全10話からなる三遊亭白鳥作の「任侠流れの豚次伝」を柳家三三が五か月連続で披露する。大阪は8月9日(木)から大阪・ナレッジシアターでスタート。埼玉県秩父の養豚場で生まれた子ブタの豚次が、出会いや別れ、戦い、そして友情に支えられ、おのれの運命を切り開きながら任侠の道を生きていく。流れ着くのは香川・金毘羅。秩父から金毘羅までを縞の合羽に三度笠で旅をする、任侠・豚次の壮大な成長物語だ。またたびさんざ 柳家三三 四都市 五ヶ月連続独演会 三遊亭白鳥作「任侠流れの豚次伝」チケット情報昨年、大阪、名古屋、福岡で初の6か月間連続独演会を行った三三は、一話完結ではない、続き物の落語の楽しみ方を提供することができたという。「今年は続き物でも違うパターンを。三遊亭白鳥師匠の新作落語で、一言でいえば豚が男を磨く物語です」。毎月1回、二話ずつ口演。一話だけでも、途中からでも楽しめる内容になっているが、毎回、あらすじや相関図を記した自作のパンフレットも用意し、噺の世界へといざなう。「登場するのは動物だけですが、キャラクターが多彩なので、各回とも飽きずに見ていただけると思います。任侠ものなので闘うシーンもあるのですが、ブタ対サルとか、ブタ対ネコとか。ブー!とかキー!とか呻いているだけの時間もあって、どんな感じか想像していただけるとさらに面白いと思います」。作者の三遊亭白鳥は創作落語の名手でもある。その魅力を問うと、「設定はハチャメチャですが、物語が実に緻密にできていて、セリフも無駄なものがないんです。出てきた要素を全部、回収していきます。演じていても“ああ、なるほど”と。笑いの要素も多いです」と三三。一方の白鳥は「三三が演じると物語の形が整う」と話しているようで、白鳥が生んだ物語を三三が成長させると、その様はまるでカッコウの托卵だと笑う。「白鳥師匠の落語は味付けが濃いですし、朝昼晩と濃厚なラーメンを食べるような感じですが、そこも楽しんでいただけたら。落語会の醍醐味はお客様が笑ったり、手を叩いたりして生まれる空間があることです。お客様のリアクションによって次にどう表現しようか変わってくる。この連続独演会も毎回違ったライブになることを楽しみにしています」と三三。「任侠流れの豚次伝」は12月まで続く。取材・文:岩本和子
2018年08月08日村上春樹が翻訳して日本に送り出し、今でもカルト的人気を誇る作家・レイモンド・カーヴァーの短編小説が、リーディング公演『レイモンド・カーヴァーの世界』として9月1日(土)、2日(日)に兵庫県立芸術文化センターで上演される。日によって朗読作品と俳優が異なる本公演で、1日に出演する水夏希に話を聞いた。「レイモンド・カーヴァーの世界」チケット情報シンプルで乾いた大地のような力強い文体が特徴のカーヴァーは短編小説の名手として知られ、今年で没後30年を迎える。「私は初めて読んだのですが、描写がワンクッションあってストレートじゃない。文体も変わっていて何回も読み直しました」と話す。水が朗読するのは『足もとに流れる深い川』という短編。アメリカで平凡な生活を送る主婦のクレアは、夫のスチュアートが、ある死体遺棄事件に遭遇したことを知る。そこで取ったスチュアートや友人たちの奇異な行動は、夫婦間に大きな溝を作り出す。「作品の背景は、男性が絶対的な存在で、女性の地位が低かった時代。例えるなら、スチュアートは『欲望という名の電車』に出てくるスタンリーで、田舎のマッチョな労働者というイメージです。クレアは子どももいて家族を大事にするあまり、彼には何も言えない。でも彼のしたことは、彼女にとってどれだけ衝撃的だったか。私だったらはっきり言うんですが(笑)、『言いたいけど、これ言ったら関係が壊れちゃうかな』というクレアの気持ちは分かりますね」。物語が淡々と進み、これといったオチがないのもカーヴァー作品の特徴だ。水も「えっ、これで終わり?と驚きました」と笑う。しかし、読後にはザラリとした感覚が残り、頭から離れない。「『こんなにたくさんの水が流れているんだもの、何も聞こえはしない』という言葉があって、すごく好きです。私はクレアの存在の薄さを表すような言葉なのかなと思います。クレアの不安を、タイトルにもあるように水の音がかき消してくれる。お客さまも自由に発想してもらい、言葉だけで、言葉だけだからこそ、脳を刺激する世界を楽しんでほしいです」。演出は劇作家でもある新進気鋭の谷賢一が手掛ける。谷は「水さんの持つ知性と芯の強さ、たおやかさ。カーヴァーを読みこなすための資質のすべてを彼女は持っています」とコメントを寄せる。「谷さんはロックな作品も書きますが実はマニアックで、オチがなくて話が盛り上がらない作品が好きなのだそうです(笑)。アイデアが泉のように湧き出てくる方なので、楽しみです」と言う。公演後には水と谷、『コンパートメント』を朗読する渡辺いっけいとのアフタートークが行われる。また、9月2日は山路和弘が『愛について語るときに我々の語ること』、手塚とおるが『ダンスしないか?』『もうひとつだけ』を朗読する。チケットは発売中。取材・文:米満ゆうこ
2018年08月08日1990年に公開された不朽の名作映画『ゴースト/ニューヨークの幻』のミュージカル版が日本初上陸。8月5日、東京・シアタークリエで開幕した。映画版の脚本を手掛け一躍人気脚本家となったブルース・ジョエル・ルービン自身が脚本・歌詞を手掛け、ウェストエンドやブロードウェイでも大ヒットとなった作品だ。主人公であるサムは浦井健治、ヒロイン・モリーはWキャストで咲妃みゆと秋元才加が演じる。【チケット情報はコチラ】銀行員のサムは、芸術家である恋人のモリーと平穏な日々を暮していたが、ある日暴漢に襲われてしまう。乱闘の末、気付くと自分が死んでゴーストになってしまったことを知るサム。彼はその事件には裏があったこと、さらにモリーにも危険が迫っていることを知り、モリーに伝えようと試みるが、自分の声は彼女には届かない。そこで霊媒師オダ・メイを強引に協力させるのだが、モリーはなかなか信用してくれない……。映像なども使用しサムが起こす超常現象を作り上げていくが、最新技術を多用するというよりは、俳優の肉体や観客の想像力で作る舞台ならではの演出で、嫌味がない。サムとモリーのラブストーリーでありつつ、サムが自分を殺した相手を追い詰めていく活劇の面も強調され、テンポ感のある舞台だ。もちろんモリーがろくろを回すシーンなど、映画でも印象的だった場面の再現もある。オダ・メイの霊媒シーンなどはミュージカルらしい華やかさもあり、全体的にとてもバランスのよい、見応えのあるミュージカルになった。初日前には浦井、咲妃、秋元、サムの友人・カール役の平間壮一、オダ・メイ役の森公美子が囲み取材に登場。「日本版のミュージカル『ゴースト』をみんなでイチから作っていきました。セットも大掛かりで豪華。でもハートウォームで、人間愛が詰まっています。映画『ゴースト』ファンの方も含め、たくさんの方が愛してくれるミュージカルを目指したので、ぜひ楽しみにしてください」と浦井。東京公演は8月31日(金)まで同劇場にて。9月には大阪、福岡、愛知公演も実施する。チケットは発売中。
2018年08月08日「履歴書に載っていないことを話してほしい。君たち自身のことを」。演出家の問いかけを合図に、男女17人による最終オーディションの幕が上がる――。年齢、容姿、人種など自己と向き合い、成功を夢見るダンサーたちの光と影を真正面から描いた1975年初演、マイケル・べネット原案・演出・振付のミュージカル『コーラスライン』。トニー賞9部門に輝き映画化もされ、約15年もの大ロングランで当時の最長記録を更新した不朽の名作だ。この夏、7年ぶり3回目のリバイバル版来日公演が決定した。演出・振付・再構成は43年前、コニー役を演じたオリジナルキャストのひとり、バーヨーク・リー。「初演の情熱、演出、振付を次の世代につなぐのが私の使命」と、鬼才マイケル・べネットからたすきを託された、歴史の生き証人でもある。「ブロードウェイミュージカル『コーラスライン』来日公演2018」チケット情報その成功は初演の幕が上がるまで、誰にも予測できないことだった。「だって、ダンサーたちはみんな失業中だったのよ」とバーヨーク・リー。マイケル・べネットやダンサーが集まって話したのが発端。でもその先は分からない。「そのとき彼は他にふたつの作品を手掛けていたの。でも、どちらもうまくいってなかった。私もその作品に参加していたから、きっと『コーラスライン』もあまりうまくいかないだろうな、と思っていたの(笑)」。ところが、「アンビリーバブル!」な結果が待っていた。しかも「私たちそれぞれの物語が観客にインパクトを与えたの」と、興奮気味に続ける。「ひとりのダンサーが語ったわ。自分は神様から踊るという才能を与えられたのだから、才能を活かして感謝をもって愛を表現しなければいけないのだと。劇中に『愛のためにしたことは』という曲があるけど、伝えたいのは、いま自分がやっていることを好きになって、愛をもって一生懸命取り組んでほしいということ。情熱を込めて生きていこうという作品のメッセージを感じてもらえたら」。初演ではマイケル・べネットの右腕として天才のひらめきを傍らで書き留め、ダンスキャプテンとしても活躍した。そこで得た知恵と技術をいま、惜しみなく後輩たちに伝える。「若い出演者たちは、ツアー先で寝起きを共にすることで家族のように協力し合い、社会人としての言動を学んでいく。作品に関わることで役者としての基礎を築き、豊かな人間性も磨ける」。本作は単なるショーを超えた作品だと力を込める。「日本の皆さんは世代を越えてこの作品を愛してくれていることを知っているわ。物語を熟知している方が多いから、よりベストな内容でお届けしなければいけない、とみんなにも伝えているのよ」。公演は、8月15日(水)から26日(日)まで東京・東急シアターオーブ、8月29日(水)横浜・神奈川県民ホール大ホール、8月30日(木)静岡・アクトシティ浜松 大ホール、8月31日(金)から9月2日(日)まで大阪・オリックス劇場、9月5日(水)から9日(日)まで東京国際フォーラムホールCにて上演。チケット発売中。取材・文:石橋法子
