と安どの表情。七之助も「1年を通して、父の追善興行を行えるということは息子として本当にうれしく、身の引き締まる思いです」と背筋を伸ばした。2010(平成22)年4月歌舞伎座『連獅子』狂言師後に親獅子の精=十八世中村勘三郎、狂言師後に仔獅子の精=中村勘九郎(当時 二代目勘太郎)、狂言師後に仔獅子の精=中村七之助©松竹2月歌舞伎座夜の部では、初代勘三郎が、江戸で芝居小屋建立を幕府に認められるまでを描いた中村屋由縁の舞踊劇「猿若江戸の初櫓」を上演。勘九郎の長男・中村勘太郎が初役で猿若を勤め、出雲の阿国で七之助が華を添える。17代目と18代目の伝説的な共演以来、中村屋を語る上で欠かすことができない舞踊の大曲「連獅子」では、親獅子に勘九郎、仔獅子には10歳となる次男の中村長三郎が初めて挑むことになった。猿若を勤めることを知った勘太郎の様子について、勘九郎は「マスク越しに笑みがこぼれるのが見えて、愛おしかった」と目を細め、「連獅子」に初挑戦する長三郎には「火の玉のような子獅子を演じてくれるはず」と期待を寄せた。2010(平成22)年2月歌舞伎座『籠釣瓶花街酔醒』佐野次郎左衛門=十八世中村勘三郎©松竹昼の部では、勘三郎が当り役にした「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)」の佐野次郎左衛門を、勘九郎が初役で勤め、女方の大役・兵庫屋八ツ橋を七之助が同じく初役で勤める。「いつかやりたいとタイミングを模索していた。兄弟ふたりでできるので、父も喜んでいるはず」(勘九郎)、「八ツ橋は、女方あこがれのお役。初役はありがたい」(七之助)と声を弾ませた。さらに、各地の芝居小屋やホールをめぐる「陽春・春暁・錦秋歌舞伎特別公演2024」、10月には「俊寛」の舞台である鹿児島県三島村・硫黄島で13年ぶりの開催となる「三島村歌舞伎」も決定した。勘九郎は「2011年に2回目の『俊寛』を三島村で演じた時、私が14歳で千鳥をやらせていただいた」と回想。勘太郎(当時は七緒八)が誕生した頃で、「父が『七緒八が14歳になるのはいつだ?俺が70歳になるから、その記念でまたやろう』と決めていた」と秘話を披露。「それが見られなかったのは悔しいんですが、父の遺志を継いで、三島村で俊寛を勤められるのも、本当に楽しみ」と追善興行ラインナップに奔走する2024年に闘志を燃やしていた。取材・文・撮影(会見写真):内田涼<公演情報>十八世中村勘三郎十三回忌追善■「猿若祭二月大歌舞伎」【昼の部】11:00~一、新版歌祭文野崎村二、釣女三、籠釣瓶花街酔醒【夜の部】16:30~一、猿若江戸の初櫓二、義経千本桜すし屋三、連獅子2024年2月2日(金)~2月26日(月)※13日(火)、20日(火)休演※9日(金)昼の部は貸切(幕見席は営業)会場:東京・歌舞伎座■「名古屋平成中村座 同朋高校公演」【昼の部】11:00~一、弁天娘女男白浪二、身替座禅【夜の部】15:30~一、義経千本桜川連法眼館二、二人藤娘2024年3月6日(水)~3月18日(月)※12日(火)休演会場:平成中村座(学校法人 同朋学園 同朋高等学校 体育館)公式サイト:
2023年11月29日2024年2月歌舞伎座、3月名古屋平成中村座にて、『十八世中村勘三郎十三回忌追善興行』が上演されることが決定した。時代物から世話物、新歌舞伎に新作歌舞伎、舞踊に至るまで幅広い役々に当り役を持ち、多くの人々を魅了し続けた十八世中村勘三郎。今回の十三回忌追善では、勘三郎の長男・勘九郎、次男・七之助をはじめとした由縁の出演者と演目が揃い、名優を偲ぶ。2月歌舞伎座では、寛政元年(1624) に初代猿若(中村)勘三郎が猿若座(後の中村座)の櫓をあげ、江戸で初めて歌舞伎興行を創始したことを記念して始まった「猿若祭」を開催。昼の部では、十八世勘三郎が襲名披露をはじめ数々の名演を魅せた当り役の『籠釣瓶花街酔醒』佐野次郎左衛門を勘九郎が初役で勤め、女方の大役・兵庫屋八ツ橋を七之助が同じく初役で勤める。『新版歌祭文 野崎村』では十八世勘三郎の部屋子である中村鶴松がお光を初役で勤め、久松には七之助。夜の部では、初代勘三郎が江戸で芝居小屋建立を幕府に認められるまでを描いた中村屋由縁の舞踊劇『猿若江戸の初櫓』を、十八世勘三郎の孫で勘九郎長男の中村勘太郎が初役で猿若を勤め、出雲の阿国で七之助が華を添える。十七世勘三郎と十八世勘三郎の伝説的な競演以来、中村屋を語る上で欠かすことができない舞踊の大曲『連獅子』では勘九郎の親獅子で、仔獅子には10歳となる勘九郎次男の中村長三郎が初めて挑む。3月名古屋平成中村座は、初代勘三郎生誕の地とされる愛知県名古屋市中村区で、十八代目中村勘三郎襲名披露として平成18年(2006) に開催以来の同朋高校体育館にて公演。十八世勘三郎が演じた当り役の数々を勘九郎、七之助を中心に上演する。昼の部では、『弁天娘女男白浪』で弁天小僧菊之助を七之助が、『身替座禅』では山蔭右京を勘九郎が勤める。夜の部では、『義経千本桜 川連法眼館』で佐藤忠信/忠信実は源九郎狐を勘九郎が、『二人藤娘』で藤の精を七之助と鶴松が勤める。<公演情報>十八世中村勘三郎十三回忌追善「猿若祭二月大歌舞伎」2024年2月2日(金) ~26日(月) 東京・歌舞伎座※休演13日(火)・20日(火)■チケット料金(税込)1等席:18,000円2等席:14,000円3階A席:6,000円3階B席:4,000円1階桟敷席:20,000円一般発売:2024年1月14日(日) 10:00より電話予約・Web受付開始十八世中村勘三郎十三回忌追善名古屋平成中村座 同朋高校公演2024年3月6日(水) ~18日(月) 愛知・平成中村座(学校法人同朋学園 同朋高等学校 体育館)※休演:12日(火)■チケット料金(税込)1等席:14,500円2等席:13,500円一般発売:2024年1月20日(土) 10:00より
