幼少期より神童と崇められた天才音楽家、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの歓喜と苦悩に満ちた35年の生涯を鮮烈に描き出す、ミュージカル『モーツァルト!』が4年ぶりに上演される。『エリザベート』で火がついたウィーン・ミュージカル人気を不動のものとした記念碑的作品。以降も日本では、脚本・歌詞ミヒャエル・クンツェ、音楽・編曲シルヴェスター・リーヴァイ、演出・訳詞小池修一郎という黄金トリオが数々のヒット作を量産する。昨今のミュージカルブームの先駆けとなった名作が初演から16年を経て新演出版として登場する。ミュージカル「モーツァルト!」チケット情報美術、音楽、脚本がブラッシュアップされる中、主演には山崎育三郎とのダブルキャストで新顔の古川雄大が大抜擢。その妻コンスタンツェには前作からの続投で平野綾、さらに生田絵梨花、木下晴香の若手ふたりが初役で挑む。演出の小池から「若手ふたりの見本となるように」と託されたという平野は「期待に応えたい!」と気合い十分だ。平野は東京児童劇団の出身。アイドルや声優の活動を経て、近年は舞台女優として着々と評価を高める。『レディ・ベス』『レ・ミゼラブル』『ブロードウェイと銃弾』など出演作も幅広く、とりわけ小池修一郎、福田雄一演出作への出演が続く。「小池先生には常に一挙手一投足を見られている緊張感があり、だからこそ自分を高められる。また福田さんには毎日アドリブをプレゼンしなくてはいけないという質の異なる緊張感があります。近年はおバカな役、正当派ヒロインが交互に続いたこともあり、役の幅が広がりました(笑)」デビュー20周年、30歳の節目となった昨年は思いきって仕事をセーブしNYへ留学。ボイストレーニングではアレクサンダー発声法を座学から学び直した。「いかに自分の体を酷使せず最高のパフォーマンスを引き出せるか。息の長い役者をめざし、骨格や筋肉の仕組みから学びました」。帰国直後の主演舞台『レディ・ベス』では小池から「歌が全く変わった」と太鼓判を押された。今作でも成長の一端を感じられるはずだ。「今回のコンスタンツェでは女の業や憎悪みたいな部分を表現したい。前回は技量や当時の年齢感もあり、迫力を出し切れなかったことが一番悔しかったので。4年でどう変わったのか自分が一番知りたいですし、いろんなものを総動員して若手の見本となるような演技をお見せしたいです」平野は同じ作詞・作曲家が手掛ける作品群の中でも『モーツァルト!』が一番好きだという。「主人公が男性で音楽家でもあるので、作品が持つ魂の叫びみたいなものは、そのままクリエイター陣の本心でもあるのかなと。そのパワーにすごく引き寄せられる感覚があるので。私は天才に寄り添う凡人の悩みや胸中を深く掘り下げて演じたい。ネットで全世界と繋がれる今の時代だからこそ、ここでしか味わえない生の舞台の特別感やドキドキを一緒に楽しんで頂ければと思います」公演は、5月26日(土)から6月28日(木)まで東京・帝国劇場、続いて大阪・梅田芸術劇場メインホール、名古屋・御園座でも上演。チケットは発売中。取材・文:石橋法子
2018年05月15日英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団の日本公演がまもなく開幕、英国発のふたつの傑作バレエが上演される。主演ダンサーのひとり、プリンシパルの平田桃子に、上演作品の魅力、見どころについて聞いた。英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団チケット情報英国第二の都市といわれるバーミンガムを拠点とする彼ら。「年間130公演のうち、半分以上は英国内外をめぐるツアーなんです」と話す平田だが、3年ぶりとなる日本公演には、やはり格別の思いを抱いているよう。「前回とはメンバーもがらりと変わり、私はいまや年長のほう。皆を引っ張っていかねばというプレッシャーもあります」と、その重圧をはねのけるかのように、華やかな笑顔を見せる。前芸術監督、ピーター・ライトが手がけた『眠れる森の美女』で幕を開ける日本公演。平田はつづく後半の演目『リーズの結婚』に主演する。英国バレエの巨匠、フレデリック・アシュトン(1904~1988)の代表作のひとつで、「英国ならではの、ストーリー性の強い、楽しさにあふれたバレエ」とその魅力を説く。舞台は、のどかで美しい田園風景のなか。平田演じるリーズが、金持ちの息子との結婚をすすめる母シモーヌに反発、恋人コーラスと結ばれるまでの騒動を描くコメディ色たっぷりのバレエだ。「リーズは、ちょっと私と似ているかもしれません。天真爛漫で、恋におちたらもう──(笑)!地のままでいけるんじゃないかなって思います」と笑うが、「いろんな要素、いろんな魅力が詰まった作品。きっと楽しんでいただけます」とも。たとえば、入団した年(2003年)に初めてこの作品で踊った第1幕の雌鶏!「着ぐるみで踊る役なので、動きにくいし、前は見えないし(笑)。でもこれがまさに英国バレエならでは、大きな見どころ。アランの役者ぶりも、シモーヌの木靴の踊りも、コメディならではのタイミングで笑いを誘います。主役ふたりのリボンを使った踊りや最後のパ・ド・ドゥはしっとりと感動的だし、ダイナミックなリフトなどテクニックの見せ場もある」と、話は尽きない。コーラス役を踊るゲスト、マチアス・エイマンの登場も目が離せない。「パリ・オペラ座バレエ団のエトワールとして長年活躍されてきた方ですから、共演すると聞いた時はもう大喜びでした。先週初めて一緒にリハーサルをしましたが、その技術の精確さ、美しさに目が釘付けに。お互いに自然に出てきたものを返し合う──。いい手応えを感じています!」英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団日本公演は5月18日(金)から20日(日)が『眠れる森の美女』、5月25日(金)から27 日(日)が『リーズの結婚』、いずれも東京文化会館にて。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2018年05月10日宝塚歌劇月組公演『エリザベート』の制作発表会が5月8日に都内にて開催された。実在したオーストリー=ハンガリー帝国皇后の人生をモデルに、皇后エリザベートと黄泉の帝王トート(死)との愛憎をドラマチックに描くミュージカル。宝塚では1996年の初演から各組での上演を重ね、10回目の上演となる今回の月組公演では、月組トップスター・珠城りょうがトートを、トップ娘役・愛希れいかがエリザベートを演じる。チケット情報はこちら歌劇団の小川友次理事長が「宝塚にはふたつの宝がある。ひとつは『ベルサイユのばら』、もうひとつがこの『エリザベート』。『ベルサイユのばら』は昭和に生まれましたが、この『エリザベート』は平成の宝」と語る名作に、いま勢いのある月組が挑む。演出を手掛ける小池修一郎は「いまの月組はたいへんユニーク。それぞれの個性があり、それが固まっていないところが魅力。その月組が『エリザベート』という定番の作品に出合い、どのように新しい命を吹き込むかを楽しみにしています」と話す。さらに小池は主演の珠城について「珠城は“健康的”なスター。ただトートというのは、本人が死んでいるのではなく、死のエネルギーを表現している役。死のエネルギーというものは時に世界を滅ぼすほどの力がある。珠城は“エネルギッシュな死”を演じてくれるのでは」と、新しいトート像に期待を寄せる。また、エリザベートを演じる愛希はこの公演での退団を発表しているが、彼女についても「本当にこの役が彼女の集大成になる。エリザベートという女性は、初代の花總まりさん(1996年・98年)が演じた“儚げ”な美貌の王妃という作り方と、大鳥れいさん(2002年)や、瀬奈じゅんさん(2005年)が演じた“力強い”女性像という作り方がある。愛希はその両方の接点を表現していくことができるんじゃないか」と話した。珠城自身も「このお話を伺った時には驚きました。前回(小池が演出した)『All for One ~ダルタニアンと太陽王~』では“太陽と土の匂いがする”と言われる生命力溢れる青年を演じたので…」と、その配役が意外だったことを告白。ただ「自分にないものに挑戦させていただけるのは役者冥利につきる。諸先輩方が繋いできたこの『エリザベート』という作品の息吹を感じつつ、今の月組にしかできない『エリザベート』をお届けしていけたら」と意欲を燃やす。愛希も「エリザベート役をさせて頂くことが本当に幸せですし、身が引き締まる思い。まだ稽古前で漠然としていますが、彼女の少女らしさを大切に演じたい」と意気込みを話していた。公演は8月24日(金)から10月1日(月)まで兵庫・宝塚大劇場、10月19日(金)から11月18日(日)まで東京宝塚劇場にて上演される。兵庫公演は7月21日(土)、東京公演は9月16日(日)にそれぞれ一般発売開始。
2018年05月09日中井智彦コンサート「I Live Musical!Ⅲ」が5月11日(金)に東京・ヤマハ銀座スタジオで開催される。劇団四季では『美女と野獣』主演、『オペラ座の怪人』ラウル役などを演じ、2015年12月の退団後は、歌手、ミュージカル俳優として活躍するほか、表現者として自身の企画・作曲・構成・演出の独り舞台なども手掛ける中井。そんな彼自身によるプロデュースのコンサートシリーズの第3弾。どのような内容になるのか話を聞いた。【チケット情報はこちら】「昨年開催した『I Live Musical!』シリーズ2作では、90分1本勝負でミュージカル・コンサートをお届けしてきたのですが、今回は2部構成にして、“演じる”要素を強めたステージにしようと思っています。2部はこれまでの内容を引き継いだミュージカル・コンサート。そして1部は、とある男の生涯を辿る“ひとりミュージカル”に挑戦します」と、第3弾にして新たな表現に挑む今作。「ずっとこういうことがやってみたくて、ようやくカタチになる」と笑顔を見せた。1部の“ひとりミュージカル”について「歌には、恋する嬉しさや、その人自身の人生だったり、身近な人への思いを歌っている曲など、いろんなものがありますよね。それをひとりの男の人生に投影して演じていきます。1曲1曲を脚本に見立てているので、“脚本家がたくさんいるミュージカル”というイメージです」と構想を語る中井。楽曲は、椎名林檎や井上陽水などのJ-POPからシャンソン、中井自作の歌詞もあり、2部で届けるミュージカルナンバーとはまた違った選曲だ。2部のコンサートは、これまでも好評を得てきた1曲入魂スタイル。「“1曲をひとつの物語として生きる”というもので、曲に合わせてどんどん登場人物が変わっていきます。MCを挟んで、照明が変わった瞬間に次の曲の役になっている、というような。これまでは自分で選曲していたのですが、今回はリクエストでいただいていた『ラ・ラ・ランド』なども歌いますよ!」取材中、「歌を歌にしたくない」と語った中井。コンサートと銘打っているが、歌を披露するステージとはまた違う、彼の身体を通すことで“歌”の全く違う側面を楽しめるものになりそうだ。「『I Live Musical!』はもう僕のライフワーク。これが軸になっているから、いろんなことに挑戦できているんだと思います。中井智彦の歌へのエネルギーを120%ぶつけていくステージなので、ぜひ生で観て、感じていただきたい。その中でお芝居の面白さも感じてもらえたらと思います!」公演は5月11日(金)に東京・ヤマハ銀座スタジオにて。チケットは発売中。取材・文:中川實穗
