●2014年度は1兆9,000億円 - 冷え込むAV・IT市場にソニーが見出す活路ソニーマーケティングの河野弘社長は、年末商戦の取り組みについて説明。「カテゴリー内での変革による市場活性化」をソニーの取り組み領域に定め、4Kテレビ、デジタルカメラ、ハイレゾリューションオーディオの3つの製品を重点的に販売していく姿勢を改めて強調した。国内コンシューマ向けAVおよびIT市場は、2010年度には4兆3,000億円であったものが、地デジ移行後のテレビ需要の低迷を背景に、2012年度以降は約2兆円で推移。2014年度は1兆9,000億円と、さらに縮小することが見込まれている。河野社長は、「ここ数年は新たなカテゴリーの製品が登場して、市場成長を牽引するといった状況ではない。既存カテゴリーにおいて、トランスフォーメーションを行うことで、いかに成長をしていくかを考えるフェーズにある」と前置きし、「ソニーはテレビ、デジタルカメラ、オーディオという3つの既存領域において、高付加価値戦略を打ち出し、年末商戦での成長を図る」と、2014年の年末商戦の基本姿勢を示した。○進む4Kテレビ化 - 台数ベースでの販売比率は10%までの引き上げを目指すテレビにおいては、4Kテレビを軸にした展開をさらに加速させる。ソニーマーケティングでは、今年9月に年末商戦向けの販売戦略について、量販店などと情報を共有する「総合提案会」を開催。ここで、4Kテレビの販売比率を台数ベースで10%にまで引き上げる方針を示したという。「2013年10~12月の4Kテレビの販売比率は1%。100台に1台しか、4Kテレビが売れなかった。直近ではこれが3%程度まで上昇している。しかし、2014年10~12月の年末商戦で4Kテレビを10%の販売構成比にまで引き上げれば、平均単価が上昇し、金額ベースでは前年実績を上回ることができる。最低でも6%の販売比率にまで4Kテレビを引き上げていきたい」と語る。4Kテレビが10%の構成比にまで拡大すれば、テレビ1台当たりの平均単価は、2013年第3四半期の6万7,760円から、2014年度第3四半期は7万5,100円と拡大する。「台数成長が望みにくい市場において、いかに4Kによる付加価値提案を行っていくかが鍵になる」とする。ソニーマーケティングでは、今年9月以降、販売店向けの勉強会を実施し、4Kテレビの訴求ポイントについての情報を共有する一方で、店頭においては2K(フルHD)テレビと4Kテレビの比較展示や、4Kのパーソナルコンテンツを活用した付加価値提案、細かい写真映像による地図データや、「4K仮面を探せ」という店頭用の販促コンテンツを用意して、4Kの高精細を訴求してみせた。その結果、11月最終週においては、4Kテレビの販売構成比が8.3%にまで拡大。46型以上の大型テレビの領域では、38.3%にまで拡大した。「現時点ではテレビ全体の10%にまで届いてはいないが、販売台数、販売金額ともに前年実績を超えており、狙い通りの結果が出ている。これから12月の年末商戦本格化に向けて、10%の販売構成比に進む手応えを感じている」と、河野社長は今後の4Kテレビの販売拡大に自信をみせた。○α7をはじめとする高付加価値モデルで立ち位置を作るデジタルカメラについては、「ソニーは、この分野ではまだまだ挑戦者である。カメラメーカーとしての立ち位置を作っていくことに力を注いでいく」とするものの、これまでの年末商戦前哨戦では一定の成果があがっているようだ。ソニーのカメラ戦略の柱となるフルフレームモデルを「α7シリーズ」として、それぞれに特徴を持った製品としてラインアップ。また、4Dフォーカス戦略を打ち出す「α6000シリーズ」や、イメージセンサーの強みを生かしたレンズスタイルカメラ、高機能コンパクトデジカメとしてラインアップを広げている「DSC-RX100シリーズ」といった製品群を取り揃えていることに加えて、αシリーズユーザーの撮影スキル向上、レンズ体感の場として、セミナーや撮影会を行う「αカフェ体験会」を全国各地で実施。