2023年11月21日2024年5月3日(金・祝) から26日(日) にかけて新宿・東急歌舞伎町タワーTHEATER MILANO-Zaにて、『歌舞伎町大歌舞伎』が上演されることが決定した。出演するのは、歌舞伎の古典から新作まで幅広い作品に出演するだけでなく父である十八世中村勘三郎の遺志を受け継ぎ、平成中村座や渋谷・コクーン歌舞伎を牽引する中村勘九郎と中村七之助。今年5月に上演された『姫路城世界遺産登録30周年記念 平成中村座 姫路城公演』では、チケットが発売からわずか2日で完売。11月には『北九州市制60周年 平成中村座 小倉城公演』が控えている。<公演情報>『歌舞伎町大歌舞伎』2024年5月3日(金・祝)~26日(日)会場:東京・THEATER MILANO-Za出演:中村勘九郎、中村七之助 他■チケット料金1等席:13,500円2等席:8,000円3等席:4,000円前売開始:2024年3月24日(日)10:00~公式サイト:ホームページ:
2023年10月24日歌舞伎座新開場十周年「『秀山祭九月大歌舞伎』二世 中村吉右衛門三回忌追善」が、9月2日から25日まで東京・歌舞伎座で上演される。2021年に逝去した中村吉右衛門の三回忌追善として行われ、数々の当り役を持ち、多くの人々を魅了してきた歌舞伎界屈指の名立役をゆかりの演目、出演者で偲ぶ。夜の部では、歌舞伎三大名作のひとつ、『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』より、原作の三段目にあたる『車引』が上演されることになり、中村又五郎、歌昇、種之助が出演する。松王丸、梅王丸、桜丸という三つ子の兄弟の争いを描き、歌舞伎の様式美を凝縮した華やかな演目。又五郎の松王丸、歌昇の梅王丸、種之助の桜丸という配役で、豪快な荒事の魅力を披露する。『菅原伝授手習鑑 車引』平成30(2018)年7月大阪松竹座公演より、松王丸=中村又五郎(c)松竹『菅原伝授手習鑑車引』平成26(2014)年4月金丸座より、梅王丸=中村歌昇(c)松竹『菅原伝授手習鑑車引』2023年「秀山祭九月大歌舞伎」オフィシャルビジュアルより、桜丸=中村種之助(c)松竹又五郎、歌昇、種之助の親子3人で『車引』の三兄弟を勤めるのは、今回が初めて。このたび、都内で行われた取材会に顔を揃え、それぞれの意気込みを語るとともに、在りし日の吉右衛門の思い出話も披露した。「古典中の古典ですし、播磨屋の一員として、お兄さんにお稽古で教えていただいた“核の部分”をしっかり噛みしめながら、舞台に挑めたら」。そう語る又五郎は、「大きなお役を、ここにいる3人で勤められるのは、なかなかない機会で親としてはとてもうれしいこと。子どもたちは嫌だと言うかもしれませんが(笑)」と親子共演に喜びを示し、演じる松王丸については「梅王丸、桜丸を痛めつけるのではなく、体から出てくるパワーで抑えつける感じが出せれば」と語った。梅王丸を勤める歌昇は「播磨屋として、おじさまの舞台に対する姿勢を近くで見てきました。教えていただいたことをしっかりと継承し、おじさまに近づけるように精進することで恩返ししたい。親子3人での共演もうれしいですし、梅王丸は金丸座以来、だいぶ時間が経っているので、成長した姿をお見せしなければ」と決意表明。桜丸を勤める種之助は初役となり、「(尾上)菊之助のお兄さんに教えていただきます。教えをしっかりと自分のものにして、歌舞伎座という舞台に見合う桜丸を目指していければと思います」とこちらも闘志を燃やした。吉右衛門との思い出を問われると、又五郎は「スパルタという意味ではなく、『あそこはこう』とお厳しい指導をいただいた。こちらが進歩をすれば、『そうだ、あれでいいんだよ』と褒めてくださった」としみじみ。「お言葉すべてが財産。舞台に対する姿勢の厳しさは常々でしたが、映画を観たり、絵画を鑑賞したり、そういった体験や経験が自分の豊かさにつながるとも教えていただいた」(歌昇)、「とにかく死ぬ気でやれと言われました。生前には『これからの歌舞伎はどうなるんだろうね』とも。時代が変わり、お客様の求めるものも変わるなかで、古典以外に新作や昔の古典の再演など、工夫をこらしているが、それには驚いていると思うし、どんな歌舞伎を望んでいらっしゃったのか分かりませんが、私たちが教わったことを守っていきたい」(種之助)と話していた。<『菅原伝授手習鑑 車引』あらすじ>三つ子の兄弟、松王丸(又五郎)、梅王丸(歌昇)、桜丸(種之助)は、それぞれ藤原時平、菅丞相、斎世親王に奉公しています。主人たちの対立により、今は敵味方となった三人。ある日、梅王丸と桜丸は主人の無念を晴らそうと、敵である時平が乗る牛車の行く手を阻みます。それを止めに入ったのが松王丸。三人が争う内に牛車より時平(中村歌六)が現れ……。取材・文:内田涼<公演情報>歌舞伎座新開場十周年「秀山祭九月大歌舞伎」二世中村吉右衛門三回忌追善【昼の部】11:00~一、祇園祭礼信仰記金閣寺二、土蜘三、二條城の清正【夜の部】16:30~一、菅原伝授手習鑑車引二、連獅子三、一本刀土俵入取手宿安孫子屋よりお蔦の家 軒の山桜まで2023年9月2日(土)~9月25日(月) ※11日(月)、19日(火) 休演会場:東京:歌舞伎座