2018年08月08日東京・新橋演舞場にて新作歌舞伎『NARUTO-ナルト-』が8月4日(土)に開幕。それに先がけ公開ゲネプロと囲み会見が行われ、会見には主演を務めるうずまきナルト役の坂東巳之助、うちはサスケ役の中村隼人が出席した。原作は「週刊少年ジャンプ」で1999年から2014年まで連載され、世界的大ヒットとなった岸本斉史の同名漫画。落ちこぼれ忍者・うずまきナルトが忍術修行や敵との戦いに挑む忍者バトルアクション物語で、ライバル・うちはサスケとの友情や家族の物語なども描かれる。歌舞伎化は今回が初となり、脚本・演出は新作歌舞伎『東雲烏恋真似琴』や『嵐が丘』などを手掛けたG2。音楽は和楽器バンド。【チケット情報はコチラ】コミックス全72巻がギュッと詰め込まれた本作。会見で巳之助は「膨大な物語のなかから“この部分をやる”ではなく“完結させる”を目標に掲げ、始まった作品です。“ここはやらねばなるまい”という場面を選りすぐっていますので、全場面が見どころになったと思います」と自信を覗かせる。そのなかのアクションシーンも注目ポイントで、隼人が「普段やる歌舞伎の立ち回りもありますが、ちょっと歌舞伎ではないようなアクションもあります。僕ら歌舞伎俳優はひとつひとつのカタチで立ち回りを見せるので、そういう部分を矯正するのは難しかったですが、見どころになるんじゃないかなと思います」と言うと、巳之助も「『NARUTO』はバトル漫画なんですよ。でもそれはただバトルしているのではなく、闘うことでキャラクター同士が気持ちを交換し合ったり、物語が前に進んでいったりする、そういう作品なので。立ち回りも芝居の中のひとつなんです」と熱く語る。ビジュアルも漫画そのものだが実は「衣装は帯や縄など歌舞伎でもあるものを使っています。歌舞伎でやるということで、漫画とはまた違うものになっているかと思います」と隼人。こちらも注目したい。幕が開けると、ふたりが語った通り、丁寧に組み直されたストーリーは名場面のオンパレード。ナルトとサスケが立ち向かう最大の敵・うちはマダラ(市川猿之助・片岡愛之助のWキャスト※ゲネプロは愛之助が出演)との立ち回りや本水を使ったナルトとサスケの戦いなど、激しくも美しいアクションシーンは必見だ。それに加え、漫画と歌舞伎の世界を違和感なくつなげたプロジェクションマッピングや、歌舞伎特有のアナログだが驚きのある演出による忍術の再現など、漫画原作ならではの演出もたっぷり。原作ファンも歌舞伎ファンもそれぞれの視点で楽しめそうだ。台詞が現代語なので“見得”など歌舞伎ならではの表現も流れで理解しやすく、歌舞伎初心者にもオススメの本作は、8月27日(月)まで新橋演舞場にて上演中。チケットぴあでは桟敷席をプレイガイド独占販売中。取材・文:中川實穗
2018年08月07日1960年代に『君の瞳に恋してる』や『シェリー』などの名曲を次々に生み出した伝説のヴォーカルグループ、フランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズ。その栄光と挫折を描いたミュージカル『ジャージー・ボーイズ』が、10月24日(水)より新歌舞伎座にて上演される。フランキー・ヴァリ役を務める中川晃教が、作品の魅力や意気込みを語った。ミュージカル「ジャージーボーイズ」チケット情報2005年にブロードウェイで上演され、2014年にはクリント・イーストウッド監督により映画化されて話題となった『ジャージー・ボーイズ』。2016年に東京初演を果たした日本人キャスト版では、第42回菊田一夫演劇賞や第24回読売演劇大賞など、数々の演劇賞を受賞。中川自身も“天使の歌声”を持つフランキー・ヴァリ役で読売演劇大賞最優秀男優賞を受賞した。「フランキー・ヴァリを演じるには、本国のプロデューサーで、ザ・フォー・シーズンズのメンバーでもあるボブ・ゴーディオさんのOKをいただかないといけないんです。演じるのに必要な声であること、歌唱する姿、そして初期、中期、後期と音楽性が進化する中で、それに伴って声の出し方が大分変わるので、発声のコントロールがちゃんとできるかどうか。そういうオーディションを受けたのは初めてでしたね」。そこから“トワング”という独特の発声を約1年かけて習得。「この役に出会えなければ、自分で見つけられなかった声」と語る。「フランキー・ヴァリの声を追求したことで、普段の自分の声にも深みが出たというか、表現を磨くひとつのきっかけにもなったと思います。常に完璧を求めるけれど、ひとつ課題をクリアするとその先に次の課題が見えてくる。終わりはないんですよね。フランキー・ヴァリという役に出会ったことで、まだまだ知らない声がこんなにあったんだと気付かせてもらいました。大阪公演に向けてもっと声を追求していきたいと思っています」。物語は、春、夏、秋、冬と、季節ごとにメンバーがストーリーテラーとなり、物語が展開していく。中川以外の3人はWキャストで、初演から続投のチームWHITEと、新たなキャストを迎えるチームBLUEで上演する。「春は中河内(雅貴)、伊礼(彼方)君が演じるトミー・デヴィートがストーリーテラー。トミーはフランキー・ヴァリにとって、音楽シーンに自分を導いてくれた兄弟的な存在。彼がいなかったら自分はこの世界に出発できなかった、という意味での春です。そして、ボブ・ゴーディオが加わって大きな転機を迎える夏、グループの要でもあったニック・マッシの脱退を描く秋、冬はフランキー・ヴァリがさまざまな困難を乗り越えながらステージに立ち続ける姿が描かれます。演者が変わると、僕のフランキー・ヴァリも自然と変わるんです。同じことをしているのになぜこんなに変わるのだろうと、自分でも不思議。ぜひ両方楽しんでいただきたいですね」。公演は10月24日(水)から28日(日)まで、大阪・新歌舞伎座にて。チケット発売中。取材・文:黒石悦子
2018年08月07日異次元の“アート・パフォーマンス・エンターテインメント” BLUE MAN GROUPが、2019年5月に東京、6月に名古屋と大阪で来日公演『ブルーマングループ ワールドツアー IN JAPAN』を開催する事が決定した。BLUE MAN GROUPは1991年にニューヨークで、親友であるクリス・ウィンク、マット・ゴールドマン、フィル・スタントンによって創立。「ブルーマン」の名の通り、3人の青いパフォーマーがオリジナル楽器を用いたハイクオリティなサウンドにあわせて、パフォーマンスを披露。現在、ニューヨーク、ラスベガス、ボストン、シカゴ、オーランド、ベルリンに常設劇場がある。日本では2007年に「BLUE MAN GROUP IN TOKYO」として、専用劇場でのロングラン公演をスタート。2009年11月に千秋楽を迎えた後、大盛況に応え、翌2010年4月から2012年3月まで再公演を開催。2007年から2012年にかけて、日本で1388公演を行い、動員数80万人を記録した。前回来日時は「日本版特別公演」という位置づけであったが、今回は正真正銘「正規のワールドツアー」の日本初上陸。ニューヨークのオフブロードウェイで28年目を迎えるBLUE MAN GROUPの大人気コンテンツに、新しい音楽、ストーリー、オリジナル楽器、最新鋭テクノロジーを加えた、常に変化し続けるブルーマンのまさに最新、最大のショーとなる。共同創立者であるクリス・ウィンクは今回の日本公演について「ブルーマンと呼ばれる、このイノセントで面白そうなキャラクターを中心としたパフォーマンスを作り始めたころは、彼が私たちをここに連れてこようとは夢にも思わなかった。ワールドツアーを日本の人々にも見てもらえることを心から誇りに思う」とコメントを寄せている。チケットの一般発売は、東京・名古屋公演は11月3日(土)午前10時より、大阪公演は2019年1月26日(土)午前10時より。なお、一般発売に先駆けて、チケットぴあでは東京・大阪公演の最速先行を実施。受付は10月1日(月)昼12時より。『ブルーマングループ ワールドツアー IN JAPAN』―BLUE MAN GROUP WORLD TOUR IN JAPAN―2019年5月~6月EXシアター六本木(東京都)2019年6月愛知県芸術劇場 大ホール(愛知県)2019年6月オリックス劇場(大阪府)
2018年08月07日2016年には連日ソールドアウト、リピーターが続出するほどの人気だったブロードウェイミュージカルの傑作「RENT」が再来日を果たし、ついに8月1日に開幕。初日から会場はスタンディングオベーションの嵐!そもそも最初にブロードウェイで上演されたのは1996年。当時、またたく間に大人気となり数々の演劇賞を総なめ、以降世界中の人々に愛され“「RENT」を見て人生が変わった!”という方も数え切れないほど。【チケット情報はコチラ】その魅力のひとつは、誰もが心惹きつけられるストーリー。エイズやドラッグ、同性愛、友の死…様々な問題を抱えながらも夢を諦めず懸命に生きる若者たちの姿が描かれ、そのドラマを目の当たりにする私達は思わず一緒に笑ったり泣いたり心激しく揺さぶられたり。しかも、各シーンにはその歌詞に胸にぐっと突き刺さるミュージカルナンバーの数々が散りばめられ、ロック、ポップス、心に染み入るバラードと、これぞ「RENT」の世界。まだ本作を観たことがない方はぜひ公式サイトをチェックしてみて。タイトルナンバー『Rent』や名曲『Seasons of Love』のシーンを“ちょっと見”できちゃいます。上演された当時から時代は変われど、私たちを取り巻く環境は変わらない部分もいっぱい。だからこそ「RENT」が紡ぎだす言葉は今もなお観る者すべての心を捉えて離さないのかも。本公演は、2016年同様トニー賞を受賞したマイケル・グライフのオリジナル演出ですが、キャストは一新。全体的に年齢がぐっと若くなっています。レントヘッズ(RENTの熱狂的なファン)の皆さんにとっては、本作の生みの親ジョナサン・ラーソンの魂を引き継ぐ、魅力溢れるキャスト達のフレッシュなパフォーマンスを味わうのも楽しみのひとつになりそう。ちなみに本国ブロードウェイでは残念ながら上演は終了。だからこそ今回を見逃すと次はいつどこで観られるかわかりません。筆者はゲネプロを鑑賞、カーテンコールでは思わず仕事を忘れ割れんばかりの拍手を送って涙ぽろり。キャスト達の力強くて伸びやかな歌声、心踊るナンバー、何度でも見たいダンスシーン、共感せずにはいられない彼らの悲しみや怒り、そして希望、何より会場中のボルテージを上げる彼らの熱気など、そこには劇場でしか味わえない感動の数々が詰まっていました。生きる勇気が欲しい人、必見です。ブロードウェイミュージカル「RENT(レント)」来日公演2018は8月12日(日)まで、東京・東急シアターオーブにて上演。チケット発売中。取材・文:ミカマイコ
