●「国民的な作品に出演させていただき感謝」今年大ヒットを記録したTBS系日曜劇場『半沢直樹』で伊佐山泰二役を務め、熱演が話題となった歌舞伎俳優の市川猿之助。ドラマ放送終了後もさまざまなバラエティ番組に出演し、イベントにも呼ばれるなど大活躍だ。堺雅人演じる主人公・半沢直樹の前に立ちはだかる東京中央銀行証券営業部部長・伊佐山泰二役として続編に加わった猿之助。“顔芸”と評される迫力満点の演技や、「詫びろ!」「土下座野郎!」といった発言で強烈なインパクトを放った。最終回は平均世帯視聴率32.7%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)を記録し、有終の美を飾った『半沢直樹』。猿之助は「今の時代にあれだけの視聴率をとるのも珍しいと思いますし、国民的な作品に出演させていただき、コロナの中であのような仕事をさせてもらったことに感謝しています」と振り返った。「詫びろ!」や「土下座野郎!」のセリフはSNS上でも大きな反響を呼んだが、猿之助自身はその盛り上がりを冷静に受け止めつつ楽しんでいたという。『半沢直樹』での猿之助の熱演は多くのメディアで取り上げられ、バラエティ番組にも引っ張りだこに。猿之助は「いい意味でも悪い意味でも、メディアの持つ力の大きさ、すごさがよくわかりました。自分も含め、現代の人はもうメディアなしには生きられない。メディアにいかに影響を受けているのかわかりました」とやはり一歩引いて見ている。そして、世間やメディアの盛り上がりに関して、「みんなの手の上で踊っているのを楽しんでいる感じ。うまく踊ったほうが勝ち。いずれブームが去ることはわかっているから、踊らされるのではなく、踊って楽しませてもらおうと思っています」と笑った。また、「昔は反響って長く続いたけど、この頃の反響は長く続かない。昔の歌手は1曲でずっと食べていけていたけど、今はどんどん流行りが変わっていく。その場その場ではすごい盛り上がりだけどすぐに消えていき、時代を超えるものが昔ほどないような気がします」と昔と比較。「今は『鬼滅の刃』一色だけど、来年あたりになったらまた違うと思いますよ。盛り上がらなくなったらすぐ次にいくから」と予想した。『半沢直樹』で注目を集めた2020年だが、自身にとってどんな一年になったか漢字一文字で表現してもらうと「病」を挙げ、「コロナですべてがストップしてしまって。それがすべてでしょう」と何よりもコロナが一番の衝撃だったという。「僕らの生き方はどこかが間違っているというのは気づけた。反省の機会だと思う。緊急事態宣言のときの深刻さを保てず、揺り戻しでまた流行り出した。喉元過ぎればすぐに熱さを忘れてしまう。そういう生き方がダメだということに気づけた」と問題点を指摘。「一人ひとりが自覚しないとダメだと改めて感じました」と話した。そして、「エンターテインメントの在り方も変わらないといけない。ただ、未曾有の出来事だから、これから何年かけて変われるかどうかが、僕らの下の世代に響いてくるのではないかなと思っています」と語った。●世界配信の野望も! オンライン歌舞伎の広がりに期待猿之助が言うように、変化を余儀なくされているエンタメ界。ライブや舞台をオンラインで配信するという新たな試みがなされ、歌舞伎界でもオンライン歌舞伎「図夢歌舞伎」がコロナ禍に誕生した。その第2弾として、松本幸四郎と猿之助がお騒がせコンビ“弥次喜多”を演じる図夢歌舞伎「弥次喜多」がAmazon Prime Videoにて12月26日より独占レンタル配信がスタートした。幸四郎と猿之助による“弥次喜多”は2016年に歌舞伎座で誕生し、毎年新作を発表してきた人気作品。今回、2009年にPARCO劇場で上演された猿之助が現代劇に初出演した『狭き門より入れ』を原作に新作を制作した。同舞台は謎の疫病の流行にまつわる物語。“現代に通ずる作品”として猿之助が原作に選び、新作歌舞伎へと生まれ変わらせた。猿之助は「10年前は絵空事だった物語が、私たちの日常とシンクロしている今だからこそ、この作品を歌舞伎にして届けようと思いました」と原作に選んだ理由を説明。「この時代を生きる一人ひとりに深く響く作品だと思いますので、これまでの『弥次喜多』を知らない方も、新作映画を観るような気持ちでぜひご覧ください」と呼びかけている。『狭き門より入れ』を原作に「弥次喜多」の新作を制作しようと考えた猿之助は、喜多八として出演するだけでなく、監督・脚本・演出も担当。カット割りや編集にも携わり、「ありえないくらい短い期間でやっているので大変でした」とかなり苦労したという。監督の視点によって「監督が欲しい演技をいかにできるか、その重要さは改めてわかりました」と新たな気づきもあったようだが、「監督はもういいです。ちゃんとした準備期間と、ちゃんとした環境を与えてくれればやりますけど」と笑った。大河ドラマ『風林火山』、『龍馬伝』やTBS『ブラックペアン』など、さまざまなドラマに出演している猿之助。その経験は、歌舞伎と映像を融合させた図夢歌舞伎「弥次喜多」に生きた部分もあったようで、「映像に面食らわない。何回も同じシーンを撮ったり、その耐性はついている」と話した。また、歌舞伎と触れ合ったことのない人や「弥次喜多」を知らない世代に届ける難しさも感じていると吐露。「僕らが若い人たちの文化を知らないように、若い人たちは『弥次喜多』を知らないと思う。そういう方々にアピールするのは本当に難しい」『半沢直樹』をきっかけに猿之助の演技に魅力を感じ、違う作品も見てみようと思う人もいると思うが、猿之助は「それをきっかけに見ようと思う方がいたら、見ていただければうれしいです。ただ僕は、歌舞伎を見る人を増やすためにドラマに出ようという考えは一切ありません。ドラマだけでやられている役者さんに失礼なので」と自身の考えを明かした。そして、図夢歌舞伎という歌舞伎の新たな挑戦について「歌舞伎はこんなこともできるということは示せたと思います」と手ごたえ。図夢歌舞伎「弥次喜多」は「世界で絶対にウケる!」と断言し、世界配信への野望をあらわに。「今は石を投げたところ。それがどう広がるか、これからですね」と今後の広がりに期待している。
2020年12月29日歌舞伎俳優の松本幸四郎と市川猿之助がお騒がせコンビ“弥次喜多”を演じる人気歌舞伎シリーズの最新作となる図夢歌舞伎「弥次喜多」が、Amazon Prime Videoで26日より独占レンタル配信。幸四郎と猿之助がこのほど取材に応じ、本作の魅力や制作の裏話を語った。本作は、コロナ禍で誕生したオンライン歌舞伎・図夢歌舞伎(ずぅむかぶき)の第2弾。客席では観ることができない視点から、より近くで歌舞伎に“ズーム”するという意味でこの名前が付けられている。幸四郎と猿之助による“弥次喜多”は2016年に歌舞伎座で誕生し、毎年新作を発表してきた人気作品。今回、2009年にPARCO劇場で上演された猿之助が初めて現代劇に出演した『狭き門より入れ』を原作に新作を制作した。同舞台は謎の疫病の流行にまつわる物語。“現代に通ずる作品”として猿之助が原作に選び、新作歌舞伎へと生まれ変わらせた。幸四郎と猿之助は、図夢歌舞伎第1弾「忠臣蔵」にも出演。劇場が長期休館となった中で生まれた「図夢歌舞伎」について、幸四郎は「やっと見つけたお芝居する唯一の場所でした。これが始まりとなって、舞台が再開した後も、図夢歌舞伎は見ていただく場としても、演じる側の場としても、選択肢として続いていってほしいと思いました」と語った。猿之助も「これからの歌舞伎は舞台と配信と両方進んでいくべきだと思う」と意見。「平和な時代はあんまり発展的なモノは生まれない。そういう意味で、コロナは二度とあってほしくないけど、こういう新しいものが生まれたので、不幸中の幸いだと思います」と前向きに捉えた。そして、2人とも図夢歌舞伎で「弥次喜多」ができたことを喜び、猿之助は「『弥次喜多』は毎年新作を生み出していて、今年は8月に歌舞伎座が再開しましたが『弥次喜多』は上演できませんでした。なんとか続けられる方法を考えている中で、図夢歌舞伎とうまく合わさって、新作が誕生しました」と説明。「非常に苦労しました。今までの新作で一番大変だったんじゃないでしょうか」と苦笑した。猿之助は、監督・脚本・演出も担当。「撮影の1カ月くらい前は何もできていなかった。台本ができたのが1週間くらい前。限られた中でしたが間に合わせは嫌ですから精一杯作りました」と現場のバタバタぶりを明かし、「冒頭はハリウッド映画みたいにしたいなと。そこで予算を使い果たしそうになるくらい幕開けに凝りました。本編の中身は出演者同士の信頼関係が出ている。本当はアドリブなんか言っている余裕なんかないのにアドリブになるとみんな生き生きしてくるんですよね」と魅力を伝えた。本作には、猿之助のいとこである市川中車(香川照之)が参戦するほか、“弥次喜多”シリーズ常連である、幸四郎の長男・市川染五郎、中車の長男・市川團子も出演。猿之助は「中車さんは映像作品ならではの演じ方をしっかり息子に教えていて、親子の会話がありました。『カメラがここだったらこちらを向いて演技をする』とか。歌舞伎の現場で教えているのを初めて見て、それはお父さんじゃないとできないアドバイスだなと思って、微笑ましかったです」と中車・團子親子のエピソードを明かした。そして、幸四郎は「ルールも不可能もない、配信と歌舞伎の無限の可能性を詰め込んだ作品になっています。根拠はありませんが、歌舞伎の配信は今後100年続いていくと信じています! 好きな時に、好きな場所で『弥次喜多』をお楽しみください」とメッセージ。猿之助も「10年前は絵空事だった物語が、私たちの日常とシンクロしている今だからこそ、この作品を歌舞伎にして届けようと思いました。この時代を生きるひとり、ひとりに深く響く作品だと思いますので、これまでの『弥次喜多』を知らない方も、新作映画を観るような気持ちでぜひ、ご覧ください!」と力強くアピールした。本作は国内のみの配信となっているが、世界配信されることも期待している2人。幸四郎は「全世界に共通する物語の歌舞伎というのは初めてだと思います」と話し、猿之助はすでに提案していることを明かし、「世界配信したら絶対ウケると思う。エンドロールのところに世界にも共通する仕掛けをしている」と自信を口にした。(C)松竹