2023年08月22日中村勘九郎と中村七之助ら中村屋一門が2005年から毎年行っている全国巡業公演。今年は『春暁特別公演』に続き、10月に『錦秋特別公演』が開催される。元々はファンから「地方にいるとなかなか歌舞伎を観に行くことができない」という手紙をもらったことで、「自分たちで全国各地に足を運ぼう」と始まった公演。2022年には47都道府県制覇も達成し、歌舞伎初心者でも楽しめる公演としてすっかり定着した格好だ。見どころについて勘九郎と七之助に聞いた。幕開きは、人気の「トークコーナー」から。勘九郎と七之助が演目を解説し、3年ぶりに質問コーナーも復活する。「歌舞伎の題名は漢字ばかりで難しいと思われがちなので、まずは分かりやすく解説して、心の垣根を取り払いたいなと(笑)。久しぶりの質問コーナーでは、やっとお客様とじかにやりとりできるのが嬉しいですね」と勘九郎。隣の七之助も「以前、お客様に『この後ごはんを食べに行きたいんですけど、どこがオススメですか?』と“逆質問”したことも(笑)。実際に2人で伺ったお店もあるんですよ」と笑顔を見せる。続いての『女伊達』は、江戸っ子の女伊達が上方の男伊達たちを前に威勢の良さを見せる、華やかな舞踊。注目の若手、中村鶴松が女伊達を演じる。「鶴松は最近メキメキと実力をつけていて踊りも達者。今回はあえて、スッと立っているだけでかっこいい女性の役をやりたいと言うので驚きました。彼のそんな役どころをあまり観たことがないので、私も楽しみなんです」と七之助は頼もしげに語る。最後は『天日坊』の一場面として描かれた浦島太郎と乙姫の物語を舞踊劇にした、『桑名浦乙姫浦島』(くわなのうらおとひめとうらしま)。舞踊としての上演は実に156年ぶりというから驚きだ。浦島役の勘九郎は「資料が残っていないので、浦島が題材の舞踊を皆で調べながら作っているところ」と苦労を語りつつ、「ご家族で楽しんでいただけるものを、という気持ちは毎回変わらないので、今回はタイやヒラメに加えてタコも出すことに。お子様も無理なく楽しめますよ」と話す。乙姫役の七之助も「皆で一所懸命作って、それをお子様から年配の方まで楽しんでいただくのが特別公演」と口を揃えた。歌舞伎ファンにとっても、特別公演は貴重な演目が観られる機会だ。勘九郎は「出来上がるまでは大変ですが、作品をうまくお客様に届けられた瞬間は格別。今後もずっと続けていきたい」と意気込んだ。取材・文:藤野さくら
2023年07月13日歌舞伎俳優の中村勘九郎、中村七之助が16日、兵庫県姫路市で開催される『平成中村座姫路城公演』(5月3日〜27日)の大阪・カンテレ本社で行われた取材会に出席した。2000年に東京・浅草にて初公演、日本国内はもとより海外でも開催されてきた『平成中村座』が、世界遺産登録30周年を迎える国宝・姫路城で初上演される。天守閣を望む三の丸広場に江戸時代の芝居小屋を再現した劇場が設けられるほか、伝統工芸や姫路の特産品などの店が軒を連ねる“三十軒長屋”も出店。勘九郎は「江戸にタイムスリップして芝居を楽しんでいるかのよう」と話す。今回は姫路城が舞台の「播州皿屋敷」、「天守物語」など『平成中村座』では初上演の演目も。なかでも七之助が演じる「天守物語」の妖かしの姫・姫路城の天守閣に棲む天守夫人富姫は、当代随一の女形といわれる坂東玉三郎が何度も演じてきた役とあり、「この姫路城公園がなければ、自分からやりたいと言えるような作品じゃなかった」と語る。そんな大きな覚悟を持って臨む今作品では、玉三郎が演出を担当。七之助は「玉三郎おじさまが付きっきりで稽古をつけてくださっている。そんな熱い思いを受け取っているので、身を引き締めてやらなければ」と意気込み、「僕の力だけでなく、姫路城のすばらしいパワーを借りて演じたい」と力を込めた。『平成中村座』を立ち上げた2人の父で歌舞伎俳優の中村勘三郎さんが亡くなってからおよそ10年。「大きな喪失感を覚えていましたし、父がいない、後ろ盾がないことでいろんなことがありました」と振り返った勘九郎は「それでもめげずに突き進めたのは、父を愛してくれたみなさまのサポートがあってのこと。その恩返しのためにも、いいものを作り続けなければならない」としみじみ。「父が残してくれた『平成中村座』は、僕たちが一生をかけて発展させていかなければならないという宝物で、宿題をもらったと感じています」と公演にかける思いを語った。今回の姫路城公演の前売りチケットはまもなく完売。今後立ち見席の発売も予定されているというが、勘九郎は「チケットをお持ちでない方に朗報です」と前置きし、『平成中村座』恒例のある演出について説明。「なので、タイミングを見計らって劇場の後ろに回ると……(笑)」と、思わぬものが見えてしまうかもしれない“裏技”をぶっちゃけて笑わせていた。
2023年03月16日2005年から毎年、中村勘九郎・中村七之助ら中村屋一門が全国を巡業、初めて歌舞伎を観る人も楽しめる演目で人気の『春暁特別公演』。元々は若いファンから“地方にいると交通費や宿泊費がかかって、なかなか歌舞伎を観に行くことが出来ない”という手紙をもらったことから、「自分たちから全国各地に足を運ぼう」とスタートした公演。今回も勘九郎がドラマで演じて話題となった「中村仲蔵」ゆかりの舞踊や美しい姫君の毛振り、素顔が垣間見えるトークコーナーなど見逃せない舞台となりそうだ。それぞれの見どころを勘九郎と七之助に聞いた。幕開けは、勘九郎と七之助、そして中村鶴松によるトークコーナーから。「客席の地元の方たちと、その土地ならではのお話ができるのが楽しみ。飾らない素の僕たちを見ていただけたら」と顔をほころばせる勘九郎。