2018年08月03日村上龍の小説を原作とした音楽劇『コインロッカー・ベイビーズ』が7月29日まで、TBS赤坂ACTシアター(東京都港区)で上演された。【チケット情報はコチラ】原作は、1980年に発表された村上龍の同名小説。コインロッカーに捨てられて、かろうじて生き残った「ハシ」と「キク」の人生を描いた、激しくもせつない物語だ。2016年に上演された初演と同じく、主演はA.B.C-Zの橋本良亮と河合郁人。今回の再演では、「相手の役にも挑んでみたい」という、兼ねてからのふたりの思いが実現し、公演日によってそれぞれ役を入れ替えて演じるというダブルキャスト形式に挑戦している。東京公演の後半戦では、ハシを橋本が、キクを河合が演じている。橋本は全体的に柔らかな雰囲気を醸し出し、感受性豊かなハシを演じ、一方で、河合はまっすぐ、エネルギッシュにキクを演じた。前半時に見せた、クールでぶっきらぼうながらも、人一倍熱い想いを秘めていた橋本のキク、どこまでも純粋で情が深い河合のハシを見た観客は、より一層ふたりが演じるハシとキクの“違い”を楽しめたことだろう。公式パンフレットのインタビューの中で、初演時にハシを演じた橋本は「ハシをつかんだ時の河合さんは、やっぱりかっこいいと思うし、悔しいなとも思います。“俺のハシを奪わないでくれ”と思う。だけど、僕もキクをやるから負けないぞとも思います」と語っている。また、初演時にキクを演じた河合は「新たにハシを演じることで以前演じたキクもアップデートされている感覚ですね。せっかくハシを演じるのなら、橋本くんのハシよりもいいねと言われるくらいの勢いで演じきりたいと思います」。互いにライバル心をのぞかせながらも、切磋琢磨している様子だ。キャストはほとんど初演と同じメンバーが集結しているが、巨大なワニを飼い、キクとともに生物破壊兵器(ダチュラ)を求めて奔走する少女「アネモネ」を演じる山下リオは、今回が初出演。エンディングなどの新曲も加わり、初演時よりも、ハシ、キク、アネモネの3人の物語というテイストがより濃くなっている。山下は「純粋に、そして必死に生きている3人の姿が少しでも誰かの心に残ればいいなと思っています」とコメントしている。上演時間は約2時間20分(休憩20分を含む)。脚本・演出は木村信司。音楽は長谷川雅大。出演者は、橋本良亮、河合郁人、山下リオ、シルビア・グラブ、秋山大河(MADE/ジャニーズJr.)、福士申樹(同)、ROLLYほか。大阪公演は8月11日(土)、12日(日)に豊中市立文化芸術センター・大ホールにて。富山公演は8月18日(土)、19日(日)にオーバードホールにて。8月4日(土)11:00から6日(月)23:59まで、大阪公演のサイド席受付を実施。文:五月女菜穂
2018年08月02日2016年より耐震補強工事のため休館していた京都・南座が、南座発祥400年の今年、新開場する。その幕開けを飾る11月の「當る亥歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」にて、二代目松本白鸚、十代目松本幸四郎、八代目市川染五郎の親子三代による襲名披露が行われる。7月28日、京都市内で記者会見が行われ、白鸚、幸四郎、染五郎が思いを語った。今年1月の東京・歌舞伎座から始まり、これまでに4劇場で襲名披露を行ってきた高麗屋。その締め括りとなる南座では、昼の部の『連獅子』で幸四郎と染五郎が共演し、白鸚は顔見世で49年ぶりの上演となる『鈴ヶ森』に出演する。また、夜の部の『勧進帳』で親子三代が富樫、弁慶、義経を演じるのも見どころだ。白鸚は「『鈴ヶ森』の長兵衛は五代目幸四郎の当たり役で、“あれは五代目の鼻の高え長兵衛”というようなセリフが残っております。衣装も背中に花菱を抜いた“首抜き”で、合羽も高麗屋格子。高麗屋に大変ゆかりがある演目です」と語り、『勧進帳』で演じる富樫については「富樫には“武士の情け”がある。主君の義経を思う弁慶の心を慮って通してやるという情けです」と話す。幸四郎は今年で三度目の『勧進帳』弁慶で、南座で楽日まで勤めると100回を数えることになるという。「三代で『勧進帳』を勤めさせていただけるのは、夢のような幸せを感じておりますが、弁慶を勤めるときには喜びという思いどころではないというのが率直な感想です。回数ではございませんが、私自身の『勧進帳』として大きな区切りとなりますので、精一杯勤めきりたいと思います」。1月の歌舞伎座でも義経を勤めた染五郎は「最初は自分がこんな大きな役を勤めきれるのかという不安がありましたが、すごく大好きな役になりました。11月の南座では、1月にできなかったことをすべて直してお見せできるように稽古したいと思います」と意気込みを語った。また『連獅子』については幸四郎が「なんとかここでせがれに大きくなってもらいたいという思い。親子の物語ではありますが、狂言師右近、左近が踊りをお見せする舞踊です。僕自身の解釈としては踊り比べだと思っていますので、どっちが勝つかという踊りだと思って僕は勤めますので…、頑張ってください!」と染五郎に発破をかけると、染五郎も「親獅子が仔獅子を崖から落として這い上がったものだけを育てる伝説をもとにした踊りですが、親獅子を突き落とすくらいの強い気持ちで勤めたいと思います(笑)」と語り、会場の笑いを誘った。「當る亥歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」での襲名披露興行は11月1日(木)から25日(日)まで、京都・南座にて上演。チケットは10月15日(月)前売開始。取材・文:黒石悦子
2018年08月02日1976年以来3年に1度の開催を続け、世界でも類を見ない規模と伝統を誇る催しとして知られる世界バレエフェスティバルの開幕記者会見が、7月30日、まさにその会場となっている東京文化会館大ホールの舞台上で、華々しく行われた。【チケット情報はコチラ】直前の週末には、フェスティバルの前夜祭ともいわれる全幕特別プロ『ドン・キホーテ』が上演され、いよいよAプロの初日を2日後に控えたタイミングでのこの会見。まずは主催の公益財団法人日本舞台芸術振興会・高橋典夫専務理事と、公演を特別協賛する株式会社コーセーの小林一俊代表取締役社長が登壇。主催者の立場から、また支援する企業の立場から、フェスティバルへのあつい思いを明かした。近年、テレビでバレエが紹介される機会が増え、「追い風を感じる」と話す高橋専務理事は「42年前に始まったこのフェスティバルが、日本のバレエ界に与えた影響は極めて大きいと自負している」とコメント。また、過去にバレエ公演を支援した実績のある小林社長は「美の創造企業として、ひとりでも多くの方にバレエを観ていただき、心を豊かにしていただけたら」と話すとともに、今回、初の試みとして「コーセー U29シート」と銘打った安価なチケットを販売したことに触れ、「若い方々が本物のバレエを楽しみ、身近に感じていただきたい」と力強く述べた。会見後半では、Aプロに出演する34人ものダンサーたちが次々と登場。ひとりひとりが各国を代表する一流カンパニーのトップダンサーというだけあって、彼らがずらりと並ぶと、舞台上はえもいわれぬきらびやかな雰囲気に。最初にマイクを手にしたパリ・オペラ座バレエ団芸術監督、オレリー・デュポンは「7回目の参加ですが、このフェスティバルに参加することは大きな喜び」と満面の笑顔。続いて同団のエトワールたち、またロシア語圏出身のダンサーたち、さらに英国、米国などのカンパニーを中心に活躍するダンサーたちが、皆口々に「ここでの体験はとても貴重」、「いい演技をしたい」とコメントした。今回はフェスティバルの創始者である佐々木忠次が2年前に亡くなってから最初の開催となるだけに、彼を直接知るダンサーたちからは、今回の舞台を「佐々木さんに捧げたい」(アレッサンドラ・フェリ)といった言葉も。世界の舞台でしのぎを削るライバル同士というよりも、同じ思いで結ばれたファミリーのような温かさを感じさせる彼ら。これも、世界バレエフェスティバルの伝統だろうか。ほかでは得がたい、充実の舞台が期待される。世界バレエフェスティバルは、Aプロが8月1日(水)から5日(日)まで、Bプロが8日(水)から12日(日)まで、東京・東京文化会館で開催。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2018年07月31日7月31日(火)まで東京・俳優座劇場にて上演中のミュージカル『GRIEF 7(グリーフセブン)』。錦織一清が演出、野村桔梗が原作、三浦香が脚本、金子隆博&ながしまみのりが音楽を手掛け、“七つの大罪”をベースに牢獄で出会った男たちを描くエンターテインメントステージだ。出演者はカラム、碕理人、SHUN(Beat Buddy Boi)、三浦海里、加藤良輔、米原幸佑。物語の舞台は自由の国アメリカ。そのアメリカで、日本でのアイドル活動をやめてきたリュウ(カラム)は、人気オーディション番組にて再び注目を浴びていた。しかしその最中、番組プロデューサー殺害の容疑で刑務所に入れられてしまう。無実を訴えるリュウの前に現れたのは、同じ部屋のアジア人のカワイ(加藤)、グニョン(碕)、サム(SHUN)、そして看守のムラセ(三浦)。日本にいた頃からリュウが兄として慕い、今はアメリカで暮らすフクダ(米原)も面会に訪れる――。薄暗く無骨なセットのなかで男たちが語るのは、目的のための偽装結婚、権力で隠される性犯罪、見せしめとしてのアイドルの存在、破綻した親子関係…そしてそれを取り巻く悲しみと罪。製作発表で錦織が「1度観たくらいじゃわからないものをつくっていきたい」と語った通り、登場人物ひとりひとりの物語は深く重く、台詞や仕草も意味深で、1度ではつかみきれないものがある内容だ。けれどそのストーリーに、聴きやすい音楽、美しい歌声、キレのあるダンスが絶妙なバランスで絡み合い、独特の世界観を築いていく。初日の会見でカラムは「今までで1番自信のある作品になりそうです。胸いっぱいです」と自信をのぞかせ、SHUNも「みんなでつくりあげてきた作品。世界一のミュージカルです!」とコメント。三浦が「普段は舞台に出てしまうと緊張しないのですが、この作品はなぜか緊張しっぱなしです」と明かすと、加藤は「舞台上に緊張感があります。いい緊張感をみんなでつないでいきたいです」と話した。米原は「演出、脚本、原作、音楽と素敵なスタッフが集合した作品です。そのスタッフさんに恥じないパフォーマンスを届けます」、碕も「重たい話ですが、錦織さんの演出で極上のエンターテインメントになっていると思います。このメンバーだからこそできた舞台です」と語る。演出の錦織は「いいお客さんに来ていただければ、このお芝居はすくすくと育っていくと思います」と笑顔をみせた。アイドルグループ大国男児として活躍するカラムの歌&ダンスや、ラッパーであるSHUNのラップ、ミュージカル作品でも活躍するキャスト達の豊かな歌唱など、見どころ、聞きどころも多い作品。7月31日(火)まで東京・俳優座劇場にて上演中。取材・文:中川實穗
