就職、転職、引っ越しなどで環境が変わったときや、残業が続いて忙しすぎる、社会不安が大きいような状況のとき、ひどく肌が荒れる、ニキビが急増したなどという経験はありませんか。ストレスと大人ニキビの関係ついて、皮膚科専門医で小林皮フ科クリニックの小林照明院長にお話をうかがいました。■大人ニキビの原因とは大人ニキビとはそもそも、どうしてできるのでしょうか?小林先生は、こう説明します。「大人ニキビも思春期ニキビも、できるメカニズムは同じです。思春期のころから、男性も女性も、男性ホルモンが増えてきたり、ホルモンバランスが乱れやすくなります。また皮膚が定期的に入れ替わる「角化」のリズムも乱れやすくなります。『ホルモンバランスの乱れ』による皮脂の過剰分泌と『「角化」のリズムの乱れ』による毛穴の閉鎖が進むとニキビが生まれやすくなり、さらにニキビ菌が増えやすくなります。ニキビ菌は毛穴にたまった皮脂を栄養にして増えていき、その結果、毛穴の壁が破れて炎症がさらに拡大し、赤みが強くなったり膿(うみ)を持つような状態に進んでいくことも多いのです」■ニキビそのものがストレスになる大人ニキビができるのには、ストレスがかかわっているのでしょうか?小林先生は、「『季節の変わり目』、『脂っこいモノを食べた』、『便秘』、『不摂生な生活』、『睡眠不足』などのストレスがかかるとホルモンのバランスが崩れます。その崩れが皮脂の分泌を高めることになって、先ほどのニキビができるメカニズムに結びつくわけです。当然、ニキビは発生しやすくなります」と言います。たしかに、生活環境の変化や社会不安な状況は、睡眠不足や疲労、ストレスに直結します。「それがニキビを生む一因になっています。また、ニキビそのものがストレスになることもあるわけです。放っておくと、シミになる、赤みがとれない、肌が隆起や陥没したりするなど、ニキビあとに悩むことはよくあるんです。それらのストレスを取り除くためにも、皮フ科医は、まずはニキビケアのポイントや、正しいスキンケアの方法を指導します」(小林先生)■大人ニキビはあとに残りやすいではここで、小林先生に「自分でできるスキンケア」を教えていただきましょう。1 1日2回以上、次の正しい洗顔を行います。特に、汗をかいたらすぐに洗顔を。気温が高い夏は皮脂と汗が混じってニキビを悪化させるので注意してください。<洗顔法>(1)蒸しタオルで毛穴を開かせておくと、毛穴の奥の汚れや皮脂が出やすくなります。(2)36℃~40℃の人肌程度のぬるま湯で顔を素洗いします。(3)石けんをよく泡立てて、泡で皮脂や汚れを包んで乳化させ、泡といっしょに落とします。その際、人さし指と中指の腹で円を描くようにして、次の順に力を入れずに軽くマッサージします。額→こめかみ→まゆ→鼻→目のまわり→ほお→口のまわり→あご→首すじ泡をころがすイメージで洗いましょう。肌に負担をかけないために、ごしごしとこするなど力を入れないようにします。(4)最後の洗い流しが重要です。こめかみ、あご、首すじに石けんを残さないようにたっぷりのお湯で繰り返し、流しましょう。(5)人さし指で、鼻の横、ほお、額を下から上へなぞり、さらっと指がすべる感じであればOK。ぬるっとして指に脂分が残る感じがしたら、まだ洗い足りない証拠です。再度その部分を泡で洗ってからよくすすぎましょう。(6)柔らかいタオルで、肌の上から軽く抑えるようにふきます。<ガーゼ洗顔法>皮脂の多い部分や、白ニキビ、黒ニキビにはガーゼを使った洗顔を行います。「ガーゼの布を利き手の人さし指に一重に巻き、指先のガーゼにニキビ用の石けんをつけてよく泡立てます。ニキビ部分をその泡で、力を入れずに、円を描くように洗ってください。直線で洗うと汚れがとれないし刺激が強いので、かえって肌に負担になることもあります」と小林先生。この方法は、症状の改善が見られたら毎日は行わずに週に2~3回だけにして、上の洗顔法だけを1日2回行うようにします。ガーゼ洗顔をしすぎると皮膚が刺激を受け、皮脂の分泌が盛んになってしまうことがあるからです。この方法は、断水下などで水が貴重なときにも応用が利きます。ガーゼやコットンに水を適量含ませて、円を描くように顔をなぞります。なぞる順番は、上の<洗顔法>の(3)に習ってください。2 ストレスをためない生活を心がける。就寝前に趣味の時間を持つなどして、リラックスタイムをつくる。3 夜ふかし、睡眠不足は大敵。4 食事は1日3回、分量の比率として、朝が3、昼が2、夜が1の割合が理想。夜9時以降の食事は避ける。5 ヘアスタイルに注意。前髪で額を隠したり、ほおやあごに毛先がかかったりすると肌を刺激してニキビを悪化させる原因になります。6 ほおづえをつくクセをやめる。手がほおにつく部分のニキビが悪化します。オフィスのデスクや部屋のソファなど、ほおづえをしやすい場所の近くに鏡を置いてチェックするというような工夫をしてください。7 日やけに注意。日やけをすると皮膚の角化が高まってニキビを悪化させます。帽子や日傘は必須です。8 ニキビを指でつぶしたり、こすったりしないようにします。ニキビあとが残る原因になります。薬を塗っておくと触らなくなるはずですが、とにかく触れないことが重要です。「当たり前のことのようですが、これらを丹念に行うことがニキビ予防、またニキビあとの予防につながるんです」と言う小林先生。皮膚科へ行くタイミングについて尋ねると、「ニキビあとを残さずに治すには、赤くなってきたり膿(う)んだりする前の段階で行くことです。目安としては、顔全体に10個ほどのニキビができて正しい洗顔をしても2週間以上消えない場合などです。診断の上、適切な処方薬や化粧品を指導します。一番の注意点は、大人ニキビは、ストレスフルな生活を送っている人の場合、なかなか完治せず、あとを残してしまうということです。早めに皮フ科に行くことで予防できることが多いのです。大人ニキビにかかわらず、ストレスでかぶれる、ひどいクマ、くすみなどの肌荒れを起こした場合、ひとりで鏡を見て悩んでいるよりも、皮膚科へ相談するほうが解決は早いでしょう」とアドバイスします。ニキビ、肌荒れは悪化すると人前に出たくなくなることもあります。正しいスキンケアに取り組んで、きれいになることで心の内にもアプローチをかけていく。これが肌のトラブル解消への近道のようです。監修:小林照明氏。皮膚科専門医。医学博士。小林皮フ科クリニック・皮フとビタミン研究所(院長。(阪河朝美/ユンブル)【関連リンク】【コラム】大人ニキビができる原因【コラム】大人ニキビの予防法6つ【コラム】乾燥?枕?意外に知られていなかったニキビの原因を追求
2011年04月23日