2018年05月08日ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“はじまりの巨人”が4月28日(土)に開幕、それに先がけ公開ゲネプロと囲み取材が行われ、取材には主人公・日向翔陽役の須賀健太、影山飛雄役の影山達也、縁下力役の川原一馬、照島遊児役の船木政秀、中島猛役の柳原凛、演出・脚本のウォーリー木下が登壇した。【チケット情報はこちら】古舘春一の人気バレーボール漫画を舞台化し、2015年の初演からシリーズ5作品目となる今作。“小さな巨人”と呼ばれる選手のプレーに魅せられバレーボール(=排球)を始めた日向が、その選手が所属していた烏野高校排球部に入部し、仲間やライバルと共に成長していく物語。今回の舞台は春高バレー予選。変幻自在な攻撃スタイルの条善寺高校、“小さな巨人”にプレースタイルが似た中島が所属する和久谷南高校との熱戦が描かれる。須賀は「新しいチーム(条善寺・和久谷南)は動けるキャストばかりで、アクロバットやダンスに特化したパフォーマンスがあるのですが、僕ら(烏野)は物語上でもそれを吸収していく立場で…」と苦労を語りつつ「毎公演、全力でお届けできるようにがんばります!」と意気込む。影山は「かいてきた汗は嘘をつかない。最後まで全力で駆け抜けます!」、川原も「今回は縁下がドラマをつくります。僕らの世代がつくる新しい演劇のカタチも作品を通して観ていただけたら」、船木は「条善寺らしく、楽しんで盛り上げていきたいです!」、バレー経験者でもある柳原は「和久南戦で描かれる、練習が辛くてズル休みをしてしまうところ、だけどバレーをしたい気持ちが勝つところ、ピンチサーバーの手の震え、(経験者として)鮮明に浮かびました」とそれぞれコメント。ウォーリーは「“はじまりの巨人”ということで、初演で日向が憧れた小さな巨人を中心に描いています。なので自然と初心に返りました。今までやってきたことを踏まえ、かつ次の公演につながるような、未来のある作品になれば」と話した。アクロバティックな動きが楽しい条善寺高校、華やかなダンスで魅せる和久谷南高校との試合はどちらも演劇「ハイキュー!!」らしさ満載。主役校・烏野高校による、数々の対戦相手たちから吸収したものが感じられるパフォーマンスには、これまでのエピソードも呼び起こされる。さらに、音駒高校と梟谷学園高校の試合や、白鳥沢学園高校のエース・牛島若利の初登場、青葉城西高校、伊達工業高校の映像出演など、見どころたっぷりの公演となった。「3年やってきたからこその作品」(須賀)という本作は5月6日(日)まで東京・日本青年館ホールにて上演中。兵庫、福岡、宮城、大阪を巡演し、6月8日(金)から17日(日)まで東京・TOKYO DOME CITY HALLにて上演される。(C)古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会
2018年05月02日尾上菊五郎が「團菊祭五月大歌舞伎」の夜の部『弁天娘女男白浪』で、音羽屋のお家芸である弁天小僧菊之助を演じる。4月、菊五郎の取材会が開かれた。【チケット情報はこちら】「初めてやらせていただいたのが昭和40年、22歳の時。その後、(菊五郎)襲名もこの演目でやりましたし、節目節目に、様々な劇場でやらせていただきました」と、菊五郎は振り返る。弁天小僧菊之助といえば、婚礼間近の娘として登場し、男であることが発覚して片肌を脱ぐ“見あらわし”で有名。女方と立役の両方が求められるその芸を、菊五郎はメジャーリーグで活躍する大谷翔平選手に引っ掛けて「今流行りの二刀流の究極」と評する。今では押しも押されもせぬ当たり役だが、演じながら悩んだ時期もあったという。「最初は、煙管や赤い鹿の子の布をどう出すか、お金をどこに入れるかといった手順、あとは捨て台詞も難しくて、つい現代語のようにペラペラペラペラと言ってしまい、あとで台詞がなくなって困ったこともあります(笑)。それでも怖いもの知らずで、30代までは勢いでやっていたけれど、40代に入り、あまりに何度もやらせていただくので、悩んでしまって。立役がよくなってくると女方が気になるし、女方を一生懸命やると今度立役が……となるんです。完成品ではありませんから、今回も、色々勉強することになるでしょう」「白浪五人男」の通称でも知られる本作。日本駄右衛門、弁天小僧菊之助、忠信利平、赤星十三郎、南郷力丸の5人の盗賊が並ぶ「稲瀬川勢揃の場」も、本作の見どころのひとつだ。「古い歌舞伎座で五人男をやった時、“10年後にやって、誰も抜けてないだろうなあ”と言ったら“そんなことないよ”と答えた夏雄ちゃん(市川團十郎)が一番先に逝き、それから寿(坂東三津五郎) も逝って、非常に寂しい思いをしました。今回、新しい歌舞伎座の五年祭にあたり、この辺りで一遍やろうかなと。(市川)左團次さんのようにずっと一緒にやってくださっている方もいる一方、(尾上)松緑も(尾上)菊之助も揃うし、(市川)海老蔵くんの日本駄右衛門も初めてだと思う。鳶頭も(故・尾上)松助がやっていたから(息子の尾上)松也にやらせます。(芸の継承を)意識して配役を決めました」若い世代に伝えたいことを問われると、「言葉の間(ま)と、歌舞伎の江戸っ子言葉。“ひゃく“と言わず“しゃく”と言うわけですが、あんまり“しゃくがにしゃくと……”と言われるとゾッとしちゃう。昔の江戸っ子はそう言ったかもしれないけど、歌舞伎としてお客さんの前でやる場合の発音はひゃとしゃの間くらいだと思います。若い人達には、映像だけではなく、一緒に演じることで、感じを覚えておいてほしいですね」今75歳。少年である弁天小僧を演じるにあたり、姿勢に気を使い、体重も落としていると語る。円熟味と若々しさが同居する珠玉の芸を味わいたい。團菊祭五月大歌舞伎は、5月2日(水)から26日(土)まで、歌舞伎座にて。チケットは発売中。取材・文:高橋彩子
2018年05月02日1994年に、十八世中村勘三郎と串田和美のタッグで開始した渋谷・コクーン歌舞伎。その第十六弾『切られの与三』が5月に上演される。公演に先立って製作発表記者会見が行われ、演出の串田、補綴の木ノ下裕一、出演の中村七之助、中村梅枝が登壇した。【チケット情報はこちら】この『切られの与三』は、三代目瀬川如皐が書いた歌舞伎『与話情浮名横櫛』を再構成するもの。主人公は、小間物問屋の若旦那・与三郎と芸者・お富。木更津の浜で恋に落ちたふたりだが、お富が土地の親分・赤間源左衛門の囲われ者であったことから、与三郎は源左衛門とその手下に身体中を切りつけられてしまう。変わり果てた姿の与三郎がお富と再会する「源氏店」の場面は、「しがねえ恋の情けが仇」の名台詞と共に有名で、今もしばしば上演されている。中学生か高校生の頃、十一世市川團十郎が演じる与三郎を観たという串田は「与三郎が傷を受けながら生き抜いていくさまに、ずっと興味を持っていました。(コクーン歌舞伎で上演した)『三人吉三』にしろ『東海道四谷怪談』にしろ『夏祭浪花鑑』にしろ、原作を読むと、朝から晩まで芝居を上演していた江戸時代から現代に至るまでに落としてしまった面白いものもある。遠い昔の関係ない話ではなく私達の話として上演したい」と語る。また、現在、補綴の作業中である木ノ下は「“傷”がひとつのテーマになるのではないかと思います。傷は何かの痕跡であり、そこには記憶も眠っている。原作は10年ほどの歳月を描くお芝居で、与三郎の周りの環境も彼の立場も社会も変わっていきます。社会全体の傷を与三郎が負っているような読み方のホンにできれば。その上で、串田監督のイメージが様々に重なって今に繋がっていくと思います」と言う。そして今回、与三郎を演じるのが七之助だ。「父が残してくれた宝物のひとつであるコクーン歌舞伎をやらえてもらって嬉しく思います。コクーン歌舞伎立ち上げ当初の、父や串田監督や(中村)芝翫の叔父が稽古場で作り上げた熱量は今も変わりません。それはどんな人にも平等で誰の意見も聞く串田監督が作り上げてくれた空気です。今回は不慣れな立役ですので手探りで、私なりに良いものにしたい」と意気込んだ。与三郎の相手役・お富を演じるのは、梅枝。「お富は、古典では1度させていただいていますが、古典は形から入る部分がありますので、この機会にお富の精神・内面を、イチから作り上げていければと思います。七之助の兄さんは年が近い女方の先輩。尊敬し、嫉妬しています。相手役を勤めることで、教えをいただき、それから兄さんにない良い所も多分あると思うので、そこが上手くはまっていけば」と抱負を述べた。「渋谷・コクーン歌舞伎 第十六弾 切られの与三」は、5月9日(水)から31日(木)まで、東京・シアターコクーンにて。チケットは発売中。取材・文:高橋彩子
