「イセタン」ブランドとして今回東海初出店となる「イセタンハウス(ISETAN HAUS)」。その核となる婦人服は「地元名古屋の高感度なファッショニスタは新宿店での購買頻度が高い」という同社の顧客データから、新宿本店の旬のブランドを中心にセレクトされた。1階の高感度モードゾーンは、エントランスに銀座、青山に次ぐ規模となるモンクレール(MONCLER)が路面店として出店し、大名古屋ビルヂングのファサードの一面を提案。オープニングはゴリラのVPが出迎える。モンクレールに向かい合うイベントゾーンと、バッグ、シューズ、ストール、帽子を集積したレディスグッズのゾーンは同店のアートディレクター、名和晃平のモチーフで柱周りが統一された。オープニング時のイベントゾーンではジョン・ガリアーノ(John Galliano)がメゾン マルジェラ(Maison Margiela)で手掛けた初のバッグ「5AC」がフューチャーされている。インターナショナルデザイナーズは、アレキサンダー ワン(ALEXANDER WANG)が東京以外では初のメンズレディス複合店舗を出店。売り場にはNY店でのショップアイコンでもある黒いケージの什器が日本で初めて導入された。同様に、マルニ(MARNI)も通路を挟んでレディスとメンズを展開。話題のベルクロスニーカーも並ぶ。またミラノのエミリオ プッチ(EMILIO PICCI)、パリのカルヴェン(CARVEN)、ニューヨークの3.1フィリップ リム(3.1Phillip Lim)が各都市のコレクション代表という趣で壁面に並んだ。伊勢丹の自主編集ゾーンの「リ・スタイル」はオン、オフ、パーソナルの3つのテーマで構成。新宿本店のリ・スタイルをベースに「リ・スタイルプラス」、銀座三越の自主編集ゾーン「フォース・オブ・ギンザ」でそのシーズン注目度の高い、旬のブランド、アイテムをセレクトして展開される。パーソナルのスペースでは九谷焼の上出長右衛門窯の作品が展示され、ゆったりとしたサロンスペースも設けられている。オープン限定アイテムとしては、アカネウツノミヤ(AKANE UTSUNOMIYA)、アキラナカ(AKIRA NAKA)、ルール ロジェット(leur logette)ら、日本人デザイナーによる1点モノ、リ・スタイルのPBルーガ(LUGHA)からはリントンツィードにパールをあしらったジャケットが東京・名古屋限定で販売される。また、リ・スタイル20周年を記念して、展開ブランドとコラボしたブラックドレスもラインアップされる。それ以外にはロシャス(ROCHAS)、ジャイルズ(GILES)、オランピア ルタン(Olympia Le-Tan)、アクネストゥディオス(Acne Studios)、マメ(mame)、リエ(RHIE)、トーガ(TOGA)、ハイク(HYKE)、シャルル・アナスタス(Charles Anastase)、MSGM、アーデム(ERDEM)、ジュリアン デイビッド(Julien Daivid)、メゾンキツネ(MAISON KITSUNE)、クリストファー・ケイン(Christopher Kane)など、国内、海外のデザイナーがオープン時には展開される。2階はフロア全体の「心と体の充足」というテーマに沿って、「レディ フォア ザ ウイークエンド(Ready for the Weekend=RFW)」を新宿店からさらにライフスタイルを強く打ち出した。新宿店ではカウンターだけのジュースバー「スカイハイ(Sky High)」にテーブル席も含めたイートインスペースを設けて、ボウルメニューやサラダを展開。隣接してサンフードのスーパーフードの売り場も設けられ、婦人服フロアにジュースバー、フードを挟んで、RFWの子供服も導入され、ファミリー層に向けて新しい魅力を提案している。展開ブランドは新宿店で展開されている構成に一部、リ・スタイルTOKYOのブランドも追加され、ビューティフルピープル(beautiful people)、レキサミ(REKISAMI)、ミュベール(MUVEIL)、ミューラー・バイ・ヨシオクボ(muller of yoshiokubo)、タロウホリウチ(TARO HORIUCH)ブルーバードブルーバード(BLUEBIRD BOULEVARD)、コーヘン(Coohem)、カオン(KAON)などの国内ブランドに、フランク&アイリーン(Frank&Eileen)、ジェームス パース(JAMES PERSE)、アディダス バイステラマッカートニー(adidas by Stella McCartney )などのインポートブランドをミックスした構成。1階のリ・スタイル同様に、RFWの奥のコーナーにはソファを設置したユーティリティスペースをウインドー脇に設置。隣接してマクミラン/イセタン、ブラックウォッチ/イセタンのチェック柄を多彩な雑貨で展開する「イセタンタータン」を全国で初めて常設コーナーとして出店。雑貨を配置することで、女性がフロアで買い物している間、男性が滞在しやすい環境などにも配慮されており、百貨店の課題とされていたさまざまな課題に対してフロア全体で新しい試みが図られている。Text:野田達哉
2016年03月07日三越伊勢丹HDが新しい成長事業の柱として開発を進めている中型店プロジェクトの過去最大規模となる新業態「イセタンハウス(ISETAN HAUS)」のプレスプレビューが4日行われた。名古屋駅前の大名古屋ビルヂングのキーテナントして出店するもので、オープンは3月9日。地下1階から2階の3層、約3,000平米の売り場は、名古屋駅前のランドマークであると共に、駅から地下通路を抜けてオフィスビルへ向かう連絡通路にあたり、既存の商業施設に比べ格段に広い通路が特徴。エントランスのアトリウム、エスカレーター、通路を囲む形で同店のフロアが展開される。「FUN(楽)」をコンセプトに、楽しさを軸に据えた新たなビジネスモデルの同店は伊勢丹新宿本店の魅力である旬なMDをベースに地域特性を生かした構成。2階に百貨店初、名古屋地区初として、新たな編集ゾーンとして登場する「ウェルビーイングスポーツ」を始め、スーツスタイルを排除した「メンズクローゼット」や、イセタンミラーと新宿本店地下2階のビューティアポセカリーのコンセプトがコラボした「コスメティクス」などの新しい試みを提案。同じ中型ファンションセレクトストアの東京ミッドタウンの「イセタンサローネ」や丸の内の「イセタンサローネ メンズ」とは違った「イセタン」ブランドの魅力を打ち出している。駅に直結する地階エントランスは、ウィークリーベースでポップアップが展開されるイベントスペースと、今春デビューしたザ・フラワースタンド ケイタマルヤマ(THE FLOWER STAND_KEITA MARUYMA)とザ・スーベニールショップ アナ スイ(THE SOUVENIR SHOP_ANNA SUI)、バッグのムータ フォンド(muta fondo)、ラピュルム サマンサタバサ(LAPLUME SAMANTHA THAVASA)、眼鏡、ジュエリーなどで構成されるコンセプトショップのゾーンを、白を基調とした空間で提案。コンセプトショップと広い通路を挟んで対面には、初の常設ストアとして導入された伊勢丹のオリジナル雑貨ブランド「ニッポッピン(nippoppin)」。デジタルサイネージと大型タッチパネルのカウンター什器には、日本とロンドンに拠点を置く映像クリエイター集団WOWの映像作品が流れ、最新のミラー型ディスプレイなども設置されている。「ニッポン(nippon)を回文表記すると中央にポップ(pop)が現れる」というコンセプト通り、従来の和ものの集積ではなく、グラフィック、写真、ファッション、イラストなどさまざまなジャンルの日本のクリエイターたちと、日本の“技術”をコラボレーションした“型破り”なMDで構成。服部一成のトートバッグ、できやよいのハンカチや傘、『進撃の巨人』『ちはやふる』などの漫画アニメ、天野喜孝の『CANDY GIRL』をモチーフにしたクリスチャンダダ(CHRISTIAN DADA)のアイテムまで展開されている。100平米の売り場は3つのゾーンに分かれ、増田セバスチャンがディレクションした加賀の伝統工芸なども提案され、東京解放区で培った伊勢丹ならではのPOPさだ。「健康的な生き方=ウェルビーイング」をテーマに新しいスポーツゾーンを編集した2階は、「アスレジャー」「グランピング」といったブームを牽引する日本を代表するメーカーを中心に集積している。目玉はグランピングブームの火付け役とも言える新潟・燕三条のアウトドアメーカー、スノーピーク(Snow peak)。メンズレディスのアパレルも含めて展開する売り場は、東京に次いで2番目となる。サイクルカジュアルウェアの草分けのナリフリ(narifuri)がコーナーを構え、休養をテーマにした日本初のセレクトショップ「リカバリーラボ プロデュースバイ ベネックス(Recovery Lab Produced by VENEX)では、今回新たに開発された疲労度をセルフチェックするタブレットも設置されているのも、モノからコトに目を向けるFUNの要素の一端。また、スイスのアスレジャーブランド【SN】スーパーナチュラル(SUPER.NATURAL)も同ゾーンにセレクトストアとして日本初出店を果たしている。