第94回アカデミー賞授賞式が3月28日(日本時間)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され『コーダ あいのうた』が作品賞をはじめ3冠に輝き、幕を閉じた。同作は劇場公開とApple TV+での配信が同時に行われており、配信サービスの映画が初めて作品賞を受賞する快挙となった一方、同じ配信サービスが提供する作品として、注目を集めていたNetflix映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』は11部門12ノミネートにも関わらず、ふたを開ければジェーン・カンピオンが監督賞を受賞するのみに留まる結果に。ノミネートされた3部門(作品賞、脚色賞、助演男優賞)すべてを受賞した『コーダ あいのうた』とは対照的な結末となり、両者の映画製作に対する戦略の違いが浮き彫りになった。授賞式の主役はウィル・スミス第94回アカデミー賞授賞式の主役は、ウィル・スミスだったと断言したい。過去2回にわたり、主演男優賞候補となっていたスミスが、渾身の主演作『ドリームプラン』で“3度目の正直”となる悲願の初受賞を果たしたのだ。オスカー像を手にしたスミスは、自身が演じたリチャード・ウィリアムズについて「本当に強く家族を守った男だった」と涙ながらにコメント。「悪口を言われても、軽蔑されても、笑顔を絶やしてはいけない。自分は愛情を引きつける船のような存在でありたい。これは受賞の涙ではなく、人々に光を射すことができる喜びから来ているのです」と感無量の面持ちだった。しかし、受賞コメントの中に“謝罪”の言葉も含まれていたことは、残念なことだった。生中継ゆえ、世界中の視聴者が目撃することとなったが、自身の妻であるジェイダ・ピンケット・スミスを侮辱したクリス・ロックに対し、スミスが強烈なビンタをお見舞い。席に戻ると“Keep my wife’s name out of your fxxking mouth(妻の名前を二度と口にするな)”と抗議の声をあげたのだ。スミスの行動には、放送直後からSNSなどでさまざまな反応が見られ、おおむね勇気ある行動として賛同する声が多いようだ。何より、ことの発端はロックの侮辱的発言にあるのだが、結果的にアカデミー賞の歴史に良くも悪くも名を残す事件となってしまったのは事実。それも含めて、今宵の主役がウィル・スミスだったことは間違いない。ジェシカ・チャステインが投げかけた感動のメッセージ『タミー・フェイの瞳』で主演女優賞を初受賞したジェシカ・チャステインのスピーチは、ひと際感動的だった。喜びと感謝を伝えると同時に、国内外で絶えることのない暴力や分断、それに伴う差別と偏見、さらに高い自殺率に言及し、「(役柄を通して)前進することができると信じています。絶望や孤独を味わっているすべての人へ、誰もがユニークであり、無条件に愛される存在と知ってほしい」とメッセージを送ると、会場は大きな拍手に包まれた。チャステインのスピーチが示した社会的少数者への誠実な姿勢は、今年の受賞結果にも少なからず反映されることになった。『コーダ あいのうた』のトロイ・コッツァーが助演男優賞に輝き、男性のろう者の俳優として、初めてアカデミー賞の俳優賞を受賞。また、『ウエスト・サイド・ストーリー』で助演女優賞を受賞したアリアナ・デボーズは、オープンリークィアの有色人種として、初めて俳優部門のオスカー像を手にした。「アイデンティティを疑問に思ったり、闇の存在を感じたりしたとしても、私たちの場所は必ずどこかにあるはず」という力強い受賞スピーチが印象的だった。ウクライナ侵攻に対する静かなる抗議ウクライナ出身の俳優ミラ・クニスは、主題歌賞にノミネートされた「Somehow You Do」を紹介の際、ステージに登場。具体的に祖国の名をあげる代わりに、「今、世界で起きている出来事には、失望させられます。しかし、荒廃と向き合う人々の強さと尊厳を目の当たりにすると、心を動かされずにはいられません」とメッセージを発信。楽曲のパフォーマンスが終わると、「#standwithukraine」というハッシュタグとともに、犠牲者への黙とうと現地への支援を訴える声明が画面に映し出された。また、レッドカーペットや授賞式では、青いリボンを身に着けた出席者の姿もちらほら。これは難民支援を訴える意味合いがあり、やはり現在のウクライナ情勢を鑑みたスターたちの意思表明だった。セレモニーを通して、声高な反戦メッセージが発信されることはなかったが、こうした静かなる抗議によって、視聴者の関心を喚起させる姿勢はやはり重要だ。結局、司会は必要なの?時短効果は思ったほどでは…『コーダ あいのうた』のおかげで、基本的には“愛にあふれた”ハートウォーミングな授賞式となった第94回アカデミー賞。ただし、あえて言わせてもらうと、全体的に間延びし、散漫な内容だった。クリス・ロックの侮辱発言を例に挙げるまでもなく、プレゼンターのおしゃべりに時間を使いすぎで、肝心の受賞者スピーチが短くカットされそうになることも(濱口竜介監督の受賞スピーチが、オーケストラに寸断されそうになった場面は、その一例)。そもそも今年はアカデミー賞会員の反発を買ってまで、放送時間の短縮を目的に、美術賞、音響賞、作曲賞、編集賞、メイクアップ&スタイリング賞、短編アニメ賞、短編映画賞、短編ドキュメンタリー賞を事前収録にしたにも関わらず、その効果は思ったほどではなかった。何より、司会者って必要なの?画期的な受賞結果で歴史的一夜となった第94回アカデミー賞授賞式だが、“テレビ番組”としての限界も垣間見え、課題は山積だ。(text : Ryo Uchida)
2022年03月28日「第94回アカデミー賞」授賞式が28日(日本時間)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、『ドリームプラン』のウィル・スミスが主演男優賞を初受賞した。主演男優賞をはじめ、助演女優賞(アーンジャニュー・エリス)、歌曲賞(ビヨンセ)、脚本賞、編集賞の主要6部門にノミネートされた本作。オープニングアクトとしてエンディングテーマを手掛けたビヨンセが登場。製作を務めたビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹の紹介でコンプトンのテニスコートから“Be Alive”を熱唱し、圧巻のパフォーマンスで授賞式を盛り上げた。ウィル・スミスは『ALI アリ』(01)、『幸せのちから』(06)に続くノミネートとなった『ドリームプラン』の演技で見事オスカー像を手にした。壇上に上がり、「リチャード・ウィリアムズは本当に強く家族を守った男です」、「ビーナスとセリーナ、ウィリアムズ一家が自分たちのストーリーを私に任せてくれたことに感謝を申し上げます。彼らの愛情のための大使のような存在になれたらと思います」と続けた。そして瞳に溢れる大粒の涙について、「受賞したから涙を流しているわけではありません。私の受賞でアーンジャニュー、サナイヤ、デミらキャスト全員、そしてスタッフ、ビーナス、セリーナ、ウィリアムズ一家全員に光が射すことができたことを心から嬉しく思います」と語った。本作は、世界最強のテニスプレイヤー姉妹、ビーナス&セリーナ・ウィリアムズの破天荒な実父リチャードの驚きの実話を映像化。テニス未経験のリチャード(ウィル・スミス)が、独学で生み出した「計画書=ドリームプラン」にもとづき、2人の娘を世界チャンピオンに育て上げる様を描く。(C)2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
2022年03月28日27日(日本時間28日)に米ロサンゼルスのドルビー・シアターで行われた第94回アカデミー賞授賞式。日本の作品では濱口竜介監督の映画『ドライブ・マイ・カー』が国際長編映画賞を受賞し、’08年公開の映画『おくりびと』以来、13年ぶりの快挙を成し遂げた。そんななか、ある“ハプニング”が注目を集めている。映画『ドリームプラン』で主演男優賞を受賞したウィル・スミス(53)が、「長編ドキュメンタリー賞」の発表を任されたコメディアンのクリス・ロック(57)を激しく平手打ちする場面があったのだ。「ロックは、同席していたスミスの妻・ジェイダ・ピンケット・スミスの短く刈られたヘアスタイルを坊主頭の女性が主人公の映画『G.Iジェーン』と揶揄したのです。ジェイダは’18年に脱毛症を患っていることを公表しており、昨年7月にスキンヘッドにしたことをSNSで報告していました。大切な家族を侮辱されたスミスは激昂したのでしょう、壇上に行きロックの左頬をビンタ。席に戻ってからも『妻の名をその口から出すな!』と、放送禁止用語をまじえながら連呼していました」(映画関係者)プレゼンターという立場でありながら、自身の発言で出席者を激怒させたロック。実はこのような出来事は今回が初めてではないという。前出の映画関係者が言う。「’16年のアカデミー賞授賞式で司会者を務めた際、ロックはアジア系アメリカ人をネタにしたことで批判を浴びました。“投票を集計する会計係”としてスーツ姿のアジア系の子供3人をステージに登場させ、『アジア系は数学が得意』とステレオタイプを助長するようなジョークを飛ばしたのです。さらにロックはこのジョークが批判されることを想定していたようで、『あのジョークに腹を立てる人がいるなら、スマホでツイートすればいい』とも発言。このことを受けてアン・リー監督や俳優のジョージ・タケイら25名のアジア系アカデミー会員たちが、連名でアカデミーに抗議する事態となったのです」再び繰り返された舌禍騒動。スミスが激怒した一連の様子はTwitter上でも拡散され、様々な反響が寄せられている。《そりゃ怒るよ。暴力は良くないが言葉の暴力も同時に許されない》《ウィル・スミスは病気に苦しむ奥様を一番近くで支えてきただろうからジョークにされたらそらぶちギレるよ暴力は良くないけど…平手でそんなダメージ無さそうだしこれは不問にしてあげてほしいな》《なんか前も表彰式でやらかしてなかった?言ったらダメな事をわかんないかなぁ…》《言っていい事とダメな事が分からん人をプレゼンターにしてはアカン》
2022年03月28日2022年のアカデミー賞作品賞のほか、助演男優賞、脚色賞の計3部門を受賞した『コーダ あいのうた』。今年初めに行った、シアン・ヘダー監督の単独インタビューをお届けします(2022年1月20日配信記事)。『コーダ あいのうた』【映画、ときどき私】 vol. 448豊かな自然に恵まれた海の町で、耳の不自由な両親と兄と暮らす高校生のルビー。4人家族のなかで唯一耳が聞こえるルビーは、家族のために幼い頃から“通訳”となり、家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期に入り、ルビーは秘かに憧れるクラスメイトのマイルズと同じ合唱クラブを選択。ルビーに歌の才能があることに気がついた顧問の先生から、都会の名門音楽大学への受験を強く勧められる。ところが、ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じることができず、家業のほうが大事だと大反対。家族を選ぶ決断をした娘に対し、父は意外なある行動を取ることに……。2014年に製作され、大ヒットとなったフランス映画『エール!』をリメイクした本作。昨年開催されたサンダンス映画祭では史上最多受賞に加え、映画祭史上最高額となる約26億円で配給権が落札されたことでも大きな話題となりました。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。シアン・ヘダー監督本作の脚本と監督を務め、その実力が高く評価されているヘダー監督。今回は、取材を重ねるうえで得た気づきや手話から学んだこと、ろう者と作り上げた現場で感銘を受けた出来事などについて、語っていただきました。―最初は、脚本家として本作の依頼を受けたそうですが、監督も手掛けることになったいきさつから教えてください。監督私はもともと監督も脚本も手掛けるフィルムメイカーなので、脚本家として雇われた当初から監督もしたいという思いはありました。製作陣としては、私がどんな脚本を出すかで監督も任せるか検討しようと考えていたようですが。その後、脚本の出来に満足していただけたので、監督も任せてもらえることになりました。―この作品に惹かれた理由はどんなところですか?