2018年07月30日バレエ芸術というジャンルは、この世に存在する男性の中でも最も美しい男性たちが1点集中しているという点で、特異なアートなのかも知れない。ヴァイオリンのストラディバリウスに匹敵するのが生まれながらの容姿なのだから、その芸術的価値は億単位である。世界バレエフェスティバル(WBF)で目撃できる男性美を換算したら、どれくらいになるだろうか…美、美、美の瞬間の連続に、何度も通いたくなってしまう。美はカウントレスなのだ。【チケット情報はコチラ】ロベルト・ボッレの美は奇跡である。現在43歳の彼だが20代の頃と比べて容姿も表現も衰えるところがなく、むしろ妖艶さや華麗さを加えていて、見るたびに「今こそが全盛期」と思う。非常に若い頃から成功していたボッレは、WBFに登場するベテラン・プリマともほとんど共演を果たしている。フェリやオレリーとのバックステージでの再会には、リユニオン的な雰囲気が漂うのではないかと思う。クラシックもコンテンポラリーも優美に踊るボッレの芸術性は多くの振付家を触発したが、内面的な魅力も大きく、稽古やリハーサルを見ていてもすべてがアーティスティックなのだ。ステージの上でもステージを降りても人々を魅了する特別なオーラは、やはり大スターのものだ。どのアングルから見ても完璧に美しい…何をやっても美しい…という共通点をもつのがパリ・オペラ座バレエ団の天然王子マチュー・ガニオ。デニス・ガニオとドミニク・カルフーニを両親に持つバレエ界のサラブレッドである彼は、19歳でエトワールに昇格したときから「立っているだけでも絵になる」と完璧な美を賞賛されてきた。華やかな経歴の裏ではケガも多く、葛藤の多い時代も経験してきたが、30代を超えてからのガニオには何か吹っ切れたような清々しさがある。技術はますます磨きこまれ、表現に深みが加わり、ノーブルで優しいオーラに包み込まれている34歳の彼は、間違いなく「今が旬」の踊り手であると思う。WBFではベストなパートナーシップを築いているドロテ・ジルベールとマクミランの『マノン』とヌレエフの『シンデレラ』を披露する。美しい男性しか舞台にいないこの世界でも、さらに眩しい美に恵まれた貴公子たちを見ていると「神に愛されし者」とはこういう人なのだなと思う。ボッレと同様、ガニオもとても性格がよく、彼を知る人々は人間としてのガニオを信頼し愛している。神は美男に二物も三物も与えているのだ。ロベルト・ボッレ、マチュー・ガニオが出演する第15回世界バレエフェスティバル(Aプロ、Bプロ)は8月1日(水)から12日(日)まで、東京・上野の東京文化会館大ホールにて。チケット発売中。文:小田島久恵
2018年07月27日歌舞伎座の八月納涼歌舞伎が、今年も開幕する。第一部で『心中月夜星野屋』、第二部で『東海道中膝栗毛』、第三部で『盟三五大切』に出演する中村七之助の取材会が開かれた。【チケット情報はコチラ】「『八月納涼歌舞伎』はうちの父(十八世中村勘三郎)と(十世坂東)三津五郎のおじ様、それに(中村)福助、(中村)芝翫のおじが舞台上でも舞台裏でも闘って続けてきたもの。特に、父と三津五郎のおじ様の魂に顔向けができない1か月にはしたくない」と七之助は言う。その思いが、『心中月夜星野屋』上演に深く関わっている。「父と三津五郎のおじ様の納涼歌舞伎は、第一部からお客様でいっぱいのイメージ。もう一度そうなるために、去年、兄(中村勘九郎)と僕で第一部の演目を考え、僕は(坂東)玉三郎さんの演出で(市川)中車さんと『刺青奇偶』をやらせていただいたところ、お客様がどんと入ってくださって。今年もこの流れを消さないように、そして、中車さんとまたやりたかったので、2年前に上演した(笑福亭鶴瓶の落語が原作の)『廓噺山名屋浦里』で脚本を手がけてくれた小佐田(定雄)さんに相談し、落語『星野屋』を歌舞伎にすることになりました」落語が原作というと、これまで八月納涼歌舞伎では怪談物を上演することが多かったが、『山名屋浦里』に続いて、よりコメディ色の強い作品が登場する。「第一部にふさわしく、軽い気持ちで楽しく観られるものを選びました。ひとりで語る落語と、役者が演じる歌舞伎とでは、やはり違います。落語と同じオチが歌舞伎でうまく幕になるとは限らないし、歌舞伎は視覚的に楽しませる分、落語より狭まる部分もあるかもしれない。巧い噺家だと、座布団に座って長屋の話をするだけで長屋のにおいまでして来るのに対して、歌舞伎は視覚的に分かってしまう怖さがある一方、動きや掛け合いで楽しませることもできます。そこをどう魅せるか、これから小佐田さんとの相談や稽古で詰めていきます」『東海道中膝栗毛』は、十返舎一九の原作を奔放に賑やかに発展させた作品。一昨年、昨年と、形を変えながら上演され、七之助は昨年から出演している。「まだ何も聞いていないのですが、去年は芝居に絡む役ではなかったので、今回はもっと作品に絡みたいと言いました。俳優祭的なところもありますが、お客様が喜ばれるし、歌舞伎の幅の広さがわかる演目だと思います」『盟三五大切』では、芸者の小万に初役で挑む。「僕はコクーン歌舞伎で1番好きなのがこの『盟三五大切』。憧れの(中村)福助のおじが演じていた小万をやれるのは嬉しいですね。小万は、ただただ好きな三五郎のために(薩摩)源五兵衛を騙してしまう女性なので、あまり悪い人には見せたくない。色気たっぷりに演じたいですね。父と芝翫のおじがWキャストで源五兵衛を演じた時、印象が全然違ったんです。(源五兵衛役の松本)幸四郎さんと私と(三五郎役の中村)獅童さんの3人ならではの舞台にしたいですね」公演は8月9日(木)から27日(月)まで、東京・歌舞伎座にて。チケットは発売中。取材・文:高橋彩子
2018年07月25日飯塚悟志、角田晃広、豊本明長によるお笑いトリオ・東京03の単独公演『不自然体』がついに開幕。7月4日から8日まで上演された東京公演を皮切りに、福岡、長崎、長野、愛知、静岡、大阪、北海道、岡山、広島、新潟、宮城と、全国12都市を巡る。また10月12日(金)から14日(日)まで東京・ガーデンホールでの追加公演も決定。そこで気になる公演の内容を、ちょっとだけご紹介する。【チケット情報はこちら】中年男性たちの日常を舞台に、絶妙な切り口と抜群の演技力で、独自のコントの世界を切り開いてきた東京03の3人。今回はタイトルにもあるように、“不自然”な状況や人物が続々と登場。豊本ののほほんとしたマイペースな雰囲気と、角田の少々暴走気味のボケ、そこに飯塚の的確でキレのいいツッコミが炸裂し、少しの不自然がラストに向かって爆発的な笑いを生んでいく。今回も7本の新ネタを用意。サラリーマンに喫茶店のマスターと客、高校の同窓会にワールドカップのテレビ観戦など、どれもこれも身近な設定ばかり。だがそこに潜む微妙な不自然を見つけるのが、彼らは本当にうまい。そしてやはり目を引くのが、角田の振り切ったハイテンションぶりとクドさ。それにはネタの共同作成者である飯塚でさえも、笑いをこらえるため、つい顔をそむけてしまうほど。また豊美(=女性役の豊本)の登場も、ファンには嬉しいところだ。東京03の単独公演でもうひとつ欠かせないのが、ネタとネタの間に流れる映像。こういった映像は時に単なる場繋ぎのようにも思われがちだが、これが十分1本のネタと言えるほどクオリティの高い仕上がり。前ネタをより膨らませ、新たな笑いを生み出すのはもちろん、短編ドラマのような趣もあり、PVのような楽しさもあり、なんと宣伝までも兼ねていたりする。その手のかけよう、こだわりには驚くばかりだ。またサウンドトラックCDを販売するほど、楽曲にも力を入れている。事前のインタビューでは「今回かなりいいと思いますよ」と自信をのぞかせていた3人。それが間違いでなかったことは、観客の反応のよさを見れば明らかだ。チケットの購入はもちろん早めがおすすめだが、10月13日(土)には各地でライブビューイングも。実はこのライブビューイング、角田が必ずミスをするという、東京03にとっては鬼門の公演でもあるらしい。飯塚はこう笑う。「角ちゃんが噛まずに最後までやれたら、全劇場でスタンディングオーベーションしてあげてください!」取材・文:野上瑠美子《追加公演チケット販売スケジュール》詳細は下記チケットリンクをご確認ください・いち早プレリザーブ:7月17日(火)12:00~7月22日(日)23:59・プレリザーブ:7月20日(金)12:00~7月25日(水)23:59・一般販売:8月4日(土)10:00~