また、名古屋シティマラソンに代表されるようにランナーが多いと言われる土地柄、ミズノのコンセプトショップ、ノハラ バイ ミズノ(NOHARA BY MIZUNO)が導入され、話題のMラインの復刻モデルシューズも並ぶ。中央のスニーカーのコンセプトショップ「キック ザ シティ(Kick The City)」では、伊ピッティウオモのスタッフ用としてデザインされたスペルガ(Superga)のバイカラーのスニーカーや、ADIDAS ZX700のブラックなど限定モデルが、同店と新宿店、丸の内イセタンサローネ メンズで限定販売される。メンズウエアを展開するゾーン「メンズクローゼット」も、2階のコンセプト“ウェルビーイング”に基づいて“体と心の充足”をテーマに「エレガント」「ワーク」「リラックス」の3テーマで構成。商品の約半分は三越伊勢丹から今春デビューするPBのエアディム(EADEN)と、ヴィルーム_ネイビー(v::room navy)を中心に展開される。展開ブランドはエレガントゾーンが、LBM91、フィナモレ(Finamore)、インコテックス(INCOTEX)、PT01などのイタリアンクラシコの専業メーカーのアイテムで構成。ワークゾーンにはMHL、ラグ&ボーン(rag & bone)、フランク&アイリーン(Frank&Eileen)、ジェームス パース(JAMES PERSE)といった2階の婦人服と連動し、環境に合わせた女性視点での好感度の高いブランドでフロアが構成されている。Text: 野田達哉
2016年03月07日3月9日にグランドオープンする大名古屋ビルヂングのプレス内覧会が4日行われた。昨年秋に竣工した同ビルのオフィス部分は先に開業しており、今回約 3,800 坪、全74店舗を集積した地下1階から地上5階の商業施設部分がオープンする。地下1階、1階、2階にはキーテナントとして、三越伊勢丹HDが新たなビジネスモデルとして展開する中型店舗の新業態「イセタンハウス(ISETAN HAUS)」を約900坪で出店。「伊勢丹ブランド」としては初の東海エリアの出店となり、店内のデザインのアートディレクションは名和晃平(SANDWICH)が手掛けた。イセタンハウスは、自主編集ショップ「リ・スタイル(Re-Style)」、「レディ フォア ザ ウィークエンド(Ready for the Weekend)」の婦人服を中心に、コスメ、紳士服、雑貨など伊勢丹新宿本店のエッセンスを凝縮したファッション・セレクトストア。「ニッポッピン(nippoppin)」(地階)や伊勢丹チェックのアイテムを集積した「イセタンタータン」「(2階)など、新宿本店でこれまでポップアップで展開されていたプロジェクトも今回初めて常設売り場として展開されている。開発に当たった三菱地所グループは、東京・丸の内での商業開発経験を生かし、「大名古屋ビルヂングアドバンス(DNA)」をテーマに、1962年に竣工し2012年の閉館まで名古屋駅前のランドマークとして愛された同ビルの遺伝子を継承。“ノスタルジック&クリエイティブ”を軸にテナントを構成した。イセタンハウス以外の2,500坪の内、約40%、約1,000坪を飲食で展開し、全40店の飲食店でバラエティ感、ボリューム感を持たせていることが特徴。地階は名古屋駅から直結する地下街「ダイナード」に「メーカーズシャツ鎌倉」、ナチュラルスキンケアの「シロ」を導入し、近隣のオフィスワーカーに対応。地下のエントランスは「イセタンハウス」の売り場がアトリウムを隔てて対峙し、入り口の一等地には”名古屋巻き”のヘアスタイルが全国的に知られる土地柄から、「ヘアケアバー」を設置。口紅の自主編集売り場「リップバー」も登場した。エスカレーターと広い通路を挟んだ正面には、伊勢丹新宿店の1階ステージに当たるポップアップショップを展開するコンセプトゾーンを設け、にぎわい性を演出している。オープン時には先に新宿店で行われた猫好きクリエイターとのコラボグッズストア「Cat’s ISSUE」がお目見えする。物販テナントはトゥモローランドのレディスメンズ複合のニューコンセプトショップ「ギャルリー・ヴィーホワイト」が全国初出店。「セーブ カーキ ユナイテッド」「アスペジ」「ボンジュールレコード」「ポータークラシック」などがメンズレディス複合で展開。メンズでは「ソフ」「デンハム」「45R」、生活雑貨では林物産の新業態「プライズ」、フレグランスの「ディプティック」が東海地区で初出店している。飲食エリアは旧大名古屋ビルヂングでは地階1階のみだったが、今回地下1階から3階まで飲食を導入。中目黒の水炊き・しみずが名古屋コーチンの親子丼の新業態「酉しみず」、カリフォルニアのミシュラン星付きシェフ、デイビッドマイヤーズの「ソルトウォーター」、カリフォルニアダイナーの「E・A・T青山」、カフェ・グロサリー「チャーリーズ」など東海・名古屋エリア初出店、新業態の店舗群と、鯛茶漬けの「鯛茶福乃」、あんかけスパなど名古屋メシの「コーリーズ」、中華の「ラポール」、ひつまぶしの「名古屋備長」、地元割烹の「山虎」、地元の精肉店の焼肉店「肉や大善」、イタリアンの「トラットリア・フラテッリ・ガッルーラ」など、地元飲食店の手掛ける新業態の店舗で構成され、名古屋駅前の新名所として話題を集めそうだ。Text: 野田達哉
2016年03月05日瞑想状態に近づくと窓が閉じ、意識が散漫になると窓が開き、眼前に東京タワーの景色が広がる。ライゾマティクスの建築部隊(Rhizomatiks Architecture)が、今回「メディア アンビション トーキョー2016(MEDIA AMBITION TOKYO 2016)」(以下MAT)に出展した作品に、初日の2月26日から多くの体験希望者が列を作った。六本木ヒルズ・森タワー52階東京シティビューで展示されている「MAT LAB」はアーティストと企業による新しい実験の場として、様々な実験的な作品が並ぶ。日本を代表するデジタルクリエイター集団のライゾマティクスは今回MATに、空間とテクノロジーの可能性を探るインスタレーションの3作品を『SPACE EXPERIMENT』として出展している。すべてこれまで彼らが提唱してきた身体と空間の関係性を、今のテクノロジーを使って実験しているもので、再度実現性をスタディしたもの。今回は脳波を解析してモーターに連動し、インタラクションを起こす冒頭の「マインデッドミラー」、intel computer stickを内蔵した眼鏡を装着することで耳殻の傾きに呼応して映像が変化する「センスドビジュアル」、喉の空間構造と唇の形で音を再現させる「スロート」の3つのインスタレーションで構成されている。ライゾマティクスはこれ以外にも2001年に発表され話題を集めた映像音響型コンピュータゲームRezの作者、水口哲也氏と慶応技術大学大学院メディアデザイン研究科との3者コラボによる音楽を触覚、視覚、聴覚で体感する共感覚スーツ『Rez InfiniteーSynesthesia Suit(シナスタジアスーツ)』の開発へも参画している。体験型作品は、これ以外にもヘッドマウントディスプレイを装着し、自己の身体と向かい合ったモニターに映る自己の鏡像とインタラクションすることで、自己認識と時間と空間の概念をモジュレーションさせる『The Mirror/藤井直敬+GRINDER-MAN+EVALA』も体験できる(要整理券)。また、3Dプリンターとスマートフォンを活用することによって低コストで実用的な電動義手の開発を行う『Handiii/Hackberry』といった身体性とテクノロジーの考察は、イベント全体の大きなテーマとなっている。それ以外にも、ビジュアルデザインスタジオのWOWによるレーザーと霧を使ったホログラムアートの『Light of birth』、パリを拠点に活躍する音響映像アーティストのアレックス・オジェ(Alex Augier)のキューブ状のビデオアート『ヴォクセル(vVvoxel)』、パリの1024アーキテクチャーによる姿を変える立方体『WALKING cube』、自分の立つ地球の裏側の空をモニターに映し出す寒川裕人(EUGENE KANGAWA)のインスタレーション『Syndrome/Earth Hole』など、展示環境とメンテナンスの問題からなかなか多くの作品を1ヶ所に集めるのが難しいメディアアートが一堂に会した貴重な機会となっている。また寒川氏の新たなプロジェクトとして、ゴールドウィンとSpiberの共同開発による人工合成クモ糸で作られた革新的なタンパク質素材で作られたノースフェイスのムーンパーカーと映像作品も展示されている。ファッション関連ではそれ以外に、東京コレクションにも参加し、3月パルコに直営店がオープンするエトヴァス・ボネゲ(Etw.Vonneguet)の作品『FABOLOGY』が展示されている。セメダイン社が開発した導電性接着剤を使用。2400個のLEDを搭載し、デザイナーOlgaからファッション視点でのウェアラブルが提案されている。【イベント情報】MEDIA AMBITION TOKYO 2016■六本木会場六本木ヒルズ52階東京シティビュー住所:東京都港区六本木6-10-1会期:2月7日から3月21日時間:月から木曜日・日曜日、祝日10:00から22:00入場料:当日1,800円前売り1,500円(東京シティビュー入場料)Text: 野田達哉