監督オリジナルの作品を観たとき、物語をより深く掘り下げるポテンシャルがすごくある作品だなと感じました。たとえば、家族の描かれ方やそれぞれのキャラクターをより立体的に描けると思ったんです。特にこの家族というのは、聴者とろう者の両方に属しているようで、両方ともに属していないような存在なので、そんな彼らの道のりをしっかりと見せたいと考えました。取材を通して、いろいろな発見があった―タイトルのコーダ(CODA)とは「Children of Deaf Adults」のことで、⽿の聴こえない両親に育てられた⼦どものことを指していますが、今回は実際にコーダと呼ばれる子どもたちにも取材を行ったそうですね。彼らと出会ったことで脚本に影響を与えた部分もあったのではないでしょうか。監督すごくいい質問なので、この話ができるのはうれしいです。脚本を書き始めたころ、まずはSNSや友人を通じてコーダの経験がある人たちを探したんですが、話を聞いていくと、人によってまったく違う経験もあれば、共通点もあり、いろいろな発見がありました。そのなかでも、興味深かったのは、大人同士の会話の通訳をしなければいけなかったので、まだ心の準備ができてない年齢からかなり大人な話題に触れなければいけないということ。彼らは早く大人になることを求められてしまうんですよね。ときには「どうして自分だけこんなに頼られなければいけないんだ」とコーダであることを重荷に思うこともあるそうですが、同時に「自分は家族にとってすごく重要な人間なんだ」という誇りも持っていると感じました。そういった彼らの心にある矛盾はおもしろいと思ったので、キャラクターにも反映させています。劇中でも描いているように、性的な話を何でもはっきり言ってしまう親がいる人や家のなかの音がうるさくて大変だったという人など、リサーチのなかでは笑える話もたくさん聞かせてもらいました。手話は人と人をつなげてくれる言語だと感じた―劇中では手話の持つ表現力の美しさも感じましたが、監督ご自身も手話を習得されたとか。実際に体験してみていかがでしたか?監督手話で話すときは、中身のない話をする余地がないように感じました。というのも、いまそこで起きている真実だけを話し、それを心から信じて伝えるので、社交辞令や沈黙が怖いから意味のないことを口にする、みたいなことがない言語というのが私の受けた印象です。あと、手話ではスマホを見ながら話したりできないので、人の目を見ながらでないと話せないという意味でも人と人とをつなげてくれる言語なのではないかなと。100%相手と向き合うこと、しっかりと考えてから自分の思いを伝えること、言葉の選択など、いろいろなことを手話から学びました。―なるほど。本作は超高額で配給権の争奪戦が行われたり、各賞レースでも有力候補として注目を集めたりしていますが、いまの状況をどう受け止めていますか?監督とにかくワクワクして興奮しています!今回の作品を通して、現場の作り方やコミュニケーションの取り方も変わりましたし、聴者とろう者が一緒になって作品づくりをする過程もとても誇らしく思っていたので。実は映画が完成した時点で、「私は人生で最高の経験をしてしまった」と感じていたので、そこがピークだと思っていたんです。なので、そのあとに起きたことは予想もしていなかったことばかりで、本当に奇跡のような出来事。こんなふうに評価をされ、作品がさらに成長していくとは思っていなかったので、いまはただ喜びでいっぱいです。うれしかったは、ろう者の俳優たちが評価されたこと―出演者のみなさんも、同じお気持ちだと思います。監督あとは、自分の作品に出てくれた俳優たちが称賛を受けているというのが、何よりもうれしいです。母親を演じたマーリー・マトリンは、オスカーの受賞経験がありながらいままであまり多くの機会が与えられていませんでしたし、父親役のトロイ・コッツァーと兄役のダニエル・デュラントもあまり知られていない俳優でしたから。いろいろな賞にノミネートされていて、感動しました。いままで苦労してがんばってきた彼らがこの作品で報われてよかったです。―本当に、素晴らしい演技でした。耳の聞こえない人の役は聴覚に障がいのある人に演じてほしいというのが、監督の当初からのこだわりだったとうかがっています。実際に彼らと現場をともにして、気づかされることもあったのでは?監督最初は、現場に手話の通訳を入れて彼らと話をする計画でしたが、初日の撮影をした際、彼らが私ではなくて通訳さんのほうしか見ていないことに気がつき、うまくつながれていないように感じてしまったんです。そこで、できれば通訳を介さずに進めたいと彼らに相談をしました。当時は私の手話もまだ流暢ではなかったので、表情や目を使ったり、お互いの体を触れ合わせたり、照明で合図をしたり、いろいろな形でコミュニケーションを取ることに。撮影を進めながらやり方を探していくような感じでしたが、それはとても親密なプロセスとなりました。彼らとは手話や言葉を使わなくても理解できるほどになったので、さまざまな発見とともに楽しい現場でしたね。自分が思うほど、他人との違いは大きくない―まもなく公開を迎える日本には、どのような印象をお持ちですか?監督実は日本にはまだ行ったことがないんですが、すごく行きたい場所のひとつではあります。日本の文化や食事が大好きなので、ぜひ日本を訪れてさまざまな経験をしたいです。―それでは最後に、日本の観客に向けてメッセージをお願いします。監督この映画では、ある家族を中心に描いているものの、普遍的な物語になっているので、ろう者でも聴者でも、誰でも共感していただける作品になっていると思います。あとは、この作品がきっかけで、ろう者の方々とコミュニケーションを取ってみたいと手話の勉強を始めていただく方が増えたらうれしいですね。いまの時代は自分と違うものに対する恐怖心が大きくなっており、他者とつながれないと感じている人も多いと思うので、この映画を通してそういった“バリア”を少しでも壊せたらいいなと。誰もが同じ人間で、同じような葛藤や家族の問題を抱えているものなので、自分が考えているほど他人との違いは大きなものではないというのも知ってほしいと思っています。家族の愛に、胸も目頭も熱くなる!理想と現実という名の“荒波”にもまれながらも、夢が広がる大海原へと飛び込む少女から勇気をもらえる本作。そして、家族がお互いを想う涙あり笑いありの愛には、誰もが魅了されてしまうはず。耳も心も虜にする美しい歌声とともに、爽やかな感動に包まれてみては?取材、文・志村昌美心が震える予告編はこちら!作品情報『コーダ あいのうた』1月21日(⾦)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー※バリアフリー字幕版も上映決定(詳細はHPの劇場情報欄にて)配給:ギャガ© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS
2022年03月28日2022年のアカデミー賞で国際長編映画賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』で寡黙な専属ドライバーみさきを演じた三浦透子さん。作品の裏話を明かしてくれた、2021年夏の取材の模様をお届けします(2021年8月18日配信記事)。三浦透子さん【映画、ときどき私】 vol. 4042002年にサントリーのCMで“2代目なっちゃん”としてデビューしたのち、さまざまなドラマや映画に出演し、アニメーション映画『天気の子』ではボーカリストに抜擢されたことでも注目を集めている三浦さん。『ドライブ・マイ・カー』で三浦さんは、舞台俳優で演出家の家福悠介(西島秀俊)が演劇祭で出会う、寡黙な専属ドライバーみさきを演じています。そこで、現場での様子や本作を手掛けた濱口竜介監督の演出、将来の自分について語っていただきました。―以前、濱口監督作『偶然と想像』のオーディションに行ったことがきっかけで、本作のオファーがあったそうですね。お話があったときはいかがでしたか?三浦さん最初に脚本を読ませていただいたとき、みさきがとても魅力的な女性だと思いました。特に、相手に対して的確な言葉選びができるところや仕事に対する哲学がかっこいいなと。なので、この役を私にと思っていただけてとにかくうれしかったです。ただ、運転がものすごく重要な役にもかかわらず、免許を持っていない私にオファーするなんて、濱口監督はすごいなとも思いました(笑)。―その後、この作品のためにすぐに免許を取られたそうですが、大変でしたか?三浦さん撮影前にたくさん乗っておきたかったので、朝から晩まで毎日教習所で練習して、17日間でマニュアルの免許を取りました。けっこうハードでしたけど、すごく楽しかったです。―それはすごいですね。劇中では、見事なドライバーぶりを見せていましたが、ご自身は運転に向いていると感じましたか?三浦さん実は、もともと車はすごく好きで、ガソリンスタンドでバイトしていたこともありました。車内や運転の仕方に乗っている人の人間性が出るところがおもしろい。車が好きなだけに、運転が苦手だったらどうしようかと心配しましたが、乗ってみてもやっぱり好きだったのはうれしかったです。―ただ、劇中の車は左ハンドルなので、初心者には難しかったのでは?三浦さんそうですね。免許を取ったあと、練習用に左ハンドルの車を用意していただいたんですが、左ハンドルなのでどれも高級車ばかり。練習のためとはいえ、初心者マークをつけた高級車が走っているのは、周りの方は嫌だったかもしれません(笑)。初めてが多い現場で、西島さんの存在は心強かった―慣れない運転をしながら演技もしなければいけないという状況で、どのようなことを意識されていましたか?三浦さんマルチタスクをこなさなければいけない難しさはありましたが、私にとっては「それができるみさきはどういう人なんだろう」と考える作業こそが役作りに直結すると思いました。みさきは、顔を見なくても空間から相手のことを感じ取れる繊細な人。それを表現するのは難しかったですが、かっこよく運転している姿を見せることが、いちばんみさきを表すことに繋がると思ったので、運転には一生懸命取り組みました。―車のなかでは、西島秀俊さんとほぼ2人きりでの撮影が続いたと思いますが、共演されてみていかがでしたか?三浦さん西島さんはとてもフランクな方で、いつも笑顔でお話をしてくださいました。かと言って、準備と本番とでオンオフがあるわけではなく、リラックスしているときと集中しているときが地続きにあるような感じ。すごく不思議な方だなという印象です。それはこれまでいろいろな経験をされてきた西島さんだからこそのたたずまいだと思いますが、おかげで私は安心していることができました。今回一緒にお芝居をさせていただいて、すごく勉強になりましたし、とても心強かったです。―そのなかでも、印象に残っているやりとりなどもあれば、教えてください。三浦さん今回の現場では、私にとって初めてのことがたくさんありましたが、西島さんは細かいところで本当にさりげなく声をかけてくださいました。車のなかで西島さんと2人でいる時間もけっこう長かったですが、沈黙があっても緊張することなく、落ち着いていられたのも、劇中の家福とみさきの関係性に通じていたように思います。―そういうお二人の雰囲気は、スクリーンにも表れていたように感じました。三浦さんあれだけの狭い空間に2人だけでいるというのは、会話をしていなくても相手の存在を気にせざるを得ない状況。そんななかでも、緊張感が解けていく瞬間を感じることができました。それは家福とみさきの間にもあった瞬間だと思うので、実際に現場で体験できたのは大きかったです。濱口監督の書く言葉には覚悟があると感じる―そして、この作品は何と言っても脚本の素晴らしさがあると思いますが、三浦さんはどういったところに惹かれましたか?三浦さんまずは、セリフのおもしろさですね。一度読み出すと、最後まで手放せなくなるような緊張感がありました。その空気感は、完成した映画からも伝わってくる部分だと思います。これは特にみさきに感じたことですが、しっかりと思考してからちゃんと言葉を選んでいるところも、すごく印象的でした。言葉というのは、人を救うこともあれば、殺してしまうこともある、そういう恐ろしさがあると思います。良くも悪くも強い力を持っている。そういったことを濱口監督は普段から意識されているんだと思います。実際、濱口監督とお話していると、ものすごく丁寧に言葉を選んで話されているかがわかるので。ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが、濱口監督の書くセリフには、これは発するべき言葉である、という覚悟を感じるというか。キャラクターたちに魂を感じます。だからこそ、声にしたときに言葉の持つパワーに背筋を正されるような感覚があるのかなと。それでいて、すごく繊細で丁寧に私たちに語りかけてくれているような印象も受けました。―そういったところも、世界で評価された理由かもしれませんね。ご自身が役作りで特にこだわったのはどのあたりでしょうか?三浦さんこれまでの役だと、わからないことをわかるようにする作業を通して役に近づこうとしていましたが、みさきには共感できる部分ばかりで、わからないことがないような状態でした。極端なことを言うと、することがないと思ったくらい。でも、撮影の前に濱口監督ともその話をしたら、それでいいですと。「特別なことはしなくていいので、ただ運転の練習だけしてください。それがみさきの役作りです」と言われました。なので、とにかく運転練習を一生懸命やりました。いま思えば、運転している最中に考えていたことがみさきへの理解にもつながっていたと思います。原作の魅力がきちんと残った作品に仕上がった―現場では、濱口監督ならでは演出などもありましたか?三浦さん映画のなかでも、感情を入れずに淡々と読んでいく“本読み”という作業をしていますが、実際の現場でも行なっています。こんなにも本読みに時間を使うことは、私にとっては初めての経験でした。濱口監督は、「その声で語られるだけで、心を動かされる。そんな声がある。役者からそういう声で台詞を聞きたい」とおっしゃっていました。本読みはその声を探す時間だったと思います。みんなでその“音”を探しているような感覚。とても不思議で素敵な体験でした。濱口監督の現場じゃないと味わえないものだと思います。―そんな時間を過ごすなかで、忘れられない監督の言葉もあれば、教えてください。三浦さん監督と話していて興味深かったのは、「歌はメロディも歌詞も決まっているけど、そのままを何度歌っても人の心を動かすことができる。セリフでもそれができると思う」と言われたことです。その言葉を聞いたとき、私のなかではすごくしっくりくるものがありました。濱口さんの演出には新鮮で驚く部分も多い反面、点と点が繋がるような瞬間もあってとても楽しかったです。―原作者である村上春樹さんの作品の魅力については、どうお考えですか?三浦さん私が村上春樹さんの作品と出会ったのは中学生くらいの頃で、短編集の『レキシントンの幽霊』が最初でした。そのあと長編もいくつか読ませていただきましたが、村上さんの作品は、自分に対する深い考察を感じるというか、キャラクターの心の中に沈んでいくような感覚になります。最初はそういった部分をどうやって映像化していくんだろうとか、ファンの方々に自分のみさきがどういうふうに受け取られるんだろうかと心配もありました。設定も原作とは変わっていますし、追加された部分も多いので。ただ、できあがったものを読むと、原作にある言葉の緊張感や匂いといった小説の魅力がちゃんと脚本にも残ってるどころか、むしろ増幅しているようにすら感じました。村上さんの文体と濱口監督の文体のマリアージュもとても魅力的でした。数字と触れ合うと気持ちがリセットできる―これから観客のみなさんの反応も楽しみですね。現在は、女優としても歌手としても活躍されていますが、今後チャレンジしてみたいことはありますか?三浦さん実は、私はこの歳でこういうことをしたいとか、こうなりたいみたいなビジョンがまったくないタイプなんです(笑)。だからこそ、思ってもいなかったことにも挑戦できるのかなと。私が歌を歌うことになるなんて、昔の私は想像すらしていなかったと思います。そういう意味では、これからもいまの自分が想像できない何かをやっていけたらいいですね。―では、プライベートでやってみたいことは?三浦さんこれはかなり先の話になりますが、おばあちゃんになったら近所の子どもたちに勉強を教えたりしたいなと、ぼんやり考えています。以前、家庭教師のバイトで小学生に算数を教えていて、それがすごく楽しかったので。―そのために準備していることもありますか?三浦さんセンター試験の問題を解いてみたりとか、勉強はするようにしています。―すごいですね。そんな多忙の日々で素に戻れる瞬間といえば?三浦さん素に戻れるというのとは違いますが、数字と触れ合っているときは頭の中をリセットできる時間だと思います。余計なことを考えずにいられるので。頭は使っているんだけれど無というか。考えているけど考えていないみたいな感じ。―意外な一面を教えていただき、ありがとうございました。それでは最後に、ananweb読者にメッセージをお願いします。三浦さんこの作品を観ると、もしかしたらみさきは苦しく見えるかもしれません。でも、人との関わりのなかで傷ついた経験を持つ彼女が自分の人生をポジティブに捉え、仕事も含めて誇りを持って生きて行こうとする姿を見るだけで私には感じるものがありました。みなさんにも、ぜひみさきのかっこいい生き様を感じてもらえたらと思います。インタビューを終えてみて……。劇中のみさき同様に、ミステリアスな雰囲気をまとっている三浦さんですが、話し始めると明るい笑顔が印象的で、その魅力に心をわしづかみにされました。先のことは決めていないという三浦さんだけに、これからどんなふり幅で私たちを魅了してくれるのか、ますます楽しみです。唯一無二の物語が魂に訴えかける秀逸な脚本に、俳優陣の見事な演技が重なり、圧倒的な力で観る者を引き込む本作。孤独と秘密を抱えた男女が葛藤の先に見つけた再生の道は、誰にとっても希望を与えてくれるものとなるはずです。さまざまな感情が渦巻く忘れがたい経験は、ぜひ劇場で体感を。写真・北尾渉(三浦透子)取材、文・志村昌美ヘアメイク・秋鹿裕子(W)、スタイリスト・白山春久ベロア素材のシャツ¥36,300/ロク(エイチ ビューティ&ユース 03-6438-5230)、2タックパンツ/マメ クロゴウチ(www.mamekurogouchi.com)ショートブーツ¥85,800/アクネ ストゥディオズ(アクネ ストゥディオズ アオヤマ 03-6418-9923)、右耳につけたシルバーイヤーカフ¥22,000/ラッツェル アンド ウォルフ(ザ・ウォール ショールーム 03-5774-4001)、左耳につけたシルバーイヤーカフ¥93,500/ラッツェル アンド ウォルフ(アディッション アデライデ 03-5786-0158)、右耳につけたシルバーイヤーカフ¥16,500/フェノメナ コレクション(ザナドゥ 東京 03-6459-2826)、シルバーチェーンネックレス¥77,000/ララガン(ララガンデザイン/info@ralagan.com)、パールのついたチェーンネックレス¥107,800/ソフィーブハイ(バーニーズ ニューヨーク カスタマーセンター 0120-137-007)、シルバースネークチェーンネックレス¥13,200/カルペディエム(カルペディエム/シルバーチェーンブレスレット¥52,800/ジジ(アパルトモン 青山店 03-5778-4919)、シルバーリング¥35,200/アン バイ トモヨ ヨシダ(アン・デザインズ/info@un-designs.com)ストーリー舞台俳優で演出家の家福悠介は、愛する妻・音と満ち足りた日々を送っていた。ところが、音は家福にある秘密を残したまま、突然この世からいなくなってしまう。それから2年が経ち、演劇祭で演出を任された家福は、愛車のサーブで広島へと向かうことに。そこで家福が出会ったのは、寡黙で優秀な専属ドライバーのみさき。喪失感を抱えたまま生きていた家福は、みさきと過ごすなかであることに気づかされていく……。引き込まれる予告編はこちら!作品情報『ドライブ・マイ・カー』8月20日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー配給:ビターズ・エンド©2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会写真・北尾渉(三浦透子)
2022年03月28日現地時間2022年3月27日、アメリカのロサンゼルスで第94回アカデミー賞の授賞式が行われました。この日の式では、受賞される作品や著名人も発表。映画界を代表する式典ですが、あるトラブルが発生しました。ウィル・スミス、『妻への侮辱』を受け取り司会者に平手打ち式典中、俳優のウィル・スミスが突然壇上に上がり、司会者を務めるコメディアンのクリス・ロックに平手打ちをお見舞いする事態が発生。ロックはこの時、スミスの妻であるジェイダ・ピンケット・スミスについて、髪を刈り上げた女性将校が登場する映画『G.I.ジェーン』に絡めた発言をしていました。脱毛症に悩まされ、短髪にしているという、スミスの妻。その苦しみを知っているからこそ、スミスはロックの発言を侮辱と感じたのでしょう。スミスは平手打ちを食らわせると、ロックに「妻の名前を口にするな!」と発言。その後も、自分の席で放送禁止用語を発するなど、怒りをあらわにしていました。「どんな理由があっても、他人に暴力をふるってはいけない」と思う人もいるはず。しかし、妻を想うがゆえに、スミスは我慢ならなかったのでしょう。スミスの行動はネットで拡散され、日本からも称賛の声が上がっています。・確かに暴力はいけない。でも、自分はスミスをかっこいいと思った。・いっていい冗談と悪い冗談がある。大切な家族のことなら、なおさらです。・愛する妻の病気の話題だもんね。スミスは正しいと思います。騒動があった後、スミスは映画『ドリームプラン』で主演男優賞を受賞しました。俳優としてだけでなく、夫としてのスミスの姿に、多くの人が心打たれたようです。[文・構成/grape編集部]
2022年03月28日第94回アカデミー賞授賞式が3月28日(日本時間)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、作品賞に仏映画をハリウッドリメイクした『コーダ あいのうた』(シアン・ヘダー監督)が輝いた。同作は脚色賞、助演男優賞にもノミネートされており、そのすべてを受賞。見事3冠を達成した。最多部門を受賞したのは『DUNE 砂の惑星』で6部門(撮影賞、音響賞、視覚効果賞、作曲賞、編集賞、美術賞)。また、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が国際長編映画賞に輝き、日本映画の同賞受賞は『おくりびと』以来13年ぶりの快挙を達成した(『おくりびと』は外国語映画賞)。一方で、作品賞をはじめ、最多11部門12ノミネートで“本命”と目されていた『パワー・オブ・ザ・ドッグ』は、ジェーン・カンピオンが監督賞を受賞するのみという結果に。今回もNetflix映画が作品賞に輝くことはなかった。『コーダ あいのうた』は2014年製作のフランス映画『エール!』のリメイク。家族の中で唯一の健聴者である少女が、歌の才能を見いだされ、ろう者の両親の大反対を受けながら、名門音楽大学への進学を目指す。題名の“CODA”は、“Children of Deaf Adults”(耳の聴こえない両親に育てられた子ども)のこと。主人公の父親を演じたトロイ・コッツァーは男性のろう者の俳優として、初めて助演男優賞を受賞。手話による感動的なスピーチで、授賞式は一度目のピークに達した。主演男優賞は大本命だった『ドリームプラン』のウィル・スミス。過去2度同賞候補になっており、“3度目の正直”で悲願の初受賞を果たした。世界最強のテニスプレーヤー姉妹、ビーナス&セリーナ・ウィリアムズ誕生に隠された驚きの実話を描く同作で、テニス未経験ながら、独学で二人の娘を世界チャンピオンに育てあげた破天荒な父親を熱演。かつて主演男優賞にノミネートされた『ALI アリ』『幸せのちから』に続いて、今回も実在の人物を演じている。一方、主演女優賞に輝いたのは『タミー・フェイの瞳』のジェシカ・チャステイン。1970年代から80年代にかけて、愛あふれたメッセージと寛大な人柄で視聴者を熱狂させた実在のテレビ伝道師、タミー・フェイを演じ、初受賞を飾った。本人そっくりに変ぼうした姿も注目を集め、同作はメイクアップ&ヘアスタイリング賞も同時受賞している。なお、今年の主演女優賞はチャステインをはじめ、候補者5人の主演作すべてが、作品賞候補に挙がっていない異例の事態となり、近年まれに見る混戦となった。