2018年05月02日言葉を超え、国境を超えて笑いと感動を届けるパントマイムのふたり組、が~まるちょばが、毎年恒例の全国ツアーに向けて動き始めた。赤モヒカンのケッチ!と黄モヒカンのHIRO-PONのふたりに、待望の全編新作でのぞむという「サイレントコメディーJAPAN TOUR 2018」について話を聞いた。【チケット情報はこちら】2018年の活動はロシアでスタートしたというふたり、「年末年始に2泊4日で行ってゲスト出演、それから2月にロシア三大都市で単独ライブでした」とケッチ!。全世界を舞台に活躍している彼らだが、意外にも彼らにとってはこれがロシアでの初の公演だったそうで、「これまで行った35カ国の、どの国にもなかった独特の感覚」(HIRO-PON)、「手強いお客さんだと、かえって燃えます!」(ケッチ!)と新たな手応えを掴む。その後もマレーシア、シンガポールなどをめぐり、現在、全国ツアーにむけて、まずはHIRO-PONによる作品づくりが進行中という。その構成は、前半がエンターテインメントショー「が~まるSHOW」とショートスケッチ、後半が長編のストーリーもので、なかでも彼らの9作目となる長編は、新作としては2014年の『"Yes"』以来4年ぶりの意欲作だ。が、「パントマイムは、お客さんの中で想像を膨らませて観てもらいたい」と、HIRO-PONは中身を明かさない。「先にお伝えできるのは作品のタイトルだけ。なんだけど──それもまだ決まっていなくて(笑)」とも。彼らの長編作品といえば、「これがパントマイム!?」と新鮮な驚きを与えつつ、皆を夢中にさせる独特の魅力をもつ。たとえば一昨年再演して話題となった『街の灯』(2006年初演)に代表されるように、言葉なしにふたりで何役をも演じ分け、ドラマを伝え、笑いだけでなく、感動の涙をもたらす。「ただ、原点回帰も考えているんです。最初のころ、長編は“笑い”だけで創っていて、お客さんの心を大きく動かす作品なんて、僕らにはまだ早い、と思っていた。徐々に手応えを感じ、シリアスな要素を反映させるようになったけれど、いっぽうでコメディ色が弱くなってしまって、という感覚も。いま僕は、“が~まるちょばがやるからこそ面白い” ものを創らなければ、と考えているんです。この人、もっと面白いだろうな、もっとケッチ!の新しいものを引き出したいな」とのHIRO-PONの言葉にケッチ!もニヤリ。絶妙なパートナーシップから繰り出される、笑いにあふれた舞台が期待される。が~まるちょばサイレントJAPAN TOUR 2018は7月12日(木)~15日(日)の東京・新国立劇場を皮切りに、2019年1月まで全国23か所で上演。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2018年04月27日日本初上演から約3年の時を経て2019年に再演されることが決定したブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』<日本版>。初演に続き主演を務める小池徹平と三浦春馬のビジュアル撮影現場に潜入した。本作は、経営不振に陥った老舗靴工場の跡取り息子・チャーリー(小池)が、ドラァグクイーンのローラ(三浦)と出会い、差別や偏見を捨て、ドラァグクイーン専門のブーツ工場として再生させるまでを描いたブロードウェイミュージカル。トニー賞では6部門を受賞したヒット作で、日本版上演時にはブロードウェイのオリジナルスタッフが集結。シンディ・ローパーが全曲作詞作曲したキャッチーな音楽、演出、振付はそのままに、演出協力・上演台本を岸谷五朗、訳詞を森雪之丞が手掛け、大好評を博した。ビジュアル撮影はそんな人気作の再始動という待望の瞬間。日本初演のライブ録音盤音源が流れ活気に満ちるスタジオに、チャーリーとローラの姿になったふたりが揃って登場すると、現場のテンションは一気に上昇した。チャーリーはスーツ&トランクス、ローラはド派手で真っ赤な衣装で、共に初演から引き継がれたあのブーツ姿!ふたりとも初演を観た人ならピンとくるスタイルだ。カメラの前に並ぶと、三浦のドラァグクイーン姿はやはりインパクト抜群。ローラこだわりの7&ハーフインチ(10㎝超)のヒールも三浦が履くとさらに迫力が増し、ローラという存在を際立たせる。それに対してチャーリーは、トランクスにピンヒールのブーツというアンバランスな組み合わせで、ローラとは真逆とも言える姿。そうやって全く違う色を持ちながら絶妙なバランスで馴染むふたりに、この作品のストーリーを思わされる。音楽にノッて、時折一緒に歌いながら、時折舞台での振り付けを再現しながら、次々とポーズをつけていくふたり。カメラマンからの「もっとハジけて!」「もっといけるはず!」という熱いリクエストにもどんどん応え、現場の温度を上げていく。「キャー!」と言って笑い合ったり、一緒に片足を上げてみたり、息ピッタリでカメラに向かう様は、再演ならではのコンビネーション。そうやって撮られた写真をモニターで見た三浦は「すげえ!」とカメラマンに拍手。その後もふたりで楽しそうに写真を見る姿から出来栄えが伝わってきた。撮影後、小池は「再演が決まって嬉しかった」と話し、「(この撮影のような)役どころに近づく作業はいつも楽しい」と笑顔。三浦も「久しぶりのブーツは気分を上げてくれた。みんなが本気になってつくり込んでいく感じが楽しかった」とコメントした。これから徐々に公開されていくビジュアルにぜひ期待してほしい!公演は2019年4月から5月まで東京・東急シアターオーブで上演。チケットぴあでは、今後発表されるチケット発売情報をメールで受け取れるお気に入り登録を受付中。取材・文:中川實穗★★以下のリンクより「キンキーブーツ」をお気に入り登録して、情報をゲットしよう!
2018年04月27日4月27日(金)開幕の星組宝塚大劇場公演、RAKUGO MUSICAL『ANOTHER WORLD』は、落語噺「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」「朝友」など、死後の世界が舞台の落語噺を散りばめたユニークな作品。星組トップスター・紅ゆずるは、「キャラクターのほぼ全員が死んでいる、これまでにない世界観ですけど(笑)、とても明るい物語。“あの世”は楽しいところで、思い切り人生を全うした人間しか楽しい思いはできない、というようなものを提示したいです」と意気揚々と話す。【チケット情報はこちら】紅の役は、大坂の両替商の若旦那・康次郎。大坂の菓子屋の嬢さん・お澄(綺咲愛里)と、あの世で結ばれるかと思いきや、閻魔大王がお澄に惚れて康次郎ひとりに地獄行きの沙汰を下す。「上方のはんなりとした二枚目の役なので、礼 真琴が演じる江戸の二枚目との対比を見せていきたいです。どんどん仲間が増えていくのですが、今回はみんなに役の特徴的なものを出してもらい、私が周りに踊らされるようにしたいです」。組子たちの成長を温かい目で見守りつつ、コメディセンスの新たな面に磨きをかける。今作は落語が題材の作品を発表してきた演出家・谷正純の新作。「谷先生がずっと温めてこられた作品なので、絶対に成功させたいです」。役作りのため寄席にも足を運び、落語の面白さを研究した。「人情ものなので役として一本通ってないといけない。人形浄瑠璃の振付になっている『崇徳院』の場面も、注目していただきたいです。私は全場出演、早替わりが多く息つく間もないのですが、お客様に『いい物語だったね』とほのぼのとしてもらえたらと思います」同時上演のタカラヅカ・ワンダーステージ『Killer Rouge(キラー ルージュ)』は、紅の多彩な魅力に迫るショーで、10月開幕の台湾公演でも上演される。熱狂的に迎えられた2013年の台湾公演以来、台湾で写真集を撮影するなどこの地を愛してきた紅にとって夢の舞台に。「台湾公演で主演とは、本当に嬉しいです。先日制作発表で伺った時、朝ウォーキングをしていたら横を宝塚歌劇のラッピングバスが通り、『すごいな』と思いました」と笑顔。「とにかく“押せ押せ”の激しいショーですが、全場面で印象を変えたいですね」。今作がお披露目公演の第104期初舞台生を、紅の初舞台作品『LUCKY STAR!』のように、トップスターが紹介する粋な演出もあるという。「私も当時とても嬉しかったので、特別な気持ちで紹介したいです!」。ハートに溢れた紅ならではの舞台が繰り広げられるだろう。公演は4月27日(金)から6月4日(月)まで、兵庫・宝塚大劇場。6月22日(金)から7月22日(日)まで、東京・東京宝塚劇場にて。兵庫公演のチケットは発売中。取材・文:小野寺亜紀
2018年04月27日元宝塚歌劇団のスターと、音楽大学出身の男性ヴォーカル・グループ、LE VELVETS(ル ヴェルヴェッツ)が共演を果たす『SHOW STOPPERS!!』。『オペラ座の怪人』『レ・ミゼラブル』など有名な作品を中心に、歌とダンスでおくる今作について、稽古開始間もない元雪組トップスター・壮一帆に話を聞いた。「SHOW STOPPERS!!」チケット情報壮は『GEM CLUBⅡ』で、力強い歌声から粋な男役ダンスまで多彩なパフォーマンスを披露したばかり。「現役時代とは違う私の姿をお客様も楽しく観てくださり良かったです。身体もどんどん慣れましたし、この感覚が冷めないうちにまた全然雰囲気の違うショーに出る事が出来るのは嬉しいです」近年ミュージカルでも大活躍のLE VELVETSとは初共演。「デュエットもあり早速音合わせをしましたが、素敵な歌声でドキドキしちゃいました。今回は必然的に女性パートを歌うのですが、デュエットのバランスの為にキー調整が難しい事や、男役時代にはメロディラインを歌うことが多かったので、はもり慣れておらず、今は必死です」と打ち明ける。重厚な歌声が印象的なLE VELVETSだが、宮原浩暢は水泳のジュニアオリンピックで活躍、佐藤隆紀は剣道2段と意外な一面も。「え!? それは頼もしいですね。私剣道初段だから負けたー! 体育会系だったらすぐ打ち解けられそうで楽しみです」と明るく笑う。「第1幕では『ハロー・ドーリー!』などジェリー・ハーマンの曲を、2幕は女優になったからこそ歌わせて頂く事が出来る曲を歌わせていただきます。王道ミュージカルのナンバーでは“ヒャホ!”となりますね」と肩をすくめ、壮流に喜びを表現する。「自分の中でまだ納得できていない高いキーのボイスを、いかにお聴かせ出来るか課題です。『男役で歌ってほしい』と言われているところもあるので、両方の声を使い分け芸のキャパシティを広げたいです」と意欲的だ。湖月わたるを筆頭とする男役OG(メインキャスト)の中では最下級生に。「今、元男役の方がどのように女優へと変化されているのか、自分自身も含め興味津々なので、間近で研究しちゃいそう。私は2番手時代に動物や悪人など色んな役をさせて頂き、退団後もまるで同じ運命のように、様々な役を経験させて頂いていますが、それを楽しんでいる自分がいます。ファンの方も想像の斜め上をいく姿を(笑)、楽しみにしてくださりありがたいですね」。そんな壮一帆というパーソナリティを、ショーでは常に意識したいと話す。「目上の方への礼節は忘れず、宝塚の時以上に一個人として輝きたい」。女優として舞台人として、さらにステップアップした姿を見られるに違いない。6月1日(金)から8日(金)まで東京国際フォーラム ホールC、6月19日(火)から24日(日)まで大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演。チケットは発売中。取材・文:小野寺亜紀