2016年02月29日「手の延長としてではなく、脳の延長としてプログラミングを使っている。すべてをコンピューター上で制御しないで行うため、作品の完成形を事前に絵コンテで見せることができないので、説明するのに苦労する」と苦笑するのはメディアアーティストの平川紀道氏。同氏は2月26日より開幕した「メディア アンビション トーキョー2016(MEDIA AMBITION TOKYO 2016)」に、LEXUSとのコラボレーションによる映像音響インスタレーション作品の『the view 【for LEXU】』で参加。六本木ヒルズの森タワー52階東京シティビューで、レクサスLF-LCの車体とともに壁面2面を使った映像がノンストップで流れている。今年1月に発表されたラグジュアリークーペLC500への注目もあって、初日から長時間にわたり、先鋭的なこの空間に身を置く観客の姿もあり、メディアアートが身近なものとなりつつあることを実感する。今回の作品は、同氏が今回同様レクサスとのコラボにより2007年にミラノサローネで発表した作品をベースに、「ミラノで発表したが、日本では未公開だった作品だった」ため、以降8年間のテクノロジーの進化に合わせ、新たにプログラミングを書き換え公開した作品。当時は周囲の動きに対応するインタラクティブな提案だったが、今回はインタラクティブの要素を排除し、データを用いず、純粋にコンピューターの計算だけで映像が表現される。地平線をモチーフに、ビルや山、川といったモチーフを連想させるグラフィックスがエンドレスで描写される。「コンピュータープログラミングはアート足り得るか?」という意地の悪い質問には「僕自身はテクノロジーとサイエンスの領域よりも、アートとサイエンスの関係性に興味がある」と平川氏の答えは明快だ。8年前に比べると文字通り桁違いにンピューターの性能は進化した。その処理能力のスピードアップが映像という形で表現され、テクノロジーの進化がアートとして集中展示されるというMATのイベントコンセプトを代表している。テクノロジーの進化が、未来の車社会にどういった影響を与えるかという命題に、空間表現でイメージ化しているのは、インターセクト バイ レクサス東京で行われている「White Rain for LEXUS」も同様。照明を使った光のインスタレーション作品で知られる松尾高弘氏とのコラボでは、今回は新しく開発されたホログラフィックディスプレイに観客が触れることで、レクサスGSFの車体の周りを取り囲んだLEDライト24本とアクリル50本のポールが人工的な雨のシーンを描き出す。その光が車のボディに反射し、ホログラムとの連動で人との関わりで変化を生み出すという趣向。ブルガリとのコラボやさまざまな商空間のインタラクティブアートを手掛ける同氏らしい作品だ。「光の流れは計算上、同じシーンを再現することはなく、一期一会。自分自身はテクノロジーだけではく、そこに人が介在することが重要。その点では車というメディアは面白い」と松尾氏は、今回のレクサスとのコラボについて話す。“エルフィネス”というデザイン概念を掲げるレクサスにとって、次世代のラグジュアリーさを先鋭的なデザインで実験する場としてMATの場は好相性なようだ。【イベント情報】MEDIA AMBITION TOKYO 2016■六本木会場六本木ヒルズ52階東京シティビュー住所:東京都港区六本木6-10-1会期:2月7日から3月21日時間:月から木曜日・日曜日、祝日10:00から22:00入場料:当日1,800円前売り1,500円(東京シティビュー入場料)■青山会場インターセクト バイ レクサス住所:東京都港区南青山4-21-26会期:2月8日から3月21日時間:11:00から22:00入場無料Text: 野田達哉
2016年02月29日米ロサンゼルスで15日に開催された第58回グラミー賞において、2度目の「年間最優秀アルバム」を始め3冠を獲得したテイラー・スウィフト(Taylor Swift)」は、アトリエ ヴェルサーチ(Atelier Versace)の赤のベアトップ、大きくスリットの入ったピンクのロングスカートで授賞式に登場。ばっさり切ったボブヘアとともに喝采を浴びた。また、マーク・ロンソン(Mark Ronson)と共に『アップタウン ファンク(Uptown Funk)』で「年間最優秀レコード」に輝いたブルーノ・マーズ(Bruno Mars)もヴェルサーチのパープルのジャケットスタイルで授賞。ブルーノ・マーズは7日に行われたNFLスーパーボールのハーフタイムショーでも全身ヴェルサーチだった。さらに、「最優秀アーバンコンテンポラリーアルバム」「最優秀R&Bソング」にノミネートされ、会場でパフォーマンスを披露したミゲル(Miguel)は、ヴェルサーチのピンストライプのスーツを着用。アレッサンドロ・アンブロシオ(Alessandro Ambrosio)もアトリエ ヴェルサーチの黒のドレスでレッドカーペットに登場した。Text: 野田達哉
2016年02月17日モンクレール グルノーブル(MONCLER GRENOBLE)の16-17AWコレクションが2月13日、ニューヨーク・リンカーンセンターの中央広場で行われた。毎年1回、秋冬コレクションのみ大掛かりな演出で楽しませる同ブランドは、今シーズン、NYの象徴的なロケーションでブランドのDNAであるスキーをベースとしたコレクションを展開。アメリカンカレッジのスポーツイベントのオープニングを思わせる集団行動が、男女80名に及ぶパフォーマンスで演出された。高機能素材と最先端テクノロジーを駆使したラグジュアリーなスキー、登山というシーンに加え、今シーズンからスノーボードウェアが登場。軽量ハイテク素材がビッグシルエットを軽快なスタイリングに見せる。バイアスカットされたラッカー素材とともに、赤、黄、青といったビビッドな色使いが新しい表情を見せ、タータンチェックやツートンの千鳥格子など、アーカイブを思わせるクラシックな柄や色使いも、新素材と立体的なキルティングでラグジュアリーなアイテムへと消化されている。メンズは1969年に公開された「女王陛下の007」のジェームズ・ボンドからインスパイアされたというクリーンでスマートなシルエット。ウィメンズはクラシックなチェックとファー使い、細密なキルティング加工などで、エレガントさを強調。機能を備えた都会的なアウトドアウェアとして最先端のアイテムを披露した。動画引用元: (モンクレールオフィシャルYouTube: 野田達哉
2016年02月15日カニエ・ウエストのクリエイティブディレクター、ヴァージル アブローが手掛けるオフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)の16-17AWコレクションが、パリメンズファッションウィークで初のランウェイ形式で行われた。グラフィック、ロゴをモチーフとしたアイテムで「ラグジュアリー・ストリート」という分野を牽引。日本でも発売されるアイテムが即日完売、商品入荷日にはショップに行列、というコアな人気を誇るオフホワイトが、今シーズンのテーマとしてアイテムに記したのは「You cut me off」。さまざまにカットされたモチーフが再びつなぎ合わされるアイデアが、ベーシックなアイテムで構成された。メンズ、ウイメンズともにオーバーサイズなミニマルシルエットで、素材のドレープもポイント。キャンバス地のロングコートは、黄。赤、青、黒、白とビビッドなカラーで提案され、ビッグサイズのニットのヘムやレザーブルゾンのスリーブに、ブランドアイコンの2トーンのシグナルストライプがあしらわれる。ベルベットブルゾンの背中のグラフィックは着脱可能で、より幅広いマーケットを意識したワードローブで構成された。テーマ自体は白いキャンパスにカットを入れただけの作品で知られる、1950年代、60年代のイタリア「空間主義(スパツィアリスモ)」の中心アーティスト、ルーチョ・フォンタナからインスピレーションされたものだという。70年代にミラノの服飾産業が大きく発展した時期に、ファッションデザイナーとのコラボで影響を与え、キュビズムとファッションの関わりでもよく知られている。マルセロ・バーロン同様に、アメリカのストリートカルチャーをメイド・イン・イタリーのクオリティでグローバル展開を図るその背景にあるコンセプトは、なかなか深淵だ。Text: 野田達哉
2016年02月12日ヴェルサーチ(VERSACE)がブランドアイコンのメデューサを加工できる絵文字アプリ「VERSACE EMOJI」をバレンタインデーに向けてローンチする。アプリは無料。iOSとアンドロイドに対応している。また、このアプリのローンチを記念して世界各地のヴェルサーチブティックで、メンズとウイメンズのTシャツのカプセルコレクションを発表。サングラスを掛けたメデューサや目がハートのメデューサのTシャツが用意され、日本では2月中旬より銀座店で発売が予定されている。同アプリはさまざまな表情を持ったメデューサをユーザーが選択し加工。ステッカー、背景、フィルターやテキストのカラーなどでメッセージが表現できる。また、アプリで加工した写真に「#VersaceSharesLove」のハッシュタグでSNSで共有できる。今春夏、来秋冬シーズンに向けて「絵文字(Emoji)」は欧米のファッションシーンでも大きなトレンドとして浮上する気配を見せており、「バレンタインデーのこのタイミングで新しいこの絵文字アプリを使えるのはとても楽しみ」とドナテラ・ヴェルサーチ本人もコメントしている。Text: 野田達哉