助演女優賞に輝いたのは『ウエスト・サイド・ストーリー』のアリアナ・デボーズ。ヒロイン・マリアの兄のベルナルドの恋人、アニータを演じ“アメリカにおける自由と不平等”を男女の掛け合いで歌う名曲「America(アメリカ)」では、抜群の歌唱力とダンスで圧倒的な存在感を放った。劇場とApple TV+での配信が同時に行われた『コーダ あいのうた』が作品賞に輝いたほか、多様性の観点から画期的な結果を生み出すことになった第94回アカデミー賞。会場も例年通りドルビー・シアターに戻るなど、映画業界全体がアフター・コロナを見据え、新たな一歩を踏み出した。一方で放送時間短縮を目的に、美術賞、音響賞、作曲賞、編集賞、メイクアップ&スタイリング賞、短編アニメ賞、短編映画賞、短編ドキュメンタリー賞が“事前収録”となり、反発を招いた点は大きな課題(結局、3年ぶりに司会者が復活したせいもあり、放送時間の大幅な短縮につながらなかった)。ウィル・スミスの“激おこ”事件については、愛する家族を守ろうとしたスミスの勇気に賞賛が集まると同時に、後味の悪さが残ったのも事実だ。【第94回アカデミー賞】◇作品賞『コーダあいのうた』◇監督賞ジェーン・カンピオン『パワー・オブ・ザ・ドッグ』◇主演男優賞ウィル・スミス『ドリームプラン』◇主演女優賞ジェシカ・チャステイン『タミー・フェイの瞳』◇助演男優賞トロイ・コッツァー『コーダあいのうた』◇助演女優賞アリアナ・デボーズ『ウエスト・サイド・ストーリー』◇脚本賞ケネス・ブラナー『ベルファスト』◇脚色賞シアン・ヘダー『コーダ あいのうた』◇視覚効果賞『DUNE デューン砂の惑星』◇美術賞『DUNE デューン砂の惑星』◇撮影賞『DUNE デューン砂の惑星』◇衣装デザイン賞『クルエラ』◇長編ドキュメンタリー賞『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』◇短編ドキュメンタリー賞『The Queen of Basketball(原題)』◇編集賞『DUNE デューン砂の惑星』◇国際長編映画賞『ドライブ・マイ・カー』(日本)◇音響賞『DUNE デューン砂の惑星』◇メイクアップ&ヘアスタイリング賞『タミー・フェイの瞳』◇作曲賞ハンス・ジマー『DUNE デューン砂の惑星』◇長編アニメーション賞『ミラベルと魔法だらけの家』◇短編アニメーション賞『The Windshield Wiper(原題)』◇主題歌賞“No Time To Die”ビリー・アイリッシュ『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』◇短編実写映画賞『The Long Goodbye(原題)』文=内田涼
2022年03月28日第94回アカデミー賞授賞式が3月28日(日本時間)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、作品賞にシアン・ヘダー監督の『コーダ あいのうた』が輝いた。『コーダ あいのうた』は本国ではAppleが配信・配給しており、アカデミー賞で配信作品がオスカーを獲得するのは初となる。CODA(コーダ)とは、Children of Deaf Adults=“聴覚障がいがある親を持つ聴こえる子ども”の意。また、音楽用語としては、楽曲や楽章の締めを表す=新たな章の始まりの意味も併せ持つ。本作は、2014年のフランス映画『エール!』のリメイク作品で、家族の中でたった一人の聴者である少女ルビーの物語だ。サンダンス映画祭で観客賞・最高賞・監督賞・アンサンブルキャスト賞の史上最多4冠を達成。その後もゴッサム賞、ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞、全米映画俳優組合賞など数々の賞にノミネートが続いていた。今回のアカデミー賞では、作品賞、助演男優賞(トロイ・コッツァー)、脚色賞と3部門にノミネートされ、作品賞と助演男優賞と脚色賞の3部門受賞となった。作品賞には、本作のほかに『ベルファスト』、『ドント・ルック・アップ』、『ドライブ・マイ・カー』、『DUNE/デューン 砂の惑星』、『ドリームプラン』、『リコリス・ピザ』、『ナイトメア・アリー』、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』、『ウエスト・サイド・ストーリー』の10作品がノミネートされていた。(text:cinemacafe.net)■関連作品:コーダ あいのうた 2022年1月、全国にて公開© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS
2022年03月28日第94回アカデミー賞授賞式が3月28日(日本時間)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、主演女優賞に『タミー・フェイの瞳』のジェシカ・チャステインが輝いた。近年まれに見る大混戦となった今年の主演女優賞には、ジェシカをはじめ、オリヴィア・コールマン(『ロスト・ドーター』)、ニコール・キッドマン(『愛すべき夫妻の秘密』)といった同賞受賞経験者、スペインを代表する国際派スターのペネロペ・クルス(『Parallel Mothers』)、亡きダイアナ元妃を演じたクリステン・スチュワート(『スペンサーダイアナの決意』)がノミネート。5人の主演作すべてが、作品賞候補に挙がっていない点もアカデミー賞では異例の出来事で、非常に予想が難しい部門となった。『タミー・フェイの瞳』でジェシカが演じたのは、1970年代から80年代にかけて、夫とともにテレビ伝道師とした活躍した実在の人物、タミー・フェイ。愛あふれたメッセージと寛大な人柄で視聴者を熱狂させ、伝説的な存在となるが、やがて金銭的な不正、ライバルの陰謀、夫の性的スキャンダルに見舞われ、夫婦で築き上げた帝国は崩壊していく。ジェシカ自身が、タミー・フェイについて10年間リサーチを重ねており「彼女と彼女の物語にはぶっ飛ばされた」と強い思い入れ。本人そっくりに変ぼうし、波乱の人生を生きたカリスマ伝道師をスクリーンによみがえらせた。ジェシカは『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』で第84回アカデミー賞助演女優賞、『ゼロ・ダーク・サーティ』で第85回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされたことがあり、今回が初のオスカー受賞となる。受賞コメントアカデミーに感謝します。ヘアメイクアップチームも素晴らしい、彼女を見出すことができました。いま苦難の時期です、さまざまなトラウマ、孤立があります。多くの人が絶望感を味わっています。差別があります。偏見があります、暴力があり、ヘイトクライムがあります。このような時期に私はタミーのことを考えます。絶望感を感じている人にメッセージを送ります。ユニークであるあなたは素晴らしい。(text:cinemacafe.net)
2022年03月28日第94回アカデミー賞授賞式が3月28日(日本時間)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、主演男優賞に『ドリームプラン』のウィル・スミスが輝いた。過去2度同賞候補になったウィルが、“3度目の正直”で悲願の初受賞を果たした。世界最強のテニスプレーヤー姉妹、ビーナス&セリーナ・ウィリアムズ誕生に隠された驚きの実話を描く本作。ウィルは主人公であるリチャードを演じ、テニス未経験ながら、独学で二人の娘を世界チャンピオンに育てあげた破天荒な父親を熱演した。かつて主演男優賞にノミネートされた『ALI アリ』『幸せのちから』も実話がベースになっており、今回も実在の人物を演じたウィルが、ついに“ドリーム”をつかむ結果となった。同賞にはウィルをはじめ、ハビエル・バルデム(『愛すべき夫妻の秘密』)、ベネディクト・カンバーバッチ(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)、アンドリュー・ガーフィールド(『tick, tick...BOOM! チック、チック…ブーン!』)、デンゼル・ワシントン(『マクベス』)がノミネート。前哨戦となる英国アカデミー賞、ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞、SAGアワード(全米映画俳優組合賞)などで勝利を重ねたスミスが、有終の美を飾った。昨年秋に出版した自叙伝『Will』も注目を浴び、早くも映画化権の争奪戦が巻き起こっている。ありがとうございます、なんていうことなんでしょう。リチャード・ウィリアムズというのは、本当に強く、家族のことを想った男です。私の人生の今の時期、この瞬間ですが、私は圧倒されてます。この映画を作るにあたって、アーンジャニュー・エリスを守ることになりました。本当に強い方です、さらにデリケートな方です。さらにヴィーナスとセリーナを演じた二人の女優(サナイヤ・シドニー、デミ・シングルトン)を守らなければなりませんでした。私はこの人生の中で人々を愛さなくてはなりません、守らなければなりません、そして人々にとって自分は川のような存在にならなければならない。ヴィーナスとセリーナに感謝を申し上げたい。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ドリームプラン 2022年2月23日より全国にて公開© 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
2022年03月28日第94回アカデミー賞授賞式が3月28日(日本時間)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、監督賞に『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のジェーン・カンピオンが輝いた。同賞に女性監督が輝くのは、キャスリン・ビグロー(第82回/『ハート・ロッカー』)、クロエ・ジャオ(昨年第93回/『ノマドランド』)に続き、3人目となる。今年の監督賞にはカンピオンをはじめ、ケネス・ブラナー(『ベルファスト』)、スティーブン・スピルバーグ(『ウエスト・サイド・ストーリー』)、ポール・トーマス・アンダーソン(『リコリス・ピザ』)、濱口竜介(『ドライブ・マイ・カー』)がノミネートに名を連ねていた。ニュージーランド出身のカンピオン監督は1980年代から映画制作を始め、1993年に発表した『ピアノ・レッスン』が女性監督の作品と初めて、第46回カンヌ国際映画祭パルムドールを獲得。同作は第66回アカデミー賞では3冠に輝き、カンピオンも脚本賞を手にした。『パワー・オブ・ザ・ドッグ』は12年ぶりとなる監督映画。第78回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞し、その後も映画賞レースにおいて数々の監督賞に輝いた。舞台は1920年代のアメリカ・モンタナ州。周りの人々に恐怖と畏怖を与えるカリスマ的な牧場主フィル・バーバンク(ベネディクト・カンバーバッチ)と、その弟ジョージ(ジェシー・プレモンス)、そしてジョージの妻ローズ(キルスティン・ダンスト)らを巡る、絡み合う緊迫した関係をリアルに描く人間ドラマだ。受賞コメント他の候補者の方々も素晴らしい仕事を残されました。受賞できたのは、俳優の皆さんがこのストーリーに没入してくれたおかげだと思っています。誰もが果敢に挑んでくれた。クルー全員がいつもそばにいて支えてくれました。素晴らしいチームの皆さん、本当にありがとうございます。(text:cinemacafe.net)■関連作品:【Netflix映画】パワー・オブ・ザ・ドッグ 2021年11⽉19⽇より一部劇場にて公開、12月1日よりNetflixにて配信