「α購入者にどれだけ使っていただくか、といったところにフォーカスし、αファンを作っていくことに力を注いでいる」という。量販店の販売スタッフがαシリーズを使って撮影した写真を店頭に貼り出し、接客ツールとして利用するといった取り組みも展開。さらに店頭展示ではレンズのラインアップを重視するといったことにも取り組んだという。「ソニーはレンズのロードマップを公開し、本体の価値を上げることに力を注いでいることを訴えるのと同時に、安心して使ってもらえることを訴求した。2013年4月には、5%強だった交換レンズのシェアは、2014年9月には15%を超えるところにまで拡大し、10ポイントも上昇している。150万台を超えるαユーザーに支えられたことが大きい。カメラメーカーとしてのポジションを確立してきた」などと述べた。●広がる「ソニーといえばウォークマン」と「ハイレゾ=ウォークマン」の認識そして3つめのオーディオに関しては、ハイレゾオーディオが軸となる。なかでもウォークマンによるハイレゾ提案が今年の年末商戦の鍵になる。河野社長は、「ソニーから何を想起するかという質問に対しては、ウォークマン、あるいはオーディオと回答する若い人たちが増えている。これはソニーにとってうれしいことである」としながら、「2013年に発売したハイレゾオーディオは、まだコアユーザーや高音質にこだわる音楽好きのユーザーが中心だった。だが今年は、音楽好きユーザーのボリュームソーンにもハイレゾオーディオが広がると考えている」と、裾野の拡大に期待する。河野社長は「2014年11月に発売したウォークマンAシリーズは音にも、価格にも、デザインにもこだわるユーザーに対して訴求できる製品。年末商戦では、ウォークマンの販売台数のうち、4台に1台をハイレゾにしたい」と意気込んだ。ここでは、全国40カ所の販売店店頭において、ハイレゾ専用ブースを設置。来店客にコンテンツを視聴してもらえる環境を作った。「音は目に見えないため、体験してもらうことが重要。売り場には、ハイレゾ対応ヘッドホンも展示し、同時に体験してもらうことで、ハイレゾの良さを実感してもらえるようにした。さらに、moraによるハイレゾコンテンツのダウンロードランキングも最新のものを店内に掲載するようにした。こうした地道な取り組みが効果につながっている。販売店からも、オーディオ売り場を活性化する材料として、ハイレゾへの注目が高まっており、ハイレゾ対応ウォークマンを起爆剤にしたいという声もある」と、河野社長は語る。その一方で、ハイレゾに対する認知度も高まっており、そのなかでも「ソニーは、ハイレゾ」というイメージ作りが定着しはじめているという。「ハイレゾに関するつぶやきを見ていると、製品名では半数近くがウォークマンという名前に触れられており、moraをはじめとするダウンロードサイトに関する固有名詞についても、ずいぶん触れられている。ブランドという観点では、ソニーと書いてもらえるケースが70%を超えている。機器、コンテンツ、ブランドという点で、ハイレゾ分野におけるソニーの認知度が高まっている」と述べた。実際、年末商戦前哨戦では、ハイレゾオーディオの販売は好調だという。河野社長によると、11月上旬のウォークマンAシリーズの発売日を含む週にはハイレゾ対応製品の構成比が5割近くまで上昇。瞬間風速としては、購入されるウォークマンの2台に1台がハイレゾという状況になったという。11月最終週ではハイレゾの構成比は約3割だというが、「年末商戦に向けて、"ハイレゾ=ウォークマン"というトレンドができはじめている。音のカテゴリーにおいては、新たな音の提案によってトランスフォーメーションをしていく。ヘッドホンの販売も増加しており、ハイレゾが後押ししているのがわかる。既存領域において、ハイレゾという新提案によって、新たなビジネスが生まれていることの証」と語った。