七之助もうなずきながら「何度も行っている土地ですと、必ず行く神社やなじみのお店もできるので、そこにまたうかがえるのも楽しみなんですよ」と話す。続いては、澤村國久や中村いてうをはじめとする中村屋一門が華やかにそろう『元禄花見踊(げんろくはなみおどり)』。桜が満開の上野の山に、武士や町人、若衆、遊女などが花見に集う様子を描く。勘九郎が「まずは華やかな衣裳を見て楽しんでいただいて」と言うと、七之助も「一緒にお花見をする気分でね」と微笑む。3つめの演目は、『仲蔵狂乱』。ドラマ『忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段』で勘九郎が仲蔵役を圧巻の迫力で演じきり、大きな注目を浴びたことは記憶に新しい。本作はその仲蔵ゆかりの演目だが、今では上演されることが少なくなっているのだという。「手前味噌なんですが、ドラマは歌舞伎関係者にも良かったと言っていただくことが多くて、すごく力になっています」と勘九郎。「ただ、この演目は仲蔵さんが出てくる作品ではなくて(笑)、人気の彼が踊ったからその名前が付いてしまったというもの。僕は、娘の小野小町を悪人から逃すため狂人の振りをする小野良実を演じます。当時の仲蔵さんが踊っていた振りというのが、今の舞踊とは少し違っていてなかなか難しいのですが、今回は貴重な機会と思って挑戦します」と表情を引き締める。最後は、七之助と鶴松の『相生獅子』。姫君が花や蝶に戯れる獅子の姿を踊るうちに獅子の精に取りつかれ、勇壮な毛振りでクライマックスを迎える。「お姫様の扮装で毛振りをするのは、バランスが取りにくくて大変ですね。姫君ですので脚を踏ん張るわけにはいかないですし(笑)。それでも鶴松と共に美しくお見せできれば」と七之助。その鶴松には「自主公演も見事にやり切って、今とてもいい時期。1つひとつの役に丁寧に挑んで、これからますます活躍していってほしい」と期待を寄せる。2023年も波に乗る勘九郎、七之助ら中村屋一門の華やかな『春暁特別公演』。ぜひ春の訪れを舞台と共に客席で味わってほしい。取材・文:藤野さくら
2023年01月04日2023年3月に全国12カ所で行われる『中村勘九郎 中村七之助 春暁特別公演2023』のオンライン合同取材会を12月14日(水) に実施。毎年恒例となった巡業への思い、そして各演目の解説、見どころを中村勘九郎、中村七之助が語った。2005年からスタートした〈春暁特別公演〉は、時期によって〈錦秋〉〈新緑〉〈陽春〉と銘打ち回を重ねながら、来春で18回目を迎える。これまでに行った公演を含めて、2022年の春には全国47都道府県を制覇するという偉業も成し遂げた。始まった当初は「こんなに長く続くとは思っていなかった」という勘九郎は、「過去の芸談コーナーで〈継続は力なり〉という話をしたこの巡業ですが、私たちはもちろん、中村屋の弟子たちも含め、みんなの力になっていますし、特別公演をきっかけに、歌舞伎座や中村座、他の劇場に足を運んで下さる新たなお客様が増えたことも、続けてきたおかげだと感じています。コロナがまだ不安定な状況ではありますが、来年も全国を巡業ができることは、本当にありがたいことだと思っております」。七之助は「今回も含めてコロナ禍で巡業を行うこと自体が難しかったり、歌舞伎座や東京、大阪といった大都市に行きづらいという地方のお客様も多いなか、私たちがいろいろな場所へ伺い、歌舞伎を見る機会を作ることできるのが、本当に嬉しいです。中村屋一丸となって、一生懸命良い舞台をみなさまにお見せできたら」と、思いを語る。中村勘九郎今回の『中村勘九郎 中村七之助 春暁特別公演2023』は、「トークコーナー」「元禄花見踊」「仲蔵狂乱」「相生獅子」で構成。勘九郎、七之助、鶴松が参加するトークコーナーについて、勘九郎は「全国どこに行っても歌舞伎に縁があったり、史跡があったりするので、地元の方たちとお話できることが和気藹々として楽しいですね。歌舞伎は伝統芸能で、堅苦しくて敷居の高いイメージがあるので、まずはお客様の心の壁を取っ払って演目を見ていただきたいという気持ちがあります。ですので、できるだけ素の部分というか、飾らないことを意識してお話をするように努めています」。七之助は「兄が言った通りで、地元のお客様と出会えることはもちろん、何度か伺った土地には、馴染みの店や必ず行く場所があります。私事ではありますが、私がMCを務めているラジオ番組のInstagramのために、劇場の近くの名所や神社、歌舞伎に縁のある場所に行くようにしてるので、トークの幅は広がったと思います。事前に頂いたお客様の質問を通じていろいろなコミュニケーションが取れるのがいいですね」とコメント。以前のように手を挙げた方と直接話すことは叶わない時期ながら、その土地ならではの話題が飛び出すトークコーナーを楽しみにしている様子だった。中村七之助「元禄花見踊」は春にぴったりの華やかな演目となる。七之助は「トークコーナーを経て〈春暁特別公演〉の歌舞伎、その踊りの一発目なので、何も考えずに綺麗なものを見ていただいて、その歌舞伎の世界観に入っていただこうかなと思うような踊りです。一緒に花見をするような気分でご覧いただければ幸いです」、勘九郎は「元禄期の男と女が華やかに踊るので、まずビジュアルが見どころ。衣装の美しさや当時の頭のかつらのゆい方を、目で楽しんで頂ける演目です」と紹介した。「仲蔵狂乱」の上演は、本興行では昭和35年の歌舞伎座以来。2021年にNHKで放送された「忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段」で中村仲蔵を演じた勘九郎にとっても縁のある演目と言える。