2020年12月26日PARCO劇場オープニング・シリーズ『藪原検校(やぶはらけんぎょう)』が2021年2月10日(水)に開幕する。主演の市川猿之助に話を聞いた。井上ひさしの戯曲である本作は、『西武劇場(PARCO劇場のオープニング当時の名称)オープニング記念・井上ひさしシリーズ』として1973年に初演され、これまで木村光一、蜷川幸雄、栗山民也といった演劇界の巨匠たちが演出してきた傑作舞台。今回は演出・杉原邦生、主演・市川猿之助というタッグで上演されることになるが、スーパー歌舞伎Ⅱ『新版 オグリ』でも杉原とタッグを組んだ猿之助は「『新版 オグリ』は一緒に演出を手掛けたので、僕の色になりましたが、今回は杉原の色を出してほしいし、料理されてみようと思います」と語る。井上ひさし作品は『雨』(’11)に出演経験がある猿之助。「井上ひさしさんの作品は日本人の心を打ち、日本人でなければできない精神が描かれているように思います。日本のいい面も悪い面も見ておられて、それをお書きになって、さらに言葉の持つ怖さ、大事さ、重要さを大切にされている」と印象を語り、今作では稀代の悪党‘杉の市’を演じるが、「井上作品に出てくるほどの悪党はなかなかいませんから。だからこそ演じるのが面白いなと思います」と楽しみにしているそう。猿之助に加え、三宅健や松雪泰子、川平慈英ら豪華キャストが出演する本作。猿之助は「画面の向こうにいる人たちですからね。皆さんと、例えば食事はできるかもしれないけど、お芝居はなかなかできないわけで。でも、役者って“芝居での会話”ってあるんですよ。それができるのが嬉しいです」。三宅とは顔も合わせたそうだが「三宅さんは歌舞伎をお好きだと聞きましたし、何度か劇場でもお見かけしたことがあります。その時も熱心に観ていらっしゃった。そして第一線で活躍し続けるスターですからね。そういう方とのお芝居は、歌舞伎ではできないことですから。こういう機会をいただいたことは感謝です」。今作でこだわりたいことを問うと「上演時間」というこれまでにない答え。「お客様の安全が第一だし、僕らの安全も第一だから。この状況の中で公演を無事に続けるために考えたい。お客様も演者も安心して過ごせるように上演時間にはこだわりたいです」。公演は2021年2月10日(水)から3月7日(日)まで東京・PARCO劇場にて上演後、名古屋、石川、京都を巡演。文:中川實穗
2020年12月23日演出・杉原邦生、主演・市川猿之助の舞台 『藪原検校(やぶはらけんぎょう)』が2021年2月10日(水)~3月7日(日)、PARCO劇場で上演される。それに先駆けて、出演者のビジュアルが公開された。1973年のオープン以来、渋谷PARCO建替えまでの43年間プロデュース公演の先駆けとして、様々な名作や話題作を送り出してきたPARCO劇場(オープン当時の名称は西武劇場)。本作『藪原検校』は、PARCO劇場のオープン当初の名称・西武劇場での「オープニング記念・井上ひさしシリーズ」として1973年に初演された、当劇場とも大変ゆかりの深い傑作舞台である。ストーリーは生まれつき盲目で性根の曲がった男が殺しに殺しを重ね、藪原検校にまで上りつめる悪党一代記だ。初演の演出は木村光一、その後、蜷川幸雄、栗山民也といった演劇界の巨匠たちが演出してきた。そして今回手がけるのは、スーパー歌舞伎Ⅱ『新版 オグリ』や、木ノ下歌舞伎『勧進帳』などの演出を務めてきた気鋭の若手演出家・杉原邦生。劇中歌もすべて刷新して、稀代の悪党・杉の市を演じる市川猿之助をはじめ、三宅健、松雪泰子、川平慈英ほか、異彩を放つ豪華キャスト陣と共に『藪原検校』が新たによみがえる。リリースされたビジュアルは各人各様に放つオーラが、本作の圧倒的な雰囲気を醸し出す出来栄えだ。また12月12日(土)から、いよいよ東京公演のチケットが発売となる。■公演情報PARCO劇場オープニング・シリーズ 『藪原検校(やぶはらけんぎょう)』作:井上ひさし演出:杉原邦生音楽・演奏:益田トッシュ出演:市川猿之助、三宅健、松雪泰子、髙橋洋、佐藤誓宮地雅子、松永玲子、立花香織、みのすけ / 川平慈英東京公演:PARCO劇場(渋谷PARCO 8F)2021年2月10日(水)~3月7日(日)チケット料金:13,000円(全席指定・税込)U-25チケット=6,000円(観劇時25歳以下対象、要身分証明証、当日指定席券引換 / チケットぴあにて前売販売のみの取扱い)※未就学児入場不可チケット発売日:2020年12月12日(土)<チケット取扱>ローソンチケット: (Lコード:34699)チケットぴあ: (Pコード:503-763)イープラス: ※各プレイガイドでのチケット取扱いは先行販売、一般発売ともWebのみとなります。<地方公演>名古屋:日本特殊陶業市民会館・ビレッジホール2021年3月9日(火)・10日(水)石川:こまつ芸術劇場・うらら2021年3月13日(土)・14日(日)京都:京都芸術劇場春秋座2021年3月18日(木)~3月21日(日)
2020年12月10日東京・歌舞伎座にて『壽 初春大歌舞伎』が、来年1月2日(土)から27日(日)まで上演されることになり、本公演に出演する歌舞伎俳優の松本幸四郎と市川猿之助が取材に応じた。8月の再開以降、1演目4部制で公演が行われた歌舞伎座の舞台。そこで試行錯誤を繰り返しながら、躍動を続けた両名が、2演目3部制に切り替わる初春のめでたい舞台に立ち、新たな年の幕開けを彩る。幸四郎は第3部『菅原伝授手習鑑 車引』に梅王丸役として出演し、父・松本白鸚(松王丸役)、息子・市川染五郎(桜丸役)と共演。親子孫三代そろい踏みが実現するのは、平成30(2018)年1、2月歌舞伎座、12月南座での三代同時襲名披露、令和元(2019)年6月歌舞伎の三谷かぶき『月光露針路日本 風雲児たち』以来となる。「芝居に出られること、さらにそれが父と染五郎と一緒なのは、ありがたいことですし、幸せですね」と喜びをかみしめる幸四郎。共演が決まった染五郎の様子については「あまり感情を表に出すタイプじゃないので(笑)、ビックリな気持ちもあったみたいですけど、稽古ではうれしそうな顔をしているので……、純粋にうれしいんじゃないですかね」と目を細めた。松本幸四郎自身が演じる梅王丸の魅力は「力強さ」だといい、「演じる側も、ご覧になる皆さんも『これぞ歌舞伎だよね』ってど真ん中の魅力がありますからね。その分、セリフ、ボリューム、大きさを、身1つで表現しなければならない」と分析。その上で「先代の(中村)又五郎のおじさまからは、『花道を引っ込むときは“くくり猿”のように』と教えていただいた。ただ力を入れれば、力強く見えるのではない。そういうところが、歌舞伎の色合いであり、大らかさだと思います」と先人の教えをヒントに、令和の梅王丸をダイナミックに体現する決意を示した。新型コロナウイルスの感染拡大による公演中断を経て、再び歩みを始めた歌舞伎興行だが、幸四郎自身は「全員で再開したわけではないので、本当の再開とは思っていない」と神妙な面持ち。「例えば、幕間がどうなるのか。次の演目を劇場で待ちながら、売店で記念や情報を手にしてもらうのも、歌舞伎ですから。歌舞伎ならではの一体感が味わえる“大向こう”も今のこの状況では……。終息後の展望ですか?それはないですね。(環境が)元に戻ることはないと思いますが、時代が変わっても、歌舞伎を今なくすわけにはいかないという思いだけです」と静かに闘志をたぎらせる。「悪太郎」でいまこそ笑えるお芝居を届けたい坂田藤十郎を偲んで『夕霧名残の正月』も上演市川猿之助(左)と松本幸四郎(右)一方、猿之助は第1部『悪太郎』に出演。現在の四代目猿之助の曽祖父・二代目猿之助(初代猿翁)が初演し、澤瀉屋のお家芸『猿翁十種』のひとつとなるユーモアあふれる舞踏で、猿之助は悪太郎を演じる。本公演での上演は、平成22(2010)年1月の浅草公会堂以来となる。「こんな世の中だからこそ、笑いたいじゃないですか。稽古が十分にできない状況で、お見せできる演目となると、『悪太郎』はうち(澤瀉屋)しかできないので、めずらしいものをお目にかけようかなと」と演目を選んだ理由を明かす猿之助。