2018年04月25日毎年この時期になると、観客を楽しませてくれる丸美屋食品ミュージカル『アニー』が今年も上演。その公開ゲネプロが4月20日、東京・新国立劇場 中劇場で行われた。【チケット情報はこちら】『アニー』といえば、1977年にブロードウェイで開幕、日本では1986年から毎年上演され、老若男女から愛され今も多くのファンを魅了し続ける有名ミュージカル。1933年大恐慌後のニューヨークで孤児のアニーが逆境の中にあっても明るく前向きに立ち向かい、持ち前の優しさで周りの大人たちを変えながら幸せを掴んでゆく様が描かれる。実は本作、昨年から数々の国内外のミュージカルを手がけてきた山田和也が演出を担当、登場人物の台詞や劇中の音楽、舞台美術から衣装までも一新し、新たな『アニー』として話題を集めている。筆者、それまでの『アニー』も大好きですが、アールデコ風のセットや管楽器が印象に残る名曲ナンバーやテンポの良いやりとり、そしてアニーが愛するワンちゃん、サンディまでも犬種が変わってる!と大興奮、同じストーリーでありながら違った作品を見ているような新鮮さがある一方で、いつ見ても変わらないアニーの一途な想いや優しさに涙ぽろり。ゲネプロ後の囲み会見では、厳しいオーディションを勝ち抜きアニー役を射止めた新井夢乃(アライ ユメノ)、宮城弥榮(ミヤギ ヤエ)、ウォーバックス役の藤本隆宏、ハニガン役の辺見えみりが登場。本番への意気込みを語った。公開ゲネプロを披露してくれた宮城は「今日はあっという間でした!全体的にとても良い雰囲気になっているので、お客様に楽しんでもらえたら」と満面の笑みでコメント。新井は「孤児院の仲間たちとも一生懸命お稽古したので、1回1回大切にやっていきたいです。特に『N.Y.C』のシーンは見所です!」とアピール。昨年に続いて2年目の出演になる藤本は、「昨年お客様がとても感動してくださり、僕自身も沢山の感動を頂いたので、自信をもって昨年以上に感動を届けたい。昨年からのキャスト陣はよりパワーアップ、笑える箇所も増えています」。かつては、母・辺見マリも同役を演じた辺見は「稽古場で皆で作り上げてきたものを、ようやく出すときが来たという感じ。母親が演じるのを見ていた役柄を自分を演じると思うとウルッと来るものがあります。とにかく精一杯演じたいと思います!」と、皆さん作品への愛情やお互いへのリスペクトが溢れっぱなし。藤本さん、辺見さんはアニー役のふたりを「とにかく物怖じしない。子役ではなく、ひとりの俳優として素晴らしい!」と大絶賛。様々な逆境に遭いながらも、明日を信じるアニーの姿は子供だけでなく私達大人も沢山の勇気と感動がもらえるはず。すでにご覧になった事がある方も初めての方も、ぜひリニューアルした昨年からさらにパワーアップした『アニー』、主人公アニーはもちろん、魅力溢れるキャスト達に会いに是非劇場に出かけてみては?公演は5月7日(月)まで、東京・新国立劇場中劇場にて。その後、全国を周る。取材・文:ミカマイコ
2018年04月23日毎回さまざまな男女のペアで上演される朗読劇『私の頭の中の消しゴム10th letter』が4月27日(金)より東京・よみうり大手町ホールにて上演される。【チケット情報はこちら】2010年5月26日に初演の幕が開き、今回で10回目を迎える朗読劇『私の頭の中の消しゴム』。ふたりだけのキャストで織り成す2時間の朗読劇は、ハンカチなしでは観られない号泣ラブストーリーとして人気を博し、これまでに出演したペアは76組を超える。上演に際し、5月4日(金・祝)15時、5日(土・祝)19時の回に出演する別所哲也、紫吹淳ペアからコメントが寄せられた。「朗読劇『私の頭の中の消しゴム』記念すべき10回目の公演!おめでとうございます。そしてその記念公演に参加できること本当に光栄です。僕の役者人生に大きな衝撃を与えてくれたこの作品に自分自身の経験を重ね、また再会できることの喜び!運命かどうか、わからないですが、そこにある出会いと偶然を、確信にしていくこと。そして自分自身の生き様にしていくこと、そしてその源にあるものは、やっぱり愛と情熱だ!ということ。それを教えてくれたこの作品に心から感謝しています。ありがとうございます!」(別所哲也)「この作品の初演に出演させて頂き、今回が3回目の出演です。記念すべき10回公演に参加できます事を光栄に思います。台本を頂いて、お稽古から本番まで何度涙した事でしょう。ふたりが出会い記憶を失うまでのふたりは本当に面白く楽しい会話が多く、記憶を失い始めてからの会話からは愛が溢れています。悲しく、辛いかも知れません、でも愛がいっぱい詰まった究極のラブストーリー。素晴らしい愛に満ちたお話を是非観にいらして下さい」(紫吹淳)公演は、4月27日(金)から5月6日(日)まで東京・よみうり大手町ホール、5月12日(土)から13日(日)まで大阪・サンケイホールブリーゼにて上演。チケットは発売中。
2018年04月20日人気漫画を原作に、市川猿之助が歌舞伎化したスーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)『ワンピース』が、大阪松竹座で4月1日に開幕した。スーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)「ワンピース」チケット情報2015年に新橋演舞場で初演され、大阪での上演は今回が2度目となる。昨年の東京公演では、主人公のルフィとハンコックの二役を演じる猿之助が怪我をして降板したが、この大阪公演で復活。東京公演で猿之助の代役を勤めた尾上右近とWキャスト、LED映像などの最新技術を駆使した新演出で上演中だ。本作で描かれるのは、大人気エピソード「頂上戦争編」。大秘宝ワンピースを探す麦わらの一味は、シャボンディ諸島での海軍との戦いの中で散りぢりになってしまう。ひとりになってしまったルフィは、白ひげ海賊団の一員だった兄エースの処刑宣告の知らせを聞き、海底監獄に救出に向かう。重傷を負いながらも侵入不能の海底監獄を突破するルフィだが、エースは海軍本部に移送された後だった。そしてエースを公開処刑しようとする海軍と、ルフィや白ひげ海賊団との間で壮絶な決戦が繰り広げられる…。冒頭の影絵の映像と音楽から期待感が高まり、第一幕から第三幕まで、どの場面も見せ場しかないほどの楽しさだ。ルフィをはじめ、麦わらの一味のひとりひとりが順番に名乗りをあげ、10人そろって見得を切る場面は鳥肌立つほどにカッコいい。立廻りでも、入れ替わり立ち替わり見せ場がある。ルフィがひとり辿り着いた女ヶ島、アマゾン・リリーでは、ルフィと女帝ハンコックを二役早替りで魅せるほか、ゴムゴムの伸びる腕ダンスを披露。さらに第一幕のクライマックスは、往年の紅白歌合戦さながらで、舞台一面にハンコックの真っ赤な衣装が広がるなど、次から次へとワクワクさせる演出が続く。第一幕を終えて興奮冷めやらない中、第二幕、第三幕と、その興奮をさらに高める演出で魅せる。オネエキャラのイワンコフが率いるニューカマーランドでは、タカラヅカのような羽根を背負ったニューカマーの人たちが、華やかなレビューを展開。さらにその後、ステージ上に大滝が出現し、10トンもの本水を使った大立廻りが繰り広げられ、クライマックスはサーフボードに乗ったルフィが、ゆずの『TETOTE』が流れる中、宙乗りで3階後方へと進んでいく。音楽ライブのように客席もタンバリンを鳴らしながら総立ちで盛り上げる。漫画らしいコミカルさと、歌舞伎ならではのカッコよさのバランスが絶妙で、観る者をグイグイと引き込んで離さない。楽しいばかりでなく、仲間や兄弟の絆を感じさせる場面では涙を誘う。見どころしかない上に、セリフも現代語で、歌舞伎を見慣れていない人、『ワンピース』の知識がない人でも十分に楽しめる。初日公演前には猿之助が「大阪松竹座はコンパクトな分、より迫力を感じられると思います。滝のシーンでは1階席の真ん中くらいまで水しぶきが飛んできます(笑)。怪我のないように気をつけつつ、皆さまに楽しんでいただけるよう頑張ります」とコメント。公演は4月25日(水)まで。ダイジェスト映像も参考に、連日大盛況を見せている大阪松竹座へ!取材・文:黒石悦子
2018年04月13日芸歴56年の中尾ミエが出演のみならず自らプロデュースを手掛け、自身のライフワークとも語るミュージカルが2015年の初演以来、4年連続で上演される。その「ザ・デイサービス・ショウ2018」は、4月12日(水)東京・明治座を皮切りに、北は北海道から南は鹿児島まで14か所で開催。若者主体のカンパニーでもなかなかハードだが、本作の舞台は高齢者施設で、キャストは最年長81歳の正司花江を筆頭にシルバー世代中心なのだから、より驚かされる。初演から不変のメンバーを率いて、プロデューサーとしても辣腕を発揮する中尾に話を聞いた。【チケット情報はこちら】本作立ち上げのきっかけは、「自分が行きたいと思うようなデイサービスを作りたい」と思ったこと。93歳で亡くなった父親と最期まで自宅で暮らした経験も、背景にあると言う。「父は寝たきりとかではなくて元気だったんですけど、“何もすることないっていうのが1番辛い”と言っていたんです。生きていればやっぱり、自分が役に立っていると思いたいじゃない?だから年寄りは甘やかさなくていいのよ(笑)。ただの趣味とかじゃなく人様に喜んでもらえたり生きがいにつながるような、そして毎日何かしらやることがあるものを提供できるデイサービスがあればいいのになって思っていました。私にとっては、この作品こそが理想のデイサービス。プロデューサーというより、デイサービスの経営者ね(笑)」登場人物たちが見つけた新たな生きがい、それはロックバンド!かつてのスター・矢沢マリ子(中尾)の提案により、高齢者施設の老人たちが「昔取った杵柄」でロックバンド“Newビンテージ”を結成する。ちなみにバンドメンバー役のキャストは、初演時に初めて担当楽器に触れた者が大半だそう。同じメンバーでコツコツと練習を積み重ね、今回で4年目。平均年齢70歳を越えたパワフルバンドは舞台上での展開と同様、日々成長・進化を遂げている。「セリフにもあるんですけど、何かを始めるのに遅すぎることって絶対にない。私はもう古希を過ぎたし、世の中的にはお役御免の年齢。でもまだ元気だし現役でいたいと思ったら、自分から発信していかなきゃいけないと思って、舞台のプロデュースを始めたんです。そしたらもっと元気な先輩がいっぱいいたので(笑)、“まだ10年ぐらい大丈夫かな?”って、かえって自信をもらいました」この前向きな姿勢は、若者世代だって見習いたい!東京公演は4月15(日)まで、その後全国を巡演。チケットは発売中。取材・文:武田吏都