2016年02月12日ガンリュウ(GUNRYU)の16-17AWコレクションが9日、東京・南青山IDOLで発表された。デザイナーは丸龍文人。リジッドデニムのフルピースコーディネートにコートを手に持ったメンズでスタート。ウイメンズはダッフルのトグルがあしらわれたGジャンに、カットワークされたサルエル風パンツ。男性モデルはランウェイ中央で同素材のロングのローブコートをボウタイまでデニムのフルピースの上にラッピング。コートに付けられた大きなパッチポケットにはリベットが打たれ、袖は太めにロールアップされている。世界的なトレンドでもあるデニムワークの再構築をガンリュウらしいアプローチでファーストルックをこなし、続くルックはフェアアイル柄のニットに白シャツにデニムと、東京らしい日常のストーリート感、カジュアルな目線がリアルなレイヤードに落とし込まれていく。スタジャンやMA1風のシャツジャケット、モンドリアンパターンやブロックチェック、ダンガリーをパッチワークしたシャツ、白のレイヤード、ジップフライのスカートパンツなど、”リコンストラクト”というコムデギャルソンの伝統を汲んだアイデアに、ビビッドなトリコロールのモヘアニット、軽量ダウンなどマーケットインなアイテムが落とし込まれたコレクション。海外のバイヤーから、東京メンズのニューカマーとしてソロイスト、ファセッタズムなどと共に頻繁に名前の挙がる注目ブランドだけに、変化が急なグローバルなメンズマーケットで次のアプローチが気になる。Text: 野田達哉
2016年02月10日野田秀樹作・演出のNODA・MAP第20回公演 『逆鱗』が1月29日、東京芸術劇場で開幕。公演に先立ち、28日にゲネプロが行われた。NODA・MAP第20回公演『逆鱗』チケット情報物語の主な舞台は、とある水族館と、深い海の底。水族館では、館長の鵜飼綱元(池田成志)、館員のイルカ・モノノウ(満島真之介)、警備員のサキモリ・オモウ(阿部サダヲ)らがせわしなく働いている。そこに現れたのが、電報配達人のモガリ・サマヨウ(瑛太)。電報を届けようとするモガリを、館長の娘で人魚学の若き研究者である鵜飼ザコ(井上真央)が留め置く。ザコはある企みを胸に秘め、人魚学教授の柿本魚麻呂(野田秀樹)と共に水族館で“人魚ショウ”を開こうとしていた。一方、海の底では、NINGYO(松たか子)をはじめとする人魚らと、彼女達の母である逆八百比丘尼(銀粉蝶)が、神秘的な雰囲気で佇んでいる。表層的にコミカルに物事が動く水族館と、時の流れが止まったかのような海の底。舞台では、対照的なふたつの世界が、入れ替わり立ち替わり現れる。ほとんど何もない白い美術の中、舞台上を横切るアンサンブルキャストや数枚の透明パネルだけで、場所や時代が瞬時に移るさまはマジカルだ。このふたつの世界は奇妙に繋がっている。逆八百比丘尼は水族館では鰯ババアとしてお馴染みの存在だし、モガリやサキモリは夢か現かわからぬまま海中を彷徨って人魚達に出会う。そうかと思えば、人魚ショウの出演者オーディションに、本物の人魚であるはずのNINGYOが応募する場面も。時に登場人物自身も混乱しながら、水族館と海底とを往還する。やがて、重要な任務を負う“潜水鵜”として海に潜るサキモリ、モガリ、イルカらと共に、劇は怒涛の展開へ。果たして、人魚の正体とは、届けるはずの電報とは、逆さについた鱗=逆鱗とは……?無数のピースが合わさって迎えるクライマックスには息を飲む。劇中、モガリが“誰もいない海”を見ることができる人はいないと指摘する台詞があるが、そうしたものを観客が目撃し得る演劇の特性、そして観客としての責務にも、思いを巡らさずにはいられない。現実と非現実を行き交いつつ、圧倒的な真実を浮かび上がらせる、野田秀樹流ファンタジー。主要俳優陣の生き生きとした確かな演技と、アンサンブルキャスト達による息の合った動きが、独特の世界に命を吹き込んでいた。公演は2016年1月29日(金)から3月13日(日)まで東京芸術劇場 プレイハウスにて。その後、3月18日(金)から3月27日(日)まで大阪・シアターBRAVA!、3月31日(木)から4月3日(日)まで福岡・北九州芸術劇場 大ホールでも上演。取材・文:高橋彩子
2016年02月05日ヘルノ(Herno)が1月に行われたピッティ・イマージネ・ウオモ89でピエール・ルイ・マシア(Pierre Louis Mascia)とのコラボレーションによるメンズの16-17AWカプセルコレクションを発表した。ヘルノがデザイナーとコラボによるコレクションを発表するのは2009年にニール・バレット(Neil Barrette)とのダウン以来となる。今回のコレクションは、1948年創業のヘルノのルーツであるコートの裏地が当時はシルクのプリントであったことから、クラウディオ・マレッツィ代表取締役が、イタリア・コモのアキーレ・ピント社とのライセンスにより独自のグラフィックでテキスタイルを発表しているピエール・ルイ・マシアに直接オファーし、実現した。コレクションは撥水のラジエターコートやカシミアのコート、ジャケットに取り外し可能なライナーが付いたもの、中綿入りのシャツジャケットやハーフコート、ヘルノでは珍しいヴィンテージのスカジャンなどもあり、マシアのプリントとのリバーシブル中心。カモフラージュ、チェックのコラージュ、手織物のフォトプリント、曼荼羅などのグラフィックパターンとヘルノのクラシコの伝統に基づいたテクノロジーで、この数シーズン新たな顧客層の開発を続けるヘルノでも異色のラインアップとなっている。今回、ピッティ・ウオモで発表されたのはメンズ15型。ウイメンズは2月のミラノファッションウィークで発表される予定。Text: 野田達哉
2016年02月03日「セクシーロボット」シリーズ、ソニーの「AIBO」のコンセプトデザインなどで知られるイラストレーター、空山基(HAJIME SORAYAMA)の新作個展「女優はマシーンではありません。でも機械のように扱われます。」が1月30日より、渋谷のギャラリーNANZUKAでスタートした。空山基はエアブラシを駆使したイラストレーションで、70年代よりフリーのイラストレーターとして活動を開始。78年のサントリーの広告を最初に、80年代を代表するエアブラシ手法で知られ、女性美をメタリックなロボットやフェティッシュな表現で国内のサブカルチャーシーンのみならず、海外でも伝説的な存在。1999年にはソニーのAIBOでグッドデザイン賞、メディア芸術際グランプリを受賞し、初代AIBOはスミソニアン博物館&MOMAのパーマネントコレクションに収蔵されている。海外のアートスクールでは空山の作品の制作過程を図解した作品集が教科書として使用されていることも多く、ハイパーリアリズムの巨匠。エアロスミスの「Just Push Play」のCDジャケットのカバーが有名だが、ア ベイシング エイプ、ナイキ、 ビームス、ステューシーなどとのコラボでも知られ、ファッション界でもファンが多い。今年1月に行われたピッティ・イマージネ・ウオモ89でも、韓国人デザイナーのジュン・Jが空山基をメインテーマとしたコレクションをランウェイショーで発表。グラフィティアーティストのKAWSとのコラボフィギュアなど、ストリートアート、ネオ・ジャポネスクのブームと共に、海外での再評価が高まっている。今回の展覧会では、空山が敬愛するマリリンモンローをロボットとして書き起こした新作ペインティング10点と、立体作品のセクシーロボットを等身大、1/3スケールの2体が展示されている。【イベント情報】空山基新作個展「女優はマシーンではありません。でも機械のように扱われます。」会場:NANZUKA住所:東京都渋谷区渋谷2-17-3 渋谷アイビスビルB1F会期:1月30日~3月5日時間:11:00~19:00休館日:毎週月曜日、日曜日、祝日料金:無料Text: 野田達哉
2016年02月02日バスローブやパジャマ姿で螺旋階段を降りて来るモデルたちは、メンズウェアが男たちの鎧だという言説をあざ笑うかのようだ。リラックスこそモダンラグジュアリーと言わんばかりに、ランウェイに敷かれたムートンの上を歩く。フェンディ(FENDI)の16-17AWコレクションが1月18日、ミラノの同社ショールームで発表された。すべてがソフトでオーバーサイズ。コクーンシルエットのローブコートや太めのパンツ、ニットも手編みでサイズはゆったりとオフタートル。ジャケットもゆったりしたボックスシルエットで、胸にはカートーンモチーフの吹き出しで「FENDI」のアップリケがあしらわれるなど、この数シーズン、テーマに用いられているユースカルチャーが継続。人気のバッグシリーズのピーカーブーやフェンディ・フェイスモチーフ、リュック、トレッキングシューズ風スニーカーなど、SNSのタイムラインを賑わしそうなキャッチーでポップなアイテムが続く。カラーはブラウン、グレー、ブラック、ネイビーを基調にイエロー、レッド、ブルーが効果的に使用され、様々な年代のチェックがチェック・オン・チェックで提案。ファーに見えるウール、ウールに見せたファーなどの最先端なハイテク技術が素材に生かされている。贅沢なレザーやファーのボリューム感と、そのアルチザンなテクニックはフェンディ家の3代目シルヴィア・フェンディがクリエイティブディレクターならではの贅沢さだ。Text: 野田達哉