初代猿翁の“当たり役”でもある悪太郎について「曽祖父が出演していた映像を見ると、当て書きされた作品だから、もう(初代猿翁が)立っているだけでおかしくって(笑)。それを演じるのは難しいですけど、もうある意味、吹っ切れて、三谷(幸喜)さんに見いだされた自分の面白みで行くしかないですね」と幸四郎同様に、こちらも新たなキャラクター像の創出に意欲を燃やす。市川猿之助本公演を皮切りに、2演目3部制に踏み出す歌舞伎座の“今後”には「吉と出るか凶と出るか。やってみないと分からないですね」と改めて気を引き締める。「世間は第3波って言われているし、8月の『歌舞伎が戻ってきた』というお祭り的な雰囲気は、今続いていないですから。もちろん、命にかかわることですし『今はまだ歌舞伎座に行けない』というお手紙もたくさんいただきます。そんななか、幸いにも11月の五変化(『蜘蛛の絲宿直噺』)では早替りをして、蜘蛛の糸を投げて……。それができたってのは小さな進歩だけど、自分としては大きな進歩で。まあ、元に戻っただけなんですけど(笑)。これからは歌舞伎にとっても転換期。もちろん、途絶えてしまってはいけないと思うので、僕らの世代がちゃんと荷物を運んであげないと。そうしないと、若い世代が荷物を片付けるとき、時代に合った取捨選択ができないですからね」『悪太郎』には猿之助に加えて、中村福之助(修行者智蓮坊役)、中村鷹之資(太郎冠者役)、市川猿弥(伯父安木松之丞役)が出演。また、『菅原伝授手習鑑 車引』には大谷廣太郎(杉王丸役)、松本錦吾(金棒引藤内役)、坂東彌十郎(藤原時平役)が顔をそろえる。なお、第1部では尾上松也らが登場する『壽浅草柱建』、第2部では亡くなった坂田藤十郎を偲んで、中村鴈治郎らが上演する『夕霧名残の正月 由縁の月』、中村吉右衛門と中村梅玉が共演する『仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場』を上演。第3部には作・岡鬼太郎の『らくだ』が名を連ねている。チケットは12月14日(月)より発売。取材・文・撮影:内田涼歌舞伎座『十時月大歌舞伎』2021年1月2日(土)~2021年1月27日(土)第一部午前11時~第二部午後2時45分~第三部午後6時45分~会場:歌舞伎座(東京)
2020年12月07日PARCO劇場で上演される、演出・杉原邦生、主演・市川猿之助の舞台『藪原検校』のキャストと公演日程が発表された。日程は、2021年2月10日(水)~3月7日(日)となる。1973年のオープン以来、渋谷PARCO建替えまでの43年間、プロデュース公演の先駆けとして、様々な名作、話題作を送り出してきたPARCO劇場(オープン当時の名称は西武劇場)。本作『藪原検校』は、「西武劇場オープニング記念・井上ひさしシリーズ」として1973年に初演された舞台。この縁深い作品を、新生PARCO劇場のオープニング・シリーズの一作として上演する。これまで木村光一、蜷川幸雄、栗山民也といった演劇界の巨匠たちが演出してきた本作。今回手がけるのは、気鋭の若手演出家・杉原邦生。スーパー歌舞伎II『新版 オグリ』や、木下歌舞伎『勧進帳』などの演出を務めてきた杉原が、劇中歌もすべて刷新し、市川猿之助をはじめとする異彩を放つキャスト陣とともに、相貌も新たに甦らせる。主演の市川に加え、三宅健、松雪泰子、川平慈英ほかが出演。スーパー歌舞伎II『新版 オグリ』でも演出の杉原とタッグを組んだ歌舞伎界の若き重鎮・市川は、PARCO歌舞伎『決闘!高田馬場』に出演、同劇場の『狭き門より入れ』で現代劇に初出演するなど、PARCO劇場とも深い縁がある。その市川が、PARCOオープニング・シリーズにふさわしい本作で、落語や講談、歌舞伎でも描かれてきた稀代の悪党・杉の市を演じる。さらに三宅が、杉の市の処刑を進言する塙保己一ほか数役を演じ分け、松雪泰子が杉の市の愛人お市を、川平が物語の語り部となる盲太夫を演じる。そのほかにも、高橋洋、佐藤誓、宮地雅子、ナイロン100℃の松永玲子、同じくナイロン100℃所属でミュージシャンとしても活躍するみのすけほか、舞台・ドラマ・映画と様々なジャンルで活躍する俳優陣が、それぞれひとり複数の役で江戸の人物たちを演じ分けていく。舞台『藪原検校』PARCO劇場2021年2月10日(水)~3月7日(日)※高橋洋の「高」は「はしごだか」が正式表記。
2020年10月26日歌舞伎俳優の市川猿之助主演のPARCO劇場オープニング・シリーズ 『藪原検校』の全キャストと公演日程が26日、公開された。同作は話題作を送り出してきたPARCO劇場(西武劇場)の「西武劇場オープニング記念・井上ひさしシリーズ」として1973年に初演を迎え、今回新生PARCO劇場のオープニング・シリーズの一作として上演される。とある按摩・盲太夫が語る、稀代の悪党の一代記で、江戸時代の中頃、松島・塩釜の漁港に生まれた一人の盲目の男児・杉の市(猿之助)が、父ゆずりの曲がった性根と母ゆずりの醜さで殺しと欲にまみれた栄華への道を上り始める。これまで木村光一、蜷川幸雄、栗山民也といった演劇界の巨匠たちが演出してきた本作を、気鋭の若手演出家・杉原邦生が手掛け、劇中歌もすべて刷新し、猿之助をはじめとする豪華キャスト陣と共に、新生PARCO劇場で新たに蘇らせることとなる。主演を務めるのは、スーパー歌舞伎Ⅱ『新版 オグリ』でも演出の杉原とタッグを組んだ猿之助。さらに、三宅健が杉の市の処刑を進言する塙保己一ほか数役を演じ分け、松雪泰子が杉の市の愛人・お市を、川平慈英が物語の語り部となる盲太夫を演じる。ほかにも高橋洋、佐藤誓、宮地雅子、松永玲子、みのすけほか、舞台・ドラマ・映画と様々なジャンルで活躍する俳優陣が、それぞれ一人複数役で江戸の人物たちを演じ分けていく。公演はPARCO劇場にて2021年2月10日~3月7日。○杉原邦生 コメント都合の悪い歴史や事実がうやむやにされ、汚いものが排除される一方、見せかけの新しさとクリーンさで豊かな国家/都市をアピールする。そんな現代社会では、僕たち皆が〈盲人〉扱いされているように錯覚することがあります。何も見なくていい、分からなくていい、黙っていろ。そう言われている気がしてくるのです。井上ひさしさんの『藪原検校』は「盲人」たちの物語です。ひとりの座頭が社会の逆風に抗い、貪欲に、手段を選ばず金・地位・権力を手に入れていく。僕には、この座頭がただの悪人とはどうしても思えません。見えない瞳の奥に、深い憤り、苦悩、孤独と哀しみ、そして未来への切なる希望を見てしまうからです。その希望は、すべての「盲人」の希望でもあるように思います。素晴らしいキャスト、スタッフの皆さんとともに、サイコーにエネルギッシュな『藪原検校』をお届けしたいと思っています!○市川猿之助 コメントPARCO劇場オープニング・シリーズの一作に出演させていただくことになり、非常に光栄です。伯父の猿翁とも所縁あるこの劇場で、これまた所縁ある井上ひさし作品を上演できますこと、深いご縁を感じます。気鋭の若き演出家に加え、豪華な共演者の皆様が決まったとのことで、共に素晴らしい作品を創り上げてまいる所存です。演出家杉原氏曰く、「猿之助の一字と私杉原の一字を持ったお役”杉の市”」、を演じることになったこともご縁を感じております。まだまだ不安な状況ではございますが、精いっぱい務めますのでよろしくお願いいたします。○三宅健 コメント自身が初舞台を踏んだ劇場が旧PARCO劇場だったので、20年ぶりにPARCO劇場に立たせて頂けることを大変光栄に思います。歌舞伎を観劇するのが好きなので、今回、猿之助さんとご一緒させて頂けて嬉しいです。自分にとって6役を演じさせて頂くというのは、初めての経験なので新境地を開くことが出来たらと思っております。井上ひさしさんの描く魅力的な言葉の世界に染まり、同じ人物が6役を演じなければいけない配役の意味を戯曲から紐解いていければと思っております。井上ひさしさんが生前に繰り返し言っていたという「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」この素敵な言葉を胸にしっかり演じきりたいです。○松雪泰子 コメントPARCO劇場オープニング・シリーズ『藪原検校』に参加させて頂く事、大変光栄に思っております。初舞台で立たせて頂きましたのが旧パルコ劇場。今こうして新たに生まれ変わった劇場のオープニング・シリーズに携われる喜びに溢れております。劇場に足をお運び頂くお客様にも劇場での感動をお届けできますよう、新たな「藪原検校」を生み出す一員として、励みたいと思っております。○川平慈英 コメント井上ひさしさんの作品は『私はだれでしょう』(2007年)以来なので、久しぶりに井上さんにお会いできるような気持ちです。今回は“語り部”役なので当然“語る”のですが、語り過ぎているのではないかと恐縮するほどずっと語っています(笑)。お客様を気持ちよく物語に誘えるよう力強く丁寧に語りたいですね。かなりドロドロしたお話ですが、このメンバーなので笑いやエンターテインメントの要素も盛り込まれるような予感がして、今から胸が弾んでおります。初共演の方達も多く、どんな化学反応が起こるのか今から楽しみなんです!
