病気を持って生まれた娘。「あなたがこれだけがんばったんだよ」と伝えたくて、私は漫画を描いている
一方、夫はすぐに病気を受け入れて、目の前のことを1つずつクリアしていこうという考えでした。今考えると、夫がこんがらがっている私の思考をときほぐしてくれようとしていたのかもしれないのですが、当時は「どうしてそんなお気楽でいられるの?」「本当にこの子のこと可愛いと思っているの?」と思って、衝突してしまっていました。
でも、娘が手術を受けたときに付きっきりの私だけじゃなく、パパの姿が見当たらないことにもとても不安がって泣いている姿を見て、娘にとって私たち二人が必要なんだと強く感じました。そのあと徐々に、夫は夫の方法で娘のことを考えているんだとわかり、今の娘自身を愛しているんだということもわかりました。
ー1回目の手術の前と後では気持ちの変化が大きかったんですね。
【じぇにこさん】
そうですね、見た目の変化も大きいので。それまでは基本的に抱っこひもでの移動。娘にも口元を隠すような帽子をつけて電車に乗ったり、自宅から離れたところの公園で人のいのない時間を選んで遊んだりしていました。
お家でも楽しく過ごせるように、台所セットやブロックなどを用意してお部屋を工夫しました。
でも、1回目の手術の前夜は「もうこの口元の姿は見られないのか」と思うと、どこか寂しい気持ちにもなりました。私たち夫婦にとっては、口唇口蓋裂の娘の顔が生まれたときからのお顔で、その顔の娘がそのまま可愛いし、そのままが好きなんです。なので、「今の顔もよく見ておこうね」と夫婦で話したことを覚えています。
口唇口蓋裂を知ってほしいというより、子どもに残したい!
ーベビーカレンダーで連載することになった経緯を教えてください。
【じぇにこさん】
口唇口蓋裂のお子さんを持つ親は、基本隠される方が多いと思います。娘が生まれて2013年ごろは情報がほどんとありませんでした。口唇口蓋裂は人によって状況も違ければ、治療も違います。
それでも、情報が欲しくてすごく苦しかった当時の自分と同じような人がいたら、こういう一例もあるよと知ってもらい、参考にしてもらえればいいなという気持ちがあります。また、口唇口蓋裂という病気を知ってもらえるキッカケになればという思いで描いています。
ただ、最終的に読んでほしいのは娘自身。