2018年04月12日映画界の巨匠イングマール・ベルイマン監督の『夏の夜は三たび微笑む』から着想し、ミュージカル界の同じく巨匠スティーヴン・ソンドハイムが作曲・作詞を手掛けたミュージカル『リトル・ナイト・ミュージック』が、4月8日に東京・日生劇場で開幕した。主人公のデジレ役に大竹しのぶ、その元恋人フレデリック役に風間杜夫。日本を代表する俳優同士の27年ぶりの共演が、なんとミュージカルで実現したことでも話題を呼ぶ。また演出は、自身も女優・歌手で、本作出演経験のある英国人マリア・フリードマンが務める。チケット情報はこちら19世紀末のスウェーデン。弁護士フレデリック(風間)は、18歳の若妻アン(蓮佛美沙子)との結婚生活が11か月経過した今も彼女に手が出せずにいる。前妻との息子ヘンリック(ウエンツ瑛士)は、年下の義母アンに密かに恋心を抱いている。ある日、フレデリックとアンは芝居を観に行くが、その主演女優はフレデリックのかつての恋人デジレ(大竹)。デジレとフレデリックは14年ぶりに接近するが、デジレにもカールマグナス伯爵(栗原英雄)という恋人が。既婚の彼はデジレと堂々と不倫中で、あろうことか妻シャーロット(安蘭けい)に、デジレとフレデリックの関係を探らせる。奇妙な縁で結ばれた6人はやがて、デジレの母と娘が住む郊外の屋敷で顔を揃え……。北欧の短い明るく暖かな時期を思わせる薄明るい照明の下で、登場人物たちがワルツを踊っている幕開き。パートナーを替えながら舞う様子が、これから繰り広げられる波乱の恋愛模様を暗喩しているかのよう。登場人物は誰もが、特に恋愛においては、自分の気持ちに正直だ。義母への秘めた恋であるはずのヘンリックでさえ、彼女を前にすると想いがあふれ出てしまう(当人のアンだけ気づいていない)。正直な感情と、複雑な人間関係。アンバランスな両者を取り持つのが、ミュージカルといえど安易な“歌い上げ”を許さぬ、ソンドハイム独特の難解なメロディラインだ。風間・蓮佛らミュージカル初挑戦組もベテランも、“音階のパズル”とでも呼びたい独特のピッチへの苦労は想像に難くないが、ソンドハイム2作目にして楽曲を自分のものにしている大竹をはじめ、いわゆる“芝居歌”を歌える芝居巧者で固めた布陣が吉と出ている。結果、メロディの複雑さに阻まれることなく、正直な肉声が切々と届いてくるのだ。演出のフリードマン曰く、「この物語は間違った相手と恋に落ち、最終的には正しい相手と結ばれるというお話」。今のコンプライアンス社会ではとても真似できないおとぎ話かもしれないが、自分に正直な人間とはかくもチャーミングなものかとハッとさせられ、わずかな勇気をもらった気がする。公演は4月30日(月・祝)まで同劇場にて。5月には大阪・梅田芸術劇場メインホール、静岡市清水文化会館(マリナート)大ホール、富山 オーバード・ホールでも上演される。チケットはいずれも発売中。(取材・文:武田吏都)
2018年04月11日映画監督・黒澤明の没後20年を記念し、彼の代表作のひとつである『生きる』が、珠玉のキャスト、スタッフによりミュージカル化される。今秋の開幕を前に、都内で製作発表が開かれ、Wキャストで主人公の渡辺勘治を演じる市村正親、鹿賀丈史らが登壇した。会見冒頭にはキャストが劇中ナンバー4曲を生披露。まずは小説家役であり、ストーリーテラーの役割も担う新納慎也が、オープニングナンバーの「運命の曲がり角」を歌う。『生きる』をどうミュージカル化するのか、というのは恐らく多くの人が抱く疑問だろう。しかしこの1曲を聴くだけで、ミュージカルとしての『生きる』の道筋がくっきりと浮かび上がってくるよう。その繊細ながらも力強いナンバーは、これから始まる物語への期待感を大いに高めてくれる。続いてヒロイン・小田切とよ役のMay’n、唯月ふうか(Wキャスト)が歌うのは、アップテンポなナンバー『ワクワクを探して』。さらに新納とのWキャストで小説家を演じる小西遼生が、渡辺にとって大きな転機となるナンバー『人生の主人になれ』を熱唱する。そして最後に市村と鹿賀のふたりが登場。あの名シーンを彷彿とさせるブランコをバックに、本作を象徴する昭和の名曲『ゴンドラの唄』を哀愁たっぷりに歌い上げる。そんなふたりの歌声に、一般公募で招待された150名のオーディエンスも聴き入っていた。その後は作曲・編曲のジェイソン・ホーランド、演出の宮本亜門、歌唱披露した6名に加え、渡辺の息子・光男役の市原隼人、渡辺の上司である助役役の山西惇が一堂に会し、それぞれ作品にかける思いを語った。演出の宮本は、「これは悲しい作品ではありますが、“生きる”という喜びを心から味わえる作品。古いどころか、むしろ今の人々の心に一段と訴えるものが出来ると思います」と意欲を見せる。市村はかつて自分が演じる渡辺と同じく胃がんを患っていたことを挙げ、「こういう役がきたのも、芝居の神様の采配かな」と感慨深げ。鹿賀も「いい年齢の時に、本当にいい作品に巡り合えた。ぜひ自分のものにしたい」と意気込む。また市原は、体調が優れない自分の父親から教わったという「動けるうちにいろんな世界を見た方がいい」との言葉に背中を押され、これまで避けてきたミュージカルへの出演を決めたという。世界進出も視野に、ミュージカルとなって新たに生まれ変わる名作『生きる』。黒澤ファンならずとも必見の舞台になりそうだ。取材・文:野上瑠美子
2018年04月11日フランス革命前夜の熱狂と興奮を3組の男女の姿を通して描く、愛と感動のフレンチ・ロック・ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』が待望の再演。日本では宝塚歌劇団月組の上演に続き、2016年に新たなアレンジを加えた東宝版が初演され、連日完売に沸いた大ヒット作だ。東宝版で初演同様、加藤和樹とのダブルキャストで主演のロナン役を務めるのが小池徹平。ゼロからの立ち上げに苦労した初演を振り返り、「ふんどしを締め直して頑張りたい」と気合いを込める。ミュージカル「1789-バスティーユの恋人たち-」チケット情報18世紀末のフランス。理不尽な理由で父親を貴族に殺された農夫ロナン(小池徹平)は故郷を後にパリへ出る。そこで、ロベスピエール(三浦涼介)、ダントン(上原理生)、デムーラン(渡辺大輔)ら仲間たちと出会い革命に身を投じるが、ある日、王妃マリー・アントワネットの侍女オランプ(神田沙也加・夢咲ねね)と運命的な出会いを果たして…。躍動感のある演出に期待して欲しいと話す小池。「パリ市民が一丸となる前半の楽曲『パレ・ロワイヤル』ではアクロバティックな演出が飛び出したり、王宮側と対立する場面では戦いがクランプというダンスで表現される。終盤、革命派による自由が現実味を帯び始めると、全員の集中力が一気に増すので、演じていても非常に熱い気持ちになりますね。体力的にも絞り出すような感じの作品なので、毎日芝居にダンスにと汗だくで稽古をしています」再演では、台詞の言い回しや動きが細かく見直され、「より物語が伝わりやすくなった印象」と言う。また、宝塚版で主演のロナン役を演じた元月組トップスターの龍真咲が今回、マリー・アントワネット役で女優デビューを飾るなど、新キャストの加入も見所のひとつだ。「今の龍さんにロナンの面影はどこにもありません。佇まいも歌声も非常に女性らしく、本番ではどこまで進化するのか楽しみです。また、ロベスピエール役の三浦涼介さんは、僕が上京したての10代の頃からの知り合いです。当時から歌やダンスが達者な方なので、稽古場でも充実した表情を見せていますね。新たなロベスピエールを見せてくれると思います」小池にとって本作は、初の帝国劇場主演作。初演では、舞台中央からの景色を噛み締めていたと明かす。「ラストシーンでは、僕だけがすべての客席を見渡せるような場所にいるので、あそこからの光景にはジーンと込み上げるものがありました。感慨深かったですね。再演ではまた違うありがたみがあるというか。経験を積んだ分、より価値のある光景として、重く受け止められるんじゃないかな」揺るぎない成長の証を、ぜひ劇場で見届けて欲しい。「台本を読み直すと作品や役に対する感じ方が前回と微妙に違っていて、自分でも変化や成長を感じます。実際、歌唱では音域や表現方法が増えたので、今の自分にしかできないロナンがお見せできると思います」公演は、4月9日(月)から5月12日(土)まで東京・帝国劇場、6月2日(土)から25日(月)大阪・新歌舞伎座、7月3日(火)から30日(月)まで福岡・博多座にて上演。取材・文:石橋法子
2018年04月06日4月4日、俳優の城田優(32)がミュージカル『ブロードウェイと銃弾』のチーチ役で第「43回菊田一夫演劇賞」演劇賞に輝き、自身のTwitterで喜びを伝えた。 城田はTwitterで「この度、この度、第43回菊田一夫演劇賞をいただきました」と報告。「チーチは、紛れもなく、スタッフ、キャスト、そして劇場に足を運んで下さったお客様と、一緒に造った役です」とコメント。改めて「『ブロードウェイと銃弾』に関わった全ての皆様に感謝です。 心から、ありがとうございます。」と感謝した。 これに対しファンは、「おめでとうございます!めちゃめちゃ嬉しいです〜優君のチーチ、本当に最高でした!」「とっても良かったから受賞できて私達ファンも嬉しい」「優くんの努力が最高の形で実を結んだね。本当にさすがとしか言いようがないです」と受賞を祝福する声が相次いでいる。 菊田一夫演劇賞は劇作家菊地一夫の功績を記念し、大衆演劇の舞台ですぐれた業績を示した芸術家(作家、演出家、俳優、舞台美術家、照明、効果、音楽、振付、その他のスタッフ)を表彰する賞。 「第43回菊田一夫演劇賞」は演劇大賞にミュージカル『ビリーエリオット〜リトル・ダンサー』上演関係者一同が輝いた。 また菊田一夫演劇賞には『ブロードウェイと銃弾』のチーチ役で受賞した城田のほかに『Sing a Song』三上あい子役で戸田恵子(60)が。さらに『キューティ・ブロンド』エル・ウッズ役の神田沙也加(31)、『ベルリン、わが愛』『ドクトル・ジバゴ』の脚本・演出を務めた原田諒が受賞した。