2022年03月28日第94回アカデミー賞授賞式が3月28日(日本時間)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が国際長編映画賞に輝いた。日本映画の同賞受賞は『おくりびと』以来13年ぶり、2作目となる(当時は外国語映画賞)。昨年のカンヌ国際映画祭で日本映画として史上初となる脚本賞を受賞。加えて、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞の独立賞も受賞し、4冠獲得の偉業を果たした本作だが、それは快進撃の序章に過ぎなかった。その後もニューヨーク映画批評家協会賞の作品賞、ワシントンD.C.映画批評家協会の外国語映画賞、ボストン映画批評家協会賞の作品賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞の作品賞、ゴールデングローブ賞の非英語映画賞、全米映画批評家協会賞の作品賞、トロント映画批評家協会賞の作品賞、インディペンデント・スピリット賞の外国映画賞、放送映画批評家協会賞の外国語映画賞、英国アカデミー賞(BAFTA映画賞)の非英語作品賞など、名だたる映画賞で賞を獲得。先日発表された第45回日本アカデミー賞では、作品賞をはじめ、8部門で最優秀賞を手にした。第94回アカデミー賞では国際長編映画賞に加えて、日本映画として初めて、作品賞、監督賞、脚色賞(濱口竜介、大江崇允)にノミネート。鮮やかに“走り”続けた本作が、ついに大本命と目されていた国際長編映画賞の受賞に至った。村上春樹による短編小説を映画化した本作。主人公である演出家の家福(西島秀俊)は、愛する妻と満ち足りた日々を送っていたが、その妻は秘密を残して突然この世を去ってしまう。2年後、演劇祭に愛車で向かった家福は、ある過去をもつ寡黙な専属ドライバーのみさき(三浦透子)と出会う。行き場のない喪失を抱えて生きる家福は、みさきと過ごす時間を通して、あることに気付かされていく。(英語で)ありがとうございます。(手に抱えたオスカー像を見ながら)あなたがオスカーですね(笑)。アカデミーのみなさまに感謝申し上げます。(映画会社の名を挙げ)『ドライブ・マイ・カー』をアメリカへと持ってくることができました。ありがとうございます。(終了のBGMに)ちょっと待ってください!ここにいる俳優のみなさんにも感謝申し上げます。(日本語で)西島秀俊さん、岡田将生さん、霧島れいかさん、ジン・デヨンさん、パク・ユリムさん、ソニア・ユアンさん、アン・フィテさんおめでとうございます。そして、そして!ここに来られなかった全ての俳優のみなさんにも感謝いたします。特に赤いサーブ900を運転してくれた三浦透子さんに感謝します。(日本語で)みなさん獲りました!ありがとうございます!(text:cinemacafe.net)■関連作品:ドライブ・マイ・カー 2021年8月20日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開(C)2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
2022年03月28日第94回アカデミー賞授賞式が3月28日(日本時間)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、『コーダ あいのうた』のトロイ・コッツァーが助演男優賞を受賞。男性のろう者の俳優が、アカデミー賞の演技部門で初めてオスカー像を手にした。家族の中でただ1人の聴者である少女が、歌の才能を見いだされ、ろう者の両親の大反対を受けながら、名門音楽大学への進学を目指す姿を描いたヒューマンドラマ。2014年製作のフランス映画『エール!』のリメイクで、題名の“CODA”は、“Children of Deaf Adults”(耳の聴こえない両親に育てられた子ども)を指す。トロイは生後間もなく、聴覚に障がいがあることが判明。10代の頃から演技に触れ、2001年に出演したテレビシリーズで俳優として本格デビューを飾った。その後、「CSI:ニューヨーク3」「クリミナル・マインド8 FBI行動分析課」「マンダロリアン」など数々のテレビシリーズに出演。本作では娘ルビーの歌声が聞こえず、その才能を信じられずにいたが、思いがけない方法で娘の才能に気づき、意外な決断を下す父親フランクを好演した。なお、トロイをはじめ、主人公の家族3人(父親、母親、兄)を実際に聴覚に障がいを持つ俳優たちが演じた。母親役のマーリー・マトリンは、ろう学校に赴任した教師と、ろう者の女性の愛と献身を描いた『愛は静けさの中に』で第59回アカデミー賞主演女優賞を獲得している。この場に立つことができて、信じられない気持ちです。ろう者として舞台に立つことを支えてくれた皆さんに感謝を伝えたいです。スピルバーグ監督の著書によると「最高の映画監督は、最高のコミュニケーターである」そうですが、シアン・ヘダー監督は、まさに最高のコミュニケーターでした。監督は障がい者と、障がいを持たない人の橋渡しをしてくれました。これはいつまでもハリウッドに残る橋になりました。(事故に巻き込まれ、手話ができなくなってしまった)父は私にとって、英雄であり、常に愛しています。ファン、愛する家族、ろう者に捧げます。私はやり遂げました。これ(オスカー像)はろう者、コーダのコミュニティに捧げたいと思います。(text:cinemacafe.net)■関連作品:コーダ あいのうた 2022年1月、全国にて公開© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS
2022年03月28日第94回アカデミー賞授賞式が3月28日(日本時間)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの『ミラベルと魔法だらけの家』が長編アニメーション賞を受賞した。魔法の力を与えられた不思議な家に暮らすマドリガル家を舞台に、家族で唯一魔法を持たないミラベルが「世界から魔法の力が失われていく」という大ピンチに立ち上がる。本作が長編アニメ60作目となったウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオにとって、アカデミー賞の長編アニメーション賞に輝くのは、第89回の『ズートピア』以来となる(『リメンバー・ミー』『トイ・ストーリー4』『ソウルフル・ワールド』はピクサー・アニメーション・スタジオが製作)。今年の長編アニメーション賞は『ミラベルと魔法だらけの家』をはじめ、同じくウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ製作の『ラーヤと龍の王国』、ピクサー・アニメーション・スタジオが手がけた『あの夏のルカ』、アニメ界のアカデミー賞と呼ばれる第49回アニー賞で作品賞をはじめ、最多8冠に輝いた『ミッチェル家とマシンの反乱』など、話題作が競い合ったほか、祖国アフガニスタンからの脱出を告白する青年の姿をとらえたドキュメンタリー『FLEE フリー』がオスカー史上初となる国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞の3部門に同時ノミネートされたことも大きな話題となった。『ミラベルと魔法だらけの家』はディズニープラスで配信中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ミラベルと魔法だらけの家 2021年11月26日より全国にて公開© 2021 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
2022年03月28日濱口竜介監督が村上春樹の短編を映画化した『ドライブ・マイ・カー』の主演・西島秀俊と、共演の岡田将生、霧島れいからが第94回アカデミー賞授賞式に出席するためにレッドカーペットに登場。日本メディアや現地メディアの取材に応じた。2年ぶりにドルビー・シアターで開催されることになった今回の授賞式。レッドカーペットには多くのハリウッドセレブやファンたちで盛り上がる中、ドレスアップした濱口監督、西島さん、岡田さん、霧島さん、脚本の大江崇允、プロデューサーの山本晃久が登場した。WOWOWの取材に、濱口監督が開口一番「圧倒されています」とコメント。「レッドカーペットってこんなに広いものなんだ」と話す。また、西島さんは「思ったよりも盛り上がっていてびっくりしました。楽しんでいます」と語り、その演技に賞賛が集まった岡田さんは「すごい世界に来させてもらいました、圧倒されています」と感無量の面持ち。スティーヴン・スピルバーグ監督が家族全員で観たと明かすなど、多くのスター俳優や現地スタッフからも絶賛されている本作。濱口監督は、ハリウッドのキャスティング・ディレクターから「『俳優たちが素晴らしかった』と言われました」と明かし、「ちゃんとこの国で受け入れられたんだな」と実感を込めながらも淡々と語る。岡田さんは『ドリームプラン』で主演男優賞にノミネートされているウィル・スミスと話したそうで「褒めていただきました」と恐縮しながらもニッコリ。また、霧島さんらもビル・マーレイと会話したと話し、濱口監督が自らチームの記念撮影を行うなど、楽しんでいる様子がうかがえた。Twitterでは映画ファンから「レッドカーペットに『ドライブ・マイ・カー』チームがきたときの高揚感すごい」「テンションが上がった!」「いい結果になるといいな」といった声が続々。作品賞、脚色賞、監督賞、国際長編映画賞と計4部門にノミネートされている本作。韓国のポン・ジュノ監督による映画『パラサイト 半地下の家族』が計4部門を受賞した2年前に続き、アジア映画が映画賞を席巻した今年、日本映画初の作品賞、脚色賞受賞にも期待が大きな寄せられている。『ドライブ・マイ・カー』は全国にて公開中。(text:Reiko Uehara)■関連作品:ドライブ・マイ・カー 2021年8月20日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開(C)2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
2022年03月28日第94回アカデミー賞授賞式が3月28日(日本時間)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、『ウエスト・サイド・ストーリー』のアリアナ・デボーズが助演女優賞を初受賞した。1961年に公開され、第34回アカデミー賞で10部門に輝いたミュージカル映画の金字塔『ウエスト・サイド物語』をスティーブン・スピルバーグ監督が再映画化した。デボーズが演じたのはヒロイン・マリアの兄のベルナルドの恋人、アニータ。マリアにとっては親友であり、姉のような存在で、敵対グループの元リーダー・トニーと恋に落ちたマリアを心配しながらも、同じ女性として理解を示すという役どころだ。ブロードウェイで活躍した経験を発揮し、本作では『ウエスト・サイト物語』で同じ助演女優賞に輝いた、“元祖”アニータ役のリタ・モレノも絶賛する演技とダンスを披露。特に「アメリカにおける自由と不平等」を男女の掛け合いで歌う名曲「America(アメリカ)」では、抜群の歌唱力とダンスで圧倒的な存在感を放った。オスカー前哨戦のゴールデングローブ賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞、ラスベガス映画批評家協会、全米俳優協会賞などで助演女優賞を受賞。ジュディ・デンチ(『ベルファスト』)、キルステン・ダンスト(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)ら実力派がノミネートに名を連ねた同賞を制した。信じられません。(トロフォーを掲げながら)これは何でしょう?(自身が演じた)アニータが、アメリカに居続けたいと思う理由が理解できる。こんな世界ですけど、夢は叶うし、勇気を得られるもの。感謝したい人を挙げると、きりがありませんが、すばらしい皆さんに引き上げてもらいました。スティーブン・スピルバーグ監督、(『ウエスト・サイド物語』でアニータを演じた)リタ・モレノもインスピレーションを与えてくれました。(性別、人種、性的指向など自身の出自を語りながら)もしご自身のアイデンティティに疑問を持つことがあるとしても、、誰でも必ず居場所はあります。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ウエスト・サイド・ストーリー 2022年2月11日より全国にて公開© 2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.