2020年10月26日堺雅人主演、日曜劇場「半沢直樹」の2話が7月26日放送。古巣で親会社の東京中央銀行に案件を奪われた半沢たちが反撃に打って出た今回も市川猿之助の「詫びろ」連呼に、香川照之の「おしまいdeath!」といった“名言”に多くの視聴者が注目している。東京中央銀行のバンカー・半沢直樹が銀行内の数々の不正を明らかにするが、結局子会社への出向を命じられるまでを描いた前シーズンは半沢の「倍返し」が流行語になるなど大ヒット。それから7年を経て帰ってきた今シーズンでは、子会社である出向先の東京セントラル証券で営業企画部長となった半沢が、大口の買収案件を親会社の東京中央銀行に奪われるという事態が発生する。半沢直樹役の堺さんをはじめ、結婚を期に専業主婦となった半沢の妻、花に上戸彩。半沢に不正を暴かれたが銀行に居残った大和田暁に香川さん。半沢を恨み続ける東京中央銀行の伊佐山泰二に市川さん。陰で半沢を支える渡真利忍に及川光博。東京セントラル証券のプロパー社員、森山雅弘に賀来賢人。買収に巻き込まれたスパイラル社長、瀬名洋介に尾上松也。そのほか今田美桜、山崎銀之丞、角田晃広、戸次重幸、南野陽子、古田新太、井川遥、北大路欣也(特別出演)といった面々が出演。※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。電脳雑伎集団によるスパイラル買収案件を東京中央銀行に横取りされ、銀行に逆襲を誓う半沢と森山。スパイラルは新株発行でこの難局を乗り越えようとするが、新株を買い取るホワイトナイトに名乗りを上げたのは瀬名の憧れの存在でもあるIT業界のカリスマ・フォックス社長の郷田(戸次重幸)だった。しかし半沢らはフォックスが新株引受に必要な1000億を確保できそうもないことから、何か裏があると考える。実はスパイラルのアドバイザーである大洋証券、フォックス、東京中央銀行は裏でつながっていた…というのが今回の物語。今回も市川さん演じる伊佐山の“絶叫”に視聴者が大きく注目。半沢を本社に呼び出し「詫びろ詫びろ詫びろ詫びろ詫びろ半沢~!」と連呼するその様に「詫びろ詫びろコールはもはや歌舞伎」「伊佐山さんの詫びろ詫びろ詫びろ~がツボでした」といった声が殺到。また前回「施されたら施し返す、恩返しです!」という新たな“名言”を生み出した大和田の「君はもう、お、し、ま、い、death!」のセリフにも「おしまいdeathは何回見ても笑う」「おしまいDEATH。名言決定(笑)」「大和田常務、名言(?)ストックいくつあるんや、、笑」など多くの視聴者が大きく盛り上がっている。(笠緒)
2020年07月26日平成3年に哲学者の梅原猛と市川猿翁(当時は三代目猿之助)が創り上げた伝説のスーパー歌舞伎『オグリ』。その伝説の作品が、スーパー歌舞伎II(セカンド)『新版 オグリ』として生まれ変わる。来年の博多座(福岡)、南座(京都)公演に向けた取材会に市川猿之助(四代目)と中村隼人が出席し、意気込みを語った。【チケット情報はこちら】猿之助は、遠方地域から来場する観客にも配慮しつつ、東京公演よりも「時間を短縮します」と宣言。と言っても、もちろん無理やり削るわけではなく「(東京で)2か月やって、ここはいらない、ここは増やしたいというところが見えてきました。初演は“あれもやりたい”“これもやりたい”といろいろ詰め込むけど、今度は凝縮していきます」とより洗練した『オグリ』を見せるべく意気込む。束縛を嫌い、心のままに生きる小栗判官が、地獄や現世を渡り歩くさまを描く本作。伯父の手による、もはや“伝説”と化している舞台と比較されることになるが猿之助は「こだわりは“前作にとらわれないこと”。過去って美化されがちだけど、“昔はよかった”という言葉は気にしないように」と独自の世界の構築に自信をのぞかせる。猿之助、隼人が小栗判官と遊行上人を交互に演じるが、互いの小栗判官の印象を尋ねると、猿之助は「等身大の飛ぶ鳥を落とす勢いのある若さが(役と)重なる」と隼人を称賛。一方、隼人は「猿之助兄さんの小栗判官を見て、自分にはまだまだ及ばないと感じるのは、人々の心を煽り立て、幸福をかき乱し、リーダーシップをとって、考えの違う人も変えてしまうようなところにあるんだと思います」と、そのカリスマ性を改めて感じている様子。物語について、隼人が作品中でスマホが出てくることに触れ「誹謗中傷をする人たちって相手がどうなるかって考えずにやることが多いですよね。これは現代のネット社会を描いているのかなと。直接手を下さなくてもそうなるツールを持っている事に、何かを感じてもらえたら」と語る。一方、猿之助は「この作品では、本当に今の生き方でいいんですか? あなたは今、本当に幸せ?と問いかけている」と語った。取材会では猿之助が、九州から来た記者に博多のなじみの店の名をあげつつ「いま、街の賑わいはどうですか?」と逆質問するひと幕も。「(自身の公演をいい流れに)つなげられたら」と語るなど、自身の公演や歌舞伎だけにとらわれず、福岡、そして九州のエンターテイメント全体を盛り上げていこうとする強い気持ちを感じさせた。福岡公演は、2月4日(火)から25日(火) まで博多座で上演。チケット発売は12月14日(土)、プレリザーブは12月12日(木)11:00まで受付中。その他、京都公演は12月13日(金)発売。
2019年12月11日特別感のある隠れ家風の外観大きな提灯が目印の「赤坂うまや」。風情ある門構えから入口へと続く道には緑の木々が立ち並びます。店内は全部で150席という広めのつくり。テーブル席、座敷、テラス席など、用途に合わせた様々なタイプがあります。夜になると入口付近がライトアップされるので、昼間とは違った印象に。「うまや」の魅力ポイント・こだわりを知ろうお店の魅力は、種類豊富なお酒と厳選素材を使った鶏串、紅白2種のユニークなスープで食べるしゃぶしゃぶ鍋。九州の食材をふんだんに使い、新鮮なものを味わってもらうために産地直送の素材で調理されています。つけだれが特徴「鹿児島 黒豚ばら肉 しゃぶしゃぶ鍋」おそすめメニューのひとつ「鹿児島 黒豚ばら肉 しゃぶしゃぶ鍋」(3,600円/1人前)。博多とんこつスープで食すオリジナル鍋で、つけだれのとんこつスープは紅白2種。マイルドな白スープと、ピリ辛ダレを混ぜた赤スープは、味はもちろん色鮮やかな美しい見た目にもこだわっています。脂身の甘みが味わえる黒豚ばら肉をさっと湯通しして、やわらかい食感と深みのある味わいを堪能できます。たっぷり食べたい人に! シメのラーメンはお替わり無料「鹿児島 黒豚ばら肉 しゃぶしゃぶ鍋」は、たっぷりの黒豚ばら肉、野菜盛り、ラーメン玉のセット。ラーメン玉は無料でお替わりできるので、〆まで鍋を堪能したい人におすすめです。豚骨スープに染み出した素材の旨味も一緒に味わえる絶品ラーメンに。「赤坂うまや」で和みとおもてなしの料理を楽しもう会食や記念日デート利用にもぴったりな「赤坂うまや」には、鶏串や鍋以外にも魅力的なメニューが豊富に揃っています。グループの養鶏所で生産した玉子を使った料理、肉・魚料理、おつまみメニューなど、どれにしようか決めかねてしまうほど。絶品料理に合うドリンクメニューの豊富さも見逃せません。「赤坂うまや」こだわりの料理・お酒と一緒に特別な時間を過ごしてみませんか?東京メトロ丸の内線・銀座線赤坂見付駅から徒歩3分。千代田線、半蔵門線、有楽町線、南北線の最寄り駅も徒歩圏内にあるため、アクセスのしやすさが魅力です。スポット情報スポット名:赤坂うまや住所:東京都港区赤坂4-2-32電話番号:03-6229-1661
2018年06月05日6月3日公開の映画『花戦さ』の公開直前会見が29日、都内で行われ、野村萬斎、市川猿之助、中井貴一、佐々木蔵之介、佐藤浩市、高橋克実、山内圭哉、和田正人、森川葵、吉田栄作、篠原哲雄監督が出席した。野村萬斎、市川猿之助、中井貴一、佐藤浩市といった狂言、歌舞伎、日本映画界を代表する俳優陣が共演を果たした本作。暴君と化した豊臣秀吉(市川猿之助)の圧政から町衆を守るため、真っ向から秀吉に挑んだ花僧、初代・池坊専好(野村萬斎)の大勝負を描く。市川とは本作で初共演となった野村は「僕とのシーンも素晴らしいんですけど、浩市(千利休)さんを踏んづけたりと憎々しさが本当に楽しくて、素晴らしい秀吉でした。こんな嫌な奴がこんなにチャーミングに見えて、本当に素晴らしいと思いました」と絶賛し、当の市川は「大先輩の佐藤さんの頭を踏んづけるのが本当に嫌でしたが、役だから仕方ないですよね。だから心の中で『ごめんなさい』と言いながらやっていました」と佐藤を気にかける場面も。その市川から足で踏まれた佐藤は「僕らみたいなのは、熱がかからないと(芝居が)出来ないので、猿之助くんに『もっと踏んで! もっと踏んで!』とお願いをさせていただきました。違う意味に取られますが」と笑わせ、佐藤と長い付き合いのある中井は「佐藤さんがMだというのは長い付き合いの中で何となく分かっていましたよ」とコメントして会場の笑いを誘った。ヒロインの森川は、野村扮する専好に助けられた娘・れん役。「みなさんそれぞれの個性を持たれた素敵な俳優さん。私がその中に紛れていて不思議な感覚です」と話しながら「作品をやっていても、同じ年齡の人とやることが多いので、こうして同じ作品に出させていただいて本当に幸せです」と大先輩の演技に刺激を受けた様子。とはいえ、「皆さんそれぞれ素敵なので、もし選べと言われても絶対に選べないです(笑)」と言及を避け、登壇した男性陣を安堵させた。映画『花戦さ』は、6月3日より全国公開。