○ソニーファンが増えているという手応えを感じているソニーマーケティングでは、「カスタマーマーケティング」を事業戦略の中心に置いている。「これまでの手法は、メーカーによるプロダクトマーケティング、販売会社によるチャネルマーケティングが中心であったが、ソニーマーケティングが目指すのは、顧客を知ることにフォーカスしたカスタマーマーケティングだ」という。効果としては「プロダクトマーケティングとチャネルマーケティングの成果を最大化させることができ、マーケティングおよびセールスを次のレベルに引き上げることができる」と河野社長は説明する。また、「付加価値販売こそが、ソニーが市場で存在するための唯一の方法。カスタマーの価値を重視した取り組みを行っていく」とする。カスタマーマーケティングの具体的な戦略として、会員制度であるMy Sony Clubを中心としたカスタマリレーション活動の推進、製品オーナーへの使いこなし提案、東京、名古屋、大阪にあるソニーストアを通じた「濃い顧客体験」の提供をあげる。特に河野社長が言及したのが、製品オーナーへの使いこなし提案による成果だ。ここでは、社内で「P3」と呼ぶ活動を行っていることを明らかにした。P3とは、購入後3カ月(Post Purchase)のことを指し、この期間を購入者へのメール配信において、関心を惹くために重要な期間と位置づけている。河野社長いわく「購入した製品を使いこなしてもらい、製品の楽しさを最大化するためのダイレクトメールアプローチ」が、このP3ということになる。ここでは、製品購入のお礼とともに、製品を使いこなすための情報提供、開発者のこだわりなどの購入者に響く情報、さらには買い増しすると便利になる周辺機器などの情報を提供する。河野社長は、ソニー製品の購入者を対象に実施したP3の成果を初めて公開。ソニーユーザーが高いロイヤリティを持っていること、さらにはこの取り組みを通じて、新たな製品購入に結びついていることなどを示した。α7シリーズのユーザーを対象にしたP3では、4,340人にメールを配信。そのうち3,808人がメールを開封した。さらに、メールに掲載されたURLをクリックした人は3,214人に達したという。開封率は88%、クリック率は74%という驚くほど高いレートとなっている点が特筆できよう。また、これらのメールを受け取った人を追跡したところ、メール効果によって、レンズやアクセサリーを追加購入した金額は5億8,000万円に上ると算出した。同様にウォークマンの購入者を対象にしたP3では、2万8,002人にメール配信。2万1,036人が開封、1万1,546人がクリックしたという。開封率は75%、クリック率は41%と、これも一般的なダイレクトメールよりも、極めて高いレートとなっているのがわかる。そして、追加購入アイテムとしては、ワイヤレススピーカーや2台目のウォークマン、さらにはタブレットの購入が上位に入り、メール効果による追加購入金額は7億5,000万円に達したという。河野社長は最後に、「ソニー製品を購入していただいた方々に、いい製品を購入したと満足していただくと同時に、ソニーのひとつの製品だけのユーザーではなく、ソニー全体のユーザーとして、サービスを提供していきたい。ソニーマーケティングのミッションは、ソニーファンの創造。こうした取り組みを通じてファンを増やしていく。厳しい市場環境にあるが、同時に、ソニーファンが増えているという点での手応えを感じている」と語った。
