子育て情報『#23 作家/マンガ家・小林エリカさん』

#23 作家/マンガ家・小林エリカさん

絵もすごく丁寧で繊細で、ちょっとマンガ調にコマ割りされているのも素敵。これからの名作になっていく、読み継がれる絵本だと思います」

目の前にある日常の中での気づき
抒情と科学のバランスに惹かれる

マンガ、小説、アート活動など、ジャンルの枠を軽々と超えて、自由な表現活動を続けている小林エリカさん。小説『マダム・キュリーと朝食を』で放射性物質を研究したキュリー夫人を扱い、コミック作品『光の子ども』では放射能と人類の関わりの歴史を描くなど、科学的なものを大切なテーマのひとつにしている彼女が、今、3歳の娘とともに夢中になっている絵本が『わたしたちのたねまき ‐たねをめぐる いのちたちのおはなし‐』だ。

「最初は図書館の新入荷で手に取ったんです。読んでみたら、本当にすばらしい内容だったので、即、買って。あまりにもいいから『みんな読んで!』みたいな感じで、まわりの人にもどんどんプレゼントしています(笑)」

したたかに子孫を増やすべく、より遠く、条件のいい場所へ向かうための工夫がギュッとつまっている植物の小さな種。植物も、私たち人間を含む動物も、互いに協力し合いながら、この地球という生命体を作っていることに気づかせてくれる絵本である。

「そういえば、子どもの頃、オナモミの果実がいつの間にか服についていたなぁとか、懐かしい記憶もよみがえってきて。
娘は2歳のはじめの頃、言葉もあんまり分からないうちから、この絵本が大好きでした。ウサギがピョンと跳んでいく場面を楽しんだり、外でどんぐりを見ると『リスがうめていったのかなぁ』と言ったり。ちょっと年齢が上がると、オウゴンヒワが出てくるページで “ピーチクリー!パーチクリー!” という鳴き声のフレーズを繰り返すようになったりして。ディテールをどんどん読み込んでいける本ですね。

画像: Illustration:Kashiwai

Illustration:Kashiwai

描かれている植物や動物の絵も、すごく正確なんだけど、単に写実的というわけじゃない。科学的であると同時に、ドラマティックで抒情的でもあるんです。ワクワクするような楽しさと、科学的な正確さの絶妙なバランス。抒情と科学!そういうのが私、好きなんだなぁと、絵本が気づかせてくれました。
やっぱり、どこかに分析的な目がないと、日常も流れちゃうから。そのバランスが大事なのかもしれないですね」

これが大好き!という
ピュアな想いこそが胸を打つ

シャーロック・ホームズ研究家として知られた精神科医、小林司氏を父に、同じくシャーロキアン(シャーロック・ホームズの熱狂的なファン)

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