2018年07月24日韓国で8年にわたってロングランされ、2016年に『キム・ジョンウク探し~あなたの初恋探します』として日本語版が初演された『あなたの初恋探します』。早くも2度目の再演となる人気ミュージカルが7月21日に東京・オルタナティブシアターで開幕し、前日にゲネプロが行われた。何をやってもダメダメなムン・ミニョクが初恋相手を探す会社を立ち上げ、最初の客となったアン・リタが10年前にインドで出会った男、キム・ジョンウクを共に探す物語。昨年の再演ではキャストが総入れ替えとなったが、今回はオリジナルキャストの村井良大、彩吹真央、駒田一が2年ぶりに集結し、仲の良さを感じさせる息の合った演技でチャーミングな舞台を届けた。チケット情報はこちら安定のメガネ姿でミニョクを体現する村井は、回想シーンになるとメガネを外してキム・ジョンウクに早変わり。空気が読めないがどこか憎めないダメ男と、いわゆる理想的なイケメンとをごく自然に演じ分け、幅の広さを見せる。アン・リタ役の彩吹は、コケる場面などで見せた思いっきりの良いコメディエンヌぶりもさることながら、やはり最大の魅力は歌唱力。確かな技術を持っていながらそれを誇示することなく、喋っているトーンのまま流れるように歌へと移行することができる、貴重なミュージカル女優のひとりだ。そして駒田は、男性から女性、若者から老人、韓国人からインド人までに扮するマルチマン役。駒田が運転するタクシーのラジオから流れてくるのもまた駒田の声だったり、体の右半分と左半分とで違う扮装をすることで同時に二役を演じたり……と様々に凝らされた趣向に加え、持ち前のエンターティナー精神も駆使して全22役をコミカルに演じ、喝采を浴びた。舞台は終始笑いの中で進んでいくのだが、ここぞというところでお姫様だっこなどの胸キュンシーンが挟まれるあたり、やはりさすがは韓国産。だがそんな物語が無理なく成り立っているのは、バンドメンバーを含めたステージ上の全員が、心から楽しんで届けているからだろう。「若い頃のトキメキを思い出したり、これからへ思いを馳せたり、過去も未来も体感できる作品です。ひとりでも多くの方に、その魅力を体感していただきたい!」(村井)、「公演が始まるといつかは訪れる“終わり”への寂しさもすでに感じています(笑)」(彩吹)、「互いに影響を与え合える関係、共演のふたりを改めてリスペクトしています」(駒田)と、キャストのコメントからも作品と仲間への愛が滲み出る。そして駒田の言葉通り、「作品を作る最後のピースはお客様」。観客が積極的に盛り上げることで、ロマンチック・コメディの代名詞のようなこの作品の魅力はさらに増大することだろう。東京公演は同劇場にて、7月28日(土)まで。その後8月4日(土)・5日(日)に福岡・大野城まどかぴあ 大ホール、8月14日(火)・15日(水)に愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール、8月18日(土)・19日(日)大阪・サンケイホールブリーゼでも上演される。(取材・文:町田麻子)
2018年07月23日トップスター・明日海(あすみ)りお率いる宝塚歌劇花組公演、ミュージカル『MESSIAH(メサイア)-異聞・天草四郎-』、ショー・スペクタキュラー『BEAUTIFUL GARDEN -百花繚乱-』が7月13日、兵庫・宝塚大劇場で開幕した。宝塚歌劇花組『MESSIAH(メサイア) -異聞・天草四郎-』/『BEAUTIFUL GARDEN -百花繚乱-』チケット情報第一幕のミュージカル『MESSIAH(メサイア)-異聞・天草四郎-』は、島原の乱の指導者として多くの伝説を残した天草四郎時貞の姿を、新たな視点でドラマチックに描き出した作品。衣装や美術に現代的なエッセンスを加えた、新たな日本物ミュージカルとなっている。時は江戸時代初期、幕府による禁教令が出された後も、九州・天草には数多くのキリシタンが隠れ住んでいた。激しい嵐が去ったある日、そこにひとりの男が流れ着く。男は過去を語ろうとせず、自らの名前すら口にしなかったが、キリシタン大名として知られた小西行長の遺臣に拾われ、四郎と名付けられた。貧しくも、心豊かな島の者たちと暮らすうちに四郎の心もほぐれ、彼らの信仰に興味を抱くようになる。その後、四郎はキリシタン弾圧や過酷な年貢の取り立てに苦しむ民衆のために立ち上がる…。明日海が演じるのは、もとは海賊の首領“夜叉王丸”として旅していた四郎。慈悲深く温かい天草の人たちと過ごすうちに、四郎にも温かい気持ちが生まれ、彼らを救いたいという熱い思いが湧き上がる。その四郎の心の変化を明日海は繊細に表現して魅せる。トップ娘役・仙名彩世(せんな・あやせ)演じる島原の美しく清らかな娘・流雨(るう)との恋、そして、柚香光(ゆずか・れい)演じる南蛮絵師・リノとの友情が生まれていく様も見どころだ。仙名は美しく優しい流雨を情感たっぷりに演じ、柚香はリノが抱える複雑な感情を丁寧に表現している。一揆のシーンでは大階段を使い、群舞を織り交ぜながら、殺陣によるアクションを繰り広げる。激しくも美しく、尊さを感じさせる演出に目を奪われた。第二幕のショー『BEAUTIFUL GARDEN -百花繚乱-』は、そのタイトル通り、色とりどりの花が咲き薫る永遠の花園をイメージ。プロローグでは、明日海をはじめとするスターたちが華やかな蝶となって舞い踊り、時に激しく、時には妖艶にめくるめくステージを繰り広げていく。TUBEやT.M.Revolutionなどの誰もが知る楽曲を使った場面もあり、夏らしくホットなエンタテインメントショーが楽しめる。公演は8月20日(月)まで、兵庫・宝塚大劇場にて。東京公演は9月7日(金)から10月14日(日)まで東京宝塚劇場にて開催。東京公演のチケットは8月5日(日)発売開始。取材・文:黒石悦子
2018年07月20日オレリー・デュポンとタマラ・ロホ。世界バレエフェスティバルの常連スターであるこのふたりの女性には多くの共通点がある。それぞれパリ・オペラ座バレエ団のエトワールと英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルとして10数年に渡る黄金期を築いたのち、オレリーはパリ・オペラ座バレエ団、タマラはイングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)の芸術監督のポストにつき、カンパニーを意欲的に先導している。世代的にも同年代であり(1973年と1974年生まれ)、完璧なテクニックとチャーミングなルックスで世界中のファンを虜にした。20代の愛らしい姿に見惚れていた頃は、ふたりがこんなにもパワフルな未来を手に入れるとは思ってもみなかった。【チケット情報はこちら】2017年はこのふたりの「凄さ」を実感する年だった。2月にパリ・オペラ座バレエ団を率いて来日したオレリーはミルピエ振付の『ダフニスとクロエ』でクロエ役を踊り(日本公演のみの特別出演)、7月にイングリッシュ・ナショナル・バレエとともに来日したタマラは『コッペリア』のスワニルダと『海賊』のメドゥーラを踊った。衰えることを知らぬ舞台での華に加え、推進力のあるリーダーシップも発揮し、ふたつの来日公演ではふたりのプリンシパルも誕生した。オレリーによってエトワールに指名されたユーゴ・マルシャンと、タマラによってプリンシパルに昇格したセザール・コラレスの輝かしい表情は、日本の観客にとって忘れえぬものになったのだ。ふたりの芸術監督が日本の舞台と観客を大切に思っている証のような出来事だった。ダンサーとしてはますます自由な境地を切り開いているオレリーが世界バレエフェスティバルで踊るのは、ノルウェーを拠点に活躍する振付家アラン・ルシアン・オイエンによるデュエット作品『・・・アンド・キャロライン』。映画『アメリカン・ビューティ』に想を得て振り付けられたという、現代社会の闇を描いた作品だ。タマラは自らのカンパニーのプリンシパルであるイサック・フェルナンデスとアロンソ振付の『カルメン』とハンス・ファン・マーネン振付の『HETのための2つの小品』を踊る。タマラとイサックはバレエフェス創始者の佐々木忠次氏の追悼公演〈Sasaki Gala〉では『ドン・キホーテ』(プティパ振付)も披露する。パリ・オペラ座と英国ロイヤル・バレエ団のふたつの名花を、長年にわたって見ることが出来る日本の観客は幸運としか言いようがない。変わらぬ美しさ華やかさ、そしてスター・バレリーナならではの大きなオーラで客席を魅了してくれそうだ。オレリー・デュポン、タマラ・ロホが出演する第15回世界バレエフェスティバル(Aプロ、Bプロ)は8月1日(水)から8月12日(日)まで、東京・上野の東京文化会館大ホールにて。チケット発売中。文:小田島久恵
2018年07月19日いま最も勢いのある漫才師・千鳥が贈る、年に1度のスペシャルステージ『千鳥の大漫才』。年々人気に拍車がかかり、今では開催の度に満員御礼と、大好評を博している本公演。今年はこれまでの開催地である東京、大阪に加え、広島、福岡もめぐる4都市での開催が決定した。「千鳥の大漫才2018」チケット情報バラエティ、CM等で今や飛ぶ鳥を落とす勢いの彼らが、漫才番長としての実力をたっぷりと見せつける新作漫才、そして昨年の単独ライブで話題を呼んだスペシャル企画など、今回も“クセがすごい”と唸らずにはいられないラインナップでお届けする。公演は、10月11日(木)東京・中野サンプラザ、11月8日(木)広島・JMSアステールプラザ大ホール、11月15日(木)大阪・梅田芸術劇場メインホール、11月29日(木)福岡・博多座にて開催。チケットは8月11日(土・祝)10:00より一般発売開始。一般発売に先駆け、チケットぴあでは7月28日(土)10:00よりプレリザーブの受付を開始。『千鳥の大漫才2018』【東京公演】日時:10月11日(木) 18:15開場 19:00開演会場:中野サンプラザ料金:5800円(全席指定)※5歳以上有料、4歳以下ひざ上無料(座席が必要な場合は有料)。【広島公演】日時:11月8日(木) 18:15開場 19:00開演会場:JMSアステールプラザ大ホール料金:5800円(全席指定)※5歳以上有料、4歳以下ひざ上無料(座席が必要な場合は有料)。【大阪公演】日時:11月15日(木) 18:15開場 19:00開演会場:梅田芸術劇場メインホール料金:5800円(全席指定)※5歳以上有料、4歳以下ひざ上無料(座席が必要な場合は有料)。【福岡公演】日時:11月29日(木) 18:00開場 19:00開演会場:博多座料金:5800円(全席指定)※4歳以上入場可(有料/ひざ上不可)。