出演する勘九郎は「なかなか本興行で出ない珍しい踊りを披露するのも、この特別公演のいい部分。仲蔵さんが出世をしていくサクセスストーリーは、落語や講談でも有名ですが、彼は志賀山流の養子になった踊りの名手です。いまでも〈仲蔵振り〉は受け継がれている、なかなかいない歌舞伎役者の一人でもあります。〈狂乱雲井袖〉という本外題ですが、中村仲蔵さんが出てくるわけではなく、でも仲蔵さんが有名だから仲蔵狂乱という名前が入ってしまうぐらいの狂言なんですね。とてもしっとりとした、私もあまり手掛けたことのないような踊りだと思います。気が狂っていると偽っている役なので、踊りの中でその部分と正常な部分を踊り分けて見せるのが見どころのひとつなのですが、すごい細かいんです(笑)。この難しい踊りを、現代のお客様にどれだけ楽しんで頂けるかが、踊り手の腕の見せ所。久しぶりの演目、そして仲蔵さんという私たちにとっても縁のある人物が演じた役ということで、楽しんでいただければと思います」と意気込んだ。ラストを飾る「相生獅子」は、七之助と鶴松が二人の美しい姫を演じる。七之助は「石橋物のなかでも古い作品で、前半はお姫様が二人出てきて華やかに女心だったり、口説きを見せる、品良く綺麗な格式高い踊りをご覧いただき、最後は獅子になって出てきます。お姫様の恰好で毛を振るという珍しい形の踊りなので、一つの相生獅子という演目のなかで、いろんなバージョンの二人が見れる作品です」と説明。「鶴松と二人でがっつり踊ることもなかなかないんじゃないかと思います」とのことで、そこも見どころとなりそうだ。公演を楽しみにしている方へのメッセージを求められた勘九郎は「コロナという流行り病が出てから早三年、日頃から何かに気を付けなければいけなかったり、これまでと勝手が違ったりするなかで、鬱々とした気分を持たれている方もいらっしゃると思います。本当に短い時間ではございますが、劇場で芝居を見ている間だけは、その気分を忘れて頂けるよう美しい世界に誘いたいですし、一生懸命私たちも切磋琢磨しようと思っています。春爛漫のひとときを楽しんで頂ければ嬉しいです」。七之助は「毎年恒例の巡業が今回もできる喜びを噛みしめながら、私たちの体調面やスタッフもコロナ対策バッチリで、安全安心に見ていただけるよう気を引き締めて参りたいと思います。全国12カ所24公演、一つ一つの公演を一生懸命踊りたいと思っておりますので、ぜひ足をお運びください。よろしくお願いします」と締めくくった。取材・文=長澤香奈撮影=福岡諒祠(株式会社GEKKO)<公演情報>『中村勘九郎 中村七之助 春暁特別公演2023』『中村勘九郎 中村七之助 春暁特別公演 2023』ビジュアル【演目】※上演時間約2時間予定1. トークコーナー中村勘九郎/中村七之助/中村鶴松2. 元禄花見踊 長唄囃子連中門弟 一同3. 仲蔵狂乱 長唄囃子連中小野良実(おのよしざね) 中村 勘九郎4. 相生獅子 長唄囃子連中姫 中村七之助姫 中村鶴松【日程・開催地】■2023年3月6日(月) 東京・北とぴあ さくらホール3月9日(木) 千葉・千葉市民会館 大ホール3月10日(金) 埼玉・川口総合文化センター・リリア メインホール3月11日(土) 東京・ティアラこうとう 大ホール3月12日(日) 長野・まつもと市民芸術館 主ホール3月13日(月) 神奈川・相模原女子大学グリーンホール 大ホール3月15日(水) 大阪・サンケイホールブリーゼ3月18日(土) 岩手・盛岡市民文化ホール 大ホール3月19日(日) 宮城・名取市文化会館 大ホール3月21日(火) 福岡・キャナルシティ劇場3月22日(水) 広島・広島文化学園HBGホール3月23日(木) 愛媛・松山市民会館 大ホール公式HP:
2022年12月24日猿若町発祥180年記念『平成中村座 十一月大歌舞伎』が、11月3日に平成中村座(浅草寺境内・仮設劇場)で初日を迎えた。「江戸時代の芝居小屋を現代に復活させ、多くの方々に歌舞伎を楽しんでいただきたい」という十八世中村勘三郎の思いから、2000年に誕生した平成中村座。2カ月連続公演のふた月目となる今月の第一部は、『寿曽我対面』『舞妓の花宴』『魚屋宗五郎』の古典作品が並び、江戸の芝居小屋を模した平成中村座でしか味わえない舞台となっている。そして第二部では、先月から引き続き、平成中村座で初となる新作歌舞伎、宮藤官九郎が平成中村座のために書き下ろした『唐茄子屋~不思議国之若旦那』と、華やかな舞踊『乗合船恵方萬歳』が上演される。『平成中村座 十一月大歌舞伎』は11月27日まで。なお新型コロナウイルス感染症の影響により、本日11月4日・5日公演は第一部・第二部ともに中止となっている。■中村勘九郎 コメント10月5日、浅草で4年ぶりとなる平成中村座の幕が開きました。初日の幕が開いたとき、お客様の拍手がすごくて、我々役者やスタッフだけではなく、皆さまも平成中村座を待っていてくださったんだと感じられて、とても幸せな気持ちになりました。連日、大勢のお客様に平成中村座へお越しいただき、小屋も喜んでいるように感じましたし、何より毎日平成中村座で芝居ができて嬉しかったです!そして、おかげさまで無事に千穐楽まで完走できたことに感謝です。稽古を経て、いよいよ、11月公演が始まりました。ふた月連続でご覧いただく『唐茄子屋』は、宮藤官九郎さんが今回の二か月連続公演のために書いてくださった新作、宝物のような作品です。