2016年02月01日ピッティ・イマージネ・ウオモ初、韓国からのゲストデザイナーとして招待されたジュン・J(Juun.J)が、1月14日にフィレンツェ・レオポルダ駅舎跡で16-17AWコレクションを発表した。テーマは「ソラヤマ(SORAYAMA)」。70年代から活動する日本のサブカルシーンを代表するイラストレーターの空山基が描く、セクシーロボットを基本コンセプトにコレクションが構成された。レザーを中心に、ボンディングされたウールのスーツ素材などを、バイクウェアからアイデアを得たジャケット、パンツなどは、SF映画を連想させるルック。シルエットはロング&リーン、ボディコンシャスなIライン、エフォートレスなニットなど、ジェンダーレスなトレンドがミニマムなカラーリングで表現された。肩幅は大きくゆったりした量感のマキシ丈コートにスリムなパンツ、ビッグサイズのMA1やPコートに太めのパンツ、ビッグレタリング、ヌメ革使いなどモードをマーケットコンシャスに落としこむテクニックは、グローバルな販売先で展開するデザイナーとしての経験値を感じさせる。「自分にとって空山(基)さんはファッションの勉強を始める以前、80年代からの永遠のアイドル」と話すジュン・J。フィナーレに登場したムートンコートの背中に描かれたイラストが、今回のショーの種明かしとなったが、数年前からネオ・ジャポニズムとして注目されてきたモードのひとつのトレンドが、イタリアンクラシコの聖地で韓国のクリエイターから表現されたという、メンズファッションのグローバル化が興味深い。ピッティ開催後のミラノメンズファッションウィーク期間中には、ミラノの百貨店リナシャンテで、ジュン・Jがファサードで大きくフィーチャーされ、ポップアップショップも設置されていた。また、1月30日から3月5日まで、空山基の作品展「女優はマシーンではありません。でも機械のように扱われます。」展が渋谷NANZUKAで開催されている。Text: 野田達哉
2016年01月30日松たか子さんに瑛太さん、井上真央さん、阿部サダヲさんという豪華キャストが揃うNODA・MAPの新作舞台『逆鱗』。野田秀樹さんの舞台といえば、“キル→着る→KILL(殺す)→生きる”だったり、“オイル→老いる”など、単なるダジャレかと思いきや、そこから思いもよらない壮大な世界を見せてくれる。今回は、水族館に現れた人魚の物語ということだけれど…一体どんな舞台に?そして12年ぶりに野田作品に出演する阿部さんの心境は?***野田:前回、出てもらった『透明人間の蒸気(ゆげ)』から12年も経ってるんだね。まあこの間にも、何回か声は掛けていたんだけれど、台本が気に入らなかったみたいで…(笑)。阿部:いや…単にタイミングが合わなかっただけです。この12年の間にNODA・MAPの舞台も観に行ってますし!野田:そうそう『THE BEE』の時、長野まで観に来てくれたんだった。いつか俺の役をサダヲにやってほしいって言ったんだよね。阿部:(恐縮して)…ああ、はい。野田:僕が阿部さんを初めて認識したのは20年くらい前なんだけれど、その時、こういうすごい人が出てきたんだなって、とても印象に残ったんだ。それで『透明人間~』に出てもらったら、やっぱりすごく上手くて、また絶対にお願いしたいと思っていました。今回久しぶりだったけど、全然落ちぶれてなくて安心した。阿部:よかったです。野田:まあそれは冗談として、今回、阿部さんが出てくれることになって、どんなセリフを書いても、噛み砕いてもっと面白くしてくれるから大丈夫っていう安心感があったのよ。もし他の人だったら、こんなに長々書かないよなっていう昭和ギャグを連発したり…ほんとすみません(笑)。阿部:最初、半分だけいただいた台本では、ガチャガチャしたシーンばっかりで、ここからもっとふざけていくのかと思っていたんですよ。メンバー的にふざける人が多いですし。野田:確かにそうだね(笑)。阿部:でも、後半の台本を読んだらどんどん思いもよらない展開になっていって、読み終わったときには言葉が出なかったです。野田:うん。この作品に限らずだけど、ガチャガチャした芝居だと思って観ていると、いつの間にか引き返せないところにいるというか。知らず知らずのうちに作品の中に引きずり込みたいとは、いつも思ってる。阿部:ただ、台本のト書きに、でっかい水槽が運ばれてくるって書いてあるから期待してたんですけど…。野田:スタッフからも「水を使うんですか?」って聞かれたりしたからね(笑)。ただ、舞台に本物の水槽や水を出すよりも、僕は演劇のアナログ感でできることってあると思ってるからさ。演劇って言ったもん勝ちで、ここは海の底だって言ったら海の底になる。そういうリアリティって演劇ならではで、演劇をやってる身としては、やっぱり演劇でしかできない世界を作りたいし、劇場に来た人にしか感じられない衝撃を見せたいというのはあるかな。阿部:それにしても、文字を使った言葉遊びが出てきますけれど、あんなにたくさん考えるんですね。あまりの数に、じつは野田さん、暇なのかなって(笑)。野田暇なんでしょうね(笑)。◇右/のだ・ひでき劇団「夢の遊眠社」を解散後、‘93年にNODA・MAP設立。『THE BEE』『エッグ』など、国内のみならず海外でも作品を上演し、高い評価を得ている。左/あべ・さだを’92年より大人計画に参加。舞台、ドラマ、映画と幅広く活躍。バンド“グループ魂”では、ボーカルを務める。映画『殿、利息でござる!』が5/14公開予定。◇1月29日(金)~3月13日(日)池袋・東京芸術劇場 プレイハウス作・演出・出演/野田秀樹出演/松たか子、瑛太、井上真央、阿部サダヲ、池田成志、満島真之介、銀粉蝶S席9800円A席7800円サイドシート5500円当日券あり。NODA・MAPTEL:03・6802・6681www.nodamap.com大阪、北九州公演あり※『anan』2016年2月3日号より。写真・土佐麻理子インタビュー、文・望月リサ
2016年01月27日今年開催されるヨーロッパチャンピオンシップの大会からサッカーイタリア代表の公式スーツのデザインをドルチェ&ガッバーナから引き継いだエルマノ シェルビーノ(Ermanno Scervino)。1月18日にミラノで発表された16-17AWコレクションは、90年代を彷彿とさせるミラノメンズの良き時代を思わせる、ゴージャスでラグジュアリーなコレクションが並んだ。メンズ、ウイメンズともにシェルヴィーノを代表する柔らかなで軽やかな素材をベースにロックテイストで表現。黒を基調に、グレンチェック、ボーダー、ストライプといった柄を、モノトーンを基調としたスタイリング。カーキのミリタリーアイテムもショールカラーやファー、レザーのグローブなどでグラマラスに仕上げられている。オーバーサイズのニットにはWILD、HEROESなどのレタリングが大きくあしらわれ、贅沢な刺繍のコートやクリスタルビーズ、シャイニーなアイテムは、ハリウッドセレブやカニエ・ウエスト&キム・カーダシアンとの交流でも知られる、同ブランドらしい華やかな成功者のワードローブ。フィナーレのボーダーのバリエーションまで、職人技術の生産背景を持つラグジュアリーのラインを外さないメゾンの王道を歩む。Text: 野田達哉
2016年01月26日ニール バレット(Neil Barrett)の16-17AWコレクションがミラノで発表された。エージング加工されたムートンのランチコートやボンバージャケットに代表されるデザイナー自身のルーツである70年代ユースカルチャーとUKがテーマとなったコレクション。ミニマムにアイテムを抑えたスタイリングは変わらないが、得意とするスポーティーなテーラーリングから、クラシックなスポーツアイテムへと開かれるページが移行している。ブランドのシグニチャーとも言えるネオプレンに代表されるテクノファブリックは、その発色性とともにコントラストを明確にデザインに取り入れ、カラーパレットもチョコレート、チェストナッツ、グレイ、黒にハイトーンな赤、青、黄とアスレチックな要素が強調されている。トロンプルイユのレイヤードは継続されているが、英国へのノスタルジックなイメージを思わせる素材と、サッカーのユニフォームを彷彿とされるビビッドな差し色のコーディネート、終盤に登場した鷹と鷲のフォトプリントのブルゾン、コートなど、新しい世代に向けたプレゼンテーションの一端を垣間見せた。Text: 野田達哉