2018年07月16日1993年に柳家小三治に入門、2006年の真打昇進後も芸術選奨新人賞を受賞するなど、古典落語への真摯な取り組みが高い評価を得ている柳家三三。昨年は、幕末から明治期の大作『嶋鵆沖白浪(しまちどりおきつしらなみ)』を毎月2話ずつ、6か月連続上演。三三自らが古い資料にあたって復活させた口演は、落語の味わい深さを表わして大きな話題となった。「来年もぜひ“続きもの”を」との声に押され、三三が今年選んだのは、創作落語で人気の三遊亭白鳥作『任侠流れの豚次伝(にんきょうながれのぶたじでん)』。昨年とは一転して、ブタを主人公にしたコミカルな“続きもの”に挑戦する三三に話を聞いた。【チケット情報はこちら】秩父の養豚場で生まれた子ブタの豚次は、上野や大阪、名古屋、果ては鳴門海峡にも旅するなか、任侠に生きる“流れの豚次”として成長していく。牛やチャボ、猿などさまざまな動物たちと出会い、戦い、友情を誓い合う豚次の運命はいかに……!日大芸術学部出身でユニークな芸風の白鳥と、ストイックなイメージの三三との組み合わせは意外なようだが、実は二人会も催すほど親しい仲。昨年、横浜にぎわい座で三三が本作を高座にかけた際は、「ひづめの形でボクシングしたり、“ウキー”と“ブー”でケンカのシーンが続いたり」(三三)という熱演で、客席をおおいに湧かせている。今回は8月から12月の5か月間、名古屋、大阪、広島、福岡の4都市にて上演。毎月2話ずつ観ていけば、最後の12月で全10話が完結する仕掛けだ。もちろん、1回(2話分)だけ観ても充分に楽しめるのは、『雨のベルサイユ』(第四話)、『男旅牛太郎』(第六話)など、ひとクセあるタイトルを見ても明らか。「羞恥心を乗り越えるという意味で、ハードルが高い演目」と憎まれ口を叩く三三だが、それでも「この無駄な(登場人物たちの)やりとりはなんだろうと思っていても、あとからそのシーンが生きてきたりと、意外に緻密な構成になってるんですよ」と本作の魅力を語る。「本作の下敷きになっている『清水次郎長』もそうですけど、講談や浪曲などは色んな人が口演することで普遍的な演目になっていきますよね。この“豚次”も、そうなるんじゃないかなと思っています」と、本作について話す三三。「僕らにしても、名作だからやらなければいけないという気はなくて、やっぱりその噺を好きだから、やりたいから、やるんですよね。お客さんと一緒にハラハラドキドキして楽しむという意味では、古典落語も新作落語も関係ないと思うんです」と三三は言う。「自分はこういうことも出来るんだな、という“自分の武器”がまたひとつ把握できた」という本作で、三三の魅力をたっぷりと味わいたい。公演は8月8日(水)愛知・愛知県芸術劇場小ホール、8月9日(木)大阪・グランフロント大阪北館4Fナレッジシアターにて始まり、4都市で5か月にわたって開催。チケットは発売中。取材・文/佐藤さくら
2018年07月13日2011年英国で初演、ローレンス・オリヴィエ賞で3部門を受賞した名作ミュージカル『TOP HAT』が2015年の来日版に続き、待望の日本人キャストで上演される。演出は英国のオリジナル版を手がけたマシュー・ホワイト、振付・衣装・セットもオリジナル版を踏襲する。勘違いが招く恋の大騒動を描いた本作は、1936年公開の同名映画を舞台化したもの。デュエット・ダンスが見もので、映画版でフレッド・アステアが演じた主人公ジェリーをV6の坂本昌行、ジンジャー・ロジャースが演じたヒロイン、デイルを多部未華子が演じる。公演に先駆け多部が来阪し、「念願のミュージカル作品」への意気込みを語った。ミュージカル「TOP HAT」チケット情報小学5年生で観たミュージカル『アニー』に感銘を受け芸能界へ。いつかはミュージカルにとの思いはあったが、現実には「歌もダンスも得意じゃない…」と幾度かのオファーにも二の足を踏む時期が続いた。「今回お話をいただいて、やる前からできませんと断って20代を終えるのは嫌だな」と思い直した。やれることはやってみたいと一念発起、約2か月間仕事をセーブして課題曲を猛特訓。年始に英国で行われたオーディションに挑戦し、見事合格した。演出家には、デイル役は「自立したかっこいい女性」など、演じるうえでのヒントを貰った。特に課題曲のタップシーンは思い入れが強いとも。「最初は、ジェリーに対してツンツンしているのに、だんだんと波長が合って、戸惑いながらも愛に変わっていく。一曲の中にデイルの気持ちが詰まっているんだよと教わって。ひとつひとつの振りにも意味があることを初めて知って、とても楽しかったです」。ダンスは不安だが振付はすべて頭に入っている。「単に踊るだけでなく、感情を乗せた踊りができればいいかな。坂本さんは経験豊富ですし、早く稽古を重ねて波長が合えばいいなと思います」。これを機にミュージカルへの出演が増えそう?「生意気なことを言えば、今のミュージカル界と映像界には境界線があると勝手に感じていて。きっと『TOP HAT』でも、なぜ私がヒロインに?と思っている人も少なくないと思います。今は私みたいにどちらもやりたいと思う俳優が本当にどちらの作品にも挑戦できる環境になればいいなと思う夢はあります。そうすればもっといろんな人と出会えるし、可能性が広げられる」。ミュージカルの魅力は「なぜか心が震えて感動して、前向きになれる」。そんな無条件の喜びをこの作品でも伝えたいと微笑む。「劇場で感じたハッピーな気持ちが翌朝まで続くような素敵な作品にしたい。興味を持っていただければうれしいです」。公演は、11月5日(月)から25日(日)まで東京・東急シアターオーブ、12月1日(土)から5日(水)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演。チケットは7月14日(土)10:00より一般発売開始。取材・文:石橋法子
2018年07月13日芸人のバカリズムが初めて2.5次元作品の脚本を手掛ける舞台「ひらがな男子」が7月20日(金)に開幕する。その稽古場に潜入した。【チケット情報はこちら】「ひらがな男子」は、2次元キャラ育成バラエティー『アイキャラ』(日本テレビ)で誕生した、“ひらがな”の1文字1文字を擬人化したキャラクター作品。原案はバカリズムで、今年5月には映画化もされた。初の舞台化となる本作は、脚本をバカリズム、演出を川尻恵太、出演は、主人公「あ」役の佐奈宏紀をはじめ、高橋健介や長江崚行、宇野結也ら2.5次元作品を中心に活躍する男性キャストが揃う。この日は稽古開始から約2週間というタイミング。稽古に参加していたのは、「あ」役の佐奈宏紀、「う」役の高橋健介、「た」役の稲垣成弥、「ち」役の武子直輝、「の」役の後藤大、「ふ」役の中村太郎、「よ」役の星乃勇太、そして子役である「ぁ」役の春日レイ、「ぃ」役の春日結心で、バラバラになったひらがな達を再び集めるために旅をする「あ」一行に、「た」や「よ」、「ふ」が仲間として加わるシーンをつくっているところだった。ポップでどこかのんびりした世界観だが、芝居はコメディ作品ならではの繊細さ。タイミングの確認、動作の整理などをしながら、絶妙なテンポと間(ま)をつくりこんでいく。印象的だったのは、キャスト達が積極的にアイデアを出す姿。「こうしたほうが面白い?」「こういうことしたらどう?」など、演出の川尻を中心に、キャスト同士もどんどん提案し合い、ブラッシュアップしていた。17人ものひらがな男子が登場するが、どのキャラクターも見た目、そして言動もインパクト抜群。ひとりひとりの個性が際立っていて、賑やかだ。そんななかで、小さい「ぁ」「ぃ」のふたりは癒しの存在。ふたりが台詞を喋ると空気がふんわり和み、大人のキャスト陣は思わず笑顔になっていた。芝居について話し合うキャスト達は楽しそうで、笑い声も多い稽古場。休憩中も「あのシーンって…」と意見を出し合っていた。そこから生まれる、舞台ならではの「ひらがな男子」をぜひ味わってほしい。また、舞台は2部構成で、1部は本編、2部では芝居仕立てのライブが披露される。2部では、本編にはない楽曲が披露されるそう。ぜひペンライトを振って楽しんで!公演は7月20日(金)から29日(日)まで、東京・AiiA 2.5 Theater Tokyoにて上演。取材・文:中川實穗
2018年07月13日劇団四季の人気ミュージカル『キャッツ』が、8月11日(土・祝)より東京・大井町の専用劇場で開幕する。首都圏では2012年にクローズした横浜公演以来、6年ぶりの上演だ。7月9日、その専用劇場「キャッツ・シアター」の内覧会が開催された。【チケット情報はこちら】『キャッツ』は“都会のゴミ捨て場”を舞台に、24匹の猫たちの生き様を描いていくミュージカル。日本では1983年に初演、これは日本初のロングラン公演となり、日本の演劇シーンの記念碑的作品となった。以降も、猫たちの個性的なダンスや、アンドリュー・ロイド=ウェバーによる美しい音楽が愛され各地で上演を重ね、国内での総公演回数は9802回を数える。6年ぶりの首都圏での公演は、現在『ライオンキング』を上演中の四季劇場[夏]に隣接する敷地に専用劇場を新設しての上演となる。吉田智誉樹代表取締役社長は「キャッツ・シアターは、キャッツ・ワールドを最大限に表現できる劇場。今回の劇場は1階席のみのアリーナ形式で、客席最後列からも舞台まで約20メートルと近く、どの席からも臨場感を味わえる。猫たちが縦横無尽に客席内を駆け回る体験型ミュージカルをお楽しみいただけたら」と、専用劇場ならではの魅力を語る。振付・演出スーパーバイザーの加藤敬二からは「『キャッツ』は1998年の福岡公演で演出・振付・衣裳など300か所以上の変更が入り、より野生的にパワフルになりましたが、さらに今回は楽曲の変更にともない、振付・ステージングに変更が入ります」と説明が。具体的には「『ジェニエニドッツ(おばさん猫)』のゴキブリたちのダンスシーンが変わります。また『マンゴジェリーとランペルティーザ(泥棒猫)』の曲調がチェンジし、初演のときには上演されていた(近年ではカットされていた)『ランパスキャット(ケンカ猫)』のナンバーが新しくなって復活します」と話した。キャッツ・シアターといえば、劇場内に飾られるゴミのオブジェも名物。これらのゴミは実物の3~5倍サイズで、劇場に足を踏み入れた観客はまるで自分が猫の目線になったかのような錯覚を覚える仕掛けだが、美術デザイナーの土屋茂昭は「このゴミのオブジェは人間が猫のサイズになるためだけに作られているのではない。キーワードは“思い出”。ここにあるものはすべて、お客さんにも“これが何なのか”がわかるもの。それぞれの人にとって思い出があるもの約3千点で、埋められています。思い出の品々がここに飾られている」と解説。さらに「この中に、四つ葉のクローバーをひとつだけ植えておきます。三つ葉のクローバーはいくつかありますが、四つ葉のクローバーは一個しかありません。ぜひ、探して見つけて、幸せになってください」と笑顔で話した。『キャッツ』は8月11日(土・祝)に開幕。なおこの公演期間中である今年11月11日には日本上演35周年を迎え、来年3月には日本公演通算1万回を達成する見込み。チケットは2019年1月公演まで販売中。2019年2月~6月公演分を7月21日(土)より販売開始する。