幕が開くまでは、どんな反応なのかドキドキでしたが、大いに笑って楽しんでいただけているようで、本当に嬉しいです!11月にも古典作品が並びます。江戸の芝居小屋を模した平成中村座の空間で、古典の持つ魅力も合わせてご堪能いただきたいと思います。さて、すっかり寒さも増してまいりました。是非、11月は防寒対策をして浅草へ足をお運びください。平成中村座に一歩踏み入れれば、関係者一丸となって、熱い舞台空間をお届けします!皆様のご来場を心よりお待ちしております。<公演情報>猿若町発祥180年記念『平成中村座 十一月大歌舞伎』11月3日(木・祝)~27日(日) 平成中村座猿若町発祥180年記念『平成中村座 十一月大歌舞伎』ビジュアル【演目】■第一部一、寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)出演工藤祐経:中村橋之助曽我五郎:中村福之助曽我十郎:中村歌之助化粧坂少将:中村鶴松小林朝比奈:中村虎之介大磯の虎:坂東新悟鬼王新左衛門:中村勘九郎二、舞妓の花宴(しらびょうしのはなのえん)出演白拍子和歌妙:中村七之助三、新皿屋舗月雨暈 魚屋宗五郎(さかなやそうごろう)出演魚屋宗五郎:中村勘九郎召使おなぎ:坂東新悟磯部主計之助:中村橋之助小奴三吉:中村歌之助菊茶屋娘おしげ:中村鶴松菊茶屋女房おみつ:中村歌女之丞父太兵衛:片岡亀蔵女房おはま:中村扇雀■第二部一、唐茄子屋(とうなすや)不思議国之若旦那作・演出:宮藤官九郎出演若旦那徳三郎:中村勘九郎傾城桜坂/お仲:中村七之助第二太夫/源六倅源助:坂東新悟大工の熊:中村橋之助半公:中村福之助眠 善治郎:中村虎之介若旦那(小):中村勘太郎お仲倅イチ:中村長三郎丹生林/海苔屋のおたね:中村鶴松山崎屋おりき:中村歌女之丞達磨町の八百八/吉原田んぼのあめんぼ:荒川良々番頭小辰/吉原田んぼの蛙ゲゲコ:片岡亀蔵大家源六:坂東彌十郎八百八女房よし/吉原田んぼの蛙ゲコミ:中村扇雀二、乗合船恵方萬歳(のりあいぶねえほうまんざい)出演萬歳:中村扇雀才造:中村勘九郎白酒売:中村七之助大工:中村橋之助若旦那:中村虎之介芸者:中村鶴松角兵衛獅子:中村歌之助角兵衛獅子:中村福之助女船頭:坂東新悟田舎侍:片岡亀蔵通人:坂東彌十郎チケット情報はこちら:※新型コロナウイルス感染症の影響により、11月4日(金)・5日(土) の公演は第一部・第二部ともに中止。最新の情報は公演公式サイトにてご確認ください。
2022年11月04日平成中村座が4年ぶりに浅草に帰ってくる。江戸時代の芝居小屋を復活させたいという十八世中村勘三郎の思いが具現化され、まさに時空を超えたエンターテインメントを体感できるあの小屋で、今回は10月・11月の2ヶ月連続の上演が実現するのである。しかも、宮藤官九郎による新作歌舞伎『唐茄子屋〜不思議国之若旦那〜』が登場する。話題になること間違いなしのこの公演。中村勘九郎と中村七之助が二人揃って自信を見せた。様々なイベントが中止を余儀なくされているこの3年弱。平成中村座も例外ではなく、19年の小倉城勝山公園での上演が最後になっていたが、復活を望む多くの声に応え、まず浅草寺境内での上演が実現する。序幕には、10月は『双蝶々曲輪日記角力場』、11月は『寿曽我対面』と、ともに若手が活躍する演目を用意。勘九郎が言う。「うちの父(勘三郎)は平成中村座で必ず試演会を行って若手が活躍する場を作って、私たちも多くを教わってきました。今度は私たちがその場を作っていければと」。「コロナ禍で演じる場がなくなっていましたからなおさら、必要だと思ったんです」と七之助も答える。宮藤官九郎が作・演出を手掛ける『唐茄子屋〜不思議国之若旦那〜』は、「唐茄子屋政談」を中心とした古典落語に「不思議の国のアリス」の要素を入れた新作歌舞伎。「台本を読んで『これどうやるんだろう』と思ったんですけど(笑)、そんな悩みが出るものほど面白くなるんです」と勘九郎が太鼓判を押せば、七之助も「歌舞伎役者たちがついていけるかなと心配になるほど面白い」と話し、「宮藤さんは、僕たちに好きにやらせてから細かく演出をつけてくださるので、まず自分たちのやるべきことを一生懸命やらないと」と気合いを入れる。他の演目は、10月に『極付幡随長兵衛』11月に『魚屋宗五郎』と、「見取狂言にこだわった父の遺志を継いだ演目を選びました」と勘九郎。通し狂言ではなく見どころの多い幕を選んで上演することで、より気軽に楽しんでもらいたいという思いがそこには込められている。他にも、10月の『綾の鼓』、11月の『舞妓の花宴』『乗合船恵方萬歳』といった舞踊も揃う。「平成中村座は、いい意味で緊張感がない空間。お客様も参加する感じになって、同じ演目でも楽しさが倍増するという不思議な魅力があるんです」と七之助。勘九郎も「ここは何でもできる場所。小屋ならではの演出も楽しんでいただきたい」と胸を張る。芝居を観るという喜びがあふれる空間になりそうだ。公演は10月5日~27日、11月3日~27日まで浅草・平成中村座にて。10月公演のチケットはチケットぴあにて発売中。(取材・文:大内弓子)