2018年04月04日第43回菊田一夫演劇賞が4日発表となり、ミュージカル『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』上演関係者一同が菊田一夫演劇大賞に輝いた。同賞は、演劇界の巨星・菊田一夫氏の名を冠し、大衆演劇の舞台ですぐれた業績を示した芸術家(作家、演出家、俳優、舞台美術家、照明、効果、音楽、振付、その他のスタッフ)を表彰する賞。ミュージカル『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』が、舞台効果の高さを評価され大賞に選ばれた。日本では『リトル・ダンサー』として知られる映画『BILLY ELLIOT』を2006年にイギリスでミュージカル化した同作。世界でも数々の賞を受賞している。映画で同作の監督を務めたスティーヴン・ダルドリーが演出を務め、エルトン・ジョンが音楽を担当した。イギリス北部の町の少年・ビリーが、炭鉱労働者の父に反対されながらも、バレエダンサーとしての才能を開花させていく。1,346人から抜擢された5人の少年たちが主演を務めた。菊田一夫演劇賞には、『ブロードウェイと銃弾』でチーチ役を演じた城田優、『Sing a Song』三上あい子役の演技が評価された戸田恵子、『キューティ・ブロンド』エル・ウッズ役の神田沙也加、『ベルリン、わが愛』『ドクトル・ジバゴ』の脚本・演出を務めた原田諒が選出された。また、菊田一夫演劇賞特別賞は永年の作曲及び音楽活動の功績がたたえられ、甲斐正人が受賞した。
2018年04月04日宝塚歌劇団宙組が誕生20周年を迎えた今年、新トップコンビに真風涼帆(まかぜ・すずほ)、星風(ほしかぜ)まどかが就任。その大劇場お披露目公演『天(そら)は赤い河のほとり』『シトラスの風-Sunrise-』が、3月16日、兵庫・宝塚大劇場で開幕した。宝塚歌劇宙組『天(そら)は赤い河のほとり』『シトラスの風-Sunrise- ~Special Version for 20th Anniversary~』チケット情報第一幕の『天(そら)は赤い河のほとり』は、1995年から2002年まで『少女コミック』(小学館)で連載された篠原千絵の人気少女漫画をミュージカル化。紀元前14世紀、古代オリエントのヒッタイト帝国を舞台にした歴史ファンタジーで、国内外の覇権争いを、第三皇子カイル・ムルシリと現代からタイムスリップした女子高生・鈴木夕梨(ユーリ)の恋愛を絡めて描いた物語だ。さまざまな人間関係やエピソードを凝縮させ、スピーディーにテンポよく展開している。登場人物たちが歌い継ぎ、観客を物語の世界へと引き込むプロローグ。真風が扮するカイルは、知的で爽やかな佇まいで、古代のコスチュームもぴったりとハマっている。カイルとユーリが出会う序盤では、カイルの失脚を狙うナキアのたくらみを察知し、壁ドンでユーリを匿った後、軽々とお姫様抱っこをして去っていく…という漫画から飛び出してきたかのような美しさとカッコよさ、惚れ惚れするほどの包容力で魅せる。芹香斗亜(せりか・とあ)扮する、敵対するエジプト軍の隊長ウセル・ラムセスとの迫力ある立ち回りも見どころのひとつだ。ラムセスは一見軽い印象だが、自国への熱い思いを持った男で、芹香が緩急のバランスよく表現している。星風が演じるユーリは純粋で真っ直ぐ。華奢ながらも正義感にあふれ、敵にも臆することなく立ち向かっていく快活な少女を好演している。ほかにも、冷酷無比な黒太子マッティワザを演じる愛月(あいづき)ひかる、ナキアに仕える神官ウルヒ役の星条海斗(せいじょう・かいと)など、それぞれに存在感があり、漫画から抜け出たようなビジュアル、佇まいでも魅せる。第二幕は1998年の宙組誕生時に上演されたレビューで、誕生20周年を迎え、新場面を加えての上演となる。プロローグは、グリーン、ブルー、イエローなど、シトラスカラーの爽やかな衣装をまとった青年と娘たちがズラリ。テーマ曲を歌い継ぎながら、総踊りで華やかに幕開けする。本公演で退団する星条の見せ場、名場面「明日へのエナジー」、男役が白燕尾姿で踊る場面など、見どころたっぷりのロマンチック・レビューを展開している。真風を筆頭に、新生宙組の輝きを堪能できる『天(そら)は赤い河のほとり』『シトラスの風-Sunrise-』は、4月23日(月)まで兵庫・宝塚大劇場にて。東京公演は5月11日(金)から6月17日(日)まで東京宝塚劇場にて開催。東京公演のチケットは4月8日(日)発売開始。取材・文:黒石悦子
2018年04月03日漫画家・松本零士の代表作であるSF作品『銀河鉄道999』が、記念すべき40周年の今年、音楽劇となって再誕する。1979年に公開された劇場アニメのストーリーをもとに、新たなシーンを加えて展開するオリジナル舞台である。先月末に行われた制作発表記者会見では、主人公・星野鉄郎を演じる中川晃教を筆頭に、クイーン・エメラルダス役の凰稀かなめ、キャプテン・ハーロック役の平方元基、大山トチロー役の入野自由、リューズ役の矢沢洋子、そしてメーテル役に大抜擢されたハルカが、記者陣と一般参加者が見つめるなか、華やかに登壇。原作者の松本も加わって、まずはそれぞれのキャラクター扮装によるメインビジュアルを公開した。漫画そのものの世界観を見事に表出したビジュアル・ポスターに、会場から歓声と拍手が沸き起こった。【チケット情報はこちら】「16歳を演じます。35歳としては乗り越えたいハードルです」茶目っ気たっぷりに笑いを誘った中川から順に、舞台への熱い思いが語られた。「鉄郎の成長物語を演じることができて嬉しいです。この役との出会いは運命だと感じています」(中川)「メーテルの謎めいた感じは私自身と重なって共感する部分が多いので、メーテルに導いてもらって頑張ろうと思っています」(ハルカ)「トチローは男の中の男で、悩む鉄郎の導き手となる大切な役。周りにも好きな人が多くて“トチローをやるのか!”と反響がすごかった。楽しんで演じたいですね」(入野)「リューズはミステリアスな歌手。ギターを持って歌うシーンがあるので緊張しますが、精一杯頑張りたいです」(矢沢)「エメラルダスは一匹狼の女海賊。ビジュアル撮影では顔の傷の位置を忠実に再現するのが大変でした(笑)。皆との化学反応が楽しみです」(凰稀)「親戚や知り合いから“お前は世界で1番幸せで、1番危険”と言われました。世界中のハーロック好きの人にボコボコにされないか心配だと(笑)。ハーロックのセリフを、青春時代の傷ついた僕に聞かせてあげたい!それくらい心に響く言葉があるので、聞き逃さずにご覧いただきたいです」(平方)和やかなトークの後には、中川の作詞・作曲によるテーマソングがキャスト全員で熱唱される豪華なひとときも。「旅立ちの瞬間を歌った曲です。音楽の力も皆様に届けたい」と中川が言うように、力強く背中を押してくれるような、爽快でパワーあふれるメロディが響き渡った。「元気になりますね。私の夢を皆さんが実際にやってくださる、心の底から嬉しいです」と、感謝の言葉を何度も繰り返す80歳の松本が「999(スリーナイン)とは“未完成”という意味です。私の青春です」と穏やかに語ると、今度はキャスト全員が背筋を正し、その言葉に感じ入る様子がうかがえた。結束した真摯な思いが生み出す、名作の新たな感動に期待したい。会見の最後は中川が「映像や音楽など、さまざまなクリエイターによって劇場に銀河が生まれる瞬間を、ぜひお見逃しなく!」と結んだ。公演は6月23日(土)東京・明治座より。その後、全国を巡演。取材・文:上野紀子
2018年04月03日ダンス×演劇×J-POPで唯一無二のステージをつくりあげるエンタテインメント集団「梅棒」の8th SHOW『Shuttered Guy(シャッターガイ)』が3月31日(土)に開幕。3月から4月にかけて愛知、大阪、福岡、東京凱旋と巡演する。開幕に先がけて行われたプレビュー公演に潜入した。【チケット情報はこちら】昔懐かしい商店街を舞台に繰り広げられる、想像を超えた大スペクタクルという本作。梅棒メンバー10名に加え、大久保祥太郎、佃井皆美、まちゃあき(エグスプロージョン)、ダンサーのYOU、RYO(Beat Buddy Boi)、泰智(KoRocK/ENcounter ENgravers)、古川小夏(アップアップガールズ(仮))、一色洋平、田中穂先(柿喰う客)、東理紗(ピヨピヨレボリューション / 東東東東東)、ひこひこ(※梅棒・伊藤今人とのWキャスト)と、幅広いジャンルのゲストが出演する。開演前、ひこひこ演じる知事が登場し、今作の舞台となる“ネコダ銀座商店街”の魅力を大いに語るところから物語はスタート。古き良き空気を残したこの商店街には、ラーメン屋、果物屋、美容室などが並び、超濃厚な登場人物たちが毎日賑やかに暮らしていた。そんなある日、商店街の近くにセレブ姉妹が経営する高級デパートの出店話が持ち上がり大騒動が巻き起こる――。梅棒らしさがたっぷり詰まった、大笑いできるコメディ作品。言葉をほとんど使わず、音楽とダンス、そして演劇的要素で伝える独自のスタイルで、ときにまさかの展開、ときに芝居の面白さ、ときに選曲の妙、ときに歌詞と動きの絶妙な組み合わせによってドカンドカン笑いを生み出していく。もちろんただ笑えるだけではなく、例えば遠藤誠(梅棒)とゲストの佃井というアクション畑のふたりが見せる抜群のアクションシーンであったり、芝居の印象が強い大久保の生き生きとしたダンスであったり、ゲストそれぞれが普段活躍するフィールドではなかなか見せない姿や、逆にもともと持っている魅力が、本作ならではのカタチで色鮮やかに届けられる。“ダンスの力”“演劇の力”“音楽の力”のひとつひとつが際立って感じられた今作。それに加え、さまざまなカタチで感じられる”愛の力“もとても素敵。何も考えずに楽しめて、観れば必ずまた観たくなる梅棒の公演をぜひ劇場で体験して!公演は3月31日(土)・4月1日(日)に愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール、4月6日(金)から8日(日)に大阪の梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ、4月12(木)・13日(金)に福岡・福岡国際会議場 メインホール、4月18日(水)から26日(木)まで東京・世田谷パブリックシアターにて上演。取材・文:中川實穂