2016年01月25日この数シーズン、ピッティウオモからミラノへプレゼンテーション発表の場を移し、ブランドのDNAであるイタリアンクラシコの技術を生かした新しいブランドの世界観を打ち出しているボリオリ(BOGLIOLI)が16日、16-17AWコレクションを初のランウェイ形式で発表した。今シーズンよりデザイナーとして起用されたのはグッチ、アルマーニで経験を積んだダヴィデ・マレッロ。前シーズンの明るいカラーが影を潜め、バーガンディ、茶、ブルー、グリーンといったアーシーなカラーをニュアンスのある糸使いで深みを表現しており、幾重にも重ねたトーンが全体をグレイッシュに包んでいる。ボリオリを代表する芯地を省いたカーディガンのようなジャケット、ウールのローブコートなどベーシックなクラシカルなアイテムを中心に、軽さと柔らかさに重点が置かれたコレクション。ざっくり編んだニットに太めのパンツとボストンバッグ、フード付きのビッグシルエットのコート、ウィメンズのパンツスーツなど、ミラノのモード系ブランドとしての方向性を垣間見せつつ、ボリオリ本来のサルトリア精神に忠実なルックで構成された、緩やかに変化への序章を感じさせるコレクション。Text: 野田達哉
2016年01月23日「右脳と左脳でやっている感じ」――翌週パリで自身のブランド、ホワイトマウンテニアリング(White Mountaineering)のコレクション発表を控えているデザイナーの相澤陽介は、フィレンツェでの一仕事終え、バックステージで笑顔を見せた。アディダス オリジナルス バイ ホワイトマウンテニアリング(adidas Originals by White Mountaineering)の16-17AWコレクションは、1月14日、フィレンツェで行われている第89回ピッティ・イマージネ・ウオモのゲストブランドのスペシャルイベントとして発表された。古い駅舎を改装したレオポルダ駅の会場を入ると、山の頂上を目指すピークを思わす工事用ライトの列で来場者を案内し、会場奥にはスクエアなスペースを取り囲むように客席が設置されている。天井には3本の直管形ライトが3角形に組み合わされ、ステージ全体を巨大なトライアングルのライティングで形成。モデルがステージをウォーキングした後、定位置にとどまると、その直管形ライトが光りながら下降、上昇するというデジタルプログラミングと人間の動きを組み合わせたインスタレーションで会場を驚かせた。コレクションは黒を基調にアディダスの3本ラインをグラフィカルにあしらったスポーツアイテムを、東京が牽引してきたストリートファッションをモードに消化したミクスチャースタイル。パッチポケットやポケットのフラップ、異素材の切り替えなどのディテール、ベーシックなアイテムのレイヤード、ボトムとトップスのバランスの提案が、“アスレジャー”という言葉と共に広がりつつある、新たな都会的なスポーツウェアマーケットに呼応している。「今回はホワイトマウンテニアリングが得意とするジャカードなどのグラフィックパターンのモチーフはあえて封印した。アディダスの膨大なアーカイブとともに、スポーツウェアメーカーだからこそ開発できて、保有している機能性素材などを、普段の生活のなかに取り入れることで、ファッション本来の格好良さを追求した。メンズファッションは今、モード、クラフツマンシップ、ストリート、スポーツなどすべてをミックスしていくことが重要な時代。それを感じてもらいたかった」(相澤)ショーのフィナーレは、天井の巨大な直管形ライトのトライアングルがピラミッド型の山を構成し、両者のコラボレーションを象徴的に表現。ショーの演出は、これまでホワイトマウンテニアリングの音楽などを手掛けてきた相澤の大学時代からの仲間を中心に、日本からのチームで構成された。ピッティウオモでは13年にゲストデザイナーとしてショーを発表。バブアーとのコラボでも同展でプレゼンテーションされ、新しい世代を代表するメンズデザイナーとしてピッティで高い評価を得てきた相澤が、今回はそのトータルなコンセプトワークで、アーティストとして評価を高めたコレクションとなった。Text: 野田達哉
2016年01月22日モンクレール ガム・ブルー(MONCLER GAMME BLEU)の16-17AWコレクションが、1月17日、ミラノメンズファッションウィークで発表された。デザイナーのトム・ブラウン(Thom Browne)が、今シーズンのテーマに選んだのは“カモフラージュ”。コレクションの全ルックがグレー、ブルー、レッド、ホワイトの共通したカラーのカモフラージュ柄。モデルはすべて同柄の目出し帽で顔を覆い、目の周りもカモフラージュでメイクされているという徹底ぶり。モデルたちは会場をウォーキングした後、ステージ中央のカモフラージュ柄にスモークされた小部屋に格納されていく。フィナーレにトム・ブラウンの姿はなく、小部屋がフラッシュライトで点滅し、中に整列して座ったモデルの上に紙吹雪が舞い続けるという演出。同ブランドがこれまでから基調としてきたモンクレールのアーカイブピースと、クラシカルなテーラードピースがベースとなっているが、過去発表されてきたシーズンのように、ボクシングや乗馬、ボートのような明確なスポーツ競技をテーマに掲げているわけでもない。全身、全アイテムがカモフラージュ柄のため、それぞれのアイテムの細かなデザイン、素材、ディテールなどは客席からは判別がつかない。ショー後、発表されたリリースによれば、各アイテムはコットンギャバジン、コーデュロイ、ドネガルツイード、ピンストライプ、オイルコーティングされたカシミア、ファー、超軽ナイロンなど同ブランドがこれまで主要に使用してきた素材を中心に、プリント、ジャカード、インターシャなど様々な加工で構成されていたようだ。モンクレールブランドの中でハイブランドとしてファッショニスタたちに認知されたガム・ブルーの“ワンテーマ”という選択は、鬼才トム・ブラウンらしい究極の形なのかもしれない。Text :野田達哉
2016年01月21日デザイナーのコンスエロ・カスティリオーニがマルニ(MARNI)で牽引してきたミラノメンズの“革命”は16-17AWコレクションでさらに安定感を増した。オーバーサイズのラップコートはフロントのボタンを排除しダブルフェイスのウールのドレープを、ネックにギャザーを寄せたスモッグや、背中のスリットの入ったシャツはコットンポプリンの美しさを際立たせ、ゆったりしたシングルプリーツのパンツは裾で絞り新しいバランスを生み出し、それぞれのアイテムはミニマムでロマンティックに仕上がっている。胸にパッチポケットの付いたチェスターコート、フラップの付いた大きなフロントポケットのオーバーサイズシャツ、ショート丈のジャケットは裾からシャツをのぞかせ、パッチワークジャケットにキャップとスニーカー、男の“カワイイ”要素を軽く上質な素材とともにリラックスしたスタイリングで提案。もちろん、アストラカンやヌートリアのファースカーフは、ブランドのアイコン的な存在として欠かせない。フィナーレではクラシックなミラニスタのセクシー、強さに憧れる男性像の対極を堂々と行く、イタリアンモダンデザインに大きな拍手が送られた。Text:野田達哉動画引用元: (MARNIオフィシャルYouTube:
2016年01月20日1月12日よりイタリア・フィレンツェで16-17AWメンズの総合展示会、第89回ピッティ・イマージネ・ウオモが開幕した。テロの影響が懸念される中での開催となったが、3日目の雨でピッティ名物のスナップの気勢がそがれたものの会場内の各ブースはいつも通り、活気に包まれた。年々加熱するスナップの影響もあって、クラシックスタイルでドレスアップしたグループでの来場が目立つなか、世相を反映してか例年に比べビビッドなカラーでの表現はすっかり影を潜め、グレイッシュな着こなしが中心。ミリタリーテイストなアイテムでのコーディネートもトーンダウンした。今回の全体のテーマは「ピッティ・ジェネレーションズ」。この数シーズン“ピンポン”“ウォーキング”“カラー”とグローバルな出展者をひとつのテーマで構成することに苦心してきた印象のある同展だが、「現在のファッションやスタイルはその人が誕生した日付、つまり世代よりも異なる世代に共存する各人の精神状態により決まる」という興味深いコンセプトを打ち出した。「熟年層がロックなトレンドに身を包み、若い世代がビクトリアンビアード(ひげ)にヴィンテージルックに熱を上げるジェネレーションの境界線がなくなりつつある時代」を、メンズファッションの新しいトレンドとして提案している。同展の開幕前日に「デビッド・ボウイ死去」のニュースが世界中に駆け巡る中、期せずして今回のビジュアルプレゼンテーションスペースや、デニムブランドのVPなどにも、デビッド・ボウイが永遠のファッションアイコンとして使用された。「今回は(ジェネーションズのテーマに沿った)、ムービーで表現することをまず考え、ショートフィルムを我々の広告として制作した。これはデジタルなやり方で口コミで共有されるバイラルマーケティングの方法を取ったためだ。デビッド・ボウイやジム・モリソンなどが会場内のウォールのコラージュにも使用されたが、本来であれば70歳近い年齢の彼らを、現在20代の若者たちがファッションアイコンとして支持し、当時アイドルとして受け入れていた世代もその時代背景を含め支持している。ファッションは以前のように年齢や世代で括れなくなっている」とラポ・チャンキ(Lapo Cianchi)ピッティ・イマージネ・ウオモ・コミュニケーションディレクターは話す。会場内のポップアップストアとして、セレッティとトイレットペーパーマガジンのコラボアイテム「SELETTI WEARS TOILETPAPER」も登場し、ジャンルや世代を超えた協業が目立っている。Text:野田達哉