2022年03月28日カンヌ映画祭の脚本賞や日本アカデミーの作品賞など、国内外で数々の賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』。米アカデミー賞の脚色賞など4部門でノミネートもされており、注目が高まっている。筆者は、この映画について、何度も文章を書いたり、また監督と対談する機会にも恵まれたりして、語るべきことは語りつくしたと思っていた。しかし、初めて見てから半年以上経った今になっても、こういう見方もできるのではないか、ということがまだ出てくる。本作は、俳優でもあり演出家でもある家福悠介(西島秀俊)の妻の音(霧島れいか)が急死したところから始まる。数年後、家福は国際演劇祭の仕事で広島に向かい、渡利みさき(三浦透子)という運転手と出会う。彼がそこで手掛ける舞台「ワーニャ伯父さん」のオーディションには、生前、妻が関係を持っていた俳優の高槻耕史(岡田将生)が現れるのだった。当初はこの映画のテーマは、主人公の家福が、音を失ったあと、どのように自分の内面と向き合い、再生していくかを描いたものだと思っていた。家福は、再生することを最短距離で探すのではなく、毎日、車の中で音が吹き込んだテープに対して、何度も何度も同じセリフを繰り返したり、みさきの運転で、毎日、同じ稽古場に通い、そこで演出をしたりする中でひとつの呼吸を掴んだりする中で徐々に再生に向かうのである。対して、何をしても器用で、瞬発力も感受性もあり、何かをすぐに把握できてしまう高槻。彼は、家福のように反覆をすることを受け付けず、何度も何度も単調なトーンでセリフを読み込む稽古に疑問を持ち、直情的すぎるばかりに負の感情も抑えきれないという面で、家福と対照的である。単調だけれども「生」を選ぶ家福と、激しさが「死」と隣り合わせのようになっている高槻のコントラストが際立っていた。しかし、今になって映画について考えていると、家福には、「老い」ということも重ねられているように感じられる。それは、彼が自動車事故にあい、精密検査を受けたことで緑内障を患っていることがわかるところからもうかがえる。緑内障は高齢者に多い目の病気で、点眼薬を毎日使えば、進行を抑えることができる。ここでも、単調でも同じことを繰り返すというキーワードが出てくるのだ。その後も家福は数年の間は愛車のサーブの運転を続けていたが、広島での演劇の仕事をきっかけにサーブの後部席に乗ることになり、みさきに運転を任せることになる(みさきも、毎日、淡々と正確な運転を繰り返す人物である)。やがて家福は、音のことを巡って高槻に感情を揺るがされ、みさきと対話をしたいと思い、助手席に座り、そして最後にはサーブを手放すのだった。タイトルに『ドライブ・マイ・カー』とついているのに、その車が家福のものですらなくなるのは、どういうことなのかと思ったが、車をドライブするということは、主体性を意味していると考えれば、家福は、徐々に主体性というものを受け渡し、そしてそこからいなくなってしまうとも考えられる。そのとき、同じ入れ物であるという意味で、車は肉体に似ている。この映画が「老い」をテーマのひとつにしているとすれば、人間の体も、日々、乗りこなし、「老い」とともに、誰かに委ねたり、手放さないといけないものなのではないか。手放すその日を迎えるまでは、衰え行く体とつきあうと言う意味においても、愛するものを失ったりして、思うように動かせなくなっていく心と向き合い、ときには悲しみやままならなさを受け入れていくという意味においても、淡々と日々のメンテナンスをしていかなければならない。「老い」を受け止めるということは、自分に過度な自信があったり、過度に力があると思っていればいるほど、耐えがたく受け入れがたいことだろう。人によっては、「老いる」ということにつきまとう「弱さ」を受け入れられないかもしれない。その受け入れがたさと、人に「弱さ」をさらけ出したくないという思いから、力を誇示しようとして暴力的になってしまう可能性だってある。それは、戦争にだってつながりかねないことでもある。本作は、冒頭でも書いた通り、28日に発表となるアメリカのアカデミー賞で4部門でノミネートされている。同賞は、年々、ラブ・ストーリーであろうが、コメディであろうが、スペクタクルであろうが、文芸作品であろうが、表層のストーリーの巧みさにうならされるだけでなく、現在、世の中に横たわっている問題点に重ね合わせてくれるような作品が数多くノミネートされているように思う。この映画のそうしたところが日本初の作品賞、脚色賞、監督賞、国際長編映画賞にノミネートされた所以ではないだろうか。(text:西森路代)■関連作品:ドライブ・マイ・カー 2021年8月20日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開(C)2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
2022年03月24日今月27日に開催される第94回アカデミー賞授賞式に、ウクライナのゼレンスキー大統領が登場するかもしれない。レジーナ・ホール、ワンダ・サイクスと共に授賞式の共同ホストを務めるコメディアンのエイミー・シューマーが、21日に放送されたドリュー・バリモアのトークショーにリモートでゲスト出演。番組の中でシューマーは、ロシアの侵攻を受けているウクライナのゼレンスキー大統領に、衛星中継もしくは録画でメッセージを伝えてもらうことを考えていると明かしたのだ。「どんな授賞式にするのか、今の時点でどんな風に考えているの?」とバリモアに質問されたシューマーは、言葉を選びながらこう語り始めた。「『これ(授賞式)は息抜きの時間だ、人々に今起こっていることを忘れさせて、ただ普通に夜を過ごしたい』という圧力はたしかにあると思う。でも、このショーは、とても注目されているからこそ、必要なことを伝えられるまたとない機会だと思うの。現状にスポットをあてるジョークはいくつかあるけど、あまりにもひどいことが起こりすぎているから、どれを取り上げるべきなのか、判断が難しいのよ」そう前置きし、シューマーはこう続けた。「だから私、ゼレンスキーに出てもらえないか、って思ってるの。衛星中継か、録画した映像か……だって、本当にめちゃめちゃ見てもらえるから。私、この話をすることに何のためらいもないけれど、ショーをプロデュースするのは私じゃないからね」調整中であることを窺わせる彼女の発言だったが、シューマーの思いを聞いたバリモアは、「もう!そんなあなただから大好きなのよ!」と賛辞を送った。
2022年03月22日プロデューサー組合賞(PGA)が発表された。劇場用映画賞を受賞したのは、『コーダ あいのうた』。オスカーの作品賞と同じ投票方式を採用し、投票者のかぶりも多いPGAは、オスカー予測で非常に重視される。ひと足先に『コーダ〜』は俳優組合賞(SAG)も受賞しており、フロントランナーである『パワー・オブ・ザ・ドッグ』を深刻に脅かすことになった。ドキュメンタリー映画賞は、『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった日)』。劇場用アニメーション賞は『ミラベルと魔法だらけの家』。テレビドラマ賞は『メディア王〜華麗なる一族〜』、コメディシリーズ賞は『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』、ミニシリーズ賞は『メア・オブ・イーストタウン/ある殺人じ事件の真実』だった。文=猿渡由紀
2022年03月22日各国の映画祭を席巻、第94回アカデミー賞脚本賞・国際長編映画賞ノミネートの話題作、7月1日公開 『The Worst Person In The World(原題)』の邦題が『わたしは最悪。』に決定し、シーン写真が3点解禁となった。本作は、『テルマ』『母の残像』などのノルウェーの奇才ヨアキム・トリアー監督の最新作。映画初主演のレナーテ・レインスヴェの熱演も大いに話題となり、カンヌ国際映画祭では女優賞を受賞した注目作だ。今回新たに解禁されたのは、主人公ユリアが恋人アクセルに隠れて別の男性と楽しむ様子や、打って変わって華やかなパーティで着飾った姿、オフモードで湖畔で佇む様子などのシーン写真3点。いずれも<ユリヤの日常>を切り取ったものだ。時に自己嫌悪に陥り、周りを傷つけながらも、自分の気持ちに正直に人生の選択をしていくユリア。その姿に全世界から共感の声が続々とあがっている。レナーテは、奔放でありながらも、その年代特有の女性が持つ繊細な心の機微と葛藤を、大胆かつ繊細な表現力で見事に演じ切った。本作の監督ヨアキム・トリアーは、「この映画を作るきっかけは、レナーテだった。彼女の舞台での演技に魅了され、主演を務めたことのなかった彼女のために脚本を書いた。主人公のキャラクター造形、複雑な心境を作っていくうえで、彼女に助けられたことが沢山ある。人間ドラマ、コメディなどたくみに演じられる素晴らしい才能を持っている、今一番の女優だと思う」と、レナーテの演技を絶賛している。『わたしは最悪。』は7月1日(金)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2022年03月22日マーク・ライランスが、今年のアカデミー賞授賞式には「出席しない」という。今年のアカデミー賞に自身はノミネートされていないものの、メインキャストの一人で大金持ちのピーター・イッシャーウェルを演じた『ドント・ルック・アップ』が、作品賞など4部門の候補となっている。また、マークは2015年に公開された『ブリッジ・オブ・スパイ』で助演男優賞を受賞しているアカデミー賞俳優の一人だ。マークは、「RadioTimes」誌に、「賞というのは、最高に素晴らしいものやすごく刺激を与えるもの(映画)の重要な印になるとは思わないんです。祝福してもらえるのはいいことだとは思いますが」と賞レースにあまり意味を見出していないことを示唆。「今年は行かないですね。正直に言うと、オスカーって本当にすごく退屈ですから」と語った。そんなわけで、自身が獲得したオスカー像にもあまり興味がないようだ。「そういうものに関して、これ見よがしにするのは好きじゃないので、(オスカー像は)長いこと箱に入ったままでした。いまは棚の中にあるんじゃないかな」と、目立つように飾るようなことはしていないと明かした。第94回アカデミー賞授賞式は3月27日(現地時間)に開催される。(Hiromi Kaku)■関連作品:【Netflix映画】ドント・ルック・アップ 2021年12月10日より公開、12月24日よりNetflixにて配信
2022年03月16日監督組合賞(DGA)が発表された。劇場用長編映画賞を受賞したのは、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のジェーン・カンピオン。この受賞で、カンピオンのオスカー監督賞受賞は、より確かなものになった。1949年から昨年までの間に、DGAの結果とオスカー監督部門の結果が一致しなかったことは7回しかない。劇場用映画初監督賞の受賞者は、『ロスト・ドーター』のマギー・ギレンホール。ドラマシリーズ部門は『メディア王〜華麗なる一族〜』のマーク・マイロード、コメディシリーズ部門は『Hacks』のルチア・アニエロ」、テレビ用映画またはミニシリーズ部門は『地下鉄道〜自由への旅路〜』のバリー・ジェンキンスが受賞した。『パワー・オブ・ザ・ドッグ』Netflixで配信中文=猿渡由紀