2014年12月09日デビュー作『カケラ』が国内外から高い評価を受けた新進監督の安藤桃子と、出演作ごとに圧倒的な存在感を放つ女優の安藤サクラ。実の姉妹であるふたりは“いつか一緒に映画を”との想いを互いに抱いていたという。その姉妹の想いがこのたび結実した。その他の写真安藤桃子監督の長編第二作にして主演に安藤サクラを迎えた『0.5ミリ』は、監督自身が書き下ろした同名小説の映画化。自身の介護経験に着想を得た物語は、当初から妹を想定して書き上げたという。「私がひとつなにか物語を創作しようとなるとき、いつも主人公はサクラなんです。実はデビュー作の『カケラ』もそう。ですから、小説の段階から“映画化したときの主人公はサクラで”と思っていました」(桃子)「そのことを姉から聞いて、小説はすぐに読みました。以前から姉は“次は一緒に映画を撮る”と決めていたので、それがついに実現できるのがうれしかったです。それにこの主人公は俳優としてもすごく憧れる主人公像。全力で“サワ”という人物を表現して、この作品で姉妹最強タッグを組みたいと強く思いました」(サクラ)安藤サクラ演じるのは、情の厚い介護ヘルパーの山岸サワ。“冥土の土産におじいちゃんと一緒に寝てもらえないか”との依頼を断りきれなかったばっかりに仕事もお金も家も失ってしまった彼女は生活のため、今度は困っている老人宅に居候する“おしかけヘルパー”となる。作品は、そんな彼女と老人たちの織り成す笑いあり涙ありの人情ドラマから、高齢化や格差といった現代日本の問題が透けて見えてくる。「姉はいろいろなところにアンテナを張っている。改めてすごい人だなと思いました」(サクラ)ただ、そういった社会風刺の効いたドラマである一方で、実に魅力的なヒロイン映画でもあるといいたい。196分の長さなど気にしないでほしい。なぜなら、おそらく山岸サワ=安藤サクラから目が離せなくなるから。今まで見たことがないチャーミングな安藤サクラがここに存在する。「私は生まれたときからサクラをずっと見てきた。彼女にはまだ隠された魅力がたくさんある。今回、その一端は引き出せたかなと思っています」(桃子)父・奥田瑛二、母・安藤和津という両親と同じようでいて重ならない、独自の道を歩み始めた安藤桃子とサクラの姉妹。今後のさらなる飛躍が期待されるふたりの互いの感性が存分に発揮された1作に注目したい。『0.5ミリ』公開中※取材・文・写真:水上賢治
2014年11月12日女優の安藤サクラが11月8日(土)、姉・安藤桃子監督と初タッグを組んだ主演映画『0.5ミリ』の初日舞台挨拶に、安藤監督と共演の津川雅彦とともに登壇。エグゼクティブプロデューサーに父・奥田瑛二、フードスタイリストに母・安藤和津、共演に義父母の柄本明&角替和枝と、家族一丸となって取り組んだ渾身作の公開に感激し、こらえきれず涙を流した。「超カッコ悪い。やだー(笑)!」と照れ笑いを浮かべたサクラさんは、「まさかこんなにたくさんの人が来てくださるなんて思いもせず、緊張の糸がブツンと切れた。泣いているブサイクな写真じゃなくて、可愛いの使ってください!」と報道陣に懇願した。本作は、安藤監督が自身の介護経験から着想を得て書き下ろした小説の映画化。ワケありの老人を見つけては介護を買って出る“おしかけヘルパー”サワ(サクラさん)の旅路を描いたロードムービーだ。先日、結婚と妊娠が明らかになったばかりの安藤監督は、「今マラソンを走り切ったような清々しい気持ち。この映画の生命力が光となって東京を飛び出していってくれたら嬉しい」と感慨深げ。司会を務めた奥田さんは、「結婚、妊娠とおめでたい。お父さまにもよろしくお伝えください」と冗談交じりにツッコミ、会場の笑いを誘っていた。津川さんは、初共演のサクラさんを大絶賛。「これまでになかった良い味が出てる。すごい女優だなってつくづく思った。この子の感性、生き様が素敵!」と褒めちぎり、「一人は結婚、妊娠。もう一人は緊張のあまり泣く。青春ですよ」と微笑ましげに姉妹を見守った。本作で新たな魅力を開花させたサクラさんは、「サワちゃんという役は、おじいちゃま方のところにズカズカと入っていかないといけない。緊張したけれど津川さんのことも“ジジイ”と思って接した(笑)。イチ女優としても、イチ生物としても贅沢で貴重な時間を過ごしました」と手応えを語った。『0.5ミリ』は全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)
2014年11月09日