2022年09月16日松本幸四郎、市川猿之助、中村勘九郎、中村七之助そして坂東彌十郎、中村扇雀と毎年“納涼歌舞伎”を彩ってきた出演者に、フレッシュな花形が加わった歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」が8月5日に開幕した。ここではそのレポートをお届けする。第一部は、手塚治虫の漫画が初めて歌舞伎になるとあって初日前から話題の新作歌舞伎『新選組』。原作の漫画『新選組』は昭和38(1963) 年1月から10月まで『少年ブック』で連載された作品で、“漫画の神様”とも称される手塚治虫が生み出した魅力的なキャラクターが活躍する歴史ドラマ。本公演では主人公の深草丘十郎を中村歌之助、その親友・鎌切大作を中村福之助が勤める。第一部『新選組』左より、深草丘十郎=中村歌之助、鎌切大作=中村福之助時は幕末。父親の仇を討つため新選組に入隊した深草丘十郎と謎を秘めた少年剣士・鎌切大作の友情と少年の成長を軸に物語は展開。幕が開くと、舞台には漫画の世界を現した印象的な舞台美術が配され、手塚治虫の漫画でおなじみのキャラクターも舞台の随所に散りばめられていた。歌舞伎座初主演となる歌之助は登場の瞬間から溌溂と丘十郎を演じ、瑞々しい姿で客席を魅了。「苦難を乗り越えていく丘十郎というひとりの少年の姿を通して、お客様に何かを感じ取っていただければ」と真摯に語った思いを感じる熱演を見せた。丘十郎の親友・大作を演じる福之助は「手塚先生が描いた鎌切大作という人物になるべく近づけるよう、大事に演じたい」と語った通り、自身にぴったりと合った大作を丁寧に舞台上に表現し、丘十郎との対比がそれぞれのキャラクターをより印象的にしている。兄弟だからか何事も「間」が合う、と話していたふたりによる息の合ったスピード感のある立廻りや、汁粉屋でほっとひと息つく姿も印象的。様々な経験を重ね成長していく若者たちを見守る中村勘九郎演じる近藤勇、中村七之助演じる土方歳三ら新選組隊士たちひとり一人の存在が物語を深め、芹沢鴨を演じる坂東彌十郎と坂本龍馬を演じる中村扇雀が舞台上に現れるとグッと舞台の密度が上がった。第一部『新選組』左より、近藤勇=中村勘九郎、深草丘十郎=中村歌之助、鎌切大作=中村福之助、土方歳三=中村七之助、沖田総司=中村虎之介客席には若い世代の観客も多く、これまで納涼歌舞伎を盛り上げてきたメンバーと若い花形メンバーの新しいものを作り上げていく団結力を感じる、“納涼歌舞伎”らしい公演に客席からは大きな拍手が送られた。続いては、妖怪たちが活躍する舞踊『闇梅百物語(やみのうめひゃくものがたり)』。舞台は『百物語』が行われているとある大名屋敷。辺りが怪しげな雰囲気に包まれると、宙に浮く一本足の傘に、狸や河童など個性豊かな妖怪たちが次々と登場。艶やかな美しさの雪女郎(中村七之助)に続けて中村勘九郎、中村勘太郎、中村長三郎が演じる骸骨たちが登場すると可愛らしくもユーモラスな姿に会場は大盛り上がり。最後に現れたのは百鬼夜行の読本を持った読売。実はこの読売の正体は……。『百物語』の怪異に始まり、個性豊かな妖怪たちの踊りなどみどころが続く夏にぴったりの演目となった。第一部『闇梅百物語』左より、河童=中村虎之介、傘一本足=中村種之助、狸=中村橋之助松本幸四郎、中村勘九郎の組み合わせで35年ぶりの上演第二部は、『安政奇聞佃夜嵐(あんせいきぶんつくだのよあらし)』で幕を開ける。本作は明治の初めに実在した脱獄事件をもとに、大正3(1914) 年に古河新水(十二世守田勘弥)が、時代設定を世情不安定な安政期に改め、書き下ろした世話物。六世尾上菊五郎と初世中村吉右衛門、二世尾上松緑と十七世中村勘三郎、当代菊五郎と二世吉右衛門といったコンビで上演されてきた本作を、今回は松本幸四郎の青木、中村勘九郎の神谷という組み合わせで実に35年ぶりに上演される。第二部『安政奇聞佃夜嵐』左より、神谷玄蔵=中村勘九郎、青木貞次郎=松本幸四郎舞台は冬の人足寄場。苦役の日々を過ごす青木貞次郎と神谷玄蔵は隅田川を渡り島抜けしようと計画する。泳ぎが得意な青木と泳ぎが苦手な神谷のふたりが何とか隅田川を渡っていく場面では、幸四郎と勘九郎のコンビならではの面白み溢れるやりとり、どこか憎めない可愛らしさすら漂う様子に会場もクスリ。「幸四郎さんと僕の強みのひとつは可愛らしさだと思っています。」と勘九郎が話した通りのチャームポイントを活かした絶妙なコンビの魅力を見せた。第二部『安政奇聞佃夜嵐』左より、青木貞次郎=松本幸四郎、神谷玄蔵=中村勘九郎ともに脱獄を果たしたふたりは路銀調達のため悪事を重ねると、青木は神谷と別れ故郷甲州へ。そこで青木は渡し守の義兵衛一家と出会うが……。これまでの上演でも人気を博したふたりが川を泳いで脱獄する場面は一面に浪布を使った歌舞伎ならではの演出も必見。そして前半の脱獄劇から物語は進み、親の仇討ち、埋蔵金も絡み合い後半に進むにつれて予想外にスリリングな展開を見せていく。「生の舞台で、勘九郎さんと僕のふたりの芝居で芸をお見せして、歌舞伎を堪能していただきたい」と幸四郎が初日に向けて寄せたコメントの通り、最後の最後まで見逃せない見ごたえのある物語、歌舞伎らしい演出で客席を魅了した。続いては、澤瀉十種の内『浮世風呂(うきよぶろ)』。「澤瀉十種」のひとつで、洒落た味と軽快な動きがみどころの舞踊だ。小粋な三助政吉を市川猿之助、艶っぽい女なめくじを市川團子が勤める。幕が開くと、朝日が差し込む風呂屋でせわしなく働く三助政吉。風呂屋で働く三助の粋な様子を猿之助が軽快に見せていく。そこへいつのまにやら現れたのは、女の姿をしたなめくじ。なめくじは粋な三助に惚れ、口説きにかかりるが……。惚れた三助にすり寄っていくなめくじの様子や、それに驚き逃げる三助の滑稽さが面白く、テンポよく踊り進めていく様子が目にも耳にも心地よいひと幕に客席からは大きな拍手が送られた。第二部『浮世風呂』左より、三助政吉=市川猿之助、なめくじ=市川團子本水の演出も復活した夏の風物詩『弥次喜多』第三部は『東海道中膝栗毛 弥次喜多流離譚(やじきたリターンズ)』。