2017年05月29日松本幸四郎、中村吉右衛門、片岡仁左衛門、市川左團次、片岡秀太郎、中村歌六、中村雀右衛門、中村又五郎、尾上松緑、市川猿之助、尾上松也らが出演する歌舞伎座「六月大歌舞伎」。昼の部は『名月八幡祭(めいげつはちまんまつり)』『浮世風呂(うきよぶろ)』『御所桜堀川夜討(ごしょざくらほりかわようち)弁慶上使』、夜の部は『鎌倉三代記(かまくらさんだいき)』『曽我綉侠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)御所五郎蔵』『一本刀土俵入(いっぽんがたなどひょういり)』が上演される。歌舞伎座六月大歌舞伎 チケット情報今回、『名月八幡祭』の船頭三次、『浮世風呂』の三助政吉、『一本刀土俵入』のお蔦を演じる猿之助に話を聞いた。四代目市川猿之助の襲名披露公演「松竹大歌舞伎」(2014年)以来、お蔦を演じる猿之助。「(お蔦は)好きな役なので、『一本刀土俵入』ができることが嬉しい」と語り、今回「高麗屋のおじさん(幸四郎)とできるってことが嬉しい。もうすぐお名前変わられちゃうから」(幸四郎は2018年に二代目松本白鸚を襲名)と感慨深げに話す。大阪公演(2001年)での七世芝翫のお蔦を見ていた猿之助に芝翫のお蔦の魅力を尋ねると「薄情なところがいいでしょ。親切だけど情があっちゃダメな役だから。それがだんだん時代が変わって、わが身の不幸さと茂兵衛を重ね合わせちゃってそこに情が移って…っていうのは現代的な解釈。片方は全く覚えてないのに、片方はそれを一生覚えてて恩返しするっていうのが大事なとこ」と改めて解説した。『名月八幡祭』は初役となるが「(縮屋新助を演じるのが)松緑さんだから、ぜひ出たいと思って」と笑顔。初役に対して「この前、(三次を演じた事がある)竹三郎さんが、四世菊次郎さんから言われた小道具の扱いとかそういうポイントを教えてくれた」と明かす。歌舞伎座では約16年ぶりとなる『浮世風呂』は「この時期のものだからね。ちょっと季節感を出そうと思って」と猿之助の提案だったそう。なめくじ役をかつては自身も演じており「なめくじはいい役ですよ。本当は僕はなめくじのほうがいいんだけど、やっぱり主役の三助をやらなきゃいけない」と笑う。取材後、「あっという間に6月ですよ!」と猿之助。5月には大阪松竹座公演で宙乗り通算1000回を達成し、10、11月にはスーパー歌舞伎II『ワンピース』と続く。「六月大歌舞伎」ではどのような姿をみせてくれるのか期待が高まる。公演は、6月2日(金)から26日(月)まで東京・歌舞伎座にて。チケットは発売中。取材・文:中川實穗
2017年05月16日野村萬斎、市川猿之助、中井貴一、佐々木蔵之介、佐藤浩市という、狂言×歌舞伎×日本映画界のトップが競演する痛快エンターテインメント『花戦さ』。このほど、萬斎さん演じる花僧・池坊専好が“戦さ”を挑むことになる、太閤・秀吉の横暴ぶりが明らかになる劇中画像が公開された。本作は、織田信長、豊臣秀吉といった戦国武将と関わりを持ち、天下一の茶の湯者・千利休とも親交があった、実在した京都の花僧・池坊専好の物語。戦国時代、信長が本能寺で倒れたのち、天下人の座は秀吉へ引き継がれ、戦乱の世が終わりを告げようとしていた。だが、秀吉の圧政は次第に人々を苦しめていく。天下人・秀吉に対し、単身立ち向かう専好の姿を、本作では痛快に描き出す。このほど届いた画像は、暴君・秀吉(市川猿之助)が鬼気迫る怒りの表情で、千利休(佐藤浩市)の頭を踏みつけている衝撃的なもの。場所は、悪評高い黄金の茶室。金色の袴に金色の足袋という秀吉の驕りを象徴するような姿で、足元には秀吉が好まない黒楽茶碗も確認できる。実は、“色”も本作を語る上で重要な要素となる。秀吉と利休の断絶の真相については諸説あるが、果たして、本作ではどのように描かれているのか…?ただただ、ひれ伏すしかない利休を踏みつける秀吉の横暴ぶりが、やがて池坊専好を一世一代の“戦さ”へと突き進ませることを予感させる1枚だ。専好は、かつて天下統一を目指す信長(中井貴一)の前で花をいけたが、思わぬ失態がもとで信長の怒りを買ってしまった。軽妙な機転で彼を救ったのは、ほかならぬ秀吉だ。そんな出会いから十数年。秀吉の治世のもと戦乱は収まり、専好と利休は無二の友として、それぞれの道を高め合った。だが、天下人となった秀吉の驕りは嵩じ、やがて利休を自害に追い込むこととなる。歌舞伎界代表の猿之助さんと、映画界代表の佐藤さんとの火花散る遠慮なしの演技バトルには注目だ。友のため、民のために、「花をもって世を正そうぞ」と専好が手にしたのは、「刃」ではなく「花」。彼が太閤・秀吉に仕掛けた一世一代の戦さは、果たしてどんなものだったのだろうか?『花戦さ』は6月3日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:花戦さ 2017年6月3日より全国にて公開(C) 2017「花戦さ」製作委員会
2017年05月12日十代目松本幸四郎への襲名を控えた市川染五郎と、『スーパー歌舞伎II ワンピース』の市川猿之助がタッグを組んだシネマ歌舞伎『やじきた』。このほど、この2人が歌舞伎界では前代未聞の(?)ラップに初挑戦した特別動画「Cinema Kabuki “YJKT”」が完成した。何もかもが上手くいかず、うだつが上がらない弥次さん、喜多さんの2人は、はずみで手に入れた金をもとに、お伊勢参りに旅立つことに。一方で、家督を守り、母の病気平癒を伊勢神宮に願うため、信夫(現在の福島市)の領主・梵太郎と御伴の政之助は、不安を口にしつつも決意を新たに旅立つ。この対照的な2組が、偶然にも東海道で出会い、一緒に伊勢参りをすることに。道中は、弥次喜多を追いかける借金取りや、若侍の持つ宝剣目当てに盗賊に襲われたり、怪奇現象に見舞われる。やがて、一行は思いがけずラスベガス(!?)に辿り着き、さまざまな艱難辛苦を乗り越え、やっとのことで伊勢参りを果たすのだが…。歌舞伎の舞台を撮影してスクリーンで楽しむシネマ歌舞伎。お馴染みの“弥次さん喜多さん”の珍道中「東海道中膝栗毛」を、染五郎さんと猿之助さんのコンビで贈る本作は、日本国内に留まらずラスベガスの海外までおよぶ奇想天外な物語が見どころ。また、歌舞伎座の夏芝居の醍醐味が満載で、宙乗り、本水を使った演出、立廻りの数々なども見逃せない。そんな本作で主演を務める、染五郎さんと猿之助さんが、本格ラップに初挑戦。終始和やかな雰囲気でお互いにギャグを言い合いながら収録は進められ、ラップ指導の板橋駿谷(劇団ロロ)やTaichi Masterに熱心に指導を求め、イントネーションや節回しを確認する場面も観られた。2人は「楽しいな!」と勢いづくも、「こなれた感じで」とのダメ出しを受けると「難しいな」――。ラップの技術等の壁も感じながら深夜まで収録に取り組んでいた。無事収録を終えた染五郎さんは、「ピコ太郎の“PPAP”に負けたくない!たくさんの方にご覧いただき、“YJKT”でお客様に、舞台中継とも全く違うシネマ歌舞伎をご覧いただきたい」と意気込みをコメント。猿之助さんは「南北等に共通する俳句調なところもありつつ、自由も意外とあるのでは。歌舞伎俳優が世の中にラップを発信するということは、ラップの分野にも新たな歴史の誕生ではないだろうか」と感慨深げに語った。また、ディレクターを務めた本作構成の杉原邦生は「やりたい放題な感じの2人がでているところがいいのでは」と染五郎さん、猿之助さんの名コンビぶりに言及。作曲を担当したTaichi Masterさんは「素晴らしいお2人がラップに挑戦するということは、前代未聞の取り組みでは。今回は貴重な体験をさせていただきました」と感想を語り、「初めての挑戦なのに、キャラが出来上がっていた」と絶賛を贈る。さらに、板橋さんも「Flow(歌い回し)が歌舞伎調になっていて、うまくラップの世界とミックスしている。勢いにのっている部分がとてもいい」と語り、2人の初ラップに太鼓判を押している。シネマ歌舞伎『やじきた』は6月3日(土)より東劇ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2017年04月28日3月21日、「五月花形歌舞伎」の取材会が行われた。これは大阪松竹座で5月に開催されるもので、市川猿之助、中村勘九郎、中村七之助の3人が2009年2月以来、じつに8年ぶりに大阪で共演するというもの。「五月花形歌舞伎」チケット情報取材会は、席に着くやいなや猿之助が手持ちのスマホで勘九郎を撮影するなど、終始和やかな雰囲気。かつて共演を重ねてきた「浅草歌舞伎」の思い出に話が及び、「楽しかった」と3人から笑顔がこぼれる。勘九郎が「『浅草歌舞伎』は1年の始まりでもあり、締めくくりでもあった」と話すと、七之助も「公演が終わって飲みに行くなんてことはほとんどなかった。でもお互いが舞台の上で理解しあい、熱気が生まれ充実していた」と懐かしんだ。当時は若手だった彼らも、8年という時を経て実力も人気もぐっと高まったタイミングで催される今回の公演。中村屋と澤瀉屋、それぞれの家が得意とする演目にお互いが出演するのがひとつの見どころだ。昼の部で上演される『金幣猿島郡(きんのざいさるしまだいり)』は三代猿之助四十八撰の内のひとつで、宙乗りもあり、エンタテインメント性の高い演目。猿之助はこの公演中、5月16日(火)の公演で宙乗り1000回を達成することとなる。驚く勘九郎、七之助に「あっという間でしたね。それでもおじ(猿翁)の記録を更新するにはあと4000回やらないといけないですから」と淡々と話す猿之助。「最初は力んでいたが、年を重ねて無駄な力が抜けた」と道のりを振り返った。勘九郎、七之助はともに初役であり、「演じるのが楽しみ」と顔をほころばせる。夜の部で上演される『怪談乳房榎』は中村勘三郎が繰り返し工夫を重ねながら上演をしてきた演目。勘九郎、七之助も赤坂ACTシアターを始め数々の劇場で演じてきたが、松竹座での上演は初となる。今回磯貝浪江役を演じることとなる猿之助は、勘三郎との思い出として「『あなたは(観客に)魔法の粉を振りまくからね』と言ってくださったことがあった。それはいまも誇りです」と明かすと、勘九郎が「猿之助さんの芝居を観た父が僕に電話をしてきて、『俺に似てる!』と褒めていた」と笑わせた。若い頃に同じ舞台で共演を重ねた3人が、それぞれに経験を重ねて再びあいまみえる。その成長と息の合った演技に期待したい。公演は、5月2日(火)から26日(金)まで大阪松竹座にて上演。チケットの一般発売は4月5日(水)10:00より。一般発売に先駆け、チケットぴあでは、4月4日(火)23:59までインターネット先行先着(プリセール)を実施中。取材・文:釣木文恵