2018年07月12日2019年の再演も発表された主演ミュージカル『キューティ・ブロンド』で第43回菊田一夫演劇賞を受賞するなど、年々ミュージカル女優としての存在感が増す神田沙也加。最新出演作は、日本初演から55周年を迎えたミュージカルの金字塔『マイ・フェア・レディ』。昨年宝塚歌劇団を退団した元宙組トップスターで、本作が女優デビュー作となる朝夏まなととのW主演により、今秋全国6都市で上演される。神田は「ターニングポイントと呼べる役にしたい」と意気込んでいる。ミュージカル「マイ・フェア・レディ」チケット情報ロンドンの下町に暮らす花売り娘イライザ(朝夏まなと/神田沙也加)は言語学者のヒギンズ教授(寺脇康文/別所哲也)と出会い、訛りを矯正して淑女になるためのレッスンを始めるが……。オードリー・ヘップバーン主演の映画版でも知られる、胸弾むシンデレラストーリー。イライザ役といえば、神田が敬愛する大地真央の当たり役のひとつでもある。出演が決まり一番に報告すると、大地は泣いて喜んだという。「困った時は何でも相談に乗るけど、『まずは沙也加が思うイライザを』と、背中を押されました」男勝りな性格で毎日を楽しく暮らしながらも、ウィークポイントを突かれた瞬間、内に秘めた上昇志向がマグマのように吹き出す。イライザは「思いが何層にもなっている女性」と見る。「今までの役作りでは、お客様が思い描くイメージに近い優等生的な正解を出そうとしてきましたが、今回は『私はこう思う』とプレゼンテーションする形でもいいのかな。Wキャストの朝夏まなとさんと違って私はどこかの劇団出身だったり、アカデミックに演技を学んだ経験もないので、逆に思い付いたことは何でも試せるフリーダムの強味を活かしたい。朝夏さんとは宝塚の男役と娘役ほどの身長差がありますし、見た目も含めて全然違うイライザになると思います」先日、ひと足先に製作発表で楽曲を披露した。歌稽古では喜びのあまり「鳥肌が止まらなかった」と声を弾ませる。「ひとつひとつのことがすごく嬉しいんですね。ヒギンズ教授から教わって初めて正しく発音出来たときの、雷に打たれる感覚を私も早く経験してみたいですし、お客様が何を望んでいるのか、演劇ファンとしての目線も忘れたくない」。その上で、自信を持って役に挑みたいと力を込める。「10年前の私がそうだったように、2018年版の舞台を観てイライザを演じたいと思う方がいるかもしれない。その責任は絶対に負わないといけないですし、何度も自分を奮い立たせながら、毎回誇りを持って日本の『マイ・フェア・レディ』を提示していきたいと思います」公演は、9月16日(日)から30日(日)まで東京・東急シアターオーブ、10月19日(金)から21日(日)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演。その他、地方公演あり。大阪公演は7月14日(土)10:00より発売。取材・文:石橋法子
2018年07月12日演劇のみならず映像でも40年以上にわたって第一線で活躍しながら、この4月にはミュージカルに初挑戦するなど、常に驚きを与えてくれる風間杜夫。今年はさらに、自身にとって大きな挑戦となる舞台が待つ。アメリカを代表する劇作家アーサー・ミラーの『セールスマンの死』である。長塚圭史の演出によって上演される近代戯曲の名作にいかにぶつかっていくか。日本でも名優が演じてきた作品に、演劇魂を奮い立たせている。【チケット情報はこちら】『セールスマンの死』は時代も国も越えて上演され続け、今も多くの心を震わせている作品だ。主人公は、60歳を過ぎてかつての辣腕セールスぶりに精彩を欠いてしまったウィリー・ローマン。彼の死に至る最後の2日間を描いた物語には、「今に通じる生きることの困難さや家族の問題が、見事に表れている」と風間も語る。「人が介在しなくても買い物ができる今。セールスマンなんていう言葉は死語になっているのかもしれません。でも、夢を持って誠実に取り組んでいた仕事を突然失う残酷さや、息子たちの人生が上手くいっていないというような家族の問題は、今の時代にも変わらずあることだと思うので。立派な男ではないかもしれないけれども、ウィリー・ローマンの人生とその苦悩は、演じがいのあるものだと思うんです」出演依頼があった当初は、ためらいもあったそうだ。だが、「自分もこんな骨格の太い大きな芝居をやる年齢になったんだ」と覚悟を決めた。「これまで僕はどの役も、自分のなかにある共通項を探ってそれを大きく膨らませて演じてきました。でも、このローマンという役はそのやり方では抗しきれないくらい、一筋縄ではないかないのではないかと思います。改めて“役作り”ということをやっていかなければならないでしょうね。戯曲を何度も読んで、いろんな課題を見つけて。演劇の初心者に返る気がしてますよ(笑)」。キャリアを積んでなお困難なことに挑戦するのは「元気でいたいから。安心してラクなほうへいっちゃうとガクッときて使い物にならなくなっちゃうよ」と笑わせる。学生演劇からスタートし、様々な伝説の舞台を作ってきた人だ。「この舞台も若い人たちに観てもらって、後々、“お前、風間杜夫のセールスマンの死、観てたか?”って語られたいです(笑)」。69歳になった風間杜夫の熱、感じておかなければいけないのではないだろうか。公演は11月3日(土)から18日(月)まで、神奈川・KAAT 神奈川芸術劇場ホールにて。その後、愛知、兵庫を巡演。神奈川公演のチケット一般発売に先駆けて、プリセールを実施。受付は7月20日(金)午前11時から27日(金)午後11時59分まで。取材・文:大内弓子
2018年07月09日伝説のバレリーナが世界バレエフェスティバルに12年ぶりに登場する。1963年生まれの大スター、アレッサンドラ・フェリ。【チケット情報はこちら】彼女が2013年に復帰したとき、「えっ」と驚いたバレエ・ファンは多かったはず。1980年代から第一線で活躍するイタリア人ダンサーで、振付家ケネス・マクミランのミューズだった。マノンやジュリエットもフェリが踊ると別の物語のように情熱的になり、音楽も深い陰影を帯びた。2000年のWBFでマラーホフと『椿姫』を踊ったときは妊娠中だったが、大胆なリフトにも怖気づかず、逆にマラーホフが彼女を気遣って神経質になっていたのを思い出す。英国ロイヤル・バレエ団の名花として活躍したのちアメリカン・バレエ・シアタ―に移籍し、ジゼルやジュリエットなど多くのドラマティックなヒロインを演じた。2007年に日本でも引退公演を行ったが、復帰後はノイマイヤー振付『ドゥーゼ』、ウェイン・マクレガー振付『ウルフ・ワークス』に出演。エルマン・コルネホとのパートナーシップで新たな黄金期を築き上げている。技術的な衰えが全く感じられないのが信じられないが、今の彼女でしか見られない深い表現力にも注目だ。フェリと同じく小柄な体格で、客席の視線を独り占めしてしまうダイヤモンドのようなダンサーが、大人気スターのアリーナ・コジョカル。今年5月に来日した英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団での『眠れる森の美女』のオーロラも記憶に新しいが、去年の秋に出産をして短期間で復帰を果たした奇跡のバレリーナでもある。古典からノイマイヤーの『リリオム~回転木馬』のような人間の心の痛みを描き切ったドラマティックなバレエまで完璧主義のテクニックで踊り、音楽性も演劇性も世界最高峰のレベル。愛らしいルックスと優雅なオーラは生まれつきのプリンセスのようだが、プリンシパルをつとめたキエフ・バレエを1年で退団したあと、英国ロイヤル・バレエ団に移籍してコールド・バレエから登り詰めたという叩き上げの経歴ももつ。現在はハンブルク・バレエとイングリッシュ・ナショナル・バレエに定期的に出演。舞台に現れただけで空間全体が明るく輝きだす存在感は、やはり神に選ばれたダンサーならではのもの。バレエ・ファンを魅了してやまない愛くるしさと、どこまでも求道的でストイックな生き方が魅力的だ。彼女が踊り続ける限り、1回でも多くその姿を目に焼き付けたいと思っているファンは多いはず。絶頂期のプリマの輝きを見逃すべからず。アレッサンドラ・フェリ、アリーナ・コジョカルが出演する第15回世界バレエフェスティバル(Aプロ、Bプロ)は8月1日(水)から12日(日)まで、東京・上野の東京文化会館大ホールにて。チケット発売中。文:小田島久恵