2016年01月20日マスプロダクツと一線を画し、エシカルなもの作りで知られるザ・イノウエブラザーズが、アルパカ繊維の品質向上の開発を行うペルーのパコマルカ・アルパカ研究所とパートナーシップを結び、世界高品質の「シュプリームロイヤルアルパカ」(R)を開発。そのプロジェクトの背景を伝えるショートフィルムが公開された。パコマルカ研究所は海抜4000mを超えるアンデス山脈の高地で、アルパカの放牧を行う地域先住民であるアルパカ農家の経済的安定と、生活様式の保護を目的に設立された。ペルーで飼育されている300万頭以上のアルパカが、血統、生産量、品質などのデータが存在せず、それは政府及び教育期間からの支援がなかったことに起因していることから、専門の獣医医療と最新の科学技術による飼育、毛刈りなどの指導を実施。それにより繊維の質を高め、飼育農家が高価な設備を導入することなく、彼らの収益性を上げることを目的としている。イノウエブラザーズは現地に赴き、現地の生産者と糸から開発したニットやスカーフなどのプロダクトを発表しており、今後、このアンデス地域の良質なアルパカ繊維を使用したプロジェクトを拡大することで、先住民地域の発展と活性化を担う。イノウエブラザーズはデンマーク・コペンハーゲンで生まれ育った井上聡と清史の兄弟が2004年にブランド設立。ペルーのピクーニャを使用したニットやブランケット、東日本大震災後に被災工場の支援プロジェクトをはじめ、コム デ ギャルソン、ラコステ、スワロフスキー、モノクルマガジンなどとのコラボなどでも知られている。Text:野田達哉
2015年12月19日和魂洋才が追求されたイセタンサローネ メンズが丸の内にオープンから続く12月12日に東京・丸の内にオープンした「イセタンサローネ メンズ」は、4月にオープンした六本木の東京ミッドタウンの「イセタンサローネ」同様、“和”が空間デザインのテーマとなっている。売り場面積は約900平米と同規模ながら婦人服を中心とした六本木は2層での展開。今回の丸の内はワンフロアでのMD集積。三越伊勢丹グループが手掛ける中小型店舗事業の一環「スペシャリティストア」としてのブランディングと、新規顧客へのコンタクトポイントとして、今回の丸の内店は重要な意味を持つ。同店の内装を手掛けたデザイナーの辻村久信氏、大西洋・三越伊勢丹HD代表取締役社長、小島伸一・イセタンサローネ メンズ店長に話を聞いた。(今回のオープンに関して大西社長は)「12年前に伊勢丹新宿本店メンズをリモデルしたときに3年から5年以内に3000平米から5000平米の面積でイセタンメンズという名前で出店するという計画を持っていた。それからすると今回の丸の内の出店は遅すぎたという感がある。規模も現在、開発中のこのエリアで2、3年待てば3000から5000平米の面積の店舗を構えることも可能だったがコーナー立地でもあるこのスペースで今、出店することが現場としてベストの判断。丸の内、大手町というのは、当初から候補として予定していたエリアで、ビジネス街のこの地は当社の独自性が発揮できる場所でもあり、今後、伊勢丹メンズがどういうプロセスを経て成長していけるか重要な店となる」と語っている。同店は「おもあい(=思い合う)」という茶道用語をストアコンセプトに、MDは“粋”、販売サービスは“一期一会”、デザインは”上質なもてなしを体現“とそれぞれのコンセプトを明確化。特にインテリアデザインは、さまざまな遊びとこだわりで、同社が打ち出す「this is japan.」の企業コンセプトとも連動している。(大西社長は)「はっきりしているのはこの店はマーケットインではなく、プロダクトアウトの店だということ。10月に改装を果たした三越銀座店のメンズフロアや、他の店舗とは違ったスペシャリティストアとしての性格を明確に打ち出していかねばならない。決してラグジュアリー層だけをターゲットにしているのではなく、新宿店メンズ館と同様に中心は中間層に向けての品ぞろえであり、その中で独自性をどう発揮していくかが課題。今後3年間で5から10店舗程度にまで拡大を計画する中型店を成長事業の柱のひとつとして、イセタンサローネを育成していく」と今後の見解を述べた。今回、羽田ストアから同店店長に就任した小島伸一店長は「世界のビジネスの中心地でもある丸の内で1000平米規模の店舗はまさに夢だった。イセタンメンズとして顧客接点の拡大、顧客満足の向上の二つが重点課題であり、新宿店リモデルから12年を経過して次のステップに向かわなければ我々にとって、この店から多くのヒントを得ることが大切な目的」と話す。売り場は「強さ=ビジネス」「優しさ=カジュアル」「楽しさ=雑貨」の3本柱のゾーニングで構成されているが、その根底はすべて茶の湯の教え。日本の美意識の根底にある五感や独自の時間の概念に基づいて空間が構成されており、江戸と京都の親和性が店舗デザインという手法で構成されている。「(三越伊勢丹から)約半年前に“未来の百貨店とは?”というインタビューを受けたことからこの店の話がスタートとした。店舗全体は日本家屋に見立てたが、エントランス部分を吹き抜けに、家屋部分は低天井にして目に見えるデザインだけではなく、販売員の所作が美しく見える什器デザイン、お客様が他のお客様の視線が気にならない配慮など、目に見えないおもてなしのデザインを心がけた」と辻村氏。商品はインポート中心ながら、例えば書斎を想定しシガーやウイスキー、筆記具などを扱う英国調の空間には、国産の絹糸100%の布に越前和紙を裏打ち加工した絹布紙が壁面什器に使用されるなど、細部にメイド・イン・ジャパンが誇る技法が使用されている。「紳士服は婦人服と違ってアイテム数が多く、いかに店頭で見せることができるかが重要だということは、これまでの経験からも理解していた。今回は話を頂いてからオープンまで時間との闘いで、こだわったわけではないが、結果的に自分のホームグランドである京都の職人の技術や素材をほぼ使うことになった。什器の無垢材はすべて北山の木で揃えた。ビジネスクロージングのカウンターは杉、ギフトとシューズの什器にはモミ、カジュアルゾーンの什器はヒノキを使用している。ファサードの鍛鉄のレーザーカットは亀岡、床の洗い出しは桃山砂、ラグの緞通は今では唐津と丹後でしか作れるところがなく、今回は丹後の職人さんにお願いした。デザインというのは形やモノを作る仕事だけではなく、人と人をつなぐ仕事という考えから、この店がイセタンサローネのスタッフとお客さんがつながることのできる空間を第一に考えた。出来上がった空間に心を入れて頂くのは、ここで働くスタッフの方々」と辻村氏は話す。Text:野田達哉
2015年12月18日人工知能を搭載したスタイリングアプリ「SENSY」が来年1月中旬までの期間限定で、イセタンメンズ専用のアプリ配信をスタートした。これによって伊勢丹新宿店メンズ館が、今年9月より店頭でデジタルサイネージとタブレットを使用して、店頭で接客サービスとして活用されていた同アプリを、ユーザーがダウンロードすることで店外でも同様のサービスを利用できることになった。アプリの利用料金は無料。SENSYは「手のひらに、スタイリストを」をテーマに、人工知能を活用することで、ユーザーの嗜好に応じたコーディネートを提案するシステム。従来のレコメンドエンジンが単品での提案が主だったのに対し、テイストを反映させたアイテムの組み合わせを表示する。今回のイセタンメンズとのコラボアプリでは、伊勢丹メンズのバイヤー4名がアイテムをレコメンドしていく過程でアプリ内にそれぞれの人工知能が育成される。ユーザーはお気に入りのバイヤーとリンクしておくことで、第3者の視点によるコーディネートの提案がどこでも受けられることになり、来店時にあらかじめそのコーディネートが売り場に用意されているというサービスが可能になり、ECでも購入が可能となる。「(SENSYは)9月の導入時から、時間と場所を選ばない買い物体験をテーマにECの売り上げ拡大を目指しており、今回はそれを進化させたもの。我々のウィークポイントであるフロアを跨いだ縦動線の接客が可能となることが大きなメリット」と三越伊勢丹・紳士営業部の岡田マネージャー。今回のアプリでは2階インターナショナルデザイナーズ、6階コンテンポラリーカジュアル、7階オーセンティックカジュアルから4名のバイヤーが人工知能を作成。伊勢丹オンラインストアと連動した約1000アイテムから、ウェアとシューズ4~5アイテムによるコーディネートが作成される。「店頭とECをシームレスにつなぐオムニ戦略の一環として実験的な段階ながら、将来的にはスタイリストや販売員、セレブなどさまざまなインフルエンサーの人工知能が搭載されることで、2000ブランドを超える膨大な商品アイテムを誇る伊勢丹メンズの楽しさを広げていきたい」と同マネージャーは話しており、既存のSNSによる拡散マーケティングとは違ったリテール戦略が興味深い。Text:野田達哉