2017年03月31日池坊専好役の野村萬斎をはじめ、市川猿之助、中井貴一、佐々木蔵之介、佐藤浩市ら「狂言×歌舞伎×日本映画界」のトップが集結する映画『花戦さ』。この度、本作の本予告とポスタービジュアルが解禁され、前売り鑑賞券も4月1日(土)より販売されることも決定した。16世紀後半、織田信長が本能寺で倒れたのち、天下人の座は豊臣秀吉へ引き継がれ、戦乱の時代が終わりを告げようとしていた。だが、秀吉の圧政は次第に人々を苦しめていく。そんな中町衆の先頭に立ち、秀吉に真っ向から戦いを挑んだ僧がいた。その名を池坊専好。華道池坊の歴史に名を連ねる花僧たちの中、ひときわ名手の誉れ高い専好が、天下人に対して武器としたのは、刃ではなく命ある花の美しさだった――。本作は、信長、秀吉といった戦国武将と関わりを持ち、天下統一の茶の湯者・千利休とも親交があった、池坊専好という実在した京都の花僧の物語。花を生けることで戦乱に生きる人々の心を救う花僧・池坊専好役に萬斎さん、専好と対立することになる天下人・秀吉役に猿之助さん、茶人・千利休役を佐藤さん、信長役を中井さん、前田利家役を佐々木さん、吉右衛門役を高橋克実、れん役を森川葵が扮し、戦国時代、時の天下人である秀吉に、専好が単身立ち向かう姿を痛快に描いていく。このほど公開された予告編では、時の権力者・秀吉の離宮を自害へと追いやることになる鬼気迫る怒りの表情や、信長の君主として凛とした佇まい、利家の専好に対する穏やかな表情、そして利休の包容力溢れる人柄が一目で分かる映像に。また、豪華メンバーが一同に会することになる映画冒頭、岐阜城の大広間のシーンで、10人がかりで14日間かけて作り上げた、松を昇り龍に見立てた幅4m55cm巨大な松のいけばなも登場。信長をして「見事なり」と言わしめ、専好の花の名手たる所以を一目で伝える迫力。しかし一転、「利休の話をするな」と怒り、驕り高ぶる秀吉も映し出され、「仏なんか どこにおるんや?」と涙する専好が「花をもって世を正そうぞ」と思いを込め、一世一代の「戦さ」へ突き進む姿が描かれている。さらに同時に解禁されたポスタービジュアルでは、「秀吉ギャフン」というコピーとともに、菖蒲の花を手に一世一代の大勝負に挑む専好をはじめ、生き生きした表情の登場人物たちが集結する、華やかな一枚となっている。『花戦さ』は6月3日(土)より全国にて公開。(cinemacafe.net)■関連作品:花戦さ 2017年6月3日より全国にて公開(C) 2017「花戦さ」製作委員会
2017年03月17日狂言師・野村萬斎や歌舞伎役者・市川猿之助らが出演する、生け花に焦点を当てた初の映画『花戦さ』が2017年に公開されることが6日、発表された。萬斎と猿之助が共演するのは今回が初となる。原作は、文禄3年(1594年)に池坊専好が豊臣秀吉に前田利家邸で披露したといわれる「大砂物」(全幅7.2メートル、高さ3.5メートルに及ぶ立花)から生まれた伝説に着想を得て、新たな物語とした鬼塚忠氏の小説『花いくさ』。初代・池坊専好という花の名手と千利休の友情や、京都の町衆である六角堂にいる花僧が、権力者・豊臣秀吉の乱心に、刃でなく花をもって相手をあだ討ちするストーリーに感銘を受けた製作側が、映画化を企画し実現に至った。そんな専好を演じるのが、萬斎。劇中での専好が持つ天真らんまん、奇想天外というイメージからオファーを受けた。萬斎は演じるに当たり、クランクイン前に華道の指導も受け、細かい所作にもこだわる徹底ぶりを見せているという。専好と対立する天下人・秀吉役を務めるのが、猿之助。「温厚だった秀吉が後年、嫡男・鶴松を失って狂気に陥っていく様を演じられるのは猿之助しかいない」との理由から抜てきされた。萬斎は、専好を「戦乱の時代の中で、花で世に語りかけ、花と共に生きた人」と説明。その上で、「命あるものにさらなる命を吹き込む、純粋(ピュア)な存在として演じたい」と意気込みを話す。2度にわたったという生け花の所作の稽古から、多くを学んだようで、「特有の所作に、私なりの動きを生かせれば」と自身ならではの演技ももくろんでいる。また、専好は「伝統を受け継ぐだけではなく、常に時代の空気を感じながら、"その時々の花の美しさ"を追求する」とし、「その姿勢は世阿弥も言っていることであり、われわれの狂言の世界と相通ずるものがある」と共感も覚えている様子だ。さらに、専好と深い友情と信頼を築き共に美を追い求めた茶人・千利休役として佐藤浩市、織田信長役として中井貴一、前田利家役として佐々木蔵之介といった俳優らが出演。『山桜』(08年)や『小川の辺』(11年)などを手がけてきた篠原哲雄監督がメガホンを取り、脚本を『包帯クラブ』(07年)などの森下佳子氏が執筆。音楽は、スタジオジブリ作品などで知られる久石譲が担当する。なお本作は、時代劇の中心地として名高い京都・太秦の映画人たちの手によって製作。撮影も大覚寺、妙心寺、鹿王院、仁和寺、南禅寺、梅宮大社、随心院など京都を代表する場所でも敢行されており、4月10日クランクイン、5月下旬のクランクアップを予定している。
2016年04月06日4月2日福岡・博多座で「スーパー歌舞伎II(セカンド)『ワンピース』」の福岡公演が開幕。同公演で、主演の市川猿之助が宙乗り通算800回を達成した。【チケット情報はこちら】累計発行部数3億2000万部以上を誇る世界的な人気マンガ『ONE PIECE』と、日本固有の伝統芸能である歌舞伎がコラボレーション。猿之助は主人公のルフィを含む三役を演じ、演出も手がける。今回、公演が行われた博多座は歌舞伎、ミュージカル、宝塚歌劇など様々な種類の演劇上演を設計段階から想定して作られた、全国的にも珍しい演劇専用劇場。開館16年目にして、今年初めて館内リニューアルを実施。舞台照明、音響など舞台まわりも一新。リニューアル記念公演第1弾である『ワンピース』の見どころである“ななめ宙乗り”用の設備も整い、さらに迫力ある舞台演出が期待できる。初日前日には、高島宗一郎福岡市長、出演の市川猿之助、平岳大、博多座の芦塚社長が登壇し、テープカットイベントが開催された。「出演された役者さんにもお褒めの言葉をたくさん頂いてる博多座。今回、座席、音響、照明、舞台装置のリニューアルを行ない、さらに魅力が増したと思う。福岡は海外から含め、たくさんの観光客が増えている街。ぜひ様々な方に来場頂きたい」と高島市長が祝辞を述べれば、「『スーパー歌舞伎座』と私達は呼んでいるくらい、スーパー歌舞伎を上演するのに日本で一番適した劇場。それが更に魅力的になって、なかでも特に音響が素晴らしい。まるで映画館でみているような迫力が味わえると思います。『ワンピース』の最終形態をお観せするにはうってつけの劇場」と市川猿之助も笑顔で受ける。また、大阪公演から同公演に参加したという平岳大は「歌舞伎をする、ということが初めて。化粧や見得の切り方など手取り足取り猿之助さんに教えてもらいました。自分なりに役も練れてきた段階で、大好きな博多でしかもリニューアル初公演で出演させて頂けるのはこの上ない幸せ」と締めくくった。同公演は先に昨年10、11月に東京、今年3月に大阪で上演。東京・新橋演舞場公演は、10万人を超える観客が来場し、連日超満員。大阪・松竹座公演では演出を東京公演から改訂。バージョンアップした早替わり、宙乗り、本水、フライングなどの演出で観客を魅了した。福岡公演は4月26日(火)まで上演。チケット発売中。※高島宗一郎福岡市長の「高」ははしごだか。
2016年04月06日秋元松代の脚本と蜷川幸雄の演出により、36年前の初演から多くの観客に愛され、上演が重ねられてきた名作舞台『元禄港歌―千年の恋の森―』が、市川猿之助、宮沢りえ、高橋一生、鈴木杏、段田安則ら新たな出演者をえて、1月7日より東京・シアターコクーンにて開幕。前日の6日には報道陣に向けて公開舞台稽古が行われた。【チケット情報はこちら】物語は、活気あふれる元禄時代、播州の大店・筑前屋を舞台に、結ばれない男女や、哀しい秘密を背負った親子の姿が描かれる。筑前屋の次男・万次郎(高橋)の起こした揉みあいを、5年ぶりに江戸の出店から戻った長男・信助(段田)が居合わせ、それをいさめる。母親である筑前屋の女将・お浜(新橋耐子)は信助を出迎えるが、その態度はどこかよそよそしい。そこに現れたのが、手引きの歌春(鈴木)を先頭に、座元の糸栄(猿之助)、そして初音(宮沢)ら、年に一度この港町を訪れる瞽女の一行だ。公開舞台稽古で披露されたのは、その晩、筑前屋にて瞽女たちが三味線で「葛の葉子別れ」を弾き語る場面。千年の昔から森の奥に棲む女が白狐となって恋人に逢いに来るが、人里の男に恋をした罰として、生まれたばかりの我が子を残して森に帰らなければならないという悲しい歌だ。涙ながらに弾き語る糸栄の姿に胸に迫るものを感じ、自身の出生に疑いを持っていた信助は初音に、糸栄は子を産んだことがあるのではないかと問いただす…。今回の上演にあたり、蜷川は「秋元松代さんの作品に登場する女たちは、いつも激しく、ストイック。それはどこかで破滅や不幸とつながってゆき、近代が何を犠牲にし、何を捨ててきたのかを証明している。(今回)猿之助さんが、美空ひばりさんの歌で『元禄港歌』をやりたいと言ってくれた。猿之助さんの糸栄なら見てみたい。久々にあらたな気持ちでこの作品をやってみたいと思った」とコメント。また、猿之助は開幕にあたり「蜷川さんは客席との一体感を大切にされる演出ですから、初日が開いてみないとわからない。稽古場で7割、あとの3割はお客様と共に創る感覚。でもその7割はキッチリ100%と自信があります!糸栄という役は、白い狐が化けたような、どこか非現実的な、幻想的な存在。だから女形なのだと、女形という特異性が役の特異性に呼応しているように感じています。初春、お芝居を楽しんで頂ければ」と意気込む。宮沢も自身の役について「ひとりの女の運命だったり、思いだったり、未来だったりが、とても刺激的です。生まれながらの罪をしっかり受けとめて、それでも愛することを止まない女。自分の存在を蔑み、原罪を受け止め、でも溢れ出る想いに揺れる。その姿にものすごく色気を感じますね。今回は“惜しまない表現”を目指します!」と語った。公演は1月7日より東京・シアターコクーンにて。2日6日(土)から14日(日)まで大阪・シアターBRAVA!でも上演。ほぼ完売状態の東京公演は、チケットぴあにて立見券を発売中。