2018年03月30日ダンス・エンタテインメント集団・梅棒の第8弾『Shuttered Guy』に、エグスプロージョンのまちゃあきが参加する。ダンスとお笑いを融合し、ポップな音楽に乗せて踊るエグスプロージョンのパフォーマンス『本能寺の変』は、YouTubeで再生回数が5700万回を超える大ヒット作。梅棒は、Jポップのヒット曲を巧みに使って物語を構成、ほぼセリフなしにダンスで表現する。カテゴリーは同じダンス・エンタテインメントだが、異色の2組。梅棒のリーダー・伊藤今人は、彼らの活躍ぶりを見ながら「まちゃあきさんなら、興味を持ってくれるかも」と参加を打診し始めた頃、まちゃあきは梅棒の第5回公演を初めて観劇「刺激だらけでした。ずっと出たいと思っていた」。互いの相思相愛に気づかぬまま時は過ぎ、ついに今回、双方の念願が叶った。その新作は、人情味あふれる商店街で巻き起こる大騒動を描く“エキセントリック・ハートウォーミング・コメディ”だ。梅棒 8th SHOW『Shuttered Guy』チケット情報今回の舞台は、男性10名の梅棒メンバーに11名のゲストが出演。梅棒が出来ないジャンルで、一芸を持っている人をバラエティ豊かに誘っている。まちゃあきは梅棒への印象を「Jポップとダンスと芝居、そこを完全にミックスさせた新たな色の舞台。普通の演劇を観るよりずっと感動の幅はデカイかな」と語る。彼の役柄は、商店街で八百屋を営む娘想いのお父さんだ。「商店街を愛していて、訪れたピンチを乗り切ろうと頑張るお父さんです。1977年発表の昭和歌謡で踊ってもらいます」(伊藤)。本作では24曲使い、緩急つけて場面を展開する。「新しい曲から古い曲まであるので、どんな方が観られても楽しめる舞台だなって思う。昔の歌謡曲の奥深さもメッチャ出てるし。で、このシーンにはこの曲っていうのが、バチッとハマる」(まちゃあき)。「ほんとは『三丁目の夕日』みたいなハートウォーミング・コメディを作ろうと思ってたんですけど、梅棒でやろうとすると自然とエキセントリックにならざるを得なかった(笑)。終盤はマジかよ!っていう展開になります。そこも楽しみにしていただければ」(伊藤)。学ランの印象が強いまちゃあきだが「学ランじゃない僕も観に来てくださいね。新しい自分にも挑戦できるなというところを見ていただきたいなと。20人で大阪に最高の“変”を巻き起こします。『梅棒の変』『エンタメの変』を楽しみに!(笑)」。3月28日(水)・29日(木)東京・THEATRE1010にてプレビュー公演、3月31日(土)・4月1日(日)愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール、4月6日(金)から8日(日)まで大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、4月12日(木)・13日(金)福岡国際会議場 メインホール、4月18日(水)から26日(木)まで東京・世田谷パブリックシアターにて上演。チケットは発売中。取材・文:高橋晴代
2018年03月28日歌舞伎など日本の伝統芸能に若い世代にも一定数のファンがいる現代ながら、日本舞踊には古典的で堅苦しいイメージが残っているといわざるを得ない。そうした固定概念を打破すべく、市川染五郎(現・松本幸四郎)らが「未来座SAIシリーズ」を立ち上げたのが昨年のこと。第2回日本舞踊 未来座 裁 チケット情報「SAI」とはSuccession And Innovation(=継承と革新)を指し、日本舞踊の未来を見据える上でも重要な活動といえそうだ。その第2回公演「裁(SAI)カルメン2018」が6月に上演される。まさに革新的な日本舞踊でホセ役として舞うのは、歌舞伎俳優・中村橋之助。「日本舞踊は小さいときから大好きです!」とハツラツと語る彼に、22歳の青年ならではの視点で日本舞踊の魅力を語ってもらった。歌舞伎の家系に生まれた者として自然に日本舞踊に触れ、幼い頃から稽古が楽しみだったそう。「1年に1回、運動会が終わった後にお稽古に行かなきゃならないときは『どうして僕だけ』なんて思いましたけど(笑)、行きたくないと思ったのはそれぐらい。稽古場に行っておやつを食べておしゃべりをして、お稽古をして帰ってくるっていうのが遊びみたいで楽しかったから、『楽しい』という感覚が今も続いているんだと思います。そして僕の踊りの師匠である梅彌の伯母(=中村梅彌。実の伯母でもある)の踊りがきれいでかっこよくて、あんな風に踊れるようになりたい憧れがずっとありました。日本舞踊は、踊る人の感情が最大限にあふれた表現。例えばドラマとかは、どんなにかっこいい人が出ていても筋が面白くないとつまらない。でも日本舞踊はやる側も観る側も単純に、その感情で自分をあふれさせられる楽しさ、心地よさがあるんです」「カルメン2018」はそんな、日本舞踊に親しんだ橋之助にとっても大きな挑戦だ。創作舞踊は未体験で、女性との舞台共演も初となる。「歌舞伎では、男性である女形さんを舞台上では本当に好きになりますが、いざ本当の女性相手の場合、それと同じなのか同じじゃないのか、僕自身もまだわかりません。ただ、遠慮せずにやりたいなと思います。ぼたんのお姉ちゃま(=市川ぼたん。カルメン役)は、きっとドンと受け止めてくださる。役のホセが一途ですから、あちらが恥ずかしくなるぐらい(笑)、思いっきり行きたいですね。ホセはカルメンがすごく好きなのに愛し方を知らなくて、いろんな事件を起こしてしまう。僕も結構やきもち焼きですし(笑)、初めて人を好きになったときの気持ちを思い出しながらやってみようと思っています」公演は6月22日(金)から24日(日)まで東京・国立劇場 小劇場にて。なお、本公演のカルメン役は市川ぼたんと水木佑歌、ホセ役は中村橋之助と花柳寿楽のWキャスト。取材・文:武田吏都
2018年03月26日花總まりが主演を務める「ミュージカル『Romale』~ロマを生き抜いた女 カルメン~」が、東京芸術劇場プレイハウスにて上演中だ。【チケット情報はこちら】本作は、オペラとしても有名なメリメの小説「カルメン」をベースに、次々と男性を翻弄し“魔性の女”と呼ばれるカルメンが、ロマ(ジプシー)として当時の社会でどのように生き抜いてきたかを演出・振付の謝珠栄の視点で描く作品。10年前に謝珠栄の演出・振付で上演された『Calli~炎の女カルメン~』をもとに台本・音楽を一新したもので、何もかもが違う白人男性への恋の苦しみや葛藤、そしてロマの女への差別など、カルメンの別の一面が描かれる。カルメンを演じるのは花總まり。カルメンによって人生が変わるドン・ホセを演じるのは松下優也。カルメンに翻弄される、ホセの上司スニーガを伊礼彼方、カルメンの夫ガルシアをKENTARO、イギリス貴族のローレンスを太田基裕が演じる。物語は、カルメンの真実を研究する社会人類学者ジャン(福井晶一)が、カルメンを知っているという老人(団時朗)と出会うことから始まる。「あの女と暮らしたジプシーから聞いた」と話し始める老人。そこで語られるのは、白人の衛兵ホセがロマの女カルメンと出会い始まった宿命の恋だった。カルメンに身も心も溺れ、「私って女はきっとあんたを不幸にする」と告げられながらも共に生きることを選んだホセ。だが、その狂おしいほどの想いはいつしか嫉妬で乱れ、カルメンが関わる別の男たちに手をかけるようになっていく――。カルメンをロマの女として“自分のもの”にしたがる男たちの中で、すべてを飛び越えひとりの女性として恋するホセ。松下の真っ直ぐに伸びる歌声や、わき目もふらず彼女を愛する芝居はホセという男の心情だけでなく、カルメンがこれまで男たちにどう扱われてきたのかをもあぶり出す。そんなホセを嫉妬させる男たちを演じる伊礼やKENTARO、太田は、傲慢さやしたたかさを感じさせながらも、それぞれが違うタイプの男性としての魅力や色気も漂わせる。そしてその中で踊るように自由にふるまう、花總のカルメン。男に取り入る姿や、情熱的なフラメンコダンス、自分を殺せとホセに迫る姿など、いわゆるカルメン像が描かれながらも、この作品ではその一歩奥へと踏み込んだ想いや視点が存在する。花總が演じるカルメンは、定番のカルメン像とリンクさせながらも本作ならではの魅力や美しさが鮮明に表現されていた。舞台となるスペインのテイストが取り込まれた音楽やダンス、華やかな殺陣も注目の公演は、4月8日(日)まで東京芸術劇場プレイハウスにて上演中。その後、4月11日(水)から21日(土)まで大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて上演。取材・文:中川實穂