2022年03月14日13日(現地時間)、英国アカデミー賞(BAFTA)授賞式が開催された。作品賞はジェーン・カンピオン監督の『パワー・オブ・ザ・ドッグ』。カンピオン監督は、全米監督協会賞で監督賞を受賞してから、24時間経たずして、英国アカデミー賞でも監督賞を受賞する快挙。Netflix映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』日本からは濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が非英語映画賞を受賞。受賞スピーチで「非英語映画賞のカテゴリーには、とても素晴らしい映画がたくさんあります。この映画に限らず、映画には言語や国境を超える力があります」と力強く語った。同作は、3月27日に行われるアカデミー賞で、脚色賞、国際長編映画賞、監督賞、作品賞の4部門の候補となっている。これまでにゴールデングローブ賞(非英語映画賞)、ボストン映画批評家協会賞(作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞)などすでに数々の賞を受賞している作品。主な受賞結果は以下の通り。作品賞『パワー・オブ・ザ・ドッグ』監督賞ジェーン・カンピオン(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)非英語映画賞『ドライブ・マイ・カー』(日本)主演女優賞ジョアンナ・スキャンラン『アフター・ラヴ』主演男優賞ウィル・スミス 『ドリームプラン』助演女優賞アリアナ・デボーズ 『ウエスト・サイド・ストーリー』助演男優賞トロイ・コッツァー『Coda コーダ あいのうた』英国作品賞『ベルファスト』(ケネス・ブラナー監督)オリジナル脚本賞『リコリス・ピザ』脚色賞『コーダ あいのうた』(Hiromi Kaku)■関連作品:ドライブ・マイ・カー 2021年8月20日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開(C)2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
2022年03月14日第45回日本アカデミー賞の授賞式が11日、東京・品川のグランドプリンスホテル新高輪にて行われ、受賞者たちが登場した。授賞式では、前年度に『MOTHER マザー』で最優秀主演女優賞を受賞した長澤まさみが司会を務めた。同賞では受賞者たちへ副賞としてブルガリの時計が贈られ、授賞式に先立ち開催された記者発表でも長澤がブルガリのジュエリーをまとって登場していた。授賞式でも輝くジュエリーを身につけた長澤。イヤリングはセルペンティ(21,945,000円 ※予定価格)、リングは両手にそれぞれセルペンティ ヴァイパー(3,872,000円)、セルペンティ ヴァイパー(14,630,000円 ※予定価格)と総額は約4,000万円となった。また草笛光子の身につけたネックレスは予定価格29,260,000円(セルペンティ)、イヤリングは予定価格10,241,000円(セルペンティ)、ブレスレッドは5,951.000円(セルペンティ ヴァイパー)、リングは1,331,000円(セルペンティ ヴァイパー)と、総額は約4,700万円に。有村架純はイヤリング(セルペンティ 1,485,000円)、清原果耶はイヤリング(ディーヴァ ドリーム 2,904,000円)&リング(フィオレヴァー 691,900円)、吉川愛はイヤリング(セルペンティ ヴァイパー 979,000円)&ブレスレッド(セルペンティ ヴァイパー 1,045,000円)&リング(セルペンティ ヴァイパー 583,000円)と華やかな装いを見せた。さらに天海祐希はFENDIのパンツスーツとシューズで登場し、SNSでも「イケメンすぎる」と話題に。広瀬すずはドレス・シューズ共にLOUIS VUITTONで決めていた。■「第45回日本アカデミー賞」最優秀賞受賞リスト作品賞…『ドライブ・マイ・カー』監督賞…濱口竜介(『ドライブ・マイ・カー』)脚本賞…濱口竜介/大江崇允(『ドライブ・マイ・カー 』)主演男優賞…西島秀俊(『ドライブ・マイ・カー 』)主演女優賞…有村架純(『花束みたいな恋をした』)助演男優賞…鈴木亮平(『孤狼の血 LEVEL2』)助演女優賞…清原果耶 (『護られなかった者たちへ』)音楽賞…岩崎太整/Ludvig Forssell /坂東祐大(『竜とそばかすの姫』)撮影賞…四宮秀俊(『ドライブ・マイ・カー 』)照明賞…高井大樹(『ドライブ・マイ・カー 』)美術賞…原田哲男(『燃えよ剣』)録音賞…伊豆田廉明/野村みき(『ドライブ・マイ・カー 』)編集賞…山崎梓(『ドライブ・マイ・カー 』)アニメーション作品賞…『シン・エヴァンゲリオン劇場版』外国作品賞…『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』新人俳優賞…今田美桜(『東京リベンジャーズ』)、西野七瀬(『孤狼の血 LEVEL2』)、三浦透子(『ドライブ・マイ・カー』)、吉川愛(『ハニーレモンソーダ』)、磯村勇斗(『ヤクザと家族 The Family』、劇場版『きのう何食べた?』)、尾上右近(『燃えよ剣』)、宮沢氷魚(『騙し絵の牙』)、Fukase(『キャラクター』)話題賞 作品部門…『シン・エヴァンゲリオン劇場版』話題賞 俳優部門…菅田将暉(『花束みたいな恋をした』)(C)東京写真記者協会
2022年03月12日第45回日本アカデミー賞の授賞式が11日、東京・品川のグランドプリンスホテル新高輪にて行われ、受賞者たちが登場した。前年度に『MOTHER マザー』で最優秀主演女優賞を受賞した長澤が、今回初司会を務めることになり「緊張しています」と自己申告。優秀主演男優賞を受賞して登壇した堤真一は、司会側にいる長澤を「なんか、不思議ですよね」と見やり、「噛んでるし」とツッコミ。実はそれまでに何回か噛んでいた長澤について、一緒に司会を務めていた羽鳥慎一アナは「噛む度に、ニヤッと見てくる。もう、ちょっと疲れてますよね」と指摘し、長澤は「疲れてはいないです! ここにいるみなさんが優しい方々ばかりなので、きっといい話が聞けるんだろうなと楽しみにしております」と苦笑する。また、優秀主演男優賞の俳優陣が登場した時には、佐藤健が作品について思いを話した後に沈黙が生まれる。「あっすみません!」と謝る長澤を、羽鳥アナが「聴き入っちゃいましたね」とフォローし、佐藤は「ナイスフォローですね。ぼーっとしてたとかじゃなくて、聴き入ってたんですよね」とニヤリ。長澤は佐藤について「国際映画祭でご一緒したことがありまして、各国の俳優さんから身体能力の高さも絶賛されていて、どの役を演じていても自分を更新している人だなと思います」と紹介し、「ちゃんと話を聞いてますよ!」とアピールしていた。■「第45回日本アカデミー賞」最優秀賞受賞リスト作品賞…『ドライブ・マイ・カー』監督賞…濱口竜介(『ドライブ・マイ・カー』)脚本賞…濱口竜介/大江崇允(『ドライブ・マイ・カー 』)主演男優賞…西島秀俊(『ドライブ・マイ・カー 』)主演女優賞…有村架純(『花束みたいな恋をした』)助演男優賞…鈴木亮平(『孤狼の血 LEVEL2』)助演女優賞…清原果耶 (『護られなかった者たちへ』)音楽賞…岩崎太整/Ludvig Forssell /坂東祐大(『竜とそばかすの姫』)撮影賞…四宮秀俊(『ドライブ・マイ・カー 』)照明賞…高井大樹(『ドライブ・マイ・カー 』)美術賞…原田哲男(『燃えよ剣』)録音賞…伊豆田廉明/野村みき(『ドライブ・マイ・カー 』)編集賞…山崎梓(『ドライブ・マイ・カー 』)アニメーション作品賞…『シン・エヴァンゲリオン劇場版』外国作品賞…『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』新人俳優賞…今田美桜(『東京リベンジャーズ』)、西野七瀬(『孤狼の血 LEVEL2』)、三浦透子(『ドライブ・マイ・カー』)、吉川愛(『ハニーレモンソーダ』)、磯村勇斗(『ヤクザと家族 The Family』、劇場版『きのう何食べた?』)、尾上右近(『燃えよ剣』)、宮沢氷魚(『騙し絵の牙』)、Fukase(『キャラクター』)話題賞 作品部門…『シン・エヴァンゲリオン劇場版』話題賞 俳優部門…菅田将暉(『花束みたいな恋をした』)(C)東京写真記者協会
2022年03月11日第45回日本アカデミー賞の授賞式が11日、東京・品川のグランドプリンスホテル新高輪にて行われ、受賞者たちが登場した。映画『ドライブ・マイ・カー』が作品賞、監督賞(濱口竜介監督)、主演男優賞(西島秀俊)に加え、脚本賞、撮影賞、照明賞、録音賞、編集賞と8冠を達成した。最優秀主演男優賞に輝いた西島は「本当にこの賞はみんなでとった賞だと思っています」と感謝。「今、世界が混乱していて、色々なつながりが切れている中、今日が3月11日ということで、東日本大震災から11年経ちました。人とのつながり、魂の再生の物語が、賞をいただいたことは何か大きな意味があるのではないかと思っています」と語る。「これからも人生、人に寄り添う希望を持つような素晴らしい作品に参加したいと思っています。日本映画のために身を捧げたいと思っています」と熱い思いを伝えた。濱口監督は「ふらふらしますね」と言いながら、「今日は3月11日で、11年前に地震があり、津波があり、原発事故がありました。私は震災が起きてから2年ほど酒井耕という人と共同監督でドキュメンタリー(『東北記録映画三部作』)を作っていました。それは主に津波の被害に遭われた方たちのインタビューをするものだったんですけれども、皆さんが示してくださった力強い生きる姿というものがあって、こういう生命力を自分は捉えていきたいと、その時思いました。そのことが今、自分の監督をする基盤になっていると思います」と振り返る。「ほんの少しでも良い社会にするとか良い世界にするというと大げさですが、今この場所からしか始まらないんだと思っています。皆さんは一緒に映画を作る、今の仲間であって、おそらく未来の仲間なんだと感じています」と会場の映画関係者にもメッセージを贈った。世界中でも評価される同作について、西島は改めて「世界の大きな波みたいなものなのかなと思っています。とにかく平和が訪れるように、人々がまた心の絆を取り戻せるように祈っています」と語る。「この作品が希望の光になる。必要なのは耳を傾けるということだと伝えているのかなと思っています。本当に今日は3月11日ということで、未だに苦労されている方、世界でいろいろ大変な思いをされている方に心を寄せながら、今後もやっていきたいと思います」と決意を表した。■「第45回日本アカデミー賞」最優秀賞受賞リスト作品賞…『ドライブ・マイ・カー』監督賞…濱口竜介(『ドライブ・マイ・カー』)脚本賞…濱口竜介/大江崇允(『ドライブ・マイ・カー 』)主演男優賞…西島秀俊(『ドライブ・マイ・カー 』)主演女優賞…有村架純(『花束みたいな恋をした』)助演男優賞…鈴木亮平(『孤狼の血 LEVEL2』)助演女優賞…清原果耶 (『護られなかった者たちへ』)音楽賞…岩崎太整/Ludvig Forssell /坂東祐大(『竜とそばかすの姫』)撮影賞…四宮秀俊(『ドライブ・マイ・カー 』)照明賞…高井大樹(『ドライブ・マイ・カー 』)美術賞…原田哲男(『燃えよ剣』)録音賞…伊豆田廉明/野村みき(『ドライブ・マイ・カー 』)編集賞…山崎梓(『ドライブ・マイ・カー 』)アニメーション作品賞…『シン・エヴァンゲリオン劇場版』外国作品賞…『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』新人俳優賞…今田美桜(『東京リベンジャーズ』)、西野七瀬(『孤狼の血 LEVEL2』)、三浦透子(『ドライブ・マイ・カー』)、吉川愛(『ハニーレモンソーダ』)、磯村勇斗(『ヤクザと家族 The Family』、劇場版『きのう何食べた?』)、尾上右近(『燃えよ剣』)、宮沢氷魚(『騙し絵の牙』)、Fukase(『キャラクター』)話題賞 作品部門…『シン・エヴァンゲリオン劇場版』話題賞 俳優部門…菅田将暉(『花束みたいな恋をした』)(C)東京写真記者協会