2015年12月17日ルシアン ペラフィネ(lucien pellat-finet)から初のアートポスター4作品が各世界限定20点で販売される。今回、発表されたのは2011年に発売されたアートブック『SKULL STYLE:Skulls in contemporary Art and Design』の表紙に使用された4つのスカルモチーフ。12月16日から25日まで伊勢丹新宿店メンズ館2階で開催される同ブランドのポップアップショップで展示販売される。今回のアートポスターは、近年海外でも注目を集めるジークレー版画とシルクスクリーンを組み合わせたネオシルク版画と呼ばれる日本の技術を使用。360°GRAPHICSの協力により、以前にルシアンとカシミアセーターでコラボした田名網敬一をはじめ、オノヨーコ、横尾忠則、草間彌生、森山大道、ヒロ杉山、伊藤桂司などのシルクスクリーンプリントを手掛けている伊丹裕が作品を監修している。同氏はコム デ ギャルソン(COMME des GARCONS)とのコラボレーションでも知られるシンガポールのアートディレクター、テセウス・チャンが2014年11月に代官山 蔦屋書店で開催した個展『WERK: WE WORK TOGETHER』のネオシルク版画も手掛けたことで知られる。価格はB4サイズが15万円と17万円の2種類(いずれも額装込みの価格、額装なしは14万円と16万円)で各20枚の限定販売。B3サイズも期間中のみ予約が可能。Text:野田達哉
2015年12月16日12日、東京丸の内に三越伊勢丹ホールディングスの新業態となるメンズファッションセレクトストア・イセタンサローネ メンズ(ISETAN SALONE MEN’S)がオープンした。以前、「バーバリー丸の内店」のあった新東京ビル1階で、売り場面積は約900平米。品ぞろえの全体の6から7割が春物で構成されている。日本家屋をイメージした空間構成で店舗デザインはストラスブルゴやキートンなどのメンズストアでの経験豊富なデザイナー・辻村久信が担当。同氏の手掛けた店舗としては過去最大規模で、現代の素材とテクノロジーを融合し「和魂洋才、優雅さと合理性」が追求された。白木の什器や和紙、洗い出しの床など木、紙、土と日本の伝統的な自然な質感を生かした内装で、江戸の粋を京都の素材と職人技で仕上げられている。日本家屋の庭が想定されたエントランス付近には、ニコライ・バーグマン(Nicolai Bergman)のフラワー、フレグランスやコスメ、スキンケアなど水と植物などのイテムを集積することでさながら池のように動きを与えている。また、茶の湯の待ち合いのエリアにはフォーナインズ(999.9)の眼鏡の売り場を配し、帽子と共に丸の内エリアで最大レベルとなる品ぞろえで充実を図っている。その脇には茶室を想定したスペースにはジャン=ポール・エヴァン(JEAN-PAUL HEVIN)が新形態となるチョコレートバーを出店。世界で初となるミルクを使わず水で作るショコラショもこの店だけで飲むことが出来、“ビター”なメンズストア対応を図り、この店舗でしか体験できない”ティータイム”を提案。店舗奥のビジネスゾーンは蔵の位置づけで、オーダーカウンターには杉の無垢材に平瓦、床はハンドフックの小紋のラグ、壁には金箔や砂子を施した手漉き和紙などさながら銀座の高級寿司店を思わせる仕掛け。シューズやシャツなど、レディスに比べ圧倒的に豊富なMDが整理されて見やすい環境で提案されている。離れを想定したカジュアルゾーンはガラスを用いた光環境で、トム ブラウン ニューヨーク(THOM BROWNE. NEW YORK)、メゾン マルジェラ(Maison Margiela)、マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)、ディースクエアード(DSQUARED2)、メゾン キツネ(MAISON KITSUNE)、日本のブランドではビズビム(visvim)、エヌ. ハリウッド アンダーサミットウエア(N.HOOLYWOOD UNDER SUMMIT WEAR)、コーネリアン タウラス バイ ダイスケ イワナガ(CORNELIAN TAURAUS BY DAISUKE IWANAGA)の代表的なアイテムが並び、新宿店メンズ館のダイジェスト版といったブランド構成。通りに面したファサードは、鉄を葉の形に切り出し溶接した鉄骨のオブジェがショーウインドーを飾り、垣根を想定。帽子のディスプレーには京都の西山の枝をアクリルに封入した什器で、庭の植栽を想定するなど日本家屋の構造様式が徹底されている。*次回は辻村久信氏、大西洋社長などのインタビューText:野田達哉
2015年12月14日ピエール・エルメ・パリがニコラ・ビュフと「愛のものがたり」をテーマにした特別なアートコラボレーションを、2016年1年間にわたり全世界の店舗でスタートさせる。既に、ピエール・エルメ・パリ青山店2階の壁面には、今回のストーリーのスケッチやテーマとなる公園、主人公が描かれている。バレンタインデー、ひな祭りなどの季節に応じて、さまざまなパッケージや特別なマカロンやショコラが販売され、店舗環境も同物語で展開される予定。コムデギャルソン・シャツやエルメスとのコラボレーションで、ファッションシーンにおいても知られるフランス人アーティストのニコラ・ビュフは、現在東京を拠点に活動。日本やアメリカのアニメやサブカルチャーを、ヨーロッパの中世、ルネサンスやバロックの古典様式と融合された作品で知られる。これまでに東京現代美術館、原美術館やフランスの国際現代アートフェア、フランスの美術館などで作品を発表。パリ・シャトレ座公演オペラ「オルランド パラディーノ」のヴィジュアルデザインなどその活動は幅広い。今回の物語は「太陽の王国」のエリオスと「月の王国」のロクサーヌを主人公に、詩的な愛と冒険の世界が描かれ、ストーリーは1年間を通じて順次発表されていく。登場するキャラクターはロクサーヌの着飾ることが大好きな末妹や、彼女が飼っている猫、愛し合う二人の鍵を開けられる能力を持つエリオの友人のロボットの「キュピドン」など、アニメ的な各キャラクターが次々に予定されている。中には70年代の永井豪原作のロボットアニメ「UFOロボ・グレンダイザー」からヒントを得たというロボットも登場する。それぞれの登場キャラクターは特別パッケージに描かれ、5個入りから40個入り(日本橋三越限定)まで、デザインを違えて全世界のメゾンで展開される。「このプロジェクトの最初打ち合わせで、パリのピエール・エルメのメゾンを訪れたときに時差ボケもあって、メゾンの近くにあるモンソー公園をピエールと散歩しながら話をしたんだ。その時に彼とグレンダイザーの話をしたかもしれない(笑)。後でモンソー公園の歴史を調べると18世紀の貴族のテーマパークだったことが分かった。不思議な建物やアーチが残っていて、それは本物だったりフェイクだったりいろいろ。ちょうどその時にオペラの魔笛の仕事をしていたこともあって、公園のストーリーがどんどん広がりました」とニコラは話す。そのモンソー公園を描いた絵はパッケージにもなり、青山店の壁面にも描かれている。主人公の名前がロクサーヌと聞くとポリスの曲を想起するが「もちろん、ポリスの曲もそうだが、月に関係する言葉で強い女性の名前を考えていた。ちょうどパリで手掛けていたオペラがアレキサンダー国王の話で、王女がアゼルバイジャン出身のすごく強い女性の話。その名前がロクサーヌだったことも奇妙なつながりだった」とニコラは作品の不思議な縁を説明してくれた。詰め合わせのショコラも今回の物語のキャラクターの性格に合わせ、エリオスにはブラジルショコラのガナッシュ、ロクサーヌにはバニラ風味のショコラノワールと、パッケージだけではなくレシピにもその性格が反映されており、ストーリーから世界を紡ぐ二人の1年間のコラボが楽しみだ。Text:野田達哉
2015年12月08日ヴェルサーチ銀座店(VERSACE GINZA)のオープニングパーティーが11月25日に行われた。5月に表参道の「ヴェルサス ヴェルサーチ(VERSUS VERSACE)」、7月には銀座5丁目に「ヴェルサーチ ホーム(VERSACE HOME)」の路面店がオープン。09年に紀尾井町の本店が閉鎖されて以来、待ち望まれたヴェルサーチのフルラインがそろう旗艦店の復活となった。1階をアクセサリー、2階にメンズ、3階がウイメンズのプレタポルテをゴールドの階段が案内するこの3層の空間を、アーティスティック・ディレクターのドナテラ・ヴェルサーチは「イタリアの文化遺産に敬意を表したデザインを非常に気に入っている。新生ヴェルサーチのスピリットが羽ばたけるためのスペースとなった」とコメントを寄せているストアコンセプトはドナテラとイギリス人建築家のジェイミー・フォバート(Jamie Fobert)によるもので、1階はビザンチン様式の教会からインスパイアされたというモザイクの床に、透明のアクリル樹脂の什器とビビッドなロゴサインのオブジェを配し、バッグを中心にシューズ、アイウェア、来春夏より本格的な展開をスタートするスカーフなどを提案。2、3階は加工を違えたイタリア原産の大理石を床に贅沢に使い、白い壁にはアールが施され、真鍮、透明のアクリル樹脂が、80年代のヴェルサーチスタイルをよみがえらせつつ、コンテンポラリーなラグジュアリースタイルな空気感で表現されている。同店のオープンで交詢会通り沿いにはバーニーズ ニューヨーク、ブルネロ・クチネリ、ヴェルサーチのファサードが並び、オープニング当日、並木通り沿いではフォトコールが華やかに行われ、ゴールドのメデューサの復活に銀座が沸いた。Text: 野田達哉
2015年12月04日