弥次郎兵衛と喜多八が東海道を旅する『東海道中膝栗毛』を下敷きに平成28(2016) 年より松本幸四郎の弥次郎兵衛、市川猿之助の喜多八という新たなコンビで練り上げられ、毎年上演されてきた本作。今では歌舞伎座の夏の風物詩となっている。3年ぶりの歌舞伎座での上演となる今回は、前回、伊勢神宮の花火で天高く打ち上げられてしまった弥次喜多のふたりが辿り着いた遠く離れた無人島から始まる。弥次喜多のふたりは無人島から何とか長崎までたどり着くと、古巣である歌舞伎座の閉館の危機を救うため歌舞伎座を目指す。幸四郎と猿之助の弥次喜多は今回も安心感ある名コンビぶりを発揮。久々の上演とあって、ふたりが舞台上に登場すると客席からは「待ってました!」と言わんばかりの熱烈な拍手が送られた。第三部『弥次喜多流離譚』左より、弥次郎兵衛=松本幸四郎、喜多八=市川猿之助ふたりは冒頭の場面から阿吽の呼吸で縦横無尽に舞台を駆けまわり、観客を奇想天外な“弥次喜多ワールド”に引き込む。歌舞伎ファンなら「あっ!」と気づく名作のパロディがいたるところに盛り込まれ、予想外の展開に驚きの連続で飽きる間が無く次の場面へ。好評を博した配信版の図夢歌舞伎『弥次喜多』の舞台“家族商店”の登場も見逃せない。弥次喜多シリーズに欠かせない市川染五郎と市川團子のふたりは、これまで演じてきた梵太郎と政之助に加え、今回弥次喜多シリーズでは初の女方の役にも挑戦し、早替りで二役を華麗に演じ分ける。染五郎演じるオリビア、團子演じるお夏が、ともに可憐な姿を見せ淡い恋模様を描く場面もあり、これまでにない新たな魅力を発揮した。第三部『弥次喜多流離譚』左より、弥次郎兵衛=松本幸四郎、娘オリビア=市川染五郎、娘お夏=市川團子、喜多八=市川猿之助歌舞伎座ではコロナ禍以降初となる本水の立廻りも解禁。大量の水を使った滝の中を弥次喜多のふたりが激しく立廻り、涼を感じる演出に客席は大興奮。「弥次喜多」シリーズおなじみのメンバーも総出演で久々の歌舞伎座での上演を盛り上げる。今年92歳となる市川寿猿もゴンドラでの宙乗りを披露(ギネス申請中とのこと!)し、元気な姿を見せた。弥次郎兵衛、喜多八、そして梵太郎、政之助の4人が宙乗りを披露すると、客席の盛り上がりは最高潮に。コロナ禍からの復活への願いを込めた舞台に客席は明るく晴れやかな空気に包まれた。第三部『弥次喜多流離譚』家族商店店長寿知喜=市川寿猿写真提供:松竹(株)※無断転載禁止
2022年08月08日歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」第二部『安政奇聞佃夜嵐』が8月5日から東京・歌舞伎座で上演されるのに先駆け、物語の主人公となる青木と神谷を演じる松本幸四郎、中村勘九郎のコメントと2ショット写真が到着した。本作は明治の初めに実在した脱獄事件をもとに、大正3(1914)年に古河新水(十二世守田勘弥)が、時代設定を世情不安定な安政期に改め、書き下ろした世話物。人足寄場(監獄)で苦役の日々を過ごす青木と神谷の2人が隅田川を渡る脱獄を計画するところから物語は始まり、2人が隅田川を泳いで脱獄するシーンは、青木と神谷による面白味あふれるやりとりが人気の名場面となっている。本作について幸四郎は「曽祖父の初代吉右衛門と六代目菊五郎で上演しているのに、知っているのは島抜けの泳いでいくところくらいで、そこが昔からすごく気になっていました(笑)。その場面の写真は「菊・吉」といえば必ず出てくるものだったので。勘九郎さんと一緒にやりたいお芝居の最たるもので、その機会がきて本当に良かった!なんでかは分からないけれど(笑)」とコメント。勘九郎は「『島抜け』というワードが出てきた時に、子供の頃に六代目(菊五郎)の曽祖父の写真集で、おじい様の泳いでいる姿と播磨屋さんが水を怖がっている写真を見て、子供心にも面白くて惹かれたのを思い出しました。子別れや敵討ちもありますが、歌舞伎ならではのばかばかしさもあって、『歌舞伎』が詰まった作品ですよね。引いて見るとちょっと間抜けな人たちの話ですが、頑張って生きている人の姿が短いなかに詰まっている気がします。」と語った。(C)松竹また「島抜けの場面の、泳げる青木と泳げない神谷の関係性をどう見せるか。『〇〇島からの脱出!』みたいな壮大な感じではないけど(笑)。やっぱりこの二人ならではの息であったり、お客様がそこで安心する、共感する意味での反応を貰える芝居にしたい。上演をあまりいろんな方でやられていない作品だからこそ、これは二人でしかできないだろというところを目指したいですね。勘九郎さんと僕の二人の芝居で歌舞伎を堪能してもらいたい!季節感をさしおいてでも、今一番そこを楽しんでいただける作品ではないかと思っています。役者が生で、舞台で、お芝居をする、芸をお見せする、それをお客様に堪能していただくというところを目指して選んだ作品です。」(幸四郎)、「幸四郎さんと僕には『かわいらしさ』があると思うんですよね(笑)。悪いやつなんだけど、どこか憎めないチャーミングさが出せたらいいなと。僕が演じる神谷は水がだめなんですが、川を渡る場面で幸四郎さん演じる青木が神谷を『安心させる』とト書きがあるので、今回は青木がいったいどう安心させてくれるのか楽しみにしてます(笑)」(勘九郎)とそれぞれ意気込みを寄せている。(C)松竹<公演情報>歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」第二部『安政奇聞佃夜嵐』8月5日(金) ~30日(火) 東京・歌舞伎座出演:松本幸四郎(青木貞次)、中村勘九郎(神谷玄蔵)ほか歌舞伎座 公式サイト:
2022年08月04日