2022年03月11日第45回日本アカデミー賞の授賞式が3月11日、東京・グランドプリンスホテル新高輪国際館パミールで行われ、村上春樹氏の同名短編小説を映画化した『ドライブ・マイ・カー』が最優秀作品賞を受賞した。同作は最優秀監督賞(濱口竜介)、最優秀主演男優賞(西島秀俊)、最優秀脚本賞(濱口竜介/大江崇允)など8部門に輝き、圧倒的な存在感を示した。現地時間27日に開催を控える第94回アカデミー賞では、日本映画として初めて作品賞候補となった本作。関連行事に出席するため、渡米中の山本晃久プロデューサーに代わり、最優秀作品賞のブロンズを受け取った濱口監督は、関係者に対して感謝の言葉。また、最優秀監督賞を受賞した際には、かつて自身が東日本大震災の被災者を取材したドキュメンタリー映画に言及し「さまざまな被害に遭われた方々が示してくださった、力強く生きる姿が今、監督をしている自分の基盤になっている。当時お話を聞いた方々に、お礼を伝えたい」としみじみ語った。最優秀主演男優賞に輝いた西島秀俊は、プレゼンターの草なぎ剛からブロンズを受け取り「驚いています。皆さんの力でいただいた賞なので、感謝しております」と喜びを分かち合った。また、昨今の世界情勢や発生から11年目を迎えた東日本大震災に思いを馳せ、「いろいろな繫がりが切れているなか、人との繫がり、魂の再生の物語が今日こうやって賞をいただいたのは、何か意味があるのではないかと思っています」と神妙な面持ち。「これからも人と寄り添う、希望を持てるような作品に参加したい。日本映画のために、身を捧げたいと思います」と決意を新たにした。最優秀主演女優賞を受賞したのは、『花束みたいな恋をした』の有村架純。共演経験があり、この日の司会を務めた長澤まさみからブロンズを受け取った。「私が作品に対してできることは、本当に少ないし限られている。一体どんな影響が与えられるのか、常々不安もある」と心境を明かし、「幾度となく背中を押してくれたのは、これまで出会った方々がくれた言葉たちでした。その方々がいたから、好きな芝居を続けることができたと思っております」と感謝の言葉。「これからも思いやりをもって芝居、現場、人に対して誠実に向き合い続けたい。一緒に戦ってくれる仲間を大切にし、精進したい」とさらなる飛躍を誓っていた。『護られなかった者たちへ』で最優秀助演女優賞を手にした清原果耶は「受賞させていただけるとは微塵も思っていなかったので、本当にびっくりです」と驚きを口にし、「名誉ある賞をいただき、うれしく思います。ありがとうございます」と関係者に感謝の意。「作品、そして(自身が演じた)円山幹子という役柄を通して、みんなが報われるような世の中になればいいなと思いながら演じていた」と振り返り、「俳優として、映画を愛する人間として成長できるように、これからも精進してまいります」と決意を新たにしていた。また、鈴木亮平が『孤狼の血 LEVEL2』で最優秀助演男優賞を受賞し「自分ひとりでは決していただけるものではない。感謝したい人だらけ」と挨拶し、「今回の現場は、前作の主演だった役所広司さんがいないというプレッシャーとの戦いでしたし、いい緊張感あふれる映画に仕上がった」。さらに映画好きだった幼少期、デビューからの俳優人生を振り返り「本当にたくさんの人に迷惑をおかけし、助けていただき、ひとつの評価をいただいた。今夜は皆さんの顔を思い出しながら、(手にした)ブロンズと夜を過ごしたい」と喜びを噛みしめた。第45回日本アカデミー賞は、東京地区の映画館休業・時短営業などを考慮し、以下の期間に公開初日を迎えた作品について今回に限り特別措置を実施。2021年4月16日~5月31日に公開された作品は東京地区に限らず2週間以上(1日の回数や同一劇場を問わず)上映された作品、6月1日~9月31日に公開された作品は東京地区の同一劇場で1日3回1週間上映し、2週間以上連続して上映された作品がそれぞれ対象とした。▽受賞作品/受賞者リスト最優秀作品賞:『ドライブ・マイ・カー』最優秀監督賞:濱口竜介『ドライブ・マイ・カー』最優秀主演男優賞:西島秀俊『ドライブ・マイ・カー』最優秀主演女優賞:有村架純『花束みたいな恋をした』最優秀助演男優賞:鈴木亮平『孤狼の血 LEVEL2』最優秀助演女優賞:清原果耶『護られなかった者たちへ』最優秀脚本賞:濱口竜介/大江崇允『ドライブ・マイ・カー』最優秀撮影賞:『ドライブ・マイ・カー』最優秀照明賞:『ドライブ・マイ・カー』最優秀美術賞:『燃えよ剣』最優秀録音賞:『ドライブ・マイ・カー』最優秀編集賞:『ドライブ・マイ・カー』最優秀音楽賞:『竜とそばかすの姫』最優秀外国作品賞:『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』最優秀アニメーション作品賞:『シン・エヴァンゲリオン劇場版』新人俳優賞:今田美桜、西野七瀬、三浦透子、吉川愛、磯村勇斗、尾上右近、宮沢氷魚、Fukase話題賞(作品部門):『シン・エヴァンゲリオン劇場版』話題賞(俳優部門):菅田将暉『花束みたいな恋をした』取材・文=内田涼
2022年03月11日「第45回日本アカデミー賞授賞式」が3月11日(金)に開催され、『ドライブ・マイ・カー』が最優秀作品賞を受賞した。8部門において優秀賞を受賞している『ドライブ・マイ・カー』だが、作品賞以外にも監督賞、主演男優賞などすべてにおいて最優秀賞に輝き、圧倒的な強さを見せつけた。『ドライブ・マイ・カー』は、『寝ても覚めても』の濱口竜介監督が、村上春樹の同名短編小説を原作に、自ら脚本も手掛けた意欲作。愛妻を亡くした舞台演出家・家福(西島秀俊)が喪失感と向き合い、再生へのきっかけをつかむまでを戯曲もシンクロさせつつ描き、観る者の心を揺さぶった。本作は第74回カンヌ国際映画祭で4つの賞を受賞したのを皮切りに、世界の名だたる映画賞を席巻、第94回米アカデミー賞では日本映画史上初となる作品賞ほか、4部門でノミネートとなる快挙を達成している。檀上に西島さんと共に立った濱口監督は、ブロンズ像を手にし、「ありがとうございます。関わったキャスト、スタッフの皆さんのおかげで獲れた賞です」と挨拶。その前に受賞した最優秀監督賞のスピーチで、濱口監督はこれまでの自身の作品や思いについて触れながら、「1日1日の仕事が未来を作っていくと思います。間違えることもあるかもしれないけど、引き返して、今いるところから進んでいくしかないと思います。少しでもいい社会やいい世界に…と言うと大げさですけど、この場所からしか始まらないと思います。映画界の今の仲間、未来の仲間と一緒に映画を作っていけたらうれしいです」と心を込めた。最優秀主演男優賞を受賞した西島さんも、「本当にありがとうございます。世界で見ていただいているのも、世界の大きな波みたいなものかなと思っています。平和が訪れるように、人々が心の絆を取り戻せるように、心から祈っています。この作品が希望の光になる、そのために必要なものが何か耳を傾ける、そのことを伝えているのかなと思っています。濱口監督の言う通り、自分のやれることを今後も精一杯やっていきたいと思います」とスピーチした。そのほか、最優秀アニメーション作品賞は『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が受賞。ブロンズ像を受け取った東映の紀伊宗之は、「皆さんが長い時間と心血を注いで作ったものです。2度延期になりましたが、東宝さんと一緒に配給の仕事をして、本当にほっとしたというのが感想です。カラーの皆さんも喜んでいると思います。持って帰ってお伝えしようと思います」とやわらかい表情で話していた。(cinamacafe.net)■関連作品:ドライブ・マイ・カー 2021年8月20日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開(C)2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
2022年03月11日第45回日本アカデミー賞の授賞式が11日、東京・品川のグランドプリンスホテル新高輪にて行われ、受賞者たちが登場した。話題賞では俳優部門を受賞した『花束みたいな恋をした』の菅田将暉、そして作品賞を受賞した『シン・エヴァンゲリオン劇場版』から紀伊宗之プロデューサーが登壇。前年に映画『罪の声』で俳優部門を受賞した小栗旬がプレゼンターとして登場することになったが、なんと菅田主演のドラマ『ミステリと言う勿れ』の格好で登場し、会場は騒然となる。小栗は「皆様、どうも小栗旬です。今日はちょっとたまたま撮影中のドラマの現場から来て、こういう形になってしまいました。今週、第10話も放送されますので、よろしくお願いします」と『ミステリと言う勿れ』を宣伝。「これからもますますの話題を作っていただけたらと思っております。本日はおめでとうございました」と両者にメッセージを贈った。小栗の姿に、菅田は「ちょっと言葉が出ない登場にびっくりしてますけど、この世界に入る前からずっと話題の中心だった小栗旬という人が、未だにこんな最前線でエンターテインメントと戦っていることに感動しております。ありがとうございます」と苦笑しながらも感謝する。「『花束みたいな恋をした』は緊急事態宣言下の公開で、宣伝活動をしながらも『劇場に来てください』とは一言も言えませんでした。カンペにバッテンされてる言葉を見た時にそうだよなと思いながらも、どこかもどかしい気持ちでいっぱいでした」と振り返り、「結果、たくさんの人に見ていただくことができまして、すごくホッとしていると同時に感謝しています。本当にありがとうございます。そして小栗さんありがとうございました」と感謝の思いを表した。(C)東京写真記者協会
2022年03月11日第45回日本アカデミー賞の授賞式が11日、東京・品川のグランドプリンスホテル新高輪にて行われ、受賞者たちが登場した。優秀主演女優賞を受賞したのは、天海祐希、有村架純、永野芽郁、松岡茉優、吉永小百合。『花束みたいな恋をした』で最優秀主演女優賞に輝いた有村は「私が作品に対してできることは本当に少ないですし、限られていて、自分が一体この作品にどういった影響を与えられるんだろうかというのは常々不安な部分もあるんですけど、幾度となく背中を押してくれたのは、これまで出会った方々がくれた言葉たちでした」と感謝する。有村は「いつも思い浮かぶのは、これまで一緒に仕事をしてきてくれた人たちの顔で、その方達がいたから、好きな芝居を続けることができたのかなと思っております。いつも支えてくださってありがとうございます。これからも独りよがりな芝居をするのではなく、思いやりを持って芝居、現場、人に対して誠実に向き合い続けていきたいなと思います。一緒に戦ってくれる仲間たちを大切にこれからも精進していきたいと思います」と言葉を続ける。「最後に、世界中が一刻も早く穏やかに過ごせるよう祈っております。私自身も皆様に貢献できるよう頑張っていきますので、今後もよろしくお願いいたします」と語った。また、前年度に『MOTHER マザー』で同賞を受賞していた長澤がプレゼンターを務めることについては「20歳ぐらいの頃からずっとすごく良くしてくださっていて、こういった素敵な場所で一緒に立てることがとても幸せです」と喜んでいた。(C)東京写真記者協会
2022年03月11日