2018年07月09日昨年のNHK紅白歌合戦で、三浦大知と「無音ダンス」を披露した4人組と聞けばピンと来る人も少なくないはず。AAA、東方神起、EXOなど国内外の有名アーティストの振付を担い、ダンサーとして様々な舞台で活躍するshoji、kazuki、NOPPO、Oguriの4人からなる男性パフォーマンス・ユニットs**t kingz(シットキングス)、通称シッキン。米最大級ダンスコンテスト「BODY ROCK」で2010年・2011年と2年連続優勝を果たしたのを機に世界進出、これまで訪れた国は20ヵ国以上。国内では2015年のPARCOの広告(CD:箭内道彦)起用を皮切りに、翌年、フランス本社からの指名によりHERMESのパーティーで実演。SONYの公式パートナーとして世界最大級テクノロジーフェス「SXSW」で披露したショーが「カンヌ国際広告祭」で賞を獲得するなど、近年加速度的に人気、知名度が急上昇。いま最も注目しておきたいエンタテイナーだ。「s**t kingz」チケット情報2013年には単独公演をスタート。ダンスとマイムで物語る“無言芝居”を確立し、脚本に漫画家ヤマザキマリを迎えた2016年公演では約2万人を動員。今秋には2年ぶり4回目の単独公演『The Library』を全国7都市で上演する。物語は図書館に集う男たちの友情をコミカルに描くもの。センターステージ、大小のホールと会場ごとに3つの演出を構想する10周年記念公演だ。「常に変化し続けるのがシッキンらしさ」と語るリーダーのshoji。均整のとれたボディ&ダンスで「セリフを使わず物語をどう伝えるのか、演劇好きの方にも観てほしい」と作品の質の高さにも自信を見せる。一方で「もっと気楽に」とは、セクシー担当のkazukiだ。「良い意味での軽さもシッキンの持ち味のひとつ。普段舞台は観ないという方も、僕らの舞台から初観劇を始めてみませんか?」スタッフ陣も強力で、メインビジュアルを「渡辺直美展」などを手掛けるアートディレクター吉田ユニが担当。Webで公開中の公演PVではグラミー賞ノミネートの音楽プロデューサーstarRoが楽曲を提供している。「落としたら終わりという本を手渡しする振付など、息の合ったパフォーマンスは10年続ける中で磨かれたもの。仲の良さや遊び心も見どころ」と話す自然体のNOPPO。流麗なダンスと高身長でも目を惹くシッキンのマスコット的存在だ。最後に頭脳派の熱血漢と呼びたいOguriが、ユーモアたっぷりに締め括る。「リーズナブルにテーマパークのような感動が味わえるのが僕らの舞台。ディズニーランドは遠いしUSJは値上がりして…とお困りの関西の方、ぜひシッキンへ!(笑)」公演は、9月12日(水)のプレビューを経て13日(木)から20日(木)まで横浜赤レンガ倉庫1号館3階ホール、11月9日(金)から11日(日)まで大阪・サンケイホールブリーゼ、11月21日(水)から23日(金・祝)まで東京国際フォーラムホールCにて上演。その他、地方公演あり。チケットは7月7日(土)10:00より発売。小学生から対象の割引チケットあり。取材・文:石橋法子
2018年07月06日今年『ポーの一族』を成功に導いた宝塚歌劇団花組トップスター・明日海りおに、7月13日(金)開幕の新たな大劇場公演について話を聞いた。【チケット情報はコチラ】ミュージカル『MESSIAH(メサイア) -異聞・天草四郎-』で演じるのは、江戸時代初期に起きた島原の乱の総大将・天草四郎時貞。16歳の少年という史実に縛られず、「異国を旅し、海賊として生きていた荒々しい男が天草に流れ着き、そこで慈しむ心や人の温かさに触れて成長していきます」と、オリジナルな魅力が加味されている。5月の博多座公演終了後、天草へ足を運び縁の地を巡った明日海。「美しい海に島々が点々とある景色も目に焼き付けました」と役作りは万全だ。キリシタン弾圧の中でも神を信じる民衆を、自分が救えたらと立ち上がる四郎の熱い思いは、現代的な扮装のキーとなった “赤”に込められている。「衣装に合わせ、髪色にも赤を取り入れています。『心を勇気の赤に燃やそう』というような歌詞もあります。今日は赤を身につけてきましたが、やはり気合いが入ります」と微笑む。「四郎は、信仰心の厚い人たちに神はなぜ手を差し伸べて下さらないのか、というもどかしさや憤りが強くなりますが、憎しみや復讐のために立ち上がるのではなく、自分たちで“ハライソ”、天国を築こうとする姿を描いています。そこがこれまで描かれてきたものとは少し違うように感じます」。宝塚歌劇、そして明日海ならではの天草四郎が誕生する。ショー・スペクタキュラー『BEAUTIFUL GARDEN -百花繚乱-』は、明日海が蝶になって登場する「真夜中の舞踏会のようなプロローグ」から始まり、観客の心をつかむ。「今の花組はそれぞれが自信に満ち、色々な個性が咲き誇っています。今回はお芝居もですが、先生があえて本人の持ち味とは違う役の振り方をして下さっているようで、みんなにとって挑戦です」。明日海がマタドールで魅せる場面では、情熱的な女優に扮するトップ娘役の仙名彩世と踊り、ローマの場面ではグラディエーター役の明日海に、美女に扮する男役スター・柚香光が絡む。「仙名とは場面ごとにしっかり組んで踊るので、息の合ったコンビ感をお届けしたいです」トップスター就任5年目を迎え、「さらにお客様に驚き、感動していただけるように」と高みを目指すストイックな明日海だが、表情は柔らかだ。「もっとこうしたい、と思うのはみんなが成長してきたからこそ。初舞台公演を終え花組生になった下級生も参加し、新しいメンバーで作る“今”を楽しんでいます」。常に組子への想いを胸に前進する。公演は7月13日(金)から8月20日(月)まで兵庫・宝塚劇場、9月7日(金)から10月14日(日)まで東京・東京宝塚劇場で上演。取材・文:小野寺亜紀
2018年07月06日お笑い芸人・東京03の第20回単独公演『不自然体』が、7月4日(水)、東京・新国立劇場 中劇場で開幕。そこで記念すべき20回目の公演を間近に控えた、東京03の飯塚悟志、角田晃広、豊本明長に話を聞いた。【チケット情報はコチラ】約4か月をかけ、全国12都市で27公演を行う東京03の3人。中には同じネタを何度もやることに“飽き”を感じる芸人もいるが、どうやら彼らは違うらしい。「ネタをやるのは単純に楽しいですし、特に単独の場合、今自分たちが1番面白い!と思っているものを新ネタとして披露出来るわけですからね。そこはより多くの人に観てもらいたいって気持ちの方が強いです」(飯塚)。「僕はどっちかっていうと役者気質なので(笑)、飽きるってことはまずありません。地方によっても、回によっても反応が違いますし。それも含めて楽しめちゃいますね」(角田)。「ちょっと飽きて、また面白くなってみたいな周期が、ネタ毎にそれぞれあるんですよ。今回であれば7本ネタがあって、常にそのうちのなにかは面白い。つまり公演中飽きることはないんです」(豊本)。ネタづくりの段階では相当難航したようだが、公演初日を直前に控えた今、3人はその仕上がり具合について「かなりいい」と自信をのぞかせる。「今回は『不自然体』ってタイトルとの絡みもうまくいったと思います。不自然な状況も多いですし、不自然な人も多く出てきますし」(飯塚)。「いい感じに不自然だと思いますね。まぁコントって、どれも不自然っちゃ不自然なんですけど(笑)」(角田)。「確かにね。自然だとコントとして成立しないかも(笑)」(豊本)。「つまりは万能でいいタイトルだと思いますよ」(飯塚)。すでに7月の東京公演は完売しているが、新たに東京・ガーデンホールでの追加公演6回が決定。10月13日(土)には各地でライブビューイングも行われる。「角ちゃんは過去、ライブビューイングで全敗していますからね(笑)」(飯塚)。「そう、絶対間違えるんですよ。せりふが飛んだり、噛んだり。大画面で大勢の人が見ていると思うと、ドキドキしちゃうんです。俺、プレッシャーに弱いんで!」(角田)。「ハハハハ、だせえな!」(飯塚)。「先に間違えてくれるので、こっちとしてはありがたいですけどね」(豊本)。「まぁ20回目の単独ですし、今回も派手に決めますよ!」(角田)。「すげぇ困るんだよな~、それ宣言されちゃうと」(飯塚)。「テロですよ、テロ(笑)」(豊本)。取材・文:野上瑠美子《追加公演チケット販売スケジュール》詳細は下記チケットリンクをご確認ください・いち早プレリザーブ:7月17日(火)12:00~7月22日(日)23:59・プレリザーブ:7月20日(金)12:00~7月25日(水)23:59・一般販売:8月4日(土)10:00~《東京03オフィシャルアプリ" TOKYO03 Company"》第20回単独公演「不自然体」開催期間中は、入会キャンペーンを実施中!詳細は公式HPをご確認ください。
2018年07月04日篠原涼子が13年ぶりの舞台出演、そして初となる主演を務める『アンナ・クリスティ』。ロンドン・ウエストエンドでは全公演ソールドアウトを記録した、ノーベル賞作家であるユージン・オニールの初期の傑作だ。演出は、日本を代表する演出家・栗山民也。出演には、佐藤隆太、たかお鷹 、立石涼子、原康義、福山康平、俵和也、吉田健悟と実力派が揃う。これまでもオニール作品『夜への長い旅路』、『喪服の似合うエレクトラ』『氷屋来たる』の3作品を演出。『喪服の似合うエレクトラ』では朝日舞台芸術賞も受賞している栗山が、自身が手がける4作品目のオニール作品となる『アンナ・クリスティ』について語ったコメントが届いた。「ユージン・オニール作品を演出するのは4回目ですが、この作品はオニールが1921年に執筆し、その年のピューリッツァー賞を受賞しました。ピューリッツァー賞はトニー賞とは違い、広い文化全般にわたる賞ですが、その作品に対し当時の演劇評論家は案外辛口の批評をしています。それがどんなことかというと、ラスト・シーンが妙に甘ったるいハッピーエンドに終わっているというのです。だけど、僕はそうは思わなかった。最後、アンナとマットは結婚で結ばれますが、父親であるクリスと旦那になるマットは終始言い争いをしています。そのふたりがケープタウンに同じ船で行くことになったという結末、これはまさに偶然の喜劇です。アンナはひとり残され、また冷たい孤独の世界に入る。その3人はまた再会できるのだろうかという凄く不安な状況の中でこの物語は終わります。充分、悲劇なのです。オニール作品には必ず相反するふたつのものがあり、このラスト・シーンでは悲劇と喜劇、あるいはひとりの人間の心の中にある喜びと絶望、あるいは狂気と理性、具体的なことを言うと海と陸、まさに地獄と天国のような対極的なものが必ずひとつの台詞の中に同居しています。それが闘いながら物語が進む、そのふたつがぶつかり合いながら物語を前に押し出しているという、ものすごく演劇的なものが熱くあぶり出された作品になっているのです。だから声に出すと初めて見えてくることが多い作品だと思えるのです」舞台『アンナ・クリスティ』はよみうり大手町ホールにて、7月13日(金)から29日(日)まで上演。大阪公演は、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて、8月3日(金)から5日(日)まで。チケットは現在発売中。
2018年07月04日