2016年01月07日歌舞伎俳優の市川猿之助と市川中車(=香川照之)が3月20日に会見を開き、「松竹大歌舞伎」巡業公演の製作発表を行った。「松竹大歌舞伎」チケット情報2012年に四代目を襲名した猿之助と、同じく九代目を襲名した中車の襲名披露として行われる今回の巡業公演。5月末から6月にかけて行われる中央コースでは『一本刀土俵入』のふたりの共演が話題に。猿之助は「お蔦は(中村)芝翫さんから最後に教わった人生の中で一番大切にしている役。猿之助になっても女方を大切にしますと報告したい」と胸中を明かした。中車も「亡くなった勘三郎さんからも(茂兵衛役は)ぜひやるべきだよと聞いておりました。父(市川猿翁)が芝翫さんと共演した時のDVDを参考に、父に教えてもらいながらやっていこうと思っております」と意気込みを語った。8月末から9月にかけて行われる西コースで、新橋演舞場での襲名披露の際演じた『小栗栖の長兵衛』に再び挑戦する中車。「2年前にやらせていただきましたが、少しでも前進していると自分でも実感できるような作品にしたい」と話す。同じく西コースで「義経千本桜」『四の切』の狐忠信を演じる猿之助は「『義経~』については語る言葉はないです。猿之助イコールこれだと思ってもらっても過言ではない」と自信たっぷりに語った。襲名してから2年が経つが、感想を聞かれた猿之助は「ずいぶんまえから猿之助だったかのよう」と話し、気持ちは次のステップに向かっているようだ。「先輩からあずかった荷物を次へ渡す古典の継承とスーパー歌舞伎の次回作を考えなければ。ますます忙しくなりますが充実していて役者としてありがたい」。歌舞伎の世界に飛び込んだ中車にとっては全てが初めての経験だ。「この2年間で歌舞伎に対する思いが変わってきました。やっぱりもっと早くやりたかった。歌舞伎にひと月出させていただいてから映像の世界に戻ると実感するのですが、ひとつの動き、ひとつの音、ひとつの間、すべてが繋がっていたんだと。長い時間をかけて完璧に構築されてきた“完全体”をみせられると、理屈だけは理解してもそれが出来ない自分のもどかしさの中で、ある日1ミリだけ前進したような錯覚をうける。その錯覚を楽しみに今は前に進んでいます。(歌舞伎は)生きる実感をいただいているありがたい仕事です」。「松竹大歌舞伎」中央コースは5月31日(土)から6月27日(金)まで、西コースは8月31日(日)から9月26日(金)まで各地を巡演。チケットは一部を除き発売中。
2014年03月25日市川猿之助と片岡愛之助が初日を迎えた1月2日、東京・浅草公会堂で『新春浅草歌舞伎』鏡開きを行った。「新春浅草歌舞伎」チケット情報毎年若手花形が出演することで人気の興行。猿之助は亀治郎時代に12回出演、猿之助襲名後初めて浅草に登場する。猿之助は「浅草歌舞伎へご恩がえしの意味も込めて、今回出演させていただきます」と挨拶。ずらり居並ぶ若手俳優を指して、「彼らがこれからの浅草歌舞伎を背負って立っていきます。どうか、今まで以上に熱い声援を彼らに贈っていただけますよう」と呼びかけたあと、後ろ手にしていたものを眼前に広げると、観衆は大爆笑。広げて見せたのは若手人気俳優・中村隼人のカレンダーだ。「劇場で売っております。2600円です。これを僕は売りにやってまいりました」と会心の笑顔だった。一方の愛之助は「毎年卒業と言いながら、去年も今年も出演させていただいてます」と挨拶。ドラマ『半沢直樹』でオネエ言葉の国税局検査官役で大ブレイクした昨年を「紅白歌合戦の審査員にも出させていただくなど、すごくうれしい年になりました」と振り返りながら、「今年はオネエも卒業して片岡愛之助へ立ち返って頑張りたいと思います」と笑顔で新年の抱負を話した。今年の新春浅草歌舞伎は猿之助が『上州土産百両首』『博奕十王』、愛之助が『義賢最期』『新口村』に出演する。公演は1月26日(日)まで東京・浅草公会堂にて。
2014年01月07日舞台「助太刀屋助六 外伝」の初日を前に12月14日(金)、主演の市川猿之助を始め、共演の朝海光、吉沢悠、忍成修吾、石橋直也、鶴見辰吾が報道陣の取材に応じ、舞台稽古の模様を公開した。岡本喜八監督が原案となる漫画讀本「助太刀屋助六」を発表し、その後「仇討ち・助太刀屋助六」としてテレビドラマ化。2002年には真田広之、鈴木京香らが出演して映画化もされ、岡本監督の遺作となった。この原案を演劇界の奇才・G2の手で舞台化したのが本作。底抜けに明るく憎めない助太刀屋の助六が、ある武士の敵討ちを手伝いながら裏にある藩の陰謀を暴いていく。今年6月に四代目・猿之助を襲名して以来、初めての歌舞伎や舞踊以外の外部の舞台への出演となるが「こういう機会でないと鶴見さんや朝海さんとご一緒できないので」と歌舞伎以外の世界から受ける刺激を明かす。元々、石橋さんが立案し公演が決まったという本作。猿之助さんが石橋さんに言ったという「いつか一緒にやろう」という言葉が10年越しで実現したそうだが、猿之助さんは「『瓢箪から駒』ですね。社交辞令でそう言ったんだけど、得てしてそういうところから名作が生まれるもの」とうなづく。先日、亡くなった中村勘三郎さんもこの舞台を見に来るのを楽しみにしていたという。石橋さんは「帰ってきた浅草パラダイス」で勘三郎さんと共演し、その後、勘三郎さんの誘いを受けて、歌舞伎役者でないにもかかわらず20代にして「コクーン歌舞伎」や歌舞伎座さよなら公演で上演された宮藤官九郎作の「大江戸りびんぐでっど」にも出演した。石橋さんは「『浅草パラダイス』で目をかけていただき、コクーン歌舞伎でもかわいがっていただきまして…。1月にご挨拶に伺い『助太刀屋助六』が実現しますとご報告したら、『おめでとう。必ず見に行くからね』と仰って下さいました」と俳優としての“恩人”に晴れの舞台を見せることができずに残念そう。猿之助さんは改めて勘三郎さんの急逝について「悲しいけど事実だからね」と受け止めつつ、「輪廻転生があると思うから、孫の七緒八(なおや)くんの子供くらいで生まれ変わってくるときに歌舞伎がなくなっていたら大変。我々が受け継いでいかないと」と伝統を継承していく覚悟を口にした。吉沢さんは「個性的な人たちが持ち寄った演技がぶつかることなく、『高めよう』という空気感を持った仲間が集まった」と歌舞伎に宝塚、現代劇と様々なジャンルの俳優が集まっての化学反応を楽しんでいるようだ。鶴見さんは映画『助太刀屋助六』にも出演しているが、今回の舞台版について「かなり洗練されていて音楽とのマッチングもいい。ニューヨークに持っていきたい」と語る。奇しくも勘三郎さんが歌舞伎のニューヨーク公演で大成功を収めており、猿之助さんは「じゃあ、こっちはフランスあたりにしとこうか?」と海外進出に向けても意欲満々。「毎日違うことをやります。結末も変わるかも(笑)」と舞台の幕開けを待ちわびていた。「助太刀屋助六 外伝」はル テアトル銀座にて12月15日(土)より上演。公式サイト:
2012年12月14日歌舞伎俳優の市川猿之助と市川中車が12月4日、都内で会見を開き、来年1月の大阪・松竹座「壽初春大歌舞伎」への意気込みを語った。大阪・松竹座「壽初春大歌舞伎」チケット情報今年6月、7月に東京・新橋演舞場で襲名披露興行が行われたが、来年からいよいよ大阪を皮切りに全国を回るツアーがスタートする。大阪・道頓堀で元旦から歌舞伎の幕が開くのは実に50年ぶり。四代目を襲名した猿之助は「襲名と正月のおめでたさを味わっていただきたい」とコメント。俳優・香川照之として活動しながら九代目を襲名した中車は「無事に初舞台を勤めることができましたのも四代目(猿之助)のおかげ。引き続き、精進していくことに変わりはございません」と歌舞伎俳優としての決意を語った。昼の部の『吉野山』、夜の部の『義経千本桜』(「四の切」)で狐忠信を演じる猿之助は「三代目(猿之助)の『四の切』は神業に近いと思っているので、それをやらせていただくことは非常にありがたいです。ただ、考えてみたら襲名で人間の役をひとつもやっていない。鬼か狐か鳥か」と笑わせ、「どこまでこの役を深めていけるか挑戦したいです」と意欲を見せた。中車は昼の部『楼門五三桐』で石川五右衛門役に挑戦する。同演目は7月の新橋演舞場で市川猿翁の真柴久吉、市川海老蔵の五右衛門で上演されたばかり。そのときは、父・猿翁の後ろで黒子として付いていた中車だが「海老蔵さんのハリのある声を後ろで聞いていたわけですが、まさか自分があそこに立つとは。いま、稽古をしながら古典の壁の高さを感じています。本当に未熟ではございますが、なんとか頑張っていま勉強している最中です」と心境を明かした。また猿翁との初共演については「いざそうなってみるとそういうことかという感覚ですね。大本にある役者としての感情は、6・7月の舞台や稽古を通して父と確認しあいました」と話していた。襲名興行だけにチケットの売れ行きを気にする猿之助は、中車が演じる五右衛門のセリフ“絶景かな”にひっかけ、「空席があると“絶景かな”とはなかなか言いにくいのですから、宣伝をよろしくお願いします」とマスコミに依頼する場面も。一方で、多くの観客に歌舞伎を見て欲しいという気持ちから「若者向けの芝居も必要。いろんな公演の形態があってもいい」と話す猿之助。映像の仕事が多かった中車は「(歌舞伎の舞台に立って)初めて舞台が面白いと思いました。猿之助の美しさとこの細いからだで背負っているものの大きさ。そういったものを見ると理屈でなく感動します」と歌舞伎の面白さをアピールしていた。公演は1月1日(火・祝) から1月26日(土)まで。チケットは発売中。