2018年03月26日ディズニーと、『レ・ミゼラブル』『オペラ座の怪人』などを手掛けたプロデューサー、キャメロン・マッキントッシュが作った大型ミュージカル『メリー・ポピンズ』の待望の日本公演が、プレビュー公演を経て3月25日、東京・東急シアターオーブで開幕した。長期オーディションを経て決まったキャストは、主人公のメリー役に濱田めぐみ・平原綾香、煙突掃除屋のバート役に大貫勇輔・柿澤勇人ら。3月23日には報道陣に作中の3シーンが公開されるとともに、キャスト、スタッフが意気込みを語った。ミュージカル「メリー・ポピンズ」チケット情報物語は1910年のロンドン、なかなか子守が居つかないバンクス家が舞台。忙しい銀行家の父を中心に、少しずつ心がすれ違っているこの一家に家庭教師メリー・ポピンズが舞い降りてくる。魔法で部屋を片付けたりと不思議な力を持つメリーに子どもたちも大喜び。やがてメリーが教える大切なことを素直に受け入れるようになった一家は、家族としての幸せを取り戻していく……。まず披露されたのはメリーが子どもたちに「何を言うかじゃなく、どう言うかが大切」と教えるナンバー『スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス』。ダンサブルで軽快な、劇中を代表するビッグナンバーだ。続けて名曲『チム・チム・チェリー』をメリーとバートがロマンチックに歌い、『ステップ・イン・タイム(リプライズ)』では幸せの象徴である煙突掃除夫たちがバンクス家になだれ込み、陽気にタップダンスを踏んだ。本編ではフライングなど様々なマジックが仕掛けられている本作だが、披露された3シーンだけでも、観る者を笑顔にする魔法がかけられているような幸福感があった。会見では、オリジナル演出家リチャード・エアが「メリーは魔法を使えるけれど、魔法で皆を幸せにするわけではない。お互いに優しくできるということを教えてくれる、そこが大切なところ」と作品の魅力を語り、さらに「日本版はファンタスティックに素晴らしいものになっている。キャストも魅力のある方ばかりで、皆さんが愛情を持って作ってくださっている」と賛辞を贈った。また平原は「世界的な名作で、誰の心にもメリーがいるからこそ難しいのですが、信頼するスタッフとともに、細かく、大事にこの世界を創った。とにかく、どこもが見どころ」とアピール。また目玉であるメリーのフライングは日本公演が最長飛行距離とのことで、濱田は「かなり長く魔法で飛んでいます(笑)。通常は舞台と客席に(見えない)境があるのが、舞台上で動いているキャラクターが客席の方にやってくる。立体的だし、客席の方に飛んでくる躍動感、ワクワク感は実際に見るとすごい衝撃。どの席からも楽しんで欲しい」と話した。東京公演は5月7日(月)まで。その後5月19日(土)から6月5日(火)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールでも上演される。
2018年03月26日国際交流基金アジアセンターと株式会社パルコが2014年に立ち上げた「ダンス・ダンス・アジア~クロッシング・ザ・ムーヴメンツ~」。3月23日の東京公演開始に先立ち、3月15日にはダンス関係者へ向けた公開リハーサルが行われた。DANCE DANCE ASIA チケット情報集まったのはフィリピン、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナム、そして日本のダンサーたち。シアターで展開される彼らのダンスは、そのテクニックはストリートダンスをベースとしながらも、コンテンポラリーや演劇など他のアート分野と驚くべき幸せな邂逅を経て、新たな地平を切り開いている。まさに世界のムーブメントの“今”を感じられるステージとなっている。ラコステ、ディーゼルなどのショーやMV、CMなどの振付を多数手がけるヴィンス・メンドーザの作品は『Hilatas<君を導く光>』。2016年の東京初演以降、海外公演を経て、同名作品を長編化。今回は振付・演出補佐、ドラマトゥルクとしてピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団出身のファビアン・プリオヴィルが参加。リハーサルでは、印象的なリズムラインに導かれ、コンテンポラリー・アート作品としてのヒップホップの可能性を予感させるダンスが展開されていた。ユニクロのTVCMで、世界三大広告賞を含めた23タイトル受賞という快挙を成し遂げた気鋭のクリエイター黄帝心仙人の作品は『宇宙 -Space-』。舞台に設置された透明なドーム型の“宇宙船”の中で繰り広げられる船員達のドラマだ。音楽とダンスの驚くべき雄弁さによって、まるで台詞が聞こえてくるようだ。ストリートダンスのテクニックによって表現されながら、まさに演劇としてのパフォーマンスとなっている。インドネシアのダンス・アイコンとして名高いハムディ・ファバスの作品名は『Soul Train』。ストリートダンスの変遷を辿るショーケース的な構成は、さながらダンス番組『ソウル・トレイン』の“いいとこ取り”。多用されるダイナミックなブレイキングは、まるで舞台を彩る華のように咲き乱れる。ハムディ・ファバスによるストリートダンスの“今”の表現にも注目だ。公演は3月23日(金)から25日(日)の3日間、東京芸術劇場 シアターイーストにて合計4回開催される。各回、3作品全てが上演される。24日(土)、25日(日)の公演終了後には演出家・クリエイターによるアフタートークが決定しており、各回登壇する演出家は異なる。取材・文:yokano
2018年03月22日Kバレエカンパニーのプリンシパル、浅川紫織が今年11月の『ロミオとジュリエット』を最後に引退することになり、芸術監督の熊川哲也と浅川による記者会見と、その浅川も主演する今月末の『白鳥の湖』の公開リハーサルが開かれた。【チケット情報はこちら】浅川は引退のタイミングについて「いつ決意した、ということではなく、6年前に大きな怪我をした時から、明日歩けなくなるかもしれない、踊れなくなるかもしれない、という状況でした。カンパニーのプリンシパルとしては、自分だけが歩けなくなるまで踊ればいいという考えにはなれません。責任がある中でこの流れになりました」と語る。生え抜きのプリンシパルの退団に、熊川は「(引退は)ダンサーには必ず訪れる、避けられないことですが、これからさらに成熟して素晴らしい演技が期待できる時期だけに、切ない気持ち、複雑な思いがあります」と悲しみを隠さない。「本人が葛藤して決めたことなので、親心として、11月までの公演を成功させて大きな花束をあげたい」。その熊川から「『白鳥の湖』初演(2003年)の前、ダンサーを求めてイングリッシュ・ナショナル・バレエのスタジオに視察に行き、浅川という、17歳の輝く成熟したダンサーに出会ったことは今も脳裏に焼きついています。容姿、脚、精神など、トップバレリーナに必要不可欠な条件を備えたダンサーだった。バレエは過酷なアートで、崩れた形も魅力的な絵画や彫刻などと違い、美しく夢を与えなければならない。加えてアジア人というハードルもある。それらをいとも簡単に超えたのが浅川。僕にとって誇りであり芸術活動の結晶です。全ての芸術のモデルに当てはまってもおかしくない存在だと思う」と絶賛され、浅川が涙ぐむひとコマも。16年間の在籍での忘れられない瞬間を問われ、「たくさんあるのですが、1番は入団して初めて立った『白鳥の湖』初日の拍手。その場に自分がいるというあの感動を忘れることは一生ありません」と答えた浅川。その思い出の『白鳥の湖』で浅川が主役のオデット/オディールを踊るのも、今月末が最後となる。「オデットとオディールは私が大切に踊ってきた役。この舞台を去る時期に踊れることは幸せです。自分の全てを投じるにふさわしい作品とキャラクターなので、できることをお見せして感動を届けたいと思います」。公開リハーサルでは、オデット役の浅川紫織とジークフリート王子役の宮尾俊太郎、そしてロットバルト役の石橋奨也が、第2幕冒頭を披露。王子とオデットの、驚きと戸惑いに満ちた出会いから、次第に心を通わせていくまでが、しっとりと描かれる。中でも浅川の落ち着いた気品あふれる踊りが印象的。指先から足先まで神経の行き届いたその動きは、残された時間を慈しんでいるようにも見えた。Kバレエカンパニーによる『白鳥の湖』は東京・オーチャードホールで3月21日(水・祝) から25日(日)まで上演。チケットは発売中。取材・文:高橋彩子
2018年03月16日KAAT神奈川芸術劇場の若手舞踊公演「SUGATA」の最終公演が行われる。『二人三番叟』『雙生隅田川』チケット情報中村鷹之資、中村玉太郎ら若手歌舞伎俳優の研鑽の場として、衣裳も化粧もなしの“素踊り”での新作舞踊劇を上演してきたこの企画も、今回が最終回。『二人三番叟』と、勘十郎作・演出・振付『雙生隅田川(ふたごすみだがわ)』を上演する。公演を前に、記者懇親会が開かれ、勘十郎、鷹之資、玉太郎、種之助が出席した。勘十郎は、「今回は“卒業公演”として、新たな課題に取り組んでもらいます。舞踊で『二人三番叟』が踊れるのは一人前の証拠。今後の課題をみつけるためにもしっかりと踊ってもらいます。『雙生隅田川』は三代目市川猿之助さん、今の猿翁さんが復活上演なさった演目で、今回は舞踊劇として上演します。どこの劇場でみたものよりも面白かった、と言われるような舞台を目指したい」と語る。鷹之資は「この3年間、色々な踊りや立ち回り、押し戻し等を経験させていただき、『新説西遊記』シリーズの猪八戒ではお客様に笑っていただく難しさも学びました。資料や先輩方の舞台を拝見して勉強するのとは違い、実際に舞台に出て演じてみないとわからないことは多いので、貴重な経験となりました。三番叟は大変難しい曲ですし、『雙生隅田川』では、今回は初めて早替りにも挑戦させていただきます。瞬時に主従の役柄を演じ分けるという大きな課題に全力で向き合いたいと思います」玉太郎は「『新説西遊記』シリーズでは沙悟浄としてお客様の笑いも誘うという、普段経験できないことをさせていただきました。そして今回は三番叟という大役と、吉田少将行房の家来である小布施主税役。(後者は)侍なので、品もあるようにしたいです。義太夫のところも演技力が問われるので、力を入れて取り組みたいです。このSUGATAのシリーズで、お芝居のことを自発的に考えるようになりました。3年間で学んだことを、いつか本興行で活かせる日がくるとよいなと思います」初参加の種之助は、「大人になる前の時期に出演させていただいたのが、ご宗家演出の『趣向の華』という公演。長い立ち回りや、ちょうど先月やった切腹も、最初に経験させていただいたのがその公演でした。おこがましいようですがその恩返しの気持ちもあり、また僕自身としては、女方にも挑戦させていただくので一緒に勉強する気持ちで臨みます。鯉魚の精は宗家の演出に出来る限り応えたいと思います。お客様に、この公演を観たことを誇りに思ってもらえるような舞台にしたいです」研鑽の場とは言いながら、純粋に楽しめるスペクタクルが展開するのも「SUGATA」の魅力。勘十郎や尾上菊之丞ら名手の踊りも観られるほか、口上や早替り、宙乗りも。白熱の舞台に期待しよう。公演は3月24(土)から27日(火)までKAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオにて。取材・文:高橋彩子
2018年03月14日