2012年12月07日歌舞伎俳優・市川猿之助が四代目を襲名後、東京・明治座に初登場する舞台『十一月花形歌舞伎』が11月3日に開幕した。明治座『十一月花形歌舞伎』チケット情報明治座は、1993年に再開場した際、当時の三代目猿之助(現市川猿翁)の宙乗り用に天井にレールが取り付けられた、猿之助縁の劇場。その劇場に襲名後、初めて立つ猿之助は「三代目の伯父(猿翁)は、明治座でたくさんの復活通し狂言を初演してきました。その様子をずっと見て来ましたから、明治座は私にとっても非常に思い出深い劇場です。今回は明治座の特別な宙乗り機構も駆使して、大仕掛けあり、早替りありの澤瀉屋(おもだかや=猿之助の屋号)らしいスケール感あふれる演目で臨みます。伯父が創り上げた“四十八撰”があるからこそ、それを受け継ぎ練り直すことができる。これは非常に有り難いことだと思っています。新たな“猿之助歌舞伎”の始まりとして、まずはこの1か月、お客様に喜んでいただける舞台になるよう精一杯つとめさせていただきます」とコメントを寄せた。猿之助は、昼の部の変化舞踊『蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)』で、童や薬売りなどさまざまな役に六変化する。めまぐるしく変わる役を早替わりでみせるのが最初のみどころ。その後、女郎蜘蛛の精が本性を現す場面では、対峙する源頼光たちとの立廻り、そして蜘蛛の糸が舞台いっぱいに放たれる圧巻のクライマックスと観客を楽しませる工夫が随所にある。また夜の部では、通し狂言『天竺徳兵衛新噺(てんじくとくべえいまようばなし)』で日本転覆を目論む異国帰りの天竺徳兵衛を演じる。奇抜な発想と斬新な仕掛けでみせる本作は、蝦蟇(がま)の妖術を駆使して徳兵衛が活躍する物語に、歌舞伎の怪談話でおなじみの小幡小平次の幽霊譚を織り交ぜた大胆な展開で、早替りや葛籠抜けの宙乗りがみどころ。澤瀉屋が得意とするケレン味あふれる演出が堪能できる。公演は11月27日(火)まで、明治座にて上演。チケットは一部を除き発売中。
2012年11月06日歌舞伎俳優の市川猿之助が9月22日、都内で会見を行い、出演する『明治座十一月花形歌舞伎』への意気込みを語った。『明治座十一月花形歌舞伎』チケット情報今年6月と7月に東京・新橋演舞場で襲名披露興行を行なった猿之助は襲名後、初めて東京・明治座に登場する。昼公演では6役を早替わりで演じる『蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)』に、夜公演では宙乗りを勤める『天竺徳兵衛新噺(てんじくとくべいまようばなし)』に出演する。会見で猿之助は「明治座は子どものころ、一番楽屋で遊んでいた劇場なので個人的な思い入れはすごくあります」と語り「(3代目の)猿之助さんから(歌舞伎で使う)蜘蛛の糸をもらった覚えがあります」と想い出話を披露。また襲名後、初の東京公演で『天竺徳兵衛新噺』を選んだ理由として「明治座は、今はあまり歌舞伎が浸透していないので、定着させるためにもコンパクトな演目が良いと思い選びました」と説明しつつ、「劇場の中では一番お弁当が美味しいので、お芝居を観てご飯を食べて楽しんで欲しい」と気軽さをアピールしていた。『蜘蛛絲梓弦』については、「セリ(舞台の一部が上下に動く機構)に飛び込むなど色々工夫をしてやりつくした結果、工夫しすぎない方がいいと思ったので、今回はシンプルにやります」と構想を明かす。明治座の設備の中にあるワイヤーについては「宙乗りのワイヤーが見えないようになっているんです。(3代目)猿之助の宙乗りのために造ってくれたようなものだったんですけど、(1993年に建て替えて)新装になってから猿之助は出演していないんです」と語った。さらに、明治座の歌舞伎公演にはこんな工夫も。「ほかの歌舞伎公演に比べると値段を安くしていただきました。2幕構成になっているので、若い方でも見やすくなっていると思います」。舞台のみならず映像でも幅広く活躍する猿之助だが「テレビなどで僕を知っていただいた人が、『歌舞伎をやっている人なんだ』と思って見に来ていただけたら嬉しいです」と話していた。公演は11月3日(土・祝)から11月27日(火)まで明治座にて上演。チケットは9月28日(金)より一般発売開始。
2012年09月25日歌舞伎俳優の市川亀治郎が四代目市川猿之助を、俳優の香川照之が九代目市川中車を襲名する『六月大歌舞伎』が6月5日、東京・新橋演舞場で開幕した。新橋演舞場のチケット情報本興行では、同時に当代猿之助が二代目市川猿翁に、香川の長男政明君も五代目市川團子(だんこ)を襲名。昼の部の『口上』では、猿翁、猿之助、中車、團子と幹部俳優が揃って襲名披露の挨拶を行った。満員の客席から大きな拍手が沸き起こる中、まずは猿之助が挨拶。関係者をはじめ、先祖にも感謝したいと気持ちを述べたあと「亀治郎という名にまだまだ愛着がございます」と前置きし、『ヤマトタケル』の作者でもある梅原猛から「フリードリヒ・ニーチェという大哲学者が『運命愛』ということは外に起こった運命、外側から降りかかった運命をさも自分が欲したかのように愛すること。君はその『運命愛』に従ってこれから生きなくちゃいかん」という言葉をもらったと明かした。「今までは色々なインタビューなどでまだまださみしさ6分、嬉しさ4分と申しましたが、今日、猿之助を襲名致しまして、嬉しさ100%でございます」と挨拶。続いて中車が「この(中車の)名跡は、戦前に大活躍なさいました七代目、私の曽祖父の初代猿翁の弟、私の大叔父にあたる八代目が幅広い役柄を演じてきました由緒ある名前です。この大きな名前を曽祖父、祖父の50回忌追善で襲名させていただきますことは誠にありがたく感無量の思いが致します。同時に歌舞伎の舞台に初めて御目見えいたす私は、生涯をかけ精進し、九代目中車を名乗らせていただきます責任を果たしてまいりたい」と終始頭を深々と下げて挨拶。感極まった表情で、目には涙を浮かべていた。團子は、緊張した面持ちながら「猿翁のおじい様よりずっと立派な俳優になる事が私の夢でございます」と大きな声で挨拶すると、客席から笑いと拍手も。そこへ台座に座り登場した猿翁が口上を述べると、客席の中には目頭を押さえる人の姿も見られた。また、夜の部の『ヤマトタケル』でもスーパー歌舞伎では初めてとなる劇中での口上が行われ、猿之助と中車が登場。猿之助が「前例がなければ作ればいいというのがモットーで、不可能を可能にするのが『澤瀉屋』(猿之助の屋号)」と一門を立て、スーパー歌舞伎の創始者である三代目猿之助は「偉大な存在」と語った。中車は1986年の初演を学生時に見た記憶を話し、「まさか『ヤマトタケル』で初めて歌舞伎の舞台に御目見得させて頂くことになるとは、本当に有難く夢のようです」と、熱のこもった口上を述べた。『ヤマトタケル』の舞台では、きらびやかな衣裳を纏った中車が威厳のある帝を演じ、続いて小碓命役の猿之助が颯爽と登場。同じ舞台での共演を果たした。團子はワカタケル役を堂々と演じていた。クライマックスのヤマトタケルの宙乗りでは、観客も大興奮。劇場は感動のるつぼと化していた。最後のカーテンコールには、作者の梅原と猿翁も登場し、会場はスタンディングオベーションとなり熱気と興奮に包まれた。公演は6月29日(金)まで同劇場にて上演。
2012年06月06日新橋演舞場10月公演『芸術祭十月花形歌舞伎』夜の部にて、市川亀治郎が伯父・市川猿之助の当り狂言に挑むこととなった。演目は、猿之助四十八撰の内『當世流小栗判官』。猿之助スピリットあふれるこの舞台に、亀治郎が小栗判官、浪七、お駒の3役に初挑戦する。上演に先駆け、亀治郎が小栗伝説にゆかり深い遊行寺(神奈川県藤沢市)を初めて訪れ、舞台の成功祈願を行った。『芸術祭十月花形歌舞伎』チケット情報小栗判官の物語は中世の説経節の代表的な作品で、近世以降は浄瑠璃や歌舞伎に取り上げられてきた。今回上演する『當世流小栗判官』は、様々な〈小栗物〉の集大成として、昭和58年に当代猿之助により初演されたもの。時宗の総本山である遊行寺(清浄光寺)の法主は“遊行上人”ともいわれ、伝説や劇中においても、この藤沢の遊行上人が登場し、亀治郎扮する病みついた小栗を熊野で湯治し復活させる。現在も、遊行寺の山内には、小栗の死後、照手姫が小栗を弔うために仏門に入り建立したといわれる長生院(小栗堂)があり、長生院には、小栗の墓、照手姫の墓、そして小栗が乗りこなした荒馬の鬼鹿毛の墓と伝えられる遺跡も残っている。亀治郎は、補綴・演出を担当する石川耕士氏と共に遊行寺の山内にある長生院を訪れ、自身が演じる小栗判官、そして照手姫、鬼鹿毛の墓へ墓参りをした。続いて、遊行寺の本堂で成功祈願を行った。亀治郎は「『當世流小栗判官』は、いつかやるだろうと思っていました。この演目は『加賀見山再岩藤』、『伊達の十役』と合わせて猿之助四十八撰の中で3強と言われている作品で、小栗判官、浪七、お駒を3役早替りでやるのは、東京では初演以来です。脚本も演出も見直して、単なる再演ではなく、進化した再演にしたいと思っています。お芝居としてはお駒、役者ぶりとしては小栗判官、浪七は立廻りと、歌舞伎の面白さがそれぞれ具現化されているのが、この3役ですので、やりがいもありますし、頑張ってやっていきます。ここ藤沢も含め、遠いところからも観にいらしていただければと思います」と公演への思いと意気込みを語った。公演は東京・新橋演舞場にて10月2日(日)から10月26日(水)まで上演される。チケットは発売中。
2011年09月21日